新生・生命機科学研究所！

オープニング

●エメスくんによる「今回の依頼についてのうた」
　あんなロボいいな　できたらいいな
　あんな技　こんな見た目　いっぱい思いつくよね
　みんなみんな　かなえてみたい
　イレギュラーズの　じゆうな発想
　とっても大好き　イレギュラーズ！


●新生『生命機科学研究所』
　大きな窓から明るい光が燦々と降り注ぐ、真昼の探求都市国家アデプト、首都セフィロトにある新生『生命機科学研究所』。成長を見越してか大きめの白衣を翻す少年めいた容姿の研究者が、あなたの顔を見て嬉しそうに微笑んだ。
「やあ。よく来てくれたね！
　君の活躍ぶりはボクの耳にもよく入ってくるよ。忙しいのに呼びつけてしまってすまない」
　――ロボット研究で有名なエメス・チャペックである。

　エメスは白い紙とペンを渡して、礼儀正しくぺこりっと頭を下げた。
「今回の依頼なのだけど、キミのアイディアを買いたいんだ。この研究所でゆるりと過ごして、紙にアイディアを書いて提出すること。それだけがボクの望みだよ」
　――曰く。
　エメスは新しいロボットのアイディアを欲しているらしい。様々な国や世界を知り、日々たくさんの冒険に身を置くイレギュラーズのアイディアを。
「ボクには思いつかないような自由で刺激的な発想が期待できるかなと思ったのさ。……と言うと、プレッシャーかな？」
　ぱたぱたと小鳥型のロボットが飛び、あなたの肩に降り立った。
「ちょっとした思い付きでいいんだ。大きいのが格好良い！　とか。人間にそっくりなのが良いとか、ぬいぐるみみたいなのが良いとか。戦闘用とか、日常用とか。大人向けとか子供向けとか。いろんなアイディアが集まれば、それが良い刺激になって新しい何かに辿り着くかもしれないし……どうしても思いつかない時のために、こういうのもあるよ」
エメスがもう一枚の紙を渡した。
『質問1 趣味
　質問2 生まれ変わったら
　質問3 行きたい所
　質問4 休日なにしてる？
　質問5 将来の夢……』

「エメスさん、この質問は……？」
　『蒼騎雷電』イルミナ・ガードルーン(p3p001475)が不思議そうに問いかける。『ヒュギエイアの杯』松元 聖霊 （p3p008208）も「ロボットのアイディアに全く関係なくないか……？」と呟いた。
「えへへ」
　エメスはふみゃっとはにかんだ。
「だからさ、どんな回答でもいいってこと！　ボクは、キミが書いてくれるということ自体に価値を感じるんだ。いざとなったらこの質問に答えるだけでもいいから、安心してのびのびと回答してね！」

　アイディアは机にしがみついているより、歩き回ったりリラックスして何かを楽しんだりした方がえ易いという意見がある。エメスはそう言ってイレギュラーズにネックストラップ入りの通行証（IDカード）と白衣を渡し、自由に歩き回っていいよと保証した。

参加者 : 8 人

冒険が終了しました！　リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧（8人）

リプレイ

●水天
　水に星を視る。
　プールの水が光を乱反射する煌きときたら、時間も呼吸も瞬きも忘れて見入ってしまいそうな美しさ。温かな水が織り成す極光遊色の細波に躍る影は愉し気で、胸をどうしようもなく躍らせる。『L'Oiseau bleu』散々・未散（p3p008200）は大きな浮き輪に軀を投げ出して、星天蓋の奇しき華麗さに柔い吐息を密やかに洩らした。
　明るく澄んだ双眸がぷかぷかと揺れる視界に瞬いて、水の流れに抗わらず流される儘なのは海月にでもなった心地――きらきらと零した声音が、淡い煌きの波紋となって広がって。
　彩花の薫りが水に溶ける中、北斗七星を出発点に心は遥かな天に羽搏いて星々を旅廻り、無機質な音が紡ぐおおぐま座とこぐま座の噺に心を痛めて水を掬い、星を映して吐息を零す。手の内に星を映してみせましょう、と順に星座を求めれど、ぼんやり浮かび上がるシルエットは何時見たって少し大袈裟で。かみのけ座まで来ると、もうサッパリ！
　嗚呼、でも、喩えば――
　そうメモを取ろうとしてくるりんとひっくり返った未散はけほんと可愛く咳込んだ。

