PandoraPartyProject

シナリオ詳細

サウ菜

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●暑さでとうとう頭がおかしくなったであろう黒スーツ一張羅の情報屋が掴んできた眉唾
 『博愛声義』垂水 公直(p3n000021)はダレていた。
 『無明の明』ドルト・ペオン (p3n000035)もまた、ローレットのカウンターに上体を突っ伏してダレていた。
「なんなんでありますか垂水殿ォ~……この暑さは自分には酷でありますよぅ……」
「お前それ各国に出向いて仕事してる連中に同じこと言えんの? っていうかお前も仕事しろよ仕事。初心者向けの仕事なら斡旋してやるからちょろっと行ってこいよ……」
 「お前見てるだけで暑苦しいんだよ」、とは喉から出かかっても言わない公直。変身能力を持たないカワウソの獣人とか、いるだけで暑苦しい。
「垂水殿が斡旋する仕事ってなんか評判がアレじゃないですか。練達絡みだと卑猥で海洋絡みだと危険で幻想だけでも悪徳貴族とパイプがありそうな」
「そんなパイプあったら俺が是非欲しいわ。なんだその噂……ああ、そういや貴族で思い出したわ」
 血糊のついたクリップボードで顔を仰ぎながら、公直は依頼書を取り出してドルトをけしかける。
「適当な連中集めてちょっと採集依頼行ってきてくれよ。敵はなし、敵性生物の気配なし。貴族サマの依頼だから成功させれば気持ち程度に報酬に色付くかもしれねえぜ?」
「ホントでありますかっ!? 美味しい依頼でありますなヤダー!」
 「すぐに行って参ります!」と飛び出していったドルトは、肝心な言質を取り忘れていた。
 ……『危険がない』とは一言も言っていないのである。

●貴族の皆さんも所領の暑さにやられたらしい
 ドルトに声をかけられ、とある貴族領……リュー・ロウ伯領地の森林地帯に赴いた一行は森の入口に立った時点で帰りたくなったことだろう。
 どっ、と熱波が押し寄せる。湿気を多分に含んだそれは、森の奥へ行くに従って強くなることを窺わせる。
 長居はできない。だが木々は格子のように複雑に絡み合い、繁茂の限りをもって一行を遮るだろう。
 リュー・ロウ伯爵からの依頼内容は、つまり。
 この森の奥の、熱波の源と目される植物、「サウ菜」を余さず摘んで持ち帰ることであった。
 これにはちゃんとした理由があるのだが、一行がそれを知るのは今ではない。

GMコメント

 誰だよ外に出ればフリーでサウナ入り放題とかのたまった奴は。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

●達成条件
 『サウ菜』を根こそぎ摘んで持ち帰る

●サウ菜
 肥沃な森林(特に夏)に芽吹き、強烈な熱波(地熱由来)を吐き出す謎の植物。根っこがメチャクチャ長い。そして太い。
 熱波の範囲は明らかになっていないが、森林地帯にかなり蔓延してることから、『ドエレー』感じなのは間違いない。
 ちなみに煎じて飲むと熱中症にも効くし暑さに対する耐性が一時的にぐっと上がるため、生薬として珍重されてるとかないとか。

●森林地帯
 リュー・ロウ伯爵の領地。かなり広い。
 枝打ちなどをしていないためか森の生育は好き放題伸び放題といった有様で、まっすぐ進むだけでも枝を落としたり木の根の間をかいくぐったりしなければいけない。
 戦闘ルールに依らない地道な前進が必要となる。軽装でもいいけど肌は覆ったほうがいい。かぶれるので。
(サウ菜駆除を開始すると「火炎」相当のダメージを常時受けることになりますが、戦闘そのままの時間経過でダメージを受けたりはしません。エグすぎるので)

●ドルト・ペオン
 カワウソとの半獣半人のウォーカー。変身はできない。
 指示には従います。

 暑い中大変ですが、よろしければどうぞ。

  • サウ菜完了
  • GM名三白累
  • 種別通常
  • 難易度EASY
  • 冒険終了日時2018年08月11日 21時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談4日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

R.R.(p3p000021)
破滅を滅ぼす者
リカ・サキュバス(p3p001254)
瘴気の王
クロス・ラプラエロ(p3p002059)
あらぶる
アグライア=O=フォーティス(p3p002314)
砂漠の光
リディア・ヴァイス・フォーマルハウト(p3p003581)
木漏れ日のフルール
炎堂 焔(p3p004727)
炎の御子
ルア=フォス=ニア(p3p004868)
Hi-ord Wavered
クライム(p3p006190)

