PandoraPartyProject

シナリオ詳細

<Celeste et>ウィクナ=ハバンと影の森

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●遺跡の先は影の森
 鬱蒼とした森の中を進む。枝や背の高い草に足を取られぬよう時折ナイフできりながら道を作る。
 リュカシス・ドーグドーグ・サリーシュガー(p3p000371)は探検用にと購入したヘルメットやポケットだらけの服や、ポーチが沢山さがったベルトや頑丈な靴の姿で草木のエリアを通り抜けると、見覚えのある景色へと出た。
 ずり落ちそうなヘルメットをあげ、ほわあと口を開く。
 並ぶ石柱。その一部は崩落し、そうでないものもてっぺんが平らに整えられている。天井のようなものはない。
 草の背はみな低く、まるで柱のまわりだけ綺麗に整えられたようにも見えた。
 きょろきょろとあたりを見回してみても、遠くからこちらの様子をうかがっている小鳥くらいしか発見できなかった。
「おかしいですね、向こうから現れてもおかしくないんですけど……」
 立ち尽くすリュカシス。
 ゆっくりと日が傾き、空が暗くなっていく。日没までには帰るつもりだったがつい時間を忘れてしまっただろうかと思いつつも、リュックサックからライトを取り出そうとした……その時。
「心せよ。そう述べたはずだ」
 背後で声がした。
 身体ごと素早く振り返るが、そこには闇しかない。
「殺し合うことになる、と」
 また背後からだ。
 今度は武器をとり背後へと振りながら反転するが、空振りをするのみだった。
 相手の姿は見えない。
 だが、はっきりと分かった。
「出ましたね――『樹の角と顔』!」

 鉄帝上空に発見された浮島アーカーシュ。前人未踏のこの地へとやってきた鉄帝軍調査隊はレリッカという村を最初の拠点として探索を始めた。
 その人員の多くは救世の英雄でもあるローレット・イレギュラーズたちで構成され、早くも未知の植物や動物、遺跡群を発見するに至った。
 それらは発見者が名前を付け、『嘘吐き草(ライアウィード)』や『アトラクトス』といった名前がついている。
 『樹の角と顔』も、リュカシスの名付けた古代獣の名だ。
 その名前を述べたとき、軍の係員はなんとも奇妙な顔をしたものだが、奇妙なのはそれだけではなかった。
 係員の男――『オーリー・バイエルン』はこんなことをリュカシスに求めたのだ。
『会話可能な古代獣を見つけたのなら、それを生きたまま捕獲してください。死にさえしなければ手足をへし折っても、最悪首だけになっても構いませんよ』
 思えば奇妙な男だった。
 刈り上げた頭に小さな丸眼鏡。軍人らしくガタイはいいが、デスクワークに向いた物腰をしていた。
 より深く記憶を探ってみると、リュカシスの家であるサリーシュガー家へ調査隊への参加を求めたのもバイエルン家であった。ヒルディリドへ参加を求める手紙にその名前が記されていたのを覚えている。
 とはいえリュカシスはリュカシス。無邪気な少年の心をそのままぶつける気持ちで探検に挑んだのである。
 そして――

「出ましたね――『樹の角と顔』!」
 リュカシスが叫ぶやいなや、周囲は『広い暗闇』へと変わっていた。
 ランタンを灯すと、一緒に探検に来ていた仲間達の姿が見える。だが周囲にあった草木や柱はない。
 訝しんでいると、ぼんやりと暗闇の中に仮面のごとき顔が浮かび、追って巨大なシカめいた身体と樹木のように枝分かれしたツノが見えてくる。
 ホウ、と『樹の角と顔』の口が動く。
 すると周囲から無数の影がにょきにょきと立体的に生え、なんともいえない形状に変化しうごめきはじめた。鳥のような悪魔のような、あるいはいびつなトカゲのような。みな共通して翼を持ったなにかの形をしている。
「ウィクナ=ハバン……」
 アーカーシュ第一次調査隊の残した資料で見たことがある。翼をもった影のように変幻自在な怪物で、小さな隙間に忍び込んで奇襲をしかけるという。
 身構えるリュカシスたちに反応してからウィクナ=ハバンたちが次々にその姿を闇の中に溶かして消えた。
「さあ、殺し合おうか。ひとつの例外もなく」

GMコメント

●オーダー
・成功条件:『樹の角と顔』に勝利する
・オプションA:『樹の角と顔』を殺害する
・オプションB:『樹の角と顔』を捕獲する
・オプションC:?????

