シナリオ詳細
<Celeste et>銀翼の英雄。或いは、失せた遺品の行方を追って...。
オープニング
●花畑に眠る英雄
鉄帝国南部の町ノイスハウゼンの上空。
つい最近になって発見された浮遊島アーカーシュには、幾つもの遺跡が存在している。
そのうち1つが“英雄の眠る地”と呼ばれる広大な花畑と、そして崩れた城である。
その遺跡には、1人の英雄の墓がある。
長い年月の中で、英雄の名前は忘れ去られた。
その英雄は、かつてアーカーシュに派遣された大規模調査隊の危機を救い、そして命を落としたことが伝わっている。
彼女の偉業を讃えた『レリッカ』の住人たちは、花畑の真ん中に英雄の墓を拵えた。
生前、彼女が完成を夢見た飛空艇の残骸と、彼女の友であった1羽の鷹と共に。
彼女は安らかな眠りについた。
けれど、しかし……時は流れ、彼女の眠る花畑は安全な場所ではなくなった。
遺跡に眠っていたセレストアームズ(天空機兵)が何かの拍子に起動して、花畑を徘徊し始めたのである。
「おかげで墓参りにもいけない。ただ苔むしていく英雄の墓を、ただ遠目に眺め続けることしかできなかったっす。だけど、ここに来て状況が変わった」
そう言ってイフタフ・ヤー・シムシム(p3n000231)は、イレギュラーズたちを指さす。
レリッカの住人たちにはセレストアームズに太刀打ちできない。
しかし、イレギュラーズであれば……セレストアームズを打倒し、英雄の遺品を回収して来ることも可能かもしれない。
「とはいったものの……飛空艇の残骸と一緒にあった英雄の遺品は、花畑や崩落した城跡の各所に散らばっている状態っす。セレストアームズたちが飛空艇の残骸を解体して、自分たちの身体に組み込んだせいっすね」
それらを回収して来ることが、イレギュラーズの任務である。
●英雄の遺品
「さて、まずは分かっている限りのフィールド情報からっすね」
そう言ってイフタフは手元の資料をイレギュラーズへ手渡した。
古い紙面に描かれているのは、荒い筆致で記された遺跡の地図である。大部分が掠れて見えなくなっているが、それでも大まかな遺跡の形状は把握できる。
「中央には崩落した城らしき建造物……セレストアームズはここから出て来たみたいっすね。それから、周辺は一面の花畑が広がっているっす」
地図を見る限り、花畑は城を中心に十字を描くように広がっている。
花畑の端から端まで、目算でおよそ1キロほどと広大だ。
もしも星座に詳しい者がそれを見れば、花畑の配置が「わし座」を模していることに気が付くだろう。
「英雄の墓は中央にある城の近く。かつてそこにあった飛空艇の残骸は全部で3つに解体されて花畑の各所へと持ち去られているっす」
レリッカの住人たち曰く、英雄の遺品は飛空艇の残骸が運び去られる際にどこかへ落ちたはずということだ。
おそらく、飛空艇の残骸内部に遺品は安置されていたのだろう。
「回収する遺品は3つ。『ネームプレート』『勲章』『ゴーグル』っすね」
それらを見つけ出し、持ち帰ること。
イレギュラーズの負う任務としては、比較的に簡単な部類のものだろう。
だが、そこで問題となるのがセレストアームズの存在だ。
「遺跡にいるセレストアームズは8体ほど。そのうち3体が飛空艇の残骸を取り込み【飛行】能力と大幅な強化を得ているっす」
5体は斧を装備した通常のセレストアームズだ。
しかし、残る3体は銃火器を手にしたうえ、飛行能力を有する強化型となっている。
レリッカの住人たちは、それを“翼付き”と呼んでいた。
「斧を装備した個体は攻撃力重視。翼付きは機動力と命中重視って感じっすね。考えられる状態異常は【飛】【暗闇】【停滞】【体勢不利】っすか」
必ずしも破壊の必要は無い。
けれど、英雄の遺品を回収する過程で交戦は避けられないだろう。
