シナリオ詳細
スーパー攻め様オクテット~ジューンブライド修行SP~
オープニング
●この子が言うと冗談で済まねえのよな
ある日、ローレットの片隅のテーブルに集まった五人の女性達はあれやこれやと会話を楽しんでいた。女三人寄ればというが、倍近くとなればその騒々しさたるや計り知れない。はずなのだが、いまこのテーブルには水を打ったような静寂が支配していた。
今月は? 六月。といえば? そう、ジューンブライドである。
「旦那をエスコートするのも妻の役目だよ……! スーパー攻め様になる練習をするよ……!」
「成程、旦那様に全てを捧げる身である以上、ときには強引に迫る練習も必要ということなのですね! 完全に理解しました!」
「逃げてばかり退いてばかりの相手を捕まえるには弱気ではいけないってことっすね! その通りっす!」
フラーゴラ・トラモント (p3p008825)が切り出した一言に、澄恋 (p3p009412)とウルズ・ウィムフォクシー (p3p009291)の二人は秒速で理解を示した。前者は旦那様を『錬成』するという遠大な夢の途上に於いて己の積極性に疑問符が浮いている節があるし(多分攻め過ぎだと思うが)、後者は今まさに引き撃ちで逃げ回ろうとしている某個人を追う立場にある。もうちょっと追い詰めに行けばワンチャンどころかツーチャンくらいはありそうな気配がひしひしとしている。まだるっこしいと思うのも無理はない。
「そっか……エスコート、エスコートか……攻め……」
郷田 京 (p3p009529)は今までの経験や出来事を思い返し、攻めの姿勢は出来ていたはずだがエスコートできていたか、と聞かれれば答えづらいところがある。攻めの姿勢は多分二百点くらいあるだろうが、押してダメなら引いてみろ(ガンガン押して響かないなら相手を引きずり回して一緒の時間を作れ)という発想は足りていなかったことに思い至った。相手の自己主張力が高くないだけに、抜けていた考えではある。
「アリス……エスコート力が……足りない……?!」
アリス・アド・アイトエム (p3p009742)はといえば、この中で唯一(推定)の恋人持ちである。恋人との仲はかなり良好な筈であるが、さりとてもっと先へと考えるのは当然の道理。そうなると、生来の引っ込み思案である彼女にいま一歩足りないのが攻めだと言われれば、何も考えず同感だと声を上げても無理はない。よくやってる方だと思うけど……。
「あら、貴女達どうしましたの? なんだか随分思い詰めた顔をしておりますけど……」
「私とヴァリューシャはこれからデートだよ!」
そんな異様な雰囲気をどうしてか嗅ぎ取ったのは、まさかのヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ (p3p001837)。傍らのマリア・レイシス (p3p006685)は何時ものように輝かんばかりの笑顔を振りまき、ヴァレーリヤの腕を取って『理想の相手役』といった風情を醸し出している。
よくよく考えなくても、彼女はある意味『理想の体現者』ではなかろうか? どちらを主とみるかによるが、マリアは相手を肯定する器の広さを持ちつつも、時に相手を引っ張り、強引に話を進める攻めの姿勢を忘れない。『攻め様』かどうかは兎も角。
「皆、こんなところで何をしてるんですか? あ、アリスさ」
「ノルン……! アリス……もっと攻め様に……なるね……!」
「なんて?」
そこにアリスを探しに来たノルン・アレスト (p3p008817)が巻き込まれた。この子完全にとばっちりじゃねえか。なんでこうなったんだよ。この子ガチ受けみたいなポジだろ(独自研究)。
「マリアさん……! スーパー攻め様の先駆者としてご教授お願い……!」
「わたしも、もっと攻めの姿勢を学びたいので是非!」
マリアはといえば、フラーゴラと澄恋に泣きつかれているではないか。
なんでこんなコトになっているのだろう? 考えたけど妥当な結論が出なかったので、マリアは彼女たちになにかできることはないかと考え始めた。真面目だなぁ。
