PandoraPartyProject

シナリオ詳細

知ってる? 麒麟鍋をするとね、ステータスが挙がるらしいよ!

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


「ぐあ――!! しまった、また攫われてしまった――!!!!!」
 黄野(p3p009183)は旅人であり麒麟である。
 麒麟と言えば縁起の良い神獣としての逸話があるが――だからこそなのだろうか。黄野は度々謎の勢力に攫われる事があった! 以前なんて豊穣の国でお酒に漬けられそうになったし、天義の方でもなんか邪神の生贄として捧げられそうになったか……?
 ともあれそんな出来事があったのにまーた攫われてしまった黄野。四か月ぶり三回目である!
 今度は鉄帝の街中でなんか美味しい匂いがするなぁと思っていたら急に後ろから謎の人物達に襲撃されて連れ去られてしまった! ぐあ――!! なんかこいつら凄いマッチョだし力が強い――!!

「黄野――!! テメェ、次はねぇっつったろうが――!!」
「はわわ、またまた黄野さんが、さらわれてしまったのです……!!」

 ブチ切れるトキノエ(p3p009181)! あの野郎なんど叱り飛ばしても攫われやがる――!! なんで各国で攫われる? その内全国コンプリートする勢いなんじゃないか? ともあれ心配するニル(p3p009185)らと共に追いかけ追いかけ……辿り着いたのは。
「な、なんじゃここは……大量になにか、集まっておる……?」
「中央にいるのが――黄野か」
 なにやら怪しげな広場。藤袴(p3p009289)と白萩(p3p009280)が見据えた先には――囚われた黄野がいた。まーた簀巻きにされる様に縛られており……その周囲には何やらやたらマッチョな面々が並んでいる。なんだあの地獄絵図は。
「同志諸君……! 遂に時は来た!
 我らのステージをまた一つ上にあげる時が来たのだ――!!
 今こそ我らは麒麟の鍋を喰らいて、更なる筋肉の領域へと到達する――!!」
 その中の一人が天を衝く様に拳を挙げれば――同時に歓声が沸き上がる。
 そう。彼らこそ筋肉を信仰し、筋肉の為ならば神の肉すら喰らう集団。

 名を――『マッチョ・レボリューションズ』!

 黄野はその生贄に選ばれたのだ! よーく見れば、奥の方に鍋があるし『祝! 麒麟鍋!(⸝⸝⸝´꒳`⸝⸝⸝)』という横断幕まで掲げられている――やべぇ! 連中黄野を喰う気だ!!
「まずは身を清める為に塩を少々!!」
「うわ! ぺっ、ぺっ! 岩塩ではないか、しょっぱ!!」
「そして体内からも清める為に――この青汁を捧げたもう!!」
 ぬわ――!! 怒涛の塩に黄野悶える!
 だが間髪入れずに次が来るものだ――大量の青汁がッッッ!
 それは黄野を体の中から綺麗にせんとする計略。
 食べる時には中身も綺麗じゃないとね! だから行くよ、一気に一気に!!
「うわー! 苦いのじゃ――!! しかもどれだけ飲ませるつもりじゃ――!!」
「大丈夫大丈夫いけるいける!! イッキ!! イッキ!!」
「青汁ハラスメントじゃ――!! 助けてたもれ――!!」
 じたばた暴れる黄野。更なる青汁を注ぎ込まんとするマッチョ軍団。
 ……どうにも幸いにして即鍋にぶち込むわけではなく、暫く調理タイムに入っている様だ。塩を盛り込んだり、青汁飲ませて体内を清めようとしたり……他にも色んな調理工程が挟まるかもしれない。という事は些か救出に当てられる時間はありそうか――
 まぁちょっとぐらい青汁攻めを放っておいてお灸に据えるのもいいんじゃないかとか、そんな事がちょっと頭を過った気もするが。でもまぁ流石に食べられるのは洒落にならないしなぁ……どのように助けたものか。
 何度も懲りずに捕まる黄野を視界の端に、誰かの吐息が零れた気がした……

GMコメント

 リクエストありがとうございます! 遂に三回目か……
 このシナリオは黄野さん誘拐計画(?)シリーズの三回目で、下記の二回が以前実施されています。が、こういう事があったというだけですので必ず読んでおく必要はありませんのでご安心ください。

1回目:「麒麟一番漬けビール製造計画! ~黄野を漬けて~」
2回目:「一回だけ生贄に捧げさせて! 一回だけだから!」

 それではご縁があればよろしくお願いします!!

