シナリオ詳細
虎の尾を踏む亜竜種少女ペア
オープニング
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覇竜……覇竜領域デザストル。
この地に住まう亜竜種達は日々、生息する亜竜、魔物達の脅威と隣り合わせの状況で暮らしており、非常に高い戦闘能力を持つ者だっている。
亜竜集落ペイトで日々修行に明け暮れる武闘派の亜竜種達は有名であるが、それ以外でも、集落民としての自衛手段。日々の糧を得る為の狩猟手段などといった目的で実戦経験を積んでいるのだ。
そんな亜竜種の里で育った少女、カレル、シェインのペア。
やはり、狩猟、防衛といった仕事に就く両親を持つ彼女達はまだ若いながらもかなりの戦闘能力を持つ。
軽装鎧を纏う赤髪ショートヘアのカレルは剣術少女だ。
長剣を操り、鮮やかなステップで敵を切り裂く。持ち前の翼もあって、その威力は女性の細腕でもかなりの威力となる。
その相方、緑髪ロング、ゆったりとしたローブを纏うシェインは術士少女。先端に魔力晶を埋め込んだ木製の長杖を手に炎や雷、治癒の術をメインに使うことができるという。
その2人は現状、覇竜内のとある林を歩いていた。
木の実を集め、携帯食を増やしていた彼女達だが、その途中でご馳走となりそうな魔物を発見したようだ。
それは、やや派手な色をした鶏。
気性の荒いその鶏は獰猛鶏と呼ばれ、自分達より大きな獣すら仕留めてしまうという。
「カレルが食べたいだけじゃないの?」
「いやいや、腕に縒りをかけて調理するよ?」
2人は常に一緒。こうして倒すべき獲物を見ている間もずっと寄り添い、手を繋いで。
獲物と見定めた魔物を追っていく2人。
やがて、獰猛鶏が対したのは、三尾を持つ化け狸。発展途上だが、覇竜の地は彼等の力を高める為に丁度いいようである。
さて、その化け狸と獰猛鶏の争いを注視するカレル、シェインペア。
「漁夫の利って言葉もあるよね」
「仕掛けるタイミングは見ておきたいね。両方捕らえられるかも」
2人はいつ介入して攻撃を仕掛けるかと考える。
だが、彼女達は気づいていなかった。
グルルルルル……。
自分達が恐ろしい亜竜の縄張りに入ってしまったことを……。
●
亜竜集落フリアノンへと集まるイレギュラーズ。
「悪いね。来てもらって」
『海賊淑女』オリヴィア・ミラン(p3n000011)は忙しいメンバー達を労い、依頼の説明を始める。
覇竜の地には恐ろしい亜竜、魔物が多数生息しており、この地に住まう亜竜種達ですら満足に出歩くことができない。
しかしながら、そんな中でも勇敢な者達がこの地で狩猟を行い、あるいは冒険を行っている。
「カレル、シェインという亜竜種少女ペアが覇竜で冒険を続けているんだ」
外の世界を見てみたいとフリアノンを飛び出した2人だが、その冒険は覇竜内に留まっている。いつかはイレギュラーズと同様に他の国にも足を運びたいとのことだ。
「へえ、無事に旅を続けてるんだな」
『幸運の女神を探せ』ジュート=ラッキーバレット(p3p010359)が嬉しそうに相槌を打つ。
彼女達は基本野宿を行いつつあちらこちらを巡っているが、時折地元であるこのフリアノンに戻っていた。
その際、討伐済みの亜竜や魔物の素材などを持ち帰り、あちらこちらの亜竜、魔物の情報を仕入れている。
自分達の技量、敵の能力を照らし合わせて戦いを挑むなど、慎重になっていたはずの彼女達だったが、どうやら今回は知らぬうちに危険な亜竜の縄張りへと入ってしまっていたらしい。
