シナリオ詳細
<光芒パルティーレ>群れの餌になる前に
オープニング
●いやもうね、めっちゃいるんですよね、イワシ。
未だに人の手が入っていないダガヌ海域。黒く分厚い雲に覆われ、いかにも嵐が来そうな予感がするにも関わらず、どこからやってきたのか男たちが数名、二隻の船に分かれて乗って海原へ漕ぎ出していた。
「こっちにな、なんかめっちゃイワシ獲れそうなところがあるんだよ」
「おい……本当に大丈夫かジェフ。時化て来てないか? これ」
「大丈夫、大丈夫! いやもうね、遠くから見ても、めっっっっちゃいるんだよイワシ。ベルンも見てみなよ」
「遠くから見てもめっちゃいるイワシってなんだよ……」
ベルンと呼ばれた男が呆れながら水面を覗き込むと、そこには黒い集団の影――イワシらしき魚の大群だった。あまりにも数が多く、気持ち悪くなり飛び退く。そんなベルンを見ながら、ジェフと呼ばれた男は笑う。
「はは! 何、お前。ビビってんの?」
「いやいやいや、これヤバいって!」
「んなことないだろ~。イワシだぞ? 飛んで襲いかかってくるわけじゃあるまいし……」
「う、うわあああああああ!!!」
遠くで仲間の叫び声が上がる。その声が上がる方を見ると、水面からイワシの大群が飛び出し襲っている。
――えっ、イワシって人を襲うのか?
それを目撃した二人は、一瞬頭の中が真っ白になる。
「に、逃げるぞ!!」
「おい、クロー! ティル! 助けを呼びに行くから、どうにか向こうの島まで耐えきってくれ!!」
襲われている船に乗っている男たちに向かって叫び、二人は逃げようと航路を変える。しかし――
「……っ!!」
彼らの前にも、イワシらしき魚の大群の影落ちる。そしてその影は、船を飲み込んだ。
●まぁ、イワシじゃないんですけどね。
「やあ。フェデリア島、楽しんでいるかい?」
集まったイレギュラーズたちに対し、気さくに話しかけるたのは『黒猫の』ショウ(p3n000005)だ。今イレギュラーズたちがいるのは一番街のローレット支部なのだから、彼がここにいるのもまぁおかしくはない。彼もまたギルド・ローレットに属する情報屋の一人なのだから。そんなショウが、イレギュラーズたちにある話しをしはじめた。
「のんびり観光も良いけど、皆には刺激が足りないかと思ってさ。――ダガヌ海域の人食いイワシの話を知ってるかい?」
ダガヌ海域は、ギルド・ローレットが調査をするよう依頼された海域だ。遭難や難破、行方不明者が続出しているらしい。そんな海域の人食いイワシの話だなんて、どう考えても怪しい。
「ああ、君たちの考えている通りさ。人食いイワシ――エンジェルイワシモドキっていう魔物が、この辺りで群れを成しているらしい。エンジェルイワシと勘違いしたんだろうね。そこに向かった船員四人の行方が分からなくなってるんだ」
ダガヌ海域の地図を広げながら、ショウは淡々と説明をする。今回はその船員四人の内、誰か一人でも救助してほしい、という話らしい。エンジェルイワシモドキとやらはあまりにも数が多いので、今回は全滅させる必要はないようだ。
「正直な話、倒しても倒してもどこからともなく現れるんだよね。だから、今回は救助が優先されたってわけさ。――まぁ、人食いと称されるだけあって、そいつらは肉食だからね。全員助けるのは無理だと思うけど」
確かに。普通の人が水中に落ちてしまったら、ひとたまりもないだろう。
一人のイレギュラーズが、話を聞きながら地図を眺めているとあることに気づく。ショウが指差した辺りには、小さいながらも島があるように見えたのだ。
「ああ、この島かい? 多分、無人島だね。確かに、エンジェルイワシモドキの群れの近くにある島だ。もしかしたら、行方不明者の内の誰かはここにいる、かもね」
その可能性はある。ならば早く助けに行った方が良い。イレギュラーズたちはショウに見送られながら、早速ダガヌ海域へと向かった。
- <光芒パルティーレ>群れの餌になる前に完了