●依頼達成条件
 黄野さんが喰われる前に救出せよ!
(黄野ォ!!! 三回目だぞぉッ!!!!!!!)

●フィールド・シチュエーション
 鉄帝国の街中の――古ぼけた路地裏を更に突き進んだ先――にある広場です。
 そこは謎の組織『マッチョ・レボリューションズ』の集会場所でした!!
 奴らの事は後述しますが周囲は空き家ばかりで、隠れられる場所は多そうです。中央では多くのマッチョが謎の踊りを繰り広げており――最奥の方では黄野さんが謎の青汁一気飲みを強要されています。

 このままでは黄野さんが青汁に制圧され……じゃない。麒麟鍋になってしまう事でしょう! その前になんとか救出してあげてください――!

●敵(?)戦力『マッチョ・レボリューションズ』×たくさん
 説明しよう。彼らはマッチョの集団です!
 神秘的かつ健康的なモノを食べれば食べる程きっと強くなるという信仰があり、その一環として黄野さんは狙われたみたいです。「食べればきっと機動力が挙がる!」「いやきっと物攻が挙がる!」「いやいやCTが挙がるって絶対!!」とかなんとかのたまってます。
 普段は気のいい人達なんですが、筋肉を育て上げる事になると時々思考がぶっ飛びます。

 構成員の多くのメンバーは現在広場中央で謎の踊りを繰り広げています。めっちゃハイテンションです。もう気分はお祭りみたいなもんですね。
 一部のメンバーが黄野さんを調理しようと奥の方で青汁飲ませたりしてるようです。そう数は多くないので、何とか近づければ黄野さんを助け出せるかもしれません……

 ちなみに戦闘能力的には皆近接(脳筋)タイプです、が。「筋肉は人を傷つける為に使うものじゃない!」という信念があるらしく、あまり本気で殴ってこようとはしません(※黄野は除く)
 ただ筋肉の進化(麒麟鍋)を邪魔しようとすればその筋肉を用いて、まるで壁の如く立ちふさがってくるでしょう……

 なお黄野さんは縛られてますが、頑張れば縄の拘束は甘いので頑張れば自力でも脱出できるかもしれません。ただし周囲は完全にマッチョに固められています――暑苦しいね!

●謎の麒麟鍋レシピ(⸝⸝⸝´꒳`⸝⸝⸝)
1:まずそこいら辺に生えてる麒麟を用意します。
2:麒麟を用意したら、塩をぶちまけます。清め第一段階です。
3:青汁を飲ませて体内を清めましょう――清め第二段階です。【←イマココ!】
4:そこまで終わったら一度麒麟を崇める為に平身低頭! 食への敬意は忘れずに!
5:最後にお肉を柔らかくするためにボコボコにしましょう。
6:最後に麒麟をあっつあつの鍋にぶちまけて完成です!

●塩
 黄野さんを美味しく仕立てあげます。しょっぱい!

●青汁
 黄野さんの体内を清めます。美味しくはないです。
 なんかめっちゃ沢山用意されてます。

●麒麟鍋(予定)
 既にネギとか豆腐とかはぶち込まれてる完成前の鍋です。
 うーん美味しそうな匂いが漂ってきます。黄野さん、早く入って。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はKirinです。
 情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。うおーがんばえー!!