「竜虎と呼ばれる亜竜さ。見た目は虎だが、全身は竜の鱗を纏っているらしい」
地元民でも近寄らぬような強力な相手だ。下手にその縄張りに入ろうものなら、それだけで獲物とみなされて襲い掛かられる。
炎を操り、それを爆発させて空中へと舞い上がる竜虎は素早い動きで攻撃を仕掛けてくる。それが複数では亜竜種少女達にはあまりに分の悪い相手だろう。
「どうやら、少女2人は目先の獲物に気を取られてしまってるようさ」
イレギュラーズが駆け付けたタイミング、すでに少女達はその獲物と交戦を開始してしまっているだろう。
その為、竜虎が少女らを狙わぬよう抑え、討伐してしまいたい。
場合によっては、少女達の戦いへと介入するのもいいだろうが、彼女達とてかなりの力量を持っているペア。介入するなら状況は見ておく必要がある。
「例えば……、討伐直前などに介入しようとすれば、獲物を横取りされたと感じてしまうだろ?」
別の危険が迫っていることを伝えれば、彼女達も察してはくれるだろう。
逆に、敢えてイレギュラーズは竜虎だけを相手にするという手もある。少女達は自分達が倒せると踏んで魔物同士の戦いに首を突っ込んでいるのだ。
そちらは最後まで見守るだけにして、危険が伴うなら叱責しつつ介入する……といった形だ。
よほど彼女達の運が悪くなければ、そちらは大丈夫だろうが、有望な若者達の命を無駄に散らすこともない。少女達の手並みを拝見しつつ最後まで見守るのもいいだろう。
なお、事後、自然に遭遇するのは自由だ。今回の1件とは無関係を装って交流してみるのもいい。
「以上だね。ある程度力ある子達みたいだから、冒険者として接してあげな」
混沌での活動の長いイレギュラーズとして、余裕を持った態度で接してあげて欲しいとオリヴィアは説明を締めくくったのだった。
- 虎の尾を踏む亜竜種少女ペア完了
- GM名なちゅい
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2022年05月29日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談5日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
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覇竜の地を進む旅人と亜竜種混合のイレギュラーズチーム。
今回は以前の依頼で出会った、覇竜を旅する亜竜種少女2人の話である。
「あれから無事旅を続けていたようで何よりです……ですが」
赤と蒼のオッドアイが特徴的な長身女性、『亜竜祓い』アンバー・タイラント(p3p010470)は一度面識のある少女らが旅を続けていることを喜ぶが……。
彼女達が非常に危険な亜竜の縄張りへと立ち入ったという情報には、アンバーも眉を顰めてしまう。
「目先の獲物に気を取られて他の敵の縄張りに入り込んでしまう……良さそうなコンビですが、まだまだ若いですねぇ」
「若い頃にはあるあるだよな、実力を省みず危険地帯に踏み入ること。
……私にはあったっけかな……覚えてねーや」
ルーン文字で特殊加工された布で両目を覆う『双名弓手』風花(p3p010364)の主観に対し、背に赤い翼を生やす旅人、『蒼穹の戦神』天之空・ミーナ(p3p005003)は虚空を見上げて過去を思い出そうとする素振りを見せ、すぐに年寄りの与太話だと首を横に振る。
