陽月after's＠ドールメーカーと彩の森

オープニング

●ドールメーカー
「やあ、いらっしゃい。アトリエへようこそ。といっても……まだ開店できる状態じゃあないんだけどね」
　モノクルをポケットへとしまい、痩せ型の男性が優しげな目をして笑った。
　白い髪にエプロン。傍らに抱くビスクドール。
　赤い煉瓦の工房には、いくつものドールやそのパーツが並んでいた。
　思い出を刺激する風景に、『春の約束』イーハトーヴ・アーケイディアン（p3p006934）はゆっくりと瞬きをする。
「その子は……『メアリ』だったね。約束通り、その子の服を作らせて貰うよ」
　彼はファルカウに暮らすドールメーカー。名を、アーマン・ケストナーという。

　ファルカウが茨の呪いに包まれた事件が明けて、こんにちのファルカウはやっと平和を取り戻した。
　といってもフェニックスに焼かれた森や邪妖精に持ち去られた道具や、闇の眷属たちに奪われたものなどファルカウに残る傷跡は多い。
　これはそんな傷を癒やすためのおはなしであり……ある意味では再会の物語だ。

　アーマンの工房はファルカウ上層にあり、彼の作るドールには『愛らしき魔法』が使われ有事には魔法の武器にもなるということから、ハーモニアたちの家にお守りとして飾られることが多いという。
「それでも、眠りの呪いにはどうしようもなかったんだけどね」
　苦笑していうアーマンは、自らの入れた紅茶のカップをソーサーへと置いた。
　テーブルにはイーハトーヴ、そして『拵え鋼』リュカシス・ドーグドーグ・サリーシュガー（p3p000371）、『ifを願えば』古木・文（p3p001262）。
　一見共通点のなさそうに見える三人だが、ROOではぬいぐるみのように可愛らしい三人組として仲良く一緒に戦ったりしたものだ。
「なににせよ、助かってよかったよ。ね？」
　カップに手を添え、文はリュカシスに話をふった。
　ビスケットをさくさく食べていたリュカシスがこくこくと首を縦に振る。
　その様子に微笑むアーマンの優しげな目元は、どこかROOで知り合ったコウという人物に似ている。世界からして全くの別人なのに、ふしぎな偶然もあるものだ。そしてきっと、『ふしぎ』だからこそ素敵なのだ。
「けど、工房にあった道具はともかく、素材やなにかは一通り持ち出されちゃってね。すぐにでも服をつくってあげたいところなんだけど……まずは素材を採取するところからやらなきゃいけなくなったんだ」
　顔を見合わせるリュカシスたち。
「お礼をする立場からすると申し訳ないんだけれど、ローレットに素材採取の依頼をさせてもらえないかな。報酬は、勿論支払うよ」

●色彩の精霊
　ファルカウの中には森がある。なかでも『彩の森』と呼ばれるところには色とりどりの花や葉っぱが広がっていて、とても鮮やかな風景があるという。
　そこに暮らす蝶の形をした精霊。それが『プリズミック』という色彩の精霊だ。
　光と水の混合精霊で、これを倒すことでドールの重要な素材となる『精霊の塗料』が手に入るのだ。
「精霊さんを、殺しちゃうんですか？」
　心配そうに尋ねるリュカシスに、アーマンは笑って首を横に振った。
「大丈夫。この精霊は死んだりしないよ。シャボン玉みたいに弾けてきえて、塗料の入った小瓶をその場に落としてくれるんだ。一週間くらいすると、また元通りにその場にふわふわと飛んでいるはずだよ」
　アーマンはそれを『塗料を分けて貰うためのゲーム』と表現していた。
「精霊はペイント弾のようなものを沢山うってくる。浴びすぎると気分が悪くなってしまうから、それだけは気をつけてね。ぬいぐるみやドールに癒されるのも、この状態には効果的だよ」
　そこまで言うと、アーマンは前金としてコインのはいった袋を出してきた。
「これが終わったら、皆にもドールを作ってあげる。リクエストがあったら後で僕に言ってね。なにせ、こうして工房を再開できるのが嬉しいんだ」