「あっ！　何あのロボット凄い、もっと近くで見てもいい⁉」
　『故郷の空を守れ』山本 雄斗（p3p009723）が白衣を翻して研究所を探検している。学校の友人にも自慢しようと思いながら、小型の円いお掃除ロボットを抱きかかえて興味津々。
「気に入ったならお土産にしてもいいよ」
「えっ、いいの？」
　エメスは上機嫌で頷いた。その手には、雄斗が書いてくれた回答用紙が握られている。
「お招きいただきまして、ありがとうございます。ここにゃ前から興味がありましたんで、大変嬉しゅう思います」
　『黒蛇』物部 支佐手（p3p009422）が訛りの中に礼儀正しさを感じさせる声色で言えば、研究者たちは誠実そうな青年に好感を抱いた様子で頭を下げた。
「まずはこの研究所も、竜の襲撃から復旧しているようで何よりだよ。練達全体としても、少しでも早く復旧が終わると良いのだけど……」
　『夜明け前の風』黎明院・ゼフィラ（p3p002101）は長い髪を揺らして資料室へと向かう。研究者たちには名声高き者として知られていたから、廊下では幾度となく握手を求められる事になった。
　握る手の多くは生身で、ゼフィラの手に柔らかく温かい感触を伝える。
　目の前の才媛の沈着な心、明晰な頭脳は、何処に由来するのか――尊崇の眼差しに緩く笑み、白衣を翻す。体が弱かった自分を想いながら、体温を持たぬ手で襟を直して。不自由の中で知恵と冷静さを友とした己のように、人類は物理身体的不自由の中で叡智に手を伸ばすのだ――考える足取りは乱れず、硬質な音を立てていた。

　すれ違うのは、白い青年。
「まあ、聞かれたんなら答えるけどよ」
　『ヒュギエイアの杯』松元 聖霊（p3p008208）は本当は単に俺たちを構いたかっただけなんじゃ、なんて真実を予測しながらもメンテナンス室から現れたドクターⅡに笑顔を向けた。
「逢いに来たぜドクター。今はドクター『Ⅱ』なんだったか？　随分立派にしてもらったじゃねぇか」
　ドクターⅡは機心に無感情を湛えたまま、然れど聖霊を認識した様子で単眼を明滅させる。
「前のお前だった部品は診療所に飾ってるぜ。子どもの患者が「これなに？」って毎回聞いてくるんだ。お陰で診察がしやすくて助かるぜ」
　やり取りを見守りながら、エメスは聖霊の回答用紙を捲った。ドクターⅡが喜んでいる事実は、言葉にして説明しなくても聖霊には伝わっているのだと感じながら。
「お前も沢山の人に愛されて沢山の生命を救うんだぞ。な、ドクター」

　その回答には、趣味は読書と薬草集めとある。ジジくせぇかもしれねぇが結構楽しいんだぜ？　という一言が添えられていて、親しみが湧く。
　行きたい場所は父想いな息子らしく、『親父に逢いに行けるなら逢いたいな
……死にたいとかじゃねぇからな！』と。『ほっとけねぇ奴ら』とやらと普段どんな休日を過ごすのかな、とエメスは微笑んだ。

『夢は、親父と同じく医神になること。全ての生命を救いあげて、生きる希望を与え続ける医神になることだ』
　文字と声が重なり、真っすぐな心を響かせる。
「俺も変わらず医者をやっていくぜ。生まれ変わったとしても、救える生命を全て救いあげて癒せる様に」

　『Pantera Nera』モカ・ビアンキーニ（p3p007999）はアンドロイドの開発を提案し。
「参考として私を分解してみるのは構わんが、絶対元に戻せよ」
　なんと分解してもOKだというので、エメスは両手を掴んで目をギラギラさせた。
「えっ、分解していいの？」
　『蒼騎雷電』イルミナ・ガードルーン（p3p001475）もモカの隣で頷いて。
「イルミナの中身も見てみます？　なんて」
「取引条件として私の店の顧客になってくれ。デリバリーは承るから」
　エメスは一も二もなく食いついた。
「折角ですけえメンテナンス室を見せて頂けますかの？　ふふふ、何も怪しむこたあありません。そこが一番、珍しいものが拝めそうですけえ」
　支佐手はそんな3人にひょこりとついていき、お手伝いすることもやぶさかではありません、と手をワキワキさせた。
「ほれ、イルミナ殿もそこのお方も、良ろしけりゃ如何ですかの。わしの分解……じゃのうて、ええと、メンテナンス第一号に」
「第一号は不安だな」
　メンテナンス室はショーでも行われているかのように賑やかになった。
「いやしかし、見事な手際ですの。こんな複雑なもんを、まるで魚でも捌くように取り扱うとは大したもんです」
「ふっふっふ、支佐手クンわかってるね！　ボクの助手にしてあげよう」
「エメスさん調子に乗ってるッス！」
「あっ、ちなみにその道具は何ですかの。ちょっと見せていただいても？」
「支佐手クン大胆だね！　ボクにはそこまでイジる勇気はなかったよ……！」
「何をしてるんだ、何を」