「覇竜領域は……というか亜竜種は強さの平均が高いからこういうこともあると言う事だなー」
和風の鍛冶職人、『陰陽鍛冶師』天目 錬(p3p008364)は、しみじみと覇竜の日常を考える。どれほどの亜竜種が国内の探索に出ているのかと言われれば疑問だが。
「フハハハ! 悪たる僕としては年下の同族の危機とあらば助けにいくのは至極当然な事さ☆」
そこで、眼帯で片目を覆う赤毛の『不死身の朱雀レッド』朱雀院・美南(p3p010615)が高らかに笑い、少女達と年があまり変わらないのは些細なことだと指を振る。
「助け合う事に理由なんてないのさ!」
「同胞の危機を見てみぬふりは出来ません」
異論のない風花もまた、彼女達を刺激せぬ程度に割って入って助ける構えだ。
「乙女のピンチ再来って事なら、手を尽くさなきゃな」
ガンマンの様な風貌をした『幸運の女神を探せ』ジュート=ラッキーバレット(p3p010359)も、2人に負けぬくらい依頼を重ねて力をつけたと抜いた銃を回してみせる。
「格好いい所みせるぜ!」
血気盛んなメンバー達に、ミーナはまんざらでも無さげな反応を示して。
「かわいい女のコ、助けに行くとしますかね」
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林の中をしばらく進むと、メンバー達は殺気を感じる。
問題の亜竜、竜虎の縄張りへと入ったことを感じながらも、真っ先に白い仔竜の姿をした『紲家のペット枠』熾煇(p3p010425)が接して。
「お? お前達もここら辺に狩りに来たのか?」
「「あっ、うん」」
それまで狙った魔物……獰猛鶏、そして三尾化け狸を注視していた2人は思わぬ面々の来訪に顔を見合わせて返事する。
そんな彼女達に、熾煇は後方からも仲間がやってくることを示す。
「俺達は竜虎っていうのを狩りに来たんだぞ」
すごく強いその亜竜は自分のワイバーンより強いかなと彼が主張すると、彼女達もようやく危険な雰囲気を察知する。
「言ったはずです……この地は死と理不尽と隣り合わせ……」
一寸した油断が己を死地に追いやると目先のことに囚われると危険だと、近づいてくる他メンバー達の中から面識あるアンバーが彼女達を嗜めた。
少女達も魔物だけなら倒せると踏んでいただろう。ただ、格上とおぼしき亜竜が2体加われば、間違いなく自分達の方が餌にされかねないと悟る。
「竜虎2体含め全部で9体……でも、お2人がいるなら心強いです」
「2人が狩るの、見てて良いか?」
そこで、毛先がくるくるとしたダークブラウンの髪が特徴的な『未来を願う』ユーフォニー(p3p010323)も呼びかけ、直後に熾煇がにこやかに問いかけた。
「ローレットです。しくじって他の亜竜の縄張りを荒らしてしまいました。共闘を……」
キョトンとする2人に、風花が簡潔に状況を誤魔化して伝え、共闘を持ちかける。
「……あっ、初めまして、ユーフォニーです」
「あ、俺はドラゴンだけどドラゴンじゃないぞ。ドラゴニアらしい。よくわかんないけど」
思い出したかのように挨拶したユーフォニー。熾煇も一緒に自己紹介すると、少女達は改めてカレル、シェインとそれぞれ名乗った。
「Hey,また会ったな、ラッキーガールズ!」
そこにジュートもやってきて、呼びかける。
「俺達は竜虎を討伐に来たんだ。そっちの魔物は任せてOK?」
そんなジュートを含めてちらほら見たことのあるメンバーの顔に、彼女達は改めてイレギュラーズだと認識できたようだ。
