シナリオ詳細
とある飲食店の接客業 ~シレンツィオ・リゾートへの出店~
オープニング
――急募、飲食店接客係。
シレンツィオ・リゾートでの立ち上げメンバーを募集。
今流行りのリゾート地、フェデリア島で働いてみませんか?
初日は忙しいことを予想されています。
ですので、即戦力を募集しています!
あなたのスキルを活かしてみませんか!?
●求む! その道のプロ!
幻想のローレットに、急な求人依頼の張り紙が貼られた。
それを見たイレギュラーズは『何処かで似たような依頼を見たなぁ』と思ったり、思わなかったりした。
そして同時期に、同じ求人依頼はフェデリア島のローレット支部にも貼られていた。
「と言うわけでね、ちょっと行ってきて欲しいんだよね」
接客業の手伝いだが、報酬は通常のモンスター退治並に出るのだという。安全で、それなのに報酬はいい。悪い話ではないでしょう? と劉・雨泽(p3n000218)が楽しげな表情で小首を傾げた。
「店名は『みるきぃ♡きゃっと』。可愛い名前のお店だよね。飲食業だよ。幻想に店舗があって……行ったことがある人もいるのかな? なかなか盛況している店でね。幻想に店舗を増やそうか……と思っていたところで、それならシレンツィオ・リゾートで新規顧客ゲットの方がよくない? ってなったみたい」
その店はある特殊な営業形態――所謂メイドカフェとしてその筋の人たちからかなり人気のある店である。
制服のバリエーションは様々。和・洋・中、それぞれのメイドのスタンスに合わせたデザインになっており、スカート丈それぞれ違う。コンセプトが統一されていない……と思う人もいるかも知れないが、統一されているのは別の要素。
其れ即ち、『猫』!
猫耳ヘアバンドとエプロンのリボン下から生えている尻尾――そう、猫耳メイド喫茶なのであーーーる! ……因みに、猫耳と尻尾もそれぞれ色や柄が違うらしく、常連さんたちの好きポイントでもあるようだ。
「僕はいかないのか、って? 僕はプロじゃないからなぁ……客としてなら冷やかしにいけるけど、力になれないんだ。ごめんね」
言葉には申し訳無さが滲んでいるが、言葉ほど悪びれた様子が無いのは常に浮かべている笑みのせいだろうか。いや、こいつ、面白がっていやがる……!
「あ、そうだ。プロの猫耳メイドの知り合いがいたら声を掛けてくれると嬉しいな。とにかく即戦力がほしいみたいだから」
よろしくねと両手を合わせた雨泽は「君たちの猫耳メイド姿、楽しみだなぁ」とのんびりとアイスクリームが載った空色のフラッペを口にするのだった。
――プロの猫耳メイド、とは一体……。
- とある飲食店の接客業 ~シレンツィオ・リゾートへの出店~完了
- GM名壱花
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2022年08月01日 22時15分
- 参加人数10/10人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 10 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(10人)
リプレイ
●プロ猫耳メイドにお任せあれにゃん♡
「それでは皆さん、よろしくお願いします!」
開店の10時よりも少し前。一通りの説明と身支度等の準備を終えてフロアに集まったスタッフたちの前に立った店長の根子田が、そう告げた。「はい!」と元気に返る声に「『はい』は『にゃん♪』にしましょうか」と思いつきを口にすれば、スタッフたちはすぐに明るく「にゃん♪」と応えてくれる。
数名の新人を除き、ここに集うのは『プロ猫耳メイド』たちばかりだ。接客にも臨機応変に当たれる自信がある。プロ猫耳メイドの矜持に溢れたしっかりとした面持ちで(一部恥ずかしさで目をぐるぐるさせている者もいるけれど)そこに立っていた。
(にゃ、にゃあぁぁ……。報酬の金額に釣られて来たのは良いもののこの歳でメイド服を着るのは恥ずかしいでござるにゃん……)
膝よりも上のスカートの裾をぎゅっと掴んで羞恥と戦う黒猫メイド『夜砕き』如月=紅牙=咲耶(p3p006128)は平然とした顔をしている同僚たちの姿を見て、きゅっと唇を引き結ぶ。毒を食らわば皿まで。店を手伝うと決めたからには猫メイド忍術を駆使して、店を盛り上げるのみ、だ。
