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シナリオ詳細

<覇竜侵食>鎧の剣豪、此処にあり

完了

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●アダマンアントの襲撃
 地上へと進出したアダマンアントによる襲撃は激しさを増すばかり……かに思えた。
 だがここ数日、その頻度は確かに減っていた。
 当然だろう。大きな動きはイレギュラーズが動き、片っ端から潰している。
 上位種にして戦闘種であるアダマンアントナイトの撃破も含めれば、大戦果であると言っていい。
 それでも、アダマンアントによる狩りは今日も続いていた。
 狙っている相手は……一言で言うなら巨大なクワガタムシだった。
 大きさは全長4m。紫色の煌く装甲を持っており、そのハサミも非常に恰好が良い。
 そのハサミを閉じればジャギンと音が鳴り、挟まれたアダマンアントが切断される。
 なんという恐るべき威力か。
 単なる膂力ではなく、切れ味でもなく。何かしらの能力である事が伺えた。
 だが、それだけではない。離れた場所にいたはずのアダマンアントに輝く斬撃が飛び、その装甲に傷をつける。
 まるで著名な剣豪のような、その戦い方。
 そのモンスターの名はデザストルオオクワガタ。
 アトラスグレートカブトと縄張り争いをすることもあるモンスターだが、その強靭な装甲と凄まじい斬撃を武器とするモンスターだ。
 どうやらアダマンアントの狙いはデザストルオオクワガタ自身のようだが……彼等の最近の行動からすると、デザストルオオクワガタを狩り、その肉を持ち帰ろうというのだろう。
 正直に言って、性質の似ているモンスターがぶつかる以上は数で勝る方が勝つのが当然だ。
 単純な攻撃力でデザストルオオクワガタが勝っているといえど……狩られるまでの抵抗に過ぎない事は明らかだった。

●デザストルオオクワガタを守れ
「地上でアダマンアントどもが確認された。どうにも今回の狙いはデザストルオオクワガタのようじゃの」
 デザストルオオクワガタ。
 縄張り意識が非常に強く、デザストルの巨木などを住み家にしているモンスターだ。
 主食は樹液であり、そういう意味では亜竜種にとっては比較的無害、なのだが。
 その縄張り意識の強さから近づく者には容赦のない性格でも知られている。
 幸いにも、果物や樹液ゼリーなどを捧げることで見逃して貰えるようだが……まあ、そういう意味では比較的対処法の確立されたモンスターではある。
 そしてもう1つ付け加えるとするなら……アトラスグレートカブトとは非常に相性が悪いということだ.
 出会えばやりあう2匹ではあるが、幸いにも今回は付近にアトラスグレートカブトの姿はない。
 だが、デザストルオオクワガタの縄張りにその代わりとばかりに現れたのがアダマンアントたちだった。
 アダマンアントはデザストルオオクワガタの縄張りであるデザストルチェリーの巨木の下に現れると、木が傷つくのにも構わず攻撃を開始したようだ。
 当然デザストルオオクワガタは激怒。
 今、バトルが始まっているわけだが……此処で問題が1つある。
「デザストルチェリーは貴重な食糧での……収穫時期はまだ先なんじゃが、デザストルオオクワガタが生き残っても、傷ついたままじゃと他の生き物に縄張りを奪われるかもしれん」
 それは非常に問題だ。
 デザストルオオクワガタの代わりの生き物が、こちらに友好的とは限らないのだから。
「アダマンアントを撃退し、デザストルオオクワガタの傷を癒さねばならん」
 つまり、デザストルオオクワガタの信用を得る事は必須……というわけだ。
「頼んだぞ、皆。連中の勢力とて無限ではないはず。まずはこれをしのがねばならんのだ」

GMコメント

デザストルオオクワガタとアダマンアントは、巨大な木の下の平原にて激突しています。
木が倒れてしまうと結局デザストルオオクワガタの縄張りが移動してしまうので、木も守らなければなりません。
その上で戦闘後、デザストルオオクワガタと二連戦に突入しないような工夫が必要でしょう。
また、デザストルグレートクワガタが戦闘後深手を負っているとフリアノンの食糧事情に悪影響も出てしまいます。
可能な限り仲良くなってください。言語がないので、態度による誠意が有効でしょう。

