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シナリオ詳細

<アーカーシュ>アンリミテッドフィールドワーカー

完了

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 部屋は鉄と油の香りでいっぱいだった。
 歯車だらけの機械が蒸気を噴きながら動き続け、今にもなにかが起こりそうだ。
 この部屋の主はきっとインテリアに困ったことがないのだろう。なぜなら自動的に壁と床が機械と何かの資料で埋まっているのだから。
「やあ! よく来たね戦闘機娘チャン! ボクの実験機に入ってくれる気になったのかな?」
 部屋の中心で振り返ったのはなんとも奇妙なシルエットの少年だった。
 少女と見まがう綺麗な顔立ち。細い脚。さらさらな銀髪。ややつり上がった目は見つめた相手をさぞドキドキさせることだろう。主には彼が背負った八本腕の多機能マジックアームが絶えずガチガチ音を鳴らすせいだろうが。あるいは彼の経歴と家柄への緊張かもしれない。
 そう、彼こそはシア・クローシス。通称『改造屋(チューナー)』ハンドレッド。
 鉄帝国では改造や修理の腕で知られたクローシス家に生まれた天才少年であり、その天才っぷり故に良くも悪くも名が知れている。
 砂漠の傭兵界隈では『武器商』ファイを介した改造武器の腕で、鉄帝軍人界隈ではクローシス家を通した兵器開発の腕で、それぞれ優れた働きをする彼だが、話し出すと止まらないキャラの濃さから別の意味でも忘れられない男である。
 そして彼女――ルクト・ナード (p3p007354)の背中に機械接合部を埋め込んだ人物としても、一部では知られていた。
「……そうじゃない。大体、呼んだのはそっちだ」
 機械の八本腕を交えたややオーバーなハンドレッドのリアクションに、ルクトは無表情のまま彼の顔を指さして見せた。
「空中戦闘を要する仕事なんだろう? 場所はどこだ。鉄帝上空か?」
「まあ……そう、なるのかな? えっと今は『どこ』にあるんだったかな」
 腕を組んで(機械の腕も器用に組んで)考えるしぐさをするハンドレッド。
 奇妙な言い方にルクトが小首をかしげると、ハンドレッドはピッと壁を指さした。
 そこには大きく、『アーカーシュ』と書かれていた。

 空飛ぶ島、アーカーシュ。
 その存在は伝説に語られ絵本にすらなっていたが、しかしそれが『空想上の存在ではない』証拠がつい最近に発見された。
 遠く幻想王国の地、神翼庭園ウィツィロ。はるか古代アーカーシュから欠け落ちた大地だとされるこの土地にて、アーカーシュから産まれた神翼獣ハイペリオンが封印より目覚めたためだ。
 それ以降一部の研究者たちはアーカーシュの実在を『再発見』し、その所在や秘密について再研究を始めていた。
 そんな折、鉄帝のある地にて『アーカーシュから落ちてきた少年達』が現れたのだった。
 伝説に語られるほどの、おそらくウン百年ぶりのアーカーシュからの来訪者に鉄帝軍は動き出したのだ。
 ついにその実在と所在を突き止めた鉄帝軍は、早速調査隊を編制し空へと旅立つのだ。


 部屋は砂糖と花の香りでいっぱいだった。
 フリルだらけの洋服が壁一面にハンガーで吊され、ファッションショーでも始まりそうだ。
 部屋の主もまた、その部屋に相応しいふわふわぴこぴこした服装の少女であった。
 名をヒルディリド・サリーシュガー。
 サリーシュガーといえば鉄帝でも名高い軍人の家系であり、『絶望の青』攻略戦で鉄帝側の援軍を指揮し活躍したことでも知られている。
 そこへ来ると、このヒルディリドは軍人っぽさが皆無なのだが……。
「なのに私を探索隊に誘ったのよ? おかしーと思わない?」
 頬にながれた長い髪を指でくるくると巻き取りながら話すヒルディリド。
 テーブルとお菓子と二人分の紅茶を挟んだ向かい側で、なんかぬいぐるみ一杯のソファに埋まったリュカシス・ドーグドーグ・サリーシュガー (p3p000371)が『うーん』と唸った。
 テーブルに置かれたのは『アーカーシュ探索隊』の概要書である。なんでも官民合同の(ローレットを実働部隊に組み込んだ)作ったチームを結成し、空に浮かぶ幻の島の探索を行うということらしい。
 リュカシスの叔父にして養父、ヒルディリドからすればパパにあたる存在であるヴディト・サリーシュガーは以前の活躍の流れで絶望の青あらため『静寂の青』の駐屯基地につめていると聞く。その任務をとっぱらってまで空に飛ばすのは惜しいということなのだろうが……。
「それで……ボク?」
 ただいまフリッフリぴっこぴこの服装に替えられたリュカシスが、自分の頬を指さした。
「リュカシスちゃんならローレットだし実績ケーケンも豊富だし? オッケーそうじゃない?」
 そんなあ、と思わないでもないが……それより『幻の浮島』への探索は心躍るものがある。
 ちょっとまえに遊びに行ったハイペリオンランドのハイペリオン様が生まれた土地だというのも、なかなか魅力的な要素だった。
 そして――。


