シナリオ詳細
消熱の花を探して
オープニング
●消熱の花
「なんてこった……」
亜竜種の男はその場所を見て、驚愕と焦りを籠めた言葉を漏らす。
一体男は何を見たというのだろう?
男の視線の先を追えば、その答えが分かる。
ゆらり、ゆらりと。洞窟の中に空気のゆらぎが見える。
おかしな話ではある。
此処は亜竜集落ペイトから少し離れた場所にある洞窟だ。
特に松明も魔法の明かりもないというのに辺りは「薄暗い」程度には明るく、そんなに深い場所でもないというのに熱による空気のゆらぎが発生している。
一体何故なのか。天然の温泉が発生しているというわけでもなさそうだが……。
「消熱の花を取りにきたってのに……これじゃ近づけねえ」
消熱の花。そう、花だ。男の視線の先には咲き乱れるようにして花が咲いている。
そしてどうやら、この場所の明るさはその花々によって担保されているようだった。
更によく見れば、この場の花はどうやら2種類あるようだ。
1つは、青い花。キラキラと輝いていて、非常に美しい。
1つは、赤い花。ギラギラと輝いていて、こちらもまた負けず劣らずの美しさを持っている。
しかし、なんだろう。赤い花のほうは少しばかり危険な雰囲気を持っているが……?
「くそっ、集落に報告しねえと。このままじゃ……!」
身を翻し戻っていく男をそのままに花々は咲き誇る。
しかし、おや?
赤い花が風もないのに揺れたような……?
●静李からの依頼
「最近、あなたたちへの窓口にされてる気がするんだけど……まあ、そこはさておこうか」
必要な時に相賀の爺様は居ない、と呟くのは最近フリアノン3人娘として広く知られるようになったうちの1人、静李である。
ちなみに後の2人は別の依頼の窓口になって今フリアノンにはいないらしい。さておいて。
「ペイトについては皆説明する必要はないと思う。あそこは場所柄、地下に存在するモノで色々と賄うことが多い」
たとえば水も地下水、その他食糧なども……全てではないが地下産のもので補ったりしている。
その辺りはまあ、各亜竜集落でやりやすい方向を模索した結果と言えるだろう。
「そうした『ペイト特産品』の中に消熱の花と呼ばれるものがあるんだ」
消熱の花。薬草の一種だが、強い冷気を発する花であり、乾かして粉にして発熱時の熱冷まし、あるいは生花のまま植木鉢に植えてもひと夏は持つので冷房のように、あるいは数本まとめておいて食糧保存用などに使われている花でもある。
そうした様々な場面で利用できる花なのだが……困ったことに、消熱の花を好むのは亜竜種だけではない。
花の形のモンスターである「バーンフラワー」もまた、消熱の花を好みその場所に居座る傾向があるのだ。
そうすると青い消熱の花に赤いバーンフラワーが混ざり、一見美しい花畑に見えて近づけば焼かれる恐ろしい場所が出来上がることになる。
「今年はペイトも暑いから、消熱の花はいつもより多めに必要なんだ。バーンフラワーを排除して、消熱の花をペイトに運んでくれないかな」
- 消熱の花を探して完了
- GM名天野ハザマ
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2022年07月26日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
●消熱の花を求めて
「消熱の花、ねぇ。毎日うだるような暑さの今日この頃にうってつけのものがあるのねぇ」
そんな便利なもの、誰だってほしくなるしその生息地に入り込む物体もいるでしょう、と『お父様には内緒』ディアナ・クラッセン(p3p007179)は何度も頷く。
消熱の花。地下で暮らすことの多い覇竜の夏は、暑さをどうしのぐかは大切なポイントだ。
だからこそ、強い冷気を発する消熱の花のようなものは重宝される。
「消熱の花……暑い夏に良さそうな薬草ですね。これで暑さを凌ぐのがペイト流なのだとか。覇竜の事はまだよく知りませんからこういった文化など興味深いです」
「そうだね。確かに外から見れば面白い文化だよね」
『千紫万考』ジョシュア・セス・セルウィン(p3p009462)に『闇』シッコク(p3p010498)も頷き、ディアナは小さく息を吐く。