リプレイ

●破滅(ねっちゅうしょう)に向かう物語
「猛暑とは……酷暑とは……即ち破滅……故に滅ぼすべきだ……」
 『破滅を滅ぼす者』R.R.(p3p000021)は呻くように宣言する。森の奥から波を打って押し寄せる熱波はすなわち『破滅』である。原因となっている植物を取り除くことは、彼の倫理観からいって正義に該当する。
「ドルト……、お前何を聞いてこの依頼を用意したんだよ……」
「撃ち合い殴り合いのない駆除任務と聞いたのであります……この間みたいな相手はしばらく御免こうむりたかったのであります……」
 クライム(p3p006190)の問いに、ドルトは心の底からつらそうな声で応じた。先日の調査任務からさほど日が経っていないこともあり、鮮烈な記憶が残っているのだろう。確かに、彼女は役立たずだったしイレギュラーズの教導におっかなびっくりついてきては目を白黒させていた状態だったが。
「というか、装備はどうした装備は」
「ちゃんと持ってきたでありますよ? 『ネッチュウショウ』というものを回避するために沢山持たされたであります」
 『炎の御子』炎堂 焔(p3p004727)は、クライムに対しふんすと胸を張るドルトの姿に心配になり、彼女の背負った鞄を覗き込む。
「水筒が結構たくさん……喉が乾いて倒れることはなさそうだね! 木とか触ってかぶれたりしないかな?」
 そう問いかける彼女は、常の巫女装束ではなくジャージに手袋で対策を整えている。水分や道具の用意も抜かりがない。無論、それなりの対策は他の面々も十分整えてきたようである。
「薬草を触っているのは好きですが、暑いのは苦手なんですよね……」
 『砂漠の光』アグライア=O=フォーティス(p3p002314)は呼吸をするたび喉から入り込む熱気に息を詰まらせる。如何に砂漠にゆえある世界の住人とて、高温多湿の環境では勝手が違う。聖騎士の加護がなければ、尚更辛かったことだろう。
「そう言えば、水って砂糖とか塩が入ってた方が倒れにくくなるんだよね?」
 焔の言葉に、思い出したようにびくりと身を揺らしたアグライアは懐をまさぐる。こんなこともあろうかと、塩を混ぜた飴が一袋忍ばせてあったのだ。便利ぃ。
「タダでさえ暑いって言うのに、その熱源回収ですか……」
 『闘技場サンドバッグ2号』雨宮 利香(p3p001254)は荷物の入った樽を担ぎ上げ、漂う熱波に嫌悪感をあらわにする。
 肌の露出を控えた長袖は、当然ながら大いに蒸れる。手袋が袖口の熱の逃げ場を奪うため、必然的に群れた空気は首か裾へと集中する。つまり不快なのである。
 そんな彼女の不快感を形にしたように、正面を塞ぐ木の枝がはじけ飛ぶ。利香が防御障壁を攻勢に転じた行為が、あたかも前兆なく破砕させたように見えたのだ。
「根っこにも効能があるのかしら……余さず摘んで持ち帰るなんて」
 『あらぶる』クロス・ラプラエロ(p3p002059)は仲間同様、全身防備の格好で挑んでいた。だが装着法なのか衣服のバランスなのか、はたまたサングラスのせいなのか。とにかく、怪しい雰囲気を醸し出していた。獣道すらない場所を突き進めとは、大概酷い話である。
「なるべく体力を温存して『サウ菜』のところまで行きたいですね」
 『木漏れ日の妖精』リディア・ヴァイス・フォーマルハウト(p3p003581)は仲間達に輪をかけて不信者感が顕著だった。ローブで全身を覆っているせいか、肌はおろか表情すら見えにくい。身を護るという意味ではおおいに有効なのだが、籠る熱だけは逃しようがない。
 彼女が今回の任務で担う役割は、自然との対話による探索精度の向上である。熱気の方向だけでも粗方の位置はつかめるが、距離感が狂って右往左往するよりは遥かにマシである。
「この熱の籠もり様……どこに逃げても暑くてたまらないというのはズルくないかと自分、いぶかるところなのでありますが!」
 ドルトが草をナイフで刈り取りながら、怒り心頭といった様相で叫ぶ。
「やめろ……叫ぶのは頭に響く……今は耐える時だ……」
 R.R.の絞り出すような言葉に思わず口を抑えたドルトは、改めて仲間達に視線を向ける。
 ルアは大量の金子を賭け事で熔かしたような顔をしていた。馬車を引き連れてきたところで、彼らは木の根に阻まれて進むに進めず、通れるだけの道を作る労力は成果に見合わない。結果、彼女は樽を背負う羽目に。熱は大して障害ではないが、面倒には変わりない。
 クライムはひとつずつ堅実に作業を進めているが、太い枝を切り払う時の勢いが鬼気迫っている。
 焔は枝を打ち払ってから、自分の槍をしげしげと眺めていた。
「この子をこんな風に使うなんて、元の世界にいた頃は考えもしなかったなぁ」
「仕方ないですよ、必要であれば多少のことは……」
 利香は焔の肩を叩き、手近な枝を弾き飛ばす。愛用の武器を草刈り鎌よろしく用いることに思うところが無いわけではないが、これも任務である。
「サウ菜の影響がまだ少ない分、体力は十分確保できてますが……皆さん、水分補給だけは喉が乾いてなくても必ずしてくださいね?」
 アグライアはみずからも積極的に水分を摂りつつ、気遣いの声を欠かさない。彼女自身も重装備である以上、決して辛くないわけがないのだが……。
「もう少し、体力は温存できれば……何よりなんですが……」
 リディアは流れ落ちる汗を拭いながら、水を口に含む。体力的な消耗はさほどではないが、汗と湿気の不快感は阻めない。順調に近づきつつあると分かっていても、暑さを無視できるかというと否である。
「早く見つけて……帰りたい……」
 ラプラエロはなおさら重症である。
 肉体的負傷とか体力消耗は兎も角、他の面々ほど熱への耐性や回復力が秀でているわけではなかった。最後に頼りになるのは精神面だが、この有様。依頼内容の確認がこれほど重要だと感じたことは、彼女の短い経験をしても余りないだろう。
「耐性があろうと暑いものは暑い。儂覚えた……しかし、この暑さなら大分近付いておろうよ! 待っておれサウ菜! 汝の命運はあと僅かじゃ!」
 ルアは異能の鎧により熱や冷気を無視して行動できる。できるのだが、無視したから辛くないというワケじゃない。
 割と世の中、その辺の釣り合いはとれている……のだが、彼女が意地でゴリゴリと前に進むのを止めるほどではなかった。
 仲間の誘導を聞きつつ半ば根性でルアが突き進んだ先、そこにはエグい熱波を撒き散らしながら首を左右にスイングさせる花、のようなものがあった。

