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シナリオ詳細

<タレイアの心臓>故郷を目指して

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


「……フォルカウが……燃える……?」
 スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)からの言葉を聞いたヴィオレットが目を見開いた。
 暫し――いや少しばかり長い沈黙の後、ヴィオレットが深いため息を吐いた。
 深緑の聖職者を務めてきたらしい彼女にとって、大樹ファルカウを燃やすという行為への忌避感は少なくないのだろう。
 それでも比較的落ち着いた対処が出来るのは流石と言うべきか。
「叔母様……」
「……いえ、分かっています。冬の王がもたらす災害に対抗するのなら、それぐらい必要な事なのでしょう。
 分かっていても、やはり落ち着かないものですが……」
 そのままヴィオレットは目を伏せる。
 落ち着いた様子でありながら、彼女の手が少しだけ震えていることにスティアが気づいた頃。
「……スティア。あの子が残した宝物……」
 眼を開けてスティアを見たヴィオレットの瞳は真剣そのものだった。
「ええ、私も覚悟を決めねばならないようですね。
 では……ファルカウが燃える前に――私の故郷に行ってみませんか?」
「叔母様の……故郷?」
「そう。私の――私達の故郷。私やジルベール……それに貴女の母、エイルにとっての故郷です」
 そう言ってヴィオレットは柔らかな笑みを浮かべた。


 スティアはヴィオレットの先導を受けながら彼女の故郷へ向けて歩みを進めていた。
 迷宮森林を抜け、ファルカウ下層までたどり着いたその時だった。
 あと少し、ざっと200m。
 すぐそこに、その光景は見えている――はずなのに。
 そこにはその光景が無かった。
 ――いや、無いというのも違う。
 正確に言うならば、『見えなくなっていた』というべきか。
「……ジルベール、これはどういうことですか」
 視線の先にはジルベールの姿も見える。
 だが、魔種の姿などよりも遥かに多い人の影。
 人影――それは幻想種だった。
 それも1人、2人ではない。30人あまり揃った彼らは皆、眼を閉じている。
 それは宛ら『眠っている』ようだった。
「ヴィオレット。お前をここから先にはいかせない。
 今すぐ逃げるなら、お前はきっと無事だ。
 ――だが、もしもこれ以上進むのなら、こいつらを超えてみろ。
 こいつらは、お前を容赦なく傷つける。
 人を傷つけることが嫌いなお前に、それが出来るか!」
「……貴方は、多くの人さえ巻き込むつもりなのですか?」
「お前達、眼前にいる奴らを見ろ。
 あれは、ファルカウを穢そうとしてるやつらだ。
 故郷を守りたい者達よ、武器を取れ。
 愚かな部外者を蹴散らすんだ」
 ――故郷を守りたい。
 その感情は現在進行形で侵略を受ける幻想種にとって心の奥底に確実にあるもの。
 魔種の権能を受けて眠りに落ちた幻想種達は、抵抗をすることすらできずジルベールの影響を受けるしかなかった。
「……スティア、皆さん。弟が申し訳ありません。
 ――どうか、手伝っていただけますか?」
 ヴィオレットはそう言ってイレギュラーズに頭を下げる。
「……ヴィオレット――どうして、そこまで」
「たしかに私は人を直接攻撃するのは苦手ですが……実の弟が人の迷惑をかけるのを止めない道理はありません」
 驚愕するジルベールにヴィオレットが静かに鋭く告げ、杖に魔力を通す。
「おぉぉぉ!!」
 迫りくる多数の幻想種――その中に8人ほど、より凶暴に叫ぶ者をみた。

GMコメント

 そんなわけでこんばんは、たれぞうでは3本ですね。
 こちらはスティアさんの関係者シナリオの続きとなります。
 ――遥かファルカウの根元、ヴィオレットさんの、そして今は亡きエイルさんの故郷へ参りましょう。

