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シナリオ詳細

<アーカーシュ>百年の時を超え

完了

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 大空。どこまでも広がる青き空間。
 大海原とは異なる、また別の美しき世界に――一つの『影』があった。
 雲の狭間に見え隠れする、しかし明らかに雲とは異なる質量。
 ――島だ。
 微かに見えている程度であるが間違いない。『空に島が浮いて』いる。
 イレギュラーズ達であれば空に浮かぶ島と言えば、ざんげのいる空中神殿で馴染があろうが――かの地ではない。位置的には鉄帝国の上空に在るであろうその島の名は、アーカーシュ。

 かつて空にあるとされ、しかし只の伝説とされていた――浮遊島である。


 天空にアーカーシュという浮遊島が実在した――
 その話が鉄帝に齎された経緯は先日、その『アーカーシュから来た』とされる子供達が現れた事から始まる。手作りのグライダーで空を滑空して来たらしく、鉄帝国南部の街『ノイスハウゼン』に現れたのだ。
 ……とはいえ勿論、最初は信じられなかった。子供の悪戯と思った者もいただろう。
 しかし、子供達の一人であるユルグ少年が差し出した『身分証』が流れを一変させる。
 それはかつて百年以上前。アーカーシュ探索の為の行動を行っていたアーカーシュ探索隊隊長ヴィルヘルム・メッサーシュミットなる人物のモノであると確認が取れたのだ。まさか――そんな馬鹿な――そう思いつつも鉄帝国が調査に乗り出せば――

「……そして実際に在った、という事か」

 言うは鉄帝国軍部に属する一人『黒狻猊』バトゥ・ザッハザークである。
 黒き鎧に身を包む獣種の彼は軍部より命令を受けてかの地、アーカーシュへと到達した。空に浮かぶ島であったが、しかし鉄帝国軍部は古代兵器の一つとして空を飛翔せしめる代物を保有しており……アーカーシュが実在し、位置が分かっているのであれば足を踏み入れる事も不可能ではなかったのである。
 なんとも空に大地が浮かんでいるなど不可思議な感覚の所があるが――まぁ良い。
 関係のない話である。己はただ『任務』を実行に移すのみ……と、その時。

「――よし! 総員、装備確認! ここを拠点とし、調査を開始する――急ぎなさい!!」

 バトゥの後方側に更に降り立った鉄帝国軍部の者達がいた――
 それらを統括せしはフレイヤ・エアハルト。
 本来はゼシュテル鉄帝国南方方面に属するフロールリジ騎士団の者である。その中でもフレイヤは砲兵を中心とした部隊を指揮しており、巨大な野戦砲を担いで歩兵に随伴するフロールリジ騎士団の矛とも言うべき存在。
 ――バトゥにしろフレイヤにしろ、共に軍部の命令があって此処にいる。
 そのオーダーは、フレイヤは『伝説の浮遊島たるフレイヤに調査拠点を築く事』だ。
 アーカーシュの地には危険がある。近くには、かつてのメッサーシュミット調査隊が築いた遺跡の町レリッカなる場所があるそうだが……其処以外の多くは未知の領域と言っても良い程に何も分かっていないのである。
 調査隊は魔物や罠の類が多すぎて調査を断念したのであろう。話によれば、調査隊はこの地に辿り着きはしたものの、帰る術を失ってしまったそうだ……故に戦力の限界があった彼らでは奥に辿り着く事が出来なかった。
 ――だからこそ同じ轍は踏まぬと拠点を作る。
 後々に来る戦力が至りやすいようにと……しかし。
「待ちなさい! そこ、勝手な先行は――」
「お前とは指揮系統が異なる。
 私の邪魔をするな、フロールリジの犬如きが。主人に尻尾だけ振っていろ」
「――あんたねッ! 侮辱は許さないわよッ!!」
 バトゥは異なる。彼は、フレイヤとは異なる『上』に従っているのである――
 拠点の確保よりも彼はこの地に『価値』があるかを確かめに来たのだ。
 そも。伝説の地とされた、かつてはあったかもわからぬ天空に何故調査隊を派遣したか?
 古くから食糧問題を抱える鉄帝が領土の拡張などに役立つのではないかという思惑があったからである。それ以外にも一部の者達の思惑としては誰も手に取った事のない――つまり率直に言うと――『財宝』の類があるのではないか、とも。
 バトゥは斯様な金銀財宝に興味はない。これは己よりも強い者からの指令というだけだ。
 かといって、軍部という枠組みが同じなだけのフレイヤ達と足並みを揃えるつもりもなかった。故にバトゥは単独にて動く。アーカーシュの一角に降り立っている彼は、眼前に在りし遺跡地帯へと向かいて――

