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シナリオ詳細

<Celeste et>ハイペリオンの帰還

完了

参加者 : 20 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●ハイペリオン、鉄帝の空へ
 白き翼を広げ、大空へと舞い上がる。
 雲を突き抜け太陽のもとへと羽ばたき、やっと上昇をとめたそれは……一言でいうならおまんじゅうだった。
 シンプルで可愛らしい、もっふりとした丸みのあるボディ。翼を広げていてもまだ丸く思えるシルエット。頭部にはとてもシンプルな顔がついていた。(\(╹v╹*)/)
 これぞ幻想王国にて復活したという古代の神翼獣ハイペリオンである。
 その歴史ははるか昔の勇者王時代へと遡り、ハイペリオンはその背に勇者アイオンとそのパーティーをのせあちこちを飛び回ったという。
「当時の記憶は永き封印の眠りの中で殆どが欠落してしまいましたが……これは、覚えていますよ」
 太陽に照らされた瞳をぱちくりとさせると、ゆっくりと身体を反転させる。
 背後に広がる巨大な『浮島』。そう、鉄帝上空にて発見されたという浮遊島アーカーシュである。
「大地の子らよ、ついに、自らの手でこの場所を見つけ出したのですね」

 ゆっくりと羽ばたきながら、頑丈なプレートの上へとおりたつ。
 手を振るのは白銀のような髪をした少女だ。
「ハイペリオンは、この島で生まれたんだよね?」
 アーカーシュの開拓村レリッカ。その縁に作られた空港に乗り付ける形で着地したハイペリオンを出迎えて、ジェック・アーロン(p3p004755)は仲間達の設営した巨大なテントへと案内していた。
 横を歩きつつ頷くハイペリオン。
「はい。当時は小さな雛でした。そうですね……ジェックさんの頭くらいの大きさでしたよ」
「へえ……」
 ジェックは自分が小さなハイペリオンを小脇に抱える様を想像するだけしてみた。
 なんか既視感があるなと思って振り返ると……ミスト(p3p007442)と目が合った。
 直後にその小脇に抱えられたトリヤデさんに目がいく。
「どしたの?」「ヤデ?」
 器用に同時に小首をかしげる二人。
 もしかしてという視線に、ハイペリオンが微笑みを浮かべる。(あの顔で)
「私にもよく分かりませんが……私は厳密には精霊の一種。トリヤデさんたちも、もしかしたら出自を同じくするものなのかもしれませんね」
「ヤデー?」
 ぴんとこないなという顔(?)をするトリヤデさん。ミストも似たような顔をしていたが、深いことは考えない主義らしく秒で顔が戻った。
「まあいっか。ここはハイペリオンさまの故郷ってことなんだね!」
「はい。産まれて間もないころに巣ごと地上へ欠け落ちてしまったものですから、記憶にあるのはそれから暫くして……自力でこの島へたどり着いてからのことなのですけれどね」
 やがてテントへとたどり着いた。そこではカイト・シャルラハ(p3p000684)が巨大な皿に山盛りのチョコチップクッキーを載せたものを持って待ち構えている。
「ようこそ、ハイペリオン様!」
 ミストもそうだが、カイトはハイペリオンを神様扱いしているところがある。ハイペリオンが向けているのは神性というよりむしろ母性なのだが。
「歓迎の準備は済んでるで。こっちの広場へ来てくれ!」
「ありがとうございます。カイトさん」
 にっこりと微笑みついて行くハイペリオン。
 好物は甘いお菓子とケルト音楽というのはハイペリオンファンの間では有名だ。
 広場では澄恋(p3p009412)と咲々宮 幻介(p3p001387)が手を振っている。
 澄恋は歓迎会の用意を。幻介はハイペリオン様(あるいはトリヤデさん)みたいな顔の描かれたお茶碗を手に待ちきれない様子を見せていた。食われてたまるかとばかりに殴りかかるトリヤデたち(増えた)。
「ああああああああああ!」
「いらっしゃいませ……というのは少しへんですね。むしろわたしたちが迎えられる側になるのでしょうか」
 苦笑する澄恋。
 ハイペリオンは芝生の上に腰を下ろすと、皆の顔を見た。
「この度は、私もローレットへの外部協力員として探索隊に加えて頂くことになりました。
 まずはそのことにお礼を。みなさん、ありがとうございます。
 永き封印の眠りによって力と記憶の殆どを喪失した私にとって、アーカーシュへ帰ることは夢のひとつでした。皆様がいなければ、きっと叶えることはできなかったでしょう」
 そして、と区切ってから目を瞑る。
「この土地で、まずは挨拶をしたい方がいます。この島に住むアイル=リーシュという精霊なのですが……」

●ハイペリオンの伝説
 はるか昔は勇者王時代。
 浮島アーカーシュにはハイペリオンというかみさまがいた。神々しく大きな、そして太陽のように美しい白き鳥のすがたをしたそれは、時として荒れる精霊たちを統べ、精霊と親和する力をもつ獣たちを統べ、島の平和を護っていた。
 しかしあるとき、黒き勢力が現れハイペリオンへ攻撃を始めたのである。
 陰謀によって幼き雛子を狙われたハイペリオンは子を庇い、巣であり浮島の一部であった場所ごと地上へと転落してしまった。
 地上には古代獣が広がりはじめ、それを抑えるべく負傷したハイペリオンは戦い……そして命を落としたのだ。
 涙に暮れる雛子は二代目ハイペリオンとなり、共に古代獣退治をしてくれた勇者アイオンの翼として大陸じゅうを共に飛び回ることとなったのだった。
 それから先は、幻想に伝わる伝説の通りだ。復活した古代獣や巨人族を封印すべく巫女フィナリィと共に儀式を行い、自らを柱として悪しきものたちと共に大地に眠ったのである。
 今のハイペリオン(二代目)から記憶と力が欠けているのは、永き封印の中で力が悪しきものたちに食われてしまったからに他ならない。そしてそうした者たちは復活し、ローレットが挑み、そして今度こそ倒した。
 ゆえに。かつて勇者王とそうしたように、ハイペリオンは新時代の勇者であるジェックたちローレットと共に再び空島を冒険する約束をしたのである。

