シナリオ詳細
Made in maid from the 冥土
オープニング
●突然ですがこの状況は誰が悪いと思う?
「自分ではないでありますね。自分は騎士(メイド)でありますので」
「いや~~~~……誰がどう見繕ってもおまえが悪いと思うんゆ、わたち」
エッダ・フロールリジ (p3p006270)が鼻をふんすふんすと鳴らして無実を主張するが、パパス・デ・エンサルーダ (p3n000172)はその意見は無理があるのではないかと思った。騎士(メイド)であって家事手伝い(メイド)ではない彼女であるが、鉄帝くんだりでアーカーシュに行かんと古代遺跡探索の依頼を引き受け、道標のように置かれていたなんかどぎつい瘴気を放つ酒を『酒だから』って理由で手当たり次第飲んで(そして仲間達に『振舞い酒』という名義で振り掛けて)転がるように遺跡を突き進んでいった彼女のせいで、ガチ気味に悪酔い(未成年は酒気で酔ったんだと思う)した一同は階段を踏み外し、ドミノ倒しを呈して一気に遺跡の最奥まで落下していった……というのが先程までの話である。率直に言ってしまうとエッダが9割悪いわけで、それに対策を講じなかったイレギュラーズが1割くらい悪いと思う。こいつと探索行でアルコールの匂いがした時点で縛り上げるべきだった。
「そもそも、わたちやエッダは置いといて他の連中もメイド服なのどうしてゆ。メイド服縛りな遺跡じゃないはずゆ」
パパスが怪訝な顔をするのも頷ける。イレギュラーズは老若男女問わず、汎ゆる形式のメイド服に身を包んでいたからだ。クラシカルだとか再現性東京っぽいやつとか、なんか絶対機能性よりセクシーさを重視したヤツとか。多分本人の精神性だと思うわ。性癖破壊神が着たらどうなるのかなァ~~~~????
「なぜかってェとここが地獄の一丁目、死と生の狭間の冥土の世界だからよ! お前ェ等はオレっちが用意した酒で一時的に魂が体から抜け落ちてる状態だ! なんでそうしたかって?」
「誰も聞いてないでありますが?」
殺風景ななかで突如現れたそれは、鬼人種に似ていながらかなりブッ飛んだ外見をしていた。線はやや細いが筋骨隆々、頭部からは捻れ角を2本生やし、体色は鮮血の如き赤。黒い髪をポニーテールにまとめた威丈夫は、口からよだれをしとどに垂らしながら話しかけてきた。エッダじゃなうてもドン引きだよ。
「オレっちが! お前等『肉体(からだ)持ち』が食べるモノが、語る飯が普通じゃ食えねえからよ!」
……何を言ってるんだろうこいつは。
肉体持ち、などという区別の仕方をするということはこいつは生まれながらに肉体を持たない特性を持つ生物ということになるが……。
「オレっちは……まあアレだ、外の連中がいう『餓鬼』みたいなもんでな! 他の連中よりちょっとだけ意識が高いから色々出来んのよ、肉体持ち共の思考を(飯関連のことだけ)読み取ったりとかな! でもお前等の思考をいくら読んでも食えるわけじゃねえし、でもオレっちは何でか分からねえが一つだけ特技を与えられたわけだな。飲んだ奴の魂を一時的に剥がすっつー、そういう酒を出せるやつ」
「ははあ、天にも昇る味わいだったわけであります。なかなかやるでありますね餓鬼とやら」
「意識を失うのもモノは言いよう過ぎるゆ」
通称『餓鬼』は、つまるところが人の食べ物を食べたいらしい。そして食事に関する思考や記憶を読み取れるらしい。でも食べられないんだそうだ。魂にされた理由がまだだが?
「オレっちはこの酒をあちこちにばらまいて、そして気付いた。魂になった奴は考えたり強く願うことで飯が出せる。それはオレっちも食えるんだよ。だから、お前等が知ってる一番美味え飯を教えて欲しい。願ってほしい。そうするとこの空間に飯が現れる。オレっち食える。お前たちは満足したオレっちが遺跡の宝物庫にお送りだ。Win-Winだろ?」
「満足できなかったら?」
「地獄行きだからあの世の神さんが仕事増えて大喜びだ。三方一両得ってやつだな!」
「いや損してる損してる」
餓鬼の提案に思わず突っ込んだイレギュラーズだが、酒クズたるエッダはこの話に恐ろしい点があることに気付いた。全部恐ろしいが?