●オーダー
【1】イレギュラーズ陣営の指定地点までの突破
【2】暴走した幻想種8人の鎮圧
【3】幻想種達の生存

●フィールドデータ
 ファルカウの下層にほど近い場所。
 現時点では操られ、ジルベールの扇動を受けている幻想種達がわらわらと集まっています。
 イレギュラーズは指定地点であるヴィオレットの故郷まで200m地点にいます。

●エネミーデータ
・ジルベール・フォンテーヌ
 魔種です。スティアさんの母方の叔父にあたります。
 前段シナリオ『<13th retaliation>菫色の聖泉』
(https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/7724)とは異なり、今回は扇動に徹しています。
 ゴール地点までイレギュラーズがたどり着いた場合、撤退します。

・暴走した幻想種×8
 眠りに落ちて夢を見ながら、体を勝手に操られている幻想種達です。
 下記24人との違いはジルベールの原罪の呼び声の影響を受け、暴走した個体であること。
 魔術師タイプが4人、レンジャー系の軽戦士タイプが4人。
 不殺属性の攻撃により鎮圧後に眠りから目覚め、操られた状態からも解放されます。

・幻想種×24
 眠りに落ちて夢を見ながら、体を勝手に操られている幻想種達です。
 はっきり言って大した実力ではありません。
 魔術師タイプが12人、レンジャー系の軽戦士タイプが12人。
 不殺属性の攻撃により鎮圧後に眠りから目覚め、操られた状態からも解放されます。

●NPCデータ
・ヴィオレット・フォンテーヌ
 スティアさんの母方の叔母にあたります。
 大規模な範囲回復、補助スキルを用いて支援してくれます。
 また、鎮圧した幻想種解放の魔術を行使します。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

●『夢檻』
 当シナリオでは<タレイアの心臓>専用の特殊判定『夢檻』状態に陥る可能性が有り得ます。
 予めご了承の上、参加するようにお願いいたします。

  • <タレイアの心臓>故郷を目指して完了
  • GM名春野紅葉
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2022年06月05日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

オデット・ソレーユ・クリスタリア(p3p000282)
木漏れ日の優しさ
アリシス・シーアルジア(p3p000397)
黒のミスティリオン
スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)
蒼輝聖光
ジェイク・夜乃(p3p001103)
『幻狼』灰色狼
ハンナ・シャロン(p3p007137)
風のテルメンディル
アルトゥライネル(p3p008166)
舞祈る
マッダラー=マッド=マッダラー(p3p008376)
不運《ハードラック》超越
ウテナ・ナナ・ナイン(p3p010033)
ドラゴンライダー

