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シナリオ詳細

お兄(姉)ちゃんどいてそいつ溶かせない!

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●甘やかされた分だけ
 ごつごつとした氷の中に閉じ込められた日光は、鈍い光を閉じ込めていた。墨をこぼしたように黒いヒビが、少しずつ、少しずつ広がっている。
 ついに氷の山が割れ、欠片が海へと注ぎ込んだ。高い波が飾りのついた船を揺らす。船員たちは笑いながら、酒瓶片手に落っこちた間抜けを引き上げてやっている。
 ヴィーザル地方、ノルダイン。
 長らく鉄帝とにらみ合ってきた民族だけあって、彼らは豪快なのであった。
 氷の塊は、白いしぶきを上げて滑り落ちて海に沈んでいった。いつか台地だった欠片は、水よりもはるかにゆっくりと押し流されていく。
 絶えず循環する川の流れ、途方もない自然のサイクルを象徴するようであり、ただ圧倒され、白い溜息をつくしかない。
 あの氷はきっと、世界をめぐるのだろう、と、狼を連れた男、ラグナル・アイデ (p3n000212)はぼーっとそれを見ている。
「おーい、どら息子。こっちの準備手伝えよ! 夏至祭りだぞ!」
『ウォーン!』
 そうだ、そうだと言わんばかりに狼も一緒に吠えたてる。
「なんだよ、今やろうと思ってたろ、はいはい今行くからさ」
『ウォーーーーン!』
「連中はまだ来ないって! 早いだろ! この時間は」
 連中……それは、せっかくだからと招待したイレギュラーズのことだ。
 港にやってきた商船が、ここでは採れない花を山のように積んで持ってくる。新しい風が澄んだ空気を運んでくる。吟遊詩人が朗々と物語を歌い上げている。
 ここも、ずいぶんにぎやかになった気がするな、とラグナルは思った。
 連合王国『ノーザンキングス』。よそ者を良しとしない連中であったが、イレギュラーズたちを頼り始めたことで、何かが変わりつつある。
 ……世界を閉ざすことはできない。
 否応なく拓かれていく。あの氷のように同じところにとどまっていることはできない。……。
『ホーーー…………』
「ぶわっ、冷て!」
 この季節には珍しい息吹が、一瞬だけ大地を撫でた。
「どうしたんだよ! ラグナル!」
 けたけたと笑う人々。髪に引っ付いた氷のつぶてをぬぐう。対抗して吠えようとする狼をなだめてラグナルは準備に戻ったのだった。
……奇妙な声に首をかしげながら。
『ホーーー……ブラザー……シスター……』