スタッフのメイドたちは一人ずつ前に立って自己紹介をしていった。不慣れな新人メイドの三人が最初に挨拶し、ローレットから応募したプロ猫耳メイドたちが続く。
「お店と同じ名前のミルキィにゃん☆ お店を盛り上げるようにがんばるにゃん♪」
「この猫耳メイド『たまきち』が、新人にゃんこ達を実地教育で鍛え上げていくにゃん!」
「は……にゃん! よろしくお願いしますにゃん!」
「よろしくなの……にゃん、先輩」
「ミィも頑張るよ……にゃんっ」
流石プロの猫耳メイドたち。熟れた仕草でにゃん♪ とポーズを取った『甘夢インテンディトーレ』ミルキィ・クレム・シフォン(p3p006098)に続いて、今日は狸のタの字もないセクシーキャット『陰陽式』仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)が伊達眼鏡をクイッとした。頼り甲斐のある先輩たちの姿に、新人メイドたちの表情が少し柔らかくなった。
「おしゃべりは苦手であってもお茶と給仕はお任せください。勉強中ではありますがお茶を趣味としておりますゆえ、一芸を披露することで其れなりにはお役立ち出来るかと……にゃん」
しっとりと落ち着いた声に、新人メイドのミクが顔を上げる。黒翅の蝶をモチーフにしたリボンがチャームポイントのゴシック猫メイドの『Le Chasseur.』アッシュ・ウィンター・チャイルド(p3p007834)がスカートを摘んで黒い猫耳を揺らしていた。
「私もやれることとやれないことがあるし、ぶっちゃけ私も新人さんたちと一緒にいろいろ教えてもらった方がいい気がするわ!」
そんな先輩たちだっている。
車椅子だから助けてもらうことも多いかも、とクラシカルなメイド服に身を包んだ『黒靴のバレリーヌ』ヴィリス(p3p009671)が仮面の下の唇で弧を描けば、ミィが小さく笑った。
「そろそろ開店の時間です。皆さんお客様のお出迎えの準備を!」
張りのある店長の一声で、慌ただしい一日の幕が上がる。
ここは猫耳メイドカフェ。
お客様にひとときの安らぎと、夢を与える場所。
普段の自分がどうであれ、スタッフは猫耳と尻尾を着けてメイドを演じきるのが勤めだ。
「私はちゃろ子と申しますにゃん。ごきげんようにゃん」
「ちゃろ子ちゃんって言うんですね、可愛いです~」
「ありがとうございますにゃん。ご自宅と思って寛いでいってくださいにゃん」
メニューを手渡した『炎の守護者』チャロロ・コレシピ・アシタ(p3p000188)は、ひいらりと長いスカート揺らして次の客を出迎えにいく。銀色の尾と耳が朝の日差しをきらりと反射するのを、席に着いた客たちが目で追った。
「奥様、おかえりなさいませにゃん♡」
自前の耳と尻尾を、嬉しさを表すようにぴこっとゆらっと揺らして。妙齢の婦人を『少年猫又』杜里 ちぐさ(p3p010035)が出迎えれば、「あら可愛いねこちゃん」と頬に手を当てた婦人が微笑む。
「今日はお天気が良いので、僕のお気に入りの日当たりのいい席でゆっくりしてほしいのにゃん」
丁寧に、けれども少し甘えるように。
短いスカートから覗く足と尾を嬉しげに弾ませ、席へと案内していく。
「お待たせいたしました、にゃん。旦那様。外はお暑かったでしょう……にゃん」
自然とにゃんをつけれる域に達したプロ猫耳メイドもいれば、そうではないメイドだっている。けれどそれが新鮮で良いのだと『解っている』顔で鷹揚に頷いた紳士が、『亜竜種給仕』萊 連理(p3p010469)に案内されて席へと着いた。
普段からクラシカルなメイド服に袖を通している連理の動きは流麗である。頭の上に角があるか猫耳があるかの違いと……あとはお屋敷(店のこと)での言葉遣いに気をつけさえすれば完璧な猫耳メイドであった。
「おかえりなさいませでござるにゃん、旦那様! 此方の席へどうぞでござるにゃん♡」
「忍猫メイド? 初めて見たなぁ」
「眼鏡の美猫さんもいて、いいお店ね。あたし、常連になっちゃうかも~」
「ありがとにゃん♪」
開店前から並んでいる客たちをゆっくりと一組ずつ通していけば、あっという間に席はいっぱいだ。それでも外にはまだ人がたくさん並んでいる。