 そして今、こうしてハイペリオンと共にアーカーシュの探索を行うローレット。
 ハイペリオンの狙いはやはり、精霊『アイル=リーシュ』である。
「アイルさんはこのアーカーシュに古くからすむ精霊で、私の母である先代ハイペリオンが小さな雛出会った頃から姉妹のように過ごしてきた方なのです。
 つまり私からすると、叔母のような存在にあたるでしょうか。
 はるか昔勇者王時代にお会いして以来、その後のことはわからないので……できればもう一度、お会いしておきたいのです」
「なるほど、ハイペリオンさまの気持ちはもっともだ。俺だって知り合いが一人もいないほど永く眠ってたら、そういう人を探したくなるだろうしな」
 カイトが納得したように頷き、クッキーをさくさくやっていたミストもさくさくしながら頷いた。
「そのアイルおばさん? に会いに行けばいいんだね。どこに行ったら会える? 住所わかる?」
「じゅう……しょ……?」
 小首をかしげるハイペリオン。まあないよなと同じくクッキーさくつきながら幻介が呟いた。
 よしんばあったとしても、記憶ごと欠落している可能性が大きい。
「行き方ならわかるのではござらんか? というより……ハイペリオン殿はアーカーシュのことをどれくらい覚えているのでござるか」
「恥ずかしながら、あまり……」
 弱った顔をするハイペリオン。幻介は仕方ないだろうと言って、横で黙って聞いていた澄恋に意見を求めた。
 澄恋は一呼吸をおくと、正座をして姿勢を整える。
「『あまり』ということは、少しは覚えているのですね。
 たとえば……そのアイル様に会いに行くためのルートなどを」
「「!?」」
 アーカーシュのことを、現地住民ですらよく知らない。発見すると自分の名前がついてしまうくらい未知の動植物や遺物があるこの島で、知識を少しとはいえ持っている存在は非常に貴重だ。
 ハイペリオンは、澄恋の問いかけに頷きでこたえた。
「はい。ある空域を越えた先に、アイルさんの住む庭園があるはずです。
 ですが、風の精霊が荒れ狂っており非常に危険な空域を通ることになるでしょう。
 飛行手段を持っていても、普通ならば越えることはできません」
「『普通ならば』?」
 ジェックはそう聞き返しながら、かつてハイペリオンと共に空で戦った時の事を思い出していた。
「そうです、ジェックさん。私の加護があれば、空域を突破することも可能になるでしょう」

GMコメント

 浮遊島アーカーシュ。それは未知の空島であると同時に、神翼獣ハイペリオンの故郷でもありました。
 残念ながら島の記憶は殆ど欠落してしまっていますが、アイル=リーシュという古代よりの精霊に会いに行く手段は覚えていたようです。
 まずはその手段に則り、『荒嵐空域』を突破しましょう。

●フィールドデータ:荒嵐空域
 荒嵐空域とはアーカーシュのレリッカ村からかなり離れた浮島群を越えた先にある空域です。
 そのエリアには1~5m程度の大きさの小型浮島が大量に点在しており、ヴェルクト・スウォームドという鷲型古代獣の群れが住処としています。
 今回はその発見者であり命名者でもあるルクト・ナード(p3p007354)さんにも同行をお願いしています。
 独自の飛行戦闘スキルがある場合はそれを利用できますが、後述する『神翼獣の加護』によってその他飛行手段でも今回は戦闘が可能になっています。

 戦闘方法としては、自力で飛行しながら敵と戦ったり、あちこちの小島を足場にして戦ったり、ハイペリオン様の背にのって戦ったりできます。

●本シナリオ限定ルール『神翼獣の加護』
・『神翼獣の加護①』
 このシナリオ内では、ハイペリオン様の加護が働いているため『全ての飛行手段』で空中戦闘が可能です。
 ジェットパックでの簡易飛行や箒などでの媒体飛行、普段ちょっと浮いてる程度の人でもそのまま戦闘飛行状態をとることができるようになります。
 今回はどの飛行手段を用いるかをプレイングに書くことで加護を受けて下さい。
(※特に飛行手段のない方は軍からレンタルしたジェットパックに加護をつけてもらえます)

・『神翼獣の加護②』
 今回はハイペリオン様の加護を受けているため、空中戦闘時のペナルティが大幅に軽減されています。

●エネミーデータ
・ヴェルクト・スウォームド
 浮遊島に巣をつくっている鷲型の古代獣です。
 体長は1m程度ですが群れを作って襲いかかる習性があり、かなり広域に散っているためこちらもバラバラに散って戦わなければ集中攻撃を受けてしまうでしょう。
 攻撃手段はくちばしや爪を使った直接的な物理攻撃に限定されます。

・チュレイサ
 超音波を放つフクロウ型の古代獣です。
 ヴェルクトスウォームドより少数ですが、攻撃手段が特殊なうえ個体としての戦闘力も高くちょっとタフです。
 この超音波には種類があり足止め、窒息、ショックなどのBS効果があります。

・ウィンドエレメンタル
 この空域を象徴するような荒ぶる風の精霊です。
 自然現象のようなものですが、倒すことで鎮めることが出来ます。
 小さい緑色の竜巻のような外見をもち、攻撃には出血系のBS効果があります。

・その他?
 この空域はまだ調査ができていないため、不明な古代獣が出現する可能性がなきにしもあらずです。

●おさらい
 このシナリオでは、空域突破のために大人数で挑んでいます。
 そして敵もまた大量にいるため、固まって突き進むと集中攻撃の危険が大きくなりすぎるでしょう。
 そのため大きく広がって散らばりつつ、それぞれで近くの敵を引きつけて戦うのがよさそうです。
 また、ハイペリオンの加護によって全ての飛行手段で戦闘が可能になっています。媒体飛行や簡易飛行でも今回はOKです。