『――――!!』

 刹那。どこからか甲高い声が響き渡った。
 人の声ではない。これは……魔物だろうか?
 バトゥらの気配を感知したのか、目覚めた存在があったのである――アレは。
「くっ、まずいわ! 迎撃態勢、整えェッ! グリフォンが来るわよ!!」
 フレイヤも見えた。空を飛翔する大きな鷲の様な存在――グリフォンが。
 巨大だ。人を超えるサイズを優に持つ彼らは、フレイヤ達に襲い掛からんと一直線。
 まずい。まだ部隊の準備が完全には整っていないというのに――くっ、せめてあと一分あれば!
 一方でバトゥはかの混乱など意に介さぬ様に進むものだ。
 さすれば見えてくる大きな建物……中を覗いてみれ、ば。
「――むっ。これは……ゴーレムか?」
 さすれば。視界に映ったのは巨大な石像。
 ……石像には蔦や苔があり、もう長い事動いていない様子を伺わせる。
 かつては此処を護る役目でも担っていたのだろうか――? そう思った、瞬間。
『――』
「ほう。眠りから目覚めんというのか? 面白い……お前の力を見せてみろ」
 一体のゴーレムが、起動する。
 自身に纏わりついていた蔦を千切りながらバトゥを見据えて。
 その内面からは明らかに――侵入者を排除せんとする、強き意志が宿っていた。


 ――轟く爆発音。
 どこか近くで戦闘が発生しているようだとイレギュラーズ達は悟るものであった。鉄帝国に齎された伝説の島『アーカーシュ』の探索は、鉄帝国の内だけに留まらずローレットにも依頼として舞い込んできていたのである。
 それは、先行している者達の支援をしてほしいという依頼。
 この地は今まで伝説とされていた場所だ。何が起こるか分からない。
 如何なる魔物がいるかも。如何なる罠が仕込まれているのかも……
「急がないとな……まずは、状況確認だ」
 大空の上――浮遊する大地に地に足を付ける為にも、彼らは往く。
 大空に、少なくとも百年以上存在する浮遊島には何があるか。
 イレギュラーズ達は足を踏み入れる。誰も知らぬ歴史の香りを、感じながら。

 百年の時を超え。今アーカーシュに再び人々が――辿り着く。

GMコメント

●依頼達成条件
 敵勢力の排除。

●フィールド
 アーカーシュという空に浮遊する島の一角が舞台です。
 自然に囲まれた風景……ですが、大空の上を浮遊する島ですので、一歩踏み外せば落ちてしまう可能性もある事でしょう。『飛行』の類のスキルを持っておくと安心かもしれません。

 周囲は古ぼけた遺跡の様な地帯であり、石造りの建物の跡らしきモノが多数見えます。
 時刻は昼ですので、視界には問題ないでしょう。

●敵戦力
・古代獣グリフォン×10
 アーカーシュに住まう古代獣です。
 ライオンの下半身に鷲の上半身を持ち、空を飛翔します。また、風属性の神秘的魔術を行使できるようで、時折強い突風を発生させる事があります。これ自体にもダメージはあるのですが『飛』の効果がありますので、うっかりと島からはじき出されないように気を付けた方が良いでしょう。

・ゴーレム(?)×10
 大型のゴーレムです。この地帯を守護する存在だったのでしょうか……?
 仔細は知れませんが侵入してきたイレギュラーズや鉄帝国軍人たちを敵視しているようです。また、同時にグリフォンも敵視しているようです。
 動きはそう早くない反面、非常強力な膂力や強靭な防御能力を宿しています。
 また、極々稀に熱閃の様な一撃を放つことも出来る様です。
 これらは『出血』『火炎』系列のBSを付与し、また壁を貫通する力もあります。

●『黒狻猊』バトゥ・ザッハザーク
 鉄帝国軍人の一人です。
 非常に優れた力を持つ人物ですが、一方で弱者は一切認めない過激な人物で『武力が無い者』などそもそも鉄帝の民とすら認めていない節もあります。そういった面が影響しているのか分かりませんが、後述するフレイヤを含め今の所他者と連携を取る気はないようです。
 シナリオ開始時は主にゴーレム達と戦闘を繰り広げています。

●フレイヤ・エアハルト
 フロールリジ騎士団に属する、砲兵大隊長たる人物です。
 今回は国軍より指令が下り、アーカーシュの一角に橋頭保を築くべく行動を開始していました……が。突如のグリフォンらの介入により砲兵の準備が整う前に襲撃されてしまっているようです。
 巨大な野戦砲を担ぐ彼女の一撃は強力ですが、周囲は些か混乱状態が続いている様です。 渦中でフレイヤは周囲を鼓舞しながら戦線をなんとか整えんとしています。

●フレイヤ指揮下の兵
 フレイヤ・エアハルト指揮下の兵達です。アーカーシュに降り立った……まではいいのですが、態勢を整える前に魔物達に強襲されてしまいました。少し時が稼げれば砲の準備などが出来そうなのですが、今は散発的に抵抗せざるを得ない状況になっている様です。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はCです。
 情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。

  • <アーカーシュ>百年の時を超え完了
  • GM名茶零四
  • 種別EX
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2022年04月18日 22時06分
  • 参加人数10/10人
  • 相談7日
  • 参加費150RC

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(10人)

ノリア・ソーリア(p3p000062)
半透明の人魚
ムスティスラーフ・バイルシュタイン(p3p001619)
黒武護
ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)
願いの星
イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)
黒撃
オリーブ・ローレル(p3p004352)
鋼鉄の冒険者
エッダ・フロールリジ(p3p006270)
フロイライン・ファウスト
レイリー=シュタイン(p3p007270)
騎兵隊一番槍
ゼファー(p3p007625)
祝福の風
ブレンダ・スカーレット・アレクサンデル(p3p008017)
薄明を見る者
メリッサ エンフィールド(p3p010291)
純真無垢