 割れた氷河の中。
 人里から離れた場所で閉じ込められていた“何か”は目覚めようとしていた。

●末っ子力ってなんだよ
 アイデの集落に向かう道はそれなりに複雑だが、今日ばかりは迷うことはないだろう。
 今日は夏至祭。
 不思議な形のポールが、そびえたつように立っている。
 一日中、沈まない太陽の下で、人々はたき火をたいて、その周りを一晩中踊り明かす。
 アイデの一族は真っ白な民族衣装をまとい、花を身に着けるのが伝統だ。それぞれの狼もまたそのような恰好をしている。
「おっ、クマまで仕留めたのかあ!」
「うちの犬っころどももまだ捨てたもんじゃないよ」
 いかつい男ですら白い服に花を……さすがに花冠はかぶらないが胸元に添えているくらいだ。ラグナルは「もういっそ笑いに来てくれ」と言っていた。
 あちこちに屋台が出ている。鼻をつくのはきっとニシンの酢漬けの特徴的な香りだ。ゆでたジャガイモをもぐもぐしつつ、あぶったソーセージを片手にしていると……ふいに。沈まないはずの空が暗く曇り始めた。
「なんだ、あれ……」
 巨大な山のような、いや、動いている。あれはまるで……雪だるまのような。
『ホーーー……オイラが一番だホーーー! 一番下がいちばんえらいんだホーーー!』
「……。いや、本当に何?」
 アイデの族長……ヘルニール・アイデが重苦しくそいつをにらみつけている。
 黙りこくるヘルニールの代わりにか、集落の中でも古株の老人が口を開いた。
「あれは、間違いない。アニアーネフロスト……!」
「は?」
「ノルダインの山に現れる。長子のみにしか倒せないという伝説のモンスターじゃ……!」
「え? 長子?」
「本来であれば、「おなかすいたの?」などといって適当に食べ物でも供えておけば害はなく溶け果てる。だがあれは……しかもあれは……ただのアニアーネフロストではない。おそらく10体を優に超す末っ子力を蓄えておる……!」
『構えー、構えホー』
「よくわかんないけど……戦えばいいんだろ?」
「馬鹿め。あれは通常の攻撃は効かんぞ」
「え? なんて? ああっ、今手持ちがない。ちょっと武器貸してくれ! 後で返すから!」
「どうでもいいが寝ぐせくらい直してから行け」
「ラグナル兄ちゃん、あいつ狂暴になってる!」
「ナンデ!? ナンデ!?」

GMコメント

夏至祭をね……アレエ!?
なんだろう、気が向いたら居合わせてください。
お兄さんお姉さんよろしくお願いします。

●目標
アニアーネキングフロストを撃退する

●状況
アイデの集落の一角です。お祭りが開かれています。
人通りは多めです。
夏至祭り……ということで白いワンピース的なお洋服と花冠を渡されています。

●アニアーネキングフロスト
「構えホーーー! 末っ子だホーーー!」
きょうだいフロストに甘やかされた結果爆誕したモンスターです。末っ子です。山のように巨大です。自分が一番だと思っているため、「兄・姉力」による攻撃しか効きません。
ある程度溶けたら満足してお山に帰ります。
場合によりアニアーネフロスト10体に以上に分裂します。

兄・姉力?
 わかんないけどこう、たぶんいっこしかないプリン譲ってくれたり寝癖を直してくれたりするんだと思う。あときっといいにおいがするんだ。わかんないけど。そういう背中を見て強くなった気がする。
 きっとたぶんきっと優しいと思うんですけどでも荷物持ちとかさせられるのもありですよね。

●NPC
ラグナル・アイデ (p3n000212)
「よっ! がんばれ兄さん! 姉さん!」
 アイデの狼使い。成人してるんだよ。
 今回はフロストに挑むと事態を悪化させてしまうばかりのようです。次男だから頑張れない。
 ただ、頼んだら何か持ってきたり用意してくれたりしてくれそうです。

狼ズ
 1回にたくさん生まれるから弟と妹のほうが多いんだなあこれが。とってこいができます。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

  • お兄(姉)ちゃんどいてそいつ溶かせない!完了
  • GM名布川
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2022年08月03日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

日向 葵(p3p000366)
紅眼のエースストライカー
リュカシス・ドーグドーグ・サリーシュガー(p3p000371)
無敵鉄板暴牛
ジルーシャ・グレイ(p3p002246)
ベルディグリの傍ら
フルール プリュニエ(p3p002501)
夢語る李花
エッダ・フロールリジ(p3p006270)
フロイライン・ファウスト
エステル(p3p007981)
チェレンチィ(p3p008318)
暗殺流儀
ルナ・ファ・ディール(p3p009526)
ヴァルハラより帰還す

リプレイ

●ナチュラルボーンブラザーシスター
(ここがヴィーザル地方はノルダイン、ノーザンキングス……)
『夜を斬る』チェレンチィ(p3p008318)の青い翼が、吹き抜けていく冷たい風を閉じ込める。
……今日は夏至祭であるという。
 白い花飾りが『夢語る李花』フルール プリュニエ(p3p002501)の頬を縁取っていた。美しい少女が、ふわりと白いワンピースを揺らして微笑む。美しい光景。
 だが……。
「ッホーー!」
 暴れる雪だるまがフンイキをぶち壊しにしているのであった。

