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シナリオ詳細

<太陽と月の祝福>炎のなかで、君が『なく』

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 『冠位暴食』ベルゼーは、龍種達を連れ去っていった。伴った犠牲は少なくなく、余談が赦すのならば声を上げて嘆きを伝えたい者がいたことは間違いない。
 だが、現状に於いて一切の余談は許されない。未だ大樹ファルカウは危機的状態を脱しておらず、『冠位怠惰』カロンの配下の者達、それに伴う『大樹の嘆き』、ことオルド種と呼ばれる強力な個体達や怪王種と化した夢魔達が闊歩する状況にあるのだから。
 だが、嘆くばかりでは芸がない。目下最悪の強敵であった龍種は去り、一部の大樹の嘆きは『レテート』の献身により開放され、友軍として機能している。
 カロンと、それに連なる者達を撃破するための絶好機がそこにある。大樹ファルカウ解放の為には、一刻も早く駆け上がり、襲い来る者達を並べて切り捨てねばならぬのだ。


『ここだよ』
『あやつられているんだ』
『たすけてほしい』
『殺してほしい』
 イレギュラーズが大樹中層で見たものは、瞳に光を失った幻想種達と、その周囲を飛び回る炎、そして燃え上がる大樹の姿だった。
 大樹が燃えているのは先刻承知。幻想種(なかま)が操られている例も今までにはあった。炎も、つきつめれば魔物のひとつなのだろうと推察できる。
 だが、四方八方から聞こえてくる声がおかしい。
 助けを求めているような声は脳裏に響く念話形式のもの。手に手に武器を持って歩みくる人々の心の声……だとするにはあまりにも攻めかかる姿勢に躊躇がなさすぎる。
 操られている、脅迫されている――とみなすにはあまりにも彼等の動きには淀みがないし、そういった感情があれば肉体に多少なり鈍さが反映されるはずだ。それがない。
 くすくすくす、と嘆きの声に割って入るのが本来の声の主のものなのだ、とすれば。
 今あなた達の思考に割り入ってくるものは非常識なまでに悪趣味な敵の先導ということに
『後ろだっ!』
「なんっ――!?」
 ――なるとしても、咄嗟に『仲間の声』が聞こえれば話は別だ。
 咄嗟に振り返った先にはなにもなく、その隙を狙って炎が火の玉を飛ばして来たのには、熟練の者でさえ恐怖と驚きを禁じえない。
 お互いの声は、ここにくるまでの会話で聞かれていたかもしれず。相手が他人の声で仕掛けてくるのが感情を煽る意味ではなく、味方同士の連携の邪魔や妨害目的だとすれば、厄介なこと極まりない。
 キキっ、と甲高い鳴き声らしきものが響く。
 咄嗟にそちらへ向けられた一撃は、飛び退って逃げる小型の獣の姿を明るみにさらけ出す。
 動体視力に優れる者がいるならば、周囲を飛び回るリスのような影を見て取れただろうか?
 耳が鋭敏なものなら、木々を飛び回るその影が見えたはずだ。
 あれが、きっと――助けるべき幻想種より飛び回る火の玉より、燃え盛るファルカウよりも面倒な敵だ。

GMコメント

●成功条件
 全敵対勢力の無力化
(オプション)幻想種の可能な限りの生存

●操られた幻想種×5
 救出対象ですが、戦闘必須の相手となります。
 彼等は『ラタトスク』の命と連動する形の呪いで操られている状態で、基本的に不殺で抑えるかガチ目に殺すかしないと止まりません。
 が、例外的に、彼等を正気に戻すに足る言葉掛けや行動などがあれば、なにかのきっかけに正気に戻る可能性はあります。
(こちらを狙う場合、妥当性や心情的訴えかけの強さなど『心情シナリオ要素』が強くなるため、役割分担がややシビアになります)
 全体的にHPAP面はイレギュラーズの高レベル帯の中の下くらい、神秘系統は技術、攻撃力ともに結構高い部類と見ていいでしょう。

