PandoraPartyProject

シナリオ詳細

監獄島からの脱出。或いは、鉄仮面の囚人…。

完了

参加者 : 8 人

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オープニング

●監獄島
 海洋。
 大海原の真ん中にある小さな島が物語の舞台だ。
 通称“監獄島”。
 島の周囲は大海原。
 波は荒く、人食いの鮫がうようよと泳ぐ危険な海域。
 当然、島から泳ぎや小舟で、陸へと戻ることは叶わない。重犯罪者を閉じ込めておくには、絶好のロケーションというわけだ。
 切り立った崖に、建物の周囲を囲む高い石塀。
 その向こうには畑と小さな運動場。
 島の中央、小高い山に添うように2つの塔が建っている。
 片方が男性刑務所、もう片方が女性刑務所だ。
 そして、両塔を繋ぐのは看守塔と通路。
 1度入れば、2度と外には出られない。
 受刑者たちも、悪名高い重罪人ばかりだ。
「さて、皆さんにはその“監獄塔”に入ってもらうっす。罪状は適当にでっちあげたんで、次の護送船に乗って入所できるっすよ」
 そういってイフタフ・ヤー・シムシム(p3n000231)は、テーブル上に数枚の紙面を投げて広げる。それはすっかり手続きの済んだ、投獄のための書類である。
「かつて監獄島から生きて出られた罪人は、海洋のギャング、ボス・ルッチただ1人。皆さんへの依頼内容ですが、まぁ要するに脱獄っす……1人、連れ出してほしい囚人がいるんっすよ」
 顎の下で手を組んで、イフタフはそう口にした。

●仮面の囚人
「連れ出してほしいのは“仮面の囚人”と呼ばれている人物っす。男性なのか女性なのか、性別も不明……監獄島のどこに捕縛されているのかも不明」
 聞く話では、常に鉄の仮面を被った囚人であり、何の罪で囚われているのかさえ不明だという。
 監獄島にまつわる、ある種の都市伝説である。
 だが、イフタフが依頼として持ってきた以上、その囚人は存在するのだろう。
「看守たちの人数はごく少数っす。囚人の数も、監獄として考えるのなら少ないっすね。いるのは重犯罪者ばかりっすから」
 囚人は男女合わせて40名。
 看守は全部で20人ほど。
 【重圧】【封印】の魔術を使う看守長・ジェイルロックを筆頭に、【ブレイク】【呪縛】【足止】【懊悩】効果の付いた武器を持つ看守たちが常に囚人を見張っている。
「そんな状況なんで、鉄仮面の囚人を探すにはこっちも囚人として入るのが手っ取り早いんっすよ。武器とか装備品は持ち込めるよう細工してあげるんで、上手い事やってほしいっす」
「……島の外は海なんだろ? どうやって囚人を連れ帰る?」
 誰かが問うた。
 イフタフはにぃと口元を歪めて、写真を1枚テーブルに放る。
「作戦決行日、島の外に船を寄せるっす。それに乗って脱出するのでもいいし、護送船を奪うのでもいいっすよ。泳いで逃げるのは無理っすからね」
 それから、とイフタフは数名の名前をあげる。
 “豪放磊落”のバルバリア。
 “赤の大隊”カピターン。
 同じく“赤の大隊”レフナント。
 いずれも、最近監獄島に収監された罪人たちだ。
「バルバリアとカピターンは男性、レフナントは女性っす。囚人たちの間でも一目置かれる存在らしいっすからね。もしかしたら“仮面の囚人”について何か知っているかもしれないっす」
 彼らから話を聞くのも1つの手だろう。
 もっとも、その場合は脱獄計画が他の囚人に知られる危険性も伴う。
「監獄内部での行動は皆さんにお任せするっす。それじゃ、一時の囚人生活を楽しんでくださいっす」

GMコメント

●ミッション
“仮面の囚人”を脱獄させること

●ターゲット
・仮面の囚人×1
鉄仮面を被った囚人。
性別、素性、罪状のすべてが不明。
なぜ、監獄島に囚われているのかは誰も知らない。
また、ほとんどの者が仮面の囚人を見たことが無い。
この人物を監獄島外へ脱出させることが、依頼達成の条件となる。