なお、デザストルチェリーの木は今の時期、桜の花を咲かせています。
花弁が子供の顔くらいはある巨大な桜です。きっと良いお花見になるでしょう。
……クワガタと仲良くなれればの話ですが。

●モンスター
・デザストルオオクワガタ
全長4mの紫色のクワガタムシ。
ハサミで挟んで切断する「デザストルギロチン」と中距離程度の位置に斬撃を放つ「飛刀撃」を使用します。

・アダマンアント(8体)
嫌になる程硬い巨大アリ。攻撃方法は岩をも溶かす酸を弾丸のように飛ばす技と、強靭な顎による振り回し&叩きつけ攻撃です。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • <覇竜侵食>鎧の剣豪、此処にあり完了
  • GM名天野ハザマ
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2022年04月12日 22時05分
  • 参加人数10/10人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(10人)

アクセル・ソート・エクシル(p3p000649)
灰雪に舞う翼
リリー・シャルラハ(p3p000955)
自在の名手
リースリット・エウリア・F=フィッツバルディ(p3p001984)
紅炎の勇者
長月・イナリ(p3p008096)
狐です
胡桃・ツァンフオ(p3p008299)
ファイアフォックス
葛籠 檻(p3p009493)
蛇蠱の傍
ブランシュ=エルフレーム=リアルト(p3p010222)
死神の足音
ジン(p3p010382)
熾煇(p3p010425)
紲家のペット枠
梅・雪華(p3p010448)
梅妻鶴子

