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シナリオ詳細

<Celeste et>風巻く空島と目覚めの冒険

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●冒険の予感
 ランプの灯りが部屋を夕陽色に優しく照らしている。
 これから夏の向かおうとする季節の香りに、少しだけ油と鉄の匂いが混ざっている。

 ――これから、これから。
 ――未知の冒険を始めるの。

 真っ白な地図、お気に入りのペン、便利なナイフに携帯食、水筒も忘れずに。
 道具を並べて、必要なものをうーんと選んで、荷物に詰めて。

 ――向かう先は、涯てなき蒼穹。

 吹き巡る風は清しく青の空世界を翔け抜けて、足元は瑞々しく輝き波打つ草の群れ。いま、太陽のちかくにいるの、なんて手紙を書きたくなるような、やさしい白の雲を見て。


 鳥か獣か、魔笛みたいな鳴き声が木霊する。
 ぱきりと小枝を踏むと、泉で翼を休めていた極彩色の水鳥達がふぁさふぁさと一斉に羽ばたいた。

 奥へ進む胸には、冒険の鼓動が脈打って。特別をさがしに、足を踏み出した。

 苔むして朽ちた石壁の残骸みたいな跡を見かけたなら、どうしても遥か古の時代に思いを馳せてしまう。だってだって、まことしやかに語り継がれるお話の中には、浮遊島に古の魔王の居城があったという説もあったのだから。
 ――それにしても、澄んだ空気が気持ち良い!
 緑の天蓋の隙間に覗くのは、限りない青。差し込むのは、やわらかな木漏れ日紡いで木陰に踊らせる暖かな陽射し。
 きらきら輝く木漏れ日の森に音紡ぐ甲高い囀りと共演するみたいに、小さな虫の声もするみたい。

 未知で溢れる神秘的で幻想的な空の浮遊島。
 ――ここが、伝説に語り継がれる、アーカーシュ!


●その空へ
「再確認するのであります」
 アーカーシュ。それは、伝説の地。
 人々が仰ぎ見る青い天空に浮かび、分厚い積乱雲に包まれていたと言われる浮遊島。

 百年ほど昔、この島を探索しようとした鉄帝国の大規模調査隊が全滅したと言われていた。島は存在さえ怪しまれ、いつしか再び歴史の彼方へ忘れ去られ――しかしなんと、調査隊は多くの犠牲を払いながらも島へ到達していて、『レリッカ』という小さな村に未だに子孫が生きていた事が、つい最近になって判明した。

「ワタシたちの任務は、浮遊島アーカーシュの地上部探索。特に、前方に見える森林地帯担当でありますね」
 浮遊島に降り立った『空の守護者』ハイデマリー・フォン・ヴァイセンブルク(p3p000497)の声が、そよ風みたいに柔らかく風に溶けていく。
 気品のある金糸の髪がさらさらと靡く。

 浮遊島アーカーシュの地上部には、いくつもの遺跡と広大な自然が広がっている。鉄帝国の歯車卿からの依頼を受け、ハイデマリーが所属する探索チームは伝説の浮遊島、未知の領域へと足を踏み入れようとしていた。

 森の薫りは有機的で、不思議とあたたかい感じがする。
 ハイデマリーは、出発前に兄から告げられた言葉を思い出していた。

 報告書や資料が整然と並ぶ机を挟んで、向かい合い。
 兄、ユーリ・フォン・ヴァイセンブルグは明るいシトリンの瞳に心配そうな色を浮かべていた。

『軍部は、このアーカーシュという未踏の遺跡を巡って、にわかに派閥抗争の気配を見せている……』
 国家のために行動する軍人達の一派『軍務派』と、特務の機密特権を盾に調査の主導権を握ろうとするパトリック・アネル大佐率いる一派『特務派』。
 ヴァイセンブルグ家は、『軍務派』に所属する立ち位置となっているのだと告げる手が、机の上を彷徨って。
『未知の探索には、危険も伴う。ハイデマリー、気を付けるんだ』
 手が軽くぶつかり、一番上にあった資料がずれて下にあった本が視えた。表紙に見覚えのある少女の姿があって、大切なともだちと一緒にポーズを決めている、そんな本が。
『おっと』
 兄は一瞬でさっとそれを隠し、咳ばらいをした。

