シナリオ詳細
夏は滝行と彼女は言った
オープニング
●滝を占拠するモノ
覇竜の夏は、基本的に暑い。
ウェスタみたいな水と縁深いところは違うとしても、フリアノン近辺はとても暑い。
幸いにもフリアノンは水不足とは無縁で、そういう問題は発生しない。
だからこそ「関係ない水場」は、色んなものに使える素敵スポットでもある。
たとえばこの場所にある滝もそうだ。
ドウドウと音を立てて流れ落ちる大きな滝と、その隣にある細い滝。
その足元に溜まる泉は思うよりも水深は浅く、比較的簡単に滝まで辿り着くことが出来る。
滝の真下にある岩は滝の風情に一役買っているが……どうにも、この泉から「下」へと水が流れているのだろう。
一体どこへ流れていくのかは分からないが、そうやって覇竜の大地を潤す一因になっているのだろうか。
見れば見る程癒される光景だが……どうやら、今日はそんな滝にちょっとした「客」が来ているようだ。
「むむう……」
その客を見つめる1人の少女は、不満そうにそれを見つめていた。
そう、少女の視線の先。そこには水を思う存分浴びているワイバーンたちの姿があった。
ただ単に休んでいるだけなら順番待ちすればいいだけだから構わない。
それはある意味で覇竜のマナーだ。
しかしながらどうにも営巣の気配があるとなると黙ってはいられない。
「あそこはボクが修行に使ってるのに……」
そう、独り占めはよくない。それもまた、覇竜のルールであるからだ。
●滝を取り戻せ!
「と、いうわけでボクと一緒に滝を取り戻しに行ってほしいんだ!」
【鉄心竜】黒鉄・奏音 (p3n000248)の依頼は、実にシンプルかつ夏らしいものだ。
現場は、岩壁に囲まれた空間で、狭い入口から入っていくとぽっかりと開けた空間と滝の流れ落ちる泉が存在している。
その立地故にこれまでモンスターに目をつけられずにいたのだが、ワイバーンのような空飛ぶモンスターであれば当然見つけてしまう。
ただ単に水浴びであれば「よくあること」ではあるのだが……アダマンアント事件の影響か、どうにも良い場所とみて営巣する気配があるのだという。
そんなことをされてしまっては危なくて近づけない危険区域になってしまう。
ワイバーンの気持ちも分からないではないが、此処は一発かまして営巣はご遠慮願うしかない……というわけだ。
「ボクだけじゃなくて付近の人がたまに休憩にも使ってるしね。ある程度の安全は確保しておきたいんだ」
覇竜において亜竜種が安全に休めるポイントというのは、然程多くない。
この滝のある空間のような「ある程度ならまあ安全」といったポイントも非常に貴重だ。
だからこそ、ワイバーンにも是非一時的利用に留めて貰わなければならない。
「ちなみに夏の修行にも最適でね! レベルに合わせた滝行が出来るんだよ!」
大きな滝、中くらいの滝、そして小さな滝。
滝に打たれて精神修養など時代遅れとは言うなかれ。
そこで得られる何かだって、きっとあるはずなのだ。
- 夏は滝行と彼女は言った完了
- GM名天野ハザマ
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2022年07月18日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●いざ、滝行の地へ
「今日は滝行とそこへ向かうまでの脅威の排除です! ワイバーンがいるとの事なので、それの撃退らしいですね。滝を利用する人々のためにも、なによりこの後ボクたちが利用するためにも、しっかり依頼をこなしましょう!」
『ゆめうさぎ』冬兎 スク(p3p010042)が叫べば、『チャンスを活かして』シューヴェルト・シェヴァリエ(p3p008387)も「ふむ」と頷く。
「ワイバーンが滝を占拠しているのか……たしかにこの時期となると涼しいほうが住みやすいのは確かかもしれない。だが、僕たちもその場所に用があるんだ。悪いがその場所は使わせてもらおうか」
「ぶはははッ! 修行場が使えねぇのは問題だわなぁ! ま、ここはいっちょ御退去願いますかね!」
シューヴェルトと『黒豚系オーク』ゴリョウ・クートン(p3p002081)の、そんな声が響く。
【鉄心竜】黒鉄・奏音 (p3n000248)が修行にも使っている滝。それを取り戻すのが今回の依頼だが、『残秋』冬越 弾正(p3p007105)などは滝行にかなり乗り気のようだ。