リプレイ

●デザストルオオクワガタの元へ
「アダマンアント……最近覇竜にたくさん出てきてる悪いアリだね。話を聞いた時は虫の縄張り争い? と思ったけど、ここの食糧事情にも関係するならどうにかしないとね!」
『灰雪に舞う翼』アクセル・ソート・エクシル(p3p000649)がそう声をあげるが、実際覇竜領域デザストルにおいて亜竜やモンスターと接触しないことはほぼ不可能だ。
 そこに「亜竜種を襲う事に特に意味を見出さず、尚且つ縄張りを持つモンスター」がいるのであれば、それは充分すぎるほどの安全地帯であった。
 自分の縄張りに入ってくるモンスターを、そのモンスターは許さないからだ。
 まあ、言ってみれば見逃されているということなのだが……その辺りの事情はどうでもよく結果が全てだ。
「デザストルチェリーの木でお花見したいからねっ、仲良くなっとかないと」
「とりあえず全部切れば良いんでしょ? 巣まで行っていい? ダメ? そっか……」
『自在の名手』リトル・リリー(p3p000955)とリトル・ブラッドもそんなことを言い合うが、無策で行ってもアダマンアントのご飯になってしまう可能性があるので妥当な判断だろう。
 そしてデザストルチェリー……いわゆる覇竜の桜の木と言ってもいいものだが、その木を今回の応援対象のモンスターが縄張りにしているのだ。
 その名もデザストルオオクワガタ……全長4mの紫色に輝く装甲を持つ、巨大なクワガタムシである。
「今度はクワガタさんなのね。激闘! ムシバトルなの」
『ファイアフォックス』胡桃・ツァンフオ(p3p008299)も頷くが、確かにムシバトルである。
「いくら大きなクワガタさんとはいえ、昆虫の肉でお腹は膨れるのかしら。生態的に別の目的があったりとも聞きますが~」
 その辺りは不明だが、似たようなアトラスグレートカブトを襲撃したという話もある。
 狩れるだけの戦力を出している事を思えば、何かしらの戦略をもっていると考えてもおかしくない。
「……アリンコ共、入植してきても生きていける感じあんましねえんだよなあ。哀れ哀れ。それはそれとして潰すぜ。別にクワガタに阿るつもりもねえがよ。ところでカブトどこ行った?」
 カブトムシはアトラスグレートカブトというのが別の場所に縄張りを持っているが、さておこう。その2匹はあまり相性がよくないらしい。
『梅妻鶴子』梅・雪華(p3p010448)の言う事は比較的正解であり、アダマンアントの現在の戦略は全てを敵に回すものだ。
 それでも勝てるだけの戦力を抱えているというのは凄まじいが……看過できるものではない。
「……そろそろアリの巣を本当に潰しにいった方が良いんじゃないか? 狩っても狩っても沸いて出てきて、キリがないんだぞ。もしかして、アリ以外の思惑? もあったりするのかもなー? 今度、巣に行こう! どかーんってぶっ壊してやるぞ!」
『紲家のペット枠』熾煇(p3p010425)のような意見も、当然出てくる。
 だがイルナーク地下から調査したアダマンアントの地下帝国は力押しで向かうには命が何個あっても足りはしない。
 それだけの戦力をアダマンアントは抱えており、数の前に押しつぶされてしまう。
 何か大きなチャンスがなければ難しいだろうし、この作戦もその一環であった。
「今は直接向かえずとも……これまでの行動の成果は着実に出てきている。確実なものとするためにも、気を抜かずに行くとしよう」
「それにしても……アダマンアントまた出たですよ!? どうにかしないと、地上がアリだらけの巣窟になってしまうですよ! こうしちゃいられないですよ! 全速力でアリ駆除作戦にいくですよ!」
 ジン(p3p010382)に『航空猟兵』ブランシュ=エルフレーム=リアルト(p3p010222)がそう叫ぶ。
 今この瞬間もデザストルオオクワガタが戦っていることを思えば、気が急くばかりだ。
 そうして歩いて行けば……やがて花を咲かせたデザストルチェリーの木が見えてくる。
「ほほう、これはデザストルチェリーといったか? 実に立派な桜の花ではなかろうか。リリー殿の全身ほどもあろう花弁であるし、全てを済ませたならば盛大に花見でもしつつ酒でも呑み交わそうか。未成年には桜の香りの麹酒……酒精のないものでも用意してもらって、いざ花見! であるぞ」
 速度を緩めないまま、『とりかご』葛籠 檻(p3p009493)はそう叫ぶ。
「お花見には最適な状況だけど、アリの連中が居ると落ち着いてお花見も出来ないわね。邪魔な連中は叩き潰してあげるわ!」
「ああ、花見には随分と無粋な闖入者がいるらしいな? あのアダマンアントとかいうのをさっさとどうにかせねばならぬな。ふふ、小生の銃口が火を吹くぞ! なんてな!」
『狐です』長月・イナリ(p3p008096)と檻は頷きあい……そして、ソレが見えてくる。
 アダマンアントをそのハサミでバツン、と刻んだ大きなクワガタムシの姿。
「大きい……アダマンアントも相当ですが、デザストルオオクワガタの大きさはなんというか、圧巻ですね。デザストルチェリーの大きさも含めて、見ていると大きさの感覚が狂いそうです」
『紅炎の勇者』リースリット・エウリア・ファーレル(p3p001984)は言いながらも魔晶剣『緋炎』を構える。
 まるで自分が小さくなったかのように感じるデザストルチェリーの大きさと、デザストルオオクワガタとアダマンアントの争い。
 だが、圧倒されようともやるべきことはすでに決まっている。
「……デザストルオオクワガタめちゃくちゃカッコいいですよ? 流線形に伸びたあのギロチンのごときハサミ、シンプルイズベストで最高ですよ! ブランシュもああいう武器が欲しいですよ!」
「クワガター!! クワガタでかー!! かっけー!! ワイバーンもかっけーけど、クワガタもかっけーな! 乗ったら怒られるかな!? 駄目なら乗らないけど、仲良くなったら乗ってみたいな!」
 熾煇もかなりテンションが高くなっているが……やはりカッコいい虫はテンションが高くなるものなのだろう。
「すっごく強そうだな、クワガタ! アダマ……アリの硬い体もすぐにぶっ壊せそうだな! でもクワガタも体は硬いんだろ? それでも傷を付けるんだから強いのか? それとも酸? でどばーってやってるからかな? とにかく! クワガタ助けるんだぞ!」
「先ずはアダマンアントを、一匹でも多くデザストルオオクワガタから引き剥がす事を優先します!」
「剣豪の如きモンスターか、面白い……早速共闘といこうか!」
 リースリットの指示に鏡花水月を引き抜いたジンも応えて。
 そうして、戦いへの介入が始まった。