  • 知ってる? 麒麟鍋をするとね、ステータスが挙がるらしいよ!完了
  • GM名茶零四
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2022年05月31日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費150RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)
黒撃
トキノエ(p3p009181)
恨み辛みも肴にかえて
※参加確定済み※
黄野(p3p009183)
ダメキリン
※参加確定済み※
ニル(p3p009185)
願い紡ぎ
※参加確定済み※
白萩(p3p009280)
虚構現実
※参加確定済み※
藤袴(p3p009289)
猫とたわむれ
※参加確定済み※
フォルトゥナリア・ヴェルーリア(p3p009512)
挫けぬ笑顔
綾辻・愛奈(p3p010320)
綺羅星の守護者

リプレイ


 一度目はまぁそういう事もあるかもしれない。
 二度目は何かの間違いでそういう事もあるかもしれないが――しかし三回目とは。

「うそじゃろ混沌の民麒麟のこと好きすぎじゃろ!
 どこの国行ってもこんななんじゃが――!? もががが、青汁はもういいと言うに!!」

 これがモテ期ってやつかの、へへ! と『愉快な麒麟』黄野(p3p009183)は人気者で困っちゃってる感じである――そう。好きのベクトルがあらぬ方向を向いておるのも含めてな! たすけてくれ――!
「またかあのダメキリン! やはり首を伸ばして目立つようにしておくべきだったのじゃ。麒麟の名は返上し、キリンと改名せい!! 来世はキリンで確定じゃ!!」
「運が悪いとかそういうの通り越してる気すんだわおじさん。もしかしてわざと捕まってるとか、捕まるのが癖になってるとかそういう……まぁ……今回も付き合ってやっかァ……」
 じたばた。マッチョに囲まれながら暴れる黄野の様子を遠くに見据えながらも『猫とたわむれ』藤袴(p3p009289)と『虚構現実』白萩(p3p009280)らは動くものだ。何はともあれ見捨ててはおけぬと――目指すは陽動+救出の計画、その為に。
「よし、じゃあニル。ウチの百日紅を宜しくな」
「はい! 百日紅様、よろしくなのです」
 救出班の方として動く『陽だまりに佇んで』ニル(p3p009185)に、白萩はファミリアーの使い魔たる子猫を手渡すものだ――互いに連絡を取り合う為。ニルも白萩にファミリアーで使役してるものを交換しつつ。
 首筋を撫ぜればごろごろと鳴く百日紅をニルは見据えながら、同時に周囲も窺うものだ。
 とってもとっても賑やかなお祭り。
 奥の方では黄野様もいて『おいしい』感じがします――
「黄野様は、やっぱり、おいしいのでしょうか……? お酒に漬けても、お鍋にしても、おいしい……? むむ。ニルは、とってもとっても気になります。百日紅様も気になりますか?」
 んにゃ? 上目遣いで見てくる百日紅だが――とにかく黄野様を助けないと!
 意を決して進み始めるイレギュラーズ。先の藤袴やニルは物陰より黄野へと近付いていく、救出の本命側だ。幸いにして周辺に広がっている空き家の中なども利用すればマッチョ達の警戒を抜けるのもさほど難しくはない――そして。

「むっ! 止まれそこの御仁! この先はマッチョ集会であるぞ――何用か!」
「やぁ! オレ達は敵じゃないよ! ただちょっとイイ筋肉が見えたからさ。
 どうだい? オレたちと筋肉について語り合わないかい?」
「いやマジで仕上がってんなアンタ達!! 切れてる切れてる! 男として尊敬するぜ!! いやホントによ!! (頭が)ブッチ切ってんな!!」