「滝行といえば、異世界のNINJYAやSAMURAIにおいては修行の鉄板! 一度やってみたいと思っていたんだ。通常の鍛錬メニューも少し飽きてきたからな」
「しかし……厳しい土地だからこそ、こういったオアシスは取り合いになるのでしょうね。弱肉強食の世界であるならば、我々の力を見せつけてやりましょう」
綾辻・愛奈(p3p010320)は言いながら荷物……主に食材を運んでいた。
(何だかバーベキューもやりたいみたいなお話がありましたし。私は他人に食べさせられるほど料理上手ではないので……道中の荷物持ちは【運搬性能】の見せ所です)
そんなことを言ってはいるが、仲間達はそんな愛奈に感謝をしている。運搬あってこその外での食事。その大事さを分からない者などいないからだ。
「滝行……濡れるのやだな。服脱ぐのも嫌だから、レインは大人しくしてたい。ワイバーンを追っ払うのは全然やるけど……尻尾斬ったら、諦めてくれないかな?」
一方の優雨(p3p010426)は滝行には乗り気ではないが、バーベキューがあるので問題ないだろう。
修行は無理やりやるものでもない。
「ワイバーンを……追い払えば、いいんだよね? 早めに、追い払って……ばーべきゅー、したい。ご飯、食べたい……」
『紲家』紲・桜夜(p3p010454)もバーベキューには興味津々のようであり、発案者はまさに大金星だろう。
「覇竜の地の夏の空気には慣れていますが……背筋を汗が伝うのは、暑さよりも緊張のせいでしょうか。皆さんの足を引っ張らないように、わたしはわたしにできることを、一生懸命頑張ろうと思います」
そんなことを呟く『特異運命座標』佐倉・望乃(p3p010720)だが……そんな望乃は道中でも警戒は怠らずに、周囲を見回しつつ進んでいた。
それは望乃自身が言うように緊張故、だろうが……「皆さんとお話ししたり周囲の景色を見ているうちに落ち着くかもしれません」との自己申告通り、段々と落ち着きつつもあった。
「と、どうやら見えてきたようだな」
シューヴェルトの言葉に全員が注視すれば、そこには営巣の為の材料を運んできているワイバーンの姿がある。
「では打ち合わせ通り、ボクが先陣を切りますね。いきます……!」
雪兎を引き抜いたスクが一気に距離を詰めスーパーノヴァを放てば、2体のワイバーンは驚愕に目を見開きながらも迎撃の態勢に入る。
「くらえ、ワイバーン! 蒼脚!」
続けてリトルワイバーンに騎乗したシューヴェルトの貴族式格闘術『蒼脚』がワイバーンへと、向けて放たれる。
「これも仕事だ、悪く思うな……」
「よぉデカいの! 悪ぃがここは公共物なんでな! 占有はご遠慮いただこうか!」
更に続くは冬越弾正の飛燕天舞。更にはゴリョウの招惹誘導が発動し、ワイバーンの注意を引き付ける。
優雨の落首山茶花が繰り出され、ギターをかき鳴らす桜夜のアクセルビートが放たれる。
そうして戦っていくうちに、ワイバーンたちは割に合わないと判断したのだろうか。
高く舞い上がり、そこまま何処かに飛んでいってしまう。
そんなワイバーンたちを見送りながら、望乃は「深追いはしませんが、もう近付かないようにしっかり注意して釘を刺しておきましょう」と声をあげる。
「ここは過ごし易い場所かもしれませんが、営巣はダメですよ。今度会ったら、た、食べちゃいますからね。がおー!」
ちなみに桜夜やスクは「だって食べれるかもだから食べ物は多い方がいい」とか「滝での修行後でのバーベキューにワイバーンの尻尾とかいかがでしょう? そもそもワイバーンが食べられるかわからないですけど……」などと事前に呟いていたので、あながち間違ってはいなかったりする。
まあ、さておいて……弾正は、残された営巣用の材料などをじっと見ていた。
(悪く思うな…とは言ったものの、途中まで巣を作ってしまっているのだろう? そのまま壊してしまうのは忍びないな。導きの輝石で他の安全地帯が閃けるなら、巣を運んでいって、修理工具セットで修理し、使えるようにしておこう。ワイバーン達が気付くかは分からないが、彼らが落ち着ける場所が見つかる事を願うばかりだ)
あとでやっておこう、と頷く弾正だが、仲間達も喜んで手伝ってくれるだろう。その前にやるべきことは……滝行と、バーベキューである!