「何にせよ浮遊島はどこも未知の場所っすからね。警戒し過ぎて損をするってことは無いんじゃないっすか?」
そう言ってイフタフは、話を終わらせたのだった。
- <Celeste et>銀翼の英雄。或いは、失せた遺品の行方を追って...。完了
- GM名病み月
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2022年04月30日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
●花畑
見渡す限りの花畑。
ゆっくりと、そこを歩く機械の巨象……セレストアームズ。
それを遠目に眺めつつ『白き寓話』ヴァイス・ブルメホフナ・ストランド(p3p000921)は言葉を零す。
「さて……見知らぬ地というのはワクワクするけれど、好奇心のままにさまようには少し危険が多いみたいね」
「お花畑、綺麗ですね……! 私、こういう場所初めてです。危険がなければミーちゃんたちも連れてきたかったな」
花畑に伏せた姿勢で『未来を願う』ユーフォニー(p3p010323)はわぁと感嘆の声を零した。
「ほう、中々風光明媚な所であるな! ここを墓所に選んだというのも頷ける! しかし、あの鉄くずは気に入らぬ。吾がこの場に相応しいオブジェに変えてくれよう」
ヴァイスとユーフォニーの隣に立った『白百合清楚殺戮拳』咲花・百合子(p3p001385)は、胸の前で腕を組み、鼻息も荒く気勢を放った。
「あの……伏せてもらえると助かるのだわ」
そんな彼女に裾を引くのは『嫉妬の後遺症』華蓮・ナーサリー・瑞稀(p3p004864)。現在は、花畑の観察中である。
なにしろ、今回の依頼において必ずしもセレストアームズを全滅させる必要は無いのだ。目的は、花畑に眠る英雄の遺品を回収することにある。そのためには、セレストアームズが邪魔ではあるが……時間的な制約がない以上は、1体ずつ確実に討つのが得策であろう。
「まぁ良いのではないか? まずはセレストアームズなる防衛兵器を片付けるところから始めるのじゃろ? そんで、こんなものがガシャガシャ徘徊しておったのでは、英雄もうるさくて寝てられぬじゃろ」
「己が偉業が語られるのは良いモノだが、己が名前を忘れられるのは個人を忘れられる事と同意義故、な……」
そう言って『殿』一条 夢心地(p3p008344)は腰の刀を引き抜いた。その隣では樹龍(p3p010398)が腕を組んで目を閉じていた。
それから樹龍はカッと瞳を見開くと、口元ににんまりとした笑みを浮かべる。
「今、なんか、儂、かっちょいー事を言えてた?」
「うむ! 威勢良し! 行くか!」
「応! カチコミであるな!」
樹龍に「良し」と言葉を返し、百合子は揚々と前進を開始。
樹龍と夢心地もそれに続く。
「物探し……個人的には苦手な部類の依頼ですね。しかもこの広い花畑の中から探し出すとなると、今回の依頼は長くなりそうです」
「英雄を弔う気持ちが叶わないのは嫌なのよね。というわけで……さぁ、行きましょう」
『鋼鉄の冒険者』オリーブ・ローレル(p3p004352)と『白騎士』レイリー=シュタイン(p3p007270)が得物を手にして歩き始める。
向かう先には、こちらを睥睨している2体のセレストアームズ。
このままそこでじっとしていても仕方が無いと、瑞稀やヴァイス、ユーフォニーも後に続いた。
●花畑攻略戦
花畑の東。
視界に存在しているセレストアームズは3体。
また、花畑の真ん中には飛空艇の翼らしき部品が転がっている。
翼部品を間に挟んで相対するは、都合8名のイレギュラーズ。その先頭に立つ女は、眩いばかりの白い鎧と金の髪を堂々と晒して名乗りを上げた。
「私の名はヴァイスドラッヘ! 英雄の墓を護るため只今参上!」
