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シナリオ詳細

<太陽と月の祝福>揺り籠の悪夢

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●天使強襲
 深緑決戦の舞台が、上層へと移ったころ……。
 アンテローゼ大聖堂はこの時、未曽有の大混乱に陥っていた。
 突如として現れた異形の怪物たちが、アンテローゼを襲ったのである。
「なんなのですか、この悍ましい怪物たちは……!?」
 大聖堂に集った聖者たちが、恐怖の声をあげる。一言で言えば、現れた怪物たちは、一言で言えば赤子のような姿をしてた。だが、複数の太い腕、無数の眼、それは子供が粘土細工に無邪気な狂気を乗せて作り上げた被造物のようにも見える。
「アアアアイ、シテシテシテコロシテ」
「ウルルルルィィィアアア、イタイイタイイタイ」
 奇妙な声をあげながら、無数の赤子――『量産型天使』達が、アンテローゼへとなだれ込む。聖職者たちが姫をあげて逃げ惑うのへ、その爪腕を振るい、天使をなます切りにしたのは、ハウザー・ヤークだ。
「戦えねぇ愚図は聖堂に引きこもってろ! 邪魔だ!
 少しでも戦える奴は死ぬまで働け!」
「ハウザー、こいつらやべぇぞ!」
 凶(マガキ)の傭兵が声をあげる。天使たちの群れは無尽蔵にも近いように思え、凶の傭兵たちは敗北こそはしないものの、じり貧にも近い様相を呈していた。
「凶がこんなゴミ共に負けるわけがネェだろうが! 次に泣き言を言ったら殺す! 負けたら殺す! いいか、敵を皆殺しにしろ!」
 ハウザーが叫び、無数の天使たちを瞬く間になます切りにしていく。だが、それでも次から次へと現れる天使たちが、狂ったようにその巨大な斧のような武器を振るい、襲い掛かる。
「単調な連中だが……何せ数が多い。なんだ、鉄砲玉か、捨て石か?」
 柄にもねぇな、とハウザーは胸中で呟く。だが、ハウザーの本能が何か奇妙だ、と察したように、彼らの行動は奇妙ではあった。天使たちは、勝ち目のない戦を挑んでいるようにも見える。ひたすらに切り込み、斬りこされ、また切り込む。まるで、此方を消耗させることそのものが目的のように。
 ハウザーが天使を迎撃すると、その天使たちの悍ましい群れの中に、一体の、機械の騎士のような存在が目に映った。指揮官か? だが、何か指示を出しているようには思えない。見ている……待っているのか? 何を待つ? 無尽蔵の手下たちによって、俺たちを疲弊させて……。
「消耗……俺たちを疲れさせる。それでどうなる? 俺たちが疲れて……俺だったらどうする?
 目の前に疲れ切った獲物がいる……ハイエナは気に入らねぇが、そりゃ絶好の獲物だ。
 なら――こいつは、俺たちを獲物にするための下準備か」
 ぎり、とハウザーがその口の端をかみしめた。その目に怒りが燃える。
「おう、そこのクソ機械野郎……テメェ、俺を食う気か?
 その意気は買う。だがやり方が気に入らねぇ!」
 轟、とハウザーが吠えた。機械の騎士を狙う! だがそれを阻止するように、無数の天使たちがハウザーに組み付いた!
「クソが、邪魔すんじゃねぇ、殺すぞ!」
 ハウザーは紙をちぎる様に天使たちを皆殺しにしていくが、しかしそれを上回るがごとく、天使たちは次々と現れては特攻のようにハウザーに襲い掛かる。如何にハウザーと言えど、このままで機械の騎士に近づくことは難しい――。
 刹那。
「まーーーーにあいましたああああーーーッ!!」
 聞こえるは叫び。同時、強烈な闘気の炎が、天使たちを薙ぎ払った!
「その技……冰星だな!?」
 ハウザーが叫ぶのへ、冰星……黎 冰星(p3p008546)が、すたっ、と地に着地。ハウザーへと駆け寄る……のを、ハウザーは豪咆でとめた。
「お前何しにきやがった! カロンはどうした! 助けに来たとか抜かしたら殺すぞ!!!」
「ひえぇ! 滅茶苦茶すぎる! でも好き!
 ……じゃなくて! 助けに来たというか、いやハウザーさんなら何とかできると思うんですが、こっちもローレットとしての仕事なので許してください!」
「それに、どうもあいつら、私とも縁深い相手みたいでね」
 と、そういうのは長月・イナリ(p3p008096)だ。静かに見つめるその視線は、機械騎士に注がれている。
「……クレイドル。あいつの目的は、経験値の収集。つまり、天使でこちらを疲弊させて、楽に倒してデータを収集したい、ってわけ」
「思った通りか、クソが!」
 ハウザーが吠える。
「なら、データなぞ取らせる前に俺がぶち殺してやる!
 お前らは雑魚を散らせ! それでも余裕があるなら来い! だがそのまえに俺がぶち殺す!」
 ハウザーは吠え、暴風のごとく機械騎士に襲い掛かった。慌てて追おうとするイレギュラーズ達だが、目の前に無数の天使たちが立ちはだかる!
「なるほど、結局は、こいつらを散らさないとクレイドルには向かえなさそうね」
「待っててくださいねハウザーさん! すぐ行きますからね!」
 イナリ、冰星が構える。とにかく、この天使たちを突破し、この群れを率いていると思われるクレイドルと呼ばれた機械騎士を倒さなければ、アンテローゼが陥落しかねない!
 イレギュラーズ達は意を決すると、異形の天使の群れへと飛び込んだ!