- GM名萩野千鳥
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2022年07月13日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
●
イレギュラーズの一行は『決死行の立役者』ルチア・アフラニア(p3p006865)が所持・操縦する小型船『Concordia』に乗って、ダガヌ海域にあるエンジェルイワシモドキが大量発生しているというポイントへと向かっていた。船が出発してしばらくは穏やかな海が続いていたが、ダガヌ海域へと近づくにつれ暗雲が立ち込め海面が荒れてくる。
「そろそろ到着するよ」
船を操縦していたルチアが、五人にそう声をかけた。『半透明の人魚』ノリア・ソーリア(p3p000062)と『いわしプリンセス』アンジュ・サルディーネ(p3p006960)は、船の進行先を見やる。すると、海面から何かが飛んでは、海中へと潜るような魚を発見する。
「あれは……エンジェルイワシモドキ、でしょうか?」
「はあ? こんなのをエンジェルイワシと間違えるの? なんで? 翼も模様も、光沢も尻尾もヒレも鱗の形も! もう、何もかも違うじゃん! 誰? こんな雑な名前つけた奴。後で覚えてろよ」
「……ほんとうに、張り切ってらっしゃるみたいで、安心しましたの」
現在の海並みに荒れているアンジュに苦笑するノリア。その後方で『冬隣』アーマデル・アル・アマル(p3p008599)と『陰陽式』仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)も、エンジェルイワシモドキを眺めながら呟く。
「イワシは可愛い生物だと聞いていたが……なるほど、便乗商法。まぁ、アンジュ殿の話によると全く異なるらしいが……」
「まぁ、外見はともかく、ざっと話を聞く限りでも『海に住み着くようになったピラニア』という印象がしっくりとくる相手だな」
小型で人を襲う魚はそれなりにいる。今回のエンジェルイワシモドキは魔物ではあるが、それらの魚のようなものなのだろう。冷静にそう分析する汰磨羈の後ろから、『瑠璃の刃』ヒィロ=エヒト(p3p002503)がひょっこりと顔を出す。
「ピラニアもイワシも、食べるものであって食べられるものじゃないって料理上手な美咲さんが言ってた!」
「エンジェルイワシって、確か食っちゃ駄目なんじゃ……」
『Immortalizer』フレイ・イング・ラーセン(p3p007598)がちらりとアンジュの方を見る。どうやら、先程のヒィロの発言は気づいていないようだ。フレイの心配をよそに、ヒィロは「だとしても!」と続けた。
「人食いイワシなんてパパッと片付けて、パパパッと人助けしちゃお!」
「そうだね。刺激はいいけど、救助は相手がいるからね……安全追求しないと」
今回の目的はあくまでも人命救助だ。『玻璃の瞳』美咲・マクスウェル(p3p005192)も気合を入れると、ルチアが五人に向けて話しかける。
「できれば近づくのも嫌だけれど、そうも言ってはいられないから……突貫するわ。皆、行くわよ!」
「了解!」
各々ルチアに返事をすると、無人島へ向かう美咲とヒィロ、海上を探すアーマデルとフレイは道具や己の翼を用いて空を飛び、ディープシーであるアンジュとノリアは海中へと潜った。ルチアは、船に乗る汰磨羈に向けて声をかける。
「ねぇ、どこかに襲われた船があると思うの。それを調べてから無人島へ向かっても良い?」
「そうだな……美咲とヒィロが先に無人島へ行っているしな。ルチアの言う通りにしよう」
「ありがとう!」
ルチアの船は無人島の方へと向かいながらも、襲われたであろう船を探しに向かった。
●
