シナリオ詳細
<マナガルム戦記>滄海の宴
オープニング
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幻想国内を賑わせているアーベントロート公の一件――
当然のことのようにドゥネーブ領でも噂にはなっていた、が。
「お腹空きません!?」
「わうーん!」
そんな湿っぽい雰囲気をドゥーン――!!! と吹き飛ばしたのはしにゃこ (p3p008456)とベネディクト=レベンディス=マナガルム (p3p008160)の使い魔『ポメ太郎』であった。
ドゥネーブの執務室にて領内の統治についての資料へと目を落としていたベネディクトは「どういう事だ?」と首を傾げる。
「いやいや、ドゥネーブ領内も勿論、国内情勢が反映されるのは仕方が無い事ではあるんですけどね?
でも、其れにばかり構っていたら行けないと思うんですよ! だって、領民達は今を生きてるんですから!」
「凄く良いことを言った気がするですが、最初の台詞が全てを台無しにしたのです!」
確かにお昼時。お腹は空くけれど、前後が繋がってない気がするとソフィリア・ラングレイ (p3p007527)はお弁当のサンドウィッチを摘まみながら目を丸くした。
ソフィリアの傍らで食事を行っていた秋月 誠吾 (p3p007127)も同じく「確かに繋がってないな」と呟く。
「ちっちっち、甘いですねえ。繋がってるんですよ! 分かりますか?」
「さっぱり」
ベネディクトが首を振る。しにゃことポメ太郎の独壇場になった執務室は通常の空気と比べればなんともちぐはぐである。
珈琲を飲んでいたリースリット・エウリア・ファーレル (p3p001984)は「繋がりについての説明をお聞きしても?」と問うた。
「ふふん、皆さんも領内の事についてはまだまですね~! ね、ポメ太郎!」
「わうん!」
「さっき、厨房に寄ったらドゥネーブの港が今年は豊漁だと聞きまして。スティアさんが料理をしてたんですよ!
リースリットさんが呼んだんですよね? スペシャルなお料理ガールを!」
「スペシャルなお料理ガール……ええ、まあ」
「わん!(おいしそうなにおいでした!)」
スペシャルなお料理ガール――大量に料理を作成する天義の聖職者は今頃厨房でドゥネーブ港で水揚げされた魚の調理をしていることだろう。
「それとこれの繋がりは?」
本をそっと膝に置いてからマルク・シリング (p3p001309)は取りあえず聞いてみた。
どの様な言葉が返ってくるのかの予想はマルクには付いていた。
「ええ! マグロ漁船GPでもしませんか!? いや、いっそマグロじゃなくても良いんですけども!
ドゥネーブの港で豊漁祭をして、沢山お魚を捕ったり食事をしたり、領民のために尽くすのはどうですか!?
あ、別に新鮮なお魚をタダで食べようなんてこれっぽっちも思ってませんよ。陸で待っているから皆で魚を捕って来いなんて、全然!」
思ってるだろと呟いた誠吾にソフィリアは「しっ!」とその服をつんつんと摘まみながら首を振った。
「あ、皆、お昼ご飯の追加が出来たよ! 沢山お魚が水揚げされてるんだってね。
リースリットさんに聞いたから張り切っちゃった! 色々調理してみたから、少しずつ味見していってね」
大量の食事を運んできたスティア・エイル・ヴァークライト (p3p001034)は「どういう状況?」と首を傾げる。
「……『また』しにゃこさんが?」
助手だったのだろうか。エプロンと三角巾を着用した笹木 花丸 (p3p008689)は室内を覗き込んでから「ははーん」とでも言いたげな表情でしにゃこを眺める。
「またとはなんですか!?」としにゃこが叫んだのは――言うまでもないのだった。
――ドゥネーブ。リースリットの生家たるファーレル領と隣接したその地は領主が病に伏せてからというもののイレギュラーズが領主代行として統治を行っている場所である。
領主代行ベネディクトを始め黒狼隊はイレギュラーズとして前線を駆ける。
しにゃこの言うとおり『領民のために何らかのイベント』を行ってやることは悪くはない話しであろう。
「早速、豊漁祭りの準備をしよう。民も、屹度喜んでくれる筈だ」
ベネディクトが向かうのはドゥネーブ港。とても小さい港ながらも領民達を元気づけ、領内を活性化させるにはぴったりな場所だ。