リプレイ


「やっと落ち着いたと思ったのに! まーた邪魔するのね。
 しかもヴィオレットが嫌いなことを盾にしてまで。
 自分の手を汚さない辺りちょっとずるくてカチンときたわ、また殴ってやるんだから!」
 多数の幻想種の向こう側にいる魔種へ『木漏れ日の優しさ』オデット・ソレーユ・クリスタリア(p3p000282)が怒りを露わにする。
(眠りに囚われている幻想種の方々、操っているのは彼のようですが……
 身体を無理やり動かす人形遣いの類……というよりは、夢現に身体だけ操り動かすのは怠惰の権能によるものか。
 彼の言葉は……指向性を与えるもの。精神に働きかけ強制力を伴う呪言の類という所でしょうか)
 その一方で冷静に分析に務めるのは『黒のミスティリオン』アリシス・シーアルジア(p3p000397)である。
「しかし、手を出せないと思っているのなら、それはそれで……甘く見られたものと評するべきか
 姉への理想と幻想とでも言うべきか。普段ならいざ知らず、今の事態と己の行いに対してどのような意志を見せるかと言う事の判断もついていない」
 冷静に、相手には聞こえないであろう声量で考えを纏めていく。
 その一方で、アリシスはどことなく目の前の魔種の属性に検討を付けつつある。
(……複雑ですね、スティア様への感情は明らかに怒り、憎悪の類ですが。
 それだけでは説明がつかない部分がある)
 アリシスは思考と共に視線を巡らせる。
 そんなアリシスの視線の先、『純白の聖乙女』スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)は不思議だった。
 それはほかならぬジルベールの事だ。
「ジルベール叔父様は一体何が目的なんだろう?
 ヴィオレット叔母様を逃がそうとしているし、これから起こることを知っているのかな?
 それともただ私が嫌いで近づけたくないだけ……?)
 そう――あの魔種の目的が分からない。
 単純にスティアが嫌いなだけであれば、そもそも『幻想種を盾にして塞ぐ』などというまどろっこしい手段は使うまい。
「理由は気になるけど、操られている人達を放っておくことはできないよね。
 ……多少手荒になっちゃうかもしれないけど助けないと!」
 セラフィムを起動しながら、幻想種達を見る。
(お母様や叔母様の同郷の人達を死なせる訳にはいかないし、全力で守り切るよ!)
「気に入らねえ……筋違いで姪を恨むばかりか、関係のない幻想種まで利用しやがって」
 愛銃を抜いた『『幻狼』灰色狼』ジェイク・夜乃(p3p001103)は幻想種達の向こう側にいるジルベールへと怒りを隠さない。
「いいだろう、こうなりゃ乗りかかった船だ、お前達も纏めて俺が救ってやるよ」
「ジルベール様……ご家族の言葉でも止まれないのですね。
 いいでしょう、ならば真っ向から押し返すまでです」
 ある種の憐憫さえ感じさせながらも、悠然と告げたのは『風のテルメンディル』ハンナ・シャロン(p3p007137)である。
 双剣を構え、突きつけるようにして。
「ただし貴方様の思惑通りにはいかせません。
 誰の命も奪いませんし、奪わせません。
 そしてここは通していただきます!!」
 堂々とした宣言にジルベールが微かに表情を険しくする。
「ふん……眼前にいる奴らを見ろ、か。眠っている者達に何を言うやら。
 アンタこそ、目を開いているのに見えていないんじゃないか?
 一人残らず深緑を救おうと集まった当事者だ。部外者などいるものか」
 腰に手をやり、鋭く告げる『舞祈る』アルトゥライネル(p3p008166)の言葉は、魔種を真っすぐに射抜いている。
「故郷を守りたいのであればこそ、ここで身内争いをしている暇は無い。
 同族を人質にする卑怯者には道を開けてもらおうか」
 続けた言葉のまま、視線を幻想種の方へ移す。
「眠りに落として他者の意思を踏みにじるに等しい行為、
 流石の俺も許しがたい悪辣さだが、今は幻想種達の安全が先決だ。急ごう」
 帽子の下から魔種を見る『死と泥の果より』マッダラー=マッド=マッダラー(p3p008376)とて、その所業には不快感をにじませる。
「スティアくんやヴィオレットくんからすれば、今回の依頼はつらいものだろう。
 だからこそ、誰も犠牲になどしない。救える命を全て救うのが俺たちイレギュラーズだからな」
 その言葉が届いたのか、向こうの魔種がぎりりと忌々し気にこちらをにらんだように見える。
「なにやらのっぴきならない状況な様子。なんにせよ人を操ったらだめですよっ。めっ」
 ロスカに跨る『ドラゴンライダー』ウテナ・ナナ・ナイン(p3p010033)の言葉に、魔種は当然ながら聞く耳を持った様子はない。
「取りあえず、取り返しのつかない事になる前に早く何とかしちゃいましょうっ」
 そんなウテナに同意するようにロスカが「くぁ~」と鳴いた。