片手に大盾、片手にランス。
臨戦態勢をすっかり整えたレイリーへ向かって、2体のセレストアームズが突撃を慣行。圧倒的な重量と巨体を誇る金属の兵士は、手にした斧を振りかぶりレイリー目掛けて打ちつけた。
レイリーは盾を構えて斧の一撃を受け止める。
衝撃が、内臓へと突き抜けてレイリーの身体を芯から痺れさせる。内臓や骨、筋肉にダメージを負うが、1歩たりとも後退することは無かった。
「よし、まずは2体! 自慢ではないが吾の燃費はものすごく悪いぞ!」
「レイリーさんが敵を釣ってくれました。片端から破壊していきましょう」
巨象の左右へ回り込んだ百合子とオリーブ。
セレストアームズが次の動作に移るよりも先に、その脇腹へ百合子が連打を叩き込む。地面に根を張るように低く腰を落とし、固く握った拳の連打を巨象の脇へと次々叩き込んだのだ。
衝撃と鉄を殴る鈍い音が響き渡る。
巨象が痛みや恐怖を感じることは無い。脇を殴打されながら、迎撃のために手にした斧を振り上げた。
盾から斧が離れた瞬間、レイリーは巨象の脇をすり抜け次の巨象の前へと立った。
一方、斧を振り上げた巨象の脚へ百合子は渾身の殴打を打ち込む。1つ、2つ、3つと殴打が重なって、巨象はどうと音を立てて後ろへ倒れた。
たん、と地面を蹴って跳んだオリーブが巨象の胸に降り立った。
手にした長剣を高く振り上げ、巨象の首へと突き立てる。
バチ、と火花の散る音がして巨象の頭が地に落ちる。
花弁を盛大に撒き散らし、ごうと魔力の渦が巻く。
それを放ったのは、花畑に伏したユーフォニーだ。
「1体ずつ確実に撃破……でしたよね」
ユーフォニーが狙うのは、前線へ出て来なかった残る1体の巨象である。
斧を掲げた巨象が魔力の砲に飲み込まれる。
しかし、巨象は焦げた身体を引き摺るようにユーフォニーへ向け疾走を開始。高くに斧を振り上げて、臨戦態勢を整える。
機械の身体はさすがに頑丈であるようだ。
けれど、しかし……。
「わっ、来ます!」
「……無理して引くよりはいなす形の方がよさそうかしら」
儀礼用の剣をそっと突き出して、ヴァイスは口の中で呪文を転がした。
刹那、剣の先より放たれたのは極限にまで細く鋭く絞られた暴風の矢だ。
まっすぐに花畑を飛んだ矢が、巨象の腹を貫いた。
瞬間、蓄積されていた暴風が解放されて……巨象の巨体が後方へ跳んだ。
戦線を維持するべく、瑞稀は歌を紡ぎ続ける。
歌声に乗せた癒しの魔力が仲間たちに降り注ぎ、消費した気力を回復させた。
「あ、空から……空から翼付きが来るのだわ!」
小鳥の視界を通じて空を監視していた彼女は、誰よりも先に空から迫る翼付きの巨象を見つけた。
歌を止めた瑞稀は空へ指を向け、巨象へ向けて魔弾を放つ。
タン、と軽い音が鳴る。
巨象の胸を魔弾が打ちぬき、その全身を茨で絡めた。
翼付きは空中で大きく姿勢を崩し……軌道を乱しながらも機関銃を構える。
咄嗟に瑞稀は、飛空艇の部品の影へギリギリダイブ。
銃声。
雨と降り注ぐ銃弾が、色とりどりの花を無残に散らしていく。
そんな中、弾雨の中を疾駆する影が2つ。
1つはワイバーンに跨った殿……夢心地。
もう1つは撃たれながらも花畑を駆ける樹龍。
「この手のフライング兵器は、防御性能はそこまで高くないと相場が決まっておるしの。
ババンバンと叩き落としてやるわ」
「儂の自慢の肉体にそのような木っ端弾が効くものか!」
腕を空へと伸ばした樹龍が、翼付きから生命力を奪い盗る。その間も、彼女は全身に無数の弾丸を浴びていた。
すっかり血塗れになりながらも、樹龍はまるで蚊にでも刺された程度の傷しか負っていないかのような様子で、前へ前へと進み続けた。
樹龍が注意を引き付ける間に、ワイバーンに乗った夢心地が巨象の背後へと到達。手綱を手放し、着物を閃かせながら巨象の背へと飛び乗った。