「動くと暑くて汗かくから嫌なのよね。さっさと終わらせてしまいましょ。令嬢たるもの、いつも涼しげにありたいもの。額に汗とかできれば避けたい処よね」
この場に消熱の花があれば話は別だろうが……と、そこで『特異運命座標』四(p3p010736)が思い出したように声をあげる。
「そういえばバーンフラワーをおびき寄せるために何か冷たいものが必要、か……」
「つめたーい花なんだな。バーンフラワーは火吹くくせに冷たいのが好きってよくわからないな? 冷たいところに寄っていくなら、もっと冷たくしたものを持っていったらそっちに集まる?消熱の花、里にもあるだろうけど、一つ二つで寄ってくるかな? 借りられたら持ってくかー」
冷たいモノを好むというバーンフラワーをおびき寄せる為の手段を四と『紲家のペット枠』熾煇(p3p010425)は考える。
(とりあえずペイトで氷がないか聞いてみて、あるようなら譲ってもらおうと思うが消熱の花を食糧保管や冷房に使用しているのを聞くとあまり大きな氷はないかもしれないな。念のためかき氷(悪味)を持ってきただが、どこまで保つか……)
勿論、用意したのは四だけではないのでどうにかはなるだろう。
「病気にも効くし暑いのにも効くし、冷蔵庫みたいにもできるしですごい花だね! バーンフラワーも使いようによっては冬とかに役立つのかなあ……こっちはモンスターだけど」
『灰雪に舞う翼』アクセル・ソート・エクシル(p3p000649)は言いながら「無理か」と呟く。
たとえ使えたとしても、冷たいものが好きで勝手に歩き回る花など使えはしないだろう。
「消熱の花か、そういった物が存在したんだな。確かに最近の暑さを考えればそれが必要に思えるのは間違いない」
そんな事を言いながら、『黒き葬牙』ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)も静李と色々と今回の依頼についてなどの話を進めていた。その中には当然のように静李に仕事の仲介を任せて何処かに行った相賀への愚痴も含まれていたりした。
「まあ、そういうな。静李。俺としては、こうして依頼を通してでも顔を見せてくれるのは嬉しいぞ」
相賀殿も変わらず元気そうで何よりだ、などと付け加えるが……静李はそれに肩をすくめる。
「あの爺様が元気でない時を探すのは難しい。ドラネコが真面目な顔をするのと同じくらいには珍しいだろうね」
それはほぼない、という例えだろうか。思わぬデザストルジョークにベネディクトはクスッと笑ってしまう。
少なくともこういうことを言える程度には静李も「日常」に戻りつつあるのだろうから。
「ところで、今回はついて来てはくれないのか? いざという時、君の力があると助かるのだが」
それに、とベネディクトは畳みかける。
「静李は確か水系の力を操る事が出来たんじゃないか? 冷気を呼び出す様な魔法が使えたりとかは無いのだろうか。どちらにせよ、来て貰えたら嬉しいな」
「……まあ、別に人死にが出る類の依頼でもない。そこまで言うなら……」
幸いにもそう説得出来て、静李も同行することになったのだが……実際、道中も危険な場所などはない。
アッサリと進み、現場に辿り着けば『優穏の聲』ゲオルグ=レオンハート(p3p001983)がその場の光景を見て声をあげる。
「一面に咲く赤と青の花々……犠牲者が出ていない今のうちに、しっかりと駆除しておかなければな」
赤い花はバーンフラワー。青い花は消熱の花。熱気と冷気が入り乱れ、僅かではあるが景色が歪んでいるようにすら見える。
青い花と赤い花が交互に咲いている様子は、赤い花……バーンフラワーが消熱の花を放つ冷気を好んでいる様子がよく理解できる。もし何の理解もなくこの場に踏み込んで消熱の花を回収しようとすれば、バーンフラワーにその者は襲われていたに違いない。
そう思える程度には整然とした、綺麗な花畑の光景であった。
しかし、その「綺麗な光景」をそのままにしておくわけにはいかない。
赤と青の入り乱れる光景は美しくはあるが、バーンフラワーはモンスターだ。
此処から排除して青一色にする必要がある。それは絶対なのだ……!