共に漁に出ても良いだろう。水揚げされた魚を調理して振る舞うのだって良い。目的は、日々を営む領民を労ることなのだから。
- <マナガルム戦記>滄海の宴完了
- GM名夏あかね
- 種別リクエスト
- 難易度-
- 冒険終了日時2022年07月07日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費---RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
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「海だー! マグロだー! スペシャルだー!」
両手をえいやっと掲げて『純白の聖乙女』スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)はにんまりと微笑んだ。
呼ばれてやってきたのはスペシャルなお料理ガール、量もスペシャルだがアレンジもスペシャル仕様(美味しいから問題ないよね!)な天義聖職者は潮騒と住民達の笑い声の響いた港を眺め遣る。
「今回は豊漁祭ってことで遠慮せずにどーんってやっちゃって良いんだよね? 住民の人達も楽しんでくれると良いなー!」
豊漁祭。港の水揚げ量が絶好調という事を受け、『可愛いもの好き』しにゃこ(p3p008456)が提案したそれに地域活性化にも繋がる非常に良い案だと『紅炎の勇者』リースリット・エウリア・ファーレル(p3p001984)はうんうんと頷いた。
「豊漁祭、良い考えですね。流石しにゃこさんです。
丁度スティアさんもいらっしゃる。思う存分にスティアスペシャルしていただきましょう」
祭りの話を聞きつければ隣に位置するファーレル領の住民達も観光に来るかも知れない。地域活性、観光促進。素晴らしいではないか。
\マグロ、ご期待くださいっ!/
うきうきと心を躍らせたのは『竜交』笹木 花丸(p3p008689)。
「最初はしにゃこさんがまた何かやらかしたのかって思ったけど、皆で漁師さん達の船に乗せてもらって美味しいお魚をゲットするって言うのは何だか良いよねっ!」
またとはなんですかとしにゃこが叫んだが――それはもう、気にしなくて良いのだ.隣に置いておいて。お魚と言えばマグロ。どうやら水揚げされるのもマグロ。つまりはマグロ漁船に乗り込むのだ。
「マグロ、かあ。図鑑で見たことはあるけれど、実物を見るのは初めてだな」
もう一度図鑑で調べておいたのだとマルク・シリング(p3p001309)は『2~3mに及ぶ紡錘形の魚体を持ち、高速で泳ぐ肉食魚』と書かれていた文字列を読み上げた。
「……これは、なかなか厳しい漁(たたかい)になりそうだね」
ごくり、と息を呑んだ花丸にリースリットとスティアは応援の姿勢。二人は陸で祭りの準備や手配を行うのである。事前準備の段階から漁師達には声かけをして置いたことで港は盛況、幼い子供達の姿も見えている。
「この港からマグロが獲れるっていうのはちょっと吃驚したけど、獲れるって言うなら頑張っていかないとっ! その為にも……しにゃこさん、ファイトだよっ!」
――何故か、この海域のマグロ(?)は桃色が大好きらしい。生き餌にぴったりだね、と言いたげな花丸にしにゃこがううんと唸る。
「いやゆーて桃色って人の口の中とか……ちょっと赤くなった肌とか……色々ありますよね?」
いやいやいや、と首を振ったしにゃこの肩をぽんぽんと叩いたのは『虹を心にかけて』秋月 誠吾(p3p007127)
「要するに、これしにゃこを船の舳先に吊るしておけばマグロが向こうから寄ってくるって事だよな?
よかったなしにゃこ。豊漁の女神として崇められるチャンスだぞ」
「ははあ。しにゃこさんを吊るしておけば魚が寄ってくるなんて……しにゃこさん、魚にモテモテなのです?」
首を傾いだ『地上に虹をかけて』ソフィリア・ラングレイ(p3p007527)はお魚釣りから手伝って、お魚をいっぱい食べるのですとウキウキしていたが――流石はしにゃこと憧憬にその瞳を煌めかせる。
「え、しにゃが世界一の美少女だからお魚も集まっちゃう!? ふ、ふぅん? まぁ、そんな事もありますけどぉー!?