 一方で真正面からマッチョ達へと近付いたのは『業壊掌』イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)や、ヤケクソ気味の『劇毒』トキノエ(p3p009181)である。そう、彼らこそが陽動班――マッチョ達の意識を集めるマッチョ陽動班!
 とりあえずマッチョ的友好会話から彼らと接触せんとするものだ。え、話がこじれたり、バレたりしたらどうするのかって……? その時はぶん殴って何とかするよ! ゼシュテルイズム! まぁトキノエは眼前に広がるマッチョ達と、こんな事をしないといけなくなった原因たる黄野に――心中で不満を垂れ流してはいるのだが!
(あの野郎、二度あることは三度あるって言うが――本当に三回攫われる奴があるか!? しかも状況がどんどん悪化してねぇか!? どういう星の下に生まれればそういう事になるんだよオラアアアア!)
 後で一発ぶん殴ってもいいよな――そう思いながらも救助に赴いて。
「むぅ! この筋肉の美を理解できる者達がいようとは……! マッチョ、感激ッッ!!」
「騒ぐ声が聞こえてきたので何かパーティーでもしているのかと見に来ました。皆さん良い筋肉ですね……筋肉の精霊が喜んでいるのを感じますよ。そうやって筋肉をつける秘訣を私達に教えていただくことは可能でしょうか?」
「ええ――是非にご教示賜りたいものですね。それほどの筋肉、一朝一夕で身に付けられるモノではない筈……逞しい上腕二頭筋の価値たるや、実に興味深いです」
 イグナートやトキノエが示した筋肉への関心に涙を流す程マッチョは喜んでいる様だ――だからこそ『挫けぬ笑顔』フォルトゥナリア・ヴェルーリア(p3p009512)や綾辻・愛奈(p3p010320)も畳みかけるもの。
 穏やかにして、心に沁み込む様な雰囲気と共にフォルトゥナリアが語り掛ければマッチョ達もにこやかに。更には愛奈が医療……いや人体構造とも言うべきか、の観点から褒めちぎれば言に具体性も増すものである――
 であれば視線が完全に釘付けとなっているようだ……こうして話してみればマッチョはともあれ気の良い人達に感じるのだが。
(でも時としてこんな邪教の儀式じみた事をする――普通に考えれば狂気に染まってるよね)
 フォルトゥナリアは感じるものだ。だからこそ何故、と。
 いや、まぁ愛奈も理屈上は分からないでもない。確かに筋肉の為には良い食材を取る必要がある、良い食材こそが良い肉体を作り得るとは思う。だけど、一応意思疎通が出来る相手を食べようとするのはもう常軌を逸しているのだと――
(……今更でしたか。混沌ですものね)
 思わず吐息が零れそうになるものだ。
 なんにせよまーた捕まった黄野に責任もあるものの、見捨てる訳にもいかない。
 どうにかこうにか助け出す為にもう少しばかり引き付けるとしようか――!


 筋肉! 筋肉!!
 斯様な叫び声が聞こえる中へと陽動班は無事に潜入できた――ちょろいなこのマッチョ達?
「よくぞきた外界の同志達よ――筋肉における話があるとか」
「なァに難しい話をしようってんじゃない。ただ、どうしても気になったんでな」
 代表らしきマッチョが現れれば、言を真っ先に紡いだのは白萩だ。
 彼は疑問を抱いていた。黄野云々以前に――