　一方、その頃。
　資料室と情報室に幻想的な妖精めいた『カースド妖精鎌』サイズ（p3p000319）が現れると、研究者たちは仕事を忘れて一瞬その中性的な容姿に見惚れた。
　サイズ本人は衆目には構わず、ハヤブサの眼を駆使して魔力から生命エネルギーに転化する文書やエネルギーの保存や空間転移の研究書といった情報の海に漬かり、瞬間記憶している。
「虹の架け橋に関連する記述は既知のものばかりだな……」
　目的、その動機は明確で、愛しき妖精たちの住まう妖精郷のため。
「混沌各地の遺跡の資料なんかもあるみたいだね」
　学者の端くれとしては是非とも目を通しておきたい、と呟くのはゼフィラ。
「場合によっては、私的に書いている遺跡調査の論文に比較研究として利用できるかもしれない……」
「遺跡の資料ならこちらは？」
「ありがとう。こっちには果ての迷宮と虹の宝珠、アルヴの詩歌の資料があるよ」
　サイズとゼフィラが見付けた資料を交換し合い、机に並べる。と、その瞬間遠くから爆発音みたいなのが轟いて、研究所は騒然となった。何が起きたのか、と顔を見合わせていると。
「おや、おかえり」
　エメスから解放されたイルミナとモカ、そして支佐手が顔を覗かせて。
「支佐手さんは髪型変えた？」
　支佐手の頭がアフロになっているのでサイズは「似合う」と言うべきか一瞬言葉を選ぶ顔をした。ゼフィラはその想いを継いでか、サムズアップしてみせた。
「似合ってるよ。心機一転という感じ」
　いや違うんですよと支佐手はふわりと笑い、うっかりイルミナとモカを究極合体させようとして爆発したけど元に戻ってよかったですと顛末を語るのだった。
「いやあ、『ろぼっと』とやらの恐ろしさを知りました。詳しい方の制止には、素直に従っておくもんですの！」

　机に資料を広げるイルミナへとアンドロイドトークをしながらモカは様々な旅人の出身世界、特に地球の情報を調べていく。
「ふむ……歴史の分岐点で違った方向に進むと、こういう歴史になるのか……」
　偉人の生死で分かれる歴史は興味深い。モカがいた地球は、どうやら他の世界で死ぬ偉人が死ななかった、所謂IF的な歴史を持つ世界のようだ。
「こういう資料は読むと面白いッスね……色んな世界、いつかこの目で見てみたいッス」
「イルミナさんの世界、行ってみたいな」
「モカさんの世界にも」
　2人が笑みを交わした時、ゼフィラが声をあげた。
「誰かの忘れ物かな？」
　どれどれ、と集まってみれば、それはゲームのシナリオであった。
「マーダーミステリーは……ふふ、手軽な異世界体験ッスね」
「推理ゲームかな？」
「面子が集まったら拝借して遊んでみるのも楽しそうッス……」

　談笑しながら、メンバーは用紙に回答を埋めていく。
（どれどれ……趣味。んー、『食べ歩き』ッスかね？　買い食いとも言うッス。生まれ変わったら。…………『普通に生きたい』、と。行きたい所……今は『海に行きたい』ッス、海）
　イルミナは学校の宿題をするみたいに頬杖をついたり伸びをしたりしながら答えを書いていった。
（休日は……『ゲームセンター巡り』、クレーンゲームでかわいいマスコットをゲットッスよ！　あ、最近は『散歩』もッスかね。なにせかわいい家族が増えたので。クラスで好きな人……？　うーん。勿論『みんな好き』ッス！）
　そんなイルミナをお姉さんな顔で見守り、モカは手元の回答用紙に『一番かわいい人：多すぎて書ききれないが、代表としてイルミナさん』と書いた。ちなみに『一番かっこいい人』は『多すぎて書ききれないが、代表として私、モカ・ビアンキーニだな』である。
「フッ……完成だ」
　回答の出来栄えに睫毛を伏せて満足気に笑む横顔は凛々しく美しい。偶然回答をチラ見した研究者は「なるほど、かっこいい」と呟くのであった。