参加者 : 8 人

冒険が終了しました！　リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧（8人）

リプレイ

●楽しい時間は続いていく
「こういう優しいお仕事って久しぶりだなあ」
　小鳥のさえずりが、木漏れ日の間を抜けて行く。
「ね、イーさん文さん」
　振り返って両手を伸ばす『DOSUKOI MASTER』リュカシス・ドーグドーグ・サリーシュガー（p3p000371）。
　『ifを願えば』古木・文（p3p001262）はおっとりと笑い、どこか涼しくすら感じる風に前髪を揺らした。
「本当だね。今回の件では如何なる事かと思ったけれど、アーマンさんたちが無事で本当に良かった。今日はめいっぱい楽しむつもりだよ」
「うん！　それに、とっても腕が鳴りますね。やるぞー！」
　うおーといって走って行くリュカシス。
　文はその後ろを歩きながら、横をゆく『春の約束』イーハトーヴ・アーケイディアン（p3p006934）へと目をやった。
「アーマンさん。これから、沢山仲良くなれるといいね」
「……うん」
　考えていることがわかったからだろう、イーハトーヴはえへへと照れたように笑った。
「それにしても、深緑には素敵なふしぎがいっぱいだね」
　語りかけているのは、おそらくオフィーリアに向けてのものだろう。
　依頼を受けて戦いに行くというのに、まるでピクニックにでも行くような様子だ。
　実際、誰かが死んでしまったり奪われてしまったりする依頼じゃない。ゲームをして塗料をわけてもらう依頼だ。
「深緑を覆っていた災いは遠くに去り、いつもの日常が戻って来た……そんな感じがするね。
　それに噂に名高いアーマン様のドール。末の妹へのいいお土産になりそうだ。
　素敵なお人形のためにもこの勝負、頑張らないとね！」
「妹？　ああ……」
　『導きの戦乙女』ブレンダ・スカーレット・アレクサンデル（p3p008017）はウィリアムと似た容姿をしたハーモニア女性をおぼろげに思い出していた。
　このファルカウの大樹を守るための、壮絶な戦いのなかでの記憶だ。
　失ったものがないと言えば嘘になる。だが、得たものも確かにあったのだ。今回受けた依頼は、そんなものの一つと言えるだろう。
「最近は、剣を抜くとすぐに命がかかったからな。まるでバカンスにきた気分だ」
「バカンスかあ……うーん、たしかにそうかも」
　『星月を掬うひと』フラーゴラ・トラモント（p3p008825）は顎に指を当て、ぼんやりとした表情をした。
「お人形さんたちのために、ゲームを目一杯楽しむ……だもんね。ちょっと、ファルカウでやってきたことと違って気持ちが新鮮かも」
「うむうむ……」
　『蛇蠱の傍』葛籠 檻（p3p009493）は腕を組み、どこか感慨深げに頷いた。
「今日はふあふあにもふもふにかわいらしさで癒やされが有ると聞いて来た。得に今月はリュカシス殿たちとは縁があるし……」
「縁とは、時としてこういう巡り合わせもおきるものだ」
　『61分目の針』ルブラット・メルクライン（p3p009557）は『わかるぞ』と小刻みに頷いた。すぐ横には白い木馬が不思議な力でたかたかと歩いていて、背には荷物が載せられている。運用の仕方がロバやラクダっぽいが、今日はそれで問題無い。塗料で手荷物が汚れてしまわないようにと、預ける先を作っただけのことだ。
「確かに私一人であったなら、このような依頼は受けなかったかもしれないね」
　随分と仲良くなったイーハトーヴや文たちの横顔をちらりと見て、ルブラットは仮面の下でくすくすと笑い声をあげた。
「さて、今日は……楽しむとしよう」