「飛んでる!?」
 空を舞う船の中、窓に張り付いて雲を抜けるさまを見つめていたリュカシスは目をキラキラさせていた。
 流石にこんな高度まで飛ぶことはないようで、ルクトもまた感心深そうに外を見つめていた。
「空飛ぶ船とは……」
「ワクワクするだろう?」
 コントロールデッキの椅子に腰掛けたハンドレッドが足を組み、その横で『武器商(バイヤー)』のファイがビミョーな顔で天井を見つめている。武器に限定されるが目利きの良さからハンドレッドの付き添いに連れてこられた武器商人である。顔がビミョーなのは、雲より上に来ることが『元の種族的に』ありえなかったからかもしれない。
「小型探索艇の武装は一通り揃え終わっているが、流石にこんなことは初めてだぞ」
 無茶を言ってくれたな、という顔でハンドレッドを睨むファイ。
 ハンドレッドはといえば、なんだかおかしそうな顔で椅子を回した。
 この『飛空艇』は元々潜水艦として設計された船である。
 ハイペリオンの奇跡をはじめ複数の飛行機構を取り込んだことで空を移動する船となったわけだが、ぱっと見た限りデカい気球に船をぶらさげた作りになっており、遠くから見ればずんぐりした鳥だ。気密性はともかく居住性は随分悪そうである。
 ハンドレッドは椅子をくるーりと一回転させてから、デッキに集まっているローレット・イレギュラーズへと呼びかけた。
「君たちにはこれから、『レリッカ』という村を拠点として周辺遺跡群の探索を行って貰うよ!
 いやーあ心躍るよね、伝説の浮島。未だ見ぬ技術。空に浮かぶ古代遺跡!」
 鉄帝に埋まった『最新鋭の古代遺跡』をいじくり回すのを世の楽しみにしているような男だ。空にも遺跡が埋まっていたなどと知ればこうもなろう。
「あー、説明しておかなきゃかもだけど、『レリッカ』についての説明は他の部隊員から聞いてもらえるかな? あんまりキョーミないんだ。
 それより気になるのは周辺の遺跡群だよ。古代獣が山ほどいて危険らしいからここの人等は町の外に出てないんだそうだ。だから、そのリスクを冒して探索するっていうのが今回の主な依頼内容だね」
 ハンドレッドはこの十倍くらいの無駄話を早口で交えながら、最後にこう付け加えた。
「一旦手分けして探索をしようか。一部の探索エリアには武装した小型探索艇を持っていっていいよ。これが壊れると換えが効かないから、大破させたりしないようにね」
 よろしく! と手を振り、ハンドレッドは外の光景へと目を移した。

GMコメント

 未だ見ぬ伝説の浮島への探索を始めましょう。
 探索エリアは五箇所にわかれ、それぞれ特色が異なります。
 一部のエリアには既に優先参加メンバーが決まっていますが、大体は空欄になっているので相談して割り振りかたを決めてみてください。

●オーダー
 幻の浮島『アーカーシュ』の探索をはじめます。
 といっても全てを探索しきれるほどリソースはないので、レリッカをキャンプ地にして徐々に探索の手を広げるようなイメージです。
 探索するエリアは今のところ五つあり、それぞれ特色が異なります。
 そしてどのエリアでも『古代獣』の出現は確実なので、戦闘の準備をしていきましょう。
 探索内容の主なところは『敵の強さや危険度』です。これを確保できれば後はじわじわ進めていけるので、余裕があったら他のことも調べようくらいの感覚でいってみてください。
 メンバー分けは大体2人ずつになるのが理想ですが、場合によっては1~3人程度にゆれてもOKです。ただし必ず全部のエリアに探索メンバーを配置してください。

●エリアA:浮島群
 中くらいの浮島が大量に点在しているエリアです。これらをひとつひとつ探索することになりますが、浮島群には巨大な鳥型の古代獣が存在しているため、これらとの空中戦闘が必須になるでしょう。
 とはいってもほとんどの浮島は草地が晒されているだけなので、一番の目的は鳥型古代獣との空中戦闘です。
 鳥型古代獣は小さな群れと一体の巨大リーダー個体に別れており、小型のものは近接戦闘が主ですが大型のものは魔法による遠距離射撃を行うとされています。
 このエリアには飛行能力のある小型探索艇が使えます。探索艇は最大2人乗りでマシンガンが搭載されており戦闘が可能です。使っても使わなくてもOKです。
・優先参加メンバー:ルクト・ナード

●エリアB:石造りの町
 一本の大きな塔の形をした町です。
 塔の外側と内側にそれぞれ居住エリアだった跡があり、それらは全て石で作られています。
 小柄な亜人型古代獣が住み着いており、中に入るのは危険だとされています。
 亜人型古代獣は身体が岩っぽい色と堅さをしており、石を使った簡単な武器を扱います。暗い場所でも見通す目をもち、簡単ではありますが侵入者対策に罠を仕掛けることもあるそうです。なので『罠対策』があると活用できるでしょう。