●特殊ルール『新発見命名権』
 浮遊島アーカーシュシナリオ<Celeste et>では、新たな動植物、森や湖に遺跡、魔物等を発見出来ることがあります。
 発見者には『命名権』があたえられます。
  ※命名は公序良俗等の観点からマスタリングされる場合があります。
 特に名前を決めない場合は、発見者にちなんだ名が冠されます。
  ※ユリーカ草、リーヌシュカの実など。
 命名権は放棄してもかまいません。
  ※放棄した場合には、何も起りません。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • <Celeste et>ハイペリオンの帰還完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別長編
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2022年05月10日 22時05分
  • 参加人数20/20人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 20 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(20人)

セララ(p3p000273)
魔法騎士
リュカシス・ドーグドーグ・サリーシュガー(p3p000371)
拵え鋼
カイト・シャルラハ(p3p000684)
太陽の翼
イーリン・ジョーンズ(p3p000854)
天才になれなかった女
ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)
心優しきオニロ
武器商人(p3p001107)
闇之雲
バクルド・アルティア・ホルスウィング(p3p001219)
悠遠の放浪者
咲々宮 幻介(p3p001387)
刀身不屈
ゲオルグ=レオンハート(p3p001983)
天穹を翔ける銀狼
黎明院・ゼフィラ(p3p002101)
夜明け前の風
ジェック・アーロン(p3p004755)
ゲームチェンジャー
ルクト・ナード(p3p007354)
蒼空
ミスト(p3p007442)
ゴッドバード
わんこ(p3p008288)
犬の一噛み
澄恋(p3p009412)
花嫁キャノン
マグタレーナ・マトカ・マハロヴァ(p3p009452)
想光を紡ぐ
Я・E・D(p3p009532)
赤い頭巾の断罪狼
ユーフォニー(p3p010323)
ためらいには勇気を
風花(p3p010364)
双名弓手
樹龍(p3p010398)

リプレイ

●move me move go
 固まった雲を突き抜ける。白い線を引き、引き離し、空圧の膜をつくりながらも穿つように更に加速した影がある。
 空戦特化イレギュラーズ。『蒼空』ルクト・ナード(p3p007354)である。
「お呼びとあらばどんな空でも。空戦特化、遅れは取らん。機械翼の全力、見せてやろう」
 バックパックをパージ。高速航行モードから戦闘機動モードへとチェンジしたルクトは前方に広く展開したヴェルクト・スウォームドを視界に捕らえた。
 名前をつけたくらいだ。相手にするのは慣れたものである。
 両手に装備していたアサルトライフルをフルオート状態にして撃ちまくり弾幕をはると、回避しようと動き出したヴェルクト・スウォームドたちのド真ん中をわざと突っ切ってやった。
 はっとしたようにターンをかけるが互いに衝突しないようにバタバタとした軌道を取るヴェルクト・スウォームド。
「空でそんな隙を見せればどうなるか、わからないお前達でもあるまいに」
 愚かさを笑いなどしない。空で戦う者はみな、落ちれば同じなのだ。
 だから手向けるべきは――。
「『MRBL』――発射」
 ARグラス型の戦術ディスプレイの右下に『MRBL_FIRE...OK』のテキストが流れたかと思うと、ルクトの装備していたミサイルポッドから多目的炸裂弾頭(Multi-Explpsive Bullet Launcher)が一斉に発射される。バタついていたヴェルクト・スウォームドたちがまとめて爆発に飲まれる。
「流石専門家ね」
「……そうでもない」
 ドレスの特殊効果によって飛行する『天才になれなかった女』イーリン・ジョーンズ(p3p000854)が声をかけてきたので、ルクトは髪をはらって首を振った。
 フッと口の片端だけで笑うイーリン。
「私たちはとにかく突破を目指して突き進む!
 ガス欠して足が止まったらそのうち後続が来るでしょ!
 浪漫に道理は通じない、行くわよ特攻野郎ども!」
 イーリンはお決まりの言葉を叫ぶと、さらなるヴェルクト・スウォームドの一団めがけて突っ込んだ。
「『神がそれを望まれる』」
 イーリンの呼びかけによって集まった4人+2人のチームはハイペリオンを中心とした荒嵐空域突破部隊の中でも最前線での戦闘を目的としている。
「固まりすぎるのは問題だけど、連携した一定人数で突っ込めば敵の戦力も計りやすいわ」
 イーリンはローブ全体で風を纏うかのようにくるりと回転すると、ゴーグルを装着して魔力のボードにヒールをひっかけグラインドする。
「アイ、キャン、フライ!」
 まるで空にできた気流の波にのるかのようにリフをきめるイーリン。ヴェルクト・スウォームドたちに魔力のラインを描くかのように穿つと、一緒に飛んでいた『帰ってきた放浪者』バクルド・アルティア・ホルスウィング(p3p001219)が鋼の義手で敵へラリアットを叩き込んだ。
「放浪は今この時だ! さあ! 荒嵐空域の向こう側は俺たちが突き抜けるぞ!
 APが空っ穴になるまで止まるなんてことはしねぇぜ!
 ――悠遠の果にこそ俺の放浪がある!」
 ハイペリオンの加護と鉄帝軍から借りたバックパックの力で空を飛ぶ。前方の群れがわずかに広がろうとした所で、イーリンから『やれ』の合図がきた。
 バクルドはにやりと笑い、義手の手首部分をぱこんと折るようにして中身を晒した。いや、中身はない。筒だ。それも砲弾を放つための筒である。
 肘部の紐を引っ張ることで発射する砲弾。ヴェルクト・スウォームドたちの中心で爆発したそれは、大量のヴェルクト・スウォームドを墜落させるに至る。
「行くぜぇ、付いてこれるもんなら付いてきてみやがれってんだ!」
 手首を戻し、今度は義手からブレードを展開して斬りかかるバクルド。
 と、そこで……。
『こっちの部隊がそちらに合流しようとしてマス! 回り込んで止めるので、止めきれなかったらフォローよろしくデス!』
 ハイテレパス通信が入った。『犬の一噛み』わんこ(p3p008288)のものだ。
「コイツは無謀じゃなく勇気デス!
 特攻魂見せてやろうじゃありマセンカ、でも墜落だけは勘弁な!
 飛行は借りたジェットパックで行いマス。ジェットの限り飛ぶぜ!」
 バックパックによって飛び回りながら、わんこは両手のグローブから空気弾を乱射。
 ショットガンのような威力をうけて墜落するヴェルクト・スウォームドの一方、多様な軌道を描いてわんこを集中的に狙おうと迫るヴェルクト・スウォームドたちもある。
 が、それを『闇之雲』武器商人(p3p001107)が許すはずがなかった。
「新しい冒険とくればやはり、最前線でモノガタリを見たくなるものだよねぇ。
 古代精霊に会いたい?未知の最前線を往きたい?いいとも――『それをキミが望むなら』」
 『麗しの覇王』ギネヴィアに跨がり割り込んだ武器商人がヴェルクト・スウォームドの集中攻撃を受ける。
 ローレットの初見殺しこと武器商人を、たかだか群れを成した程度のことで倒せるものではない。破壊したそばから言葉に出来ない何かによって身体を補完され続ける武器商人。一度戦闘し能力を把握しているヴェルクト・スウォームドたちなど相手ではないのだ。
 そして、防戦一方になることもまたない。
「助太刀致す」
 『刀身不屈』咲々宮 幻介(p3p001387)がリフボードに乗り、まるで熟練サーファーのごとく気流をするどくとらえ加速すると、武器商人へ群がっていたヴェルクト・スウォームドを『命響志陲 ー黎明ー』の一閃によって斬り捨てた。
 いや、一閃と表現するのはあまりにも言葉足らずだ。
 幻介はすぐさまボードの先端をつまむようにして縦向きにカットバックすると更に一閃。ターンからターンへと幾度も続けることで複雑怪奇な光のラインがヴェルクト・スウォームドたちを襲い、そして思い切り飛び込んだわんこのパンチが最後のヴェルクト・スウォームドの顔面を砕いた。
「フウ……」
 息をつくわんこ。が、すぐにバルクドから通信が入った。
『デカいヤツが現れた。応援たのむ!』
 振り返ると、ヴェルクト・スウォームドを何倍にも巨大化させたような古代獣が出現。バルクドたちへ襲いかかっていた。
「武器商人が来るまで耐え――」
「やァやァ。呼んだかい、ホルスウィングの旦那」
 自分達の担当が(幻介の遊撃のおかげで)すぐに片付いた武器商人たちが即座に参戦。
 巨大古代獣が光の弾を大量に出現させ、それらをホーミングしてバルクドに放つが割り込んだ武器商人がそれを全て受けた。受けきった――次の瞬間、武器商人を光の槍が貫いた。武器商人の復活能力を阻害する力が槍には込められている。
「ヒヒ――もう対応したのかい。賢いねえ」
「この程度! ベアトと比べたら凪みたいなもんよねぇ武器商人!」
 うっかり撃墜されかけた武器商人だが、イーリンが掴んで引っ張り上げることで持ち直した。
「冠位魔種と比べるのは流石に可哀想じゃあないかい、ジョーンズの方?」
「わんこ、ルクト、撃って!」
 不敵に笑いながらも叫ぶイーリン。
 わんこは両手を揃え、ルクトは全ての武装を展開し、そしてバルクドも腕の大砲を解放して一斉発射。
 幻介が突っ込んで最後に首をはねたことで、巨大古代獣を撃墜した。
「かなりダメージをうけたで御座るな。拙者はハイペリオン殿の護衛に戻るで御座る。司書殿、武器商人殿。『Aチーム』は暫くそこの小島で休憩するで御座るよ」
 ハイペリオンの加護によってペナルティをかなり軽減されているとはいえ、激しくダメージをうければ墜落してしまうものである。
 わんこはその護衛として残ることにしたようで、武器商人が小島へ着地したのを確認して手を振った。
「巨大古代獣の実力はわかりマシタ。この情報をハイペリオンサマたちに持ち帰ってクダサイネ!」
 了解、と敬礼のまねごとをする幻介。
 わんこもそれを返し、互いに笑った。