GMコメント

 お世話になっております。洗井落雲です。
 以前、深緑で一度姿を現した異形の天使たち。
 彼らは、『クレイドル』と呼ばれる機械騎士と共に、再び姿を現しました。
 クレイドルを迎撃し、天使たちを追い払ってください!

●成功条件
 クレイドル一号機を迎撃する。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

●状況
 決戦の最中、突如としてアンテローゼ大聖堂に、無数の『量産型天使』の群れが現れました。
 彼らは無尽蔵に現れ、此方を疲弊させるべく特攻を繰り返しています。
 どうやら、指揮官である機械騎士『クレイドル一号機』が存在することに気づいたハウザー・ヤークは、単身クレイドルに立ち向かいます。
 一方、現場に到着した皆さんもクレイドルを倒すべく進みますが、その前に無数の量産型天使たちが立ちはだかりました。
 この天使たちを速やかに突破し、クレイドル一号機へ突撃、ハウザーと協力し、これを迎撃してください。
 作戦エリアは、アンテローゼ大聖堂付近。あたりは開けており、ペナルティなどは発生しないものとします。

●エネミーデータ
 量産型天使 ×13
  皆さんの前に現れた、13体の量産型天使です。
  基本的に知能の程度は低く、連携などは行わずに突撃を繰り返してきます。
  今回現れた個体は体力・防御能力面では低いですが、攻撃面に特化した、鉄砲玉みたいな性能をしています。
  攻撃を許していては、じり貧に追い込まれかねません。
  そもそも前座ですし、最大火力を叩き込んで、さっさと蹴散らしてしまいましょう。

 クレイドル一号機 ×1
  クレイドルと呼ばれる機械の騎士のような外見をした謎の敵です。どうやら、量産型天使を率いているようです。
  この敵を倒せれば、量産型天使たちも退くでしょう。
  見た目通り、硬く、タフな重騎士タイプの敵です。
  EXAはやや低めで、手数は同性能のボス格よりは少ないですが、それでも連続攻撃の警戒は怠らず。
  重い剣の一撃は、『ブレイク』などで皆さんのバフをはがしにかかるでしょう。『出血系列』なども持ち合わせています。
  ハウザーを相手どれるほどの敵です、警戒を。

●味方NPC
 ハウザー・ヤーク
  凶を率いる強力な傭兵です。
  単体でもクレイドルを相手どれるほどの実力で、放っておいても沈むことはないでしょう。
  が、メタ的な事を言えば、ゲーム的な事情で彼単体では状況をひっくり返すことはできません。
  このシナリオの主役は、あくまでみなさんなのです。
  それに、合流して力を見せてやった方が、ハウザーからの覚えも良くなるでしょう。