●滝行とバーベキュー
そうしてワイバーンの去った後の滝広場は、滝の影響か夏の暑さの中でも相当涼しい、そんな場所だった。
ドウドウと音を立てて流れ落ちる大きな滝と、その隣にある細い滝。
その足元に溜まる泉は思うよりも水深は浅く、比較的簡単に滝まで辿り着くことが出来る。
そして泉の周囲には先程ワイバーンもいた広場があり、周囲が岩壁のせいもあって涼しい空気が此処に留まることで一種の冷房効果をも生み出しているようだった。
たとえ水に入らずとも涼しさを体感できるという意味では、此処をワイバーンが狙うのも理解できる……といったところであるだろうか。
「滝行はオークらしく、できるだけデカい滝で打たれるとするぜ! タンクでもあるからな! ここで一つ精神の磨き直しと洒落込もうか!」
大きめの滝に打たれながらゴリョウがぶはははッと笑う。頑強なゴリョウの身体は此処に在る中で一番大きい身体でもビクともせず、かなりの良い修行になっているようだ。
まあ、大きめの滝はこの中では一番負荷がキツいので、選ぶ者は早々いないと思われた……のだが。
「俺が挑むのは無論、大きな滝だ! 獅子が子を谷底へ突き落すが如く、最初から限界以上の試練がなくばもののふとして覚醒はしまい。いざ!」
弾正もゴリョウの後を追うように果敢に大きな滝に挑んでいく。
しかし、当然ながら大きい滝は負荷もキツい。ドドドドド、と絶え間なく落ちてくる水は激しく、少なくとも初心者向きではない。
「あっ、これポーズ取るのも苦し、ぅおおおお負けるかぁ!! 経を唱える代わりに歌を歌いながら滝の中に立って激流を受けるべしだッ!」
何やら戦闘よりもキツそうな弾正だが、シューヴェルトもまた別の形での滝行をしていた。
そう、滝に打たれるのではなく滝を利用した剣術の特訓をしようと考えていたのだ。
貴族騎士流奥義『碧撃』で、抜刀術によって滝を一時的に横一文字に切り裂いたり、切り上げによって今度は縦に裂いたり、そういったことができるまで滝に向かって碧撃を撃ちまくろう……と、そんなことを考えていたのだが。
それなりの勢いを伴う滝相手に「そういうこと」をするのは、シューヴェルトが思う以上に腕に負荷がかかるものだ。
「くっ、これは……中々に凄いな……!」
そんなシューヴェルトを見ながら、スクも少しばかりウズウズしてしまう。
(そういえば確かに本とかだと滝を斬るようなものもありましたね。流石に周りに人がいるところでは危ないとは思っていましたが……この滝の広さなら確かに……!)
「噂を聞く限りでは滝に打たれる事で精神を鍛えるらしいですね。ボクとしては初めてなので……アレはちょっとですが……」
うおおおお、と滝に絶対負けない荒行をしているゴリョウや弾正を見ながら、スクは初心者向けの小さめの滝に打たれていた。
涼しいを超えて冷たい域の水ではあるが、そのせいか不思議と思考なクリアになっていくような感覚をスクは感じていた。
その隣には愛奈もいて、静かに滝に打たれている。どちらかというと瞑想……というか、考えたいことがありますから、大人しい感じの滝にしましょうか、というのは愛奈の言葉だが。
「古今様々な武芸者が精神修行の為に滝行を行った……とは、私の故郷ではよく創作されていましたね。まさかそんな機会が本当に巡ってくるとは。世の中奇妙なものですね」
確かに愛奈の言う通り、創作と滝は切っても切れない関係にあるといってもいいだろう。
理由までは分からないが、滝行によって得られる「何か」があると、そう強く信じられていたのかもしれない。
では愛奈は何を得ようと、あるいは何を悟ろうとしているのか?