●クロスエンカウンター
「やったーーーハイペリオン様だアーカーシュだー!
 後でハイペリオン様をもふもふすぅーしたい……!」
 一方こちらは『希う魔道士』ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)。ハイペリオンからわずかに離れた位置でウィンドエレメンタルと戦っていた。
 風が刃となって次々と斬り付けてくるのを、リトルワイバーンの背をトンッと軽く叩くことで素早く回避させた。
「いくよー陸鮫! リトルワイバーン! 量産型ハイペリオン様!
 空飛んで空域突破してハイペリオン様と皆と庭園行くんだー!」
 思い出されるのは、ハイペリオンのそばを離れるときに『よろしくお願いしますね』とあのシンプルな顔でニッコリと微笑みかけられたことだ。
 あのとき『あとでもふもふしていいですか?』と控えめながら尋ねたところ、なんてことのない様子で『どうぞ』と微笑んでくれたものだ。
 おもわず「母性……」とか呟いてしまったヨゾラである。
「必ずハイペリオン様たちを守ろう!」
 ヨゾラはきゅぱっと鋼糸を展開させると、直接斬りかかろうと襲いかかってくるウィンドエレメンタルめがけて放った。
 どうやら見事にウィンドエレメンタルの核をとらえたようで、緑色の竜巻めいた物体がかすみ、そして消えていく。
 荒れていた精霊もヨゾラの攻撃によって怒りの因子が消え、おとなしくなってくれたのだろう。
 そこへ更なる攻撃を加えてきたのはチュレイサというフクロウ型の古代獣だった。
 ホォウと超音波を放つチュレイサの攻撃を防御していると――巨大なぬいぐるみが突っ込んできた。
 否、どらねこさんのぬいぐるみに跨がった『未来を願う』ユーフォニー(p3p010323)が突っ込んできたのだ。普通に生きてて見られる光景ではない。
「ハイペリオン様、ご加護をありがとうございます。この力で……領域を突破しますよ!」
 おー! と拳を突きあげるようにしてさけぶユーフォニー周囲をくるくる飛び回っていたドラネコ型ドローン『AIMIA(エイミア)』がディスプレイにぱちっと目を見開いたような顔文字を浮かべたかと思うと、ユーフォニーにむけて『周辺警戒! 包囲されています!』と文字がスクロールした。
 はっとして広域俯瞰モードに視点を同調させると、確かにチュレイサたちが集まっているのが分かる。
「あなたたちの場所に踏み入ってごめんなさい。
 ハイペリオン様の気持ちを考えたら……アイル様にお会いしてほしいんです
 だから……」
 こうなっては仕方ない。ユーフォニーはしっかりぬいぐるみに捕まると加速。風を切る感覚と靡く髪が、こんなときだというのに胸を高鳴らせる。
 そしてくるりと180度反転をかけると、ユーフォニーは弓を構えた。
「ごめんなさい!」
 既につがえていた魔法の矢が満を侍して放たれる。
 ユーフォニーの思い同様まっすぐな矢が、チュレイサたちを貫いていき、そして彼らを墜落させた。どこかの浮遊小島に着地して傷を癒やしてくれるだろうと信じ、ユーフォニーは再び進路をとる。
「気になること、もの、たくさんあります。この世界を、もっと私は……」