可愛くて超強いしにゃに漁を手伝って欲しい!? いっぱい魚料理振る舞ってくれる!?
しょーーーーがないですねぇ!! しにゃのオンステージ、ご期待ください!」
しにゃこが仁王立ちで胸を張れば住民達が囃し立てる。そんな様子を見るだけで『黒狼の勇者』ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)はほっと胸を撫で下ろすのだ。暫く足が遠ざかってしまったが、その様子さえも感じさせない賑わいが安堵を誘う。
「今回は急に事を起こしてしまって済まないな。
もっと事前に皆に連絡を入れて、準備を滞りなく進められる様に配慮すべきだったな……マグロ漁船GPはもっと盛大にすべきだったか」
「いやいや、領主代行様。楽しみですよ! あんな屋台に料理ブースに射的、くじ、食べ歩きまでできるとなれば!」
漁師が港の賑わいに有り難いと笑う声だけでベネディクトはほっと胸を撫で下ろす。
「それはそれとして今日は宜しく頼む。船を出して貰えるとまでは思わなかったが、俺もマグロは楽しみにしていてな」
「あうん!」
ポメ太郎も楽しみだとくるくると足元を回っている――が、食べ過ぎては叱られる彼は陸で子供達とお留守番なのである。
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やっぱりちょっとしにゃには向いてないんじゃないですかね? ――なんて言い出しそうなしにゃこをホールドして花丸はずるずるとその体を船内へと連れ込んだ。
出航し漁のスポットに着くまでの間にマルクはしっかりと漁法を本で確認し漁師(プロ)から確認したりと準備は万端であった。
「どうやらマグロは餌となる小魚の群れを追いかけて回遊するらしい。その小魚の群れは、海鳥からも狙われる。
見えるかい? 海面で海鳥が集まっている所…鳥山というらしいんだけど、そこが狙いのポイントらしいよ」
指を差したマルクに花丸は「ははー」とぱちりと瞬いた。マルクが調べてきてくれた情報は成程、役に立つ。
「川釣りなどはした事はあるんだが、海ではあまり経験が無くてな……良かったら教えて貰えると助かるのだが」
「任せて下さいよ! ああ、けど……」
漁師は『あの嬢ちゃんがいると此の辺りのマグロは釣れる』と言いたげだ。正式名称を。レガド・モモイロマグロという桃色に釣られて地上に唐突に顔を出して襲いかかってくるモンスター張りのマグロは通常であれば少し遠い位置に桃色の『生き餌』を巻くらしいが。
「いやいやいや?」
しにゃこは首を傾いだ。花丸は納得したように「餌……げふんげふん。しにゃこさんに釣られて凶暴な魚が飛び掛かってきたら皆で仕留めるんだね!」と拳を構えている。
「しにゃこ……凄いな。もはや釣り上げるというよりも、飛んでくるマグロを叩き落とすという様な感じになりそうだが!」
ベネディクトはこれも混沌世界ならではの漁法かと武器を構える。マルクはマグロ以外の魚も捕まえておこうかと頑丈な竿に魚の疑似餌を付けてルアー釣りに挑戦中。仕掛けを堕とす深さや投げるポイントや糸を巻く速さに工夫をしてみせる――が。
「すごいな、しにゃこさんは自らえs……ごほん、囮になってマグロを寄せているのか。でも、これはもう釣りじゃないよね」
「うん。釣りじゃないよね! けれど、これならお祭りも盛り上がるよ!」
花丸とマルク、ベネディクトは餌――ではなくしにゃこラブリーパラソル構えて「ギャアアア」と叫ぶしにゃこを護り続ける。
「皆さんちゃんと援護してくださいよ!? 危なかったら庇ってくださいね!?」
最も目立つ位置に立っていたしにゃこ目掛けて飛び込んでくる魚たち。正に大量そのものだ。
「まさかここまでしにゃこさんが海のお魚にモテモテだなんて思わなかったよね……」
――その様子を港でポメ太郎と共に釣りをしていた誠吾とソフィリアは見詰めていた。
「見てみて、お兄ちゃん達! お魚さん跳ねてる!」
「そ、そうだな……?」
領民と祭りの準備をし、子供に釣りを教えながら眺めていた誠吾はのたうち回るように飛び込んでいくマグロたちが全てしにゃこに引き寄せられていることを知っていた。
「おぉ……本当に、大きな魚がしにゃこさんに飛びついていってるのです……。
こう、なかなか凄い光景なのです……お魚が、一心不乱にしにゃこさんに飛び込んでいって……あ、落ちた」
握る竿も不安ばかり。ソフィリアはついでのように跳ねたマグロを叩き落として呆然と眺めていたのだった。
「スティア、食材届いたから置いておくぜ?