リプレイ


 鉄帝の上空に浮かぶ島。
 かつて探検隊が到達したとされる場所が――実在したとは。
「まさか鉄帝の上空にこんな島が……なんてね……とってもロマンで胸が躍るわ。
 出来るなら存分に冒険に……と行きたい所だけれども――」
「あっちで派手にお出迎えされている様だしねぇ。
 まずは此処なりの『歓待』を受けるとしましょうか」
 未知なる光景に高揚感を抱く『白騎士』レイリー=シュタイン(p3p007270)だが『雪風』ゼファー(p3p007625)の言が紡がれれば――その興味深げな視線は、戦闘が行われているであろう気配の先へと向けられるものだ。
 あちらに支援すべき鉄帝の先行部隊がいるのであろう。
 まさか既に戦闘状態とは思いもしなかったが……やむを得まい。ゼファーは駆け、レイリーは己がワイバーンと共に急速に現場へと向かわんとする。やれやれ、地下にとんでもないモンが埋まっている事は今までにも多々あったが……
「今度は空にこんなモンが浮いてた、と。
 内情よろしく、相変わらずとんでもない国よねえ。
 次は海にでもなんか沈んでたりするんじゃあないかしら」
 あり得ないとは言い切れない推察にゼファーは自ら苦笑しつつも、往く。
 砲兵隊が混乱している現場の最中へと――さすれば。
「よし、皆! 助けに来たよー! まずは落ち着くんだ、一体一体を確実に相手取っていこう!」
「態勢を立て直してください――それと、落下もせぬ様に。万一があっては危険ですから」
「フレイヤ隊の皆さん! 助太刀させてもらいます――! さぁ、此方の方へ!!」
「おお、イレギュラーズ! イレギュラーズの援軍だ――!」
 低空を飛翔しながら辿り着いた『チョコの妖精』ムスティスラーフ・バイルシュタイン(p3p001619)が混乱する戦況の最中に癒しの術を紡ぎげば『鋼鉄の冒険者』オリーブ・ローレル(p3p004352)に『純真無垢』メリッサ エンフィールド(p3p010291)もその動きに追随するものだ。
 砲兵隊の彼らへと檄も成しながら。さすればグリフォンに襲われていた彼らの傷が塞がり、また援軍の到来を感知する彼らの士気もあがるものだ……
 更には、グリフォンの生じさせた強風によって『崖』とも言うべき外へと吹き飛ばされる砲兵隊がいれば、ムスティスラーフや『導きの戦乙女』ブレンダ・スカーレット・アレクサンデル(p3p008017)が即座に動くもの。
「おっと、大丈夫かい!
 彼らには注意しておいた方が良いよ――落ちたら流石に無事じゃすまなそうだ」
「この高さから落ちるなど……想像もしたくない所だからな。気を付ける事だ」
「え、ええ! すみません、ありがとうございます――!」
 救助し、再度地の在る場所へと誘おう。
 大地は遥か彼方だ。飛翔する術を持っていなければ、タダでは済むまい。
 故に落ちてしまう者がいないかと警戒もしつつ――

「――立ち上がれ諸君。前を見据え、踏みとどまれ」

 更に刹那。繋がれた声があった。
 それは――『フロイライン・ファウスト』エッダ・フロールリジ(p3p006270)だ。
 砲兵隊の真なる指揮官。彼らが、そしてこの部隊を率いていたフレイヤ・エアハルトが敬愛せし御方――あぁ――
「エ、エーデルガルト隊長……! 来ていただけたのですね!」
「然り。同胞らの危機に至らぬ理由があろうか――?
 しかし、甘いな……この程度の強襲に混乱など。後で鍛え直してやる必要がありそうだ」
「――光栄であります!!」
 フレイヤ隊の盾にならんと最前線にて仁王立つ。
 襲い掛かるグリフォンあれど、拳をもって穿ち貫く一閃を見せ混乱を鎮めるのだ――
 その背が。その声が砲兵隊の力となろう。
 凛々しき御方。フロールリジ騎士団の誇り。あぁ総員奮起せよ、あの方の前で無様を晒すな――
 が。
「………………エッダ殿? エッダ殿? なんだかいつもと違わない?」
「…………」
 そんな『エッダ』の姿をみて、思わずレイリーは言葉を零すものだ――『誰だアイツ???』とエッダを知る者の中には反射的にそんな感情が湧き出る者もいたかもしれない。え、だって……えっ? 何、どうしたの? いつもの酒をかっくらって、酒瓶と共にむにゃむにゃ寝込んだりするエッダ殿はどこに??? そんなキャラでしたっけ???

