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シナリオ詳細

鉄帝ふぁんたじー物語<唸るガラスの靴編>

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 むかしむかし、大体三日前くらい昔の話。
 誇り高きゼシュテル鉄帝国のあるところに、『トゥン・デレヌ』という若い娘がおりました。
 トゥン・デレヌは絶世の美少女でした。

「トゥンはどこなの!? 貴女また掃除もしないで、部屋が汚いったらないわ!」
「トゥンが汚くするせいで食事も取れないわ!」
「トゥン様ステキ! 抱いて!」

 しかし彼女は共に住む継母と義姉たちにいじめられておりました。
 トゥン・デレヌの本当の父親と母親は名のある貴族でしたが、既に他界しており、彼女は日々をとてもつまらなさそうに過ごしておりました。
「部屋が汚いなら部屋を片付ければよいではないか」
 トゥン・デレヌは筋トレで滝の様な汗を流していた傍らに、渋々と部屋を手刀でケーキのように切断して外に棄てました。
 そんなある日、彼女は数日後に遠く離れた領主様のお城で舞踏会がある事を耳にしました。
「武闘会だと……上腕二頭筋が震えるッ!!」
「待ちなさいトゥン・デレヌ! 貴女は舞踏会へ行っては駄目よ!」
「そうよトゥン・デレヌ! 舞踏会へは私達が行って来るから家でクルミでも潰してて!」
「トゥン様ステキ! 抱いて!」

 嗚呼、なんということでしょう可哀想なトゥン・デレヌ。意地悪な継母達は彼女が舞踏会へ行く事を許してはくれません。
 お城へ着て行くドレス(超合金鎧)も売り払われてしまい、トゥン・デレヌは泣く泣く千のクルミを割る内職に就いていました。
 ですがそんな彼女に救いの手を差し伸べる者が現れたのです。
「とんでもねえ家に入っちまった……」
「ヌシらは武闘会へ案内してくれる者か?」
 七人の小人(トゥン・デレヌが3m・盗賊達は1.8m)がカボチャのチャリオットで迎えに来てくれたではありませんか!
 チャリオットにはトゥン・デレヌ好みのドレス(鎧)やガラスの靴(クリスタルブレード)があり、彼女は喜んでその身に纏いました。
 さぁ、あとはお城の舞踏会に行くだけ。
 七人の小人と一緒に彼女の進軍が開始されましたとさ。

●という話です……
 いやそういう話と言われても。卓に集まったイレギュラーズは口を閉じる事も出来ずに首を振った。
「依頼主は件のトゥン・デレヌの継母であるヘザー様が通報した事で動いた、舞踏会を開いた領主本人との事です。
 若き領主は未だ鉄帝の武人としては未熟らしく、とてもではありませんがトゥン・デレヌと一騎打ちするには力不足だとか」
 『完璧なオペレーター』ミリタリア・シュトラーセ(p3n000037)は真面目な顔でそう頷く。
 というか戦いに行くのは問題にならないのか……イレギュラーズは訝しんだ。
「皆様にはこのトゥン・デレヌと七人の小人を……ではなく、七人の盗賊を撃破し、捕縛して頂きます」
「トゥン・デレヌって強いのか……?」
「殴って来ますね。あと鋭い蹴りでしょうか、あ、物も投げて来るそうですよ」
「ミリタリアさんなんかフワッとしてません!?」

 その後、彼女は熱中症で倒れた。

GMコメント

 ちくブレです、宜しくお願いします。

 以下情報

●依頼成功条件
 領主が襲われる前に筋肉美少女と盗賊を倒す(全員重傷に留めて下さい)

●進撃の乙女
 筋骨隆々にして機動力と物理攻撃力に非常に優れた鉄騎種の娘、
 そして偶然押し入った家にそんな化け物がいるとは知らず、脅されるがままに手下となった鉄騎の盗賊団。
 七人の盗賊は主に近~中の戦闘スタイルで戦いますが、実は中距離以上トゥン・デレヌと皆様が離れていると盗賊が一人砲弾として飛ばされます。
 その場合、命中防御判定に関わらず盗賊は一人戦闘不能となります。
 トゥン・デレヌ自身の戦闘方法は完全に脳筋のそれです。イレギュラーズが手を焼くほどではありませんがなんだか迫力に満ちています。
 皆様も対抗して迫力を出してみ……ええ、出してみてはいかがでしょう?