「──お前さん達にとって、筋肉ってのは何だ?」

 そう。彼らにとって信仰すべき筋肉とはどういう認識なのかと。
 純粋に気になンだ。果たして筋肉の進化とはどこに向かっていくものなんだ、と……!
 白萩も意識して鍛えている訳ではないが筋肉は知らずの内に付いている方であった。
 だが彼らは意識して筋肉と共にある者達。
 もしかすれば己が足を、機動力を挙げる事が出来る秘密の特訓法でもあるのではないと思っていて……え、それが本音だろって? げふんげふん。
「筋肉か――それは我らにとって神であり、友であり、そして……愛すべき妻である」
「ほう……興味深いな。それが最新の筋肉進化論の一部だってのか?」
「然り。そも筋肉とは元を正せば太古の昔、男女の様に別たれていた存在というのは周知の事実だと思うが――」
 そして続く筋肉の伝承。なんだかとんでもない内容を大真面目に語っている様には思わず頭の上に『???』と疑問符が浮かんできそうだが。
「ははぁ。なるほど、それで相手を食べる事で一つの生命として融合し、より強靭な筋肉が誕生する……と。だからそんなに肩まで筋肉の塊なんですね」
「ふふふ。然り! 我らは常に良い食材を求めて各地を旅しているのだ――!」
 よっ。肩に小っちゃい亜竜乗せてんのかいっ。仕上がってます仕上がってます――と。愛奈はとりあえず場を囃し立てるものである。いやホントに理解してるとかしてないとかじゃなくて……とりあえず気を散らせればいいので……
「そうだ! 今から麒麟祭をやると聞いたぜ!
 だがよ……筋肉と言えばタンパク質……つまりはプロテインだよな!
 麒麟鍋の前に飲めばその肉体は更なる高みに近づくんじゃねえか?!」
「――主、天才か! そうだ、プロテインだー! プロテインを用意しろー!
 ついでに麒麟様にも飲ませたまえ――!!」
 さすればトキノエが『良いアイディアを閃いた!』とばかりに指を鳴らしながら彼らへと提案――したらこれまた良い感じに周囲が騒がしくなった。のだが、もののついでに黄野が接種すべき栄養が増えた。なんてこった。まぁ反省の意味も込めて痛い目に遭ってもらおう。それに行程が増えれば時間稼ぎにもなる筈だ……
「いやいやいやこれ不利ってレベルじゃないじゃrオゲエー!?」
 そんなこんなで――やぁ! オレはいたいけな麒麟.feat拘束! ちょっとマッチョに囲まれて引き続きピンチである!! 顔を背けて青汁ラッシュは断固拒否したいのじゃが、マッチョの力には逆らえぬ――! あ、プロテインも追加ナンデエエエ!!?
「ふむふむ。アレが件の麒麟……そうだ。こんな事もあろうかと私は料理も会得しているのですが――どうせならもう少し美味しく頂きませんか? 手伝わせて頂ければもっと筋肉の神秘を肉に含ませることが出来ると思うのですが」
「ななな、なんと!!? 斯様な御仁がこのタイミングに現れてくれるとは……
 やはり筋肉の神が、今日この日絶好の麒麟を喰らえと啓示を出しているのか……!」
 更にその黄野の様子を見据えながらフォルトゥナリアは言を紡ぎ続けるものだ。彼らと会話を弾ませつつ交渉し、とにもかくにも時間稼ぎを行わんと……仲間がこのままボコボコにされて鍋にされるなんてゴメンだからね。
「消化管を空にしたいから青汁は飲ませるだけでなく排泄まで見届けてからが良いし、食べることができない毛は事前に剃っておくのが望ましいでしょう。出汁にするにしてもやはり余分な要素は極力取り除いておくべきかと……」
 フォルトゥナリアの料理解説。黄野、不穏な空気を察して背筋に悪寒走る――
 まぁぶっちゃけ殺してから準備するのが楽なのでは? とは悟らせぬ様に彼女の巧みな話術が繰り広げられるものだ。少しでも新鮮な方がいいでしょう、と……マッチョ達の意識を散らし攪乱して。
 そしてニルと藤袴は生まれつつある隙の狭間から近づきつつあった。
「はわ。黄野様のお肉も食べられちゃうんでしょうか……
 お出汁をとるのはともかく、食べちゃうのはだめなのですよ」
「出汁はいいのかの??」
 そして二人して壁の角から視線を少しばかり向けるもの。
 え、お出汁はいいですよね……? 先日もイレギュラーズのとある方を出汁にして『おいしい』ラーメンを作りましたし。ニルの瞳に迷いはない――ニルさんの今後の許容範囲の拡大が心配です。
 ともあれ遂に黄野の間近までやってこれた。
 空き家から空き家へと移動し。物質を透過しうる技術を持つ藤袴がいれば鍵の問題もない――そして行程の増加や陽動班の行いによって注意も大分逸れているようだ。今の所マッチョは一人しかいない。一マッチョだ。
「まもなく麒麟様を食す時間だ! 麒麟様を崇めよ――!」
「ええい、そこの筋肉達磨よ! 頭がまだ高い!
 腕立て伏せと同じじゃ! どこまで身を低くできるか、今一度己の限界へ挑んでみよ。