 ――実家での自分はまじめなこで通ってます。
 ――つまりこういう感じであります。
 ――どうか話を合わせて下さいであります。なんでもしますから。

 超速のアイコンタクト。エッダが最前線に立ったのは、そんな感情が示される顔を砲兵隊に見られたくない一面も……もしかしたらあったかもしれない。だからお願いであります。ここはどーか、どーか。後で御礼はするでありますから~!
「ハハッ! エッダはマジメでイイ子だよ! ウンウン、オレが保証するさ!」
「そうですわね、ええ――あれこそがエッダですわ!」
「……よし! 私はヴァイスドラッヘ! 鉄帝軍人の皆さんを護るため只今参上ッ!」
 さすれば先のレイリーと同様にワイバーンに乗り駆けつけたのは『業壊掌』イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)と『祈りの先』ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)である。あと『なんでもする』って確かに聞いたので、レイリーも先のエッダの様子には何も呟かずに押し通る――!
 名乗り上げる様にイグナートがグリフォンらの注意を引き付け、彼の行動に掛からぬ敵があらばヴァレーリヤが討つ。敵の数は少なくないものの、しかしフレイヤ隊が態勢を立て直し合同で敵に当たる事が出来れば随分と楽になる筈だと。
「つーことで! 露払いはしてやるから今のうちに体勢を整えなさいな! 此処を切り抜けられれずに冒険終了……おぉ勇者よ、しんでしまうとはなにごとだ! なんて展開は勘弁よ!」
「やれやれ。天空の島と聞いて想像はしていたが……空中戦とはな。
 まぁやれるだけやってみるとしようか――慣れればマシとなろうさ」
 更に辿り着いたゼファーの一撃とブレンダの一閃が続く。彼女の左目に宿りし黄金色の輝きが飛翔の力を齎すのだ――さすれば空を蹴る様に。地を駆け抜けるのとはまた違う感覚であるが故に踏ん張りの利かせ方がなんとも異なる、が。
『――――!!』
「ハッ、その程度のそよ風でどうにかできるわけないだろう!
 此方をあまり舐めてくれるなよ。戦い甲斐がないというものだ……!!」
「小鳥のみなさん。こっちよ~! 早く来てみなさーい!」
 それでもグリフォンへの距離を詰めるには問題ないものだ。
 奴らが風にて此方を弾き飛ばさんとする――さすれば躱すように身を縮め、一気に跳躍。
 小剣を投じて引き付けよう。狙いは別箇所、起動しているゴーレム達の下へと、だ。レイリーもワイバーンに乗りながら声を張り上げ奴らの敵意を引き付けんとするものである……足並みを乱して彼らの陣形を伸ばし切ってやろうとする。
 ――しかし空を飛ぶ島とは、何ともファンタジーなものだ。
「というのも、何とも今更だが」
 自らの思考に、苦笑しながらブレンダは紡ぎつつも。
 例え如何なる場であろうと――助けを求めている誰かがいるなら助けに行くのだ。
 なぜかって?
「――それが特異運命座標だろう?」
 眼下。体勢を整えんとしている砲兵隊を見据えながら――再度の斬撃を紡ぐものだった。
「……それにしても、おもうに、ゴーレムからすれば、わたしたちは、勝手にはいってきて 勝手にしらべまわる、まねかれざる客では、あるのでしょう……だから、彼らがこちらを、攻撃するのは……向こうの方が正しいのかも、しれません」
 そしてその行動と同様に、グリフォンらを引き付けゴーレムらへと導かんとするのは『半透明の人魚』ノリア・ソーリア(p3p000062)もである。自慢のゼラチン質のしっぽを奴らに見せつけ、天空には存在しえぬ未知にして極上の美味を想起させる――
 そのまま往くのだ。あちらで起動しているゴーレム達とぶつけさせる為に。
 ……正直、この地を護らんとするゴーレム達の立場を思えばこそ、彼らは正しいのではないかと思案する面もあるのだが。しかし、此方にも此方の事情というモノはあるのだ。だから。
「押し通らせて もらいますの……! えいっ!」
 一気に踏み込む。ゴーレムらの懐へと。
 道を切り開く為に。この島の未知を――解明する為に。


 イレギュラーズ達の狙いは大きく別けて二つあった。
 一つはフレイヤ隊を援護し、彼らに立て直す時間を与える事。
 もう一つはグリフォンらをゴーレムへとぶつけ――三つ巴の様相を実現させる事。
 幸いというべきかグリフォンとゴーレムの間に協調性はない。故に多数のイレギュラーズの手によって上手く引き付ける事さえ出来れば三つ巴の形にすることはそう難しくはなく……