 あなたたちはアーカーシュを探索中、『広い暗闇』としか言いようのない空間に捕らわれました。
 『樹の角と顔』というシカ型の古代獣があなたをこの空間に捕らえたのは間違いなさそうです。
 また、この空間ではウィクナ=ハバンという古代獣が自在に身を隠せるようになっているらしく、いつどの場所から奇襲をしかけてくるかわかりません。
 言ってみれば全ての全方位全ての場所が彼らにとっての『隙間』であり奇襲が可能になっているようです。
 奇襲対策をとったり、持ち前のスキルでウィクナ=ハバンを見つけてみたり、あるいは戦術を練って奇襲に対抗したりしてみましょう。

 また、『オーリー・バイエルン』という軍の人物から『樹の角と顔』を生きたまま捕獲するように求められています。
 ただし正式な依頼としては受けていないので、皆さんはこれに従っても従わなくてもかまいません。
 ただ意見は定めておいたほうがよいので、皆さんで相談してどうするか決めてみましょう。

●エネミー
・ウィクナ=ハバン(影潜獣)
 翼をもった影のように変幻自在な怪物です。小さな隙間に忍び込んで、犠牲者を待ちます。奇襲攻撃に優れているようです。
 数体が確認できています。

・『樹の角と顔』
 巨大なシカのような身体をもつ古代獣です。
 樹木のように枝分かれしたツノと仮面のような顔が特徴です。
 会話が可能で、次に森に踏み込んだときは殺し合うことになると警告してきました。
 戦闘能力については一切が不明です。少なくともこの空間に引きずり込んだ意味はあるはずなので、推理してみると良いかも知れません。
 参考:https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/7626

●特殊ルール『新発見命名権』
 浮遊島アーカーシュシナリオ<Celeste et>では、新たな動植物、森や湖に遺跡、魔物等を発見出来ることがあります。
 発見者には『命名権』があたえられます。
  ※命名は公序良俗等の観点からマスタリングされる場合があります。
 特に名前を決めない場合は、発見者にちなんだ名が冠されます。
  ※ユリーカ草、リーヌシュカの実など。
 命名権は放棄してもかまいません。
  ※放棄した場合には、何も起りません。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • <Celeste et>ウィクナ=ハバンと影の森完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2022年05月06日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

セララ(p3p000273)
魔法騎士
リュカシス・ドーグドーグ・サリーシュガー(p3p000371)
無敵鉄板暴牛
アクセル・ソート・エクシル(p3p000649)
灰雪に舞う翼
黎明院・ゼフィラ(p3p002101)
夜明け前の風
ヒィロ=エヒト(p3p002503)
瑠璃の刃
美咲・マクスウェル(p3p005192)
玻璃の瞳
エッダ・フロールリジ(p3p006270)
フロイライン・ファウスト
冬越 弾正(p3p007105)
終音