……でもよー。馬車数台分とかどーすんだ? 芋の皮剥きとか、下準備は今のうちにやっておくか?」
「全部使うから! うん、ありがとう。下準備してくれると嬉しいな!」
全部使うってどういうことだよと誠吾は口が裂けても言えなかった。楽しそうなソフィリアと調整に走り回るリースリットが屹度、問い掛けてくれるはず……と信じて。
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領民への招待状は配布済み。特別な日に食べる魚料理などのレシピもしっかりと調査済み。
忘れてはいけないのだと水と氷の精霊の祝福を借りてリースリットは冷やした飲み物を相当量用意していた。
「さて、料理は、まあ、概ねスティアさん一人で量も含めて何とでもなりそうですが……」
それでも、屋台の下準備などは忙しい。港の機能回復確認も含めての祭りではあったが、これだけの賑わいならば手を入れてある程度の規模拡大を図っても良さそうだ。
(今はまだ、民の側に大きな増強を受け止められるだけの下地が足りないから、あまり大規模には無理そうだけれど。
……何れ、王宮に奏上して筋道を作り始めても良いかもしれませんね。皆さんが戻ってきたら魚の質をチェックしてみるのも良いかもしれません)
なんだかんだでとっても真面目なファーレル令嬢。そんな隣で命の危険レベルにジャガイモを剥き続ける誠吾と楽しげに手伝う子供達&ソフィリアは「凄い量の芋だ!」「他には何があるの!?」と馬車一杯の食材を覗き込んでいる。
「んー何を作ろうかなーって考えちゃうよね。まずは、誠吾さんの剥いてくれたジャガイモを使ってなにか作らなきゃ!
皆は何が良いかな? じゃがいものガレットとか……暑いし、ヴィシソワーズも作っとこうかな!
後はトマトとモッツァレラのカプレーゼ、夏野菜のテリーヌ、キャロット・ラペ、ムール貝の白ワイン蒸し。
それにお魚載せても食べれるカナッペかな? カッテージチーズを載せても良いよね!」
うんううんと頷きながら凄い勢いで料理を進めて行くスペシャルお料理ガール・スティア。淡々と下準備は続いていくのであった。
そして――
「大量だよ」
「もの凄かった」
「ああ。凄かった。しにゃこには苦労を掛けたな……」
マルクと花丸、ベネディクトが肯けばぐったりとしたしにゃこが船で『だいのじ』をして倒れている。
「もう無理ー動けないぃ~! 運んで! 食べさせて!! 超頑張ったじゃないですか! もうしにゃこ営業終了です!!」
スペシャルな魚料理を作るから待っていてねとスティアがにんまりと微笑んだ。リースリットは「よければどうぞ」と冷たいジュースを差し出して、運び出されていくマグロを眺めていた。
「皆が帰って来たらマグロの解体だー!」
頑張るぞーと勢い良くマグロを解体し続ける天義の聖職者(体格は1、とっても細いのである。そこは不屈の精神でカバー)。
「あの細い体ですげーな。あ、ここも美味いんだぜ」
中落ち部分をスプーンで刮げ取ってから誠吾は醤油はいるか、と倒れているしにゃこに問い掛けた。練達のお醤油は日本人好みの味わいなのだ。
「はい、あーん♪ う~ん、おいちぃ……お魚もしにゃに食べられて喜んでますよ……。
しにゃにはわかります……この舌で踊ってる感じが……あ、ポメ太郎にも一口分けてあげましょう! どうですか、美味しいですか!?