 それでは、皆様のご参加とプレイングを、お待ちしております。

  • <太陽と月の祝福>揺り籠の悪夢完了
  • GM名洗井落雲
  • 種別通常
  • 難易度HARD
  • 冒険終了日時2022年06月29日 22時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

セララ(p3p000273)
魔法騎士
咲々宮 幻介(p3p001387)
刀身不屈
シラス(p3p004421)
超える者
長月・イナリ(p3p008096)
狐です
エルシア・クレンオータ(p3p008209)
自然を想う心
黎 冰星(p3p008546)
誰が何と言おうと赤ちゃん
ルナ・ファ・ディール(p3p009526)
ヴァルハラより帰還す
シャールカーニ・レーカ(p3p010392)
緋夜の魔竜

リプレイ

●天使と揺り籠
「あぁぁ、ころ、す、して、してぇぇぇ」
「いだいいいい、いだ、いだいいいい」
 無数のうめき声が、現れた無数の『天使』たちが、今まさに雪崩のごとく突撃する。
「雑魚共を散らせ! 俺はあの機械騎士をやる!」
 ハウザー・ヤークは雄叫びをと共に、突撃――機械騎士、それは『狐です』長月・イナリ(p3p008096)が『クレイドル』と呼んだ個体だった。
「たぶん、それが統率個体よ!」
 イナリが叫ぶ。
「それさえ倒せれば、雑魚は退くわ!」
「丁度いい!」
 ハウザーが、暴風のごとく飛び掛かる! その両手の鋭い爪を輝かせ、突貫! ――その隣に、追走するように飛び込んできたのは、『ラサの悪魔(出禁)』黎 冰星(p3p008546)、そして『刀身不屈』咲々宮 幻介(p3p001387)だ! 両隣をカバーするように駆ける二人に、ハウザーは吠えた。
「何しにきやがった! まさか俺を援護するなんていうつもりじゃあねぇだろうな!」
「ひえっ! そういう訳でありませんがっ!」
  冰星がそう言って、頷く。
「元より、あれの相手は僕たちも望むところ。これは作戦って奴ですよ!」
「左様でござるよ」
 幻介が言った。
「結局は全てまとめて倒す相手で御座る。仲間が雑魚を散らす間の足止め……いいや、このメンバーで倒してしまっても問題はないわけで御座ろう?」
「ふん。足止めに徹する、とか言い出したら殴り殺してやろうと思ったが――」
 ハウザーが獰猛に笑った。
「気に入った。いや、俺一人じゃねぇのは気に入らねぇが、お前らの意は汲んでやる。
 ここまで来たんだ。お前達の力を、俺に見せてみろ。
 特に冰星。お前、俺に恥をかかせて(期待を裏切って)みろ? 本当に殺してやるからな」
 にぃ、と笑うハウザーに、 冰星は、力強く頷いた。
「ええ、ええ。もちろんですとも!
 貴方に認められる為なら、僕は全てをかなぐり捨ててやる!
 さあ、行きますよ!」
「やれやれ、はやく片付けてこっちに……とは言えない雰囲気で御座るな!」
 幻介の言葉。同時、眼前の機械騎士が、まるで此方の接近にオートマチックに反応するかのように、武器を構えた。
「ついてこい」
 ハウザーが吠える! 同時、まさしく颶風となったハウザーが突撃! クレイドルが手にした大鎌のような武器を振り下ろした! ハウザーが紙一重でそれを回避、クレイドルに殴りかかる!
 クレイドルは、人間のそれでは追い付けぬ速度で、大鎌を振り上げた! ハウザーの爪と、大鎌が交差する。鋭い金属音が鳴り響き、流石のクレイドルもたじろぐ!
「来い!」
 ハウザーが二人を呼んだ。
「はーいッ!」
「承知ッ!」
 冰星と幻介が応じる声と共に突撃! 振るわれるは、幻介の刃! 七色のごとく変幻する一刀、不捕の剣閃が、この時クレイドルの装甲を捉える! 金属を、金属が奔る音! 鋭き刃はクレイドルのボディを捉えつつ、しかしまだ命をとるには至らない!
「こっち、ですッ!」
 自身の速度を乗せた一撃を、冰星が見舞う! 幻介の斬撃に続いて放たれたそれは、クレイドルに直撃した。金属がへこむような強烈な打撃音が鳴り響き、クレイドルの外装がへこむ!
 クレイドルは、打撃の勢いを殺すように航法に跳躍した。そのままぐるり、と大鎌を振り回し構える。
「まだまだ健在、で御座るか」
「僕に出来る精一杯でクレイドルを引き付けます! さあ来い!」
 冰星が構えるのを、値踏みするようにクレイドルが睥睨する。その鉄仮面からは表情はうかがえないが、此方の強さを、得られるであろう経験を値踏みしているのか?
「気に入らねぇ視線を感じるな。俺たちをエサだとでも思ってるらしい」
 ハウザーが獰猛に笑う。
「行くぞ。俺たち3人で奴を殺すつもりで戦え」
「お任せを!」
 冰星がそういうのへ、幻介は静かに微笑って刃を構えて見せた。