リプレイ

●ニュウショクシャ
 軍の係員であるという『オーリー・バイエルン』についての話を、今回はあえて先に触れるべきかもしれない。
「そもそもだ……『樹の角と顔』を捕らえるように求めたのは、そのオーリーなんだよな? 依頼内容とはまた別に」
 『残秋』冬越 弾正(p3p007105)が箱を横に置くようなジェスチャーをした。
「そこが一番ひっかかる。さも、『捕らえるか殺すか』の二択を迫っているようでいて、最終的な選択肢は全てこちらにある」
「………………」
 『フロイライン・ファウスト』エッダ・フロールリジ(p3p006270)はといえば、口を真一文字に結んだままつーんと斜め上を見ていた。
 自然に覆われた遺跡へと続く道のうえ。まだ安全なエリアであるとはいえ、エッダにしては随分とやわらかい態度である。
「それって、結局はボクたちに探索を任せてくれてるってことじゃないの?」
 『激情の踊り子』ヒィロ=エヒト(p3p002503)が頭の後ろで手を組むような姿勢でてくてくと歩いていた。
「ボクもなんだかちょこーっとこの浮島にまつわる内実に興味が出てきたし。調べさせてくれるなら願ったり叶ったりかなって」
「それはそうなんだろうけど……」
 『あの虹を見よ』美咲・マクスウェル(p3p005192)が一度目を閉じ、そして意味ありげにヒィロのほうを見ながら薄目を開けた。
「正式な依頼と『おねがい』には違いがあるでしょ? それも決定的で、ある意味致命的な」
「ん、ん? お金がかからないとか?」
 ヒィロが唇に指を当てて首をかしげると、『灰雪に舞う翼』アクセル・ソート・エクシル(p3p000649)が『あ゛ー』と言いながら実に苦々しい顔をした。
「記録に残す必要が無いね」
 その言葉が芯を食っていたようで、ヒィロがぴこんと耳をたてた。
 美咲が笑みを浮かべ、正解であることを示す。
「記録に残さないと、何かすごいことがあるんデス?」
 『拵え鋼』リュカシス・ドーグドーグ・サリーシュガー(p3p000371)が無邪気に問いかけてくる一方で、『魔法騎士』セララ(p3p000273)が『らみこみに全部残るけどね』くらいのことを考えていた。まあ漫画は偽造が容易なので証拠能力が低いが、最近はローレットの依頼内容が映像記録も残るので(サブソースがあるという意味で)結構説得力が出てくるものである。
「そのオーリーって人は上官に話を通さずに古代獣を捕獲したいってことだよね。上にもボクたちにも何か隠してるってことなのかな?」
「かくし……ごと……?」
 リュカシスはまるでピンときていない様子だった。
 が、エッダのような知見のある者から見れば、『リュカシスがここにいること』が既に政治的な意図をもっているのが分かる。
 まず第一に、リュカシスよりもその伯父セスに声をかけるのが最良である。リュカシスはあくまで軍学校の生徒であり、広義に軍人であるとはいえ徴用するには若すぎる。更に言えば、姉のヒルディリドへ先に話が行っていたという時点でかなりあやしい。
 ドーグドーグ家の名声を、経験の浅い人間に負わせる意図が(エッダからは)透けて見えた。
 そんな姉がリュカシスにその『代役の代役』を任せるというのは、ある種のカウンターコマンドであったのではなかろうか。
 ドーグドーグ家において、リュカシスは極めて政治的に利用しづらい立ち位置を、そして性格をしているということだ。
 純粋すぎて腹芸が通じないし、無理に強制しようとすると笑顔のまま殴ってくるので制御しづらいという素質も当然ある。
 そしてその事実を正しく理解できない者は、彼に『おねがい』という形で利用する意図を晒すのだ。
「けどさ。それって……あの古代獣はこっそり対話する価値があるってことだよね。お金をこっそりかすめ取るみたいに」
 アクセルが話題を転換するためにか、あるいは推し進めるためにか少し声を張った。
「森に人をいれたくない理由があって、それは知性に裏打ちされてるってこと」
「それを尋ねて妥協点を見つけたいな。お友達になったりできない?」
 セララがそう続けるものだから、ゼフィラは左右非対称な渋面を作った。
 敵と友好を結ぶというのは、戦略的に意味がある。が、それは『みんなハッピー』だとか『今後タダでお互い働きます』みたいな意味ではない。多くは『次の戦争まで時間を稼ぎます』という意味だ。
 たとえば古代獣に娘を食い殺された村があったとして、これは友達だから仲良くしましょうと紹介することは難しい。逆に古代獣を三桁単位で殺す自分達を、相手が同じように紹介するのはもっと難しいだろう。
 ゼフィラなんかは、それこそ四肢をもいで箱に詰めて持ち帰れるならその方が都合がよさそうにおもうくらいだが……それは『オーリー・バイエルン』にとっても都合が良いということになる。
「まぁ殺る気満々の相手にいきなり話が通じるとも思えないから、まずは力尽くでのOHANASHIからだけど! アハッ」
「そういうこと。まずは、例外を認めてもらわないとね」
 ヒィロと美咲がうんうんと頷き合っている。
「それで思い出したんだが、『ニュウショクシャ』っていうのはなんなんだ? 俺たちは入植を目的とはしてないよな。調査が目的だってことを伝えたら、誤解をとけないか?」
 弾正が箱をこちらに戻すジェスチャーをした。話が元の路線に戻ったようである。
 仲間達はその件に関して相談をしながら、森への道を進む。
 だがそのなかで、エッダはまだ口を真一文字に結んでいた。
(この島が『魚』であったとして……誰が食うかも問題でありましょう。あの男の動機が、たとえばショッケン・ハイドリヒくらい単純であれば計りやすかったのでしょうが……)
 調べるという行為は、必ずその意図がある。調べてからどうするか。それが、きっと問題になるのだ。そして往々にして後のことは話されず、多くの場合『分かるまで決めかねる』のである。