貴方のご主人が身を張って獲ってきたんですから……味わって食べるんですよ……」
「あうんあうん!」
ポメ太郎がテンションを上げすぎてぐるぐると回っている。港に落ちないように時を配りながらソフィリアは「これがマグロ!」と頬を抑えて喜ぶように誠吾を眺めた。
「これならうちはポキやカツ、唐揚に竜田揚げ等、ちょっと変わった料理を作っていくのです!
このお魚、煮ても焼いても生でも揚げでも美味しいのです。味見、もう一回、ちょっとだけ……」
ソフィリアがスプーンを手にそろそろと近付くその隣で花丸は悪い顔をしながら「いいよね?」とマルクとベネディクトを振り返ったのだった。
これだけ大量なんだから、もうちょっとだけ……もうちょっとだけ、新鮮捌き立てマグロを食べたって……!
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「うーん、カマを塩焼きにしたり、刺身で食ったり炙りで食ったりはできるが料理となると思いつかねー。スティアさんに任せよう」
「任された! とりあえずマグロの舟盛りは作っちゃおう! でも大きいけど全部載るかな?
他にはカルパッチョにしたり、ステーキにしたり、タタキにしたりかな?
マグロ丼に握りも外せないよね! すぐに食べれるかはわからないけど漬けも作っておこう。生卵の黄身を載せて食べれば美味しいからね!」
うきうきと料理を口にするスティアに「お手伝いしましょうか」とリースリットがキッチンに立つ。ささっと、エプロンを手渡して「有り難う!」と微笑むスティアは「塩焼きも良いらしい!」とカマを手ににこやかに微笑んだ。
「んー、アラ汁とかも良さそうだけど暑いよね?」
「ええ、ですが冷たい飲み物なども用意してありますから、色々と揃えて見るのも良いかも知れませんね」
「うんうん! マルクさんとベネディクトさんは待っていてね! あ、誠吾さんも下拵え係だったから待っててね!」
「うちも手伝うのです! 花丸さんはしにゃこさんのお世話をしていて欲しいのです」
「そうですね、しにゃは疲れました」
『だいのじ』をしているしにゃこに花丸は笑いながらポメ太郎の肉球をぷにぷにと押し付けた。
調理スペースには大量の食材が並んでいる。エプロン姿のソフィリアは「スティアさんの量は相変わらず凄いのです」とぱちぱちと瞬いた。いくら食べてもなくなりそうにない量を増産するスティアの出来たて料理達が領民や今回協力してくれた漁師達に振る舞われていく。
笑い声が響く。賑わいを聞きながら「ほら、マグロ」と功労者のしにゃこの口へと料理をぐいぐいと押し付ける誠吾は酒をあおった。
「さぁーどんどん持ってこーい! 甘いジュースもです!!
いやどんどんもってこいとは言いましたけどこれはさすがに量が……ちょっと!
か弱い乙女の口にそんなの押し込まないでください! 無理です無理無理! ぐええええー!」
しにゃこの口に沢山の料理を押し付ける子供達は花丸を振り返り「おねえちゃんがたいへん!」と笑っている。
エプロンを着けて給仕を行っていた花丸は「大丈夫、そのお姉ちゃん喜んでるからね!」と適当なことを言って見せた。
「ちょ、笹木さん!?」
「花丸ちゃん! お料理できたよー!」
スティアの呼ぶ声に「はーい」と返した花丸がとに言ったのは巨大すぎるプディング。
先程、「デザートは何が良いんだろう? やっぱり巨大プディングとかかな? しにゃこさんとか喜びそう!」とニコニコしながら大きすぎるボウルで材料を掻き混ぜていたらしい。リースリットはどの様な大きさになるのだろうかと瞬きソフィリアは目を瞠っていたが――それはそれ。
「で、でかい」
思わず呟いたマルクに「圧巻だな、流石スペシャル……」とベネディクトは呟く。
「あ、一応ちっちゃいのも用意しておいたから、皆で食べようね。さあ、皆でぱーっと楽しまないとね!」
お料理完了だと微笑んだスティアにマルクは大きく頷いた。皆が揃ったのだから、此処からは料理を楽しむだけだ。
リースリットとマルク、ベネディクトの思うところは同じ。賊から奪還し機能が復活したと言えども漁業、海運、港湾開発がお互いを阻害せぬように正しい道を辿っていけるように。