●消熱の花を求めて
「綺麗かもしれませんが空気が揺らいでむわっとしたものを感じますね……」
「バーンフラワー、赤いからわかりやすいな。普通に咲いてたら綺麗なんだけどなー。消熱の花を採れないから危ないなー?」
消熱の花がある程度冷やしてくれているとはいっても、これではまさに焼け石に水だろう。
ジョシュアの言葉に熾煇全員が頷き、そして全員が準備を始めていた。
ゲオルグの指示で持って来た植木鉢は壊れないようにシッコクが率先して動き、少し遠くに置かれていた。
何があるか分からない以上、そうした安全策は重要だ。
「そのまま戦闘してしまうと消熱の花が台無しになってしまうので、まずはバーンフラワーを誘き寄せなければな」
「バーンフラワーが好むような【溶けない雪うさぎ】を持ってきましたので皆様の物と同じく消熱の花から離れた場所に設置しておびき寄せましょう」
ジョシュアが持って来たのは溶けない雪うさぎであり、実物の雪と変わらない温度だというものだ。
ベネディクトはジュエリー・サマー・キューブを設置し、颶風氷牙で適当なものを氷漬けにしてみてもいた。
「さて、と。冷気を発する攻撃でもできれば良かったのだけれど、生憎持ち合わせてないわ。だから家の氷室から氷を持って来たけれど、これ、使えるのかしら? とりあえずそこら辺に置いてみましょ」
そうしてディアナも氷を置き、ゲオルグもジュエリー・サマー・メロンを置く。
「冷たいものを好むというのでジュエリー・サマー・メロンを持ってきた。ちょっと勿体ない気もしなくはないが、これも依頼達成の為だ」
確かにゅわしゅわ弾ける不思議な氷にジューシーなメロンソース、丸くくりぬいたバニラアイスがポップな気分にしてくれるという氷菓は少しばかり囮に使うのはもったいないかもしれない。
しかしその分、効果もありそうだった。
「消熱の花から遠く離れた、戦闘出来そうな広い場所に置いて誘き寄せてみるとしよう。他の仲間も色々手段は持ってきているだろうからどれか上手くいくといいのだが……」
ゲオルグの呟きは、全員の気持ちの代弁でもあっただろうか。
そうしてしばらく観察していると……花畑から赤い花がスッと立ち上がる。
そう、立ち上がった。そうとしか表現しようがない。根を足に、バーンフラワーは立ち上がったのだ。
赤い花……程度であったバーンフラワーへの警戒度は、その行動1つで跳ね上がる。
アレは確かにモンスターだと、誰もにそう強く感じさせたのだ。
「いくぞー!」
アブソリュートゼロを熾煇が放てば、バーンフラワーはアッサリ氷漬けになる。熾煇の攻撃の威力もあるが、然程タフでもないのだろうと確信させる姿だ。
「良し、上手くいったか。だが数がかなり多いな、油断せずに行こう。静李も手伝ってくれるなら、一緒に攻撃をして貰えると助かる」
「ああ、分かったよ」
「助かる! さあ、悪いが長々とお前達に付き合う心算は無い、早々に終わらせるぞ!」
ベネディクトの黒牙天墜に合わせるように静李の水魔法が発動し、バーンフラワーの数が減っていく。
「花の部分だったら銃でも狙いやすいですかね? 崩れる可能性を考えると洞窟への被害は抑えたいものです」
ジョシュアのプラチナムインベルタが炸裂し、シッコクの攻撃も合わせるように放たれる。
「バーンフレイム対策に火炎耐性はつけてきているが攻撃は中々痛そうだ」
精密射撃からのラピッドショットを放ちながら、四はそう独りごちる。
確かに放たれるバーンフラワーの炎は少しばかり痛そうだ。
しかしそれでも、これだけのメンバーが集まっていれば然程問題はないだろう。
「消熱の花の場所へと戻ろうとしているバーンフラワーは最優先で攻撃していくとしよう。花に被害を出すわけにはいかないからな」
そんな中、ゲオルグも範囲攻撃だと消熱の花を巻き込んでしまいそうな位置にいるバーンフラワーを狙いフルルーンブラスターを放ち、アクセルもルーン・Hでバーンフラワーを攻撃していく。
冷静な判断力で周囲を確認し攻撃していくその姿は実に頼りになるものだ。
「……にしても。根っこを脚みたいにして動かして移動する様子はちょっと気持ち悪くない? 私だけ?」
その辺りは慣れの問題だろうがディアナの言う通り、かなり気味の悪い姿ではある。
「あーもー! さっさと倒れなさいよ!」
ちょっと荒っぽくなっているのは暑さのせいってことにしておいて頂戴、と。そんな言い訳をしながらディアナはダークムーンからのファントムチェイサーを放っていく。
そんなディアナの気合が通じたのかは分からないが……バーンフラワーのその全てを、殲滅して。
その瞬間、バーンフラワーの放つ熱気が消えて洞窟内に冷気が広がっていく。それが消熱の花の放つ冷気であると気付くのに、然程の時間はかからない。
ほんの僅かの時間で無数の消熱の花は、狭いわけでもない洞窟の中に氷室のような冷気を満たしていく。
「ほんとに凄いね。冷蔵庫……どころか冷凍庫? これはバーンフラワーも近づくはずだね……」