「――なんだ? 鉄帝国……の者達ではないな。さてはローレットか?」

 更にはゴーレム達の方面にも戦場を移せば――バトゥがいるのだ。
 鉄帝国の軍人。こちらと歩調を合わせる気はない様だが……しかし。
「『黒狻猊』バトゥ・ザッハザークか。ウワサだけは聞いたことがあるよ。鉄帝人らしい鉄帝人だってね――ただ、今の状況ぐらいはワカってるよね? せめてこっちを敵視はしないでほしいんだけどなぁ」
「ふん――勝手にするが良い。邪魔立てさえしなければ見逃してやる」
 積極的に敵対する意志も……少なくとも今の所はないとイグナートは推察するものだ。
 むやみやたらに敵を増やす程愚かではないだろう。まぁ、今のやり取りからして『見逃してやる』という言い草には……なんともちょっと、ウマが合わないヨカンがするものだが。
「きます、の……! グリフォンの風、ですの! 気を付けてくださいですの!」
「外よりはマシだろうが、体勢が崩されれば厄介だ……飛ばされるなよ!」
 ともあれ。イグナートに続いてノリアやブレンダも引き付けたグリフォンらが再び風を舞い起こすものだ――それらはイレギュラーズ達のみならずバトゥやゴーレムらも対象とする一撃。
 が。遥かなる大空が近い外周部と異なり、遺跡側には多くの壁がある。
 幸いにして、落とし穴の様に開いている場所も見える限りは無い様だ――故にノリアの推察通り空を泳がなくても墜落の危険は少ない。ただ、ブレンダの言う様に意図せぬ吹き飛ばされをしてゴーレム達の中心にでも飛ばされれば窮地に陥る事もあろう……
 故に過剰に吹き飛ばされぬように警戒はしながら立ち回るものだ。
「行くよ……! ここからが本番ってトコロさ!」
「さぁ――斯様な地にて舞う力を見せてもらおうか!」
 そして、強風の間隙を見据えたイグナートは自らを強化する加護を齎しつつ、竜撃の一手を紡ぐもの。グリフォンの腹部へと紡ぐ掌底の一閃が捩じりこまれる様に――直後にはブレンダが己が超速のままに剣撃を叩き込むものだ。
 グリフォンも、ゴーレムも。どちらも討伐対象であれば容赦する道理はなく。
「ははぁ。空を飛ぶグリフォンは、こういう所にいても『らしいな』とは思っていたけれど……面白そうなゴーレムがいるじゃない、私も混ざるわ!」
 そして続くのはレイリーもだ。交差する射線の嵐の中を突っ切れば――グリフォンの風たる神秘がゴーレムへと直撃し。ゴーレムが反撃に紡ぐ熱閃が天を穿ち貫く。辛うじて直撃を躱し往くレイリーは大盾を構えながらソレらを受け流さんとし。
「全く、危ないわね――でも、こんなんじゃやられないわよ」
 未だその身に宿る闘志の儘に戦いづづけるものだ。
 まずは依然として残るグリフォンから集中して打ち落としていこうかと。
「今のうちに体勢を立て直して! 私達が時間を稼ぎますわっ!
 ――まずは此方を見下ろしてくるグリフォン達から、ですわね……!!」
 さすれば乱戦が激化する最中においてヴァレーリヤも立ち回る。
 引き続きフレイヤ隊の援護を成しながらグリフォンへと撃を繰り出すのだ。奴らの風が吹き荒び、飛ばされる者あらばワイバーンを駆って救助へと回り。続けざまに唱える聖句が彼女に戦いの加護を齎すもの――
 万全を期せばメイスを振るいて炎を顕現。数多を呑み込みグリフォンらを撃ち落とさんとして。
「おい貴様! その軍帽を寄越せ! 命令だ! ――あとどれ程で放てるかッ!」
「ハッ! 第一陣、第二陣、装填は完了! 第三陣がもう間もなくです!」
「遅いッ! 次の呼吸までには整えておけッ!」
 直後にはエッダが再度声を張り飛ばす。フレイヤ隊の状況を確認しながら叱咤する様に。
 そうして自然な動作で隊員の一人から軍帽を奪いとりて目深に被るもの。いつものヘッドドレスは事前に懐にないないして軍人モードだったが、帽子だけは忘れてしまってたから焦った焦った。ふぅだがこれで一安心である……いや、これはその、部下共におかしな姿を見せたくないとかそういう事ではない、ただちょっと折角だから軍帽もあった方がいいだろうなと思考しただけで別に他意はなく、あっグリフォン来たからとにかく対応せねばまずいまずい!(ここまで一息)
「少佐! 準備が整い次第報告せよ――遅れは許さんぞッ!」
「ハッ! この命に代えましても!!」
 そして腹心たるフレイヤにも言葉をかけながら、指揮を執り続けるものだ。
 砲撃準備はあと少し。砲兵狙う敵あらば――指揮官たる己が拳が妨げよう。
 歩法と共に徹甲拳一つ。死角より放たれる彼方への一撃がグリフォンの頭部を穿ちて。
「あと一歩……なら此処が踏ん張り所ですね……!!」
「はは! 砲兵の一斉射撃もさぞ壮観なんだろうけど――僕も負けてられないなぁ!」
 更にメリッサは治癒の術だけのみならず、光の刃を展開しグリフォンらへの対抗と成すもの。戦場に存在する敵だけを穿つ一閃が奴らに混乱を巻き起こすものだ――そしてその間隙を見逃さぬムスティスラーフが、己の力を収束させる。
「さぁプレゼントだよ。遠慮せずに受け取っておくれ!!」
 それはむっち砲。息を限界まで吸い込んで放つ事による緑の閃光が空を舞う――
 想像を絶する威力を伴った奔流はグリフォンを呑み込みて、消し飛ばさんとする程だ。ある程度、ムスティスラーフ自身にも反動が至る一撃ではあるが……しかし敵に与えた傷と比較すれば微々たるモノ。
『ガ、ァアア……! グルァアアア!!』
「あらららら。怒ったのかしら――? まぁだからと言って手は抜かないけれどね」
「ゴーレムと異なり、明確な生物であるが故か感情が豊かですね……ま、終わらせてもらいますが」
 そして。ほとんどのグリフォンはゴーレム側へと誘導されていたが故か、砲兵隊を襲わんとする少数のグリフォンは集中攻撃され壊滅状態だ。怒り狂い爪を突き立て、死力を振り絞って最後の風を吹き荒らすが――されど、今更此方の戦場の流れを変える程ではない。
 ゼファーが槍を片手に跳躍する。オリーブの敵を滅さんとする一閃もまた、ゼファーとは別方向から振るわれれば――一体誰ぞがその攻撃に耐えられようか。羽を穿たれ肉を裂かれ。力なくその身が落ちていけ、ば。
「さぁ、って。守られてばかりではつまらないでしょう――
 戦場の華もそろそろ良いんじゃないの?」
 ゼファーは紡ぐ。それは砲兵隊へと。
 障害は排除され。援護を受けた彼らの準備は――万全だ。なれば。
 ――連中の土手っ腹に風穴を開けてやりなさいな!
「隊長! 全ての準備、完了しております!!」
「よし! ――エーデルガルド様!!」
 さすれば砲兵隊から声が紡がれる。少佐が、砲兵隊隊員が――戦の時間であると。
 ……少佐。よく私を。いや、私達を信じてくれたな。
 そして砲兵諸君、時間だ。