 今のは紛れもなく、ともだちのギフトにより作られた魔法少女(じぶん)の冒険譚!
『い、今、本が――』
 言いかけた妹の声を遮り、兄はもう一度言った。
『未知の探索には、危険も伴う。ハイデマリー、気を付けるんだ』
 声は優しくあたたかで、妹を心配する気持ちに満ちていて――爽やかに、一瞬前の出来事を誤魔化していた。


「危険な古代獣がいれば討伐してください。また不思議な動植物を見つけたら、報告してください」
 現実に意識を戻すと、周辺を調べる仲間たちの依頼内容を再確認する声が飛び交っている。
「休めそうな場所をみつけたら、BBQとかしても楽しいかもしれませんね」

 なにはともあれ、冒険だ。


 さあ行こう、伝説の地、空飛ぶ島アーカーシュ――その未踏の領域へ。
 これは、未知を既知へ変える旅。新しい何かに出会う冒険。
 あなただけが見つけられるかもしれない浮遊島の謎めいた息吹を探しに!

GMコメント

 透明空気です。今回は鉄帝の全体依頼です。
 色とりどりの動植物が居る浮遊島アーカーシュを探索、踏破して地図を広げる旅。不思議な動植物の記録をつける冒険。未知を既知へ変える体験をぜひ、お楽しみください。

●オーダー
・浮遊島アーカーシュの地上部(森林地帯)探索

●ロケーション
 浮遊島アーカーシュ(森林地帯)。
 地図には、入り口までしか記されていません。未踏の領域での冒険となります。
 鬱蒼と茂る森は動物や植物、昆虫など、生命の気配に満ちています。森の中では、見たことのない奇妙な生き物や花や果実、昆虫を見付けられる可能性があります。休憩に適した小川や泉も見つかるかもしれません。
 綺麗に見える水でも、触れたり飲んだりする前に、安全を確かめたほうがよいでしょう。微生物や自然毒などに汚染されている場合も考えられますし、擬態しているモンスターの可能性もあります。
 浮遊島ですから、場所によっては大地に大きな穴があったり罅割れしていて隙間から空がみえたり、離れ浮遊小島みたいになっている場所もあるかもしれません。
※アーカーシュについての特設ページ
https://rev1.reversion.jp/page/akasu

●特殊ルール『新発見命名権』
 浮遊島アーカーシュシナリオ<Celeste et>では、新たな動植物、森や湖に遺跡、魔物等を発見出来ることがあります。
 発見者には『命名権』があたえられます。
  ※命名は公序良俗等の観点からマスタリングされる場合があります。
 特に名前を決めない場合は、発見者にちなんだ名が冠されます。
  ※ユリーカ草、リーヌシュカの実など。
 命名権は放棄してもかまいません。
  ※放棄した場合には、何も起りません。

●敵
 現地で遭遇する可能性がある敵です。注意深く回避すれば、戦闘を避ける事も可能かもしれません。
・青い古代獣『浮遊するサメに似た生き物』
 ぷかぷか、すいすい。がぶりっ。空中を泳いで移動し、主に噛みつき攻撃や体当たりをしてくるタフで好戦的なサメです。なお、このサメは飛行している敵を常に優先で狙うという不思議な性質があります。
 この敵はあちこちを動き回っています。戦闘回避の難易度は高いです。

・水たまりに擬態するスライム
 地面にべちゃっと広がって水たまりに擬態し、獲物を奇襲するスライムです。物を溶かすような攻撃はしないかわりに獲物を毒漬けにします。また、物理攻撃に強い特性をもっています。
 この敵は一か所でじっとしています。戦闘回避の難易度は低いです。

●関係者NPC
・ユーリ・フォン・ヴァイセンブルグ
  ハイデマリー・フォン・ヴァイセンブルク (p3p000497)さんの関係者です。『軍務派』の鉄帝軍人。今回は回想に出てきたのみで、任務に同行はしていません。

●お楽しみ
 休憩に適した場所で、BBQを楽しむことができます。そのへんに生えているものや動いている何かを食べられそうか見極めて、試しに焼いてみるのもよいでしょうし、持ち込んだ食材を食べてもよいです。
 安全を確かめた上で小川で魚を獲ってみたり、水遊びも良いかもしれません。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、未知の土地なので不明点もあります。

 以上です。
 それでは、楽しい冒険になるよう願っております。いってらっしゃいませ!