●ロケーション
 領主の城は湖に囲まれた中にあり、皆様に迎え撃って貰う位置は城へ伸びる石橋の上です。
 皆様の他に衛兵が十数名待機してはいますが、鉄騎の武人としては一歩トゥン・デレヌに及ばない為過信しすぎると大変な事になるパターンも。
 指示を出すか、任せるか。事前に領主達と相談して何らかの対策を打つというのもアリです。
 進路予想ではトゥン・デレヌが到着するのは夜間だと予想されます。

 以上、宜しくお願いします。
 イレギュラーズの皆様のご参加をお待ちしております。

  • 鉄帝ふぁんたじー物語<唸るガラスの靴編>完了
  • GM名ちくわブレード(休止中)
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年08月21日 21時50分
  • 参加人数8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧 (8人)

エーリカ・メルカノワ(p3p000117)
夜のいろ
シフォリィ・シリア・アルテロンド(p3p000174)
麒麟の加護
焔宮 鳴(p3p000246)
壊世の焔
ラダ・ジグリ(p3p000271)
剣砕きの
フロウ・リバー(p3p000709)
夢に一途な
レーゲン・グリュック・フルフトバー(p3p001744)
守りたいものの為に
レンゲ・アベイユ(p3p002240)
みつばちガール
カーネリアン・S・レイニー(p3p004873)
ワンダラー

リプレイ

●絶対に解けない魔法~筋肉~
 荒野を一台のチャリオットが粉塵撒き上げ駆け抜けて行く。
 本来は二人乗りが精々であろうチャリオットには、七人の猛者とも呼べる盗賊がまるで不死鳥の羽根飾りの如く後部や車輪上、サイドに張り付いている。
 しかし、首魁が本来乗るべき馬車の上には男達の一人が手綱を握っているばかり。一体彼等をここまで従わせて来た者はどこへ消えてしまったのか。
 その答えは数分後に照りつけられたライトアップによって暴かれる事となる。
 打ち鳴らされる警鐘が銅鑼だった事もあり、明かされた姿に誰もが息を飲んだであろう。
「我ッ、心が躍るッッッ!!!!」
 七人の巨漢が乗るチャリオットを猛然と引いて駆け行く黒き鉄騎馬二頭の背に、クリスタルの刃が取り付けられた魔法のブーツを履いた足を掛けている。それは文字通りの大開脚であり、突風や凄まじい揺れにビクともせず、バランスを保っている姿はどう見ても戦女神の名が相応しい蛮勇の姿であった。
 鷹をも超える悠然さで両腕を広げた彼女、トゥン・デレヌは高らかに名乗りを挙げて(もう名前すら名乗ってないが)星が煌めくきゃるんとした瞳を輝かせて馬を走らせる。
 警鐘、そんな物は聞こえていないとばかりに。

 眼前に広がるのは荒野に作られたオアシス。小鳥謳う草原に囲まれた中にある湖の中央に浮かび上がる領主の居城である。
 城門へと続く唯一の架け橋でもある石橋には数多の雑兵と共に、トゥン・デレヌを待ち受ける最強の八人の姿もまた光源によって照らし出されたのを見据える。
 その容姿、立居振る舞いはいずれも女性(とアザラシ)。トゥン・デレヌの目がカッと見開いた。
「武闘会の番人が娘達ばかりとは、やはり鉄騎の武人を支えるのはいつだって女というわけか……フ、小人達よ! 戦の準備を、武器を取るがいい」
「えええぇぇぇぇ!? あれローレットだろ!? おい誰か止めろこの生粋の鉄帝人! チクショウ死にたくねえ!!」
 泣き言を言っていても、もう遅い。
 石橋の手前でトゥン・デレヌは馬を恐ろしいスピードの手刀で眠らせて急停車させると、盗賊達は慣性の法則で前へ吹っ飛ぶ最中にその場に華麗に着地する。
 鳴り響く轟音、銃声。それは『尾花栗毛』ラダ・ジグリ(p3p000271)が上げた武力による警鐘だ。
────「他でもない今日この時に、この橋を渡る意味を分かっているか」
 威風堂々。豪華絢爛。今、鉄騎の乙女は全身から蒸気を上げて構える。
────「武闘会の飛び入り参加条件は我々と戦い相応の力を示す事だ。……腕試しをしてみるか、鉄の乙女」
 橋の向こうから歩いて来る強敵はいずれも歴戦の面持ち。約一名は孔明の面持ち。
 信ずるは己が鍛え上げた筋肉と体技のみ……!
 いざ、ここに!