「これでもイレギュラーズだからな、お仕事はきっちりこなす主義なんだ。竜虎の方は俺たちが頂くぜ!」
自分達のターゲットは悪魔で竜虎。少女達が魔獣を狙っていることもあり、錬は分担を提案する。
何せ彼女達も戦士であり、元から戦う気でいる。錬としては余計な手出しは無用だと考えていたのだ。
「そっちの狩りに竜虎が乱入したらキツいだろ?」
すでに敵のテリトリーとあれば、熾煇が言う様に亜竜は纏めて獲物と判断して襲ってくるのは間違いない。少女達だって争う魔物をそう見ていたのだから。
「きっと、大丈夫です!」
元気づけるユーフォニーに対し、少女達も手を繋いで頷き、この場を乗り切るべく意を決して魔物達の方へと飛び出す。
「やああっ!」
「援護するよ」
さすが、覇竜の地を旅する者達。その戦いぶりは力強くもしなやか。加えて息の合ったコンビネーションで化け狸を攻め立てる。
「2人とも強いなー。手助けはあまり要らないかな」
ワイバーンに乗る熾煇は亜竜の動きを警戒しながら観戦し、彼女の戦いぶりから戦い方を学習する。
鶏も襲っては来るが、あちらは狸も敵視している。彼女達はその敵対関係をも利用し、両者を叩くつもりなのだろう。
彼女達の狩りは、イレギュラーズも基本傍観の構えをとるのだが。
(私が心配性なだけかもしれませんが……乗り掛かった舟ですし……)
亜竜種少女達も成長してはいるが、やはりどこか危なっかしいと、アンバーなどは彼女達の安否も気になる様子。
しかしながら、状況がそれを許してはくれない。
グルルルルル……。
竜虎と呼称されるそれら亜竜は全身からすさまじい気を放ち、こちらを威嚇していたのだ。
それを見て、メンバー達も視線を投げかけてくる竜虎の前に姿をさらして。
「明らかにこちらへと敵意を剥きだしていますね」
アンバーは竜虎2体の動きを警戒し、カレル、シェインを狙わぬよう立ち塞がる。
ワイバーンに跨る熾煇も竜虎の対処に専念すべくこちらへとやってくる。風花はというと、闇の帳で自らを覆って竜虎への接近をはかっていた。
「ひとりで相討ちしそうな名前の亜竜ちゃん、俺達と一緒に踊らない?」
一足先にジュートが奇襲をかけ、片方の竜虎に向けて不可視の刃を放つ。
それに切り裂かれた1体がジュートを睨みつけると同時に、風花ももう1体を射程に捉えて。
「竜虎……ネコ科の亜竜はドラネコくらいがちょうどいいですね」
魔弓礼装を差し向けた彼女は矢を放ち、竜虎の体を射抜く。
グルルルル……!
奇襲を受け、竜虎は怒り狂って目をギラギラ光らせると、その前に発光した美南がこれ見よがしに現れる。
「今日の僕も光り輝いている☆」
彼女へと飛びかかろうとする敵目掛け、距離をとったミーナがリリカルスターを叩きつけた。
「よう、そこいくトカゲさんよ。ちーとばっかこちらと遊んでくれねーか?」
グアアアオオオオオオ!!
あちらこちらから攻撃を受けた竜虎も激しくいきり立つ。
「退屈はさせねーぜ、多分な」
思惑通りに相手を引き付けたミーナは、亜竜種少女らから離れるよう竜虎を誘導し始める。
「このまま、依頼のオーダー、竜虎討伐に専念するとしようかね!」
仲間がうまく敵をつり出したことを受け、錬も本格的にその討伐へと乗り出すのである。
●
竜虎以外の魔物は亜竜種少女達に任せ、イレギュラーズはこの討伐を最優先に立ち回る。
「だが、ピンチの時はサポートするぜ」
ジュートは竜虎が空高く逃げてしまうのを阻止すべく地上で立ち回り、仲間を巻き込まぬよう集中してミスティックガンを連射する。
グアオオオオオ!!