「そうりゃ! まずは邪魔な翼からじゃ」
一閃。
夢心地の斬撃が、機械の翼を断ち斬った。
巨象が落ちた衝撃で、地面が大きく激しく揺れた。
そっと飛空艇の影から顔を覗かせ、瑞稀は戦況を素早く確認。
残る巨象は落ちた翼付きと、遠くに見えるもう1体。
そう遠からず、この場での戦闘はイレギュラーズの勝利で終わることだろう。
「……皆を支える補給線が私の役割だけど、今は必要なさそうなのだわ」
なんて。
そう言って瑞稀は、飛空艇の影からゴーグルを1つ取り上げた。
休憩を挟んだ一行は、花畑の西へとやって来た。
そこにいたのは、都合2体のセレストアームズ。イレギュラーズの接近には気づいていないのか、地面に蹲るようにして待機中の様子であった。
「こうして花畑に身を隠して居れば、やり過ごせるんじゃろ? ならば、花畑からどどーんと奇襲をかけて各個撃破じゃ!」
地面にべったりと伏せたまま樹龍は言った。
衣服が土に汚れることなど気にも止めていないようだ。むしろ落ち着くのか、戦場であるというのにリラックスしている風である。
「では、まずは私が……ですが2体とも接近して来るのでは?」
「私が暴風で敵を吹き飛ばせるから、2体同時に相手取ることにはならないはずよ」
「それなら安心ですね。では……」
腕を前へと突き出して、ユーフォニーが手の平に魔力を集中させる。
ごうと渦巻く魔力の奔流。
流石に巨象も気が付いたのか、待機モードを解除して、斧を手に移動を開始した。
しかし、距離が遠すぎる。
充填を終えた瞬間、ユーフォニーが魔力砲を放つ。
花畑を巻き込まないよう、射線は僅かに上方へ。
弧を描くように発射された魔力砲が、巨象2体を飲み込んだ。
魔力の渦を突き破り、2体の巨象が疾駆する。
ヴァイスの目は、その様子をしっかりと捉えていた。
焦りは無い。
いつも通り、冷静に、儀礼剣を前へと突き出し凝縮した風の魔弾を解き放つ。
針のように細く鋭く。
空中を疾駆した魔弾が、巨象の片方を後方へと弾いた。
それと同時に、樹龍と夢心地、レイリーが前進を開始。
接近する巨象の斧を、まずはレイリーが構えた大盾で受け止める。地面が揺れるほどの衝撃。押し戻される大盾に、額を叩きつけるようにしてレイリーは耐えた。
ぶつけた額と鼻から出血。
食いしばった歯がミシと軋んだ。
「っ……地面が柔い。押し戻されるわ!」
「だったらまずは敵の動きを制限するのだわ」
治療の手を止めた瑞稀は、薄緑色に淡く輝く魔力弾を巨象の顔面へと撃ち込んだ。
ぱっと花火が咲くように魔力弾が爆ぜた。
燐光に包まれた巨象の動きが鈍る。
直後、巨象の足元へ夢心地と樹龍が辿り着いた。
「むむ? 頭が高いの!」
「よし、儂にまっかせとけい!」
まずは巨象の膝へ目掛けて、樹龍が掌底を叩き込む。
衝撃は硬い外殻を貫き、巨象の膝を内側から砕いた。巨体が浮いて、転倒しながら後ろへ転がる。
それを追って夢心地は疾駆。
抜いた刀を左手で構え、刃を横へ倒す。
「疾!」
気勢と共に放たれた刺突が、巨象の眉間を貫いた。
左片手平突きと呼ばれる剣術だ。
バチ、と火花が散って巨象の頭部が爆ぜる。
頭の半分ほど壊された巨象だが、機能停止には至らない。立ち上がる勢いを乗せた殴打を、夢心地の腹部へと見舞った。
「倒したか否かの判断が付きにくいの!」
口元を吐血で赤に濡らした夢心地は、べったりと張り付く血を拭って再び刀を構えなおした。
重い一撃を貰ったものの、戦闘継続に支障はない。
おまけに瑞稀の治癒もあるのだ。
「こやつらのような機械は完全に機能停止するまで、油断せずボコり続けねばならぬ」
第2ラウンド、開始である。
花畑を百合子が駆ける。
誰よりも速く、向かうは後方から迫るもう1体。
地面を蹴って、高く跳躍。