●アダマンアントを倒せ
 リースリットのレヴァティアの幻焔が、デザストルオオクワガタを巻き込まないように放たれる。
 目的は2つ。
 デザストルオオクワガタから一匹でも多く引き離すこと。
 そしてデザストルチェリーの木からも引き離すことだ。
 可能な限りデザストルチェリーの木から引き離せば、それは戦後の安全に繋がるのだ。
 そこにイナリの禍爪・羅睺月による朧月が、変わらずデザストルオオクワガタに攻撃を加えていたアダマンアントに炸裂する。
「どんなに強固な外骨格を有していても関節部には装甲を施し辛いはず、その四肢を関節部からバラバラに引き千切ってあげるわ!」
 関節部、腹部など外骨格が薄い場所を狙って攻撃を仕掛けるイナリの戦法は、アダマンアントというモンスターに対してはスタンダードであり、これまでアダマンアントに関わってきた者たちがとった戦法と同一のものだ。
 そしてそこに、胡桃によるヘビーサーブルズが放たれる。
(ナワバリ意識の強いクワガタさんから余計な敵意をもらわないように距離を離しつつ挟んで反対側からアリさんを攻めるのがいいかしらー。ついでにアリさんの注意を分散させたりクワガタさんを治療する隙を作れればいいのよ)
 そう、自分達はアダマンアントの敵であってデザストルオオクワガタの敵ではない。
 それを強くアピールするべく、胡桃は隙をみてカブトムシ派よりクワガタムシ派である事をアピールし、デザストルオオクワガタを味方に引き込まんとするべく動いてもいた。実際に2つのモンスターが仲が悪い事を察したわけではないだろうが……かなりのファインプレイなのは間違いないだろう。
「大丈夫? 助けに来たよ!」
 リリーは伝わるかどうかは不明とは分かっていてもそうデザストルオオクワガタへと声をかけリトル・スタンピードを放つ。
「相手のリズムを崩すこと、それが今回のリリーの役目だと思うから……!」
 言いながらもリリーは味方のカバーを忘れはしない。
 上空には二匹の鷹のファミリアーを飛ばしておいて、上からも見れるようにしてしっかり位置把握をするべく心がけていた。
(油断はしちゃダメだよねっ、デザストルオオクワガタは倒されちゃいけないし、仲良くしないとお花見はできないし……。というか、子供の顔よりおっきいってリリーと比べたら……もはや頭に被れるかもしれないねっ。お花見の為にもがんばろーっと)
 ふわりと落ちてくるデザストルチェリーの花弁は、それ自体がとても大きい。この木を守るのも、大事な仕事ではあった。
 檻のプラチナムインベルタが放たれ、ジンが瞬天三段で甲殻の隙、関節を狙っていく。
 更にはデザストルオオクワガタにそれを狙って貰うように視線や身振りで促してみるが……通じているかは、よく分からない。
(囲まれないように手前から数を削って行けば、デザストルオオクワガタが被弾しにくいように敵を押し込むこともできるはずだ)
 そう、相手の数を減らす事はアダマンアント戦ではしっかりと確立された戦法の1つでもある。
 相手は覇竜を闊歩するモンスターの1体、アダマンアント。数の優位がほぼない状況で真正面から挑むのは自殺に等しい。
 だからこそ……やるべきことはただ1つ。
「とりあえずアダマンアントをぶっ倒すですよ!」
 神鳴神威をぶっ放すブランシュのように、1体ずつ攻撃していくというのが1つ。
 あるいは檻がやっているようにとにかく攻撃し、確かな攻撃力を所持しているデザストルオオクワガタに仕留めて貰う戦法が1つ。
(デザストルオオクワガタさんには、アダマンアントを殴り続ける事で味方だと認識してもらうですよ。こっちに矛先を向けませんように!)
 だがどちらもブランシュが危惧している通り、デザストルオオクワガタが敵に回らなければ……の話ではある。
 雪華がミリアドハーモニクスを、そして熾煇がライフアクセラレーションをデザストルオオクワガタにかけているのも、味方だと知らせる一環なのだ。
 リトルワイバーンに乗っている熾煇は常にデザストルオオクワガタと共闘ができないか呼び掛け、ジェスチャーをも加えていた。
 戦闘でデザストルオオクワガタが有利になるように働きかけることで恭順……というよりは共闘の意思を示していたのだ。
 仲間達があらゆる方法で戦闘の最中にそうしたコンタクトを混ぜていく中、雪華は思う。
「俺の場合はダメージは二の次だ。この仕事、大事なのは闘いよりもむしろ……」