「え、えーっとこういうときは依頼を探せば何かそれっぽいものがあるよね? ヴァリューシャ!」
「分かっておりますわ、こんなことを相談できる情報屋といえば! 三――」
「話は聞かせてもらったゆ」
マリアに泣きつかれ、咄嗟に情報屋の名を口にしようとしたヴァレーリヤほか一同は、突如響いた全部わかったマン系の声に視線を飛ばした。そこにはパパス・デ・エンサルーダ (p3n000172)の姿があるではないか。
「パパス先輩、なにか腹案があるっすか?」
ウルズはなんかドヤ顔のパパス(多分この二人は面識が薄い筈だ)を滅茶苦茶怪訝な目で見ていた。信用して良いのかいまいちわからないという顔だ。パパスはドヤ顔のまま応じる。
「わたちに勝算があゆ」
「……思うのですけど、コレ本当に怒られませんの?」
ヴァレーリヤの言う通りだよ。例の日一ヶ月切った矢先にこれは結構ギリギリだよ。
●スーパー攻め様養成施設「■■■穴」
というわけでパパスが一同を(何故かノルンまで)連れてきたのは練達のとある施設である。名前がおもくそ伏せてあるのはコンプライアンス的にギリギリアウトだからだ。
「ここって見るからに運動関係をバリバリ鍛える施設よね? アタシ達それなりに鍛えてるから今更必要か疑問なんだけど……」
「気持ちはわかゆ。でも京、そこのタイヤ引きを見るがいいゆ」
京が『鍛えてる』は実に説得力のある言葉だ。だが、パパスはにやりと笑い顎をしゃくった。ちょっと離れたところでタイヤを引く面々……何故かタイヤに顔写真を貼り付け、皆運動服ではなくデートの勝負服めいたものを着ている。
「あっちはなんですか? カードを5枚くらい並べて向かい合ってますけど」
「攻め女なるものエスコートするなら相手の好みと連れて行く店の傾向、相手が選ぶメニューは完璧に覚えている必要があゆ。つまりは早押しみたいなモンゆ。相手よりも早く、『相手が取ろうとしてた札を』とるのがあの訓練ゆ」
ノルンの疑問への回答はもう、なんかもうアレだった。凄まじい牽制しあい、何故か両者の間ではリアルで火花が散っているので互いに手を伸ばしぶつかり合い、牽制しあっているのだろう。
「じゃあ……あのショッピングモールみたいなところは……?」
「当然、集大成ゆ。相手を引きずり回(エスコート)し、相手に合うものを選び、時に強引に迫る。逃げるなら捕まえて腕を逆にとって連行する。汎ゆる手段が正当化されるアレゆ」
よくよく見れば、『受け手役』はAI入力型ロボットではないか。圧倒的予算の無駄遣いに思えるそれは、然し異様な熱気があった。
「ほかにも攻めしぐさの訓練場とか、言うだけ言えばそれっぽい場所もあるかもしれんゆ。やりたいなら『ある』前提で訓練内容を考えるといいゆ」
パパスはそう言うと、ヴァレーリヤとマリア、そしてアリスとノルンを見た。
「……必要かどうか分からないけど、どっちも無理しなくても相手が受け止めるからほどほどにゆ」
- スーパー攻め様オクテット~ジューンブライド修行SP~完了
- GM名ふみの
- 種別リクエスト
- 難易度-
- 冒険終了日時2022年06月25日 22時45分
- 参加人数8/8人
- 相談8日
- 参加費150RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
●攻め様の流儀
「アリスさんの特訓にボクがいてもいいのでしょうか……!?」
「えすこーと……いつものデートより意識すべきかな……だってアリス……攻め様の頂点に往くから……! だからノルン……一緒にがんばろ……?」
無責任にも一同を置いて何処かへ行ってしまった幻想種はさておき、『泡沫の胸』アリス・アド・アイトエム(p3p009742)は戸惑いを隠せない『願い護る小さな盾』ノルン・アレスト(p3p008817)の手を握り、二人で頂点(テッペン)を目指そうとしっかりした声で告げた。攻め様同士では耐消滅しないだろうか? と考えた賢明な紳士諸君は回答としては30点だ。
「阻むものは全部消してしまえばいいから……」