「ごきげんよう!」
まずは膝を、巨象の顎へと叩き込み、流れるような動作で頭部に肘を打ち込む。
「そして、ごめんあそばせ!」
エルボーのラッシュを受けた巨象が足を止め、斧を頭上へ振り上げた。
その肘へ向け、オリーブは長剣を振り下ろす。
一閃。
鋭く尖れた刃が巨象の肘に深い裂傷を刻む。
「硬い! すいません。断てませんでした!」
「なに、構わん! 次だ次!」
肘を半ばほど断ち斬られながらも、巨象は片腕で斧を振るった。花も地面も、オリーブと百合子も、纏めて薙ぎ払う渾身の一撃。
斧に肩や胸を斬り裂かれながらも、オリーブと百合子は攻撃の手を止めはしない。
2人の身体が地面に落ちて、ざぁと鮮血が降りかかる。
直後、巨象の斧が砕けて……2人はにぃと獣のような笑みを浮かべて立ち上がる。
●英雄の名前
花畑中央。
城跡の門を守るように、2体の翼付きが佇んでいる。
「あの辺り、崩落や足場の損傷が心配なのだわ」
小鳥の視界を通して城跡を見ているのだろう。
瑞稀は城跡の強度を不安視しているようだ。
そんな彼女の手には、ゴーグルと勲章が握られている。
残る英雄の遺品は“ネームプレート”1つだけ。
広い花畑から、小さな遺品を見つけ出すのは骨が折れる。となれば、先に残る2体の巨象を討つのが得策か。
「……城跡を迂回するように飛んでいけば、不意を討てるかもしれないのだわ」
もちろん、移動中に見つかってしまう危険もある。
隠れる場所の無い空で、機関銃の掃射を受ければひとたまりも無いだろう。
花畑の中央を、一塊になって進む者たちがいた。
大盾を構えたレイリーを先頭に、オリーブと樹龍が続く。
少し離れた後方からは、治療役の瑞稀が続いた。
瑞稀の静かな歌声が、花畑に響き渡る。
まるでそれは英雄へ向けた鎮魂歌のようではないか。
けれど、しかし……。
「無粋な輩はどこにでもおるもんじゃの」
「人々を救った英雄が安心して眠れるようにしたいわね」
樹龍とレイリーが言葉を交わし、互いの拳をぶつけ合う。
それ以上の言葉は不要。
2体の巨象が翼を広げ宙へと舞って、花畑へ向け弾丸の掃射を開始した。
頭の上に盾を掲げて、レイリーは弾雨を掻い潜る。
レイリーの影に隠れたオリーブと共に、1歩ずつだが巨象へ向けて進行を開始。
一方、2人の被弾を少しでも減らそうという心算か……樹龍が隊列を離れて駆けた。
全身に弾丸を受けながら、転がるように花畑を移動する。
腕を伸ばし、巨象から生命力を吸収しているのだろう。
「樹龍さん! こちらへ下がって! 治療するのだわ!」
「構わぬ! 儂に回復は効かん故な!」
【パンドラ】を消費し意識を繋いだ樹龍が、翼付きの片方を引き付ける。
その間に、レイリーとオリーブは城跡の近くまで前進した。
巨象の目的は城跡の警護か。
2体の翼付きは、樹龍を無視してレイリーとオリーブに狙いを定めた。
直後、遥か後方で空気の爆ぜる轟音が響く。
放たれた魔力の砲と、爆風の弾丸が、まっすぐに巨象へと向かう。巨象は翼を畳んでそれを回避した。
ヴァイスとユーフォニーの攻撃は、命中寸前で避けられる。
だが、問題はない。
元より2人の攻撃は、トドメへ至る布石の1つに過ぎない。
回避行動を取らせることで、巨象の注意を引ければそれで成功だ。
「ぐわっ! 羽虫が目に入ったのじゃ!」
「羽虫がどうした! 一気に押し切る!」
ワイバーンの背を蹴って、夢心地と百合子が巨象の頭上へと跳んだ。
大上段に構えた刀を、気合と共に一閃させて翼を断ち斬る。
一方、百合子は巨象の背中にしがみつくと、当たるが幸いといった様子で拳の連打を翼の根元へ叩きつけた。
いかに機関銃の射程が長いとはいえ、自分の背中は狙えない。
翼を破損し、高度が下がった瞬間に、オリーブとレイリーは左右へ散開。