竜虎は操る炎を使って空中でロケットダッシュし、素早くミーナへと襲い掛かってくる。
予め炎を無効に出来るよう備えていたミーナは炎を伴う敵のタックルに耐え、そのまま至近距離から神秘の力を強く叩き込む。
錬もミーナの抑える1体へと近づき、式符より鍛造した真銀の刀で斬りかかっていく。
体躯は虎だが、全身を覆う鱗はやはり亜竜。
思った以上にその刃を体内にまで食い込ませることができぬまま、錬は秘めた力を開放して次なる攻撃に備えていた。
「フハハハ! 僕こそが悪の秘密結社『シュヴァルツァーミトス』所属、怪人『不死身の朱雀レッド』さ!」
一方で、もう1体は高笑いを続ける美南が引きつけていて。
「さあ、竜虎君。僕は逃げも隠れもしないよ! 全力で来るがいいさ!」
美南の叫びと同時に、彼女の背後で派手に音を立てて爆発が巻き起こった。
煽られていきり立つ竜虎は炎で力を高めて爪を振るい、牙を突き立てようとしてくるが、美南は肉壁となって仲間を守る。
ただ攻撃されるばかりではなく、身構える彼女はしっかりと反撃の一撃も叩き込み、少しずつ竜虎にダメージを与えていく。
「やっぱ、猛獣って感じだな。素早いし、2体いるしなー」
ワイバーンで高度をとる熾煇は時折少女達の戦いを切りかけつつ、高めた魔力を撃ち放つ。
「飛べなきゃ俺には届かないーって思ったけど、火を飛ばしてきたりするかもなー?」
盾役となる仲間に敵は気をとられていることを熾煇は視認する。例えば、ユーフォニーが具現化した多数の妖精達による総攻撃にも大きな反応を示していない。
熾煇も炎が飛んでこないかと気を付けながら、さらに空中を移動して魔砲を浴びせかけていた。
とはいえ、動き回る2体を同時に捉えるのはかなり難しい。
(相手の数も多いですからね)
アンバーが考えるように、敵対勢力としてみれば少女達が相手する7体も倒すべき対象。それ故に、メンバーが意図せぬ状況が起こらぬか、アンバーは熾煇に続いて黒い顎を形作って食らいつかせ、距離を詰めて接近戦に臨む。
仲間が抑えつけている間にできるだけ叩いておきたいところ。
運気を高めた風花は手数を増やして竜虎の体へと様々な異常をもたらす魔術の矢を幾本も突き立て、すぐさま位置取りを変えるべく移動する。
今のところ、イレギュラーズの思惑通り。
「とはいえ、全員が無事に帰れるよう、臨機応変にいきませんとね……!」
広域俯瞰で戦況を見定めるユーフォニーは、仲間の抑えつけている竜虎2体を纏めて攻撃できそうな位置を探りつつ魔力を高める。
「……今です!」
膨張した神秘のエネルギーが一挙に敵へと放たれ、さすがの亜竜も大きく仰け反る。
グウウウガオオオオオオ!!
鱗が焦げる様な臭いを漂わせ、竜虎はさらに強く炎を燃え上がらせるのだった。
●
相手は亜竜2体。
間違いなく強敵ではあるが、事前情報を元に万全の対策を期したイレギュラーズに分があった。
炎を使って空中を飛び回ることのできる竜虎は一瞬でも気を抜けば、どう強襲してくるか分からない。
抑え役となる2人もそれを気にして立ち回る。
至近から攻撃を続けるミーナは相手が不意に自分から視線を逸らせば、すぐ距離をとってリリカルスターを撃ち込んで強引に自分へと炎を纏った爪牙を向けさせる。
美南も定期的に煽って気を引いていたのだが……。
キャアアアアアッ!