「やってみろ、偽善者どもめ」
 吐き捨てるようにそう言ったジルベールの周囲を光が包み込む。
 それが何らかの術式であったのか、雄叫びを上げながら8人の幻想種が動き出し、それに続くようにして残りも動き出す。
 だがそれよりも早くに動いたのはジェイクである。
「ちょいと痛いかもしれねえが悪く思わないでくれ、殺しゃしねえからよ」
 やや銃口を上にしてぶっ放した弾丸は微かな放物線を描いて戦場の遥かな後方へと飛んでいく。
 後方めがけて飛んだ弾丸は途中で炸裂し、中から網が広がり後方を覆うようにして広がった。
 刹那の後、バチバチと言う音と共にスパークが見えた。
「そういうわけですから、この場は強引に抜かせていただきましょう」
 続けたのはアリシスである。
 戦乙女の槍を立てて持ち、祈りを捧げる。
 美しき穂先は鮮やかな輝きを放ち、神聖を帯びて戦場を照らす。
 眩い輝きに照らされた幻想種達がバタバタと倒れていく――が、そのうちの1人だけはそのまま叫び、弓を構えた。
(あれは先程の声と同じ……なるほど、手練れの者ですか)
 2人に続けとばかりにハンナは走り出す。
 眼前に見据えた幻想種、踏み込みと同時に、その手に握る双剣――ではなく、脚を払った。
 さほどの威力も無かろうが、刹那の動きにちょっとばかり揺れた幻想種の鳩尾目掛け、逆手に持った双剣のグリップを殴りつけるように叩きつけた。
 口から洩れる空気の音と、だらりと落ちた幻想種の体重から逃れれば、ハンナはゆらりと立ち上がり、別の幻想種めがけてその場で顎擦れ擦れを蹴り飛ばした。
「……啖呵を切ったとはいえ、うっかり殴りすぎないようにしないといけませんね」
 ふっと一息を入れながら、ハンナは顔を上げた。
 その視線の先には、動きを見せぬ魔種がある。
(魔種である以上いつか決着をつける日が来ると思いますが、
 それとは別にあの方の心の整理もつけられると良いですね……)
 前回のことを思い出しながら、ハンナはそう思うのだ。
 先手必勝とばかりに動いた3人に続こうとマッダラーが動き出す頃、幻想種達がこちらに向かって突っ込んできた。
「遂に来たか……とはいえ操られた状態で放つ生半可な攻撃で倒れるようでは泥人形の名折れだからな、気合を入れていかせてもらおう」
 背負うギターを鳴らし、吟遊詩人は物語を紡ぐ。
 それは傀儡が命を求める願いの話。
 紡がれた物語に重ね合わせたのか、幻想種達がマッダラーの方へと吸い込まれるように動き出す。
 レンジャーたちの短刀による攻撃も、魔術師が放った至近距離の魔術も、それら全てを呑んで、泥人形は立っている。
「目を覚ませ。深緑を救う英雄の登場で、その悪夢は終わりだ」
 アルトゥライネルは迫りくる幻想種達を見ながらそう声を上げる。
 文字通り踊るように大胆な身のこなしで迫った幻想種を受け流しながら、紫染に魔力を籠める。
 花片が戦場に舞い上がり、鮮やかな閃光を瞬いて走り、鮮やかな光に魅入られたように、幻想種達がうめき声をあげた。
「どうしてこんなことをするの?
 無関係な人達を巻き込むだなんて……お母様が知ったら悲しむと思うんだけど……
 貴方の悲しみは私にはわからないけど、もし私にぶつけたいなら正面からきたらどうかな?
 私は逃げも隠れもしないし、全部受け止めてあげるよ!」
 福音を紡いだスティアは、自分の方へとゆらゆらと近づいてくる幻想種達の向こう側、ジルベールへと問う。
「……」
 だがジルベールからの返答はない。
 ただこちらを忌々し気に睨むばかりで、決してその場から離れようとしない。
 まるでそこから先はいかせないとばかりに。
「貴方が庇ってくれるから安心して前に出れるわ。ありがとね!」
 オデットは自らの前に立ち塞がるようにして幻想種達を止めるマッダラーにそう告げて、妖精たちへお願いを告げる。
「お願い、あの人達を助けてあげて――」
 陽光の大妖精の願いを聞き入れるように、周囲の見えない光の妖精たちが一斉に1人の幻想種の下へ飛んでいく。
 妖精たちが放つ聖なる光が眩く輝いたかと思えば、聖光を受けた幻想種がそのままつんのめるようにして倒れこむ。
「優しい木漏れ日でおやすみなさい、ってね。殺してないわよ?」
 穏やかに告げる大妖精の微笑は倒れたその幻想種には届いているのだろうか。
「痺れちゃってくださいっ! びりびりですよっ!」
 ウテナはアビスド・ポットを幻想種達に向けた。
 直後、植木鉢の中にあった茨がうねうねしながら幻想種の一匹を絡めとる。
 倍々に増えていく茨によって飲み込まれた幻想種が苦悶の声を上げる。
「ロスカっ! 威嚇!!」
 ついでに動けそうだとばかりにウテナが指示をすれば、ロスカがくぁ~~~~と声を上げた。
「がおー!!!!!」
 特に意味はないがついでに自分もやってみれば、つい先ほど茨から吐き出された幻想種を威嚇する。
「我らの神樹よ、どうか、この者達に救いを――」
 ヴィオレットが祈りを捧げた刹那、倒れ伏す幻想種達を照らすように、光が放たれた。