「わーい。ハイペリオンだ! ふわふわで可愛いよね。大好き! ドーナツ食べる?」
「おいしいです」
 『荒嵐空域』に入って尚テンションがかわらない『魔法騎士』セララ(p3p000273)。
 彼女がストロベリーチョコドーナツを差し出してやると、ハイペリオンはそれをぱくついてにっこりとした。
 えへへーと笑い返すセララ。いつものウィングブーツではなく、今回は魔法の服から展開した半透明な翼で飛行していた。
「他にもねー、ホワイトチョコとミルクチョコのドーナツが……あっ!」
 鞄の中をごそごそしていたセララだが、ちらりと見た側面方向から荒れる空気の塊が球状をとって接近してくるのが見えた。空気の塊といってもグリーンの霧めいた色がついているのでパッと見て分かる。ウィンドエレメンタルだろう。
「おやつはあとでね。いってきまーす!」
 セララは勢いよく飛び出すと、ハイペリオンの加護によって推進力を強化した翼を羽ばたかせて急加速。ウィンドエレメンタルの放つ風の刃を聖剣ラグナロクで切り裂くように突破する。
「風の精霊さん、こんにちわ! キミは何で荒れているの? 困っていることがあるなら言ってくれれば力になるよ」
 更なる斬撃が飛んでくる。どころか、複数のウィンドエレメンタルが集合し集中攻撃を仕掛けてきた。
 話し合いはできそうにないと察したセララは盾を翳して防御を固め、その後ろでクラスカードを抜いた。
「セラフインストール!」
 セララは白い魔法少女ルックへチェンジすると、あえてウィンドエレメンタルの中心へ突っ込みギガセララブレイクを発動させた。
 というのも、仲間に回復を任せておけるメンバーがいるからだ。
「いいね、実に冒険らしくなってきたじゃないか。
 この嵐を超えた先に何があるのか……期待に胸が膨らむよ」
 不敵に笑う『夜明け前の風』黎明院・ゼフィラ(p3p002101)。
 義手と義足に力を巡らせると、魔力の翼を展開。ハイペリオンの背から飛び上がり、乱戦状態になりつつあるセララまわりめがけて両手を翳した。
「ほら、回復するよ。あと一息だ、頑張ろうじゃないか」
 パルスランチャーのごとくドンと発射された治癒のエネルギーがセララやそのまわりで戦う仲間達へとぶつかり、遠隔充電の如くかれらの魔力を回復させていく。
 とはいえ敵の数は膨大である。時折突破してくるウィンドエレメンタルがいるようで、ゼフィラは一時治癒魔法の手を止めて右腕を振った。それまで治癒の力を発していた腕は瞬間的にラインの色を赤く変え、手のひらにぱっくりと穴のようなものをあけた。
「悪いがここは通行止めだ。……なんて、台詞が陳腐だったかな?」
 苦笑しながらホーミング魔力弾を連射。接近してくるウィンドエレメンタルがみるみる崩壊し、そして消滅していった。

「ボクね、ハイペリオン様が、叔母様に会いに行くよ!って聞いた時、あの方に会いに行ける身内がいて良かったって、すごく思ったんだ!」
 ハイペリオンの背にのって、『拵え鋼』リュカシス・ドーグドーグ・サリーシュガー(p3p000371)はその白い背中をそっと撫でた。
「長いお眠りから起きたのに、昔からの知り合いが誰もいなかったら寂しいもの」
「そうですね……ですが、本当に会えるかどうかは分からないのです。まだ存在してくれているかも」
 ハイペリオンはそう返したが、表情や声色に暗いものはない。可能性を理解しつつも再会を信じている、ということなのだろう。
 その気持ちがわかって、リュカシスは『うん!』と力強くこたえた。
「ハイペリオン様が無事にアイル様に会えるように全力でお手伝いするよ!」
 ぴょんとハイペリオンの背からジャンプすると、加護によって纏った風で空を飛び始める。
「絶対行くぞ、アイル様の庭園! 嵐の空を越えましょう!」
 ジャケットの胸元をなでる。ハイペリオン様の加護をうけたこのジャケットは、同時に『イーさん』の加護もあるに違いない。彼が贈ってくれた想いが、きっとあるはずだ。
 そんなリュカシスへ襲いかかるのはヴェルクト・スウォームド。大鷲型古代獣の群れである。
 リュカシスはかかってこいとばかりに腕のマシンをガチャガチャ鳴らすと、自ら突っ込み最初の一体を思い切り殴りつけた。と同時にインパクト部分が爆発。周囲が激しい音と光に包まれる。
 それにひかれて集まってきたヴェルクト・スウォームド……だが、集中攻撃がリュカシスに届くことはなかった。
 間に割り込んでいた『天穹を翔ける銀狼』ゲオルグ=レオンハート(p3p001983)が両腕をクロスするように構え、攻撃を一手に引き受けていたのだ。
 結構なダメージが蓄積したはずだが、破壊されたのは彼のジャケットとシャツのみ。
 豪快にそれらを脱ぎ捨てると、ゲオルグは無傷の(そして古傷だらけの)上半身を堂々と晒した。
「ハイペリオンの故郷とも呼べる場所、アーカーシュ。
 一体何が眠っているのだろうな。
 もしかしたらいるのではなかろうか。
 ……ハイペリオンとはまた違ったもふもふした存在が!」
 カッと両目を見開くゲオルグ。
 彼の脳裏を駆け抜けるのは、ふわふわな羊さんやまるっこい猫やひよこに囲まれスイーツをつつく甘く優しい思い出たちである。
 優しい思い出は、人を強くする。思い出こそが、彼に蓄積したはずのダメージを一瞬にして治癒してしまったのだ。
「リュカシス、私の後ろに」
 そう言いながらスッとポケットから銃を抜くと、特殊弾レゾナンスウィルを親指でビッと弾くように飛ばした。ヴェルクト・スウォームドたちの間に飛んだレゾナンスウィルを銃撃によって撃ち抜くと、氷の魔術が爆発。周囲を荒れ狂う。
 それらによってヴェルクト・スウォームドは墜落していくが、ゲオルグはヴェルクト・スウォームドを見下ろす……のではなく、ハッと前方へと振り返った。
「何かが来る……巨大な古代獣だ。備えろ!」