●エリアC:水没した階層町
 巨大な溝のような場所には水が満たされ、さながら九龍城の内側みたいな構造の町ができあがっています。魚も泳いでおり独自の生態系ができあがっているように見えます。
 非常に広く、そして縦に深い構造をしています。
 また、古代獣も魚型のものがうっすらとですが視認できます。深いところで遭遇するようです。
 このエリアでは潜水艦としても使用可能な探索艇と、『水中呼吸(弱)』相当のアイテムが貸し出されます。潜水艇状態の船にはアームが取り付けられ、魚雷の発射機能が備わっています。なのでこの潜水艇で戦闘を行うことも可能でしょう。

●エリアD:樹木に覆われた遺跡
 多くの樹木が遺跡を侵食していますが、このエリアは特に樹木による侵食が多くほぼほぼ自然に還っています。
 動植物の生態系がそこそこできあがっており小鳥や山羊のような動物すら確認されていました。
 古代獣もそうした動物に近い形をしており、一説には巨大なシカに似ていると言われています。
 このエリアでの活動はフィールドワーク色が強くなるでしょう。
・優先参加メンバー:リュカシス・ドーグドーグ・サリーシュガー

●エリアE:小型浮島群
 足場のほとんどない、ほぼほぼ空を探索するエリアです。
 ここでは飛行能力のある小型探索艇が使用できます。
 探索艇にはマシンガンが搭載されており操縦しての戦闘が可能です。
 ここに出現する古代獣は一体だけですが強力です。翼の生えたトカゲのような形をしており魔法による防御障壁を作ったり爪の鋭さを増して攻撃してきたりといった動きが確認されています。

●余談
 探索第一弾の今回、神翼獣ハイペリオンはおやすみです。
 というのも、レリッカの外がどのくらい危険なのか分からない上、ハイペリオンの力も完全に復活していないためです。ハイペリオンを失うリスクはデカすぎるので、今回は慎重策をとった形になります。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • <アーカーシュ>アンリミテッドフィールドワーカー完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別EX
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2022年04月18日 22時06分
  • 参加人数10/10人
  • 相談7日
  • 参加費150RC

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(10人)

リュカシス・ドーグドーグ・サリーシュガー(p3p000371)
無敵鉄板暴牛
カイト・シャルラハ(p3p000684)
太陽の翼
イリス・アトラクトス(p3p000883)
光鱗の姫
フルール プリュニエ(p3p002501)
夢語る李花
ルクト・ナード(p3p007354)
蒼空の眼
アルヴァ=ラドスラフ(p3p007360)
航空指揮
ゼファー(p3p007625)
魔女
わんこ(p3p008288)
雷と焔の猛犬
一条 夢心地(p3p008344)
殿
トスト・クェント(p3p009132)
星灯る水面へ