●参加者はお並び下さい
 他の仲間より上に立つ感じで低空飛行し、軍師っぽく腕組みをしている『みつばちガール』レンゲ・アベイユ(p3p002240)は絶妙に腹パンしたくなるドヤ顔で一連の流れを見ていた。内心は引き攣っていたが。
「トゥン・デレヌ……なんてむちゃくちゃな娘なの……ていうか、鉄帝にもお城とか舞踏会って概念があったのね」
 微妙に失礼であるが、彼女が知る由もない事をここに認めよう。前領主はメルヘン筋肉だった事を。
「……なんと言いますか……思い込みの激しいお人ですね」
 『夢に一途な』フロウ・リバー(p3p000709)もまた同じく眉を潜めつつ薄っすらと引いた様子を見せる。
 その後方では石橋とトゥン・デレヌ達を照らす領主の私兵が動き回り、なるべく戦闘に巻き込まれない配置を心得ながら様子を見る者達。彼等へ後ろ手に指示を出しているのは『夜鷹』エーリカ・マルトリッツ(p3p000117)だ。
 彼女は背中で着々と準備を終えつつある私兵達の動きを感じ取ると、遂に石橋へ足を踏み入れて来た七人の盗賊とトゥン・デレヌ達へ青い瞳を向けた。
 普段は中々出さない声を出す為に、目いっぱい息を吸って。
「よ、よくぞ参られた、進撃の乙女よ!
 我ら8人の勇士たちを打ち倒し、見事栄光を勝ち取り給え!」
 言い切って、微かに『できたぁっ』という呼気が漏れる。
 堂々と宣戦を布告するエーリカに続き、彼女達イレギュラーズは今こそ各々が胸を張って戦いの幕を開ける役が回って来たと頷いた。
 キリッと孔明顔になる軍師、レンゲ。
「武闘会に行きたいなら、あたしの仲間たちを倒してから行きなさい!」
 尻尾をブンと振って構える炎術師、『緋焔纏う幼狐』焔宮 鳴(p3p000246)。
「そこで止まるの! 『武闘会』に参加するには鳴達と戦って力を証明して貰うの! 証明できない者にここを渡る資格はないのー!」
 華麗なるくっ……姫騎士、オートクレール、またの名を『誓いは輝く剣に』シフォリィ・シリア・アルテロンド(p3p000174)。
「え、ええと、舞踏会、に来るんですよねあの人……持っていくもの、間違っていないでしょうか
 ……ですが戦うからには本気で行きます、舞踏会に行くのならば私達を越えていきなさい!」
 自信満々に、悠然不敵に勇猛果敢に、荘厳不動の構えで彼女達は前へ進み歩んで行く。
 石橋の未だ手前で悲惨な横転事故に見舞われていた七人の盗賊は退路をトゥン・デレヌに塞がれているのに気付くと、目の前からやって来るイレギュラーズの面々と後方の筋肉達磨を見比べて。どう考えても見た目からして喧嘩を売る(戦闘を行う)なら前者であると男達は決意、その間二秒。
 盗賊ならではの下卑た笑みを浮かべながら両手に太刀とショットガンを構える、が……一番後ろの盗賊は不意に肩を叩かれて振り向いた。何故か超接近してきたトゥンが目をキラッとさせて告げる。

「気をつけぇィッッ」
「ひぃあっ!!?」
「背筋を伸ばして動くな、ヌシはこれより、『弾丸』なのだからな」
「ええええ!!」
「ええじゃないッ!!」
 ぱぁん、と乾いた音と同時にビンタされた盗賊は不動の一矢を演じてそこに直立した。目から流れ出ているのはきっと夢の泉かなにかだろう。
 トゥンは彼を丸太か槍の様な気軽さで持ち上げると、先頭を行く盗賊達の頭上を掠める勢いで恐るべき砲撃をその手で為したのだった。