「夏至祭りを楽しみにしてたのですけど? ワンピースに花冠、とても可愛らしくてこれで祭りを遊び回るのを楽しみにしてたのですけど?」
「いや、はは……似合ってますよお嬢さん」
「ラグナル様はこういった理不尽によく遭われている印象ですね」
 エステル(p3p007981)が、汚さないようにとそっと花冠を下ろした。どこかどきっとするようなしぐさだ。
「俺も一部族の生まれだしよ。くだらねぇ習わしやらがあるのも分かる。否定もしねぇ。『郷に入っては郷に従え』だ」
『探す月影』ルナ・ファ・ディール(p3p009526)はポンとラグナルの肩を叩いた。
「だがよ。お前に関わるとろくなことがねぇと思うんだがよ? なぁ、ラグナル」
「ピンチの時に必ず助けてくれるのがイレギュラーズの皆さんで……いや、すまん!」
「調子コキやがって……」
 ルナのたてがみはしっかりと花々で飾られ、白い衣服をまとっている。しっかりと相手の文化に敬意を払うのだ。こう見えて面倒見もよい。
 狼たちはそんなルナに尊敬のまなざしを送っていた。
「……アニアネーキングフロストって長いから、フロスト……フー君で良い? フー君……ふふ、可愛らしい響きだと思わない?」
「……これ、倒すんですか、倒せるんですか……?」
 チェレンチィは巨大な雪だるまを見上げていた。
「やーん、可愛い♪」
『月香るウィスタリア』ジルーシャ・グレイ(p3p002246)に、巨大なフロストが甘やかしてくれそうな気配を察して寄ってくる。
 そして『紅眼のエースストライカー』日向 葵(p3p000366)にオニイチャンオーラを感じて立ち止まった。
「祭りだって聞いてんのになーんかよく分かんねぇのが来たっスね」
「……えっ? ええと、アニアーネ……キングフロスト……?」
『DOSUKOI MASTER』リュカシス・ドーグドーグ・サリーシュガー(p3p000371)はびしっと構えた。
「わかった。アニアーネキングフロストを思いっきり可愛がれば良いんだよね」
「さすがは切り替えがはやいですね」
 と、エステル。
「はい。ボクは次男だけど今日はお兄ちゃんになりにきました!」
「! ニイサンホー!」
「良い匂いがするホー!」
「セーイセイセーイ」
『フロイライン・ファウスト』エッダ・フロールリジ(p3p006270)が突撃するフロストを素手で止める。
「おいおい長男長女ばかりが兄であり姉であるわけではないというのに何この扱い!! 真ん中にも人権をよこせよであります!!」

●お前が兄/姉になるんだよ!
「姉力の説得力補強の為にリアル妹を連れてきたでありますよ!!!」
 エッダはブリュンヒルデ――妹とガッシと肩を組んだ。
「アラ、こんにちは。髪の毛がそっくりね♪」
「ほのぼのするんじゃありませんわ。なんですのこの状況は」
「まあまあ……あとで何か奢ってやるから……それとも私の言う事が聞けないのか? ん?
お姉様の言う事は絶対だろう?」
 エッダがほっぺをつんつんとすると、ヒルデはふるふる震えている。
「ところで久しぶりに会ったんだからイイコイイコさせてくれてもいいんだぞヨーシヨシヨシ。そんなに顔を真っ赤にして怒るな、かわいいヒルデ」
「ホーッ! ずるいホーー!」