「餓鬼、その宝物庫……酒はあるでありますか?」
「まあ浴びるほどには」
「つまみは」
「満足いくほど」
「乾き物ばかりだったらしばくでありますよ」
「グルメテ……」
「それ以上はアウトゆ。そんなやべー魔道具は持ち出せねえゆ」
まあ、パパッと餓鬼を満足させて宴会に行こうぜ!
- Made in maid from the 冥土完了
- GM名ふみの
- 種別リクエスト
- 難易度-
- 冒険終了日時2022年05月29日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談8日
- 参加費150RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●
――『suminA mynonA』観音打 至東(p3p008495)がうろんな夢からふと覚めてみると、床の上で自分の姿が一人の、とてつもなく可愛らしいメイド服(ゴチック・クラシカル・ロングスカート・日本刀)を身につけてしまっているのに気がついた。
「つまり、私はメイドで真理だった! よっしゃ」
「うん、衣装は問題無いね。自分のギフトでも出せるけどたまにはこんな衣装も良いかな」
至東のいつも通りの格好が肯定されているのは(宇宙の真理であるため)さておき。『赤い頭巾の断罪狼』Я・E・D(p3p009532)はギフトに拠らぬ形でクラシカルメイド(フリル多め)の裾をつまみ、満足気に頷く。Я・E・Dは特に何もなければストレートに可愛く見えるので割とシックなものが合うのである。
「メイド服か。スク水やバニーを着た経験が無かったらパンドラ復活するところだった」
「この和装メイド姿は完璧だよね、えっウェールさんのスク水とかバニー姿!? 詳しく!」
『( ‘ᾥ’ )』リコリス・ウォルハント・ローア(p3p009236)は己の和装メイド服に絶対の自信を以てアピールしていた。可愛いのだから仕方がない。のだが、『永炎勇狼』ウェール=ナイトボート(p3p000561)による爆弾発言に思わず食いついてしまうのも事実である。ウェールの抱えた業が深すぎる。というか彼もメイド服が堂に入ってるのである。有り体にいって「ヤバい」のである。
(――"肉体"の枷が外れた……?)
そんな一波乱ありそうな面々は脇におくとして、『敗れた幻想の担い手』夢野 幸潮(p3p010573)は精神世界(と言う名の地獄入口)に投げ込まれたことにより、『元の世界の感覚』を限定的ながら手に入れることに成功した。メイドなのは鉄の掟なので、ヴィクトリアンメイド風のポニーテールにモノクルという『できるメイド長』みたいな格好になっていたがこれがより幸潮のやる気に火を付けた様子。
「如何ですこと、似合いまして? 実は、一度着てみたいと思っていましたの。図らずも夢が叶って嬉しいですオボロロロロ」
「ヴィーシャ吐くの早くね?」
こちら、今回の主犯格として精度500%の実績持ちの『祈りの先』ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)と、なんとか餓鬼に交渉特攻かまそうとしていた『フロイライン・ファウスト』エッダ・フロールリジ(p3p006270)の姿になります。エッダがなんか言う前に吐いてんじゃん。いや人ん地獄(ち)で吐くなよ。宴会開始前にRe:version(隠語)は流石に駄目だろ。
「……よし、私のせいではないわ!」
こちらは自分もガンガン飲んでたけどヴァレーリヤが率先して壊れたため主犯の誹りをギリ逃れた『白騎士』レイリー=シュタイン(p3p007270)の姿です。いい感じに瀟洒な服装してんのが却って……いや、スリットのどこが瀟洒なんだよ。
「オレっちこんな濃い連中の……こう、なんか美味いって思う料理を提供されるんだろ? 既に思考で分かってるから安心してるけど本当に『一番』なんだよな?」
「味覚をろくに働かせてこなかったのに今更文句言うなゆ」
餓鬼は不安そうに一同を見ているが、パパス・デ・エンサルーダ (p3n000172)は極めて冷静に斬って捨てていた。食事関連の思考読めるなら良し悪しが分かる、とはならんのである。
「我々がメイドなら貴方もまたメイド。メイドを覗くとき貴方もまたメイドになっているのであります。ヴィーシャが吐いたのはお前のせいだろうがよぉ! 責任とってスカート穿いて我々の料理(ブッコミ)受けるのでありますよオラァ!!」
「じゃあ、そこのご主人様を冥土送りにするメイド勝負を始めよっか?」