リプレイ

●アンリミテッド浮島群
 水かきのついた手のように広がる翼を上下に波打つようゆっくりと羽ばたかせ、背にぴったりとついた気球で浮かぶ飛空艇。その尾部下方より滑車によって滑り出た卵形の物体がある。
 まるで巨大な鳥が飛びながら卵を産み落としたかのような風景だが、それはしかして卵ではない。すぐさま折りたたんでいた翼を広げ、蜂の羽根のように高速で羽ばたき運動を行うと魔力的な推進力を獲得した。
 飛行能力を備えた小型探査艇。その内部では、半透明な卵形シールドに守られた『蒼空』ルクト・ナード(p3p007354)と『太陽の翼』カイト・シャルラハ(p3p000684)の姿がある。
 自由落下の浮遊感とリュックサック型のハーネスの食い込み。ハンドルを握ったルクトは外から僅かに聞こえるビィィィンという羽音と共に探査艇が浮きあがり、自らを小舟のように浮きあがらせたことを体感していた。
 同じ体感を得たのだろう、助手席のカイトがハハハと笑った。
「自力で飛べると、かえってこういう感覚が新鮮だよなあ! 落ちやしないかと心配になってくるぜ」
「そういうものか? 私は……」
 あのハンドレッドが放っておかれていることのほうが心配だがなと言おうとして、わざわざ口に出すことでもないなと開きかけた口を閉ざした。
 『能力があれば徴用する』というのは鉄帝の基本原則みたいなものだ。それで一時期政治中枢が壊れかけたこともあるので手放しに良しとはいえないが、今回のように世界的にみても珍しい探査機材を導入するとなれば、才能ある人間が(その性格を問わず)必要になるのだろう。
「ファイも目を光らせているようだし、ひとまずは……か」
 自分だけがわかるようなことを呟いてから隣を見ると、カイトは流れる空の風景をぼんやりと見つめていた。
 雲が眼下にしかないというのは、飛行種でもそうそう見ることのない光景である。
「浪漫だなあ。なあ、アーカーシュってハイペリオン様の故郷なんだろ? 一足先に掃除しとかないとな!」
 そう言いながら、『これハイペリオン様の羽根なんだぜ!』と言って修学旅行のお土産を即自慢する中学生みたいな顔で懐から取り出してくるカイト。ウィツィロ産の古代獣に効果のあるアイテムなので今回は使えないとわかっていつつ持ってくるあたり、筋金入りである。
 暫く探査艇で飛んでいくと、シールド越しに何かが見えてきた。
 無数の浮遊する島の群れだ。風景は諸島というよりスペースデブリ。へんな角度に背の低い草が生えていたりするあたり、長年このまま浮かんでいるのだろう。
 こんな場所はさすがに初めてだ。
 と、思ったところで。
 前方はるか先。点々とする影。ルクトとカイトが僅かに目を細め身を乗り出したその時――急速にそれらは迫ってきた。
「うおっ!?」
 驚きに声をあげるカイトだが、行動自体は迅速だった。ハーネスアンロックボタンを押し込みシートから自らを解放すると同時に、ルクトがコックピットのシールドをパカッと縦向きに解放。飛び出し翼を広げるカイトの一方で、ルクトは足元のペダルを強く踏み込んだ。
 後部のスラスターから火の魔力を放ち探査艇は加速。カイトとルクトが左右に大きく分かれるように軌道をとると、接近してくる『小型の鳥型古代獣』たちの殆どはカイト側へとカーブした。
「集中狙いかよ!」
 古代獣からしたら『より美味しそうな方』を狙ったのかもしれないが、カイト的には大量の敵に群がられるのは勘弁願いたいところだ。(マックスまでくらっても120オーバーするとはいえ)連続で攻撃をうけるのはカイトの持ち味を食うことになる。
「仕方ねえ、相手してやるか……!」
 遠ざかるルクトに『こっちは任せろ』のシグナルを送ると、カイトはくるりと反転した動きをかけながら空中を大きく縦向きにターン。翼から放つ無数の赤い羽根がマイクロミサイル群のごとく古代獣たちへと襲いかかる。
 そのいくつかを掻い潜って突っ込んできた個体には、カイトは思い切り羽ばたいて勢いをつけた突進によって撃ち抜いていく。炎を纏った彼の突撃に、古代獣たちが次々と墜落していった。
「ハイペリオンさまの飛ぶ空は俺が守る!」
 ……その一方。
 カイトから離れたルクトはコックピット内で(僅かにだが)顔をしかめていた。
「本命はこちらというわけか」
 追跡してくる小型古代獣をターンによる機銃射撃で撃墜――したその直後、探査艇をはるか上空から急降下してきた赤く巨大な鳥型古代獣が襲った。
 おそらく何かしらの方法で身を隠しながら空から様子をうかがい、ここぞというタイミングで急降下し的確にこちらを破壊したのだろう。翼を片方もっていかれ、ルクトはふうと息をつく。
 シートごと自らを脱出させると、今度はシートもパージし――自らのフライトユニットを展開した。
「ここからが本領発揮だ」
 急速にターンしてくる古代獣。ルクトは後方につかれたことを確認しつつも、脚部のマイクロミサイルポッドから無数のミサイルを発射。攻撃の主体はあくまで古代獣の勢いを削ぐためのもの。無数の爆発のなかを掻い潜ってきた古代獣を迎え撃つかのようにくるりと半天したルクトは背部にセットしていた多目的炸裂弾頭『MRBL』を発射。
 顔面に直撃する形で炸裂し有毒ガスを散らしていく。
 この程度――と古代獣が振り払おうとしたその時、追加で打ち込んだルクトのマイクロミサイルが連鎖爆発。ガスに引火したそれらはさらなる炎を広げ、古代獣を光の中へと溺れさせた。
 無数の浮島の間を縫うように飛びながら、ルクトは息をつく。
「なかなか、ハードな探査になりそうだ……」

●アンリミテッド石塔街
 ビィィンという羽音を和らげながら、そよぐ草地へと降り立つ探査艇。開くコックピットのシールド部分を押し上げるようにして、『殿』一条 夢心地(p3p008344)が腰を左右に振りながらリズミカルに現れた。
「ぬっはっは。未知なる土地の探索ほど、心躍ることもそうそう無いわ。
 この一条夢心地にバーーーーンと任せておくが良い。
 長年、世界を放浪してきたことで培ってきた探索テク、存分に見せてやるのじゃ。
 なーーーーはっはっは!」
「探索テクって、何ができるのよ?」
 後ろの席から顔を覗かせる『雪風』ゼファー(p3p007625)。
「聞いて驚くが良い。麿は…………方向感覚がメチャクチャ良い!」
 ドヤァンと効果音が出る勢いで自分を親指でさす夢心地。
 ゼファーは探査艇の縁に肘をつけ、拳を頬杖にして眉を左右非対称に上げた。
「そりゃあ、たのもしいですこと」
 ぴょいんとコックピットから降りた夢心地に続き、よじよじと外へ出るゼファー。
 余りに強すぎる日差しをまぶしそうにしながら、額に手をかざして眼前の風景を見上げた。
 そよぐ草地の先に、灰色の塔がある。それもひどくごちゃついた塔だ。
 おそらく岩でできているのだろう。全体的に灰色で、すごく遠くからみれば石の棒に見えるはずだ。
「絵本のモチーフにもなった幻の地……ねえ。そのテの場所って大体いわく付きな気もしますけど?」
 いいながら、ゼファーは肩に槍を担いで足取り軽く歩き始めている。
 湧き上がる探索意欲は、やはり抑えようがないのだ。