「長子にしか倒せないってどういう性質してんスか
いや、たしかにオレは日向家の長男っスけどー……」
「下のきょうだいがいるんですね」
 どんな子だろうかとフルールは想像を巡らせる。
「きょうだいに甘やかされてここまで大きくなったと、そういうことですか……」
 チェレンチィは事情を聞いて、やはりよくわからず首をかしげる。
「うーん、でも、末っ子ってどういうことでしょうか……? 末っ子は甘やかされるものでしょうけど、だからと言って好き勝手して良いわけではないと思うの」
 フルールのことばに、フロストたちは言葉に詰まる。もっともである。
「ボクはきょうだいは多分……いないですが、年下の面倒を見るということは経験がありますから、少しならお役に立てるかと……? ええと。この服装は夏至祭の伝統なんですよね?」
「あー、女の子っぽくてイヤだったら悪い!」
「ああ。いいえ……きょうだいの上の人なら、下の子たちのお手本となるようにその辺りしっかりするものでしょう?」
 チェレンチィはジルを見て花冠を身に着けると、ルナを手本にワンピースを羽織る。似合うぞ、というふうにルナは頷いた。
「ジルさん、花が似合うよなあ」
「私は姉であるかはっきりしてないのです」
 エステルはラグナルの狼を優しく触った。
「ところでラグナル様の群れではどの子が長子なのでしょう?」
「あ~、それはなあ。こいつとこいつと」
「ふふ。弟や妹がいるのって憧れだったのよね、アタシ」
 ジルーシャはうんうんと頷くと、めいっぱいに両手を広げる。
「さ、フロちゃん、アタシたちを本当のお兄さんお姉さんだと思って存分に甘えて頂戴な。
その代わり、はしゃぎすぎて夏至祭を滅茶苦茶にしちゃダメよ?
ラグナルたちが一生懸命準備してくれた、大切なお祭りなんだもの」
「ホー!」

「ラグナルさんも、このキングフロストさんよりはお兄さんでしょうし、頑張って頂きたいですねぇ」
 チェレンチィがラグナルを振り返る。
「あ、俺も?」
「ちょっと、他人事みたいな顔してるけれど、小さい子たちから見たらアンタだって充分「お兄ちゃん」じゃない」
「大丈夫ですよラグナル様。
集落においては年長者こそが兄、事実上は次男であれ、きっとあなたの攻撃も通用するはず……」
 ジルとエステルがラグナルを勇気づける。
 ラグナルはちらっとルナを見た。
「いうて俺ァ次男の身だ」
「マジかよ……!?」
「そうダヨ。『俺は応援役!』みたいなお顔をされているケレド、ラグナル様だってお兄ちゃんできるよ!」
 リュカシスのまっすぐな応援にたじろぐラグナル。
「アイデの小さなみなさんにとってはラグナル様だってお兄ちゃんデショ!
だから今日は新人兄のつもりで一緒にがんばろ! ネ!」
「ああまず、その寝癖を……フロストさんの見てない所で綺麗に直して頂きませんと。ほら、しゃがんで下さい」
「むっ、ボクたちをさしおいてッホー!」
「あらあら。ちがうのよ。その寝癖だって、皆のお世話に夢中で直す暇がなかったんでしょ?」
 と、ジルが目配せをしたもので、ラグナルは頷いておいた。
「ホラホラ、一緒に頑張るわよ!」
「ボディタッチは控えめにっスね
距離感近すぎても鬱陶しがられるかもしれないしな」
「! ナルホド! 参考になるネ」
 葵から兄をラーニングするリュカシスだった。

●下の子ムーブ
「はっ」
 エステルのルーンクレイモアが、増長して突撃してくるフロストを押しとどめる。
「……削れませんね。でも、とりあえず落ち着いてはいるようです。ただ、なんとなく攻撃が通用する気がしないのですね……」
 静かな竪琴の音色が響き渡った。
「うん、ありがと♪ ベルカ」
 狼たちがジルの前に花冠を落とす。風に舞い上がった花冠がフロストの頭にのっかった。
「とっても素敵よ、これでお揃いね♪」
「……ホ?」
「こんにちは、カワイイ末っ子サン」
 でかいフロストよりもさらに高く、リュカシスは太陽の翼をはばたかせていた。
「ええと、フロチャンって呼んでも良い?
ボクはリュカシス。よろしくね!」
「ッホーー! ぼくより高いホー」
「フロチャンのしてほしいこと、喜ぶことをめいっぱいやりたい。ね、ボクに教えてくれる?」
「……!」
 フロストは見る見るうちに溶け、分裂していくのだった。
「よーしよし! いい子ですね。大きくて立派なフロチャンですね
ボク達と一緒に遊びましょう!」