 目にも留まらない速度で宙を突っ切る哀れな鉄騎の男は瞬時にイレギュラーズ──『ワンダラー』カーネリアン・S・レイニー(p3p004873)──へと真っ直ぐに突き刺さった。
「ちょ、嘘……ッ!!」
 油の滲んだオッサンが頭から突っ込んで来た瞬間、ギリギリ腕をクロスして防御するが、足元が一瞬離れ宙を浮いたのに驚いて息を飲む。ついさっきまで横に鳴が居たというのに、後方の私兵達が負傷者回収の為に待機している所まで下げられてしまったのだ。
 盗賊は言うまでもなく戦闘不能となるが、彼女は両腕を痛めただけで済んだ。カーネリアンまで危うく道連れにされる所だった。
 彼女は乾いた声で笑った。
「知り合いにも『美少女』ってパワータイプがいるけど……これは間違いなく気が合いそうだね、ははは」
 カーネリアンが直撃した場面を見てしまったエーリカが遠くから「あわわ……」となっているが、それどころではない。
 仲間が一人盛大に投擲されたのを見た盗賊達は一気に仕掛けて来る。イレギュラーズも遂に石畳を揺さぶる勢いで距離を詰めて行く。
「ひゃはぁぁ!」
「キュ?」
「え、アザラシ……」
 ふわりと、盗賊の目の前に差し出されたアザラシ。その愛らしい姿に逞しい盗賊の男は一瞬の空白に顔をにやけさせる。
 直後に空気が渦巻き、鋭い蹴りが放たれる。その場で男は錐揉み回転して地面に叩き付けられた。
「な、なんだぁ!?」
 後続の盗賊が寸前で止まる。
「それ以上来たらグリュックの華麗な足技が炸裂するっキュ。でも鉄帝の武人がそんな所で震えてるのもヘンな話だっキュ?」
 そこに君臨するは見事な片足立ちで構え、アザラシを抱いている一見獣種の娘にも見える獣人の子供。『森アザラシと魂無き犬獣人』レーゲン・グリュック・フルフトバー(p3p001744)とは彼等二人のことであった。
「上等だオラァァ!! やっちまえ!」
 ショットガンを一斉に撃つ男達。縦横無尽に火花が散り、散弾が石橋を抉る。
「……!」
 外套を掠る弾丸に驚きながらもエーリカの視線が後方の石柱に身を隠しているラダへと向かう。
 その視線は交差し、目配せへと形を変えて。彼女はその場に飛来する弾幕を側転して回避した瞬間、器用に指先に引っ掛けた空き瓶らしき物をヒュウと鳴らし一閃。
「今まであまり知らなかったが、鉄帝ってこんな国だったのか……全くッ」
 殺傷性の無い術式が橋を駆け抜けた刹那、音を遥かに置き去りにした流星が一条。盗賊の足元を爆散させ、衝撃波で薙ぎ倒す。
 石柱から飛び出したのと同時に放ったラダの砲撃は生半な銃撃とは桁が違う。遅れてその場に轟いた轟音がそれを物語り、そしてギリギリ必殺の域に出なかった事から高いテクニックを有している事が明らかだった。
 吹き飛ぶ仲間に呆気に取られていた盗賊の一人もエーリカの術式に絡め取られ、いとも容易く石畳に顔を打ち付けて悶え転がっていた。
 これで、一先ずの形勢と手番(ターン)を彼女達は奪い取った事になる。エーリカがラダに慣れていない感じにサムズアップして声を挙げる。
「みんな、これで行けるよ……!」
「前に出ます!」
「レーさんも行くっキュ!」
 勢いと迫力は充分、後衛であるラダやレンゲに加えてカーネリアンもまた続いて前線を引き上げていった。

●アイアンプリンセス、トゥン・デレヌ
 汚い悲鳴が城へ響き渡る。
「これは……なんという……!」
 今回の依頼における依頼者、領主のジャック・ハウリングはイレギュラーズの一人。ラダの頼みに付き合って件のトゥン・デレヌをテラスから眺めていた。
 最初こそ『ただの小娘に何を大騒ぎしてるんだか』とばかりに鼻を鳴らして見に来ていたが、もう初見でそれも吹き飛び、人間砲弾やそれを受け止めるイレギュラーズに目が飛ぶ勢いで見入っていた。魅入っているとも言える。
 ラダの銃撃と交差する人間砲弾。動けなくなった負傷者を運ぶ前に投げつけられてボウリングのピンみたいに吹っ飛ぶ私兵達。特に理由の無い人間砲弾にされる盗賊の悲鳴。エーリカが避けた事でまた受け止める事になったカーネリアン。
 その傍らで戦士の血筋に目覚めた盗賊のリーダーがシフォリィと紙一重の激戦を繰り広げ、男泣きをしながら敗北する。しかし敗者に用は無いとトゥン・デレヌに投擲された男をシフォリィは受け止め、ここに熱き友情が生まれた事でシフォリィに謎の力が……!