「――耕せ。根こそぎだ」

 その号令と共に全てが放たれる。
 見せてやろう天空の島々よ。これが地上の力だ。
 ゼシュテル鉄帝国南方方面軍第三歩兵連隊の鬨の声を――聞かせてやれぇ!!


 それはまるで交響曲の様に。
 一糸乱れぬ音の連なりが――生じていた。
 直後には着弾。炸裂。衝撃音。数多の撃がゴーレムや残存のグリフォンへと襲い掛かりて。
「来たか! 援護射撃だ……! 当たらぬ様には注意しておけよ!」
「味方の砲弾も、敵の殺意も入り乱れる戦場、か……! あぁ全く面白い事この上ないわ!」
 生じる爆風。それらに巻き込まれないように動いているのはブレンダやレイリーである。
 彼らの砲撃は正確だ。イレギュラーズ達が布陣しておらず、敵だけを巻き込める様な地点に砲撃を繰り返している――とはいえ前衛が入り乱れる混戦状態が更に苛烈となれば、いくら彼らの技量があっても多少は巻き込まれてしまうかもしれないが。
 そこは前線で戦う者達の立ち回り次第でまた何とかなる所でもあろう。
 砲撃が直撃するゴーレムあらば、体勢が崩れるのがブレンダの瞳に映るものだ――故にそこへと一閃する。空中で捻りを加え、奴らの関節部へと剣を投じ。ゴーレムらが反撃の拳を紡いで来れば、その手中から逃れんと更に跳躍するもの。
 同時にレイリーも、風に乗る才知にてグリフォンと死闘を繰り広げるものである。
 空を飛翔する権利が其方にだけある物と思った――?
「甘いわよ。だから貴方達は小鳥にしか過ぎないのよ。
 井の中の蛙大海を知らず……いや島を出ぬ小鳥、大空を知らず――って所かしら?」
 穿つ一閃此処にあり。空中戦を制し、レイリーはグリフォンを叩き落すものだ。
「観測手の方ですわね? 援護いたします――周囲は私にお任せくださいまし」
「おお。感謝申し上げます、司祭殿……!」
 そしてそれらの砲撃を援護する為にヴァレーリヤが、砲撃の精度を上げるであろう観測手の支援へと至るものだ。必要があらば上空から砲手へと合図を送りもしようか。彼らの苛烈なら砲撃がこの戦場を有利にするのであれば――如何様にでも動こうとヴァレーリヤは備えて。

