シナリオ詳細
<Celeste et>美しき湖の底には
オープニング

●美しき湖
さわさわと、森の木々が揺れる。
いや、森……というには少々木の量が少ないだろうか?
しかしその場を表現するならば、それが一番ふさわしいだろう。
浮遊島にありながら「地上」を強く感じさせる、そんな場所。
しかし天の近さは此処が間違いなく空の上であることを思い出させる。
それでも此処が地上を思い起こさせるのは、その空気にあるだろう。
深い森の奥、静かな高原の草地。そういったものを思い起こさせる、冷たく澄んだ濃い空気。
この場所には、それに相応しい美しい泉がある。
青く深く、サファイアを思わせる青い湖。
その水底を見通すことはできず、ただ静謐な「青」だけがそこにある。
光の具合でそうなっているのだろうと思わせるその湖は幻想的な美しさを誇っており……そのせいだろうか、そこに近づくことを阻む古代獣もまた、存在していた。
●浮遊島アーカーシュへ
鉄帝国南部の町ノイスハウゼンの上空に、伝説の浮遊島『アーカーシュ』が発見された。
さらにはアーカーシュから、三人の少年少女達が降りてきたというのだ。
彼等は百年ほど昔に、行方不明になり全滅したとされる、大規模調査隊の子孫だった。
鉄帝国の政治家『歯車卿』エフィム・ネストロヴィチ・ベルヴェノフは、ただちに新生調査隊を結成。
興味を持った軍部の協力を取り付け、また凄腕の冒険者達が集うギルド・ローレットへと、大規模な調査依頼を発行したのだった。なんといってもローレットのイレギュラーズは、覇竜領域デザストルにて『騎乗用のワイヴァーン』を入手しているのだ。大空を目指す冒険において、この上なく頼りになる存在というわけだ。
そして今回の調査もまたエフィムからの依頼であった。
存在が確認されている湖……サファイアレイクへの道を阻む古代獣の排除。
それが今回の依頼内容だ。
サファイアレイクに行く為には木々に囲まれた道を行く必要があるが、それはサファイアレイクを縄張りとする古代獣が「結果として」整備した道でもある。
その古代獣の名前はビルメス。
羊のような姿を持つ4m程の怪物であり、電撃をたっぷりと蓄えた羊毛で身体を覆っているのだという。
近づくものを電撃で粉砕し、離れたものも電撃を飛ばし狩るのだという。
常に帯電しオレンジ色に発光するその姿は『電光獣』とも呼ばれ、見たらそっと離れるように伝えられるほどには好戦的だ。
その周囲にはスモールビルメスと呼ばれる個体も10体程いて、それで1つの群れとなっているようだった。
能力はビルメスほどではないが、ほぼ同じ。つまり厄介極まりないということだが……排除しなければ、サファイアレイクには辿り着けないだろう。
ビルメスたちさえ排除してしまえば、サファイアレイクは一時的かもしれないが安全な場所となる。
本当に美しい場所なので、此処に辿り着いたご褒美としてキャンプやバーベキューを楽しむのも良いかもしれない。
それが許されるし、そうすべきである。
それもまた、依頼主たるエフィムからの言葉なのだから。

- <Celeste et>美しき湖の底には完了
- GM名天野ハザマ
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2022年04月29日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
●サファイアレイクへ
「伝説の浮遊島『アーカーシュ』! 果て無き冒険スピリッツ! 溢れる浪漫! 大好き! よーし皆がんばろー!! むん!」
『正義の味方』ルビー・アールオース(p3p009378)の気合満タンな声が響く。
浮遊島アーカーシュ。本格的な調査が始まったその島の上に、『案外常識人』キドー(p3p000244)たちはいた。
空の上でありながら、しっかりと「大地」を踏みしめている。
その不可思議な感覚を感じながら、『いにしえと今の紡ぎ手』アリア・テリア(p3p007129)とキドーは感心したような声をあげる。
「こ、ここが……噂に聞いたアーカーシャ! うおお、本当に天空島だ! ロマンだ! ファンタジーだ! しかも湖あるんでしょ? そういえば、湖の底が抜けたら水はみんな下に行くのかな?」
それは分からない。湖の底が抜けた時、水はそこに残るのか下に落ちるのか。
そこに残るのだとしたら、その「残った水」を突き抜けたものは一体どうなるというのか?
分からない。あまりにも分からないことが多すぎる。
しかし、あるいはそれを浪漫と呼ぶのだろうか?