 その程度の信仰具合で俺を簡単に口にできると思うてか――!!」
 さすればどうにも調理段階が食事一歩手前になっている様子。
 思わず黄野が必死に拘束を解かんとする時間稼ぎをするものだ――おお、そこな者はよき背筋じゃのう、もっと俺に見せつけてたもれ! やめろ! 至近距離にまで近づかんでよい! 此処が上腕二頭筋とか説明せんでいいから……うあああああ!!
 マッチョの汗が迸る。麒麟の顔に迸る。
 が。だからこそニル達が潜んでいるとは露ほども思っていない様だ。
 これなら何とかなるだろうと……踏み込むッ!
「なっ! お、お前達何者だ――ぐぁ!!」
「こい、ダメキリン――こっちじゃ!!」
「お、ぉお藤袴か! 助かっ……はっ? 誰がダメキリンなのじゃ! オレ麒麟ぞ? オレ麒麟ぞ?」
「ええいなんでもいいから、はようこいダメダメ愚かダブルスコアキリン!!」
「さっきより酷くなってないかの!!?」
 故に即座にマッチョを奇襲。黄野の拘束をブチ破りつつ、全霊の拳がマッチョの後頭部に直撃すればマッチョが気絶……あれ!? しないぞ!?
「であえであえ――! 麒麟が強奪されたぞー! 侵入者だ――!!」
「わわ! マッチョさんの身体は、とっても堅いみたいです……!!」
「うああああ向こうからマッチョの大群が押し寄せて来よるぞおお!」
 ニル、びっくり! そういった堅牢な体を作るのも、やっぱり『おいしい』ごはんが大事なのでしょうか……? でもでも黄野さんを食べちゃダメなのです! 故に彼女が振るうのは筋肉を祓う光だ――うぉ眩しッ!
 後ろは振り返らない。後は此処までの潜入ルートを逆に進んでいくのみだ……!
「ぐあー! お、お主何をする!!」
「ワルいね。さっきまでのが全部嘘だとは言わないけど……これも仲間のタメだからさ」
 そしてニルからトキノエへとファミリアー越しに情報が伝えられ。
 ならばと陽動班も動き出す――イグナートだ。
 マッチョ達が動いたのなら、まぁこうなるのも仕方ない――だって。
「オレの筋肉はヒトを殴るために付けてるモノなんだよね! サァ! キミたちもカラダを鍛える者ならオレの筋肉に背を向けることは出来ないハズだ! そちらの筋肉も出しなよ……ショウブだ! マッルス・ファイトだ!!」
「むぅ!! あれは伝説の……マッスル・ドラミング!?」
 イグナートは名乗る様にマッチョ達の注目を集める――
 ドラミングをしながらだ。マッチョ達よ。お前達は目を逸らせまい……! まぁぶっちゃけオレも何の勝負をすればいいのかさっぱり分かってないけど。でも魅せ筋に実用筋が負けるワケにはいかないんだ。オレにも矜持ってモノがある。
 ていうかまぁ――筋肉を付けて殴れば大体カイケツするのがゼシュテルなんだからショウガナイね! うんうん。何かあったらやっぱりコレが一番さ!
「一マッチョとして手合わせ願うぞ――イグナート殿」
「いいよ! オレたちきっと分かりあえるさ――さぁ語り合おう!」
「おらァ! お前らの筋肉に対する思いはその程度じゃねェだろうなァ!
 掛かってこいよ、付き合ってやらぁ!! 逃げんじゃねぇぞッ!!」
 激突するマッチョとイグナート。更には白萩も上半身の服を脱ぎ捨ててぶつかりあうものだ――己が体を神速の領域へと到達させつつ。殺さじの一手を投じて筋肉言語にて語らい合おう!
 本気の殺し合いではなく、本気のぶつかりあいと言うだけ。
 回避し、拳をいなし、致命となる一撃は叩き込まずに――筋肉の儘に。
「うぉぉ待て待て適度な所で撤退するぞ!
 こんな数のマッチョに付き合ってられるかよ!」
 さすればトキノエは目晦ましを行うが様に、光を放ちてマッチョ達を退け道を切り拓かんとするものだ――残念だがあの麒麟をお前達に食べさせるわけにはいかねぇんだ。諦めてくれ!!
「食べたら腹壊すぞ多分。そんなの食いたくねぇだろ?」
「知れた事! 全てを血肉とするのが――マッチョの矜持よ!」
「だめだこれ話通じねぇわ!」
「ところで黄野さん、どうして防犯ブザー買ってないんですか?
 この前言ったじゃないですか――不審者対策に常に持っておきましょうね、って」
「言っとったか!!? そんな、幼子の様な事オレ言われとったか!!?」
 何度も誘拐されてるのに何を今さら……と。愛奈は紡ぐものだ。
 彼女はマッチョとの抗争により傷つく味方に治癒の術を齎しながら、眼前に至るマッチョを退かす。慈悲と無慈悲の一撃がマッチョ達を退けるのだ――
「私の故郷には『心技体』という言葉があります。
 即ち技術体力と同等にメンタルが大事という事です。
 何か一つに偏っては……それは歪。目的至上に陥っている事を反省して下さいね。
 ――あっ。それはそうと黄野さんは後で三時間正座です。覚悟してください」
 えー!!? 抗議の声が挙がるが、知った事かとばかりに愛奈は抗議を無視して。