●陽空
「これもう手紙だよね。ボクお返事書いていい？　友達になる？」
　エメスが機嫌よく回答用紙を眺めている。

　特撮鑑賞が趣味の雄斗が『ヘビーラッシュＶＳヒーローズ』という映画を「僕や他にもローレットの人達が出てるからエメスさんも楽しめると思うよ」と勧めてくれたから、後日研究所の全員で映画鑑賞会をしようと決意して。
「雄斗クンは自然の海に行ってみたいんだって。じゃあ次は海で何か調達してもらう依頼をしようか」
　未散が「生まれ変わったら美しいアオイトリになりたい」「ぼくはぼくが何たるか識りたいのです」と書いたのを見て、エメスは特に興味を抱いた。
「行きたい場所は適当に電車を乗り継いだ先の終着駅……ロマンチックだね。感性が理系のボクとは大分違う気がする。推しは……『みこみこ』さま？」
　ことりと珈琲が入ったマグカップを置いて、エメスはモカの回答を読む。
「モカクンは回答もイケメンだね。『生まれ変わったら：考えたことが無い。今を一生懸命に生きるのみだ』だって。休日は洗濯に掃除にお散歩か。想像してごらん、シーツを干している姿を。いいね……」
　そんなモカの夢は『私の店Stella Biancaを混沌すべての国に出店する！』とある。研究所に引き篭もりがちなエメスもこの時ばかりは練達の外に想いを馳せた。

　イレギュラーズはアイディア豊富だ、とエメスが報せれば、研究所中の人たちが集まって彼らの話を聞きたがる。そして、アイディアの発表会が催された。

　雄斗は少し長めの白衣の袖を振り、堂々と演説する。
「ハードじゃなくてソフトの提案なんだけど主に再現性東京のaPhoneに独立したAIとか入れられないかな？　去年のマザー暴走の時みたい事を考えるとほとんどの機械が使えなくなった時に備えておく必要があると思うんだ。手持ちのaPhoneだけでもちゃんと使えれば少しは皆安心出来ると思うよ」
　そういえば、と呟くのがゼフィラ。
「Latest街では使える区域と使えない区域があって、さらにややこしい」
　依頼に出てから使用不可が判明するのは矢張り困るものだと彼女は身をもって知っていた。
「私としては、日常生活をサポートするロボットの開発がいいと思う。まあ、私自身が義手義足の生活なんで、そういったロボットが普及してくれるとありがたいという話なんだが……」
　ゼフィラが自らの手を見つめる。元の世界では、ある程度自分の死を納得して覚悟していたものだった。
　――けれど私は今、生きている。動く事ができる――前みたいに動けなくなる前に出来る事をしたい。
「この研究所は復旧したが、練達の受けた被害は大きいし、怪我人も多いはずだ。あまり言いたくは無いが、長期的にサポートが必要になる怪我を負った人も多いだろう。研究する意味はあると思うよ」
（……と、まあ柄にもなく考えてみたが、やはり一番日常での家事やら何やらが必要なのは私だなぁ）
　机の上に散らかった大量の資料や論文を書くためのノートPCなどを見ながら、こっそりと内心でゼフィラは苦笑した。
（片付けは苦手なんだよねぇ、どうにも）