「ふぅん。この浮島に生息する古代獣共もリッカの住人みてェに地上からやってきたのかね」
興奮しすぎて過呼吸気味のアリアの背中をさすりながら、キドーはそう思いを馳せる。
古代獣。それはこのアーカーシュに存在する生き物のことだ。
その全容が分かったわけではないが、人類に敵対的なものも多く……あまり興味本位で近づいてよい相手でもない。
かつての調査隊が全滅したことを思えば、どれだけ警戒してもし過ぎるということはないだろう。
事実、襲ってくる古代獣はあまりにも多い。そしてキドーもそんなことは充分に分かっている。
分かった上で、興味がこれ以上ないくらいに湧いているのだ。
「精霊やらと違って肉体もある生物みてェだし、こんな隔絶した環境で何もない所から発生したとは思えねェが元はビルメスも翼でも生えてたのか、雷撃を操る他に空を飛ぶ能力もあったのか……それかいっそ豪快に、元々地上にあった土地が植物も動物も纏めてごっそり空に浮き上がりでもしたのかねェ!」
そう、この先に確認されている古代獣の名はビルメス。電光獣とも呼ばれる羊のような獣だ。
「電気羊、つまりは電気羊ですか。古代獣にも様々種類がいるのですね」
「雷をまとった羊なんてのがいるなんて、さすがはアーカーシュね。神話や伝説の世界に足を踏み入れているみたいで、とてもわくわくするわ」
『ツクヨミ』善と悪を敷く 天鍵の 女王(p3p000668)と『決死行の立役者』ルチア・アフラニア(p3p006865)もそんなことを言い合う。
「しかし電気羊…もふもふしてそうです。もふもふ、しても……いえ分かってます、やったら命の保証がないくらい」
ビルメスはその毛皮を帯電させている。触れればバリッとダメージを受けてしまうだろう。
「しかし誘惑される心に嘘など付けようはずもありません。討伐した暁には毛を刈り取ってクッションにしましょうそうしましょう。ゴム製袋も用意しておきましょうそうしましょう」
楽しそうに言うツクヨミにルチアも頷いて。
「しかし空高い場所なのに気温も低すぎず空気も濃くて、気持ちいいな。浮遊する島だなんて不思議だ」
「ええ、不思議がいっぱいですわね」
よし、調査するぞ! と『青き鋼の音色』イズマ・トーティス(p3p009471)も気合をしっかり入れているが……『星の巫兎』星芒 玉兎(p3p009838)も頷く。
「今回の目的地は湖で、そこに至るまでの道に出てくる古代獣の排除だよね。泉への道を阻む古代獣討伐依頼ってゲームにありそうだけど……羊みたいな電光獣の毛とか角とか素材になりそうだよね。お肉も美味しいのかな。剥ぎ取り出来るかなー」
電撃を蓄えた羊毛で常に帯電・発光して群れで行動してるなら、雷の音や光や鳴き声に注意して進めば先に気付いて先手を取れるかもしれない。その辺り気を付けて進んでいこう、と。そんなことをルビーは考える。
「私の故郷フリアノンも秘境といえば秘境ですがこのような地もあるのですね……なかなかに興味深いです」
『亜竜祓い』アンバー・タイラント(p3p010470)の視線の先は、サファイアレイクの方角へと向いている。
「目的地のサファイアレイクはかなり美しい場所だとか楽しみですね……まぁ、あのような古代獣とやらも現れたりするわけですが」
そこには、帯電する羊型の古代獣……ビルメスと、スモールビルメスたちの姿。
ファミリアーにてツクヨミも位置を確認し、仲間に共有していたが……どうにも、此処に近づくものを徹底的に排除する構えであるらしい。
「へえ、あれが古代獣? 生態系まで特殊なんだね! ……ところであんな帯電する毛なら、刈って編んだらいい使い方出来そうなんだけど、少し刈ってもいい?」
ニョアの細剣を構えたアリアが、そんな軽口をたたく。そうして……戦いが、始まろうとしていた。
●サファイアレイク
常に帯電して毛がオレンジ色に輝く古代獣。
それがビルメス最大の特徴だ。
そしてそれは、こうして見ると……なんとも凶悪な輝きだとアリアは思う。
「みんなが小さいのを相手している間に大きいのを……!」
蛇骨の調を放ったアリアは、そのままビルメスを抑えるべく動いていく。
一人で倒しきりたいとすら考えていたアリアだが……ビルメスは結構強い。
それを相対して理解できていた。だがサポートもある。
なんとかやってみせると、そう決めて。
ルビーとアンバーもまた、名乗り口上でスモールビルメスたちを引き付けていく。
