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シナリオ詳細

<光芒パルティーレ>豊海絆恋録:商家当主と暗黒海域

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 恋に身分は関係ないが、身分とは恋を愛にする潤滑剤である。
 だが、潤滑剤とはときに劣化し、推進力を殺しもする――こと、豊穣のような奥ゆかしい国にとっては。
 豊穣には、『それなり』に名のしれた二つの商家がある。
 歴史を紡ぎ、代を重ねた奥ゆかしき商家『白城(しらぎ)』。
 そして、第十子という不遇の身から生まれ、商才ひとつで一代で盛り立てた『壱ヶ崎(いちがさき)』。
 所以が違うがゆえにその2つの商家は競い合い、諍いを伴いながらも切磋琢磨を繰り返していた。すべては八扇(かつての七扇)に連なる者の御用達の地位がため。
 如何に仲を違えても人の道を逸れなかった両者は、意外な形で接近することとなる。

 白城家六子緑青(ろくしょう)と、壱ヶ崎長女(長子)久露江(くろえ)の縁談――である。
 無論、両家がお膳立てしたものではない。むしろ、両家の当主は互いに言葉を尽くして止めようとしている。
 していたが、外部からの妨害という風は、火の手を煽るばかりで意味を成さず。とうとう、うなるほどの金子と一族内の賛成派の政治力を背景に、シレンツィオ・リゾートでの婚姻にこぎつけることと相成った。
 反対派の当主達は、伝えられた日時を馬鹿正直に信じつつもダガヌ海域を突っ切るルートの護衛をイレギュラーズに依頼。
 一方で、緑青達はシレンツィオ・リゾートでの婚姻が恙無く終わるため、ならず者達が現れぬようにとイレギュラーズに依頼したのだった。
 ――この2つの依頼、何れが欠けても、両家の断絶は決定的となろう。君達の使命は、ひいては両家の縁を結ぶものなのである。


「ぬうぅ……! 進みが遅いのではないか? 婚礼の義の開始までは十分余裕があるとはいえ、万が一があれば止められなかった私達の面目丸つぶれだ!」
「白城の若造などを見初めるとは、久露江の教育を誤ったか? 否、満足の行く教育を施したはず……」
「はっ、所詮は『あがり者』の蒙昧な教育の賜というべきか? 緑青を選んだ見る目は褒めてやろうが、それだけだなあ!」
「あの若造を褒めそやすなど恥を知れ恥を!」
「ヌゥぅぅぅ……!!」
「フン、やるのか? 私と」
「ちょっ、ちょっと! 船の上では敵味方の概念は一旦脇に置きましょうと念書まで書かせてお連れしてるんですよ!? ただでさえ危険な海域なのに……!」
 白城当主・喜兵衛と壱ヶ崎当主・十郎太はダガヌ海域を行く小型船の上で喧々諤々の言い争いを続けていた。喜兵衛の妻・光代は「いつものことですから」と困ったふうに笑っている。
 仲裁させられるのはドロッセル=グリュンバウム (p3n000119)なわけで、いつものことを、いつ『何者か』が現れる海域でやらないでほしい、とも思う。
「確かに報告を受けている開始時間には余裕がありますし、私達は皆さんを安全にお届けすることを条件に海域調査を間に挟むとはお伝えした筈です! 此方を信じてもらえなければ、安全を保証しかねることもあるんですよ? 何卒気をつけてください!」
(……でも、開始時間は『少し早い』のよねぇ? 既成事実を作った上で私達が到着して、って流れなのかしら?)
(私達は聞いた時程通りにことを進めています為、式次第についてはご当主様達と同じ情報しか持ち得ず……)
 ドロッセルが必死になって両家の当主を宥める後ろから、光代がひそひそと話しかけてくる。正直なところ、ドロッセルも緑青達の意図は知り得ない。光代の言うような裏があるのは否定できないが……。
 などと話しながら、小型船はひとしきりダガヌ海域を周回し、海域外に出ようとしていた。だが、そんな一同を嘲笑うように、海面から次々と敵が飛び出してくる。「深怪魔(ディープ・テラーズ)」と呼ばれる、海域を闊歩する敵なのだろう。それらはフナムシのような形状をしつつサイズは遥かに大きく、しかし生物的というよりは機械的な雰囲気が覗く。外殻内に排水機構でも持っているのか、ジェットのような加速で船にとりつき、いきおい人々へ襲いかかる。
 イレギュラーズは確固に喜兵衛、十郎太、光代、そして壱ヶ崎の妻・菊江を庇うかたちで敵を押し返し、四周からの接近に警戒する。
 コォーン、コォーン……と、それぞれの個体から音が響く。アクティブソナーの真似事か、それとも新たな仲間を呼ぶ合図か。何れにせよ、いち早く打開せねば結婚式はおろか、個々人の命すらも危うい状況なのは間違いなさそうだった。