 石床を槍の鐺部分でつつき、魔法的な仕掛けを解いていく。
「結構凝った作りねえ。人感センサーだわ」
 ゼファーが罠を調べ無効化しながらそんな事をつぶやいた。
「作動したらどうなるのじゃ?」
「匂いからして……催涙ガスと自動回転式の刃物の組み合わせってとこかしら」
 しゃきんと飛び出したナイフの刀身をゆびでつまみ、もとあった場所にもどすゼファー。
「なんじゃ。巨大な鉄球が転がってきたり落とし穴に落ちたり階段が坂になったりするやつじゃないのかのう」
「坂?」
 などと話ながらも、夢心地はトラップや町の様子をスケッチブックへ綺麗な絵として残していた。
 『塔の町』というのはなかなか分かりやすいもので。
 輪っかの形を物凄く縦に伸ばし、ところどころに対角線状の橋がかかるという作りをしていた。輪っかの内外にはベランダや窓があったらしき穴や出っ張りが見え、夢心地はなんとなーく『人が暮らしていたらこうだったのかなあ』という想像で町の一部を描いてみせた。
 洗濯物があちこちにかかり、人が橋をわたり、ベランダに出てスイカでも囓りながら煙草を吸う女性の姿が描かれている。パラボナアンテナまでついていた。
「そういう生活感、全然ないんですけれど?」
 そこそこ広いスペースがぽっかり空いた部屋を指さすゼファー。夢心地はその場所にへんなおじさんが営む八百屋を描いて見せたが、ゼファーは首をかしげるばかりだ。
「まあそんな顔をするでない。盛者必衰、形あるものは皆壊れる。紙は朽ちぷらすちっくは土と化し、木もなにも腐りはて最後は石だけが残るものじゃ」
「人の世も最後に残るのは石だけとはねえ」
 ゼファーは丸っこい石の塊を拾いあげ、しげしげと眺めてから放り捨てた。金貨でも落ちていれば実入りが良いものを、なんて思いつつ。
 そして――流れるように槍を回し、『真上』に向けて突き上げた。
「――ギャッ!?」
 悲鳴。それも上から。
 ぎょっとして見上げた夢心地の視界には、槍に突き上げられた亜人モンスターの姿が見えた。
「なんといつのまに!」
 刀を抜き、顎の下で水平に構える夢心地。
「塔に色が似てるせいかしら。隠れて近づいてきていたみたいね。罠の利用といい住み着きかたといい……ゴブリン並の賢さはあるみたいね」
 奇襲が失敗したとみるや、周囲からぞろぞろと亜人型古代獣たちが姿を見せる。
 彼らは『ギャギャッ』という変な声で互いの意思疎通をしながら、指をさし『一斉にかかれ』というようなジェスチャーをしていた。
「囲まれておったか」
 素早く背をあわせるように立つ夢心地とゼファー。
 飛びかかる亜人に夢心地は剣を交差し素早く斬り捨てる。
 流れるように側面からの連係攻撃を刀で打ち払い、背後ではゼファーが槍の打撃からの回し蹴りというコンボで亜人の連係攻撃をはねのけている。
「一体ずつはさほど脅威ではないが……」
「群がられると厄介そうね。いいデータになりそうだこと」

●アンリミテッド水没街
 ざぷんと水面より沈みゆく探査艇。スクリューとエラめいた蛇腹状の翼によって方向転換をしながらすすむそれは、慣れてくるとなかなか乗りやすい船である。
「自分で泳ぐのもいいけど、こうして乗り物をつかうのもいいね。歩くより馬に乗ったほうが速く進む……みたいなものかな?」
 操作レバーを握りながらニコニコする『微睡む水底』トスト・クェント(p3p009132)。
 多少沈んだ所でライトを点灯させると、水没した街の様子が間近に見えた。
 鉄製のものは少なく、むき出しの石ばかりが見える。部分的には木で出来た手すりのようなものが見えるが、その殆どが腐り朽ちていた。
 より目をひくのは、どこからか伸びていた太い木の根である。それらが建物群を貫くように、あるいは絡みつくように下へ下へと伸び街の構造をある意味支えていた。もはや誰も住むことのなくなった街を。
「浮島も、当然この街も、ずっと長い間見つからなかった場所なんだよね」
「世界は広いわ、本当……」
 助手席にあたるシートに腰掛け、街の様子を顎肘をついて眺める『光鱗の姫』イリス・アトラクトス(p3p000883)。
 聞くところによれば、レリッカの村がどのくらい前に拓かれたのかイリスはしっかり知って(或いは覚えて)はいないが、アーカーシュに暮らす彼らすら立ち入った事の無い場所がいま目の前にあるのだ。
「前人未踏……ね。絶望、豊穣、覇竜に続いてまた……ってところかしら。
 そのうち私達の名前がついた土地や生物ができるかもしれないわね?」
「あはは、まさかあ」
 苦笑しあう二人。
 イリスはシートを立つと、後部の小さな部屋へと入っていった。
「探査艇は任せるわね。私は『外』に行ってくる」
 人がひとりなんとか入れる程度の、縦向きの棺みたいなスペース。扉がぴったりと閉じてすぐ、部屋には外からの水が流れ込んできた。頃合いとみて外側への扉を開くと、イリスは水没街へと泳ぎ出す。
 振り返ると探査艇がアームをぱたぱたと振り、半透明なシールド越しにトストが同じように手を振るのが見える。
 イリスも同じく手を振り、水中でも使えるというライトを点灯させながら街のスペースのひとつへと入っていった。