「青空ソーダの昼と夜、温かい紅茶と……トロピカルジュースはマンゴーの、ですにゃん?」
注文を復唱した『超合金おねーさん』ガイアドニス(p3p010327)も、今日は猫耳メイドのおねーさん。大型種のメインクーンの設定で、ふわもこの尻尾を揺らして注文を取って回る。
「最初のオーダー分だけ、厨房に入ってもらってもいいかな」
「店長、でしたら拙者がお手伝いするでござるにゃん」
「おねーさんも割と何でもできちゃうから手伝うにゃん」
どうしても開店してすぐは、全ての席の飲み物の注文が殺到してしまう。助かるよと眉を下げた店長を助けるべく、ふたりは一時的に厨房に入った。
因みに紅茶のお湯は全てその都度厨房で沸かされる。紅茶を淹れるには汲みたてで空気を多く含んだ水が良く、沸騰しそうになった瞬間に火を止める必要があるからだ。お湯を沸かしている間も店長は忙しく厨房で立ち回る。ソーダの準備もせねばならない。色彩感覚も良いガイアドニスが率先してソーダを受け持ち、手順を完璧に覚えているガイアドニスに尋ねながら如月も可愛らしい色のソーダを作成した。空を模した美しいグラデーションに、自然と笑みが浮かぶ。きっとお客様も満足してくれるはずだ。
ホールにいるスタッフたちはその間にも、茶器を湯通しして温めたり、お客様からの追加注文を受けたり、話し相手にお呼ばれしたりと大忙し。更にそこにテーブルに運んでと飲み物が厨房から出てこれば――。
「え、と……昼ソーダが3番で夜ソーダが5番……? ぎゃ、逆だったかも?」
ミィがソーダを載せたトレーを手に、オロオロと右往左往。
そうしている間に足が滑ったのだろう。転びそうになったミィが「にゃっ」と声を上げるも、「落ち着くにゃん♪」とちゃんとミィを見ていたミルキィがサッと支えた。
ミィがありがとうと口にする前に、彼女が手にしていたトレーの上から『今を写す撮影者』浮舟 帳(p3p010344)がソーダをひとつ引き取って。
「急がなくても大丈夫にゃ。御主人様たちは優しいから待ってくれるにゃ」
「あ……ごめんなさい、ありがとうございます、にゃん」
「一箇所ずつで大丈夫にゃん。ソーダの色もあってるにゃ。覚えれて偉いのにゃ」
5番の方は持っていくねとキビキビと離れていく帳の背中が逞しい。
勿論客たちは、そんな猫耳メイドたちの姿も見逃さない。助け合う猫耳メイドたち、尊い……。先輩後輩があるの、尊い……。属性違い、尊い……。
頑張ろうねと、視線で、仕草で励まし合いながら接客をしていく仲間たちを横目に連理は店を出、店外で待機している客の様子を見に行く。
行列が人を呼ぶ、とはよく言ったものだ。人が列を成していれば何だろうと歩む人々が気にし、更に列が長くなっていく。
「旦那様、奥方様、よろしければ日陰に入ってお待ち下さいです。にゃん」
暖かな気候のリゾート地であることから待ち時間が多いと解っているせいか、人々の手には他店のテイクアウトの飲み物が握られている事が多いようだ。それぞれリゾート地を満喫するために対策をしているようだが、それでも給仕たるもの気遣いは忘れない。店内の混雑度合いを確認しながら連理は度々外へ出て、待機中の客へ檸檬の入った冷水をサービスして回った。
太陽はまだ、天辺にたどり着いていない。
長い一日となりそうだ。
「店長、ホットケーキ焼きますにゃん!」
「ああ、ミルキィくん。頼みます……!」
「ホットケーキはボクの得意メニューだにゃん! 任せろにゃん!」
「ロコモコ用のハンバーグのタネが尽きそうです。にゃん。ご用意しますね。にゃん」
「僕はオムライスの卵を担当するから、如月くんは氷を頼めるかな」
「心得たでござるにゃん!」
「盛り付けはおねーさんに任せるにゃ。可愛く盛り付けていくにゃ~」
昼近くになると、また一気に厨房が忙しくなる。コンロ周りではミルキィと店長が立ち回り、水回りで連理と如月が立ち回れば、厨房はぎゅうぎゅう。ホールからのカウンター越しにガイアドニスが盛りつけを手伝い、出来た端から他のスタッフたちが客の元へと届けていく。
客の入りが回転すれば、席の片付けやセッティング、レジにお見送り、そして下げた食器の清掃等、スタッフたちは常に忙しい。