「フン――この気配、主人が戻りでもしたのか……まぁいい精々群れで力を誇るがいい」

 さすればゴーレムらと戦うバトゥも、砲撃が始まればあちら側の事態に明確なる変化が在った事に気付くものだ……混乱が生じていた砲兵隊が統制を取り戻すとは……
 だがやる事に変わりはない。バトゥは己が眼前に聳える様に立つゴーレムへと――踏み込むものだ。その歩みに恐れはなく。天より降り注ぐゴーレムの拳を……むしろ真っ向から受け止める様に。
「邪魔だ。所詮、木偶の坊に過ぎぬ人形が――獅子に喰われる意を知るがいい」
 斬撃一つ。交差する拳と刃が凄まじき衝撃を生じさせるものだ。
 されど、鍔迫り合いとも言うべき時間は刹那に終わる。
 足に力を、全霊の膂力をもって挑んだバトゥが――ゴーレムの一撃を上回ったのだ。
 両断するゴーレムの腕。そのまま身を駆け上がりて首筋へと叩き込めば、ゴーレムの動きが一段と鈍くなりて……
「――流石だね。一人で突き進もうとしただけのコトはあるよ……でも。なんでだい? 最初からフレイヤたちを連係していればもっとラクに調査が進んだだろ? いやむしろ自分だって危機に陥る可能性はあったハズだ。何でこんな戦い方をするの?」
 その戦い、正に獅子の如く。
 ――だからこそイグナートは疑問を紡ぐものだ。バトゥが大打撃を与えたゴーレムに、トドメとなる一撃を放ちながら――その視線は彼へと。
 バトゥの在り方は『鉄帝人らしい』のだとは分かるし理解もする。
 だがそれにしても過激だ。幾ら力を至上とする鉄帝国と言えど――
「オレも鉄帝で生きるには力がヒツヨウだと思う。
 でも、力ってのは単純な強さだけじゃないハズさ。オレはそう信じてる!」
「それは弱者の論理だ。自然界を見据えろ――弱者の肉は強者の糧となるものであり、それこそが自然だ。人間だけが弱者の権利を声高に叫び、それを武器に強者の権利を侵害する……嘆かわしい。煩わしい。歪だとは思わんか?」
「それは動物の理論だろうさ! ヒトは手を取り合い、そして生きていく事を知っている種族だよ――弱肉強食が世の真理だと言うのはジユウだけれども、他のヒトを虐げたり見下したりするのは賛成できないね!」
 平行線。バトゥとイグナートの言はどちらも合わぬ。
 真っ向から見据える両者の視線は――しかし、更に介入して来たゴーレムの拳によって阻まれ。
「戦いの途中に、よそ見するような敵……鉄帝軍人の敵として、ふさわしくありませんの!」
 そこへ至ったのがノリアだ。何事にも動じる事なき、大いなる海の力を纏っている彼女に撃が成されれば――まるで弾き返すかのように。特に彼女が引き寄せんとしているのは、残存のグリフォン達を相手にしていないゴーレム達だ。
 バトゥの戦いの姿勢次第ではグリフォンを相手取っていないゴーレム達を優先して攻撃してしまうかもしれぬと。故に、彼の歩む道のりを誘導する様に言も繋ぎながら――ノリアは立ち回りて。
「まぁ、最悪ザッハザークさんは放っておきましょう――あれだけの力があれば単独であっても早々には落ちないでしょうし。むしろ近くにいて無用な諍いに発展させるよりは……好きにさせた方がマシかもしれません」
「グリフォン達はもう虫の息です――後はこのゴーレム達だけですね! もうひと頑張りですよ!」
 そしてオリーブがゴーレムへと武技を振るいて、メリッサも熱砂の嵐を顕現させ彼らを打ちのめさんとする――ゴーレムも必死の反撃なのか、熱閃を投じて抗えばイレギュラーズ達に傷を齎すものだ、が。
「しかしこのゴーレム達は一体何を護ってるんだろうね――
 大切な何かがあるのかな。後で調べてみたい所だけど……とぉ!」
 刹那。ゴーレムを相手取るムスティスラーフは放たれた熱閃を辛うじて回避。
 肌を凶悪な熱量で焼くソレは、壁を貫く程の威力を秘めているものだ。
 これ程までに激しく抵抗する理由はなんだろうか。この島には一体何があるのだろうか。
 思考を重ねつつも彼らから視線を逸らしたりはしない――観察し、先の熱閃の様な一撃を受けるまいと立ち回りを続けるのだ。こういった機械仕掛け的な存在であれば同じような事前動作があってもおかしくは無い筈だからと。
 そしてイレギュラーズ達は押し包んでいく。フレイヤ隊の支援射撃と共に。
 彼らの支援は的確にして強力だ。遠方から次々と降り注いでくる砲弾がゴーレム達に直撃し……さすれば彼らの身が強靭であろうとも段々亀裂を生じさせてくるもの。ゴーレムらも拳や熱閃にて対抗してくるが――しかし、そこはイレギュラーズが防ぎきる。
 砲兵隊には近づけさせぬし、此処で凌ぎ切らんとするのだ。
 ノリアやレイリーが彼らを押し留め、イグナートやブレンダの一撃が至近より彼らに。ムスティスラーフの砲撃に近しきむっち砲が砲兵隊の軌道に合わせて放たれればより深く、深く傷を刻むもので。
「どんなに硬く厚い守りだとして中から壊せば一緒のこと……
 そしてね。古くて壊れてるかも分かんないのは――叩いて直すかぶっ壊すが基本よ!」
 そこへゼファーが畳みかけるものだ。
 彼女が秘めし殺しの業が此処に顕現する。絶技の贋作は、強靭なる山すら貫こう――
 踏みしめるのだ、大地を。
 恐れず往くのだ、されば勝利を誘わん。
 命を命たらしめる其の一点を――気によって貫く。
『――――』
「臍を曲げないで頂戴ね――
 勝ちを引き込むのも勝てる方法を選ぶのも立派で真っ当な強さなんですから」
 さればゴーレムが呻くように。胸倉に空いた虚空の穴を見据えて――倒れるモノ。
 最早決定的であった。グリフォンは落ち、ゴーレムは数も少なく、砲撃は健在。
「貴方達に何が在ったかは存じません。けれど……今は道を拓かせてもらいますわ……!」
 そして最後の一体へとヴァレーリヤが攻勢を紡ぐ。
 炎を纏ったメイスを此処に。全霊を用いて紡ぎあげる一撃は、単純であればこそ破り難く。
 ――掛け声一つと共に、敵を捻じ伏せた。
 倒れ往く。この地を護る、ゴーレムが。
 さすればエッダが手を挙げると共に……砲撃の音も止みて。
「周囲警戒。そして――たしかザーハザックとかいう輩だったか?」
「ザッハザークだ。間違えるな小娘」
 直後にエッダが声を掛けるのはバトゥだ。そうか、と紡ぐ彼女はそのまま言を繋ぐ。
「貴様――私の犬を嗤ってくれたようだが。“群れ”の狩りの味は存分に味わったな?」
「今の雑音が“群れ”の力だとでも? 随分と謳うようだ――騒がしければ強いのか?」
 貴様――隊長殿を馬鹿にするのか――!
 砲兵隊の一部がバトゥに対して闘志漲らせ、しかし。
「――よい。所詮“群れ”の価値を知らぬ獣だ。獣に説く道理はないという事に過ぎん」
 エッダは手の動き一つで全てを制する。
 さすれば『はっ!』とすぐさま統制が戻るものだ――
 完璧に整えられた軍服姿。軍帽より覗かれる眼光には強さが宿っており。
 その凛々しい姿に砲兵隊は敬服しているのである――ホント誰だあのエッダ。普段のエッダはどこ! 返して!!
「……ところでエッダ殿。さっき『なんでもする』って言ったわよね」
「……えっ。レイリー殿?」
 だからか分からないが。エッダの耳元でレイリーが囁くものだ。
 後で覚悟しなさいよ――と。
 エッダが見た、レイリーの表情には笑顔の色が浮かんでいたとか。