「ここで倒し切る……!」
「まずは頭数を減らしていきますわよ!」
イズマの響奏撃・嵐が炸裂し、玉兎のフルルーンブラスターが放たれる。
「回復役の仲間がサポートしてくれる。抑え役の仲間の負担を減らす為にも、思う存分攻めるとするかねェ!」
ククリを携えたキドーの呼び出したワイルドハントの攻撃が始まり、グリード・ラプターを構えたツクヨミが射撃する。
連携は完璧。その上で、ビルメスたちの放つ電撃は確実な脅威だった。
「ぐっ!」
ビルメス、そしてスモールビルメスたちの電撃は確実にダメージを与えてくる。
だがそれでも、負けはしない。スモールビルメスたちを倒し、アリアがビルメスを仕留めて。
動かなくなってもまだ電気の残っている身体に、イズマは触れようとする。
「戦ってて刈れた毛、何かに使えないか? 肥料やフェルトにするとか……痛っ、静電気が凄い」
ついでに肉も持って行こうと、作業していたが……流石に「電気抜き」なんて作業はイズマもやったことがない。
毛を欲しがるツクヨミ、そして面白がったキドーと協力しながら毛と肉を手に入れて。
そしてようやくたどり着いたサファイアレイクの光景に、全員が驚きの声をあげる。
「これがサファイアレイク……なんて美しい湖」
玉兎がそう呟いてしまう程度には、美しい光景がそこにあった。
青。まず言うならば、それが正しい感想だろう。
草木の緑の中に広がる青。それもぶちまけたペンキのような無粋な青ではなく、何処か透明感すら持つ青だ。
サファイアがそうであるように、奥に行けば行くほど深みが増すような青。
輝きを反射し、煌きを返す……そんな「青」がそこにあった。
その姿は、まさに「サファイア」の名を冠するに相応しいだろう。
「……ですけど、この静謐な湖面の下は安全なのかしら。古代獣ならぬ古代魚とかおりませんか? 古代魚だと意味が変わってくる? 一応、潜水艇を無理やり担いではきましたけれども、ふむ。使うとしても、浅いところでちゃぷちゃぷと遊ぶ程度に留めておくべきですわね」
そう、玉兎はディープクルーザーPLMを背負って来ていた。
かわいいクジラ型潜水艇は調査の役に立つかもしれないが……この見通せない青の先に危険な生物がいないなど、誰にも断言できはしないだろう。
そうしたものに襲われることを考えれば、玉兎の慎重さは褒められるべきものと言えるだろう。リスク管理こそは、全ての探索者がしっかりとしておくべきものなのだから。
「そういえば先程倒した獣たち。見た目は羊に似ておりましたが、味も羊に似ているのでしょうか。そもそも食べられるのかどうかも知りませんけど。ただ斬って打ち捨てておくのも申し訳ない気持ちがございましたし……」
「ああ、問題ない。食材適正も付与しておいたからな」
ソウルオブガストロリッターを輝かせながら、イズマがそう笑顔で答える。実に安心だ。
「よーし、終わった終わった! 安全が確保されたんなら、キャンプしていいんだよね! やたー!」
そんなアリアの声が響くが……そう、キャンプである。
こんな綺麗な場所であれば、そうするのも楽しいモノだろう。
「魚の方は釣りが得意そうな人に任せて私は周辺で食べられそうなキノコや野菜を見つけ……え? 鑑定できるのって? ……天啓で何とかするよ!」
「それは……大丈夫か?」
「ほ、ほら、火を通して食べるから大丈夫だよきっと。色もほらそこまで毒々しくないから大丈夫きっと! え、専門家に見てもらった方がいい?そんなあ……」
まあ、最悪食材適正をつける手もあるだろうか。冒険心はかうべきだ。
そんな中、ルビーと共に来ていたスピネル・T・ローズはバーベキューなどの調理や野営準備をさっさと済ませていた。
この辺りの手際は慣れているのか流石だが、冒険は戦う事だけにあらず……というのを体現しているとも言えるだろう。
そうして仕事を終わらせたスピネルはルビーと水辺の散策をしていた。
綺麗な所だからと水辺を散策したりaPhoneで撮影したり。
2人で歩く水辺は中々と楽しいものがあった。
「美味しい食事はスピネルにお任せ! バーベキュータイム楽しみだなぁ」
そんなことを言うルビーに、スピネルは微笑んで。
ルチアもまた、水辺を歩いていた。
……が、その目的は湖の周りを散策して、風景を堪能しつつ何か食べられそうなものでも探してみたいというものだった。
「カニとか魚とかいたりしない? しかる後に、バーベキューでもするなら焼いて食べよう」