●兄力姉力
「あーまずは落ち着け、まず末っ子のアンタのどこが偉いか話してみな」
 葵は数匹を集めると、切り株に腰掛けて座るように促した。
「おはなしホー?」
「別に怒りはしねぇっスよ、ただ兄として何を思ってるか知りたいだけだ
話したくねぇならそれでもいいわ」
「オハナシするのに話さなくても、イイ?」
「兄弟間でも知られたくねぇ事の一つや二つはあってもいいんスよ
でも話したかったらいつでも言いな、オレはいつでもアンタの味方っスよ。
気にすんなって、下のワガママを聞くのも兄の役目っス」
 葵に相談しているフロストが葵の兄力に包まれ、どんどんじわじわ溶かされていった。

「オラア!」
「あっちとぜんぜんちがうホー!」
「失敬な!」
 一方でエッダは苛烈だった。
「大体でありますね、兄とか姉に夢見すぎでありますよ。
優しい思い出ばっかりなんてちゃんちゃらおかしいね。自分は10年前ほども兄にしこたまぶん殴られた記憶があるでありますからして。というわけでこれが自分の姉力であります!」
「うぉい!! いつのまに!?」
 エッダはばばんとラグナルを敷いて足を組んでいた。甘やかされるばかりが弟ではない。
 絶対的な権力を持つ存在、姉。
「これでこの群れの長が誰か分かったでありましょう。即ち姉。おっと狼共、ステイステイ。これは仕事であります。お前らにもあとで分け前やるから……」

「ホー……」
「おねーさん。おねーさんがいいの? ほら、これでおねーさんっぽくなったでしょう?」
 フルールは精霊たちに口づけるように微笑んだ。髪をはらうと、焔を纏い、冠はあざやかに燃えるように咲き誇る。
「ッホーー!?」
「フー君、皆を困らせちゃ駄目ですよ。「めっ(滅)」ってしちゃいますよ? 良い子だからわがまま言わないで? そうしたら、ほらぎゅーってしてあげますし、一緒にお寝んねしてあげますよー? だから、おねーさんと遊びましょうー?」
「燃え、燃えてるホ……」
「ちょっと怖いホ……」
「いや、おねーさんを信じるホ!」
 わあわあと寄り集まって溶けて小さくなりゆくフロスト。
「……でも、やっぱり弟とか妹って可愛いものよね……? うーん、なんか甘えられると弱いかも、私は」
 フルールはよしよし、と頭を撫でてやるのだった。

「アニアーネだかサラサーテだか知らないでありますが甘ったれた末っ子を叩きなおすのも兄、姉のつとめ!!」
 どーんと仁王立ちするエッダは逃げるフロストを捕まえる。
「とりあえず屋台のメシ買って来いよ。文句あるの? 自分あのイモをふかしたやつな」
「ヒーー! ぜんぜん甘やかしてくれないホー! ……ホ?」
「ああ? お金多いって?
ああー、数えるの面倒いでありますからお釣りはやるでありますよ」
「……?」
「……いいって、買って来いでありますよ、好きなの」
「!?!?!?」
 油断したところにぐっさりと突き刺さる、姉。フロストは思い切り小さくなっていた。
「はっ、ほんわか空間にしてしまった。
次はこうはいかないでありますよ」