 一方――残る六名のイレギュラーズ達は、13体もの量産型天使と相対している。
「うわわ! すごい見た目の敵だね。
 怠惰の魔種って感じでも無いし、大樹の嘆きでも無い……」
 聖剣と盾を手に、じり、と警戒するように距離を詰めるのは、『魔法騎士』セララ(p3p000273)だ。ちらり、とイナリを見やり、
「正体は……なんなの、これ?」
「さぁて……私も詳しくは、まだ知らされていないわ」
 イナリがいう。
「ただ、これだけは確実。天使を自称していること。あの機械騎士……クレイドルは、経験を積むことを目的としていること。混沌肯定に則ったまま、強くなるためにね」
「経験を積む、だ?
 俺達を相手に経験値稼ぎとは言うじゃねえかポンコツ」
 鼻を鳴らして見せるのは『竜剣』シラス(p3p004421)だ。ちらり、とクレイドルの方を見やれば、激しい戦いが繰り広げられているのが分かる。
「……アイツのための経験値でも、この気持ちの悪い雑魚共のための経験値でもなさそうだ。
 クレイドルからは、意志を感じられない。まるで、何かに指示されているだけみたいだ」
「なんにしても、この天使? をやっつけないと不味いよね!
 相手の目的を考えるのは、ひとまず後!」
「ええ、そうです。でなければ、態々狂言回しまでして、攘夷派に染まった哀れな同胞たちから大聖堂を守ってみせた意味がなくなります」
 『自然を想う心』エルシア・クレンオータ(p3p008209)が嘆息するのへ、『ベンデグースの赤竜』シャールカーニ・レーカ(p3p010392)が頷いて見せた。
「確か、報告書によれば賊共に襲われたそうだな……流石に重要拠点だ。アンテローゼが狙われるのは仕方ない……が」
 レーカが頷く。
「こいつ等にとっては、たまたま戦えるものが多かったから、ここを選んだ気がしないでもない」
「ええ、それはそれで業腹というものです。
 戦略的見地でもなく、ただ『そこにいたから』という獣じみた論理で私の努力を無に帰そうというのなら」
 エルシアは静かに、息を吐いた。
「森の肥やしにされても、文句は言えないでしょう」
「ハッ……違いない!」
 不敵に笑う『探す月影』ルナ・ファ・ディール(p3p009526)。
「しかし、ハウザーの奴も随分と気持ちの悪い天使どもを侍らしてるもんだ。人徳って奴か?」
 からかうようなルナの言葉に、遠くから「うるせえ!」と声が聞こえる。
「おう、相変わらず元気そうだ。終わったらまた風呂にでも入るか? 返り血浴びて帰ったら、イヴにクセェっていわれんぜ?
 ……っと、ふざけるのもこの位にしておくか」
 ルナの口元から笑みが消える。
「ころすころすころすするるする」
 呻くような声をあげながら、巨大な斧を持った天使たちが迫りくる。悍ましき、恐怖の光景。気の弱いものなら吐き気を催しそうなものだが、イレギュラーズ達にとっては倒すべき標的に過ぎない。
「やってみろよ――量産型。
 一人一人が一騎当千のイレギュラーズの力を見せてやる」
 ルナが跳ぶ――その背には翼が生えているかのように……いや、その例えは適切ではないだろう。翼の力ではない、彼の鍛え抜かれた脚が彼を高く跳躍させたのだ。そして、その背にのせるは勝利と栄光――さらに、絆紡いだ友。その屈強なる脚に導かれた友が、ルナとの連鎖的な行動を起こさせた。
「ついてこい――なんて、言うまでもねぇ!」
 言葉と共に、ルナは雷撃となった。地を奔る雷。その脚が可能とした、超高速・神速の戦闘移動! 刹那、ルナは一体めの天使の眼前に立っていた。その勢いのまま、雷霆と化した前足の一撃を叩き込む!
「るうういいい」
 呻きを声をあげる天使の顔面に叩き込まれた前足が、天使を叩きつぶした。ぐしゃり、と脆くも崩れ去る天使を踏みつけ、ルナは再び跳躍する。ヒットアンドアウェイ。
「悪趣味な面しやがって、望み通りぶち殺してやらァ!」
 続いたのはシラスだ! 放つは『火球』。シンプルに名付けられたそれは、最も分かりやすい破壊の形である。破壊者としての炎、全てを飲み込む怒りのそれは、殴りつけるように打ち出されたシラスの拳から放たれた!
 轟! プラズマ化するかのような極炎が空気を裂く! それは天使たちのまっただ中にぶち込まれ、広範囲を焔獄の園へと変貌させる!