海中へと船員を探しに行ったアンジュとノリア。二人はディープシーということもあってか、海中でも自由自在に捜索活動を行うことができた。二人とも耳を済ませながら海中を探す。アンジュはそれに加えて、(数は少なかったが)海の精霊に溺れているような人物がいたら教えてくれるよう頼んだ。そうして捜索を続けていくと、遠くから黒い影が二人に迫ってくるのが見えた。――エンジェルイワシモドキだ。
「まっっっっったくの別物なのに、なんで『エンジェルイワシモドキ』って名前なの? とにかく、一匹でも多く滅してやる。いっけー! イワシミサイルだ!」
アンジュはそう言いながら、無数のパパたちであるイワシたちを呼ぶ。彼らは泣きながら特攻し、エンジェルイワシモドキを圧倒する。とはいえ、どこから現れているのか分からないエンジェルイワシモドキの大群は、そろり、とアンジュの背後へと忍び寄る。
「アンシュさん、危ない……! こ、ここに、おいしい、のれそれがありますの!」
ノリアはマアナゴの幼生が持つ、つるんとしたゼラチン質のしっぽをふりふりとエンジェルイワシモドキに見せびらかす。それは、肉食のエンジェルイワシモドキにとって格好の餌食だ。アンジュを狙っていた個体も、ノリアにターゲットを移し襲い掛かる。
「っ! アンジュさん、今のうちに!」
「うん! もう一回!」
アンジュは再びイワシの大群を呼び、圧倒的な力で蹴散らしていく。そのお蔭で、一時的にアンジュとノリアのいる辺りのエンジェルイワシモドキは、皆どこかへと去って行った。
「ノリアさん、大丈夫?」
「うぅ……まだ大丈夫ですわ」
アンジュはノリアを回復する。そのお蔭で、傷がある程度回復したノリアと共に、二人は船員の捜索を再開した。
『……――、』
「この声は……」
「急ぐよ!」
「はい!」
ほとんど声は聞こえなかった。だが、二人には助けを求める声のように聞こえた。急いで声のする方へと向かう。
「…………」
海底で海藻か何かに足を捕られたのだろう。男が一人、意識のない状態でいた。本当に微かではあるが、助けを呼ぶ声が聞こえたということはまだ辛うじて生きている。
「アンジュが運ぶから、ノリアさんは先に海上にいる二人に教えてきて!」
「分かりましたわ! でも、その前に――!」
ノリアが男――ジェフに向けて海神の加護を与える。これで、少しはマシになるだろう。そう思いながら、ノリアは急いで海面に向かって泳いだ。
●
船から飛び立ち海上にいたフレイとアーマデルは、船員の捜索に難航していた。
「……っ、邪魔、だ!」
フレイは黒い閃光で一体一体を的確に落としていく。しかし、数の暴力には勝てない。エンジェルイワシモドキがフレイに噛み付く。とはいえ、振りほどけばあっさりと離れた上に、抵抗した時のダメージで海中に叩き付けられ落ちていく。
「フレイ殿、ここは一旦散らした方が良さそうだ」
「! 分かった。アンタに任せても?」
「勿論」
アーマデルの返事を聞くと、フレイは更に上空へと飛ぶ。急な上昇にエンジェルイワシモドキはついて行けず、フレイを追いかけるのを止め、アーマデルにターゲットを移した。
「丁度良い。まとめて呪ってやろう」
アーマデルは手に持つ『蛇鞭剣ダナブトゥバン』を振るう。ワイヤーで繋がりながらも分離した蛇腹は、エンジェルイワシモドキを仕留める。当たらなかった相手に対しても、鮮やかな赤い神酒を放つ。その酒に込められた毒は、飲みはせずともエンジェルイワシモドキの体表を焼く。そのダメージで攻撃どころではなくなったエンジェルイワシモドキは、海中の奥底へと潜って行く。
「これで、しばらくは大丈夫だろう」
「だな。早く探してしまおう」
フレイは自身の負った傷を治しながら、海上から俯瞰して船員たちを探す。彼らは無人島の方へと向かった筈だ。自身の方からゆっくりと無人島の方を確認するも、海上からは見えない。アーマデルもこの海に漂う霊魂から聞き出したり、『酒蔵の聖女』と呼ばれる霊魂に見かけなかったか聞いてみたが、海上には船員がいないらしい。
(だとしたら、無人島の方か……?)