・看守長・ジェイルロック×1
看守長。
普段は男性塔と女性塔の間にある、看守塔に控えている。
範囲内の敵に【重圧】【封印】を付与する魔術を行使する。

・看守×20
職務に忠実な看守たち。
【ブレイク】【呪縛】【足止】【懊悩】を付与する警棒やテイザー銃を所持している。
監獄島内のいたるところに配置されている。

●フィールド
海洋。
海の真ん中にある“監獄島”。
周囲は海。
島を囲むように石塀がある。出入口は1つだけ。出入口の向こうには護送船が停泊している。
石塀の向こうには畑と運動場。
島中央にある小高い山に添うように2つの塔が建っている。
それぞれ、男性刑務所、女性刑務所。
両塔の間には看守塔と通路がある。
堀を超えて海まで着けば、島の外へ脱出できる。

●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

●注意事項
この依頼は『悪属性依頼』です。
成功した場合、『海洋』における名声がマイナスされます。
又、失敗した場合の名声値の減少は0となります。

  • 監獄島からの脱出。或いは、鉄仮面の囚人…。完了
  • GM名病み月
  • 種別通常(悪)
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2022年07月16日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)
愛娘
極楽院 ことほぎ(p3p002087)
悪しき魔女
如月=紅牙=咲耶(p3p006128)
夜砕き
ピリム・リオト・エーディ(p3p007348)
復讐者
蛇蛇 双弥(p3p008441)
医神の双蛇
マリカ・ハウ(p3p009233)
冥府への導き手
イズマ・トーティス(p3p009471)
青き鋼の音色
ヴィリス(p3p009671)
黒靴のバレリーヌ

リプレイ

●監獄の島
 海洋。
 大海原の真ん中にある小さな島に、名も素性も性別さえも不明な囚人がいるという。
「私みたいに仮面をしている囚人さんを他に知らないかしら?」
 時刻は昼過ぎ。
 監獄塔の女性房にて、『黒靴のバレリーヌ』ヴィリス(p3p009671)は1人の女囚に声をかけた。
 運動場の片隅で、つまらなそうな顔をしている女囚……レフナントは、ヴィリスを見上げて首を傾げる。
「仮面の囚人? 噂程度だが聞いたことはある。聞いたことがあるというだけで、居場所なんて知らないけどな」
 そう言って、レフナントは視線を右へ。
 看守を相手に話しかけている『指名手配犯・屍踊』マリカ・ハウ(p3p009233)の姿があった。どうやら、看守の注意をヴィリスとレフナントから逸らそうとしているらしい。
「ええ、そうよ。これはマリカちゃんからのとびっきりのサプライズ☆ トリック・アンド・トリート!」
 嗤う亡霊を指さして、マリカはくすくすと笑んでいるのだ。
 数人の看守が、亡霊を追い払おうと警棒を振っているのだが、それを為すには暫く時間がかかるだろう。
「人に聞かれたくない話か? 件の囚人を見つけてどうする?」
「まぁ、なんだ。ちょいと用事があってな……連れ出そうと思ってんのよ」
 レフナントの疑問に答えを返したのは、長身の女性……悪辣とした笑みを浮かべた『悪しき魔女』極楽院 ことほぎ(p3p002087)だ。
 看守の死角に身を隠し、煙管を咥えて視線を燻らす。
「っ……煙草か」
 厳重な警戒態勢を敷かれた監獄塔に私物を持ち込んでいるのだ。
 通常の手順を踏まずに収監されたか、私物を持ち込む術を持っていることは明白だ。
 声を潜めてレフナントは問うた。
「連れ出して、どこへ向かう? 逃げる手段にあてはあるのか?」
「あぁ、まぁ……あれだ。詳しいことはまだ言えねぇが。なぁ、幻想に逃げてデカいことしねェ?」
 そう言ってことほぎは、煙管の吸い口をレフナントへと差し向けた。