アクセルが思わずそんな感想を漏らし、シッコクも頷く。
これ程の冷気を放つのは流石に花畑ほどの数がなければ無理だろうが、一輪あれば快適に夏を過ごすには丁度良い程度の冷気を得られるだろう。
勿論、生花なのでちゃんとお世話をしなければならないが……これ程の恩恵があるのであれば、然程難しい問題でもない。誰でも宝物か高貴なお客様を扱うかのように丁寧にお世話をすることだろう。
「よし、バーンフラワーの駆除も終わった。消熱の花を植木鉢に植え替えて持ち帰ろう。次に取れなくならないように取りすぎないように気をつけないとな」
ゲオルグに頷きながら、ベネディクトは静李へと声をかける。
「それで、どれくらいの花を残していけば良いんだ?」
「少しでいいだろう。雑草並みに強い花だ、また少し経てば綺麗に戻っている」
必要な分の花を袋に詰めながら、作業をしていくベネディクトと静李だが、まあそういうことなら遠慮する必要もなさそうだ。
消熱の花も、実に覇竜らしい……ということだ。
「今回は済まなかったな、無理を言ってついて来て貰って」
そうして花を採取しながら、ベネディクトはそんなことを言う。
「折角の機会だったからな、君は余りこう言った行為は好きでなかったかも知れんが……俺にとっては、こんな思い出でも作って大切にしていきたいんだ」
言われて、静李は僅かに動きを止める。
「……イルナークの事件を経て、思うよ。結局、永久の別れは突然来る。理不尽も行動の如何を問わず襲ってくる。何が間違いなのか、今の私には分からない。けれど……こんな誰も死なない程度の話であれば付き合ってもいいとは、思う」
そうか、とだけベネディクトは答える。
覇竜侵食。あの事件の影響は未だ大きく、しかし覇竜の大地に理不尽は常に存在している。だからこそ、少しでも前に進もうとする静李には今、それだけの言葉が適切であったのだ。
「ペイトの方々が涼しく過ごせるように花を分けてくださいね」
そしてジョシュアも、消熱の花は元気な物を選び、できるだけ傷付けないように自然知識を活用して鉢に植え替えていく。
取らせてもらったお礼代わりにギフトで作成済みのヴォアレの紫薬を残っている花へ撒いていく。
「消熱の花はたくさんいるんだろー? 全員で持ち運べるかな? 植木鉢は持てるだけ持ってきたし、持って帰ることはできるかもだが、重くなるしなー? 荷車も交代で引いて行かないとなー。あとは一つ一つ掘り起こして、植木鉢に植え直していくんだな。根っこを傷付けないように慎重にするぞ! えーっと、こうして、こう……綺麗に採れたぞー!」
熾煇の元気な声も響き、四も消熱の花をじっと見つめる。
「しかし消熱の花か……この世界にきてから色々なものを見て驚いたがこんなに便利な薬草があるんだな。つくづく不思議な世界だ。便利そうだからもし可能であれば花を一輪分けてもらえるよう帰ったら交渉してみるか」
まあ、これだけの数があればそれも可能だろう。大量の消熱の花を回収した四たちは、行きとは違う涼しさを感じながらペイトへの道を戻っていくのだった。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
私も消熱の花が欲しいです
GMコメント
フリアノン3人娘の1人、静李からの依頼です。
亜竜集落ペイトから少し離れた場所にある地下洞窟に行き、バーンフラワーを排除しましょう。
消熱の花は色々なことに使えるので、そっと掘り起こして植木鉢に植え変えて持って帰りましょう。
それなりの数必要ですが、全部取らないように注意しましょうね。
今回静李は皆さんを見送る方針のようですが、頼めばついてきてくれるかもしれません。
●バーンフラワー×40
真っ赤な花型モンスター。消熱の花々の間に陣取っているので、まずは引き寄せる必要があるでしょう。
一応静李が調べた限りでは、何か冷たいものを好むようです。
おびき寄せる事に成功すれば、根っこのような足を軽快に動かし移動します。
単体としてはタフではなく脆いようですが、攻撃力はそれなりにあります。
花弁から火を放つ「バーンフレイム」を使用します。
●静李
覇竜領域デザストルに存在する亜竜集落ウェスタで生まれ育った少女。青き鱗の己等を『水竜の一族』と称しています。
基本的に物静かで、一歩引いたところから全てを見遣るスタンスを貫こうとしているようです。
今回皆さんに仕事を頼んだのは「同胞に頼まれたので仕方なく」といった理由であるようです。
何処ぞの酒職人がいれば静李が苦労せずに済んだのですがあの爺様、必要な時にいなかったりするんだ。
●情報精度
このシナリオの情報精度はAです。
指定されたルートを通る限り、行きに関しては想定外の事態は絶対に起こりません。
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