●一緒に遊ぼう!
「とりあえず、とってこい、で遊びましょうか。ラグナル様、フリスビーをお願いします」
「OKとる方?」
「? 投げる側でお願いします」
 フリスビーをとってきた狼を、もふもふするエステルである。
「あ、それならやりたいホ! やりたいホー!」
 すっと引く狼たちに、エステルは頷いた。
(一歩引いて、我慢する力。きっと、これが兄・姉力……)

「何して遊びましょう? フー君は何がしたい? 何でも言って良いですからね」
 一方でフルールおねーさんにメロメロのフロストどもであった。
「あ、でも危険なことをしちゃいけません。フー君が大変なことになったら、おねーさん泣いちゃいますからね?」
 フルールは首をかしげて、ぴとりと人差し指を突きつける。
「ふふ、こうしてると本当の弟みたい。私に弟がいたらこんな感じだったのかしらね? なんだか可愛くなってきちゃった。本当に私の弟にしちゃおうかしら……?」

「相撲で勝負であります。力の差を見せつけて上の威厳を保つのでありますよ」
 エッダに向かって、おそるおそる突撃していくフロストたち。
「……うわーー、やられてしまったーー。
フロストは強いでありますねー。
安心した。お姉ちゃんがいなくなっても……きっと強く……生きてくれるよね……」
「お、オネーチャアアアアアン!」
 倒れるエッダを妹がすごい目で見つめている。
「大丈夫ですか?」
 エステルのミリアドハーモニクスで起き上がる。
「ああ、はいはい。ところでそろそろ用は済んだからラグナルのとこのワンコと遊んでいなさい」

「よし、次はかくれんぼだ! ボクお兄ちゃんだから鬼やるよ!」
「わー!」
 いつの間にか、村人を巻き込んでかくれんぼとなった。
 おしりがはみ出したフロストのそばを、リュカシスが過ぎ去っていく。
「あれ〜? フロチャンいないなあ」
「ずるいずるいー--!」

 すっかり遊び疲れたフロストを待ち構え、受け入れるのは葵である。
「ん? お、身だしなみが少しだらしねぇぞ
しょうがねぇな、少しじっとしてろ
昨日はどこで遊んできたんスか? どこに行こうが自由っスけど、あんま心配かけさせんなよ」
 そういって身だしなみを整えてくれる、隙のない兄力。
「ホラ出来たぞ、少しは自分で何とか出来るようにしろよな?
今は末っ子でも、いずれは次男? 次女? になる時もあるかもしれん
その時は今みたいに自分は偉いなんて言ってらんなくなるっスよ」

●レッツお祭り
「いつもは食べ物を供えるとのことですが、折角お祭りに来たんです。キングフロストさんの食べたいものを用意してあげましょう。屋台、沢山出ていますし」
「そうよね。ここまで一人で来たんでしょう? 偉いわね、何か食べたいものはない?
アタシのオススメはね、えーっと…ねえラグナル、さっき食べたあのお料理ってまだ残ってるかしら?」
「ああ、ジル。まだ……たぶん!」
「どれがいいですか? 一緒に行きましょう。ああ、順番ですからちゃんと並んで! そうです、偉い偉い」
「……チェレンチィはどうしてそっちに並ぶホ?」
「そっちも欲しいと言われたら分けてあげるのが兄(姉)でしょう」
「ホーーッ!」
「そうだ、アイスでも食うか? 棒が二つ付いて半分に割れるやつちょうど貰ってきたんスよ……っと」
 葵が割ったアイスは不均一に割れる。あっ、とフロストが息を飲む。
「あ……これはやっちまったな……」
 そして、当たり前のように差し出すのだ。大きいほうを。
「ホラ、大きい方やるよ オレは小さい方で十分っスよ
あーハイハイ順番順番、みんなにも分けてやっからちょい待ちな!
ほんっと世話に焼ける奴らっスよまったく」
「ホーーーっ」