 夜。
 ところ変わって、男性房の作業場。
 2人の男が鼠を追ってやってきた。
「よぉ、夕食を抜いて来てやったぞ」
「くだらん用事ならすぐにでも帰らせてもらう」
 最初に声をあげた粗野な男がバルバリア。
 後に話した男性はカピターン。
 それぞれ、海洋国家で罪を犯して収監された罪人だ。
「脱獄のチャンスがあると言えば、話を聞いてもらえる、か?」
 2人の視線を真正面から受け止めて『金色の首領』エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)がそう言った。
 見た目は幼い少女のようだ。
 しかし、囚人服を着ている辺り、エクスマリアも罪人なのだろう。バルバリアとカピターンは顔を見合わせ、首を傾げる。
「逃げるのはここにいる面子だけか?」
「カタギには見えないが、こんなところにぶち込まれるような性質でも無さそうだが?」
 視線の先には、壁際に佇む『医神の双蛇』蛇蛇 双弥(p3p008441)の姿がある。
 2人の視線に気づいた双弥は慌てて口元に狂暴な笑みを貼り付ける。
「俺も人の子だし他所様に言えねえことは重ねてきたつもりだけど、まさか捕まっちまうなんてなァ……ヘヘ、人生長いしそんな事もあらァな!」
「……妙な演技は通用しないだろう。まぁ、訳ありだと思ってくれればいいよ」
 溜め息を零して『青き鋼の音色』イズマ・トーティス(p3p009471)が双弥を止める。
「近々、逃げ出す計画がある。あぁ、ここで一生を終えるなんてつまらないだろうが……脱獄計画。乗る気はないか?」
 そう言ってイズマは、1歩、立ち位置を右へとずらした。
 イズマの背後には、壁に立てかけた細剣がある。
「武器を持ち込めているのか」
「ってもなぁ、俺らは素手だろ? 下手な博打を打ってここにぶち込まれてるんだ。今度ぁ、勝ちの目がねぇ賭けはしたくねぇんだが」
 バルバリアの不信ももっともだ。
 元より彼らは罪人である。例えば、弾避けとして使い捨てられる可能性などを考慮すれば、いかに魅力的な提案であったとしても軽々に乗るわけにはいかないのだろう。
「ほう、不思議ですねー。罪人とは己の欲望の果ての姿でしょーに……欲には素直になった方が幸せですよー?」
 間延びした声。
 床に寝そべる白い女の声だろう。
「私と共に来れば欲の続きを味わえるかと思いますが、どうです?」
 じぃ、と2人の脚を見ながら『A級賞金首・地這』ピリム・リオト・エーディ(p3p007348)が“話に乗れ”と背中を押した。
「……貴様はなぜ床に寝そべっている? というか……女囚だろう?」
 カピターンの疑問も当然。
 しかし、ピリムの言葉も至極順当なものだ。
「計画を聞かせろ。俺たちは何をすればいい?」

 数日後。
 深夜0時を過ぎたころ。
 看守塔の一角に、黒衣の女が立っていた。
「鍵は良し。人の気配も無し。地下独房の入り口は……あぁ、ここでござるな」
 数度、壁を手の甲で叩き『夜砕き』如月=紅牙=咲耶(p3p006128)は動きを止めた。壁に隠された秘密の入り口……開けば音がするだろう。場合によっては、警報音が鳴るかも知れない。
「今日のところは様子見でござるし……さて」
 するり、と壁を透過して。
 咲耶は地下独房へと降りていく。

●地下独房の仮面の囚人
「そいつを見たのは1度きりだ。房の点検だとかで他の牢屋へ移されるところだったかな? 男か女かも分かんねぇが、枯れ木みたいに痩せた身体は真っ白でよ。ありゃ長いこと陽の光を浴びてねぇ風だったな」
 以上が、バルバリアの証言だった。
「さて、ここまで来たら準備は万全。ここからはお宝を頂いて脱出といたそう」
 月が雲に隠れたことを確認し、咲耶はそう呟いた。

「今日はやたらと鳥やら鼠を見かけるな」
 窓の外へ視線を向けて、夜警の看守はそう言った。
 もう1人の看守へ向けた言葉である。
 けれど、相棒からの返答はない。
「おい、まさか寝ているんじゃないだ……あ?」
 振り返った看守の視界を、赤い飛沫が遮った。
 白い肌を血に濡らし、刀を手にだらんと佇む長身痩躯の女の姿。
 その足元には、首を落とされた相棒が転がっている。
「善人だろーが悪人だろーが良き脚を腐らせておくのは勿体ねーことですー」
 血飛沫を全身に浴びながら、ピリムは低く身体を倒す。
 地を這うような姿勢のままに床を蹴って急加速。
「必ずや救い出し、いつか私が狩りに行けるよーに世に放たねば」
 振り抜かれた2本の刀を、看守は咄嗟に警棒を構え受け止めた。
 ギシ、と腕の骨が軋む。
 ピリムが看守を抑える間に、黒衣の女が看守塔へと繋がる扉を開け放つ。
「だ、脱獄だ! 起きろ、起きろ!」
 看守の声が監獄塔に響いた直後。
 ガチャン、と。
 各所で、牢の扉が開け放たれた。