「ぎっ、ぎっ」
「しねるるるるるる」
 天使たちが雄叫びをあげながら、焔獄へと堕ちていく。その獄炎の中からも、何匹かの天使が飛び出してくる。その身体を炎に焼かれながら、しかし狂ったような眼で迫りくる、赤子の姿をした何か。それがシラスに迫り、強烈な斧の打撃を見舞う!
「チッ!」
 シラスは即座に飛びずさった。紙一重に躱した頬に、一筋の傷が走る。
「攻撃力は十分です、ってか!」
「ですが――足を止めてしまえば、問題ないでしょう?」
 エルシアがその手をゆらりと掲げれば、涙の如きしずくが大地へと落ちる。途端、無数の茨が大地より這い上がり、天使たちを飲み込んだ!
「いたいいたいいたい」
「くるくるくるくる」
 奇怪な悲鳴を上げる天使たち。体勢を崩した天使。一方、その茨から逃れた天使は、セララが聖剣で切り捨てた。
「うう、やっぱり気持ち悪い!」
 僅かに嫌そうな顔をしながら、セララが、むぅ、と唸った。
「なんか……精神的ダメージって奴? そういうの狙ってるの!?」
「さぁ、制作者の趣味じゃないかしら!?」
 セララの言葉に、イナリは相槌を打ちながら、金属製並みの鋭さを誇る木製のダガーを、天使の首筋に突き刺した。そのまま容赦なく首を引き裂くと、天使が悲鳴を上げて倒れ伏す。
「趣味悪いよ! やめて、って伝えたい!」
「同感だわ。悪趣味すぎるものね!」
 セララが叫びながら、聖剣を叩きつける。強烈な斬撃が、天使を切り裂くと同時、イナリのダガーが翻り、天使の首を斬り落とした。
 順調に天使を落としていくイレギュラーズ達だが、それでも敵の数は多い。そして天使の一撃一撃は強烈で、残った天使たちの攻撃は、確実にイレギュラーズ達に傷を負わせていた。
「エルシアを守って、レーカ!」
 セララが叫ぶのへ、レーカが頷く。
「お任せあれ。
 さぁ、プリンセス。こう見えて守護は苦手じゃない。この戦いが続く間は、何に換えても護りきることを約束しよう」
 レーカは手にした斥力シールドを起動すると、敵の攻撃にさらされたエルシアの守りにつく。強烈な斬撃を、レーカはシールドで受け止めた。僅かに手がしびれるが、無論、この程度で倒れるレーカではない。
「近くで見れば見るほど……嫌になる顔だな。
 ワイバーンの方がよっぽど愛嬌があった」
 レーカがシールドの出力をあげ、天使を圧し返す。転んだ天使を、エルシアの茨が天使を飲み込み、そのまま土の中へと引きずりこんだ。
「ありがとうございます。勇敢なる騎士様……とお呼びした方が?」
「騎士の真似事くらいはするつもりだが」
 エルシアの言葉に、レーカが頬をかいた。
「……くすぐったいな。普通にしてくれ」
「ええ、ではそのように」
 エルシアがくすりと笑う。
 一方残る仲間達の進撃は続く。冰星と幻介の2名をクレイドルに向かわせた結果、殲滅速度はおちているが、天使攻撃中の味方をクレイドルに攻撃させずに済んだ、という点で見れば、充分な見返りと言えた。
「いいぞ、順調に潰せてる……とは言え、まだまだ前座だがな!
 っかし、単純につっこんでくるだけの連中か? 楽なもんだ。
 後ろの奴も、群れの長を気取るならもうちょいマシに率いてみろや、クソが」
 挑発するように言うルナに、しかしクレイドルは応えない。
「奴さんには挑発に乗るほどの頭もないとさ」
 シラスがそう言いながら、天使を蹴り飛ばす。奪命の一撃が、その言葉の通り天使の生命を奪い取り、停止させた。
「が、腕の方は確かみたいだ! まだおとせてないとなると……!」
「見た目通りに堅そうね! 私も情報だけしか知らなかったから、直接相対するの初めてだけど……!」
 イナリが言う。手練れの三人を以てしても、未だ落としきれぬは流石は指揮タイプか。
「けど、こっちも不細工共は全滅させた! すぐに本番に取り掛かるぞ!」
 シラスの言葉に、ルナは頷く。
「よし、行くぞ! 俺に続け!」
 再び、絆の友を乗せてルナが走る。
「行くわよ、皆!
 あのクレイドル! バラバラに解体して解析して私達の記録に一部にして上げるわ!
 そして、行きつく先はスクラップ置き場よ!」
 血気盛んに叫ぶその言葉に、イレギュラーズ達は頷くように駆けだした。