 はるか昔に誰かが暮らしていた。
 そう思える作りをしていた。自分と同じくらいの背丈の人々が使うような部屋がいくつかあり、腐食した木の扉めいたものを押し開けるとフジツボだらけの通路が見える。光を当てると、シュッとそこにいた魚たちが逃げた。他も似たようなカンジだ。
 例えるなら複数階建てのマンションの構造に近い。
「あれは……確か『マバホフィッシュ』だったかしら」
 レリッカで一般的に食べられているという二種類の魚がある。ココサーモンとマバホフィッシュだ。淡泊な白身魚として知られるマバホフィッシュは、こうした水場に生息していると聞く。
 この場所を開拓すれば、魚の養殖に使えたりするだろうか……? などとイリスは思う。
「そのためには片づけないといけない案件があったわね……」
 部屋を出るイリス――を待ち受けるように現れたのは、巨大かつ奇怪なモンスター(古代獣)だった。ラブカという深海生物に近い外見をしたそれは、ぐぱりとひらいた口でイリスへと襲いかかる。
 素早く武器をとり、噛みつきに突っ張りを加える形で防御。
(結構耐えられそう……イケるわね)
 小さくイリスが笑うと同時に、魚雷が古代獣へとぶつかった。爆発が連続し、古代獣が痛みに暴れる。
「お待たせ!」
 探査艇を操作し、古代獣に魚雷を連射するトスト。
 それを破壊しようと振り返る古代獣だが、イリスは剣を引っかけるようにして動きを阻害した。
「私に構わずどんどん撃って。今回は上手くいきそう!」
「了解!」
 トストは古代獣の周りをまわりながら魚雷を撃ち続け、そしてやがて、古代獣は力尽き水底……つまりは水没街の最下層へと沈んでいった。
 それを追いかけ、ライトを照らすトスト。
「これは……」
 最下層にあったのは、広い土と滑り台だった。
 公園かなにかになっていたのだろうか。それとも畑が併設されていたのか。
 今や水に沈み、水棲生物たちの寝床となっているようだが。
「他に、今みたいな古代獣はいないかな。みるからに危険な個体だけでも倒せれば、この場所を開拓できるかも」
「それができれば、村の暮らしがかなり発展するかもしれないわね」
 自分達にどんなものをもたらすのかは、わからないが。
 ワクワクする変化なのは……きっと間違いないだろう。