  • <Celeste et>風巻く空島と目覚めの冒険完了
  • GM名透明空気
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2022年04月28日 22時15分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ヘイゼル・ゴルトブーツ(p3p000149)
旅人自称者
ハイデマリー・フォン・ヴァイセンブルク(p3p000497)
空の守護者
ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)
祈りの先
長月・イナリ(p3p008096)
狐です
ライ・ガネット(p3p008854)
カーバンクル(元人間)
イズマ・トーティス(p3p009471)
子を護るは大人の役目
ムサシ・セルブライト(p3p010126)
宇宙の保安官
祭・藍世(p3p010536)
桜花絢爛

リプレイ

●未知に出会いに
 土、緑、水、生き物――色々な生命の気配が混ざり合い犇めく、大自然の匂いがする!
「わぁ……!」
 『宇宙の保安官』ムサシ・セルブライト(p3p010126)と『カーバンクル(元人間)』ライ・ガネット(p3p008854)が同時に声をあげ、顔を見合わせた。
「混沌は自然豊かな地でありますけど、こんな未知の世界があるなんて……!」
「未知の場所の探索! 昔からこういうのが一番好きなんだよ!」
 そんな二人に『狐です』長月・イナリ(p3p008096)がふわふわの狐尾を揺らしながら微笑み。
「ワクワクもするけど、ボイジャーやスピリットの様にしっかり結果を残さないとね!」
 と、異世界の惑星探査機に例えれば、ムサシは「まさに!」と共感顔。
「まるで未開の星を探索する冒険者になった気分……!」
 ライも、もふもふ尻尾をぴょこぴょこさせてハイテンション。
「ここにはどんな珍しい物があるんだろう? 考えただけでロマンが溢れるな!」

 ――冒険だ! ロマンだ!
 ハイテンションな二者の輝く瞳がぐるりと探索地を見渡して。

 傍らのイナリがプロフェッショナルな雰囲気を醸し出しながら各種サバイバル用具を確認したり採取瓶に早速サンプルを確保しているのを視て、「あっ」と温度差に気付いて言い繕う。
「勿論ローレットからの依頼であり大事な仕事であるというのは理解しているであります。ありますとも!?」
「……っと、ハイテンションですまないな、こういう冒険は久々なもんで……」
「ふふふ、楽しくいきましょう」
 くすくすとイナリが肩を揺らせば、『青き鋼の音色』イズマ・トーティス(p3p009471)もにこりと笑む。
「ずっと隔絶されてた場所だから、きっと独自の珍しい生物もいるだろう。探索するのが楽しみ……早速キノコがあるじゃないか」

「それはスツールタケですわー! 食べられますわよ!!」
(アーカーシュもしばらくぶりですわね)
 俯瞰する眼差しの『祈りの先』ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)は既に何度かアーカーシュ調査に参加経験があり、余裕がある。
「珍しいものを見つけられると良いのだけれど――あっ、あちらに果樹がありますわ!」
 示された樹の枝で、地上でもよく見かける木成りの果物めいた姿が揺れている。原種でせうかと呟き採取して、『旅人自称者』ヘイゼル・ゴルトブーツ(p3p000149)の双眸は愉しげに煌めいた。非日常、特別――そんな刺激は、ヘイゼルの好物であるが故に。