オリーブの剣と、レイリーのランスは、正しく巨象の持つ機関銃を破壊する。
翼も、武器も失った巨象は、ただのでかい的に過ぎない。
翼の生えた猫がいる。
ドラネコ、そしてドラネコドローンを引き連れて、ユーフォニーが花畑を歩いていた。
「リーちゃん、エーちゃん、ここからは一緒に行こうね」
さぁ、と暖かな風が吹く。
風に花弁が舞って、空高くへと昇っていった。
「……あなたたちは何か知らないかしら?」
空へと舞い上がる花弁へ、ヴァイスは問うた。
残る英雄の遺品はネームプレートひとつだけ。
それから暫く……ヴァイスは視線を城跡へと向けた。
「あっち?」
「行ってみましょう」
ユーフォニーとドラネコたちが、花畑を駆けていく。
苔の蒸した英雄の墓の前に、百合子が1人、腰を下ろした。
言葉は不要。
ただ瞑目し、安らかな眠りを祈る。
英雄の遺品、ゴーグルと勲章は取り戻された。
それから、最後に残ったネームプレートは先ほどユーフォニーが見つけたそうだ。
「……英雄殿の名は“アルコ”と申されるか。ここはなかなか風光明媚な所であるな」
百合子の言葉に応えるように、ざぁ、と一陣、暖かな風が吹き抜けた。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
お疲れさまでした。
英雄の遺品は無事に回収されました。
また、セレストアームズの討伐により、英雄の墓参りが可能となりました。
依頼は成功となります。
この度はご参加いただきありがとうございました。
縁があればまた別の依頼でお会いしましょう。
GMコメント
●ミッション
“英雄の遺品”×3の回収
●ターゲット
・英雄の遺品
遺跡に花畑に散らばっている英雄の遺品。
『ネームプレート』『勲章』『ゴーグル』の3種類
・セレストアームズ×5
斧を装備した古代の防衛兵器。
近接戦闘全般に長け、力強い斬撃を行う。
・セレストアームズ(翼付き)×3
機関銃を装備した古代の防衛兵器。
遠距離闘全般に長け、恐ろしい銃撃を行う。
また、金属製の翼や補助パーツを有しており飛行能力を持つ。
補助パーツの効果により【飛】【暗闇】【停滞】【体勢不利】の状態異常を付与する4種類の弾丸を使い分けるなど、通常よりも大幅に強化されているようだ。
●フィールド
・古城跡地
花畑の中心部に見える崩落した城跡。
どうやらセレストアームズは、城跡に安置されていたようだ。
・花畑
城跡を中心に十字に広がる花畑。
上から見ると「わし座」を描く形となっているようだ。
花畑のどこかには英雄の遺品や、英雄の残した飛空艇と呼ばれる機械の残骸が転がっている。
身を伏せればセレストアームズの視界から隠れることも可能だろう。反面、こちらからセレストアームズの様子を視認することも難しくなる。
・英雄の墓所
城跡付近に造られた名も知れぬ英雄の墓所。
手入れをする者もおらず、すっかり苔むしている。
以前は同じ場所に飛空艇の残骸があったようだが、現在はセレストアームズによって持ち去られている。
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
●特殊ルール『新発見命名権』
浮遊島アーカーシュシナリオ<Celeste et>では、新たな動植物、森や湖に遺跡、魔物等を発見出来ることがあります。
発見者には『命名権』があたえられます。
※命名は公序良俗等の観点からマスタリングされる場合があります。
特に名前を決めない場合は、発見者にちなんだ名が冠されます。
※ユリーカ草、リーヌシュカの実など。
命名権は放棄してもかまいません。
※放棄した場合には、何も起りません。
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