●ラタトスク×5
 リス型の邪妖精です。
 回数制限のある【瞬付】スキルで姿を隠し全ての攻撃から逃れる(【物無】【神無】、透明化。機動力半減、解除後ステータス一時低下)ことが出来ます。
 また、【ハイテレパス】【クローンボイス】を有し、念話を偽装することで味方同士の連携の不和や混乱を生み、場合により同士討ちを誘うことさえあります。
(話しかけられた場合などに【魅了】【混乱】などのBS判定発生)
 これを応用し、幻想種の声を偽装して「正気に戻って降伏する」声真似からの攻撃行動というとても嫌らしい攻撃に繋げるなども十分考えられます。
 個々の戦闘能力は贔屓目に高くはありませんが、上記特性と生来の体力によりそこそこ頑丈です。
 攻撃などを行う場合は噛みつきやひっかきを主にしてきます。

●鳴き火×10
 2~3個の宙に浮いた火の玉を纏めたものの呼称。
 常に悲鳴のような声をあげ、行動を妨害してきます(神遠単、【麻痺系列】【不吉系列】)。
 また、炎そのものであるため至近距離にいる間は常に体力が削られますし、なんだったら【反】も有します。

●戦場
 ファルカウ中層。
 周囲は炎に包まれており、3ターン経過ごとに漏れ出る火によりイレギュラーズは一同にちょっとしたダメージと【火炎系列】のBS付与判定が発生します。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • <太陽と月の祝福>炎のなかで、君が『なく』完了
  • GM名ふみの
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2022年06月29日 22時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

アンナ・シャルロット・ミルフィール(p3p001701)
無限円舞
ウォリア(p3p001789)
生命に焦がれて
フルール プリュニエ(p3p002501)
夢語る李花
アクア・フィーリス(p3p006784)
妖怪奈落落とし
アリア・テリア(p3p007129)
いにしえと今の紡ぎ手
Я・E・D(p3p009532)
赤い頭巾の魔砲狼
ヴィリス(p3p009671)
黒靴のバレリーヌ
百合草 瑠々(p3p010340)
偲雪の守人