(滝行の間思うこと。私は今後どう在りたいのでしょうか。深緑での一件。覇竜での一件。――少なくとも、この混沌に呼ばれるまでは想像も出来なかった出来事が、この半年の間に起こり続けた印象です。仮初とはいえ、里帰りも出来ましたし…これからは前を向かなければ。どうしたいのか。どう在りたいのか。少なくとも、一端のイレギュラーズとして、役には立ちたいですね……)
蟻帝種の事件にも関わった愛奈であったが故に、思うことも多いのだろう。深緑の事件も含めれば、思考を整理したいと思うのは当然だろう。どちらも大きな……とても大きな事件だった。
そういった思考の整理にはある意味、滝行もピッタリであるだろうし……近くでは桜夜も無心で滝行に挑んでいる。
そして望乃もまた、小さな滝で滝行に挑んでいた。
「滝で修行、と言うことは当然濡れますよね。ですが、わたしは用意周到ですので。なんと、実はお洋服の下に水着を着てきていたのです。えっへん」
滝行は初めてなので、小さな滝で頑張ろうと打たれていた望乃は先程の戦闘を思い出し、反省点や今後の目標を考えながら滝に打たれていたが……その努力はきっと、次に活かされるだろう。
そして滝行が終われば……今度はバーベキューだ。
すでにどこでも簡易キッチンの存在により機材の準備は整い、あとは調理班の腕の見せ所といったところだろうか。
しかしバーベキューは「此処から」が準備の本番なのだ。
「というわけで、バーベキューの準備だ!」
「ゴリョウ、手伝えることがあるなら僕がやるよ」
ゴリョウとシューヴェルトの声が響き、手際よく、仲間と一緒に準備し、下拵えし、焼いていく。
軽く材料を切って、泳いでいた魚を少し捕まえて下拵えも忘れない。
「肉は勿論、野菜や焼きおにぎりなんかも疲れた体と心には染みるだろう!」
バランスよく野菜をとるのも焼きおにぎりも、どちらも人気のメニューだ。
「ワイバーン戦で尻尾の一つでも切ることが出来てたなら、それも一緒に焼いたんだがな! ぶはははッ、自身の肉が焼かれる匂いとかワイバーンはここに来る気をなくすんじゃねぇか? そうすりゃ今後の営巣を防ぐことにも繋がるだろうよ! 誰だって「自分が食われるかもしれない」所には近づきたくねぇだろうしな!」
「まあ、ワイバーンの尻尾はないが……ゴリョウ殿に料理を任せるべくBBQ焼肉セットを持参したぞ。修行の後は腹ごしらえだが、川魚だけでなくやはり肉がなくては!」
弾正が肉屋のゴラ監修のお肉であり、ありとあらゆる焼けば美味しいお肉のセットを出せばちょっとした歓声も上がる。
料理自体はできないが荷物運びとか盛り付けはできるはず、と優雨も動き回り準備を手伝っていくが、そうした細かいサポートでバーベキューの準備も次々と整っていく。
「わたし、お野菜を色々持ってきましたので皆さんでどうぞ。おすすめは焼きとうもろこしですよ」
そうして望乃も野菜を提供し料理していけば……美味しいお肉と野菜たっぷりの、素敵なバーベキューが出来上がる。
「では……全ての命に感謝して、美味しく戴こう!」
弾正の声が響き、楽しいバーベキューが始まる。
それはきっと、素敵な夏の思い出になるだろう。美味しくも素晴らしい……そんな、一日だった。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
バーベキューは美味しいお肉があるか否かで決まりますよね!
GMコメント
ワイバーンを追い返して滝行しようぜ!
覇竜侵食事件も無事に終わり、奏音の修行も再開です。
今回のパートは「道中とワイバーンとの戦闘」「修行!」に分かれております。
それぞれ半分程度をデフォルトとして、重視したい方にプレイングを割り振ってください。(2022/07/11修正)
●今回の敵
・ワイバーン×2
空飛ぶ亜竜の代表格。飛行し炎のブレス(一点集中、拡散)を吐いてきます。
それなりに強いですが、ある程度のダメージを与えると逃げていきます。
お客様困ります、営巣はご遠慮ください!
ちなみに滝についてあんまり想像できない方は「白糸の滝」とかで検索するといいと思います。
●情報精度
このシナリオの情報精度はAです。
想定外の事態は絶対に起こりません。
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