●『樹の角と顔』
「出ましたね――『樹の角と顔』!」
 そして話は、ここへと至る。
 周囲は広い暗闇へと飲まれ、ウィクナ=ハバンたちが姿を見せる。
 あらゆる方向からの奇襲がありうる状況だ。アクセルはまず目に暗視の魔法をかけて周囲を観察。影とほぼ同化しているとはいえ姿を見せればそのわずかなシルエットが認識できる。
「そこだ!」
 アクセルは仲間を守るように飛び上がり、そして神気閃光を放った。
「みんな、円陣を組んで! あとできれば照明になるものを!」
 そう言いながらアクセルはアシカールパンツァーを真上に向けて発射。僅かな時間ではあるが周囲が発光によって照らし出される。
 浮きあがったウィクナ=ハバンのシルエットをヒィロはスローに知覚した状態で発見した。自分に対する奇襲だけではなく、美咲に対しても奇襲が仕掛けられていたようだ。
 伸びる鉤爪のような腕を剣によって払いのけると、美咲を守るように割り込んだ。
「わざわざこんな暗闇に引きずり込むなんて、鹿さんは視覚に頼らない戦闘がお好み?
 目に見えるものだけが真実か――なんて問い掛けまで含んでたりして。
 美咲さん、まわりは見える?」
「当然」
 虹色虹彩(レインボーアイリス)の暗視能力をアクティブにすると、僅かな明度の差を見極め斬りかかった。
 見えていれば斬れる。隠れていても、見つけ出せば同じ事だ。
「闇を展開……何であれ自領域の展開はバフデバフの類が定石よね。
 「殺す」ではなく「殺し合う」なら、一方的に殴る想定じゃない。
 出現時の様子からして、影(闇)間移動が有力かな。
 影潜獣は眷属みたいなものかも」
 美咲の予測はどうやら当たっているようで、影の中からぼうっと仮面が浮きあがるように見えた。
 それもひとつや二つではない。まわりを囲むように無数の仮面が現れ、口を動かさずに語りかけてきた。
「生きて帰ることは、許されない。ここで死ぬか、こちらを殺すかだ」
「極端な選択を求めるわりに、呼びかけてはくるんだな」
 弾正はつい笑ってしまった。
 『殺すぞ』とすごむ人間は大抵の場合殺さない。
 『樹の角と顔』がこちらに求めているのは、恐れてこの場から逃げ出すことだ。そして恐怖を広め二度と仲間を近寄らせないこと。
「随分人間に優しいじゃないか。それに――」
 弾正は自らの声でエコーロケーション効果を起こすと、背後に出現し斬りかかろうとするウィクナ=ハバンへ『蛇鞭剣ウヌクエルハイア』をソードモードのまま叩きつけた。
 真っ二つに切り裂かれ、悲鳴のような声をあげて消え去るウィクナ=ハバン。
「それに、こうして襲いかかるってことは、腕試しの意味もあるんだろう?」
 恐怖を与えるだけなら襲いかかる必要が無い。
 暗闇に閉じ込めて、不安な音をずっと聞かせるだけでもいい。ウィクナ=ハバンを危険に晒してまでやらなければならないことがあるということだ。
 まあ……本当にこちらを殺してしまう覚悟がないわけではないのだろう。こちらだって、古代獣が探索を阻むならばと殺してしまうことがあるのだ。
「そこだ!」
 ゼフィラが声を張り、指をさす。
 浮かび上がった仮面のひとつがカッと目を見開き、無数の影の槍をゼフィラめがけて発射した。ゼフィラの義手を破壊する寸前までいくが、ゼフィラはそれをぐっと掴んで笑う。