「……? 一緒にいるのは楽しいですし、邪魔にならないなら嬉しいですけれど。いつも連れ出してくださるので、充分エスコートしていただいている気がしまs」
「しっかり手繋いでひっぱってくね……はぐれたら大変だから……絶対、離さないでね?」
アリスの不穏な言葉に首を傾げたノルンがその真意に気付くより早く、アリスはトップスピードでショッピングモールへと突っ込んでいく。そう、二人の関係は端的に言ってアリスのがだいぶ上なのだ。ノルンがちょっとした努力で攻め様しても、アリスが同じくらい努力すると必然、アリス優位になるわけだ。これはある種、ノルンに対する試練な気がしないでもなく。
「素敵なお店……この服、可愛い……! ノルン、着てみて? ぜったい似合う……カッコいいのも似合うから、ノルンはきっと何でも着れる……!」
「そうですね、ボクは格好いいのが好きですが、アリスさんが似合うというならそれも着てみましょうか。シミュレーションの場なのに売ってるものはどれも素敵ですね……?」
弾丸のように飛び込んだ店はブティックだった。当然のように貨幣経済可能になってる辺り“本気”の施設なのがわかる。アリスはあちこちから服を引っ張ってきてはノルンを着せ替え人形同然にしているが、これが凄いところはノルンが嫌がる選択肢を徹底的に排除しながら好き放題しているところだ。ノルンはノルンで、どっしりと受け止めアリスの本気に付き合っていく姿勢を崩さない。体力面は不安があれど、肉体の堅牢さなら一線級のイレギュラーズなのだから当然だ。
「素敵なケーキ屋さん……このタルト、美味しいよ……あーん♡」
「あーん……美味しいですね、すごくいいお店です」
「ごめん、ほっぺたにつけちゃった……ぺろっ♡ ……ん、とれたよ」
「ひゃ?! あ、ありがとうございます……?」
アリスは矢継ぎ早にノルンへと攻めの姿勢を崩さない。ノルンも彼女のスタンスに食らいつくかのように受け止め、しかしやんわりと笑って見せる度量があった。
あれこれとアリスが提案してノルンが受け止める、を繰り返しているうちに時間の経過は早いもので、アリスはすっかりやってみせたぞ的な笑みを見せた。
「これで……最後……! やったよノルン、これがアリスの……攻め様スタイル……!」
「積極的なアリスさんも素敵でした。今度はこちらからも、お返しさせていただきますね?」
「えっ……?」
そう。
ノルンはアリスのすべてを受け止め、その上で自分の攻めに転じるという技術を持って『攻め様』たろうとしたのだ。気が抜けたようなアリスは、一転してノルンにひっぱられショッピングモールへ消えていく。二人の時間は、まだまだこれからのようだ。
場所と時間は変わって。
「ぜぇ……はぁ……! 流石にタイヤ代わりに旦那様5パーツをくくりつけると息があがりますね! 42.195km走った程度で汗をかくほどか弱い分、えれがんとなでーとで旦那様をホの字にさせてやりますよ!」
ノルンとアリスがデートに興じる間、『花嫁キャノン』澄恋(p3p009412)はあろうことか四肢に旦那様を括り付けて四つん這いの姿勢でフルマラソン相当の距離を走り続けていたのだ。……まあ確かにそれくらいの距離はイレギュラーズにとってお茶の子さいさいな気はするが、四つん這いで駆け抜ける数奇者は彼女くらいではなかろうか。
「それでは私達は腕相撲に向かいますよ~~! 旦那様もいいと言ってくださっています!」
\蜉ゥ縺代※/
意気揚々と腕相撲用施設へ入っていった澄恋の異様な雰囲気に、しかし周囲の人々は見て見ぬふりをした。関わってはいけない。彼女の『本気』を否定してはいけない、と。
「旦那様っておてておっきいですよねっ♡ はァ~~~~この手! 最高ではありませんか??」
『攻めのボディランゲージ、加点します』
「またまたァ~お硬い言葉! 奥手なんですからァ!」
で、彼女は腕相撲ロボットの手を恋人繋ぎよろしく指を絡め(指関節を固定しがっちりと離さず)、覗けば熔けそうな熱視線を送った。その攻め様ぶりに腕相撲ロボットもおもわず倍点の加点だ。スゴイ!