「今日はありがとう、楽しかったよ」
漁師達に声を掛けてからベネディクトは酒を彼等の杯に注ぎ入れた。喜ばしいと笑う漁師達の笑顔を見るだけで、ベネディクトのかんばせにも自然に笑みが浮かんでくる。楽しげに盛り上がる子供達、漁師達の笑い声。
(……少しは領主代行として俺も良い所を見せられただろうか)
領地を治める事は難しい。故に、幻想で黒狼隊はこの地を治めるためにと日々の拠点を得ると共に尽力してきたのだ。
「あっ、やめ、やめてもごもご」
「お姉ちゃんがプリンに溺れてるよー?」
しにゃこの周りを取り囲む子供達と共にポメ太郎が尾を揺らしている。そんな様子を笑いながら見詰める花丸と「す、すごいのです」とぱちぱちと瞬くソフィリア。酌をしながらも領地の様子を眺めて笑う誠吾は「グラス、空いてるぜ」とマルクとリースリットに笑いかけた。
「有り難うございます。此処まで賑わうと思っていなかったので……」
「ああ、そうだな。斯うして、この場所が発展し領民の笑顔を見られるだけでも感無量だ」
冷たい飲み物や料理を楽しみながらリースリットは領民達にも話を聞いてきたのだという。斯うして漁を続けて行けるのであれば、新たな名物を考えて売りに出したり出来れば嬉しいと彼等は言う。自身等だけでも立って生活できるように――その意志が感じられただけでも大きな一歩だ。
「これから更に発展して行く未来があると思えば、喜ばしい」
ベネディクトはグラスをぐい、と傾けてから微笑むマルクが新たな酒を注ぎ入れてくれたことに感謝した。
「さあ、ドゥネーブ港の未来に、乾杯だね」
――けれどスペシャルは程々に。
そう呟いたマルクの声を聞いていたか、遠くでスティアがくしゃみをした気配がした。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
お疲れ様でした。
最近、夏あかねの家の人が釣りに出掛けたことを思い出しました。釣りに行った先で友人が坂から転げ落ちたそうです。
釣りって危険なんだなあ。ね、しにゃこさん!
GMコメント
リクエスト有り難うございます。昨年の5月にドゥネーブ港に行った気がします。夏あかねです。
●目的
・港で豊漁祭りを開こう!
・美味しく魚を食べよう! 一杯作ってもいいんだね、やったー!
以上だ!!!!!
●やること
ドゥネーブの港は小さいながらも美しい港です。貿易港としても使用されています。
今年は特にお魚が沢山獲れるので、領民達から領主代行の館へと差し入れもありました。
この港で楽しくお祭りをしましょう!
やることは『豊漁祭りを思いっきり楽しむ&領民達を楽しませてあげる』事です。
マグロ漁船GPを突然開催しても民は滅茶苦茶喜びます。子供達に漁や釣りを体験させてやるのもよさそうですね。
マグロ漁船GPを開いて漁に出た場合、とても大きくて美味しそうだけれど凶暴な魚が飛び掛かってくる可能性があります。
ピンク色が大好物で、桃色を見ると大きくお口を開けて飛び掛かってきますので注意して下さい。
また、領民達はお刺身はあまり馴染みがないようです。調理方法も基本は焼くことが多かったようです。
色々とレシピを教えて食べ比べをしてもいいかもしれませんね。
基本的には皆さんがやりたいことを何でも出来ますので、こんなのどうかな~?とのんびりとした気持ちで遊びに来ていただけると幸いです。
●漁師たちや領民達
港で漁を行っている漁師達はお祭りに積極的に協力してくれます。
お料理の為のブースの設営やちょっとした縁日なども提案すれば、もの凄く喜んでくれるでしょう。
領民達も是非招待してあげて下さい。特に子供達は皆さんに憧れを抱いていますので、招待して一緒にお料理を楽しんだり作ったりすることを心待ちにしているようです。
●ドゥネーブ領
幻想王国にある海沿いの領地。現在はベネディクト=レベンディス=マナガルム (p3p008160)さんが領主代行を務めています。
イレギュラーズには歓迎的な態度を示すようです。
●情報精度
このシナリオの情報精度はAです。
想定外の事態は絶対に起こりません。
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