フレイがアーマデルに無人島方面へ向かおうと提案しようとした、その時だった。
「フレイさん、アーマデルさん!」
ちゃぷんっ、と水面から水音がしたかと思うと、水面からノリアが顔を出していた。
「ノリア殿、何かあったのか?」
「はい! 海底に、船員さんが、いらっしゃったんですの! 今、アンジュさんが、連れてきますので、お二人は、その後をお願いしますわ」
「海底か……分かった。任せろ」
ノリアはその後再び海中へと潜ると、アンジュと共にジェフを連れて海面へと顔を出した。フレイとアーマデルはジェフを引き上げると、アーマデルが彼を担いだ。
「それで、他の船員たちはどうだ?」
「海の精霊に聞いてみたけれど、特に収穫はないよ」
「海上から見える範囲にもいないみたいだしな……」
となると、考えられるのは一つだ。無人島のような海中や海上では分からない場所にいる。
「一旦、ルチアの船に戻ろう」
フレイの言葉に三人は頷くと、無人島へと向かったルチアの船を目指して移動した。
●
「これは……聞きしに勝る量だな。こんなのに集られたら、瞬く間に骨と化しそうだ」
「本当に、ね!」
ルチアはできるだけエンジェルイワシモドキを回避するよう、小型船『Concordia』を操縦していた。海中にいるエンジェルイワシモドキは、ある程度海中や海上を捜索している仲間たちの方へ意識が向いているようだ。だが、それ以上に数が多い。どうしても避けきれずにエンジェルイワシモドキの大群がいるであろう海上を通ると、船の片側の海面からエンジェルイワシモドキがトビウオのように飛び出してきた。
「航路の邪魔だ。退け!」
汰磨羈は戦場で霊刀『大祓・速佐須良禍断』を抜くと、和魂と荒魂の一部を刀身内に込め擬似的な太極を作り出す。その合間、すれ違うようにエンジェルイワシモドキが噛み付き、汰磨羈に攻撃する。しかし、その攻撃を圧倒的に凌駕する無極の光が、エンジェルイワシモドキに放たれる。空中を飛んでいたエンジェルイワシモドキは一匹、また一匹と海へと落ちていく。
「今のうちに」
「勿論よ」
ルチアは船を全速前進させ、一度エンジェルイワシモドキの大群がいた場所から離れる。無人島に向かいつつも、襲われた船を探す二人。もしかしたら、二隻とも海の底にあるのかもしれない……そう思い始めた時だった。
「――あったわ! 保護結界で浸水は防ぐけど……念のため、どこかに掴まっててね!」
「分かった」
ルチアは保護結界を自分の船に施すと、船首にある突撃用衝角で襲われた船に突撃し、無理矢理接舷する。
「まだ残っている船員がいればいいけれど……!」
二人は襲われた船に乗り移ると、行方不明になった船員を探す。その最中もエンジェルイワシモドキに襲われたが、受け流しつつ捜索を続ける。すると、一人の男が船室に倒れていた。意識はないらしい。二人はその男をルチアの船に移動させ、回復術をかける。
「う……俺、は……、っ! ジェフ! ジェフを助けないと!」
男の意識が戻ったが、錯乱しているようだ。
「ジェフ、という男はまだ船内にいるのか?」
「あ、あんたたちは……」
「助けに来た者だ。それで、ジェフはどこに」
「……海に、落ちたんだ」
「そうか」
ルチアが操縦の方に戻り、無人島へ向かう道中で汰磨羈は男――ベルンから話を聞いた。逃げる最中にジェフだけ海に落ち、エンジェルイワシモドキに襲われて海中へと沈んでいったらしい。とはいえ、彼も満身創痍の状態で、助けることは叶わなかったそうだ。汰磨羈は海中の方も探しているとベルンに伝え、彼にはルチアの船の船室にいるよう指示した。
●