GMコメント

●注意事項
 このシナリオは連動式となっております。古里兎 握GMの『豊海絆恋録』と同一時系列で進んでいるので、同時参加はできません。
 それぞれ、かなりニュアンスの異なるシナリオとなっております。十分ご確認のうえ、ご参加をお願い致します。

●成功条件
 機動噴弾の撃破
 豊穣商人たちの生存

●失敗条件
 豊穣商人たちに深手を負わせてしまう

●機動噴弾
 深怪魔(ディープ・テラーズ)の一種で、メカニカルな風貌をしたフナムシといった風情の外観をしています。
 群れて行動するため、結構数が多いです。どんな原理か、ジェット噴射による長距離突進攻撃を可能とするため、【移】を擁すスキルを持ちます。
 攻撃特化といっていい存在で、守りはさほど固くありません。一撃は耐えるかもしれませんが。
 それはそれとして、一撃の破壊力は一般人に負わせていいものではありません。
 なお、彼らを放置しすぎると仲間を呼ぶし、なんならもっと強いのが出てくる可能性も捨てきれません。
 掃討、とはいわずとも、機を見て逃げ出すまでは撃破したほうがいいです。

●ドロッセル
 治療もできますが、攻撃に回したほうが『動く』子です。神秘攻撃主体。

●戦場
 ダガヌ海域・海上。基本的に船の上です。
 何事もなければ(申告や持ち込みがなければ)小型船1隻です。増えてもいいですが多すぎると分散するから「俺も俺も!」と皆で持ち込むのは適切じゃないかもしれません。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はCです。
 情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。

  • <光芒パルティーレ>豊海絆恋録:商家当主と暗黒海域完了
  • GM名ふみの
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2022年07月14日 23時25分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

十夜 縁(p3p000099)
幻蒼海龍
キドー・ルンペルシュティルツ(p3p000244)
社長!
日向 葵(p3p000366)
紅眼のエースストライカー
イリス・アトラクトス(p3p000883)
光鱗の姫
ヒィロ=エヒト(p3p002503)
瑠璃の刃
美咲・マクスウェル(p3p005192)
玻璃の瞳
長谷部 朋子(p3p008321)
蛮族令嬢
綾志 以蔵(p3p008975)
煙草のくゆるは