「まあわたしと旦那様との仲にもなれば脳内に直接愛を囁くことも容易いのですが、こういうのは形が大事ですからね! ねー旦那様っ♡」
\蜉ゥ縺代※/
「それではレディー……」
『ゴピガガガガガガガ!?』
開始を告げるやいなや、指関節固定から全体重を放り込む一撃確殺の動きでロボットのバランスを崩すと、直ぐ様床ドン顎クイ髪カーテンを決める澄恋。長髪のアドバンテージがここで活きる!
「さあここまでしてしまったらもう離れない指と指はまるで赤い糸! その心も私のものです!」
『ピガ』
ガシャン。
ハートキャッチ澄恋の愛情表現(物理)が突き刺さったので、腕相撲ロボットは受け止めきる器量がなかったのだ。頑張れ澄恋、負けるな澄恋。君の熱情を受け止められるスーパー受け様がどこかにいるはずだ! な!(何処かにいる『誰か』に向けて振り向く澄恋の大写し)
「エスコート、エスコートかぁ。やった事無いからわっかんないけど、全力で頑張るわ!」
『ハイテンションガール』郷田 京(p3p009529)は攻めの姿勢はできているが、エスコートの経験が足りない。茶髪で伊砂顔のイケメンと色々と日々を育んではいるものの、なかなかうまくはいかないもので。どこから攻めていけばいいのかで、割と真剣に悩んでいた。彼女は乙女なのである。
「とりあえずね、アタシに必要なのはテカゲンよ、テカゲン! こ、こないだのバレンタインの時もね……? アタシ、もっとロマンティックに渡したかったんだけど……き、緊張しちゃって?? ドカーンって、壁がね、壊れちゃったりとか……あ、チョコは受け取ってくれたんだけどね、えへへ……」
(『あの人』もめっちゃ大変ゆ。同情すゆけど愛されてんじゃねーかゆ)
「だ、だからね、ロボットを『あの人』だと思って、壊さないようにエスコート出来ればなぁって?」
恋する乙女のそれで大概ヴァイオレンスな会話を不憫に思ったのか、彼女に宛てがわれたロボットは実際耐久力がすごかった。『あの人』はひよわだし女装させられるし次は再現性東京でメイド服を着るらしいが、シミュレーションなので頑丈にしてもいいだr\ズガシャっ/
「って、そんなこんなの間に1個壊しちゃったじゃない、まだギルオスさんのこと考えてただけなのに!?」
名前出しちゃってんじゃねーか。
「……ダメね、コレじゃあまだギルオスさんは死んじゃうわ。もっと上手く手加減しないと」
京は彼のことをかなりよく見ていた。ずっと見ていた。だからこそ、過労気味でときに依頼に巻き込まれ、人質になったりなんだりで気苦労が絶えない彼を慮りたいとは感じている。
なので、落ち着いた場所をゆっくり、というのが理想だった。だった、のだが。それだけでは味気ない。
休む前に精一杯遊び倒し、そのうえで彼のペースに合わせてあげたい。力に長ける自分でも、青年一人と健全に付き合えると証明したいのだ。
(でもアタシは強いからさ、しっかりしないと危ないからね……あの人には、ちゃんと幸せを感じたもらいたいもの)
自らのアドバンテージをしっかりと理解している京は、『彼』がそういうものを受け入れてくれると知っている。尤も、そうでなくとも彼女の熱情を無碍にする男だったら、彼女が惚れないはずなのだが。
「オーケー……エスコートは任せて。完璧なデートプランを考えてるよ。メロメロにさせちゃう……」