 看守の撃ったテーザー銃が、囚人の胸に突き刺さる。
 囚人が短い悲鳴をあげて、肉の焦げる臭いが漂う。
「っ……俺様みてェな蛇野郎をこんな狭いとこ押し込めて、手前ェら明日のお天道様拝めると思ってんじゃねぇぞオラァ!」
 囚人たちを鼓舞しつつ、双弥が先陣を切って駆け出す。
 身を屈めてテーザー銃の狙撃を回避。
 手前の1人に近づくと、その腹へと掌打を叩き込む。
「うぉっ!?」
「い……ってぇ!?」
 横合いから振り下ろされた警棒が双弥の頭を殴打するのと、掌打を受けた看守が後ろへ吹き飛ばされるのは同時。
 結果としては痛み分けだが、双弥の突撃に鼓舞されたのか囚人たちは僅かに勢いを取り戻した。
「大人しく捕まってたまるか! 叩き潰せ!」
 イズマが走る。
 囚人たちを引き連れて。
 細剣を腰の位置に構えて、滑るような急加速。
 周囲に漂う魔力の光が、看守たちの注意を引いた。警棒を構える看守が1人、テーザー銃のトリガーを引いた看守が2人。
「おら! 足を止めんじゃねぇ!」
「房を出たら正面入り口を目指せ! 制御室を制圧しろ!」
 イズマに次いでバルバリアとカピターンが突撃を開始。
 イズマの剣が警棒を断ち斬り、続く2人が看守たちの隊列を崩す。
今回の暴動は計画的に起こされたものだ。
 深夜遅く、男性房と女性房で同時に起きた騒動により看守たちの対応は後手に回っている。
 さらに囚人たちの後方で時おり飛び散る淡い燐光。
 空気を揺らす魔力の光が、傷を負った囚人たちを治療する。
「看守長・ジェイルロックも現れたなら、要注意だ、が……あぁ、女性房で足止めを喰らっているようだ、な」
 エクスマリアが言う通り、指揮官不在で看守たちの足並みは今一揃っていない。
 鼠の視界を通して様子を見る限り、看守長はマリカが抑えているようだ。
 となれば、今が絶好の脱獄のチャンスだと言える。
「さぁ、行け。一気呵成に、自由を掴め」
 金の髪を揺らがせながら、エクスマリアが通路を進む。

 とん、と軽い音が響いた。
 看守の頭上を跳び越えて、1人の女が庭へ飛び出す。
 ひゅん、とすぐさま身を伏せて、薙ぎ払われた警棒を回避。看守の背中へ、レフナントが体当たりを食らわせた。
 踏鞴を踏んで看守がよろける。
 その顎へ向け、ヴィリスが蹴りを叩き込む。
 サマーソルト。
 顎から脳へと突き抜けた衝撃が、看守の意識を奪い去る。
「さぁて……それじゃあ塀を目指しましょう。陽動も向こうがしてくれるみたいだしその騒ぎに乗じて脱走よ」
「あぁ。だが、何か目的があったんじゃないか?」
「あー、そりゃそうなんだけど、そっちはそっちで手を打ってるから」
 銀の髪を掻きあげて、ヴィリスがそっと視線を逸らした。
 それを見て、レフナントはため息を零す。
「つまり、私たちの役目は脱走……に見せかけた陽動か」

 看守同士が殴り合う。
 にぃ、と笑って紫煙を吹かす女が1人。いかにも悪辣な目をした女が、仲間割れする看守たちを睥睨していた。
「あいつだ! 魔女を捕まえろ! だが気をしっかり持て! あれは人心を惑わす悪女だぞ!」
 女の声が響き渡った。
 金の髪を短く刈った、凛とした女の看守である。
 彼女こそが看守長ジェイルロックだ。自身もマリカと相対しながら、指示を出すとはおそれいる。よほどに冷静な思考と広い視野を備えているのか。
 その声が耳に届くと同時に、看守たちが態勢を整える。崩れていた陣形を組みなおし、数人の囚人を警棒で殴って昏倒させた。
「あーあぁ、変に注目集めると動き難ぇな。いやぁ有名人は辛ェ!」
 呵々と笑ったことほぎは、紫煙を吹かして肩を竦めた。

 ジェイルロックの周辺を、魔力で造った枷が泳いだ。
「魔女を優先しなさない! 他の囚人は後回しでも……っぐ!」
 部下へ指示を出す声は、大鎌の一撃によって遮られる。
鎌を振るうのは、手足に枷を嵌められた少女である。
 マリカの頭部を警棒が打つ。
 割れた額から血が溢れ、マリカの顔を赤に濡らした。
 何度も殴打を浴びたのか、マリカの視線は定まらない。だが、戦意だけは傷を負って、なお失っていない。
「何をしている! さっさと無力化しないか!」
「何してるって? 見ればわかるでしょ? あなたは今まさに掬い上げたプディングをどうするのか迷ったりするのかしら?」
「貴様には聞いておらん!」
 怒鳴り返したジェイルロックが、マリカへ向けて枷を飛ばした。
「くすくす、不思議ね、おかしいわね、面白いわ♪」
 枷に腕を囚われながら、マリカは鎌を一閃させる。
 ジェイルロックの顔面に、深い裂傷が刻まれた。