●太陽の翼
 甲高い、空を抜くような鳴き声だった。
 太陽が一瞬隠れ、飛んでいたハイペリオンがハッと目を瞬かせる。
 それは一度ハイペリオン給油(接近しておなかの辺りに顔を埋めて深呼吸することをさす)していた『太陽の翼』澄恋(p3p009412)も同じである。
 ばっと顔をのぞかせると、確かに太陽を何かが覆っていた。巨大な鳥だろうか、鷲の特徴をもったそれは、これまで戦ってきたヴェルクト・スウォームドを遥かに巨大化させたような古代獣であった。
 天空でくるりと宙返りをかけ、急降下によって襲いかかってくる。
「肺をハイペリオニウムで満たしたわたしを舐めないことです!」
 ハイペリオンと位置を入れ替わるように上空へ飛び上がると、自らもまた宙返りをかけ急降下してきた巨大古代獣へブライダルムーンサルトキックを繰り出した。ハイペリオンを初めて見た日に割と偶然繰り出した技の、ある意味の完成形である。
 衝撃。爆発でもしたかのように澄恋は吹き飛ばされ、空中を回転しながらとぶ。
 対する巨大古代獣も突進の軸をずらされたようで大きなカーブを描き、ハイペリオンから一度離れていく。
「今の突進……明らかにハイペリオン様を狙ったものでした」
「だ、だね!」
 くるくる飛んできた澄恋をキャッチした『ゴッドバード』ミスト(p3p007442)。
 翼を再びばっと広げると両手にグーを作って身構え、大きく弧を描きながらこちらへの再突撃を狙う巨大古代獣をにらむ。
「ヤデ……」
 緊張に汗をかくトリヤデさんに笑いかけ、振り返った。
「トリヤデさん、ペリヤデさん、はぐれないように気をつけてね!」
「「ヤデ! \(╹V╹)(╹∨╹)/」」
 おてて繋いでバンザイしてみせるペリヤデ&トリヤデ。
 再びの接近。今度は前回よりもやや減速しているとは言え、周囲に圧縮空気を纏っているらしく頑強な膜状の空気が目に見えるようだった。
 例えるならダンプカーが突っ込んでくるような状態である……が。
「まけないよ!」
 握りこぶしを硬くして、腕をぐるぐる回したミストはかかってこいとばかりにハイペリオンの前に出ると巨大古代獣めがけてパンチを繰り出した。
 ダンプカーの例えで示した通りに凄まじい圧力がかかる……が、ミストとて腕を振り回すだけの17歳ではない。そのまま思い切り振り抜き、拳にちょっとだけ血がついたのを無視して『わっふー!』と叫んだ。
 今度は吹き飛んだミストを澄恋がキャッチするばんだ。
 巨大古代獣はまたもハイペリオンを外れ、弧を描きターンを始める。
「澄恋さん、ミストさん! ご無事ですか!」
 ハイペリオンがどこか心配そうに呼びかけてくるが、ミストは拳をさすってえへへと笑った。
「大丈夫。確かにちょっとしんどかったけど……まだまだいけるよ!」
 なんといってもかみさまが後ろで見ているのだ。かっこわるい姿は見せられない。
 それに……。
「皆で飛んでいくのは、ちょっと楽しいんだ」
 再びの突撃。今度は先ほどのように打ち払える自信は無い。ダメージも随分かさんでいるようだ。
「ごめんね。ナワバリに入られて怒ってるのかな……けど、今はここを通らなきゃ」