「……いや何をいってんのキミら?」
そんな時、エッダは餓鬼がメイド服を着ない不平等さに怒り、Я・E・Dは何かルール的なものを取り違えていた。
「なんか定義づけがおかしくねえ?」
「今回の依頼はそこのご主人様に喰わせて喰わせてお腹いっぱいにさせて、腹がはちきれるまで食べさせて爆発させれば勝利だったはず。メイドが冥土送りにするからメイド勝負だよ、何も問題無いよね?」
「最初の読点までしか合ってないんだけど餓鬼を殺してどうするんゆ……」
「わたくし達は旦那様に一番の料理を召し上がっていただく。それで全てですよ。ヴァレーリヤ、Я・E・D、もう少し淑やかになさって」
幸潮はすっかり真面目なメイドが板についているらしく、口調まで凄まじい変貌ぶりだった。
二人がちょっと不真面目そうというかまともにやれなさそうだった為、釘を刺すような所作に走ったようだ。
このやり取りを見たパパスが次の瞬間シャキっとした背筋で物静かな雰囲気を纏ったあたりで、状況のヤバさに気づくべきだった。なんかこう、波乱めいてると。
「じゃあボクが最初から餓鬼さんを満足させるね!」
「へェ……面白い女……」
「なんかいきなり違う作風になったでありますか?」
●
「最近あった最高に美味しい思い出といえば、先日行ってきた『SUSHIダンジョン』で取った魚をその場で調理してお寿司にした思い出かな! お寿司だけじゃなくて、残った骨から取った出汁でラーメンを作ったり、パンケーキを流したりしたんだよっ! 主食からデザートまで揃ってるから、これで満足してもらえるかな?」
リコリスは、うんうんと考え込むと両腕を広げ、餓鬼の眼前にできたての寿司、魚介出汁の利いたラーメン、パンケーキなどを一気に出した。鮮明な食の記憶とは、それだけで美味なのである。たぶん。
「美味そうだな……でもこれだけじゃねえだろ?」
「だよねっ! そうだよねっ! ボクの美味しい思い出のミソ、それは改造バーナーで魚に( ‘ᾥ’ )の焼き目を付けること!」
「……えっそれ?」
餓鬼が試すように聞いたのに対し、リコリスはバーナーを生み出し焼き色を付けた。( ‘ᾥ’ )の焼き目だ。困惑するわな。
「あっそうかメイドさんだからね! 萌え萌え( ‘ᾥ’ )ジュッ……あれ? 違う? 萌え萌え( ‘ᾥ’ )クゥーン……」
リコリスはメイドをもうちょっと学んだ方がいいのかもしれない。もう( ‘ᾥ’ )の称号は欲しくないだろう。
「それじゃー激ウマメイドフルコースサーブ大会を始めますね!! とはいえこの観音打至東、料理を単に並べるだけで『至上の美味でござーい!』とは決して言いませんし言えません!」
二番手、至東。ダンジョン系で苦渋を舐めたり最高精度を叩き込んだりした彼女だけあって、美味しい料理、たくさんの料理では終わらない。体験を届けてこそのメイドであると考えた。
結論、『メイド食卓体験』。次々とサーブしていく料理の傍らで萌えを前面に出したあざとい所作で心を満たし、料理で腹を満たすのだ。
(なにせ一番美味しい料理の思い出は、『何を食べたかはもう思い出せないけど、あの日あの時食べた事実と光景と、満たされた心と気持ちは、今でもはっきり思い出せる』ものでしたから)
「……なんか今、滅茶苦茶飯がうまく感じたな。なんかしたか?」
「何もしてませんヨー」
敏感に至東の思考を味覚として嗅ぎ取った餓鬼に、彼女はこともなげに笑うだけだった。
「…………」
ウェールは記憶を辿り、息子との記憶を掘り返していた。じわじわと具現化する料理は、回線速度の低いネットワークで画像を見ているような気分だ。
(血の繋がらない子、二人暮らしなのに俺が仕事ばっかで構う事ができないのに。
小さい子供なのに洗濯や掃除をしてくれた我が子。
家族になってから一か月、深夜に遅く帰った俺を待ち続けて、テーブルで寝落ちした我が子が作った和梨のタルト。
和梨のコンポートに取り残した皮が残ってたり。アーモンドクリームを作ろうとしたのか、カスタードクリームの中に荒く砕かれたアーモンドの触感を感じたり。
タルトに焼きムラがあるけどしっかりとザクザクしててとても美味しかったあの味……)
そうして生み出されたタルトを、一切れだけ拝借してウェールは餓鬼に渡す。
「……美味いな」
決して出来が良いものでも、汎用的な『美味』が当てはまるものではない。ないが、籠められた想いが味を左右する餓鬼の味覚には、この上なく美味しく感じられたのは確かである。
(流石ウェールさん、御主人様が求めておられることを確実に……!)