 エッダがこっそりと指示した内容を覚えていたのだ。『攻撃されたら掴め』と。
「ないすがっつであります」
 エッダは表情を変えずに飛び出し、仮面を殴りつける。パキンとひび割れ、砕け、そしてゼフィラに刺さっていた槍が星空のように光り始めた。
「チャンスだよ!」
 セララがセラフインストールで白く輝くと、あえて『槍』めがけてギガセララブレイクを繰り出した。
 破壊された槍。いや……それは角だ。『樹の角と顔』というリュカシスの名付けは、ある意味真実をとらえていたのである。
「大きなシカ型古代獣じゃない。この角と顔こそが本体なんだ!」
 なるほど! とリュカシスは叫び、そして腕に装備した『鉄鋼千軍万馬』をガツンと叩いた。浮島探索のためにカスタム(ほぼ新造)されたギミックが作動し、バチバチと激しい火花をあげながら急速加熱する。
 リュカシスはそれを、角めがけて叩き込んだ。
「『殺し合いだ』『例外はない』なんて冷たいことを仰らず!
 あなたが『ノワール』ではないのなら、ボク達『トモダチ』になれるのでは!」
 インパクトと同時に、世界が晴れた。
 まるで巨大な暗幕を剥ぎ取ったかのように周囲が昼間の森へと変わり、角の砕けた『樹の角と顔』ががらんと地面に転がる。
 心配そうにやってきた大きなシカが割れた仮面をはなでつつくと、徐々に破片が集まり再び仮面が修復された。仮面はシカの顔面へと張り付き、まるで最初から一つの生き物であったかのように頭をあげた。
「『ノワール』だと」
 更なる攻撃を放とうとする『樹の角と顔』だが、セララは手にしていた剣と盾をぽいっと放り捨てて両手を上げて見せた。
「ボク達にはキミ達を殺す気なんて無いよ。もし良ければお友達になってくれないかな」
「…………」
 同じように、アクセルが手を上げる。
「本当だよ。オイラたちは話をしたいんだ。殺すのも殺されるのも、捕まえて連れて行くのもナシだよ!」
 ゼフィラは小さく頷き、そして傷付いた義手を庇うように腕組みをする。
「私達に依頼された内容は私達が『樹の角と顔』と呼ぶ存在……つまりキミと戦い勝利することだけだ。遺跡の調査を目的としてね。戦った結果取り逃したと依頼人には報告するつもりだ」
「安心してくれ。殺しそびれることは事実だし、このやりとりがバレない自信はある」
 弾正が胸に手を当て、歩み出た。
「俺たちは特異運命座標(イレギュラーズ)。ローレットに所属している。互いに支え合い、協力しあって生きている。その力は貴殿も目にした通りだ。
 この地とも共生するために、知るべき事を調査しに来たんだ。どうか歩み寄ってはくれないか」
「…………」
 『樹の角と顔』は弾正の自己紹介に悪い印象はもたなかったようだが、『この地とも共生するために』という部分には懐疑的な反応を見せていた。
「信用できない? それとも、私達が入植者とやらに見えたかな? 少なくとも、私達にその意図はないはずよ」
 美咲が冗談のように肩をすくめてみせる。ヒィロはうんうんと首を縦に振るだけだ。
「いや」
 そこでやっとというべきか、エッダが口を開いた。
 普段のポーカーフェイスなメイド……とは若干雰囲気の異なるトーンで。