●彩の森
　ファルカウの中に存在する森。大樹の中に森があるというのはなんともスケールの巨大な話だが、そうした事実を一旦忘れてしまうくらいには、その森は不思議な色合いをしていた。
　赤、青、ピンクに緑。まるで子供がクレヨンで勝手気ままに塗り分けたような色合いを、その森はしていた。近くに寄ってみれば、紅葉のはっぱがピンク色をしていたり銀杏の木が青かったりと、異なるのは色だけらしいことがわかる。色合いもなんだか落ち着いていて、あたたかな絵本の中に入ったかのような気分になってくる。
「これが、光の精霊――『プリズミック』のいたずらってことなのかな」
　ウィリアムは赤い落ち葉を拾いあげ、それをしげしげと観察した。
「木の健康状態もいい。どうやら、森も嫌がってないみたいだね」
「そんなことまでわかるのか……」
　ブレンダが感心したように見回すと、木々の色合いがゆっくりと移り変わっていくのがわかった。
　何かの気配がある。まわりに、いくつも。というより……この森全体に広がっているように感じる。
　ブレンダはエネミーサーチをアクティブ状態にしてみたが、敵意は何も感じない。にも関わらず、ピッとブレンダの腕に何かの液体が弾けたような感触がはしった。
　見れば、二の腕の部分が蛍光ブルーに染まっている。
「なるほど。敵意がないのは厄介だな……」
　だが、これが暗殺やそれに類するものでないことは確かだと思えた。勿論、感情や気配を隠して暗殺を仕掛ける者もいる。ブレンダだって味方にそういうことができるヤツが何人もいるので流石にわかる。が、もしそうなら腕に色をつけただけで終わらせる意味がない。
　より如実に。これは相手からのメッセージだとうけとるべきだろう。
　続いて、何発かのペイントが浴びせられる。
「こっちだよ、安全地帯は確保してある」
　フラーゴラの案内に従って、ブレンダ達はサッと大きな木の洞の中へと逃げ込んだ。
　追撃はこないようで、こちらが出て行くのを待ってくれているようだ。
　一方でフラーゴラはゴラぐるみを顔に当ててなんだかほっこりしている。
「ルールは大体わかったよ。ペイントだらけになってぐんにょりしちゃわないように避けたり隠れたりしながら、相手が抱いてくるアバターを攻撃するっていうゲームだね」
「じっさい、そもそもとして割りといま気分がぐんにょり気味なのだ。小生、これ以上ぐんにょりしたくないぞ……」
　檻が口元に手を当てた。なんでも、愛を込めて叫ぶと口かららぶ♡ふぁいあが漏れるらしい。うわさのゴラぐるみで癒される様を想像したのだろうか。
「フラーゴラのぬいぐるみって、冬の王もお気に入りって噂の、あの……！？」
「うん、そう」
　イーハトーヴはいいなあという目で見ていると、リュカシスのあとに続いて『FLASH-DOSUKOI02』がころころ転がってやってきた。
　どうやらさっきのペイントをちょっとだけ浴びてしまったらしい。身体の一部が蛍光ピンクと蛍光グリーンに染まっている。
「あっ、フラッシュドスコイくんだ！　そっくり！」
　イーハトーヴが抱え上げると、リュカシスがだよねと笑った。
　ROOでマスコットキャラクターのようなアバターを使っていた二人は、よく一緒に冒険に出たりしたのだった。文の謎の金魚と一緒に。
「確かに、懐かしいね……」
　文はそう言いながら、鞄からウサギのぬいぐるみを取り出した。
　どうぞといって突き出してみる。
「僕の持ってきた癒やされグッズはこれかな。昔王様に貰ったやつだよ」
　イーハトーヴはそっと触らせてもらい、細かい縫い目と上質な布の感触に目を細めた。
「作りが丁寧！　流石王様がくれるだけのことはあるよね……」
「ぬいぐるみのエキスパートが言うなら間違いないね」
　微笑み合う文とイーハトーヴ。檻に至ってはそのやりとりだけでなんか口かららぶ♡ふぁいあが漏れそうになっているらしく、両手で口を押さえてほっこりした顔をしている。
　ルブラットはルブラットで似たような仕草をしていたが、口どころか仮面で顔事覆われているので本当に仕草だけのようだった。
　と、そこでルブラットは思い出したように懐からお菓子の箱を取り出した。
　苺ジャムの入ったマシュマロらしく、それを口に放り込んではうっとりしている。
　仮面の上からどう放り込んでいるのかわからないが、顎をあげてぼうっと虚空を見上げる様子になんとなくうっとり具合が伝わってくる。
　ウィリアムはそんな彼らのクッションを借りたりお菓子わけてもらったりごろごろしながら『天国……』とか呟いていたが、ひとしきり仲間達が回復したのを確認すると杖を手に取った。
「それじゃあ、リベンジといこうか」