リプレイ


「依頼の内容は結婚式の参列者の護衛って話だったんで、もっとめでたい雰囲気かと思ったんだが……」
「折角の結婚話も邪魔が入ってオシャカにはされたくはないわな。オレにはまだよく分かんねぇっスけど」
 『幻蒼海龍』十夜 縁(p3p000099)と『紅眼のエースストライカー』日向 葵(p3p000366)は、吉日の海を覆う不穏な雰囲気に――そりゃダガヌ海域なんだから当然だが――少々不満げな言葉を紡ぐ。その言葉尻をつかんで騒ぎ立てるのが、両家の当主なのだから笑えない。
「邪魔? 邪魔といったかお前!?」
「若造には親心というものが分からんらしいな! 神使とはいえやはり渡来の者には物事の良否がわからんようだ」
「でも、招待されて海を渡っちゃうんですよね?」
「「ぐぬぬぅ……」」
 十郎太、ついで喜兵衛の抗議は、しかし『光鱗の姫』イリス・アトラクトス(p3p000883)の指摘の前にぴしゃりと堰き止められる。彼等の複雑な事情はわかるが、新郎新婦が海を渡った覚悟を、或いは駆け落ちにすら見える状況を、もう少し慮れないものかと困ったような顔をする。そこまで言ったらどうなるかは分からぬ身の上ではないので言わないが。そして縁は『知らんわけではない』ので余計に面倒な顔をしているのだが。
「そういやもうあれから随分と経つのかぁ……あれだけの激戦があった海に、いつの間にかリゾート地まで作られるようになってたなんてねぇ。で、今度はそこで遠路遥々豊穣の大商店の子息と令嬢が結婚式を挙げるってわけだ」
「「儂(俺)は認めておらんがな!」」
「おー怖。意気込むのはいいけど、海の上じゃ誰しも死ねば平等に海の藻屑。ってわけで仲良くお行儀良く守られてくだせーよ、旦那方」
 海洋の命運を差配する戦いが終わってからもうかなりの時間が経つ。『蛮族令嬢』長谷部 朋子(p3p008321)がその出来事に思いを馳せるのも無理からぬ話である。そして、その間の変化にも。言葉を揃えて反論してきた当主たちを諌めつつ、『煙草のくゆるは』綾志 以蔵(p3p008975)はこの二人はきっと馬が合う仲なのでは? と思ったが口にはしない。危険海域のど真ん中で暴れられてはこちらの命がないからである。
「本日天気晴朗ナレドモ浪高シ! 商人さん達の人生の波は今がまさに最高潮! ……気分は最底辺?」
「当たり前であろうが! 緑青がこんな、こんな……!」
「はい、苦労話はその辺で。来たよ、ヒィロ、皆」
「ボク達ローレットがきっちり守ってみせるから、大物商人らしく大船に乗ったつもりでどーんと構えていてくれればおっけー! それじゃ、ヒィロいっきまーす!」
 『瑠璃の刃』ヒィロ=エヒト(p3p002503)は当主二人に向かって不思議そうに小首を傾げ問いかける。喜兵衛と十郎太は当たり前だとばかりに顔をしかめ、喜兵衛が身振り手振りをもって緑青のことを思い返そうとしたが、どうやらそんな余裕はなさそうだ。『玻璃の瞳』美咲・マクスウェル(p3p005192)はそんな二人を制止し、海中から飛び出してくる機動噴弾の射線から遠ざける。あわせて、ヒィロは海中へと飛び込んでいくではないか。
「守りは今の俺には向かねェ。サッサと片付けて報酬で一杯やろうぜ!」
「同感っス。フナムシさっさと片付けて四人を送り届けるっスよ」
 『最期に映した男』キドー(p3p000244)にとってこの海――静寂の青はあまりに思い出が多すぎる。が、そんな彼ですら狂王種と深怪魔の違いが今ひとつ理解できなかった。分からぬものを調べる機会が得られたのは最上だった、ということだ。……その背景で騒ぎ立てる豊穣のお偉方は頭痛の種だが、酒で流し込めぬ話でもない。彼の軽口に葵が乗っかる形で、イレギュラーズ達の立場と対応の方針は固まった。……気楽に、だが甘く見すぎず。人を守る立場にある本懐を忘れずに。
 まあとどのつまりは「いつも通りやろう」という話であった。