リプレイ


 燃え上がる森のなか、くすくすと子供のような声がする。声……否、念話のたぐいか。イレギュラーズの誰かの声、子供の声、炎の嘆き。それらを象った、耳を塞いでも聞こえる声。それを聞き続ければ、正気でいられる保証はない。
「ファルカウが、燃えてる……誰が、何のために? でも、それより、あの人たちは、さっきの声、は……」
 『憎悪の澱』アクア・フィーリス(p3p006784)は目の前の出来事の情報量に声を震わせていた。ファルカウが火に包まれた理由は、イレギュラーズが協力を取り付けたフェニックスが敵の手に落ちたことに起因するが、そんな道理を知っていたとして、実際に目にすればその情報も吹き飛ぶだろう。イレギュラーズにとって浅からぬ縁ある地が、人が、蹂躙される事実を目の当たりにして冷静でいろというのは無理がある。
「あの美しき大樹も、やや偏屈ながらそこに生きる命達も、今や醜く歪められ、そして燃え盛るそのさまに『美しさ』は無い」
 『戮神・第四席』ウォリア(p3p001789)は深緑という地の、ありのままを望んでいた。幻想種達の、閉鎖的でありながらも筋の通った在り方を認めていた。だからこそ、燃え上がる現状、自分を失った幻想種達、そして邪妖精が闊歩する状況は認められなかった。『美しくない』のだ。それは、この事態を打破する理由としてあまりに事足りすぎている。
「随分とまあ、嫌がらせに特化した敵がいるようで!」
「めんどくせーなホント。偽装構築は戦火の華だとはいえ、やりづれえにも程がある」
 『いにしえと今の紡ぎ手』アリア・テリア(p3p007129)と『絶塊』百合草 瑠々(p3p010340)は耳に飛び込んできた『聞きなれた』声に苛立ちを隠せない。戦い慣れぬ新米ならいざ知らず、ここにいる面々は相応の鉄火場を潜り抜けた者だ。連携が取れるからこそ、言葉一つ、タイミング一つでリスクを背負う危険があるのだ。まったくもって厄介極まりない。
「あぁ、あぁ、ラタトスク。違うとわかっていても、わかっているからこそ、その姿、そしてその所業は赦されるものではありませんよ」
「不愉快なら、無視すればいいだけだわ。私達にはそれができるのだから」
 精霊に深い造詣のある『夢語る李花』フルール プリュニエ(p3p002501)にとって、『ラタトスク』の行為を笑って許せる道理はない。既に遠くに消えていった声は、きっともう彼女の心に響くことはないだろう。
 『フロントライン・エレガンス』アンナ・シャルロット・ミルフィール(p3p001701)にとってもそれは同様。耳に、心に届かなければ無視すればいい。何かの間違いで届いたとして、イレギュラーズがその声に惑わされるだろうか。――無いとは言うまいが、それだけで状況が瓦解するほど彼らは愚図ではないのも確かだ。
「――悪趣味だね。ああ、悪趣味だよ」
「気分が悪いわね。でも、わかっていればそれはそれで戦い方ってものがあるのよ」
 『赤い頭巾の断罪狼』Я・E・D(p3p009532)もまた、耳障りな声を遮断し、仲間達との連携を潰されぬよう意識を配る。『黒靴のバレリーヌ』ヴィリス(p3p009671)も不快感こそ露わにすれど、思考は冷静そのものだ。所詮は小柄な邪妖精、隠れ潜むことが如何に得意でも、最大のアドバンテージを複数名の連携で封じられれば戦い方が限定される――イレギュラーズだけを狙うのであれば。
「こちらにも勝算アリだ。そのテの『専門家』が多数いるんでな」
「ラタトスクの声は塞いでしまえば届かない。幻想種も、あの鳴いている火も、動きを封じてしまえばよいだけだわ」
 瑠々の勝ち誇ったような表情を見てか見ずか、フルールはゆったりとした足取りで前へ出る。幻想種達との間合いは未だ遠い。狙うなら、近づいてくる火からか。
「理由もなく、みんなを、ただの遊び道具みたいに……! あのフザけた小動物は、絶対に殺す!」
「然り。邪なるものを滅ぼし、正しき調和を齎すため、涙を零す憐れなるその心へ『裁定』を導こう」
 ラタトスクはアクアの逆鱗に触れたらしい。どこまでも愚か。待っているのはより悲惨な末路となってしまったではないか。ウォリアの目に篭った確かな意思は、ラタトスクらが無用に煽らなければ燃え上がらなかっただろうに。
「…………」
 幻想種達は無言でイレギュラーズに弓や術式を向け、鳴き火はサイズこそ小さいが確かな怨念と熱気を漂わせている。四方八方敵だらけ。厄介すぎるこの状況は、しかしイレギュラーズ達が打開するべき場でもあるのだ。