「こっちにも実が」
「これはアーカーシュベリーですね」
 手元には余白だらけの地図がある。
「地図を作り埋めて行くのは心躍るものです」
 ――それでは地図の中の魔物に会いに行きませうか。
 未知と云う地図の余白は想像の魔物で埋められているもの。無限の可能性が其処にある。語り、躱し、めくらせぬ彼女と違い、めくればめくられる其処は、儚い無限。人の足が踏み入れればその分未知が既知に覆る。
「わかるよ、目新しいってのは心躍らせるもんだよね」
 『桜花絢爛』祭・藍世(p3p010536)が頷いた。人と言う生き物は時をかけて未知を拓いて、認識世界を広げていく。
「フリアノンから出てきたばかりのアタシにとっちゃ、他の国のモンはなんでも目新しいが」
「覇竜の方でしたか」
 ヘイゼルは練達竜戦の大怪我が癒えてようやく花見に訪れた未だ未知の多いかの地を想う。
「アンタにとってはアタシの故郷も目新しい冒険の地ってわけかい」
「そう言えますね」

 和やかな探索の中。
(何故、うちの家族は揃いも揃ってセララが作った冒険譚をもっているんでありますかね!?)
 『空の守護者』ハイデマリー・フォン・ヴァイセンブルク(p3p000497)は次元多重思考で家族に共有されているらしき冒険譚について何処から入手するのか予想しつつ、鑑定眼で価値のありそうなものを見分けていた。
(兄様を驚かせてやりましょうぞ。鉄帝軍人として、彼等をひっぱらねば……)

「小鳥と式神が襲われたわ。古代獣ね」
 使い魔や式神ドローンを行使して情報を集めていたイナリが皆に知らせ、藍世は植物から感じ取れた情報を共有した。
「どうもそいつは暴れん坊みたいだね」
「よぉし、気合い入れていくか!」
 風光明媚に剛毅な桜の眦を向け、藍世は野心的に笑む。
「やっぱりこういう冒険はいいねぇ」

 誰かが指揮を執ったわけではないが、自然とパーティはある程度纏まった団体行動を取った。全員である程度進んでは周囲を手分けして探り、報告し合ってまた進む中。

「地図は、後から続く偵察隊の役に立ちますわね」
 ヴァレーリヤが地図を書くヘイゼルの手元を覗き込み、微笑む。ヘイゼルは地図に瞬間記憶で憶えた情報を加筆した。
「道中書いてないと思ってたら、覚えてたんだ」
 ライが迷いのない筆致に目を瞬かせれば、ヘイゼルは当然といった様子で頷いた。
「書きながらでは探索が疎かになりますので」



「近くに敵がいるわ」
 イナリが言えば、「この地域を探索するためには避けるよりサクっと倒すのはどうだい」と藍世が提案した。
 賛成の意を示したヴァレーリヤは敵影を探し――木の間を泳ぐ浮遊サメを目撃してハイデマリーを呼んだ。
「ハイデマリー、サメがいますわ?」
「サメ? ここは森――」
 呆れたような声が途中で詰まる。
「青いサメが飛んでる!」
 イズマが緊迫した声で報せると、全員がそろりと集合して敵を視た。
「なるほど。混沌のサメは空を飛ぶんでありますね! 宇宙サメとも違った生態で面白いでありまsあっ違う……?」
「むしろ宇宙サメの生態が気になる」
 ライが思わず首を傾げた。

 イズマが幻を獲物と誤認させて敵を誘導できないか試したが。
「敵は幻には惹かれない様子だね」
 結局、飛行した自身でサメを釣る事になった。
「匂いか、空気の振動か……何かを感知している動きだな」
 ヘイゼルが前に出て、ヴァレーリヤがメイスを構えて続く。