「とりあえず、事が終わるまで大人しく護られておいてくれるかい? お前さん方に怪我させるわけにはいかねぇんでな」
「菊江さんはこっちに居てね! あたしが精一杯守るから!」
「白城のお二方は私が。離れすぎなければ、安全を保証します」
 縁は十郎太を、朋子は菊江を、そしてイリスは白城夫妻を庇う形で前にでる。最初から手筈通り、布陣していた位置から何一つ変わらない。当主二人は状況を察して無言でイレギュラーズに従うと、ぎりと歯噛みする。
「海は自分達深怪魔の独断場だと思った? 残念、墓場でした! なーんて」
「ヒィロ、無理は禁物だからね! ……私と一緒で無理なんて無いって話だと思うけど!」
 ヒィロは波間を軽快に泳ぎ回りながら、機動噴弾達を引き付けていく。鮪もかくやという速度で泳ぎ回るその姿は、明らかに人の体で出せる速度を超えている……が、まあ彼女なら有り得る話か。美咲の言葉も、忠告というよりは信頼、自分がいる以上背を預かる者として無茶を許容しつつ、無理をさせないことに終止する。ヒィロほどではないにせよ、水中での身軽さなら彼女も大概だ。両者が泳ぎ回る周囲で、次々と水柱が上がっていく。
「なんかもうむちゃくちゃやるっスね……それでも引き付けられない個体とかは俺達の役割なんだよな。仲間呼ばれても困るし」
「分かってんじゃねえか。あんまりゾロゾロ来られても面倒だし、音出してる奴優先で叩いていこうぜ」
 葵は二人の後方をぞろぞろ続く個体群にボールを蹴り込みつつ、彼女らから距離を取る個体を探し出す。取り逃した、というより折り悪く出てきたという様子か。あれが船に突き立てばと考えると笑えない。キドーも倒しやすい個体に止めをさしながら耳を澄ませ、音を立てて仲間を呼ぼうとする個体はいないか、と警戒を怠らない。
「船の上での戦いってのは思ったより窮屈だ……近づかれても逃げ回るわけにもいかねえ、守る相手もいるときた!」
「文句言わない! 相手の住処なんだから相手が有利なのは当然なんだから!」
 弾薬の残りを気にしつつ、以蔵は次から次へと現れる敵へ銃弾をばらまく。ヒィロと美咲があれこれと引き付けているからだいぶ楽だが、それにしたって飛んでくる個体が割と多いのが困りどころだ。
 きりのいいところで逃げ出したい、否、全員で逃れたいところだが、もう少し包囲を突破しないことにはどうしようもないか。朋子が弱っていた個体を殴りつけて沈黙させ、ドロッセルが海中の二人と庇い手を必至に治療しているからなんとかもっている、という側面もなくはない。
「ドロッセルさん、私以外の治療に専念して大丈夫」
「……といっても、イリスさんは二人分の」
「いいから」
 イリスはドロッセルにきつく言い含めると、小さい、しかし深い呼吸ひとつで飛びかかった機動噴弾達による傷、そのほぼすべてを修復してしまった。そう、『修復』としか言いようがない変化だった。
 彼女が二人分の護衛を買って出た理由はここにある。ここの敵が、その大半で持って彼女に襲いかかったところでその肉体の幾ばくかを撫で付けることしか叶わぬのだ。
「死んだ奴らは端に集めときな。お偉方に見せるモンじゃねえよ」
「フナムシが群がってくるだけで絵面は最悪なんだけどな……」
 キドーが潰されたり破壊された個体を蹴りで船の奥に追いやるのを見て、縁はげんなりしたように返す。少なくとも、十郎太は表情を固くしても怯えている、とは言い難い。
「大丈夫なのだろうな」
「そう警戒しなさんな、単に『十』繋がりってだけで、俺がお前さんを守るのに特に深い意味はねぇよ」
「あまりに浅い理由だな。驚いて腰を抜かしてしまいそうだ」
「おいおい、ここで腰を抜かしてフナムシの餌にならないでくれよ?」
「少なくとも娘をどうにかするまでは、海の藻屑になるのは勘弁願いたいものだがな……船が藻屑になるのが先か、我々が先か」
「それこそ信用してくれよ!」
 十郎太と縁の会話は、少なくとも険悪ではない。どころか、思いの外冗談が通じる事実は彼をホッとさせたかもしれない。いけ好かない商家の、お高く止まった一代記の主人公――ということはないのだ。
「こりゃ多勢に無勢だ、さっさとトンズラするとしようぜ!」
「待って、最後に盛大に大穴あけるよ!」
「キリない感あるけど、突破経路を開けさえすれば区切れるでしょ!」
 以蔵が小型船の舵にとりつき、一気に切り抜けるべく声をかける。それに応じるようにヒィロと美咲が攻勢を強め、敵勢力を大きく吹き飛ばす……ダガヌ海域と外との接続点はすぐそこだ。
 後から後から追いすがる個体をキドーと葵が蹴散らしながら、一同はついに魔の海域を突破する。
 隅においやられたフナムシの死体はキドーらによって解体される運命にあるが、まあ……今ではないことは確かだ。