幸潮はそのしっとりとしたやり取りをガン見しつつ準備していた。次は幸潮ではないが。
「いらっしゃいませお客様。私、ヴァレーリヤがお世話させて頂きますわー!」
「もえもえきゅん」
エッダは真顔だった。
とっても真顔だった。ヴァレーリヤを愛想面だけでも見習え。
「ところで最高の体験をと言うならまずはきちんとお茶からお出しするべきでは? お酒と同じくらい、良いお紅茶というのは陶酔できるもので」
「ウォッカ、ビール、ウイスキーにワインなんて如何ですこと? 空っぽのお腹に染み渡るコンビネーションが……」
「だから早えでありますよ酒が!!」
エッダが順をおって進めようとするのをヴァレーリヤがぶち壊しにかかる。だが彼女に悪気はない。純粋に欲求ゆえの善意だ。
「ここに取り出したるは種々折々の帝国料理……自分の故郷では芋や豚肉が有名でありますが、首都の方ではビーツという赤いかぶのようなものや、小麦で練った皮に餡を包んで茹でたりするのがあって同じ鉄帝国でもかなり様相が違うであります。そしてすべて大皿料理」
「大皿? 大食いとかじゃなくて大人数向けってことか」
「持論でありますが、良い食事というのは単に優れた食味だけではなく、どんな気持ちで食べたかというのも大事であります」
ド正論だった。エッダなら軌道修正も完璧に熟してくれr
「酒優先はだめだなんて我がままなご主人さまですわね、まったく。好き嫌いしていると、大きくなれませんのよ! では、こうしましょう」
ヴァレーリヤが図太く嘆息して頭に手を当てて念じると、次々とつまみが出てくる。
イクラ! チーズ! エイヒレ! 枝豆! チョコレート!
「これだけ用意してあげたのだから、いっぱいお酒飲めますわよね。ほら、一気! 一気! 一気! 一気! はい、どんどん!」
「美味いんだけど……こう……」
「なんか申し訳ないであります」
「ヴァレーリヤ、御主人様が困ってらっしゃいます。ご相伴に与るにしてももう少し作法というものがあるでしょう」
「ダメですの!?」
ダメだろう。幸潮の突っ込みは正当だし、幸潮は次々と料理を……ワインから始まって生ハム、サラダ、七面鳥、と明らかに大人数向けのパーティー料理を何故か顕現しているゼトロスの幌から引っ張り出している。ある意味野趣あふれるおもてなし。有無を言わさぬ勢いがそこにはあった。
「大切なのはイメージ……たぶん、わたし達が出す食べ物って、味そのものじゃなく、食べた時の状況と言うか感情をそのまま感じられるよね?」
「まあそうだな。その昂りが美味いまずいの基準にはなるな」
Я・E・Dの今更ながらの問いに、餓鬼は大きく頷いた。だいたい全員理解しているが、一部いい感じにアレしてるので大事な質問だ。そして、その回答にЯ・E・Dは満足げに口元を歪める。
「だから、わたしの出す食べ物はとてもシンプル。
元の世界で食物を摂取する必要が無かったわたしがこの世界に来て産まれて初めて食べた食事……赤ちゃんみたいな味覚で食べた、ニンニクマシマシチョモランマ肉豚次郎ラーメン……はい、フーフーして食べさせてあげるよ♪ ……まさか、お残しなんてしないよね?」
「それこそまさかだろ。フーフー付きとは贅沢だ」
どうでもいいが、餓鬼は味と満腹感をイメージで処理しているので、馬鹿みたいに食わされても大丈夫なのだ。
「ご主人様、この世で一番の料理をご所望と聞いて用意いたしました」