 獲物の群れを見つけて狂暴に牙を剥く敵へと、ヘイゼルが疾風の如く先手を取る。
 フーデッドコートとおさげを揺らして紡ぐ術式は、赤。指から奔る魔力糸が障壁を形成する。咲き乱れる花吹雪めいた鳳火が周囲を煌々と照らす視界。静心涼緑たる瞳は敵を瞶め、敵の性質を観察しながら変幻自在な軌道で敵の逃げ道を塞ぐ。
「炎が苦手なようですね」
「了解!」
 紅の十字架を炎の明かりに輝かせ、ヴァレーリヤがメイスを翳す。柄の聖句を親指でなぞる中、素早く変身したムサシが斬神空波を放った。
「サメの叩きにしてやるであります!」
 地面を縮めたかのように一瞬のうちに至近に繰り出される脚撃は強烈。必殺技を叫ぶ声が溌剌と響いて木霊する。
「スペリオン・エッジキィィィィィック!!!」
 跳ね上げた撃力が重い音を弾けさせた所に氷の鎖が飛んでいく。ライが放った技である。
「もし食材になるなら倒す価値も跳ねあがるであります」
 ハイデマリーがシャルフシュッツェで援護する声に頷き、イズマが魔導細剣を鋭く振って『雷切(真)』の構えを見せる。ムサシは思わず「イズマさんには先日の依頼での言葉をそのまま返さないと!」と呟いた。
「先日の?」
「その技は、体に負担が!」
「……ああ! そうだね」
 くすっと笑って一閃する斬閃は鮮やかで、反動を恐れる気配がない。

「――煙は吹き払われ、蝋は炎の前に溶け落ちる」
 斬撃に続くのはヴァレーリヤが顕現させた聖炎。「どっせえーーい!!!」気合に満ちた声と共に焔を纏うメイスがぶち込まれた。
 いい気迫だね、と闊達に笑いながら藍世が腰だめに正面からの『天下御免』を叩き込む。誰より真っ直ぐ、誰より華やかに――歌舞く一撃に桜吹雪が舞い踊る。
 風流だなあ、とライが目をくりくりさせて賞美すれば、藍世は袖翻し、嫣然と「氷の鎖のおかげで当てやすかったよ」と片目を瞑って魅せたのだった。


 サメの身を食材候補として確保し、探索が続く。


 透明なシールドを広げたようなポーズで葉にしがみついている金色の昆虫にムサシがハイデマリーを呼んだ。
「新種でありますか? 博士!」
「誰が博士でありますか!?」
 少年のような目で指差すムサシが頼りにするのはハイデマリー。
「鑑定眼に透視にアナザーアナライズと多機能眼を備えておられるので、つい」
「うーん……これはジンガサハムシに似ている昆虫でありますね」
「あっ! 角度で色が変わる……」
「どれどれ」
 昆虫で盛り上がる中、イズマが怪しい水たまりを発見して皆を呼んだ。

「雨上がりって感じではないのに水たまり……スライムの擬態か?」
「擬態しても自分にはお見通しであります、コアが視えているであります!」
 ムサシがスライムにビシッと指を突きつけた。
「たぶん獲物がひっかかるのを待っているのかと」
 ぱしゃりとハイデマリーが水たまりにサメ肉の小さな欠片を落とし、アポートで手繰り寄せる。すると、水面を離れかけた肉へと水がするりと伸びて水中に引きずり込む動きを見せた。
「「おお……」」
 獲物を食む姿に思わず声を洩らして観察する一同。
「性質をもっと調べてみたいかな……食材として漬けたりできないか、など」
 イズマがこれも調査と言ってピューピルシールを放ち、イナリの採取瓶に視線を送る。
「倒して、一部を採ってみる……?」

 ――Code Redが綴られる。
 魔阻のコードを紡ぐヘイゼルの瞳とタトゥーが赤く輝いている。スライムには神秘の技が能く効いた。賦活魔紋を併せて巡らせるヘイゼルには十分な余力があり、余裕がある。その耳には、ハイデマリーが「物理攻撃に強いようですね」と報告する声と藍世が「ほぉ~? なら、更に強い力で捻じ伏せてやりゃあいい」と豪快な力技の音を響かせるのが聞こえていた。


●休息と、終わらない冒険
 少し行けば、小川が流れていた。ハイデマリーとムサシが安全確認をして、一行は休憩を取る事にした。
「飲食に使う水は煮沸しよう」
 イズマが呼びかけ、藍世が並んで、二人は共に釣りを始めた。
「さあて、最低限は働いたし、あとはのんびりさせてもらうかね」
「この魚は、エリザベスアンガス正純と命名された魚だね」
 短い釣り竿で自然に溶け込むように丁寧にポイントを探るイズマは、次々と魚を釣り上げる。
「アンタはエリザベスアンガス正純釣りの匠かい?」
 思わず藍世が呟いた。