 戦い自体は重要だ。
 だが、「それ以外」の部分も重要だ。今回の場合はデザストルオオクワガタの存在そのもの……であるだろうか。
 それに雪華は複雑な思いを抱きはするが、今考えるべきことではないと頭から振り払う。
「あの“铁甲蚁”が木々を狙っているようであれば、この小生のらぶ♡ふぁいあもとい咆哮でも織り交ぜつつ、少なくとも木からは意識をそらさせようではないか。もっともそういう機会がないのがイチバンではあるがな! わっはっは!」
 愛を込めて咆哮を上げると口から光り輝くビーム……光るだけらしいのだが、そんなギフトのことを言いながら檻は仲間を鼓舞するかのようにおどけてみせる。
 再びデザストルオオクワガタのデザストルギロチンがアダマンアントを切断し、アクセルは別のアダマンアントに攻撃しながら、動物疎通で加勢に来ていることを何度もデザストルオオクワガタへと伝えていく。
 まあ、相手は虫だしモンスターだしで動物疎通で伝わっているのかはかなり不安はあるのだが、今のところデザストルオオクワガタはこちらに攻撃を加えてきてはいない。
 リースリットのダイヤモンドダストが放たれ、ブランシュのリコシェット・フルバーストが発動する。
 そうして……ついにイナリの朧月が最後の1体にトドメを刺して。瞬間、全員の視線がデザストルオオクワガタへと向く。
 戦いの最中、そのハサミの威力は充分に見てきた。あれがこちらに向けられるのはこれ以上ないくらいの脅威だが……。
「とりあえず樹液は要らないので、一緒にお花見できるといいの」
 胡桃がそう呟いて。
 イナリは妖精印の林檎を差し出して半分に分ける。
 片方を自分で、もう片方をクワガタに差し出してコミュニケーションを図る。
 これで友好的かどうかが測れるが……デザストルオオクワガタはハサミをギチギチと鳴らすと、リンゴを一口で齧ってしまう。
 その場から動かないデザストルオオクワガタにブランシュは少しホッとする。
「立派なお花見が出来ればいいなぁと思うですよ。勿論、オオクワガタさんが良ければですよ」
 勿論、返事はない。ないが……敵意もない。それは了承ということなのだろう。
 全員がワッと声をあげ、花見が始まっていく。
「ブランシュは桜を見る事が初めてですよ! 綺麗にメモリーに残すですよ!」
「きれーだな!」
 ブランシュと熾煇が声をあげて。
「凄いなあ……」
 リリーとブラッドは、巨大なデザストルチェリーの花を見上げる。
「これで、ひとまずは大丈夫ですね」
「ええ。仕事は完遂よ……食べる?」
「戴きます」
 半分になったリンゴを更に半分に分け合って、リースリットとイナリは笑いあう。
「いいお花見なの」
「普段はあまり飲まないが、こうも見事な桜ともなれば、花見酒に興じるのも悪くはないかもしれないな」
 早速呑み始めているジンに胡桃はコャー、と鳴いて。
「つーか、そもそも、さっきも言ったがよ。阿る気がねえってのは、気に入られようって魂胆が傲慢じゃねえかってそういう話さ。俺らは俺らの都合でこいつの居場所を護った。それをどう取るかもこいつの胸先三寸じゃねえかよ」
 デザストルオオクワガタを見ながら、雪華はそんなことを語る。
 まあ、事実その通りではあるのだろう。
「別にいい。こいつらが滅びようがどうしようが。ただ、こいつが居た方が都合がいいってんで生かしたのが俺たちの都合だ。それはアリンコ共のこともそうなんだよ。……柄にもなく喋りすぎちまったが」
 それはある意味で正しい。
 だが、互いの利益がぶつかるのであればそうするしかない。
 覇竜を越え、あるいはラサや幻想にも到る可能性を秘めた危機。
 それを許すわけにはいかないからこそ……戦うしかない。
「まあ、今はこの景色を守れた……それでいいって気はするな」
 アクセルはデザストルチェリーの木の上から見える壮大な光景を見て、そう呟く。
 ふわりと風で舞った花弁が、その頭の上に乗って。
 暖かな春の空気を、全員へと優しく伝えていた。

成否

成功

MVP

アクセル・ソート・エクシル(p3p000649)
灰雪に舞う翼

状態異常

なし

あとがき

アダマンアントを倒し、デザストルチェリーをも守り抜きました!

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