 ……ともあれ戦闘は終結した。ゴーレムは沈黙し、グリフォンの残存ももういない。

 単独行動を好むバトゥの姿が消えているのは――まぁいいとして。ともあれ砲兵隊は再度襲撃が行われぬ様に拠点の構築を急いでいた。フレイヤを中心とし築かれる拠点……その最中、イレギュラーズ達は先程ゴーレムと戦った場にて。
「100年以上前の探索隊が此処に……にわかには信じ難いけれど、話を聞いて実際に浮遊する島が在った以上、確かなのでしょうね……かつての探検隊はアーカーシュで何を見つけたのでしょうか……と、んっ?」
「わぁ見てよこれ――綺麗な場所だね。泉? いや公園みたいな広場かな……?」
 ヴァレーリヤやムスティスラーフは周囲の探索を行っていた。
 さすれば、先のゴーレム達が守っていた奥には……美しき白い花と、それらが咲き誇る泉の様な開けた地点が存在していた。よくよくムスティスラーフが周囲を観察してみれば、公園のベンチの様な……椅子らしき残骸も存在している。だからこそ公園か何かではないかと、彼は思考を巡らせて。
「ふむ……かつて何が在ったかのような名残を感じるな。空に浮かぶ島を探検するなど冒険譚としてはありきたりではあるが――実際に斯様な代物があれば心が躍るものだ。文明でもあったのか、それとも偶然にもこのような形になったか……」
 直後にはブレンダも周囲に視線を巡らせるものだ。
 彼女が見つけたのは小さな動物である――ネズミか? いや、ネズミよりも更に小さい……どちらかというとハムスターの様な丸っこいタイプの小動物だ。五匹ぐらいで群れを成して、なんだか木の実を頬張りながらこちらを見据えてきている。
 どうにも好戦的な魔物ではないようだ。指先を伸ばせば、匂いを嗅ぐようにこちらに近付いてくるもの。随分と人懐っこい……名は、はたしてなんというのか……
「ひとまずピンチは乗り切れましたね……それにしても、空を飛ぶ島が空中神殿以外にもあったなんて……イレギュラーズになってから驚きの連続ばかりです」
 同時。メリッサもまた、外周部から大空を見据えるものだ。
 どこまでも続く青空。雲が間近に見える程の地があるとは――
 この世はまだまだ不思議ばかり。
「とはいえこれで終わりじゃなくて、これから始まりですね……!
 アーカーシュの調査頑張ってくださいねフレイヤさん!
 また困ったことがあれば手伝いにこさせてもらいますね!」
「こちらこそ! 今回は救援に感謝するわ……!
 今度はこっちが助けられたらいいんだけれども」
 そして笑顔と共に砲兵隊を率いるフレイヤと握手を交わすものだ。
 いずれの再開を約束しつつ。感謝を述べて……
「ともあれ、一端、戻りましょうか……島々は他の場所にも、広がっている、筈ですし……探索すべき場所は、もっともっとあるかも、しれません……」
「そうですね――百年前に探検隊が到達した地、何がある事やら……」
 しかしひとまず奥にまで探索はせず、一度味方と合流しようかとノリアやオリーブは紡ぐものだ。この辺りの敵性勢力は排除できた……また来る機会もきっとあろうと。
 故に踵を返す。
 遥かなる天空に浮かぶ大地。
 百年の時を超え、人々はアーカシュへと――到達した実感を、得ながら。

成否

成功

MVP

ブレンダ・スカーレット・アレクサンデル(p3p008017)
薄明を見る者

状態異常

メリッサ エンフィールド(p3p010291)[重傷]
純真無垢

あとがき

 依頼、お疲れさまでしたイレギュラーズ!
 浮遊する島。かの地には何があるのでしょうか……冒険の予感がしますね!
 また今回発見したアーカーシュの場所や品物に対する『命名権』なるものが、一部の方にお送りされます。
 それに関しては暫くお待ち頂ければと思います。

 それではありがとうございました!

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