少女達の叫びが聞こえれば、美南も人助けセンサーが反応してそちらを振りむき、ブロックに当たろうと動く。
そこで、竜虎がにやりと笑い、明後日の方向に炎を放つ。
丁度、矢を射放っていた風花が炎を浴びるも、さらなる一撃をと魔砲を放つ。
だが、竜虎は傷つきながらも彼女へ飛びかかり、その身体深くに爪牙を埋め込む。
風花はパンドラを燃やして強引にそれから逃れて距離をとるが、その傷は深い。
タイミングは前後するが、亜竜種少女は獰猛鶏と合わせて化け狸を攻めていたはずが、3つの尻尾で鶏を惑わした狸が攻勢を逆転させたのだ。
「うぅ……」
「頑張って、カレル」
一気に攻め入られて劣勢になる少女達。少しずつカレルがシェインの援護を受けて持ち直しているが、ピンチは変わらない。
そこで、ジュートは仲間と合わせ、少女達も聞こえるよう叫ぶ。
「さあ、成長した姿を見せてくれ。ピンチの時ほど何をすべきか……覚えてるだろ?」
「「……ええ」」
聞こえてくるジュートの号令。加えてユーフォニーが大天使の祝福をもたらすと、傷の塞がった少女達は手を繋ぎ合って奮起する。
「繋いだ手を離すなよ、互いの命を守りあえ!」
もう少女達は大丈夫。他メンバー達はそのまま竜虎の対処に注力することにした。
竜虎はこの場の全てを獲物と考える。魔物も亜竜種もイレギュラーズも。
それだけ自身の力に絶対的な自信を持っているのだろうが、力を合わせたメンバー達に追い込まれてしまう。
「君の相手はこの僕さ☆ 上質な贄があるのに目移りするなんて……そんな事させないよ?」
もう他所へと気を引かせぬと美南が煽ると、敵は激しく炎を燃え上がらせて素早く跳躍してのしかかろうとしてくる。
だが、アンバーがそいつを見上げ、大薙刀「屠龍」を構える。
ここぞと彼女が使うは変幻自在の邪剣。
刃のリーチを活かし、アンバーは鋭い一撃を見舞い、その胴を大きく切り裂く。
アオオオォォォ……。
1体を倒しても、アンバーはすぐにストラテジーの能力を活かし、少女達が鶏を仕留めていく様子を確認してから、もう1体の敵へと防御の高さを活かして切り込んでいく。
「もう一息です……!」
少女達も鶏を1体、また1体と倒している。ユーフォニーはこちらも終わらせてしまおうと、距離を維持して妖精をけしかける。
勇敢ある牙となって特攻するユーフォニーの妖精。さらに、ジュートの援護を受け、立て直した風花も魔術の矢で敵を射抜く。
続けて熾煇が空から一気に接敵し、紅焔の魔力を纏わせた爪牙を突き立ててから黒い顎で竜虎の鱗も噛み砕いた。
グウウウウ……!
怯む竜虎は炎を起爆させてから素早く回転して爪牙を振るってくるが、アンバーがその動きを見定め、魔術を織り交ぜた剣戟で竜虎の体を切り裂く。
敵を抑えていたミーナも傷が深まったことで、一度聖域を展開して自身と仲間の傷を癒す。
その間、錬が式符より鍛造した無数の木槍を撃ち込み、竜虎の注意を引き付ける。
「さて選手交代だ。竜虎相搏つなんて言うが、果たして竜で虎なお前さんたちはどうかな!」
だが、相手はこれまでの戦いでボロボロ。鱗はかなり剥がれ、傷口から鮮血が噴き出している。
側面を意識して回り込んだ錬はその傷を狙い、改めて鍛造した真銀の刀を振り下ろす。
グ、アアアァァ……。
錬の一太刀を受け、どうと倒れる竜虎の巨体。
まだ終わりではないと、メンバー達はすぐに少女達がどうなったかを確認すると……、彼女達もまた魔物を撃退できたことに安堵していたのだった。
●
その後、メンバーは周囲に敵対する存在がいないことを確認して。
「竜虎、狩ったぞー! それじゃ剥ぎ取るんだろ? 違う?」
その竜虎から何か素材をと手をかける熾煇の姿に笑いも起こるが、生存競争の厳しい覇竜の地では当たり前のようにそれらは生活の糧として利用される。
「それにしても、共闘したかったぞー」
経験も兼ねて一緒に戦いたかったという彼に、少女達はまたいつか戦えると微笑んで返す。
「へー、中々やるじゃんか、お前たち」
将来、色んな意味で有望だとミーナが彼女達を褒める。