「間に合ったか!?」
「ええい、どけ壱ヶ崎の! 貴様のところの娘となど婚姻の義を執り行ったなどとなれば緑青の立場と我等の沽券に関わる!」
「何をぅ!?」
 無事……といえばなんとか無事にシレンツィオ・リゾート三番街の港に辿り着いた両家の当主は、怒鳴り合いながら船を降り、そして周囲の惨状に声を失った。小綺麗にこそ手直しされているが、式の会場周辺でなにがしかの争いがあったことは間違いない。お互いに一瞬にして青褪めた顔を見合わせ、互いの責任の追求やなすりつけ合いなどを殆ど考えぬままにチャペルへ向かう道を探して左右を見渡した。彼等はあまり気付いていないようだが、海乱鬼衆が暴れたあと、そして倒された者達の姿が見て取れる。待っていました、とばかりに三番街チャペルの護衛を担当していた者達が手招きをすると、当主ふたりは一も二もなく駆け出していく。
「え……えっと、お二人は向かわなくてもよろしいので?」
「それを言ったら、あなた達はこんなに荒れた状態で駆けつけなくていいのかしら?」
「今ご覧になったとおり、こちらに控えていた仲間が案内しますので……私達も後を追います」
「だそうよ、光代さん。この調子だとあの人達、今頃いっぱい食わされてるわ。急ぎましょう」
 当主達の動向を見守り、深い溜め息をついた菊江にドロッセルは首を傾げ問いかける。が、菊江はしごく当然の返答を向け、ドロッセルに苦い顔をさせる。……分かっていても、口にされると痛いところである。が、チャペルへの案内を引き受けてくれたのは助かった。その辺りを汲み取った菊江は、光代を伴ってチャペルへと歩きだす。
「この様子なら大丈夫だと思いますが、一悶着ありそうですし向かいましょう。せっかく無傷で届けたのに怪我なされても困ります」
「あの調子だとまた喧嘩とかしそうだもんね! 特に壱ヶ崎のご当主サマと緑青さんたちとか!」
 イリスと朋子は、一連の流れから当主達をほうっておくとろくなことにならない、と認識していた。チャペル側の仲間を信じてもいいだろうが、彼等も戦闘を経ているのは紛れもない事実。万が一がないとは言い切れない。
「ここまで運んで儲けがパァは勘弁してほしいぜ! 世間知らずの坊っちゃんってのは要らねえことを言う天才だからな!」
「あんまり言ってやんなよ。到着時間ずらすほどの小芝居のために大枚張るような奴が軽率なことすると思うか?」
 キドーは緑青がきっととんでもないことをやらかす、と考えていた。喜びとともに口にすることが、爆弾だったりすることもある。縁はそれは考えすぎだ、と嗜めるが、改めて言われると自信がなくなるのも確かで――。
「……これからは一家『三人』で支え合っていきたいと――」
「な?」
 キドーの勝ち誇った顔の前に、顔を真赤にする両家当主と崩れ落ちるイレギュラーズの姿があったのは言うまでもない。

「『吊り橋効果』とか、ボク達が見せ付けた心の絆の表われを見て、とかであの人達のわだかまりが綺麗さっぱり流されちゃったりしてないかなぁ。ほら、この海みたいに広くて大きな心で!」
「そうもいかないみたいよ、ヒィロ。豊穣の大商家が婚前交渉は、まあ……ちょっとね……」
 怒りを露わにし、声にならない声で叫ぶもギリギリ暴力に出ない十郎太が稀有といえば稀有なのだ。ヒィロが言うところの『広い心』までは持てなかったようだが、それでも十分理性的だと思われる。美咲もそれを察して、多くを語っていない。
「海ってのはすべての川が流れ込む場所らしい。歴史と商才、これまで交わらなかった二つの“川”がこの海で出会って、より大きな流れになる――そう考えると、案外悪くねぇと思うがね」
「……そ」
「そ?」
「それにしても、物事の進め方というのがあろうが、痴れ者が! 貴様等若い衆が少し羽目を外すのも、此方を騙したのも自分で始末をつけられるならいいとして、壱ヶ崎の娘に、そ、そん……!」
「はい。然るに父上、責任を取るなどという後ろ向きな理由ではなく。世を継ぐ為に子をなしたので御座います」
「――ふぅ……」
 喜兵衛は声にならない声をあげ頭から地面に崩れ落ちた。幸いにして縁が受け止めたが、上がりすぎた血圧で意識を失ったように思われる。
 奥方二人が「あらあら、まあまあ」で済ませているのが本当に……本当に大商家の嫁として「それでいいのか」という様子だが、子の幸福は素直に喜ばしいということなのだろうか。
 鐘の音に混じって聞こえる潮騒が、今は静かに両家の旅立ちを祝福しているようにも思えた。

成否

成功

MVP

イリス・アトラクトス(p3p000883)
光鱗の姫

状態異常

なし

あとがき

 この連動のエピローグについて古里兎GMと打ち合わせをした際、緑青のセリフをするっと出してきて
ふみの「『三人』で?!」
古里兎「うん」
ふみの「豊穣の大商家の倅にに婚前交渉させるのはなんか……問題ありません……?」
古里兎「でもこういうオチの方が面白いでしょ?」
ふみの「コッワぁ……」
 ということがありましたので私は悪くありません。

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