レイリーがそう言って念じた末出てきたのは、まさかのBBQセットと樽のビール。到底一人向けではない。
「私たちメイドだけではなく、ご主人様もご一緒に。一緒に焼いて一緒にご馳走を堪能いたしましょう。皆で食べたほうが美味しいですわ」
「なるほど……?」
餓鬼は食事の醍醐味を知らない。美味しいという感覚に疎い。だから体験が大事なのだ。奇しくも至東と々結論に達した彼女に、周囲の仲間(特にエッダとヴァレーリヤ)も近付いていく。なお樽の7割はヴァレーリヤがかっぱいだ。
「どうです、ご主人様。ご満足いただけましたか?」
パパスはポテトサラダ(練達風)を差し出し返答を待つ。餓鬼は最後のひとくちを食べ終えると、両手を高く掲げ……バツのマークを作りかけたところでマルに変化させた。
そしてイレギュラーズは宝物庫へ飛ばされた。
●多分解決部分よりこっちが長いほうが喜ぶってばっちゃが言ってた
「さぁ、朝まで飲むわよー!」
「いえーい宝物!!」
斯くして一同は餓鬼を満足させ、宝物庫への移動を許された。このレイリーとエッダの喜びようといったらない。それもこれも、幸せだと理解できる比較対象あってこそである。
「おかしいですわ……ちゃんと望みを叶えてあげたはずですのに……お世話中にお酒をちょーっとだけ失敬したのが悪かったのかしら……あっあっお酒!」
「ははははは、ヴィーシャのその顔が見たかったんでありますよ! その顔が最高のおつまみだよ!」
エッダは四肢を縛られ地面に転がされたヴァレーリヤの前にヘッスラして口元を大いに歪めた煽り顔で煽る煽る。拷問である。なお、その後ろで樽の下部に穴を開けて腹出しキャインスタイルで酒をがぶ飲みするウェールの奇態を忘れてはならない。
「梨尾のタルトをもっと食べたかったーー!! うう……絶対に生きて! 混沌破滅防いで! 息子の元へ帰るからなー!!」
「えへへぇウェールさん飲んでるぅ? 凄く飲んでる! ボクもおすそ分けしていくね! ハイこれ! 予備の( ‘ᾥ’ )!」
予備の( ‘ᾥ’ )ってなんなんだろうね。
リコリスは彼やエッダが酒を干していく様子だけで完全に思考が愉快になってしまっており、並ぶ料理をいい感じに堪能する傍ら、ハムとか海苔とかそういうものを使って( ‘ᾥ’ )を作り出していたのだ。キャラ弁じゃん……?
「ボクお肉いっぱい食べたい! いつも化石やネズミや謎肉ばかりだから嬉しいな!!」
「リコリスさん、こちらに沢山肉料理がありますので……」
幸潮はリコリスのさりげない言葉にいたく心を打たれたらしく、大量の肉料理を持ってくる。先程餓鬼に食べさせたようなものは当然あるし、肉巻きおにぎりや回鍋肉やキッシュなども並んでいる。何故かミートパイが2種類あるが。
「リコリス君はこれを、エッダ君やレイリー君は鉄帝じゃあんまり野菜に恵まれないから野菜食べまショウ、ね? でもこのミートパイは二人向けだと思いますヨ?」
至東は幸潮とともに配膳を行いつつ、酒じゃないけど気分が良くなるジュース片手にはしゃいでいた。レイリーとエッダは『似合うミートパイ』の意味が分からず口にし、少し咀嚼してからガリッていう感触を覚えた。
「これ……土ね? しかも食用の……」
「あるんだ食用……」
レイリーの察しの良さに、Я・E・Dは流石に驚きを隠せない。人が食べるものでいいんだろうか……?