 戦いは長期戦の様相を呈しつつあった。
 1人1人は正直なところ問題ないが、いかんせん数が多い。
 それでも数的不利を蹴散らして進む中、幻想種の数は当初の3分の一まで減っていた。
 前線は徐々に押し上げられている。
 マッダラーはそんな中で協奏馬を嗾けていた。
 数多の幻想種の中から、明らかに動きの違う8人のうち、最後まで残っていた4人――最低でもその3人を捕捉するためだった。
「もどれ、協奏馬たち」
 そう指示を出した――その時だった。マークさせていた3人がいよいよ邪魔になったのか、協奏馬を殴りつける。
 ピシっと音を立て3体?3頭? が戻ってきたころには、修理が必要になっている。
「マッダラー、助かった」
 そういった直後、ジェイクは視線を幻想種達に向ける。
「いい加減に目を覚ませ! 幻想種としての誇りを忘れるな!」
 一斉に杖を掲げ、魔術を行使しようとする3人と、短剣を構えてこちらを窺う1人。
 その4人へ、ジェイクは一喝を飛ばす。
 それは半ば無駄であろうとは分かっていた。
 けれど――それでも、じっとしてなどいられなかった。
「――――」
 返答は、魔術だった。
 強烈な魔弾がイレギュラーズめがけて降り注ぐ。
 だがそれも仕方あるまい。
 これが例えば、普通の魔種の力であれば、もしかすれば何とかなったのかもしれないが。
「くっ……」
 降り注ぐ魔弾を凌ぎ、ジェイクは引き金を引いた。
 二丁拳銃から一斉に弾丸をぶっ放せば、より近くにいたレンジャー風の幻想種を幾つもの弾丸が撃ち抜いた。
 急所は外れている――死にはしないだろう。
 アルトゥライネルは舞うように走り抜けた。
 その視線の先には、ヴィオレットへと近づく幻想種の姿が見える。
 肉薄と同時、術式を放つ。
 ノーモーションで放たれた衝撃波が痛みなく幻想種を後方めがけて吹き飛ばす。
「いくぞ、あと少しだ!」
 声を上げ、放つは神聖なる断罪の輝き。
 激しく瞬く光に導かれるようにして、アルトゥライネルは前へと一歩を踏みしめる。
「貴方達なら耐えきれるでしょ!」
 オデットは呼び声の影響を受けた狂化した幻想種へそう告げたまま、妖精へと願う。
 姿を見せたのは、それまでの小さな光の精ではなく、オデットと同じぐらいの身長をした美しき氷の妖精である。
 霧氷の精はオデットの前に浮かぶと、両手を前へ。
 構築された魔方陣から美しきダイヤモンドダストが広がっていく。
「どうして、お前まで俺の邪魔をするんだよ、ヴィオレット。じっとしててくれ、お願いだから」
 倒れ行く幻想種達を見ながら、まるで泣きそうな声を上げたジルベールが目を伏せたかと思うと、魔力が爆ぜその姿が消えていた。
「こそこそしてないで次は貴方も来てくださいねっ!!」
 聞こえているのかは分からない。それでもウテナはそう叫ぶと、そのままルスカの頭を幻想種の方へ向かせなおす。
「ルスカっ! もう一度、威嚇!!」
「くぁ~~~~~!!!!!」
 再び響き渡るリトルワイバーンの咆哮に合わせて、ウテナはアビスド・ポットを幻想種へ向けた。
 何もないそこから突如として茨が飛び、幻想種を後方へ吹き飛ばす。