●絶滅(ほりかえし)を成し遂げる話
「それじゃあドルトさん、わたしの分までよろしく!」
 ラプラエロ、サウ菜を見るなり己の籠をドルトに押し付け、全力でサウ菜から離れた。すかさず手にしたのは回復用のポーション。どうやら、手助けするから頑張ってくれ、ということらしい。
「えっよろしくってどういう事ですかクロス殿!? 自分にそこまで体力は……!」
「良いか、ドルト?」
 混乱するドルトの肩を抑え、クライムが深呼吸してから諭すように語りかける。目がマジだ。
「『心頭滅却すれば火もまた涼し』って言ってだな。辛いと思っても気の持ちようで幾らでも世界の見え方も変わって来るのさ」
 だから耐えろ、と言っているようだった。彼は直後、己の剣の鞘を地面に突き立てて爆発機構を作動させ、サウ菜が埋まっている地面をどうにかできないか試す。
「でかした! そこを起点に儂が掘り返してくれるわ!」
 クライムが退くのに合わせて、ルアが長柄の棒をざくざくと突き立てる。多少柔らかくなったところに、クライムからスコップを受け取りさらに掘り進める。
「あっ、根っこの近くは手で掘り進めた方がいいかも! 傷つけると後々回収が大変になりそうだから!」
 親(はいないらしいが)の敵のように掘り進めるルアを見て、焔は慌てて声を掛ける。勢いだけで掘り返すだけ、よりは丁寧にことに臨んだことをアピールすべきかと考えたのだろう。
「つらい……俺が消えそう……いや駄目だ……まだ滅ぶわけには……」
 R.R.は今にも本当に消えそうな勢いで弱音を吐きつつ、しかし手の動きは一切の遅れや淀みが感じられなかった。意地でも依頼を達成させて帰りたいという根性が垣間見える。
 深呼吸を繰り返しつつ順調に掘り返す彼の包帯は次第に泥にまみれていくが、それもまた努力の顕れである。
 他方で、利香は黙々とサウ菜を外側から掘り返していた。静かに、淡々と。往路で弱音を吐ききってしまったのか、体を撫でる熱をものともせずに作業を続ける。火傷を負っても、瞬時に傷口が塞がっていく。
 小さめのサウ菜を掘り返しては樽に入れ、水分補給してスコップを構え直す。目に宿った光は職人のそれを彷彿とさせる。
「ドルト様は水を配ったり、皆さんの体調管理をお願いします。私達も無理はしない程度にがんばりますから」
「わかったのであります! 自分が倒れて皆様の手が止まってはコトですものな!」
 アグライアの言葉に、ドルトは素直に応じ、水分を抱えて走り回る。背負った籠にもこまめに拾い上げたサウ菜が突っ込んである。抜いてしまってからはすっかりおとなしくなったらしく、熱も徐々に収まってきている。手に取る分には問題なさそうである。
「体力に不安のある奴は食事休憩も取った方がいいだろう。時間の指定はないのだから、無理をせず確実に作業をこなしていくぞ」
「そうじゃな! 疲れた奴は休ませておくに限る! ……あんまりのんびり休んでおれんが!」
 クライムも一番大きなサウ菜の根を半ばまで掘り返したところで、木陰に下がって弁当をかきこむ。熱で食欲が落ちてはいるが、食べなければさらに体力が落ちる。
 持って帰るまでが依頼なのである。
 ルアは半ばハイになり、吹き荒れる熱を無視して全力で掘り進む。身長の倍ほどまで地面を掘り返し、やっとのことで根の先端を見つけた彼女が次に行ったのは、地中の空間を広げることだった。……当然ながら熱気と湿気の籠もり方が別格なので彼女以外には勧められない。
「それにしても、掘り返すだけじゃなくて持ち帰れって……何に使うのかなぁ」
 少しずつ根を掘り返しながら、焔は首を傾げる。掘り返す事自体は、森の熱波を沈静化させる意味で重要ではある。
 だが、その元凶を持ち帰る意味までは分からない。
「多分、薬にするんじゃないでしょうか……サウ菜は熱中症に効くと聞きますし」
 リディアはどうやら、その辺りの話を聞きかじっていたらしい。確証が無い物言いからすると、半信半疑であったようだが。
「幻想貴族の考えることは分かりませんけど……それが本当だったら今回ぐらいは評価できますね……」
 利香はあらかた小ぶりなサウ菜を掘り返してしまうと、大型の個体の掘削に加わった。末端の根は多くが掘り返され、残すは真下に伸びるメインの根のみ。
 下からルアが、上から残った面々が身長かつ大胆に掘り進め、生き埋めにならないように土砂を掻き出し……もはや土木作業のレベルである。
 交代で作業し、時に休憩を重ねること数時間。
 日が傾き始めた頃、一同はついに最後のサウ菜を掘り返したのだった。