 喧噪が遠い。
 地下独房の奥深く。重厚な鋼の扉を開けた先にその囚人は捕らわれていた。
 粗末なベッドに横たわる、骨と皮ばかりの白い体。
 黴と垢、糞尿の匂いが漂う中で身じろぎの1つさえもしない。ボロ布を纏った体付きからは、男女の区別さえもつかない。
「あー? 手足の腱、斬られてないですかー?」
 刀の先でピリムが囚人の体を突いた。
 仮面の囚人からは何の反応も返ってこない。聞こえるのは、微弱な鼓動と掠れた呼吸の音ばかり。
 咲耶は囚人に手を伸ばす。
 抱き上げた体は軽かった。
「持って数年……ここで死を待つよりはマシでござろうか」
 仮面の囚人を背負い、咲耶は牢を後にする。
「一気に外の石塀まで走り抜けていくでござるよ!」
 鍵も、壁も、咲耶の前では意味をなさない。

●大脱走
 紫煙が燻る。
 空気が揺らぐ。
 悪辣な魔女が哄笑した。
 ジェイルロックの脇腹を、黒い魔弾が撃ち抜いた。
 ことほぎの魔弾に射貫かれて、ジェイルロックの体が傾ぐ。
「卑劣な魔女がっ……! 横やりを」
 入れるな、と。
 言葉を発するより先に、マリカの鎌がジェイルロックの胸を裂く。零れた血が足元に血だまりを作った。忌々し気な視線をマリカへ向けながら、ジェイルロックは血だまりの中に倒れ伏す。
「知ってる?動く屍は永遠に踊り続けるのよ。キャハハハハハハハハっ!!」
 嗤うマリカが鎌を振り上げ。
 騒動の中、命を落とした看守や囚人たちの遺体が、血を吐きながら立ち上がる。

 監獄の正面扉が開け放たれる。
 雪崩のように溢れ出した囚人たちが、大挙して船へ押し寄せた。
 その先頭には、イズマや双弥、エクスマリアの姿がある。
 操舵室からそれを見て、ヴィリスは銀の髪を掻いた。
「あとは船に乗っておさらばだけど……仕方がなかったとは言え逃がした犯罪者とは長い付き合いになりそうだわ」
 塀を跳び越え、船へと乗り込み、操舵室を占拠した。
 看守たちと違い、船員は何の戦闘訓練も積んでいない者ばかり。ヴィリスとレフナントにかかれば、制圧は容易いことだった。
「もう1隻、遠くに停まっているな……本命はあちらか?」
 レフナントはそう呟いて。
 ヴィリスは無言で肩を竦めた。
 それが答えだ。

「仮面の囚人の正体、本人から明かされないだろう、か……?」
「てか、ずいぶんとズタボロだったんだろ? そんなになるまで放っておいたのか? 誰か奴に会いてえ奴がいたのかな?」
 船の甲板。
 鼠の視界を借り受けて、エクスマリアは仮面の囚人の姿を双弥とイズマへと伝えた。
 それを聞いて双弥が「はて?」と首を傾げる。
「逃げた囚人たちと同じなのかもな。ここで燻るくらいなら死ぬ気で戦った方がマシ。勝ち取るしかない、とか」
「数年程度の自由、と。日の当たる場所での終幕、か」
 ままならない、と。
 エクスマリアはため息を吐いた。

 イフタフの操る船の片隅で、ピリムが刀の刃を研いでいる。
「何をしているのでござるか?」
「んー? 言ったでしょー? 逃がした囚人たちを狩りに行くんですよー」
 咲耶の問いにピリムが答える。
 彼女の興味は、すでに仮面の囚人に無いようだ。
 ピクリとも動かぬ囚人を乗せて、船は静かに海を行く。
 約30名。
 この日、監獄島から逃げおおせた罪人の数だ。

成否

成功

MVP

如月=紅牙=咲耶(p3p006128)
夜砕き

状態異常

マリカ・ハウ(p3p009233)[重傷]
冥府への導き手

あとがき

お疲れ様です。
仮面の囚人の脱獄が達成されました。
また、それなりの数の罪人が海洋へ解き放たれました。
依頼は成功となります。

この度はご参加いただきありがとうございました。
縁があれば、また別の依頼でお会いしましょう。

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