　安全地帯から飛び出したウィリアムたち。
　それを待ってましたとばかりにプリズミックたちは空中に生み出した蛍光カラーのボールで狙い始めた。
「治癒フィールドを作るよ、その中から攻撃して！」
　ウィリアムは地面に杖を立てると魔方陣を展開。自らの周囲に淡い発光を起こすと、プリズミックたちのぶつけるカラーペイントがフッと消えていくのがわかった。
「非常に助かる」
　ルブラットはさきほどカラーまみれになった白衣が白くなっていくのを見てフウと安堵の息をついた。
「白衣が蛍光カラーにそまるなど洒落にならない」
　などと言いながら、どこからともなく複数のメスを取り出しヒュンとプリズミックたちへと投擲。
　檻はその隙に隠れていた味方の後ろから飛び出すと、大きく息を吸って目を瞑った。
　思い描く愛の形でむねを一杯にしてから……。
「らぶ♡かのん！」
　らぶ♡ふぁいあの攻撃版みたいなものをぶっ放した。
　着弾したプリズミック（既にメスが刺さってる）を中心に爆発が発生。
　フラーゴラは『今だよ！』と叫んでおニューのエアガンを構えた。おあつらえ向きと言うべきなのか、ごつごつした実銃みたいなエアガンをぱかんぱかんと撃ちまくるとプリズミックたちが赤いペイントにまみれていった。ふみゃあといって墜落していくプリズミック。
「ゲームというのならできるだけ楽しもうじゃないか」
　ブレンダはそろそろ攻め時だと察したのか、プリズミックたちへ突進。
　自らに注意を引きつけるようにヘイトを稼ぐと、大量に浴びせられるペイントボールでなんともいえないミックスカラーに染まっていった。結構な数を避けているはずだが、たまに必中モノが混じっているらしい。
「メアリ、なおしてあげて」
　イーハトーヴはビスクドールのメアリを操作するとブレンダについたペイントを布で拭き掃除する要領でぬぐってやった。
「お、おお……」
　ビスクドールに身体を拭かれる経験が特殊なのか、ブレンダがちょっと驚きの声をあげた。
　イーハトーヴはその間に文とリュカシスにアイコンタクト。
「まかせて」
　文は取り出した万年筆で空中にさらさらとサインを描くと力ある文字へと変え、プリズミックたちを冷たい風で吹き飛ばした。
　そして、扇をバッと広げてリュカシスへ合図を送った。
「未だよ、リュ君！」
「オフィーリアチャンに分けて貰った癒やしパワーで！」
　リュカシスはうおーと言いながらプリズミックへとジャンプ。腕に装着したごてごてした武器を思いっきり振り回し、プリズミックたちをなぎ払った。

●愛らしき魔法
　こうして、無事『精霊の塗料』を手に入れたリュカシスたち。
　彼らはアーマンのアトリエへと戻ってきていた。
「やあ、おかえり。その様子だと……上手くいったみたいだね」
　赤い煉瓦の一軒家。扉を開いてこちらを出迎えたアーマンは、優しげな目をして微笑んだ。