 せせらぎは耳に優しく涼やかで、不思議な安らぎを齎してくれる。
「キャッ、つめた……ふふっ」
 ぱしゃぱしゃと燥ぐように水を感じるヴァレーリヤは靴を脱いでそっと川に裸足を浸した。ほわりと吐息をつき、心地よさそうに目を細める。
「ふう、生き返りますわね」
 ひんやり、さらさらとした優しい流れが足に感じられる。そのまま川辺にぱたっと横になって足だけ浸して目を瞑れば、瞼の裏に温かな日差しが感じられてとても――「眠くなってしまいますわぁ……」ふんわりと至福の笑みを浮かべて、ヴァレーリヤは呟きを零した。

 ふわ、ふわ。
 木陰で黒い綿めいた生き物が臆病な気配をみせながら逃げていくのが暗視を備えたヘイゼルには視えていた。
(あれは、クロワタと命名されているのでしたか)
 危害を加えてこないなら、とクロワタを気にせずに並べるのは、ここまでの冒険で採れた植物やサメ肉、そして仲間が釣ったばかりの魚。
「単に焼くだけでは無く、食材を小分けにして煮や揚げも試してみませう」
 ヘイゼルの提案にムサシがサメ肉を分けていく。
「食べるのも調査の一環でありますからね」
 ライが可愛らしく首をかしげて、「生も? スライムも?」と不安気に問いかける。
「生はリスクが高すぎますね。すぐに症状が出るとも限りませんし……まあ、他の方を止めは致しませんが」
 ハイデマリーが神妙に頷く。
「調査といっても無理はいけないのでありますす」
 うんうん、と賛成して、ライがキノコを、藍世が鋭いトゲのある葉を食材に選んだ。
「スツールタケっていうんだっけ。これを焼こう!」
「ゼムトゲクサを煮込んでスープにできるらしい。食ってみよう」

 そよ、そよ。風が好い匂いを運んでくる。
(わ、ぁ。いい香り。お魚と、お肉と……)
 川で心身を癒していたヴァレーリヤの耳に「BBQでありますね!」という声がきこえて、ガバッと起きて視線を向ければ――
「……あっあっ、自分達だけ美味しそうなもの焼いてズルいですわよ! 私にも下さいまし!」
 ゆらゆら揺れる温かな橙色の炎。
 誰が持ち込んだか、バーベキュー網がきらっと存在を誇るように煌めいて、魚や肉や緑の草やきのこがこんがり、じゅうじゅう。ぐつぐつ音を立てる鍋のもある!

 ヴァレーリヤは慌てて仲間のもとへと駆け出した。
「このクリクミ樹の根はお酒のボタニカルにも使われる素材でしてよ! お酒の!」
「食材が増えましたね」
 ヘイゼルが食材置き場を教え、ハイデマリーは酒豪で知られるヴァレーリヤに念押しした。
「飲みすぎないようにしてくださいね?」
「いいんですの? 私、飲むつもりはなかったんですのよ?」
「ワタシ的には、はっちゃけすぎなければある程度は寛容でよいかと」
「ふっふふーん♪ ハイデマリーは優しいですのね♪」

 パチパチと火が音を立てて燃える。直接火にかけられる串魚やサメ肉片、ぐつぐつ煮音を立てる鍋――香ばしい匂いを囲み、皆が視線を交わし合う。
「「いただきます!」」

「さあて、どんな味がするのかねぇ……」
 藍世が並ぶ料理を一品ずつ食べ比べた。
「この焼いたやつふわっふわであります」
「それは下処理を特に丁寧にしたやつだね」
 ムサシが気に入った料理をおかわりして、ライが同じものを試して「確かにうんまい!」と目を輝かせた。
「こっちの煮つけはほっかほかで柔らか~の、酒が進む一品ですわぁ~!」
 ヴァレーリヤが緑の煮野菜付の肉に舌鼓を打っている。
「メルベキ草とサメ肉ですね」
 ヘイゼルが「フライにしたのも美味しいですよ」と勧める。
「何れも貴重な食糧であります、サメの絶対数がどれほどかは気になりますが」
 ハイデマリーが呟き、報告書の文面を考えた。
「あまり多くないようだよね」
 イズマが相槌を打つ。食料問題を考える鉄帝勢に、ライは「大変なんだなあ」と呟いた。