 ……いつしか、領主たる男は未だ自身が体験した事の無い戦場を前にして、手に汗握り目を離せなくなっていた。
(ろ、録画……! 録画撮影したいッ……!)

「ぜぇ、ぜぇ……距離を空けているせいか、頻繁に狙われてる気がする……」
「大丈夫かレイニー、手当てをしてもらった方が良いぞ」
「もうやったよ。そろそろ振り回されるのに飽きて来たってハナシさ」
「なら……合わせるか?」
 既に二度も高速人間砲弾に狙われて少なくない消耗に、肩を上下させていたカーネリアンはラダと共にいい加減目に物見せてやろうという気になったらしい。ラダから出された提案に頷いた彼女は弓を対戦車ライフルと打ち合わせて、近くで何気に容赦ないマギシュートで盗賊の一人を橋から落とした鳴へ声をかけた。
 やる事は、エーリカの時と同じである。

「うぉぉぉぉ……っっ!!?」
「押し、圧し負けるだとう!? 三人がかりだぞこっちはぁ!!」
 トゥン・デレヌに投擲される恐怖から全力で『石橋の守護者』イレギュラーズの前衛と真っ向から打ち合っていた盗賊達が悲鳴を上げ始める。残った三人の剣と銃の入り乱れた戦術は鉄帝らしい猛攻を体現していたが、それを上回る可憐さ……否、華麗で過激な迎撃が或いは押し返して来ていたのである。
「言ったでしょう」
 フロウの拳が、レザーバックラーが突き出された銃口を弾き逸らし、剣戟を全て打ち落とす。
「ここから先は一方通行です、とね」
 左右から繰り出された足払いを華麗に飛び退いて躱すと同時に出て来るのは、銀光と白光の爆発。
 滑る様な移動から爆ぜる、魔剣による無数の剣舞が完全に見切った盗賊の剣戟の隙間を貫き、切り裂いて打ち進むその姿は疲弊しながらも剣先に重みと『冴え』を乗せたシフォリィの物だ。
 愛らしいウインクをするアザラシを抱き締めたまま、凡そ人間離れした動きで銃撃を全て皮一枚のダメージに留めながら地を大回転して振り下ろされる。兜割りに等しい踵落としが鋼の刀を半ばから叩き折って女々しい男を一撃の下に屠る、獣人の舞踏戦士グリュック。
 数秒、たった数秒で最後の前衛は崩され────

「避けな、三人共!!」
────直後。絶好の機会を捉えたカーネリアンからの怒号に続いて。舞い散る花弁の如く、瞬く間に崩れ落ちようとする男達だけその場に取り残される。
 そこへ殺到したのは流星の濁流だ。ラダの銃口から反動を物ともせずに砲撃が連射され、渦を巻くように鳴とレンゲの魔法が、ダメ押しに長矢が次々に撃ち込まれたのである。

 最早、それ以上の音が続く事は無かった。
 押し寄せる暴風に為す術もなく男達は石橋の上を転がる吹き飛び、ギリギリの命を繋ぎながら私兵達に回収されていくのがオチであった。
 残るはそれまで悠々と歩いて来ていたトゥン・デレヌ一人だ。
「……私をここまで導いてくれた事に感謝する、小人達よ」
「どこの世界にあたしより頭ひとつも大きな小人がいるのよ!!」
「感謝してる行為じゃなかったよねさっきの人間砲弾……!?」
 軍師とエーリカのツッコミが炸裂する。
 だが、いよいよこれで彼女一人である。つまりイレギュラーズの勝利に等しい。だというのに件の娘は一歩も退く気配は無く、更なる闘志を漲らせて近付いてくるではないか。
 ラダが前に出る。
「もう分かっている筈だ、トゥン。領主と戦う事は出来ない、戦力の差は歴然の筈だ……今なら情状酌量の余地もあるかもしれないぞ」
「分かっているとも。真の強者はここで屈せずに勝利するのだろう」
「違うそうじゃない」
「無論。私は勝てぬだろうが敗れもせぬ、さぁ来い長柄の銃を持つ人馬の戦士よ」
「違うそうじゃない」
「ならば行くぞッッッ!!!!」
 交渉が効かない相手もいる事を学んだラダの夜。