「……にゃんっ」
テーブルの上の食器を急いで下げようとしたアッシュがお冷を零し、そこに足を滑らせた。バリンと上がった大きな音に、客やスタッフたちの視線が一気に集う。
「ふにゃっ! え、えっと、こういう時はどうすれば……」
「あ、あっ、ごめんなさいにゃ。打ち間違えてしまいましたにゃ……」
ミクが慌て、音に気を取られたミミが打ち間違えてもたつく。
外で待っている客もいるのに、帰ろうとしている客も待たせてしまってミミは涙目だ。
「お騒がせして申し訳ありません、御主人様方。大きな問題はありませんので、お寛ぎくださいにゃん」
「ごめんなさいにゃん……」
「大丈夫だよ。アッシュにゃんはクールなダウナー系に見えておっちょこちょいなのかな。怪我はない?」
膝にちりとりを載せたヴィリスが車椅子で近寄ると、ミクも慌てながらも「片付けないと!」とモップを手に近寄って。
近くの客が声を掛けるのに、しょんぼりと頭を下げていたアッシュは憂いを帯びた笑みを薄く佩いた。そんな表情も可愛いね。
「ミィ、どうしたにゃん?」
忙しくとも、しっかりと働くためには、十分な休憩は大切だ。休憩から戻ってきたスタッフと入れ替わりでバックヤードに入ったちぐさは、椅子に座って項垂れているミィを見つけた。
(そういえばミィ、忙しくていっぱい失敗しちゃっていたかも?)
忙しければ、誰だって失敗をする。負けないくらいアッシュも失敗していたけれど、客たちはそれを『おいしい』と思うことの方が多い。ここはそういう客たちが通う店なのだ。
けれどきっと、それが『おいしい』ということをミィはまだ知らないのだろう。だからちぐさはミィの隣に座り、それを教えてあげる。
失敗を恥ずかしがって顔を伏せるのではなく、いつだってお客様を見てご覧。怒る人だっているかも知れないけれど、殆どのお客様は優しいのだ。大丈夫だよって微笑ましげな顔をしてくれているはずだ。
「僕がフォローするから、可愛く『失敗しちゃったにゃーん><』くらいで大丈夫にゃん、そのキャラ売れるにゃん!」
「そうにゃ。そのキャラは売れるにゃん」
「にゃ……! たまきち先輩、いつからそこに!?」
ドア枠に背を預けた汰磨羈が眼鏡をクイッと上げ、意味ありげに微笑んでいる。話は聞かせてもらった、と言うやつだ。
「真の猫耳メイドは、欠点すら武器にするにゃん! ドジったら『ごめんだにゃん、ご主人様……』と潤んだ瞳で見上げ、保護欲を刺激すべし!」
これは客がどういう嗜好をしているかを見極めねばできないが、慣れれば御主にもできるはずだと汰磨羈はミィの肩へと手を置いた。
たとえばしゃべるのが苦手なら『ふにゃぁ……』と愛らしく鳴いて誤魔化すのも手であるし、レジ打ちが苦手なら『ご主人様、もう帰っちゃうにゃん?』『また来て欲しいにゃんっ』とレジ打ちの遅さを会話タイムに変換すればいい。
「ちょっとずつ上達して行くのも、お客様は嬉しいと思うにゃん♪」
休憩交代の時間だよと顔を出したミルキィも微笑んでアドバイス。最初は辿々しく初初しさをだし、通うごとに成長していく様を見られるのも客の中に様々な感情を巻き起こすことだろう。
「今から、私がその手本を見せてやるにゃん。そして学ぶにゃん。
御主等が立派な猫耳メイドになる為に、にゃん!」
着いてくるにゃんと自前の尾を振って汰磨羈が戦場(ホール)へと向かっていく。「にゃん!」と応えたミィの顔には先程までの不安はない。接客へと戻っていく彼女の背を見送って、ちぐさとミルキィは小さく笑いあった。
新人三人は、時間の経過とともに少しずつ仕事に慣れていっていた。
プロの猫耳メイドたちからすればまだまだな彼女たちだが、きっとそれも何日も続ければ『あの時の先輩の言葉はこういう意味だったんだ』等も理解し、きっと良い猫耳メイドとなることだろう。
「どうしましたかにゃん?」
「あ、あの、お客……いえ、旦那様がにゃんけんぽんを」
「でしたらちゃろ子がご説明しますにゃん」
上手ににゃんけんぽんの説明をできずに居たミクの姿を見つけたチャロロが、説明を変わる。
「グーが猫の手、チョキがおひげ、パーは猫耳に添えるのですにゃん」
動きも合わせて説明をし、それではとチャロロは手を握って猫の手をする。
にゃーんけーんぽん!