『星月を掬うひと』フラーゴラ・トラモント(p3p008825)は説明を一通り受けたうえで、完璧なデートプランが既に脳内に浮かんでいた。茶色のテディベア型AIロボ『アトさん(仮)』を指定すると、ショッピングモール入り口に待機させた。
名前も体色も、『本物』を意識したほうがモチベは上がるってもんなのだ。
「さあ、白馬にまたがった攻め様だよ……二人乗りで場所を移動しよう……」
というわけでアトさん(仮)の前に現れたのは、白馬に乗った攻め様フラーゴラ。屋内だろうがなんだろうが我道邁進の彼女に、細かいことを伝えるのが愚策なのだ。そうして向かった場所は再現性サバンナ(施設内)。あるんかい。
「見ててアトさん(仮)! かっこよくお肉を仕留める!」
ロープを手にサバンナを駆ける草食動物を追い詰める様は、まるで開拓史時代の雄姿をおもわせる。なんでか知らないが放し飼いになってた動物たち(食用)は、フラーゴラの手によりガンガンに狩り倒された。そして、移動。
「お部屋デートだって鉄板だね……」
アトさん(仮)が通されたのは、四周に写真が張り出されたフラーゴラの部屋(再現)だった。
おうちデートは鉄板だと思うがそういうのは最低限隠すと思う。
「えっストーカーっぽい? 違うよお、これはワタシがアトさん(恐怖)をどれだけ愛してるかの隠し撮り……」
顔を赤らめてやんやんと首を振るフラーゴラの目にはどこか狂気が入り混じっているように思えた。気の所為よね。
「出来た……! で作ったビーフシチューだよ……はいあーん……えっ、なんかぐったりしてる……! アトさん(本物)だったらこれぐらいで音を上げないのに! か弱い機械!」
これは果たして『破壊行為』というのか。攻め様としてはとても真っ当なムーブなのでは(錯乱)?
「今日はそういう方向性という事ならやってみせようじゃないっすか、エスコートってやつを!」
『持ち帰る狼』ウルズ・ウィムフォクシー(p3p009291)はそう言ってAIロボのガワに持ち込んだぬいぐるみをはりつけ、完璧な攻め様としてスーツを着て、びしっと決めに行く。
なお、わけわかんないチューンナップでAIロボの機動は11である。いやーなんでそんな数値なんだろうな(棒)。あと何故かメイド服だけどなんでだろうな(棒)。
お手をどうぞ
“Qua la mano”
……とそんな様子で始まるかと思われたエスコートだが、AIロボは唐突に踵を返して機動力11で(強調)逃げ出した。
「先輩がどんなに速く走ったってこの手は離れないっすよ。これでもう二度と離れ離れにはならないっす、安心っすね♡」
だが、ウルズはそれに引きずられることなくついていく。というか、既に手を握っているのだ。はなさないように。
「え、手を繋いで逃がさないようにするのは反則?? んなわけないじゃないっすか、あたし達は愛し合っているんすよ? 手を繋ぐのは当然のことじゃないっすか、あたしなんか間違ったこと言ってるっすか? 間違ってないっすよねパパス先輩!?」
ウルズは並走しながら自分の誤りなどないかのように語りかける。なお、それを観察していた『ポテサラハーモニア』パパス・デ・エンサルーダ (p3n000172)は白旗を掲げ『セーフ』の合図だ!