　さて、今回のお仕事は塗料を手に入れて終わりではない。というより、オマケの報酬が待っているのだ。
「ほう……これは、なかなか」
　後日のこと。ブレンダはできあがったビスクドールを前にワントーン高い声で唸った。
　椅子に座るようにして置かれたビスクドールは長い灰色の髪に薄紫の瞳をしたクラシカルスタイルのメイド服の人形だった。
　ビスクドール特有の造形と着色があるのだが、不思議とブレンダはそれが『本物』と重なって見えた。
「この人形の姿は、私のあこがれなんだ。大切な人に似せようと……な」
「うん。そんな気はしたよ。オーダーを聞いたときに憧憬を感じたから」
　アーマンはそんなふうに言って、持ち運び用のケースを差し出した。
「……別のドールも欲しいのだが、作ってはもらえるだろうか？」
「勿論。ここからは有料だけれどね」
　などといって笑うアーマン。
　その一方で、フラーゴラはできあがったドールを抱っこして『わああ』と声をあげていた。
　ゆるくウェーブのかかった金の髪。ピンクのロリータドレスを纏ったそれは、女の子の夢を形にしたようなドールだった。
「ふふふワタシの宝物また増えるなあ。ワタシのお人形さん、ワタシのお友達にご挨拶してねえ」
　語りかけるフラーゴラ。
　まるで生きているような、ほんのりとした頬の赤らみに、見ていた檻はなるほどと頷いた。
「信仰には器がいる。小生には『見えている』が――単なる自己満足であるにしても小生以外のものにも、見える形として残したい。そう考えたが……」
　偶像という言葉があって、その真なる意味は檻が述べたそのままをさす。
　鴉の濡れ羽の長い髪に、金の瞳の女性。表情がないはずなのに、なぜだか優しく微笑んでいるようにすら見える。
　着せた古風な巫女服は檻がオーダーしたデザインそのままだ。
「ありがたい！　これこそ、小生の瞳に映る“かのじょ”の姿であるな！」
「素晴らしい技術だ。ドールを作るだけでなく、オーナーの心の内まで形にしようとは」
　ルブラットは感心したように三人のドールを眺めていた。彼はドールと作って貰う代わりに、イーハトーヴに自分の好きなぬいぐるみを作って貰う約束をしていたらしい。なんともいえない可愛さのあるヒルのぬいぐるみだそうだが……。
「愛着は人によって違うんだ。形も、対象も、その質もね。それに寄り添うことが、『愛らしき魔法』の根幹だと……僕は思うんだ」
「ふむ……」
　見れば、イーハトーヴのメアリが新しいドレスを纏っていた。
　これまでの淡く優しい色合いから一転して、うんとカラフルで派手なドレスだ。
「プリズミックと遊んだ日の思い出が、一杯残ってるね。リュカシスは？」
「ボクはこれ！　姉にあげたくて……」
　リュカシスが抱きかかえていたのはお菓子の国から来たようなふわふわピコピコしたドールだった。どこかとろんとした表情といいスーツバイキングに並びそうな服装といい、姉の趣味をきっちり踏襲している。リュカシスが擬音だけで伝えたにもかかわらず。
「リュカシスのお姉さんにも会ってみたくなったなあ」
　なんていいながら、イーハトーヴはあらためてリュカシスの顔をみた。
　まだちゃんと言えてなかったね、と微笑み。
「――ただいま、俺のマブダチくん！」
「……！　おかえりなさい！　待ってたよ」
　えへへと笑いあう二人。
　文はそんな様子を眺め、ふと自分に作って貰ったドールを見た。
　金髪の、どこか優しい表情を感じるドールだ。
　『妹にあげたいんだ』と伝え、多少妹についての換装を述べただけなのだが……ウィリアムには幼い頃の妹の面影がドールに感じられるのが分かった。見ていると肩の力が抜けるというか、飾らなくてようなるような、そんな気持ちにさせられる。
「不思議だよね。まるで自分のためだけにあるような……そんな気がしてくるんだ」
　文はドールを腕に抱き、その涼しげな表情を見つめていた。
　淡い色合いと、小さな体型を裏切るような大人びた雰囲気。文ははるかむかしに見た思春期の光景が、おぼろげにフラッシュバックするようだった。

「今日はありがとう。また来てね」
　アーマンはそう言うと、ドールを迎えた彼らに手を振って見送った。

成否

成功

ＭＶＰ

なし

状態異常

なし

あとがき

　――mission complete