 一行はそろそろ引き上げ時かと顔を合わせて――「野営するのよね?」イナリが告げる。
「えっ」
 気付けば、テントが用意されている。
「寝袋もあるんだ?」
「できるだけ長く調査を、という話だったから」
 一行はしばし現地で相談し、万全の準備をしてきたイナリが野営の中心となって現地で夜を過ごし、もう一日探索を継続する事に決めた。基本方針として、「できるだけ広範囲を」「長く詳細に調査をしたい」というのがあったのが大きい。

「とはいえ、野営の備えは全く相談していませんでしたが――」
「私は準備万端よ。夜間の警戒も任せて」
 自然に囲まれた現場での作戦行動に定評のあるイナリが人形の管狐や小鳥をなでなでしながらにっこり微笑む。幸運を引き寄せるような強気な笑顔の裏には仲間への信頼もある。なんといっても依頼慣れした面々が揃っているのだ――状況に合わせた咄嗟の連携も慣れたもので、仲間達は有機的連携を見せて順番に睡眠をとり――夜間のイベントは野生の獣が一度接近してきてあっさりと追い払った程度であった。

(今日はオーバークロックモードをぎりぎりまで使ってしまったわね)
 日中に動植物をスケッチしたノートや採取瓶に収まる成果を眺めていたイナリは、「そこの木に大きなクワガタが」「語尾ハートマークぅ」と寝言を呟くムサシに優しく微笑み、寝袋の中で世界の息吹を感じながら休息した。

 そして、太陽がのぼる時間が訪れる。
「コケコッコー」
 愛らしく小鳥人形が朝を告げた。鶏みたいに鳴くんだね、とイズマが人形を撫でて、幻のハーブを活用して朝食のカレーを準備する。


 食事を終えて、全員の体調を確認して一行は二日目の探索を開始した。


 前日の拠点から更に森の奥へと進んだ一行は、大地が古い樹木一本単位で大きくひび割れて、木ごとに半ば離れ浮遊小島みたいになっている亀裂地帯に到達した。亀裂地帯はそれほど広くはなく、周囲はぐるりと元通りの森に囲まれている。

「これって何千年単位で時間が経ったらくっつくのかな、離れていくのかな」
 浮遊島だけにこんな地帯もあるだろうと予測していたヘイゼルとライが中心となり、飛行して調査する。イズマは広域を俯瞰しながらホワイト・シンフォニーでヘイゼルの近くを飛び、支援した。

 露出した土の周りや根っこの周囲をくるくる飛んで、ライが呟く。
「……こういうことできるのもカーバンクルの体だからこそだな、この体での冒険ってのも悪くない……」

「自然な石肌と異なるものが視えますね」
 点在する浮き木島のひとつ、木の根が露出する浮遊小島の土に、自然に還りかけた人工物の気配を見つけてヘイゼルが好奇心を瞳にのぼらせた。
「行ってみよう」
 3者が飛んでいく。崩れた遺跡の石壁めいたそれは、大半が損なわれてわからないが、部分的な文字がかろうじて判別できた。
「地上を……支……、魔王、イルドゼギア、と書いてある様です」
「元々此処に遺跡か何かがあって、崩れたとかなのかなあ」
「うーん。他には、解る事はなさそうだね」

 日差しの中、調査隊が帰路につく。その成果は――

成否

成功

MVP

長月・イナリ(p3p008096)
狐です

状態異常

なし

あとがき

 おかえりなさいませ、イレギュラーズの調査隊の皆様。調査お疲れ様でした。魅力的で濃厚なプレイングを書いてくださった全員にこころから感謝申し上げます。
 MVPは二日目につなげたあなたに。

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