●アンリミテッド樹覆遺跡
 小鳥の鳴き声がするのだ。
 風に葉がそよぐ音が、お日様に照らされた草木のにおいが。
 正しく例えるならそう……森の気配が、確かにした。
 『夢語る李花』フルール プリュニエ(p3p002501)は己の知る森のそれと殆ど変わらない空間に、僅かな驚きと安堵を同時に感じていた。
「なぜかしら。私がハーモニアだからでしょうか、この空間を散策していると落ち着きます」
 生来のセンスか、あるいは精霊との親和性ゆえか、はたまた産まれた環境への適応ゆえか。
 レリッカの村人も恐れてはいらないという遺跡は、厳密には深い森を入り口とした。
 木々は正しく茂り、それが自然に生きて自然に呼吸しているだけのものだと、フルールは木々に宿る低位精霊たちの様子から察することが出来ていた。
 法則性というほどのものではないが、人工物があればあるほど精霊は宿りづらい傾向がある。練達と深緑では精霊と出会う頻度に大きく差が出るのはそのためだと、誰かが言っていたきがした。
 その点で考えると、この遺跡はほとんど自然に還ってしまったのだろうと、フルールは思う。
「どうですか?」
 ノートを開いていた『拵え鋼』リュカシス・ドーグドーグ・サリーシュガー(p3p000371)が問いかけてくる。
 彼は腕にがちゃがちゃ機械をつける元気な男子学生――のように見えて、非常に博識なところがあった。自然、主に地質の知識に長け、優れたボーイスカウトのようなサバイバル知識を持っている。
 どうやら鉄帝という地域ゆえのものらしく、かの地に埋没しているという古代の遺物たちを知るためには自ずと大地や歴史に興味が向くのだろう。
 リュカシスがポケットから取り出したコンパスはぐるぐると周り続けている。
 天空の島であってもコンパスが狂うということはないはずだが、どうやらこの遺跡(厳密には森)に入ってから狂い始めたようだ。
「どうやらこの遺跡には磁場の乱れがおきてるみたいです。精霊さんたちに変化は?」
「ないわね。つまりは……その乱れは自然に起きたことなんだと思います」
 虚空を見上げるようにしてこたえるフルール。
 なるほどーといいながらリュカシスはノートに項目を足し、そして樹木のまわりをぐるりとまわってから懐中時計を開いて針を確かめていた。
「それは、なにを?」
「方角を確かめてます。星と太陽の位置で大体わかるんです」
「便利ですね……」
 知識というのは積み重ねて効果を発揮するものなのだなあと、フルールはなかば感心しながらリュカシスについて歩いていく。
 リュカシスは『FLASH-DOSUKOI02』という卵形のロボットを地面に置くと、頭のスイッチを押し込んだ。
 正面ディスプレイに顔文字が表示され、卵から手足がぴょこんとはえる。
 簡単な命令を人間並みの知能で遂行できるという練達製のロボットだろう。
「ドスコイに先行してもらいますね。フルールさんは継続して精霊さんの様子を観察して下さい」
 こういう調査ごとに慣れているのだろうか。リュカシスは随分テキパキと調査を進めている。
「あら、人工物」
 暫く進んでいくと石の柱が点在するエリアに出た。
 殆ど風化し、ものによっては崩れてすらいる。
 表面にできたコケや精霊たちのありようから、それが崩れてからはるかに長い年月がたったことを示していた。
 しかし、リュカシスたちが手を繋いでも覆えないほど太い柱だ。思い切り殴りつけても表面を削るのがやっとという頑丈さだろう。
 これが部分的に崩れるというのは……一体どういうことなのだろう。
 誰かが意図的に破壊したのか。しかもはるか昔に。
「古代遺跡といえば鉄帝ですよね。リュカシスおにーさんはこういう作りに覚えは?」
「んー」
 おにーさんと呼ばれることにあんまり慣れてないらしく変な顔をしたリュカシスは、ノートをめくりながら石の柱のひとつへと近づいた。
 柱の表面には鳥のような模様が彫刻されている。その他には幾何学模様。
 様式としては……確かにこれに似たものがなくもない。
「類似性はゼロじゃないですけど……一番似てるのはやっぱり、幻想のウィツィロです。あそこはアーカーシュから欠け落ちた大地っていわれていて、その証明の一助になりそうですね」
 アーカーシュ産まれの神霊が復活した地でもあるので、もうその時点で証明されたようなものではあるが。裏付けができるというのは学術的に大事なことだ。
 なるほどね……とフルールは自分のわかる範囲で納得していると。
 ふと、周囲の精霊たちがざわついたのを感じた。
 反射的に。あるいは本能的に『精霊天花』の力を発動させるフルール。
 七種の精霊フィニクス・ジャバウォック・アルミラージ・クルルカン・クラーケン・ラタトスク・キャスパリーグ全てを自らに融合させた姿へと変じ、同時に紅蓮の炎が燃え上がる。フルールが腕を払う動きに合わせるように波打った炎が、明後日の方向から飛来した木で出来た矢の群れを焼き払う。
 防ぎきれないだけの矢がフルールに刺さるが、そのダメージをかみ殺す。
 攻撃のあった方向へ二人同時に振り返る。
 そこには。シカが……それも大きな大きなシカがいた。
 ツノは大樹の枝のごとく別れ、星空の色のように透き通ってきらめいている。
 顔面はシカのそれというより、太古の祭りに使われる仮面のようであった。
 次なる攻撃のためにか、周囲の木々が自然とぱきぱきと枝を落とし、自然と鋭い断面を作る。それらがシカの周囲に浮かび、くるくると回転すると全ての鋭利な断面をこちらに向けて停止した。
 かばうようにフルールの前へ出るリュカシス。
 そして手をかざし……。
「遺跡を見つけたいだけです。あなたの住処を荒らすつもりはありません! 戦いになるなら、ここを出て行きます!」
 そう、叫んだ。
 フルールは怪物に対して問いかけるさまに瞠目したが……より瞠目したのは相手の方だったようだ。
 仮面のような顔で、目にあたる部分をゆっくりと、だがしかし大きく開く。
「ニュウショクシャたちとは、違うニンゲンか。どうやって、この島へ来た」
 ちらりと視線を交わすフルールとリュカシス。
「船に乗ってきました。空を飛ぶ船です」
「ほお。神翼獣の背ではなく、か」
「…………はい」
 神翼獣が『ハイペリオン』を指しているのは、おそらく間違いはないだろう。
「いいだろう。私はノワールとは違う。殺さずにおく。
 だが、次に入るならば、心せよ。我と、殺し合うことになる。例外はない」
 枝をこちらに向けたまま、しかし攻撃はせずに目を細めるシカの古代獣。
 はたと気付くと、周囲には別の古代獣たちが少しずつ姿を見せ始めているのがわかった。これまで巧妙に姿を隠していたのだろう。
 リュカシスはノートを鞄にしまうと、『行きましょう』といって後ろ向きに歩き始めた。
 この森に再び踏み入る時は……きっとあの古代獣と戦う時だろう。