「悪いけど、私は貴方達が正気に返るような感動的な言葉を持ち合わせていない」
『だから狂気から開放するために殺してあげるわね』
「……!!」
 流麗な舞いで幻想種達を幻惑させたアンナは、自らの言葉に幻想種達がひどく過敏に反応したように感じた。ひどく恨みの篭った目で見てくる彼女らの姿は、ただ突き放しただけの言葉で「なった」とは思えない。
 アンナは自らに降りかかる5人分の猛攻を一新に受けるが、さりとてその程度は想定内。倒れるほどヤワには出来ていないのだ。
「幻想種の背後から『悪意』が漏れているぞ。此方だけではなく幻想種の感情も撫で操ろうというわけか」
「……本当に悪趣味ね」
 幻想種たちへと応射したウォリアは、その背後に明確な感情のゆらぎを感じ取っていた。『悪意』のゆらぎを。必然、それはイレギュラーズを陥れようとするラタトスクのものにほかならない。僅かに炎が揺れると同時に、それは姿を消していた。そして、きっと幻想種達から見れば殺意振りまく悪夢に見えるのだろう。……嘆かわしいことだ。
「アンタ達の相手はウチがする。わかってるんだろ?」
 旗を掲げ、鳴き火へと自らの存在を強く印象付けようとする瑠々の姿は、並の存在が無視できる程度を越えていた。少なくとも、妄執で編まれた火は抗い得まい。
「耳障り……!」
「あぁ、とても騒々しい。少し黙っていてくれないかしら」
 アクアの放った影の手が瑠々にまとわりつく個体を強かに打ち、さらにフルールは重ねるように神気閃光を叩き込む。攻撃射程、巻き込んだ数、それぞれ少なからず、そして威力もかなりのものだ。だが彼女は火の粉を受けた片鱗すらない。魔物の瞳が齎した呪いが、彼女に、そして鳴き火を害する者達に降りかかるはずだった火の粉の権能を一時的に奪ったのだ。
「鳴き火に混じって狙ってくると思ったけど、そこまで頭が悪くはないみたいね。厄介だわ」
 ヴィリスは躍動的な足取りで鳴き火を狂気の渦に誘い込み、自傷に追い込むべくステップを踏む。あわよくばラタトスクを狙いたかったが、そうもいかないか。おそらく彼らは絶え間なく、イレギュラーズに、そして幻想種達に声をかけ続けているはずだ。イレギュラーズが一切の乱れなく戦っているのを見れば、軽々に襲撃に入る愚はおかすまい。どころか、互いの連携すらもジャミングで失われている状態は、きっと彼らにとって非常に面倒で――。
「ところで」
 フィンガースナップ。
『後ろに回ったぞ、守りを固めろ!』
「!!?!?」
 フィンガースナップにあわせ、警句が響く。それは間違いなく肉声で、そしてイレギュラーズの誰かの声。突如響いた言葉に足を止めたラタトスクは、無防備極まりない状態でその身を晒した。直後、その身を光の帳で覆い隠し、逃げ果せようとするが、それも遅い。
「念話が聞こえなくても、姿が見えなくても、『丸聞こえ』なんだよ」
 Я・E・Dの傍に生み出されたマスケット銃の幻影が、何もない場所を――ラタトスクがいる場所を貫く。見えていないが、音を拾えば必然場所はわかるというもの。攻撃を受け付けぬ状態でも、そのマスケット銃は術式を叩き割る。
 弾かれたように身を捩ったそれは、続けざまに眼前へと迫る魔砲を避けるすべはない。
 ギャッ、と無様な声を上げて転がったそれはしぶとくも命を繋ぎ、這々の体で再び駆ける。逃げるという思考がないのか、はたまた逃げ場がないのか。
 燃え上がる炎がバチンと弾け、鳴き火のそれと合わせてファルカウの熱をより強めていく。


「できるだけ、命は奪わないようにしないといけないけど……この攻勢は辛いわね」
 アンナは引き付けた幻想種へと接近戦を挑むが、ラタトスクの幻惑が効いてか、その動きが死物狂いであることを身をもって感じていた。普通に戦えば負ける相手ではない。が、殺さずに、というのは簡単ではなかった。
「……我が続く。命の差配は……此方に任せ、手加減と……後悔なき……戦いを」
「頼もしいけど、頼もしいんだけど……なんだか癪ね」
 が、それは彼女一人であればの話。ウォリアは、何をしようと生殺与奪を可能としていた。勢い余って殺すということが、まずない。だからこそアンナの全力についていける。アンナが命を奪わぬよう立ち回れる。
「……すまなかった」
「違うわよ、私自身が癪なのよ! 思い通りにならない自分が!」
「……すまなかった」
 ウォリアはアンナの自己に対する苛立ちを惹起したこと、そしてそれを意図せず煽ったことに頭を下げた。だがそれが彼女の内心を煽り立ててしまったことには、きっと気づいていないのだろう。
「もういいわよ! 残りの連中も死なない程度に倒して、忌々しいリスを叩くわ!」