「今度はこっちのばんだ! ハイペリオンさまをお守りするぜ! ハイペリオンさま親衛隊として!」
 今初めて誕生したハイペリオンさま親衛隊の隊長、『太陽の翼』カイト・シャルラハ(p3p000684)は翼を大きく羽ばたかせると巨大古代獣めがけてこちらから突進をしかけた。
 古代獣の周囲に光の球体が多数出現。先行部隊が確認したものと同じだ。それならば……とカイトは殺到する光線を次々に回避し突破。
 最後は螺旋状の空気を描くバレルロールによって回避すると、抱えていた三叉蒼槍を巨大古代獣へと突き立てる。
 決定的な打撃ではない。いや、そのつもりはもとよりない。
 必要なのは……。
「古代獣、残念だったな。俺に目を奪われてた数十秒で、アンタの負けは決まったぜ」
 ニヒルに笑うカイト。その瞬間――大量の煙が古代獣の周囲を包んでいたのがわかった。それまで一切そこに無かったかのように、本当に今この瞬間に気付いたのである。
「澄み切った風のにおい。そっか、これが荒嵐空域なんだね」
 囁く『赤い頭巾の断罪狼』Я・E・D(p3p009532)が、カイトを隔てた向こう側に浮いている。
 パッと右手を翳すと同時に、周囲の煙が一斉にマスケット銃へと変化した。
「当たり前だけどハイペリオンさんが落ちたら加護も消えちゃうし、ここが空飛ぶ移動本部で最終防衛ラインだよね」
 がんばろー。そう言うと、Я・E・Dの表情がほんの少しだけキリリとなった。
 掲げていた手を……下ろす。
 一斉に発砲される架空のマスケット銃。
 銃声が人繋がりとなり大爆発のごとき轟音が鳴ったかと思うと、古代獣がケホっと黒い煙を吐く。
「む、ここが見せ場か!?」
 それまでハイペリオンの背にのって様子を見ていた樹龍(p3p010398)がぴょんと飛び上がり、鉄帝製バックパックを点火。ハイペリオンの加護をうけ推進力を獲得すると、両腕をヒコーキのように広げて飛行した。
「まぁ、しかし、こうやって、東洋龍みたいに飛んどると竜種になった気分で最高じゃな! ハイペリオン様々じゃの! 気持ちいい!」
 樹龍の機動はひとり一斉砲撃をうけた古代獣を取り囲むようにぐるぐると周り、軌跡をなぞるかのようにぱぱっと葉の幻影が残されていった。
「今じゃ!」
 最後にぐるんとアイススケート選手のごときスピンをかけると、古代獣をびしりと指さしてストップした。
 葉の幻影たちが一斉に爆発。古代獣を包み込んでいく。
 カイトをわりとフツーに巻き込んだが、カイトは樹龍の攻撃をほぼ確実に回避できる腕の持ち主なので信じてGOである。
 結果として、本当に古代獣だけを蒸し焼きにするような形でダメージを押しつけることができた。
 そして最後は……。
「大丈夫、見えてるよ」
 ハイペリオンの背にのった『神翼の勇者』ジェック・アーロン(p3p004755)が、ぴったりと古代獣の頭に狙いをつけていた。
 ライフルに拡張した高倍率スコープ。中心点を示すマークは、あろうことか古代獣の眼球をとらえていた。
 揺れやその他全てのものを計算にいれ、トリガーを引く。
 放たれた弾頭は初めからそうなることが決まっていたかのように古代獣の眼球を抜け、脳をかき乱し、その先の頭蓋骨にめり込むかたちで止まった。
 カハッと血を吐いて墜落していく古代獣。
 ジェックは被っていたガスマスクを脱ぎながら立ち上がった。
 風が吹き抜ける。かいだことのない澄んだ匂いだ。いや……前に何度か経験したことがある。
「キミの背に乗って戦う時は、いつもこんな匂いがするね。ハイペリオン」
 見下ろすと、ハイペリオンはゆっくりと羽ばたきながら笑った。
「以前に乗ったときは、私をアーカーシュへと案内してくれると言っていましたね」
「そうだったかな? うん、そうだったかも」
「約束を、守ってくださったんですね。大地の子……いいえ、新世代の勇者ジェック」
 ジェックは照れたように笑ってほほをかいた。
 その理屈でいったらキミも勇者でしょ、なんていいながら。
「おっと、まてまて。この先は少し危険じゃ」
 前を飛んでいた樹龍が手をかざしてハイペリオンを止めるような動作をした。
 もう一方の手は耳をすますような形であてられ、空の音を聞いているようだった。
「風が暴れておる。この先を阻むように……」
「本当だ。ちゃんとした飛行能力があっても、ここから先には行けそうにないね」
 Я・E・Dが同じように音を聞いて、ついでにすんすんと鼻を鳴らして確かめている。
 カイトも同じ意見のようで、ムムムと顔をしかめていた。
「多分、アーカーシュまで来るときに使った飛空艇でも無理だぜ。嵐の壁に耐えられずにバラバラになっちまう」
 この先にハイペリオンさまの親類がいるのに……と唸るカイト。
 だが、ジェックだけは……。
「ハイペリオン。神翼の力……もう戻っているんでしょ」
 その言葉にカイトたちが一斉に振り返る。
 ハイペリオンは頷くようなしぐさをしてから、翼を再び大きく開いた。
「見ていてください。ある意味私もまた、アーカーシュの鍵であったということを」

●幕間:空と精霊の大冒険
 20人あまりのローレット・イレギュラーズが、それぞれの方法で空に浮かんでいる。
 彼らの視線は一様に『嵐の壁』に向いていた。
 近づくまで気付かないほど透明な、しかし近づいてしまえば嫌でも気付かされるそれは誰かの示した拒絶の意志のようであり、あるいは誰かを慮って敷かれたベビーフェンスのようでもあった。
「古代人の魔術じゃろうか? それとも……」
「少なくとも俺たちがこれ以上先に行けないのは事実だろうな。大きく迂回してみたが、ずっとこの壁が続いてるみたいだ」
 樹龍とカイトがしげしげと嵐の壁を観察している。

「そういえば精霊のアイルさんってどんな人なの? ハイペリオンさんの叔母さんだったら、やっぱり鳥型の人とか?」
 Я・E・Dがそういえばといった様子で問いかけ、お土産に買っておいたハイペリオン饅頭の紙袋を翳した。
「いいえ、アイルさんはこの島で産まれた精霊です。そういう意味では、私と同じですね。もとはアイビーの花だった方なんです」
「お花……」
 ミストが『ワタシアイル』て喋るアイビーの花を想像して、それを自分で(両手で)わしゃわしゃ消した。
「もしかして精霊種(ヤオヨロズ)だったりするんでしょうか?」
 澄恋が想像したのはカムイグラにすまう多くの精霊種たち。あるいは四神のような神霊たちだ。
「どうでしょう。精霊種という方々が形をもったのはつい最近のことだと聞いたことがありますので」
 少なくとも『銀の森の精霊種』は最近ローレットが関わりをもったことでやっと人類種に至ったという。ハイペリオンの知るアイルの記憶は遙か昔は勇者王時代のものなので、仮に同じような変化があったとしても精霊の姿しか知らないはずだ。
「けど、ここを越えられるんですか?」
 リュカシスが心配そうに言うと、ハイペリオンが羽ばたきながらゆっくりと上昇していった。
「大丈夫です。皆さんの集めた奇跡の力は、私の記憶と力を大きく取り戻してくれました。この嵐を取り去ることだって――」