男性客は猫の手、チャロロはおひげ。
チャロロの負けだ。
「ちゃろ子の愛情ビームにゃん。にゃんにゃんにゃーん♡」
こうすれば大丈夫だよと、ミクへのウインクも忘れない。
「おいしくなぁ~れにゃん☆」
別の席では、汰磨羈がミィがべちゃっとケチャップを爆発させてしまったオムライスをお花柄にした。さり気なく胸を寄せてアピールし、目が合えばパチンと可愛らしくウインクをし、絵柄が気にならないくらいの愛嬌を振りまいて。
「大丈夫です。今日、この日の為にオムライスの特訓をしてまいりましたゆえ」
首から『わたしはお皿を割りました』と書かれたボードを下げたアッシュはキリリとケチャップを握りしめ、描くのは芸術的なねこちゃんだ。お皿はちょっと失敗したけれど、ねこちゃんへかける愛情は人一倍。
「おいしくなーれ、おいしくなーれ……」(量産されるケチャップねこちゃん)
「おいしくなぁれ、にゃん♡ にゃん♡ にゃん♡」
「にゃんにゃんにゃん……おいしくなーれ……」(黄色が見えないオムライス)
覗き込んだチャロロが楽しげににゃんにゃんしている横で、オムライスはケチャップの海へと沈んでしまった。赤いねこちゃんは……もうどこにもいない。
「あっ、わたしとしたことが……」
「いいよいいよぉ、愛情たっぷりでうれしいなぁ」
アッシュの反面教師っぷりを見てミクが気をつけようポイントを積み重ねていっているのは、決して本人には言えない内緒の話。
「へたっぴだけど……いいかにゃん?」
長い袖をひらりと振ったヴィリスはその袖の中に怪我を隠しているのだが、客は袖のせいでケチャップを掴みにくいのかなと勝手に勘違いをしてくれる。
実のところ、上手いか下手かは客には割とどちらでも良かったりするし、それをプロの猫耳メイドたちも理解している。可愛い猫耳メイドさんが愛情を込めて書いてくれたり、上手に描けなかったと困った表情をしてくれる方がうんと大事なのだ。
「愛情がいっぱいで嬉しいです。食べ終えたら、チェキとにゃんけんぽんもお願いできますか?」
「ええ、任せて欲しいにゃん」
「チェキですにゃん? 大丈夫ですにゃん♡」
「僕、今日の思い出に旦那様と写真撮りたいにゃん!」
閉店時間が近づくにつれ、スタッフたちにゆとりが生まれてきていた。それを見て彼女たちの邪魔にはならないと判断した客たちは声を掛け、またひとりで来店している客にはスタッフ側から積極的に声を掛けてまわった。
「旦那様、チェキのご要望ですかにゃ? 了解しましたのにゃ! もっと近づいて……あ! ミミも一緒に映るのにゃ!」
おいでおいでと帳がレジを終えて客を見送ったミミを手招いて、ふたりで客を挟んでのチェキ。それを何度か繰り返せば、ぎこちない笑みで映っていたミミも帳の笑顔が移ったかのように自然なものとなっていった。
忙しく動き回っていれば、あっという間に太陽は海を金色に染めて沈んでしまった。
疲れたぁとヘナヘナとしゃがみこむ新人三人に小さな笑みを向け、連理はカランとドアのベルを鳴らして店外の看板をCLOSEDに変えに行く。
「三人とも、良くやった。これで、御主等は立派な猫耳メイド――トップニャンの仲間入りだ」
明日からも頑張れと声を掛ける汰磨羈に返るのは、「にゃん!」という良い返事。まだまだ完璧とは言い難い子猫たちだが、開店初日という修羅場で揉まれたせいか、良い顔つきとなっている。
「今日は結構楽しかったわね! 機会があればまたやりたいにゃん♪」
「あー、恥ずかしかった。でもがんばったボクすごくがんばった!」
「えっ、先輩も恥ずかしかったのにゃん?」
「お疲れ様でしにゃーん! おねーさんは楽しかったにゃん!」
片付け作業をしながら帳が肩の力を抜けばミクが驚いた顔をし、ガイアドニスはニコニコ笑う。接客も、キレイな色のソーダやかき氷作りも、にゃんにゃん言うのだって楽しかった。またやりたいねと笑い合うスタッフには、店長が「明日もどうですか?」なんて声を掛けて。「みんなお疲れ様☆」とにっこりと明るく笑ったミルキィも楽しげだけれど、ちゃろ子ことチャロロは『何してたんだろ……」とどこか遠い目をしている。
口を動かしながらも、手を動かして。
今朝よりも、綺麗! を目指して、綺麗に後片付け。
明日もその先も、この『みるきぃ♡きゃっと』シレンツィオ・リゾート支店の営業は続いていくのだから。
「お疲れさまでございました。にゃん」
「お疲れさまでござるにゃ……ぬ、ぬぅ……」
連理は最後まで口調が馴染まなかったのに、逆に如月は言葉が抜けなくなって。
暫く身を隠すべきかと、如月は密かに悩むのだった。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
お疲れ様でしたにゃん♡
また人手が必要な時はよろしくお願いしますにゃん!