●伯爵の好意
「……持って帰るのか、この阿呆みたいに大きい山菜を」
 R.R.の絶望感が激しいが、以て帰るまでが任務なのである。決してここで足を止めてはいけないのだ。
 とはいえ、ほぼ支援に回っていたラプラエロは十分体力が余っていよう。
 他の面々でも、ピンピンしてる者は早々に大荷物を抱えている。なにより、ルアの馬車が森の入口でなんとか水を飲みつつ待機している……帰路は、いくばくか楽になるはずだ。
「暑くて汗びっしょりです。水浴びしたいです」
「いっぱい汗かいちゃって気持ち悪いから、早く帰って水浴びとかしたいなぁ」
 奇しくも、リディアと焔が異口同音に体を清めることを希望する。彼女らのみならず、女性陣は大体そんな気持ちだろう。当たり前である。
「そういえば、ロウ伯爵がサウ菜を持ち帰ったら自慢の風呂を案内しよう、とか言ってた気がするのです。水浴びもかなうのではないでしょうかっ!」
 ドルトがそんなことを隠していたのは非常にアレだが、差し当たって水浴びも湯船に体をつけることも適うようだ。
 一同にとっては非常に良い顛末となることだろう――。

「……ドルト、何だあれは」
「しらないのであります」
 クライムは、ドルトに短く問いかける。ドルトは首を振る。目の前には、リュー・ロウ伯爵らしき壮年の美丈夫と、左右には肉体美を誇示するマッチョメン2人。タオルを持っている。
 あとなんか木。木の枝持ってる。
「ご苦労だったね諸君、これで我が領民に薬を支給できれば夏を乗り切れるだろう……それはそうと! 彼らが私が自信を持って勧める蒸し風呂マスターである」
 蒸し風呂マスターとは。湯船はないのだろうか。
「無論、湯船も水風呂も完備している。そのうえで、蒸し風呂で香りつきの蒸気を先に思う様浴び……うん?」
 伯爵が話を終える前に、一同はその横をすり抜けて浴場へと突っ込んでいった。
 流石に水風呂直ダイブは理性が抑えたものの……蒸し風呂に入ろうなどという奇特な者はそういなかったに違いない。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 伯爵は大喜びでしたので、多少報酬が上乗せされます。

PAGETOPPAGEBOTTOM