 長子らしさなんざ知るか。ルナは思う。思い浮かべるのは「群れの長」に求められる姿だった。
「雪だるまの相手は他の連中がやってんだろ」
「まあな」
 そろそろ、物資が足りない。
「おいラグナル。てめぇ、ちょっとツラかせや。どうせここにいたって使いもんにならねぇだろ。最初っからジルーシャやらに任せる気まんまんみてぇだしな」
「……というと?」
「どうせなら次男同士、長子連中の鼻でもあかしに行こうじゃねぇか」

「群れのために獲物をとってくる。そいつぁちったぁ上の者らしいんじゃねぇか?」
 ルナはラグナルを狩りに誘った。
「……いや、でも」
「ちったぁ背伸びしていい獲物捕まえてこようぜ、ラグナル”にーちゃん”よ?」
「……よし。俺はやるぞ! 負け犬なんてごめんだ」
「おらーとっとととってこいであります! 足りないでありますよ!」
「……」
 まあ、手を動かすだけ進捗だろう。
 ルナの読み通り、狩りは部族のならいなのだ。これならできる。血抜きも問題がない。
「一気に運べないな。狼に……二往復して」
「お前の群れは狼だけか?」
「……! よーし、村の連中を頼るか」
 ルナは静かにうなずいた。
(全部てめぇでやらねぇでもいいさ。他の奴を動かす。そいつも長の手腕って奴だ。いらねぇ肉屑を狼連中に与えるのだってそうさ)

●おなかいっぱい!
「はい、あーん。フロチャンは食べられるかな?」
「あったかーいホー」
 リュカシスにあーんされてにこにこしているフロストに、ジルは頷いた。
「もう満足?
ふふーん、甘いわよフロちゃん
末っ子には絶対に味わえない特権を教えてあげるわ
それはねーーこんな風に下の子を可愛がれる喜びよ!」
 ジルは、渾身のドヤ顔でフロストを抱きしめる。
「ホ~~~~~!」
「これぞとどめの兄(オネエ)力
アタシたちの愛で溶けちゃいなさい!」

 腹いっぱい、甘やかしいっぱいを浴びて、夕暮れに溶けていくフロストたちは満足そうだった。
「……アレ、フロチャンなんだかちっちゃくなってきた?
もしかしてもうそろそろお時間ですか?お別れするのが寂しくなってきちゃった……」
「フー君……もう一緒にはいられないの? 寂しいです。もっとおねーさんと一緒にいましょ?今度はここだけじゃなくて、他の場所にも遊びにいきましょ? そしてあなたもお友達をたくさん作って欲しいの」
 フルールは目を閉じる。
「だから、私のモノになって? あなたがもし精霊に生まれ変わるなら、きっと私のところに来て? うんと甘やかしてあげる。他の精霊もあなたを末っ子って思ってきっと甘やかすわ。おいで」
「ホ……」
 数匹のフロストが立ち止まり、フルールを見た。
「……いくホー! 悔いはないホー!」
 フロストがぎゅっとだきついて雪に溶けて消えていった。
「涼しくなってきたらまた遊ぼうね……」
 リュカシスは小さく手を振る。
「はー疲れた。
肩揉むでありますよラグナル様」
「あ、俺が揉む側……いや、はい。ありがとうございました」
 エッダを見てラグナルは決意した。万一にも姉が出来たら逆らわない。
「似合いますよ」
 エステルが花冠をかぶせると、ストレルカが嬉しそうに尻尾を振る。
「去年のように、ぐしゃぐしゃにしてはいけませんよ?」
「はー、沢山動いたからお腹すいたわね
あったかいもの食べに行きましょ♪」
 ジルが仲間を振り返る。夏至祭りはこれからだ。

成否

成功

MVP

エッダ・フロールリジ(p3p006270)
フロイライン・ファウスト

状態異常

なし

あとがき

おなかいっぱいです!! ありがとうございます!!

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