●揺り籠は飛ぶ
「へばってねぇだろうな! 冰星! 幻介!」
 ハウザーが雄叫びをあげるのへ、二人は頷いた。とは言え、ハウザーに比べれば、二人は相応の傷を負っているといえるだろう。クレイドルは強い。その一撃を受ければ、如何に冰星と幻介と言えど、負傷は必至。
「もちろんですよ! 何度殴られたって立ち上がってみせる……! 僕は!」
 決意の表情と共に、力を籠める冰星。
「付き合うで御座るよ、とことん迄」
 幻介が刃を構える。ハウザーが吠えた。
「奴を仕留めるぞ!」
 ハウザーが飛び掛かる! 強烈な爪の一撃を、クレイドルは大鎌で受け止めた。が、これは計算通りの防御反応だ!
「前座みてぇで気に入らねぇが、やれ!」
「はい!」
 冰星が陰陽刀を振り払い、クレイドルの左腕装甲を切り裂いた。ばじり、と音を立てて、内部の機械が露出する。
「幻介さん!」
「承知!」
 幻介が、その内部機械へと刃を振るった! パイプの一つが切れたのか、流血するがごとく液体が流れだす。
「今到着だ!」
 ルナが叫び、仲間達と共に戦場へと到達した! シラスが飛び込むと、上空から速度を乗せた飛び蹴りを見舞う! 奪命の一撃!
「よう、ブリキのぽんこつ野郎!」
 シラスの飛び蹴りが、クレイドルの左腕を蹴り飛ばす! 耐え切れなくなった左腕が千切れとんだ! クレイドルは大鎌を振り払い、シラスを振り払った。振るわれた大鎌を蹴り飛ばし、後方へ跳躍したシラスが、
「エルシア! 足止めて! セララ、アタック!」
「かしこまりました」
 エルシアが再び涙の如きしずくを地に落とせば、瞬く間に茨が地より舞い踊り、その蔓でクレイドルを締め付ける!
「連撃! ギガセララブレイクだーっ!」
 セララが上空から、大上段の一撃を放った! 天雷を受けて輝く聖剣! その雷を叩きつけるかのような、激しい斬撃! たまらず身をよじったクレイドルの、背後装備をその一撃が切り裂いた。背部に搭載された武器が激しく爆発を起こす! クレイドルは必死に反撃を行う。その尻尾のような武装を鞭のように振るい、前方のイレギュラーズ達を薙ぎ払う――が、レーカが前に出て、それを受けてめて見せた。が、被害は大きい、強烈な衝撃が、レーカの身体を駆け巡った。
「もはやこれまで……などと、この程度で言うと思ったか?」
 ギリギリのところで踏みとどまったレーカが、不敵に笑う。
「奴も限界だ! 止めを!」
 レーカが叫ぶのへ、イナリは頷いた。
「行くわよ、皆!
 奴らの好きにさせないわ!」
 叫び、その姿が掻き消えた。刹那にインストールした術式が、イナリの身体能力を向上させていた。まさに神速の如くクレイドルの背面に回り、右腕の関節部にダガーを叩きつける!