そんなことを言いながら……ふと、その視線が水辺のキドーへと向く。
「キャンプの準備やら料理はやりたい奴に任しちまおう。いやほら、俺ってそういうの明らかに得意なタイプじゃねェだろ!」
そんなことを言っていたキドーだったが、当然「ならばどうするか」というのはある。
《ルサルカのくちづけ》の力を借りたクドーは、サファイアレイクの中に潜ってみる事にしたのだ。
ついでに精霊疎通で対話可能な精霊とのコンタクトも試みようともしていた。
(精霊ってのは気まぐれで頼りにならねェが、運が良ければ昔話を聞けるかもな)
そう考えたキドーは水中にウォーターエレメンタルを見つけたが……その様子は、明らかに妙だった。
「こいつぁ……」
どうやらなんらかの魔法的な効果で『契約に縛られている』のが分かった。
そのせいか忙しそうで、昔話の類を聞くのは難しそうだが……それ自体が、新たな発見ではあっただろう。
そして同時刻、キドー同様にイズマも水中呼吸のポーションを使いサファイアレイクの中に潜っていた。
(自然ならではの美しさだろうか、深い青が綺麗だ)
魚でもいれば捕まえたいし、湖底に何か沈んでいないかも気になっていた。
幸いにも敵には会わずに湖底まで辿り着けば……そこには、水の青よりも更に青い、輝く宝石のようなものが埋められていた。
何か空気の泡のようなものを吐きだし続けているそれは……恐らくだが、空気を生み出しているのだろうとイズマは思う。
持って帰るには少々躊躇われるが……なんとなく、謎の1つに触れたような気がしていた。
そして吸血鬼印の飴を舐めたアンバーもまた、水中行動の力を使いサファイアレイクへと潜っていた。
「アーカーシュには珍しいものが次々と発見されているそうですし……もしかしたら新発見なんてこともあるかもしれませんね。かなり深いとの事なので湖底は暗いかもしれませんが……これなら」
イズマ同様にアンバーも食材探しを兼ねていたが……その眼前を、やけにキラキラした宝石のような魚が通り過ぎていく。
……アレは食材になるのだろうか?
分からない。分からないが……水上からアリアの楽しげな音楽が聞こえてくるのが分かる。
まずは戻って食事にするのが良いだろう。それからまた潜ってみればいい。
時間はたっぷりある。何故なら、これから楽しいキャンプなのだから。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
幾つかの新発見があったようです!
GMコメント
天野浮遊してる島とか大好き!
というわけでアーカーシュです。
今回の内容は単純で、古代獣をぶっ飛ばしてキャンプです。
以下は必要情報です。
●ビルメス(電光獣)
エルディアン(古代獣)。
全長4mの羊のような姿を持つ怪物であり、常に帯電してオレンジ色に輝く羊毛が特徴です。
動きは素早く、それなりにタフ。電撃タックルと近距離円状に放つ敵味方識別型の電撃、遠距離へと放つ電撃を使用します。場合によっては麻痺してしまうでしょう。
主にアーカーシュの地上に生息しています。遺跡内部にも姿を見せることがあります。
●スモールビルメス(電光獣)
エルディアン(古代獣)。
全長2mの羊のような姿を持つ怪物であり、常に帯電してオレンジ色に輝く羊毛が特徴です。
動きは素早く、それなりにタフ。電撃タックルと近距離円状に放つ敵味方識別型の電撃、遠距離へと放つ電撃を使用します。場合によっては麻痺してしまうでしょう。
10体程度の群れをなし、1~2体のビルメスと共に行動するようです。
主にアーカーシュの地上に生息しています。遺跡内部にも姿を見せることがあります。
●特殊ルール『新発見命名権』
浮遊島アーカーシュシナリオ<Celeste et>では、新たな動植物、森や湖に遺跡、魔物等を発見出来ることがあります。
発見者には『命名権』があたえられます。
※命名は公序良俗等の観点からマスタリングされる場合があります。
特に名前を決めない場合は、発見者にちなんだ名が冠されます。
※ユリーカ草、リーヌシュカの実など。
命名権は放棄してもかまいません。
※放棄した場合には、何も起りません。
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
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