「時間が勿体ないっす、ゴーサインが出たからには全力疾走のままエスコートさせてもらうっす!」
先輩(仮)とデートを始めたウルズの姿は、それはそれは幸せそうだった。観念したAIロボが淑やかに歩く横で、さりげない気遣いを見せつつ立ち回る彼女にストレスがかからないといえば嘘になろう。だが、彼女にとってはそれすらも楽しみなのである。それがあるからこそ、人生は面白い。
「やれやれ、あの調子では先が思いやられますわね、マリィ。私達がお手本を見せて導いてあげましょう!」
「ふふ!そうだねヴァリューシャ! 私達の攻めを見せてあげよう! 攻めを極めて酒代を稼ぐ!」
何をして稼げるのかさっぱり不明だが、『雷光殲姫』マリア・レイシス(p3p006685)にとっては『祈りの先』ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)の道理が絶対であった。受けの姿勢ではないか、と? 否、この二人は生易しい関係ではないのだ。
「吊り橋効果ってご存知ですこと? 本当に吊橋に行く必要はないのだけれど、恋を成就させるためにはドキドキが必要だと思いますの」
「ふふ! 吊り橋効果だって? 私は吊橋マスターと呼ばれた女さ! ヴァリューシャを怖がらせてドキドキさせるよ!」
「つまり……うおーーーー、吊橋が無いなら、アルコールハラスメントで勝負すればいいのでございますわーーーー!!」
なにが『つまり』なのか。
なにが『吊り橋がなければアルハラ』なのか。
これ、絶対マリアの方が吊り橋効果をきちんと理解しているまである。そしてヴァレーリヤはあろうことか無関係のAIロボに攻め様していてマリアに甘すぎる。
「もしもし場内ポリスメン?」
「あっあっ、なんてことしますの! お巡りさんを呼ぶだなんて卑怯でしてよ!」
「ああああああああああああ!? ヴァリューシャを牢屋に連れていくのはやめたまえ!!」
((はっ))
(私の意思を押し切る形で強引に刑務所に連行される……これが、攻め……?)
(ヴァリューシャが連行されるかもという不安でドキドキする!? これが吊橋効果!?)
このカップルときたら同じ現象を前にしてお互い真理をつかもうとしていた。いたのだけどヒントが最低なんだよ。
「……違いましたわ! 危うく悪い人(当社比)に騙されるところでございましたわ!」
「あれ!? ここまで来て違うのかい!? でも騙されなくて何よりだよ! かーっ! 世の中悪い人はたくさんいるからね! ヴァリューシャは可憐なんだから気を付けないと!」
そして数分後には正面から堂々と脱獄していた。なおこの二人の処遇はあとでなんとかすることになった(諦め)。
「ゼシュテルで一人前の攻め様になるために重要なのは、やはり筋力。極意を極めるためには、この重りを仕込んだ20kgの花束が欠かせないのではないかしら!」
「筋肉!筋肉なんだね!? ヴァリューシャ! 全部受け止めるから来ておくれ!!!」
「さあ、命を差し出すか、心を差し出すか、どちらでも好きな方を選びなさい!」
「はぁ……素敵な花束……ヴァリューシャ好き……♡」
とまあ、この二人は滅茶苦茶幸せそうなのでもうなんか、もう……うん……。
なお、今回ロボットを破壊したのはフラーゴラ、京、澄恋、アリス。場内の治安を糜爛したのは鉄帝カップル。
うち、アリス以外の3名は攻め様トレーニングの産物のためお咎めなし。鉄帝カップル、そして無関係のAIロボを密かにブッ壊したアリスは5日の謹慎です。罪を認めて。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
あとがき
早く償って。
GMコメント
●成功条件(という名目)
施設での修行で攻めの極意を学ぶ
●養成施設
名前はあんまりにもPPP倫に照らしてもアウトくさいので脇に置くとして、「相手をエスコートし一切の隙を与えず己の好きを貫き通す」のがこのシナリオでいう攻め様の定義です。
そのため、有無を言わさぬエスコートや愛情表現、相手を引きずり回す力と体力を求められています。っぱ筋肉なンだわ。
なお、OPで挙げられたものは飽くまで一例で、いっそプレイングで「こういう施設があるから私はこういうスタンスで修行するぜ!」みたいな。そういう感じでひとつ。
正直割と何でもアリだけど相手を傷つける前提とか拉致監禁前提はちょっと攻め様失格だからそこんとこよろしくな!
それ以外のルールは無用の恋愛バーリトゥードだ。お前も恋のバーリトゥーダーになれ。
●情報精度
このシナリオの情報精度はAです。
想定外の事態は絶対に起こりません。
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