「ウワ――ッハハハ! これが麒麟の脚じゃ! 追いついてみせるがいい、マッチョの民よ! あ、待て! 前に回り込んでくるな! やめろ! 見たいのか!? 麒麟の土下座を見たいのかぁあああ!!? もうオレは準備出来ておるぞ!」

 そして逃げ切れると判断するや否や調子に乗る黄野。あぁ、全くもう!
「先にいけぇ黄野ォ! テメ、マジ次はねーからな! フリじゃねーからな! 四度目はねーぞ!」
「ここはニル達に任せて、より遠くに逃げてください……!」
「ぬわー! かたじけないのじゃー!!」
 仕方ないのでトキノエとニルが頑張って足止めに入るのであった。
 お鍋。お鍋かぁ……みなさまと囲めたら、とってもとっても『おいしい』ものだったかもしれない。具材が黄野様じゃなければ、ニルも一緒に、お鍋食べたかったです。
 イグナートに白萩が追いすがるマッチョ達を受け止め。フォルトゥナリアやトキノエ、ニルの閃光がマッチョを薙ぎ払う――愛奈が治癒の術を降り注がせれば、藤袴はマッチョの追撃を攪乱する様に各地を駆け抜けるもの。
「全く。鍋の時期には早いというに……! 筋肉達磨め、時期ぐらい考えんかー!」
 さすれば藤袴の拳が再度マッチョへと紡がれる。
 一体全体どうしてこんなに苦労しなければならないのか――
 天へ咆哮。後であのダメキリンは叱り飛ばしてやろうと、幾人かの思考は一致していたとか。

成否

成功

MVP

フォルトゥナリア・ヴェルーリア(p3p009512)
挫けぬ笑顔

状態異常

なし

あとがき

 依頼、お疲れさまでしたイレギュラーズ!!
 世の中にはいろんな信仰があるんだなぁ(遠い目)
 さてしかし無事に黄野さんは救助されました! 麒麟鍋は回避されたのです! 黄野さん、防犯ブザーは持っておこうね!

 ではありがとうございました!!

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