●アンリミテッド浮遊島
「あっ、見えてきましたよアルヴァサマ!」
 卵形の探査艇のコックピット内で、『犬の一噛み』わんこ(p3p008288)はやや前屈みになってシールドの外にうつる風景に目を見開いた。
「浮島デス!」
 それまで休憩していた『航空猟兵』アルヴァ=ラドスラフ(p3p007360)が閉じていた目を開いてみると……たしかにそれは島だった。
 すごく乱暴にいうなら逆さにした山の形をしており、上面は緑色でかつ平らだ。
 イレギュラーズである以上空中庭園というものを知っているので、空に土地が浮かんでいること自体はそう珍しいとまで言わないが……。
「ここまでの大きさのものが……どういう原理で浮かんでいるんだ? 現代の技術で可能なのか?」
「ギジュツ?」
 わんこがトーンの外れた声を出した。
「自然に浮いてるんじゃないのデスカ?」
「そんなことが……」
 言いかけて、アルヴァは日頃忘れがちなことを思い出した。
 この世界は混沌肯定というルールによって全ての技術や理論は『あやふやかつ明確に』定められている。
 神(見たことはないが)が認めたならばソレは空を飛び、認めないならジェット機だろうが宇宙戦艦だろうがガス風船であろうが鳥であろうが飛ばないのだ。いま乗っている探査艇が空を飛んでいる理屈は一応あるが、極論すれば神が認めたからに他ならない。
 認められたものを、認められた範囲で、認められた程度に組み合わせた物体なのだ。
 そういう意味において、この世界は『技術の発達しない世界』と言うこともできる。極論だし、なんなら暴論なのだが。
「外に出るぞ。適当な足場を見つけて降りよう」
 アルヴァはシールド兼コックピットハッチを開くと外へと飛び出し、装備を起動して飛行を開始した。魔力宝珠『神風』がきらりと太陽の光を反射する。
 空中戦での運用を前提として設計されたという狙撃銃を肩からまわし、両手に構えた。
 二人は浮島へと近づき、その縁の部分へと効果する。
 着地は、充分に可能だった。立ってみた感じは地上のそれと大して変わらない。たとえば船の甲板で感じるような揺れも、あるいは巨大なゴム風船に立ったような反発もない。
「ますます分からないな」
 屈んで地面に目をこらすと、はえているのは草だった。
 それがなんという名前の草なのかは知らないが、引っこ抜いてみると根のある普通の草に見える。草むしりの経験がそこそこあるが、その時飽きるほどむしった草と匂いも見た目もよく似ている。あるいは同じものかもしれない。
 端的に『雑草』というイメージがわいた。
「アルヴァサン……」
 小声で鋭く叫ぶというなんだか器用なことをして、わんこが後ろから呼びかけてくる。
 一度振り返ると、わんこがコックピットの中からある方角を指さしていた。
 島の中央にあたる方向だ、と思う。
 振り返ってすぐ、意図がわかった。
 鳥が飛んでいる。
 近い……と思ったが変だ。目をこらしてみると、想像をはるかに越えて巨大な鳥がこちらへ向けて羽ばたいているのだと分かった。遠近感が狂っているようだ。
「古代獣デスネ」
「つまり敵か……まぁ、今回の場合は俺たちの方が外敵なのかもしれないが」
 走り出し、助走をつけて跳躍。そのまま飛行状態に移行すると、アルヴァは近づきつつある鳥型古代獣めがけて『空砲』を放った。
 命中(ヒット)――しかし大きく様子が変わらない。怒りの付与に失敗したのだろうか。あるいは元々の狙いと変わらなかったためか。アルヴァめがけて突っ込んでくる古代獣が、自らの周囲に光るグリーンの球体を出現させ始める。
 その全てが電子基板に描くラインのごとく枝分かれした軌道をとりながら分裂しアルヴァへと迫った。
 複雑なマニューバをきりながらそれらを回避。
「これも仕事なんでね。運が悪かったと思ってくれや」
 引きつけはアルヴァに任せ、わんこは早速探査艇を飛行させアルヴァから距離をとった。
 側面へ回り込むような位置をとりつつ。機関銃を撃ちまくる。
 ブゥンという予備動作めいた音のあと、けたたましい銃声で吠え始めた。
 赤い局所的豪雨とも言うべき火力が古代獣へと殺到。
 アルヴァと古代獣がすれ違ったところで、両者が大きくカーブをかける。
 島の更に上空へと飛び上がったのだ。
 わんこもそれを追って機首を上向け、ひねるようにターン。
 機関銃を撃ちまくるその一方で、アルヴァがさらなる攻撃を開始しているのが見えた。
「そこデス!」
 攻撃のタイミングを合わせ、わんこは操縦レバーを握る拳に力を込めた。
 グローブごしに送り込まれた力が機関銃に宿り、古代獣の喉にあたる部分へと弾を大量にめり込ませた。
 甲高い悲鳴のような声をあげ、古代獣が脱力し……そして墜落していく。
 かに見えたが、古代獣は凄まじい速度で傷を修復。そしてわんこめがけて大量の光の弾を放ってきた。
「わっ!?」
 回避――は間に合わなかった。たちまちのうちに探査艇が火を噴き、アルヴァが急カーブをかけて飛んでくる。
 緊急脱出用レバーをひき探査艇から射出されたわんこをキャッチし、アルヴァが更に加速する。
「ここは引きましょう! あれは倒しきれる敵じゃなさそうデス」
「みたいだな。無駄に犠牲を払うのも御免だ」
 本来の目的である危険度の把握は済んだ。アルヴァは頷き、島の外へと飛んでいく。
 古代獣はそれを見つめ、しかし追いかけることはしなかった。

●アンリミテッドフィールドワーカー
 五つのエリアを探索したことで、アーカーシュの状態をある程度は知ることが出来た。
 制圧可能な程度の古代遺跡や小島群。
 倒すには相当な戦力が必要な強敵。
 養殖に適した水場。
 対話が可能だが危険な存在。
 そのいずれも、誰も名前のしらない場所だった。
 これからはこのまっさらな地図を広げ、冒険を始めるのだ。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 いざ、冒険へ

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