「ローレットは鉄帝軍という依頼人からのオーダーをこなす外注組織に過ぎない。いかなる意図があったとしても、受けてしまった以上達成努力を求められる。
 つまりここで『我々』という集合体の意志を示す場合、依頼人の意志が尊重されなければならない」
 雲行きが怪しい。ゼフィラは最初から感じていた苦々しさがやっと顔を出したなと、黙ったまま周りの様子をうかがった。
 止めるものはおらず、むしろ成り行きを見守る流れが大半だ。リュカシスに至っては『どゆことデス?』とずっと首をかしげている。
「そして総合依頼人である鉄帝軍は、『軍務派』と『特務派』という二つの派閥に分かれている。中でもオーリー・バイエルンは強い特務派の人間だ。であるにも関わらず『樹の角と顔』の捕縛が正式な依頼とならなかったのは、軍務派との力関係がほぼ対等であること……そして捕縛したことが知られればその前後で邪魔されると考えるからだ。
 勿論、軍務派はおひとよしの代名詞ではない。国益のためならば他国との戦争や他組織の利用も行うし、他部族の支配や殺戮もありうるだろう。コロンブスの例をとるまでもなく」
「…………続きを聞こう」
 『樹の角と顔』がそう述べたことに、弾正たちは少なからず驚いた。対してエッダは表情を変えないまま続ける。
「『我々は入植の意図がないわけではない』。有用な植物。動物。技術。兵器。それらがあるならば持ち帰り国益とするだろう。そして問題ははやり……『有用かどうか』だ。それが制御できるかどうかではない」
「…………」
 『樹の角と顔』は頭をさげ、そしてこちらに背を向けた。ついてくるなという意志が、周囲でざわつく新たなウィクナ=ハバンたちから読み取れる。
「やはり『トモダチ』にはなれない。だが、またこの場所へ来ることは許そう。その必要があると考えたときに」
 対して、エッダは深々と頭をさげた。メイドらしいトーンで。
「感謝するであります」
「それではまた、『樹の角と顔』!」
 リュカシスは手を振り、そして数歩下がってから、遺跡をあとにした。

●オーリー・バイエルン
「……それで、『樹の角と顔』には逃げられたと?」
「その通りよ」
「あの遺跡にはウィクナ=ハバンが多すぎる。あれ以上進むのは無理だったな」
 驚くほどスンとした顔で美咲と弾正が言う。
 オーリー・バイエルンは小さな丸眼鏡を反射させながら顔をうつむけた。
 こちらの意図を探っているのか、それとも推察できてしまっているのか。
 いずれにせよ、ローレットには『依頼を受けない』という選択ができる以上強制的に情報を引き出すことはできないと判断したようだ。あるいは、わかっていても『大佐』と『どーグドーグ家』に手が出せないと思ったのか。
「わかりました。ありがとうございます。こちらは報酬になります」
 オーリーもまた驚くべきポーカーフェイスでコインの入った袋を突き出すと、絶妙な作り笑いを浮かべた。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 発見者:『フロイライン・ファウスト』エッダ・フロールリジ(p3p006270)
 種類:土地
 備考:『樹の角と顔』が阻んでいた森に入ることができるようになりました。森に覆われた遺跡のようです。

PAGETOPPAGEBOTTOM