 強烈な地響きと揺れが起きたのは、トゥンが全力で踏み込んだからだろう。
 自身が砲弾の如く突進して狙ったのはシフォリィである。二倍近い背丈のトゥンが振り下ろした手刀を白銀の火花を瞬かせた彼女は、返す刃で斬り上げようとする。が、その刃を敢えて胸元を高速で張り付けた事で弾かれてしまう。
 石畳を軽快なステップで距離を詰めたグリュックの猛烈な蹴りが、脚が、トゥンのクリスタルブレードブーツと太刀打ちする。シフォリィの差し込んだ剣を脇に挟んで鮮血を散らしながらも、怒涛の足捌きでグリュックと打ち合い、鍔迫り合いを演じ、獰猛な昆虫界に属する捕食者同士の死闘を思わせる息も吐かせぬ蹴り合いが連打された。
 ガラスの靴が、砕ける音が鳴る。
 頭上から飛び上がって来たフロウが両拳を打ち合わせて打ち放つ衝撃波が、聖なる波動が爆風となってトゥンをその場に縫い付けた。瞬間、鎧を貫き立つ長矢。カーネリアンが精密射撃を放った事に気付いた四者はその場から素早く飛び退いた。
 ラダから撃ち鳴らされる轟音、石畳を抉り飛ばす砲撃。しかし狙撃は失敗に非ず、エーリカとレンゲ、鳴が一度に放つ魔術掃射にトゥンは果たして反応し切れたか……否、否否。それらに反応出来はしても避ける事はままならず。トゥンが遂に膝を地に着けた。
「これで……!」
 前衛三人衆が跳ぶ。畳みかける事こそが定石にして、必勝であると知っているからこそ。彼女達の全力の一撃が向かう……!
「終わり、っキュ!」
 シフォリィの剣に銀光が宿った直後、信じられない動きで飛び上がり、剣と魔法剣の双方を絡めた連撃の全てをトゥンは受け切る。無傷で弾くのではなく、正しく、肉を切らせてでも刃を掴み取り、或いは殴り飛ばして魔法によるダメージを逃がしたのだ。
 だが、それも一瞬の攻防の一端。グリュックが打ち込んだ鋭い蹴りに初めて乙女の巨体が後ろへ滑り退き、フロウのバックラーが閃光を放ちながら星が煌めく瞳のある……頭部。正確には顎を、衝撃波と共に打ち上げて飛ばした。
 人体から鳴ったにしては強烈な岩と岩がぶつかる様な、稲妻の如き音が鳴り響いた直後。
 石畳に叩き付けられたトゥン・デレヌは遂に動かなくなったのだった。

────パチパチパチパチ……!

「ブラァボォォォォオ!!」
 静かになったその場に聞こえて来たのは領主からの惜しみない拍手と、戦いを見守っていた兵達からの称賛の嵐であったという。


●眠り行く乙女が夢の中で聴こえた言葉
「トゥン、あのね。あなた、とってもつよくてすてきだったの。
 でも……あんまりものをこわしちゃだめだよ。真の戦士は、慈愛に満ちた存在でなくっちゃ……だめ?」
 
 駄目じゃない。
 私は、そんな人に出会いたいの。
 そう夢の中で乙女は答えたという。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

カーネリアン・S・レイニー(p3p004873) [重傷]
ワンダラー

あとがき

 のちに、妻が大乱闘してる姿見たさにすんごいのを嫁にした鉄帝の領主が誕生したとか……めでたしめでたし。
 領主を呼んだことで武勇を褒め称えられ、結果的に領主お抱えの私兵の一部となった盗賊達とトゥン・デレヌ達。
 イレギュラーズの武勇もまた広がる事となり、まさに成功でしょう。

 お疲れ様でしたイレギュラーズの皆様。
 またのご活躍をお待ちしております。

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