　サイズの周りには、人だかりができている。
「大量の小さな魔力をに束ねて、１つの大きな生命エネルギーに変換、そして生命エネルギーで動く機械……」
　妖精郷にある虹の架け橋を動かすための安全装置付きロボットとして図面を作る手には迷いがない。
「AI搭載のロボなら、悪用されにくいだろう」
　精緻な設計は確かな知識と計算に裏付けされ、何より他者に自身の考えを共有する能力に長けている。
（まあ、イレギュラーズで一番長く、ずっと非戦の技術クラス……鍛冶屋をやってるからね、約四年の積み重ねよ）
　サイズは知っている。如何なアイディアとて、他人に良さが理解されなければ只の独り相撲として世に出る事無く終わってしまうという事を。脳内に描いたビジョンを他者に伝える事は、とても大切な事なのだ。
「これが作れるなら……あらゆるリソースを吐き出してでも作り、妖精郷の１つの闇を軽く出来るが……高確率で不在証明に引っ掛かる……」
　図面を睨む瞳の奥には忸怩たる想いが渦巻いているようにエメスには思えて、其れが何とも興味深い。
「くそ、シュペルが作った虹の架け橋……複雑で厄介だよ……このロボがあれば、妖精皆で妖精女王への負担を減らせるかもなのに」
　――他者への思いやりを原動力にする声は、とても優しく健気で、人らしいのだ。そんな人らしさがあるからこそ、サイズは他者に愛されるのだろう。エメスはそう考えた。
「キミたち、もういっそ此処の職員になる？」
　思わず勧誘してしまうほど、イレギュラーズは優秀だった。

「人は何かと、占いなどが好きなものです。そんな時、干支、星座、血液型等の傾向からチャートを作り個々のニーズに寄り添えるロボットは如何でしょう」
　未散はドライヤーで髪を乾かしながら人型や動物型、鳥や魚で飛行出来る器を提案する。
「ぼくは存外寂しがり屋ですから、良き友として家に居て欲しいですし猫とか、一寸飼いたいと思って居た所なのです」
　支佐手のアフロを見て、未散は首を傾げてドライヤーを差し出した。あれでアフロが直るだろうか――気にしつつ聖霊も案を重ねて、
「俺としてはドクターと同じ様に医療のロボットが増えて欲しいな。救急車の小回りが効きにくいとこでも患者を運べるような担架付きのロボットとか、どうだ？」
　支佐手が闊達に笑う。
「市場で珍しい南蛮物を探して、見つけたらわしが買い向かうまで押さえちょってくれる『ろぼっと』なんぞどうですかの？　はは、これさえあれば買いっぱぐれて落胆することもない、ええもんでしょう？」
「人間にとってのよき隣人になるような、そんなロボットが生まれるといいッスね。エメスさんらしいロボット、楽しみにしてますよ！」
　イルミナがにっこりと笑えば、エメスは確りと頷いた。
「ありがとう。良い案を形にできるよう、研究者一同頑張るよ」


　やる事はやった。あとは……食べるだけだ！！
「肉だ―！！」
　持ち込みの神の獣のお肉を職員さんに差し入れとして渡して、雄斗は串を取る。いただきます、と折り目正しく挨拶すれば、職員さんがにこにこした。

　口元に近づける串には、黄色い粒のついた野菜と細長い緑の野菜で肉を挟むようにしている。焼けた醤油が混ざり合う串焼きの香りを胸いっぱいに吸い込むと、もうそれだけで唾が沸く。こくりと喉を鳴らしてそれを飲み、がっつりと齧りつけば。
（んっ……美味しい！）
　焼きたてでまだ熱い串焼きの熱気を口の中ではふはふ逃す。食べた瞬間にとろけそうな柔らかさが感じられて、肉の旨みがじゅわっ！　と広がる。
「ホタテとシュライプの串焼きもお勧めだよ」
　職員さんが自分の息子を見るような顔で串焼きを皿に勧めてくれる。

　前は特撮に出たかった。将来の夢は俳優とかスタントマンだった。イレギュラーズになって、親はあれこれと心配したりしているけれど――、
「イレギュラーズのおかげで練達は守られたし、こうして復興できたんだよ」
　ありがとう、これからも応援してるよ、と職員さんが笑ってくれる。

　――沢山の人々が住む都市を、父と母や友達が住む街を、この手で守る事ができるんだ。だから。

「応援ありがとう。これからも頑張るよ！」

　『今はこのままイレギュラーズとしてヒーロー活動を続けたいなと思ってるよ』――将来の夢/山本 雄斗。
　少年の輝く笑顔が咲くと、晴れやかな空が一段と明るさを増したようだった。

成否

成功

ＭＶＰ

状態異常

なし

あとがき

　おかえりなさいませ、イレギュラーズの皆様。依頼お疲れ様でした。
　質問にも答えて自由回答もしてエンジョイもして、と充実の行動っぷりでしたね。MVPは真剣な熱量を感じさせてくださったあなたに。
　ご参加ありがとうございました！