GMコメント
ごきげんよう、壱花ですにゃん。
今日は皆さんには接客のお仕事をしてもらいますにゃん。
猫耳メイド姿で働く皆さんが見たいにゃん。
●シナリオについて
猫耳メイド喫茶『みるきぃ♡きゃっと』がシレンツィオ・リゾートに新店舗を出しますので、凄腕猫耳メイドの皆さんにお手伝いをして頂きます。
制服は……既にお配りいたしましたね? どんな見た目だよ~の拘りがありましたらプレイングに記してください。(アイテムを装備する必要はありません)
「当店の店員は老いも若きも女性も男性もこの制服を着て頂きます」By店長
来店時のご挨拶は『おかえりなさいませにゃん、旦那様』です。お客様の年齢に合わせてお嬢様、奥様等変更ください。
厳しいルールですが、語尾は『にゃん』です。プロの猫耳メイドなら簡単ですね?
今回、悪いお客様は出てきません。
アイテム未所持でも、このシナリオに当選した時点であなたは『プロの猫耳メイド』です。プロの猫耳メイドしかお仕事受けれないので! プロとしての矜持を持ってお仕事に励んで下さい。
●1日の流れ
朝……10時開店。既に店の外には客が並んでいる。
開店と同時に満員。新人さんはぴえええんっとなっている。
オーダーミスが多発するかもしれない。
ドリンク系の注文が多い。
昼……客足途絶えず。ご飯系の注文が多いため厨房もてんやわんや。
店長が死にそうになっているので、救援求む。
(厨房は、店長含め4名くらいが動ける広さ)
忙しいけれど、タイミングをずらして休憩を取ろう!
夕……閉店まで客は途絶えない。
けれど指導をしていけば新人さんたちが少し慣れてくる。
夜……太陽が沈みきった頃に閉店! お疲れさまでした!
●メニュー
・食べ物系
ねこちゃんオムライス
きゃっとロコモコ
みるきぃホットケーキ
夏猫シェイブド・アイス(かき氷/種類色々)
・飲み物系
コーヒー、紅茶、ココア
トロピカルジュース(各種)
青空ソーダ(昼/夕/夜)(色が違います)
夏猫フラペチーノ(各種)
●サービス
『かきかきサービス』
お客様に料理を配膳時、オムライスにケチャップで、ホットケーキに蜂蜜で、猫の絵やハートを書くサービスです。ポーズを取って決め台詞を言っても喜ばれます。
『チェキ』
お客様と写真を撮ります。掛け声は「にゃんにゃんにゃん♡」です。
可愛いポーズで撮りましょう。
『にゃんけんぽん』
じゃんけんをします。お客様が勝つとメイドが愛情ビームを放ちます。
ぐー ……にゃんこのポーズです
ちょき……顔の前でお髭を作ります
ぱー ……頭の猫耳に添えてアピールします
●NPC
・『店長』根子田
みるきぃ♡きゃっとの店長。基本的に裏方。厨房を回しています。
・『店員』ミィ、ミク、ミミ
新人店員。ゆくゆくはこの店舗の主戦力にしたいとは店長の言。
猫耳メイドプロの皆様! ご指導ご鞭撻よろしくお願いします!
ミィ……おっちょこちょい
ミク……しゃべるのが苦手
ミミ……レジが苦手
・劉・雨泽(p3n000218)
メイド服未所持です。プロ猫耳メイドではありません。
呼ばれれば客として出てきます。
体を夏にして、正気はどこかへ置いてきて下さいにゃん!
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