「これで丸裸!」
 てこのようにダガーをひねれば、関節から右腕が破砕された。すぐさま飛び込んだ冰星と幻介が、二振りの刃を、連続で振りはった!
「これで!」
「お終いです!」
 二刀が、クレイドルの胸を切り裂く! 装甲の隙間から見えたものは、揺り籠の中に隠された、丸い機械のコフィン――。
 刹那、クレイドルが激しく爆発を起こした。イレギュラーズ達が身構えた瞬間、先ほど見えたコフィンがクレイドルの身体から発射される。
「なんだ……!?」
 ハウザーが叫ぶのへ、イナリが舌打ちをした。
「逃げた……!? あれが、クレイドルが経験値を与えてた『何か』……!?」
「ちっ、目的は達成されたか……だが」
 ハウザーが周囲を見やる。統率者を失った天使たちは、これ以上増産されないようで、『凶』の傭兵たちによって次々と打ち倒されている。実際、ほどなくして天使たちは全滅していた。
「勝ちは勝ちだ。フン、相応に使えるじゃねぇか、お前ら」
「そりゃどうも」
 ルナがいうのへ、ハウザーが鼻を鳴らす。
「大聖堂に避難してる人たちが心配です! 僕、ちょっと見てきますね!」
 冰星がそう言って駆けだしていく。ハウザーが、その姿を追いつつ、愉快気に口元を釣り上げて見せた。
 一方、幻介は、エルシアへと声をかけていた。
「無事で御座るか、エルシア……他の皆も」
「ええ、私の方は。出来れば、私だけを見て欲しかったですけれど?」
 そういうエルシアに、幻介は咳払いしてみせる。
「エルシアには傷一つつけていないよ。安心してくれ」
 レーカが言うのへ、シラスが肩をすくめる。
「無理すんなよ? アンタも傷は深い」
 レーカが「ああ」と頷いた。
「イナリ、何かわかりそうかな?」
 セララが言うのへ、クレイドルの残骸を確認していたイナリは頭を振った。
「そうね……持ち帰って、調査してみないと何とも言えないわ」
「天使、か。気味悪いけど、何が目的なんだろうね」
 セララの言葉に、イナリは空を見上げた。
 揺り籠から飛び出した何かが消えていった空。
 不吉のそれの軌跡を見やりながら、
「ろくでもない目的よ」
 イナリはそうとだけ答えた。

成否

成功

MVP

ルナ・ファ・ディール(p3p009526)
ヴァルハラより帰還す

状態異常

なし

あとがき

 ご参加ありがとうございました。
 クレイドルから飛び去ったものの正体は、今のところ不明のままです。

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