 \\\\\(╹v╹)/////

 大きく翼を掲げたハイペリオン。
 と当時に、それまでの嵐が嘘のように消え去った。
「どうです? 私もなかなかやるものでしょう」
 少しだけ自慢げなハイペリオンに、ゲオルグが『素晴らしいもふもふ力だ』と変な方向から拍手を送った。
「早速、嵐の先へ行くことにしよう」
「どんな冒険が待ってるのかわくわくだね!」
 ゼフィラとセララがいち早く飛んでいき、静かになった荒嵐空域の先へと上昇していく。
「ハイペリオン様の加護とは、素晴らしいものですね」
「確かに。ふかふかな上に嵐も取り去るとは」
 風花とマグタレーナが後に続き、他ノメンバーもハイペリオンと一緒に領域の先へと飛んでいった。
「見てください! 小島がありますよ! さっきまでは全然みえなかったのに」
 ユーフォニーが指をさす先には、確かに小島があった。
 花の咲き乱れる、家を何件かたてられる程度の小さな島だ。
 ヨゾラが(花を踏み潰さないよううに草の上に)降り立ってみると、花の良い香りがした。
「領域の外からは見えないように隠されていたのかな」
「つまりは結界、ということでござろうか。侵入を阻み、なおかつ見えぬようにとは……」
「誰かがここを訪れることを予期していたんデスかね」
 幻介とわんこも同じように降り立つと、バクルドと武器商人がそれぞれ周囲の探索を始めた。
 といっても、見回して花にそっと触れるといった程度なのだが。
「なあ、この花見たことあるか? 似たようなのは見たことがあるんだが……」
「アイビーに似ているねえ。けど……ヒヒ。後でここの人に言って、一輪だけ持ち帰らせてもらおうねえ」
「どうやら、『ここの人』のおでましみたいよ」
 腕組みしてふんわり浮かんでいたイーリンが声をかけ、顎で前方を示す。
「――!」
 ルクトは本能的に(そして感覚的にも)新たな存在が出現する気配を察し武器をとろう……としたが、それをやめた。
 現れた存在の優しげな表情と、そして穏やかな立ち振る舞いに敵意をまるで感じなかったのだ。
 白いドレスと木の杖。
 長い緑髪には葉や花がまとい、それは確かにアイビー種の花であった。
「あなたが……アイル=リーシュか」
 女性は閉じていた目をゆっくりと開き……。
「久しいですね、ハイペ――」
 開いた目をぱちくりとして、周りの人々を一度見回してから、もう一度ハイペリオンを見た。
「その姿は、一体?」

 皆思い思いに過ごすなか、ハイペリオンとアイルは並び、広い空をみつめている。ジェックもそのそばに立っていた。
「本当に、久しぶりですね。勇者様をのせてこの場所へ帰って以来でしょうか……」
 そう語りかけるハイペリオンの白いふかふかな背中を見つめ、ジェックは沈黙した。
 ハイペリオンは幻想の地に危険な古代獣を封印するために己もまた封印されていたという。
 それを親しい人にも説明できないほど切迫した状況だったのだと、想像させられる。
 だから、問いかけてみることにした。
「長い間、ハイペリオンに会えなくてつらかった?」
「……どうでしょう」
 肯定と否定の中間にあるような声をだして、アイルは顎に指をあてた。
「わたくしは、じっと待つことは得意でしたから……。それに、人々は誰しも、いずれ去って行くものです」
 別れというものに深い感情をもっていないのか、それとも諦観を持っているのか。
 ジェックには計りかねたが、『誰しも』というワードはひっかかった。
「他にも去った人達がいるの?」
「ええ。この島にもいたのです。この島の人々はもうずっと前に去ってしまいました」
「この島に人はいるみたいだけど」
 ジェックは下の方を指さした。レリッカの村を示している。
 が、アイルはピンときていない顔をしたあと『ああ』と穏やかに言った。
「最近アーカーシュの縁に住み着いた方のことでしたか」
「最近……」
 結構な世代交代がされているはずだが……とジェックは思ったが、ハイペリオンが苦笑ぎみに補足してくれた。
「長く生きる精霊は時間感覚がゆるくなりがちなのです。人と接していない暮らし方をするとなおさら」
 つい昨日くらいにあった人が気付いたらおじいちゃんだったなんてこともザラらしい。同一人物だと思ったら孫、みたいなケースも。アイルは特にものごとを先延ばしにし過ぎる性格をしているらしく、『あとでやっておきます』と述べた事柄が十数年放置されるなんてこともあったらしい。母(先代ハイペリオン)からの又聞きだが。
 アイルはうつむき、少しだけ苦しそうな顔をした。
「レリッカ村と言うのですね。あの人々の間に多くの犠牲があったことは……知っていました。
 けれど……わたくしが誰かの力になるなんて、きっとおこがましいのですわ。あの時、そうだったように」
 こんどこそ、諦観だ。
 けれどアイルの言葉はそこで終わらなかった。
「ねえ、ハイペリオン。あなたは……手を取り合ったのですね」
 アイルが振り返る。ハイペリオンの周りにはいつの間にか人々があつまり、中には顔を埋めて深呼吸する澄恋なんかもいた。
 実際、ハイペリオンは神霊という存在にありながら異常なほど人々と手を取り合っていた。
 共に古代獣と戦っただけではない。ハイペリオンランドを開いて毎日人々と語り合い、一緒にお菓子を食べて踊って星空を見て眠った。まるで友達のように過ごす姿は、あるいは勇者王時代の過ごし方をそのまま広げたかのようだと……ハイペリオンは語ったことがある。
 ハイペリオンは微笑み、アイルを見つめる。
「アイルさん。もしよければ、手伝ってくださいませんか。かつては出来なかったことでも、この人達となら……出来る気がするんです」
 見つめるハイペリオンのつぶらな瞳に、アイルは小さく頷く。
「わたくしにできることがあるなら、手を貸しましょう。
 狭い世界は、ただでさえ短い人の命を、容易に奪い去ってしまいます。このままでは、いつかまた誰も居なくなってしまいますもの」
「アイルさん……」
 そしてアイルは、遠い空を見上げた。
「まずは、この島の脅威に向き合わなければなりませんね。
 『狂ってしまった精霊達』を、沈めなければ」

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 荒嵐の領域を越え、アーカーシュに新たな領域を発見しました。
 アーカーシュの謎へと迫り、そして未来を救うための新たなる大冒険が幕を開けます。

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