美咲とヒィロは船から飛び立つと、飛行を邪魔されない最低限の高度を保ちながら無人島へと向かった。美咲は些細な声も見逃さないようにと、注意を払いながら飛んでいた。
「美咲さん、何か聞こえた?」
「今のところは……でも、島にたどり着いていればひとまず生きててはくれるだろうし、そっち優先よね」
「そうだね。急がないと!」
二人は速度を上げ、無人島へと近づく。途中エンジェルイワシモドキが襲いそうになっが、無人島へ向かうことに重きを置いていた二人はあっさりと振り切り、無人島へと到着した。
無人島内の浜を二人で手分けをして探す。小さい無人島は、浜だけならば大して時間はかからない。浅瀬の方には来ないのか、エンジェルイワシモドキに襲われることもなく捜索に集中できた。しかし、浜には船員らしき影もない。
「浜にいないとなると、残るのはあっちの方だけど……」
合流した二人は、鬱蒼と生い茂った森林の方を見る。流石に、森林内では何かあるかもしれない。二人で森林へと足を踏み入れる。
「なんていうか、不気味な島だね……」
鳥の声や動物の鳴き声が一切聞こえない。いくら無人島だったとしても、植物がこれだけ自生している島ならば、動物がいてもおかしくはないのだが。二人は薄気味悪さを感じながらも歩を進める。
『――け、て……』
「! 今、声が……」
「本当!? 早く行こう!」
美咲の耳に、助けを呼ぶ声が届く。二人は急いでその声のする方へ駆けていく。
「誰かいるー!?」
「私たち、助けに来たよ!」
声がする地点へ到着した二人は、声を張り上げながら探す。すると「あ、ああ……!」と微かな声が聞こえた。二人はその声の元へと向かう。
「――っ! これは……」
「酷い傷……」
そこには男――ティルが一人倒れていた。明らかに食いちぎられたような傷ばかりだ。それはエンジェルイワシモドキにやられたのだろう。その上、ここに来るまで無理をしたのか、枝に引っ掻けた傷や、土に汚れ傷が悪化している物もあった。
「とにかく、治療するね」
美咲はまずティルの負傷という事象自体を切断し、それによる回復を行う。とはいえ、完全に戻るわけではない。特に、心の傷は戻らない。
「う、うう……」
「今、私たちの仲間が船員の皆さんを探しているから、もう――」
「ああああ……!!」
「美咲さん、」
「……うん。仕方がないけど、しばらく眠っていて」
錯乱するティルに対し、美咲は魔眼で眠らせる。精神的に病んでいたティルは、あっさりと瞼を閉じ意識を失う。
「島の中に居て貰う方が安全だけど、流石にここは何があるか分からないし……浜の方に運ぼうよ」
「そうだね」
ヒィロの提案に美咲が頷くと、二人は浜はティルを浜の方へと抱えて連れて行く。
「! 二人ともそこに居たのか」
浜へと運ぶ途中、聞き覚えのある声がした。それは汰磨羈の声だった。彼女曰く、ルチアと共に無人島へと到着した後、ルチアは船で道中助けた船員と待機。そして、汰磨羈は足跡や血痕を目印に探していたらしい。
「それって、ティルさんのものじゃない?」
「……いや、違うな。足跡の大きさからして、彼じゃない」
「じゃあ、ボクたちが助けたティルさん以外に、もう一人いるかもしれない、ってこと?」
「かもしれん」
「だけど、私の耳には……」
先程聞こえていた助けを求める声は、ティルのものだった。しかし、それ以外の声は聞こえない。となると――。
「状態はともかく、探しに行こう」
「そうだね」
美咲とヒィロは汰磨羈を先頭に、もう一人を探し始める。動物がいないからか、よくよく確認してみれば足跡はくっきり残っている。その跡を辿り、洞穴のような場所へと到着する。
「……これは、」
「美咲さん、どう?」
「…………」