 長期戦の様相を呈しつつも退けたイレギュラーズは目的地へと辿り着いていた。
「ここがお母様の生まれ故郷なんだね」
「えぇ……私も久しぶりに帰ってきましたけど、あまり変わっていませんね」
 そう言って少しばかり目を伏せたヴィオレットを横目に、スティアは少しばかり周囲を見てみた。
「実のところ、此処も焼けていると思っていたのですが……不思議ですね」
 ヴィオレットの言葉に、スティアは思わず振り返る。
「……まるで、誰かがここを守っていたような――いえ、それを思うのは野暮という物ですか」
 慈しむような、嘆くような――或いは悲しむような。そんな声でヴィオレットが言う。
 その意味がどういうことか、スティアは理解した。
 ――いや、というより、ここに来るまでそんな複雑な声で語る相手は、1人しかいない。
「なるほど、ジルベールの目的はここを守ること、でしたか。
 2人の姉にとっての故郷――大切な場所があるであろうここを」
 ヴィオレットの言葉にアリシスは自らの考察を口にすれば、同時にそれの虚しさも分かる。
「叔父様の時間は、そこで止まってるんだね」
 停滞した時間――ジルベール・フォンテーヌと言う魔種は『2人の姉が共にいた』そこで完全に止まっている。
 それは明らかに、魔種の属性(ありかた)を象徴する物だ。
「怠惰の魔種、ジルベール・フォンテーヌ……」
 その言葉は誰かに聞こえていただろうか。
「そうだ、叔母様! 叔母様の思い出の場所とかお母様の好きな場所とかあったりするのかな?
 落ち着いたら、その場所にも行きたいな」
「そうですね、行きましょうか……せっかくですから」
 ヴィオレットの笑みは優しいものだった。
「それなら、その時はどんな風に過ごして、どんな子だったのかも教えてほしいな!
 エミリア叔母様に聞いた感じだと破天荒な感じだったみたいだし……私の前だとお淑やかだったのに!」
 それは、どちらかといえば魔種ジルベールから話題を逸らすための半ば方便のようですらあったが――
「ふふ、良いですよ。その時になったら話しましょう。
 ただ、1つ言えば……貴女の言う通り、破天荒な子だったのは確かですよ。
 それぐらいでなければ、外に出たりしないですしね」
 そう言って笑うヴィオレットは、どこかスティア越しに懐かしいものを見ているような――そんな目だった。

成否

成功

MVP

アリシス・シーアルジア(p3p000397)
黒のミスティリオン

状態異常

なし

あとがき

お疲れ様でした、イレギュラーズ。
魔種ジルベールとの決戦は次回へ。
自らの守りたかったものを守り抜けず、在り方に苦悩する魔種がどんな結論を導くのかは次回……となるでしょう。

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