なおЯ・E・Dはなぜか存在していたラーメンを啜っているし、肉肉しい料理群にも目を光らせている。
「ところで幸潮様は口元が膨らんでいるでありますね。食材の中からいっとう良いものを奪ったんじゃないでありますか?」
エッダは宝物庫に来てからも甲斐甲斐しく配膳を続ける幸潮に素直に感心していたが、しかしちょっとだけ、ほんのちょっとだけ違和感を覚えていた。即ち、配膳係として約得を得ていないかと。程度問題があると思うのだが。
「もぐむぐぐっ(ごくん)そんなことはありませんよ?」
「メイドなりきりが終わった途端ボロが出すぎであります」
あっだめだこいつ隠す気が全然ねぇ。
「うっうっ……タルトもキッシュもマカロンも美味しいけど梨尾のタルトが余計に恋しくなる……」
ウェール、ガツガツ食べているが結局のところ息子の手作り菓子に勝るものはなかったらしい。ここまで想われてる息子君は果報者すぎるんだよな。
「ところでパパスは飲んでるぅー? 楽しまないとダメよ?」
「いえ、あの……先程少し真面目な顔をしたので……『あの口調』になかなか戻らなくて……」
レイリーは酒を片手にパパスに話しかけると、彼女は困ったように頬をかいて苦笑した。普段からは余りにかけ離れた表情に、むしろレイリーの表情筋が固まった。
「ヴィーシャは仕方ないでありますね。これで飲むといいであります」
「ガボボボ」
「ホラホラ辛気臭い雰囲気醸し出してないで飲みますヨ! 私は飲めませんけどネ!」
背後ではヴァレーリヤがひどい目に遭っていたり、至東が相変わらずだったりするのだけど、パパスが自分の頬を引っ張ったり戻したりしている様子はある意味なかなかインパクトが強いのだった。
成否
成功
MVP
状態異常
あとがき
大体全員……全員? 趣旨を確り理解してたから削るとこなくてガチ気味に焦ったのは内緒だ。
GMコメント
だからさあ、今日(5月10日、メイドの日)にしか出せないシナリオを平日昼間にリクエストしたら締め切りに追われる私が出さないわけないじゃん! なんなんだよもう!(タイトル書いてからここまで40分くらい)
●成功条件
餓鬼を満足させ、宝物庫で飲み食いして帰る
●餓鬼
便宜上の呼び名です。
精霊種とかに近い存在ですが、肉体を持つ純種その他と異なり肉体を持ちません(というか肉体の位相が違うというのが正しい)。
それと引き換えに「食物限定で人の思考を読める」「魂を切り離す謎の酒を生成する(普通の生物が摂取可能)」などの能力を有しています。
多分普通に戦っても物理攻撃通じなかったり位相が違う事によるメリットをバチボコに活かしてきます。が、彼に敵意はありません。食への欲求が果てないだけなのです。
彼の酒を経口、経皮、匂いによる関節摂取を行った場合幽体離脱を起こし、彼の位相と同一化します。そしてなぜかメイド服になります。
●餓鬼の世界(攻略前半)
餓鬼はおいしい食べ物に飢えています。霞を食って生活できるタイプですが、食べ物の思考を読み取りすぎて飢えまくっています。
この世界では『強く食べ物を願うことで生み出せ、餓鬼に食べさせることができます』。これで満足してもらいましょう。
飢え死にしそうな時におばあさんに振る舞われたかぼちゃのスープ、豪勢な食事の一部、誰かと分け合ったお菓子……美味しいと思うきっかけは色々あるでしょう。可能な限りの皆さんにとっての『一番』を。
簡単だって思うじゃん? 半端なことするとなんかよくわからない力で魂の活力を奪われて宝物庫どころじゃないんだなこれが。
メイドなんだからサーブしろ。もえもえきゅんしろ。
●宝物庫(攻略後半)
い つ も の 酒 宴 。
何故か酒と飯とRe:version(隠語)には困らない場所です。なんで鉄帝のダンジョンこんなんばっかりなんだよ。
●パパス
多分ポテサラ要員ゆ。
●情報精度
このシナリオの情報精度はAです。
想定外の事態は絶対に起こりません。
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