ヒィロの問いに対し、美咲はゆっくりと首を横に振る。ティル以上に傷が深く、悪化している彼――クローは、ここで息絶えたのだろう。
「連れて帰ろう」
彼を待っている者がいるかもしれない。幸い、この島には敵らしい敵はいないようだ。汰磨羈の提案に二人は頷くと、ルチアの待つ船へと船員たちを連れて戻って行った。
●
三人が無人島から船員を保護した後、ルチアの船に乗り込み出発する。海中・海上を探していた四人が意識不明の船員ジェフを連れてくると、唯一、正気を保っている船員ベルンがすぐにジェフの元に駆けつけた。その様子を見ながら、ルチアは尋ねた。
「ジェフ、だっけ? 容態はどうなの?」
「見つけてからすぐに、わたしが、加護を与えてみましたが……」
「回復はしてるけど、まだ分からないよ」
ノリアとアンジュは表情を曇らせながら答える。船員四人の内、確実に生存している者が二人、意識不明が一人、死亡者が一人。全員は助けられないとは聞いていたが、気持ちは晴れない。
「間に合わなくても、遺体はきちんと弔ってあげたい。持ち帰ろう」
「そうだな。早く戻ろう」
イレギュラーたちは船員を救助し終えて、ダガヌ海峡を抜けようとする。しかし、エンジェルイワシモドキたちはそう簡単には返してくれなかった。
「本当に、邪魔ばっかりしてくれるね!」
ルチアは雷を放つ。しかし、それらはひょいっと避けられ、ルチアの腕に噛み付く。
「っ!」
「ルチアさんは、この船を操縦してもらはないといけないから、アンジュたちに任せてよ!」
「わ、分かったよ」
ルチアは操縦席へと戻り、船を操縦する。その最中もエンジェルイワシモドキたちは襲う。
「わたしが、囮になりますわ!」
ノリアが前に出て、魔法の鱗で覆った自慢の尻尾を振る。美味しそうなそれにつられ、エンジェルイワシモドキたちはノリアに噛み付く。その隙に、アーマデルが遠くにいるエンジェルイワシモドキに狙いを定め、英霊たちの絶叫を放つ。その声はエンジェルイワシモドキたちにのみ届いたのか、一斉に海中へと逃げる。
「ルチア殿!」
「ええ!」
全速でエンジェルイワシモドキたちの群れを突破する。こうして、イレギュラーズたちはそのままダガヌ海域から脱出したのだった。
成否
成功
MVP
状態異常
あとがき
お疲れ様でした。
船員四人は見つかりました。
ご参加頂き、ありがとうございました!
GMコメント
初めまして、こんにちは、こんばんは。萩野千鳥です。
早速ですが簡単に説明致します。
●目的
船員『ジェフ』『ベルン』『クロー』『ティル』の内、一人以上を救助。
●地形
暗雲が広がっていますが、海はそこまで荒れていません。(物凄く穏やかというわけでもありませんが)
海中に敵である『エンジェルイワシモドキ』がいっぱいいます。
イレギュラーズたちの乗る船の向かう先に、小さな無人島があるようです。
●敵
『エンジェルイワシモドキ』×沢山
エンジェルイワシという可愛らしいイワシ……に似た、イワシじゃない魔物。肉食。
一匹一匹は弱いけれど、なんか大量にいる。いっぱいいる。
飛んだり、噛み付いたり……とにかく集団で襲ってくる。
全部は倒せません。沢山いるので……キリがないので……。
●他
船が貸し出されますので、船が無くても参加できます。勿論、小型船等の持ち込みもOKです。
●情報精度
このシナリオの情報精度はAです。
想定外の事態は絶対に起こりません。
●名声に関する備考
<光芒パルティーレ>では成功時に獲得できる名声が『海洋』と『豊穣』の二つに分割されて取得されます。
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