狸を1体逃してはいたが、覇竜の魔物を6体も倒せるなら相当の強さを持っているのは間違いない。
ミーナはそんな彼女達が怪我を負っているのを見て、治療へと当たる。
「遠慮すんなって。無事帰るまでが仕事なんだからよ」
普段、シェインが治療する流れだと話す2人。でも、今回はカレルも含めてまんざらでもなさそうだ。
「ここは、『亜竜の縄張り』なんです」
そこで、ユーフォニーが改めて2人にそっと伝え、危険な状況であったことを再確認させる。
依頼とはいえ、命を奪うこと。
少なくとも、竜虎は『今日』が無ければ生を全うできたかもしれない。
「……その重みは、私の中に」
少女達も倒れる竜虎をしばらく見下ろし、何か小声で語り合っていた。
「ところで、カレルさんはお料理上手なのでしょうか」
「あ、僕も食べたい♪」
ユーフォニーはトーンを変え、鶏、狸、虎のおすすめ料理を教えてほしいと尋ねる。美南も一緒になって話すと、年頃の少女達が楽しく語らい、しばらく肉料理の話をしていた。
ただ、それも長くは続かず、両者はそれぞれの道を行く。
「私もまだまだ武威を磨き続けますが、あなた方も壮健で……次の再開を楽しみにしておきますね」
「「ええ、また」」
少女達は軽くイレギュラーズ達へと手を振り、再びその手を繋いで2人きりの旅を再開したのだった。
成否
成功
MVP
状態異常
あとがき
リプレイ、公開です。
MVPは援護に竜虎討伐と幅広く活躍した貴方へ。
今回はご参加、ありがとうございました。
GMコメント
イレギュラーズの皆様こんにちは。GMのなちゅいです。
こちらは、ジュート=ラッキーバレット(p3p010359)さんのアフターアクションによるシナリオです。
『覇竜領域デザストル』の地にて冒険を続ける2人の亜竜種少女。
順調にその旅は続いているようですが、どうやら気づかぬうちに危険な亜竜の縄張りへと足を踏み入れてしまうようです。
彼女らを救援しつつ、亜竜の討伐を願います。
●成功条件
竜虎2体の討伐。
亜竜種少女2名の生存。
●概要
覇竜の地を巡る2人の亜竜種少女。
少しずつ覇竜の地の探索領域を広げることにした彼女達は野営を繰り返し、合間に地元に帰りつつそれぞれの得意とする術技の技量を高めているようです。
探索を進める2人は林で2種の魔物の抗争に出くわし、その討伐をと考えていたのですが、そこを縄張りとする強力な亜竜、竜虎に彼女達は狙われてしまいます。
竜虎は格上であり、獲物を見定めて食らいついてきます。
どう介入し、彼女達を守るかイレギュラーズの手腕が問われます。
●敵
◎亜竜……竜虎×2体
全長4mほど。虎ベースですが、全身を竜の鱗で覆う亜竜種。
炎を操り、その炎を使って浮遊して素早い動きで狙った獲物へと食らいつきます。
〇魔物……獰猛鶏(どうもうけい)×4体
全長1.5~2mほど。
非常に凶暴な鶏で、撒き散らす羽根で視界を奪うと同時に攻撃を行い、さらに鋭いくちばしや足の爪を使って襲い掛かってきます。
〇魔物……三尾化け狸×3体
全長2.5~3m、鶏を獲物として狙う魔物。
3つの尻尾で敵を惑わし、妖術を使って敵の力を奪い、自重を操って飛び上がり、敵を踏みつけるといった手段で攻撃を行います。
●NPC……亜竜種少女×2名
拙作『亜竜種少女ペアの冒険』初出。
フリアノン出身。集落を出て2人で旅をしたいという願望を持っていました。
少なからず、互いを友人以上の存在だと感じているようです。
○カレル
17歳、赤いショートヘアの長剣使い女性。軽装鎧を纏い、剣舞を行う彼女は見とれてしまうほどの美しさです。
○シェイン
16歳、緑のロングヘアを揺らす術士の少女。
樹でできた長い杖を所持し、先端にはめ込んだ魔力晶から炎や雷、治癒術を使うことができます。
●情報精度
このシナリオの情報精度はAです。
想定外の事態は絶対に起こりません。
それでは、よろしくお願いいたします。
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