「おいアンタ、ウチを本気で燃やしてるのかよ? そんなんじゃあ温くもねえぞ」
「今のあなたを熱くさせるのは、あんな程度では無理でしょうに! ……本当に無茶するわ、倒れないでよね?」
「言ってやる相手が違うぜ」
 瑠々は次々と向かってくる炎を涼しげな顔で切って捨て、反撃を叩き込んでいく。弱々しく燃える個体へ幻惑の足取りを見せ、燃え尽きさせたヴィリスは彼女にちらりと視線を送り、気遣う言葉を投げかけた。だが、瑠々はその言葉が自分には向いていないと思っている。
「嫌なくらい耳障りだから、さっさと消えろ……!」
「幻想種が助かるなら、私はあなた達を倒します。止めは誰かが打ってくれることでしょう」
 炎の只中に踏み込み、至近距離で苛烈な一撃を叩き込み、続けざまに津波で押しつぶそうとするアクア。その身を襲う熱と冷気の乱高下は、必然として己の体力すら奪いかねない。
 他方、踊るように間合いを掴み、神気閃光で猛威を振るうフルールにも一抹の危うさが秘められていた。地面に叩きつけられた火はちろちろと地面を舐めるが、その残り滓をもアクアの津波が押し流していく。
 幻想種を、イレギュラーズを操ろうとした邪妖精、そして呪いに異常な怒りを覚えていることが窺えた。後先を見ぬ戦い方は、成る程見ていて心配になるものだ。
「とっととお帰り下さい!」
 アリアは残りわずかになった鳴き火へと砂嵐を呼び出し、その身を燃やす酸素ごと奪い去りにかかる。魔力が生み出した砂嵐に巻き上げられた火は、燻りながら燃え尽き、消えていった。
「幻想種も動けない、頼みの火も消えた。これで」
 Я・E・Dは背後から襲いかかったラタトスクに、振り向かずに破式魔法を叩きつけた。先程の個体だろうか、今度こそ鳴き声ひとつあげられず燃え尽きる。
「幻想種の人達の呪いが、貴方達の命と連動しているのなら、貴方達をぶち殺せば、幻想種の人達は解放されるって事だよね、さぁ死のうか」
「残念だったわね! あなた達程度じゃ私を躍らせるなんてできないのよ!」
 いち個体の敗北に、ラタトスク達の動揺は激しかった。だから、ヴィリスが放っていた使い魔を見逃した。必然、彼女は姿を隠そうが声を出そうがそれらを見逃すことはなく、幻惑の足取りでその逃げ足を縺れさせる。
「少々おいたがすぎたようね。これからは、お仕置きの時間よ」
「コイツだけは絶対にぶっ殺す! 偽の声も全部聞く耳なんてない!」
 アンナは冷静に術式を練り上げ、ラタトスクへと照準する。アクアはもはや待ちきれぬという風情で、怒りを露わに攻撃を叩き込む――通常戦略であれば、彼らは隠蔽術式を残していたはずだ。だが、アリアとЯ・E・Dの連携を前にし、出し惜しみすれば死ぬという刷り込みができてしまった。それはすなわち、彼らのアドバンテージがゼロ打ちを果たしたということ。
「赦されざるラタトスク。最後はあなた達。私のラタトスクと似た姿をして、同じ名を持って悪行を為すならば、容赦はできません。ラタトスク、怒りなさい。フィニクス、ジャバウォック、他の精霊達も。同胞と似た姿で同じ焔で極悪を為す彼らを燬(こわ)しなさい」
 フルールは、ずっと密かに敵意を燻ぶらせていた。激情を表に出すことのない彼女であるが、名を並べる茜朱の精霊や、他の精霊たちとの同期が高まればその限りではない。それでも怒らない。喜ぶように楽しむように、相手への敵意を慈しむ。イレギュラーズのなかで最もラタトスクへ『辛い』攻撃を与えたのは、間違いなく彼女であったのは疑いようもなかった。
「……ア、ア」
「どれ程恨み、憎んでくれてもいい。死なぬとわかっていても、そちらの降伏を額面通り受け入れることが出来なかった。だが、我の仲間が治してくれよう。ただ、お前達の明日の為に、ファルカウの為に……敵は残らず、討ち果たす!」
 ウォリアは、仲間達がラタトスクを討ち果たしたのを見て、倒れ込んだ幻想種達を背に立ち上がる。殺しはしない、が。降伏の言葉、諦めの言葉を額面通り受け止められない以上は痛めつけ続けるしかなかったのだ。
 おそらく恨まれることも織り込み済みで。治癒術を持つ面々は、そのあまりの覚悟に辟易としつつも……その不器用さで、命を奪わぬ繊細さを併せ持つ姿に『イレギュラーズ』としての誇りを見た。
「さあ、行こう! この上で最終決戦が待っている筈だから、ここで立ち止まってられないよ!」

成否

成功

MVP

Я・E・D(p3p009532)
赤い頭巾の魔砲狼

状態異常

なし

あとがき

 ジャミングは想定してたんですけど、いい感じに全員覚悟キマっててその……。

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