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シナリオ詳細

<spinning wheel>春の足は遠のいて

完了

参加者 : 8 人

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オープニング

●<spinning wheel>春の足は遠のいて
 春の気配がし始める、3月下旬。
 当然深緑(アルティオ=エルム)であろうとも、春の足音が聞こえてくる季節。
 だが、つい先日に発生した正体不明の『茨』は深緑の国を覆い隠し、外の世界からの侵入を断絶すると共に……中に棲まう者達には、深い眠りを齎していた。
 ……そんな、突如の事態に見舞われた深緑の、大迷宮ヘイムダリオンを抜けた先、ファルカウの麓に鎮座する『アンテローゼ大聖堂』。
 この時期となれば、美しい目にも鮮やかな花が咲き誇り、優しい香りが訪れる人々を楽しませて暮れる……筈だった。
 しかし今、イレギュラーズ達の目の前に広がるのは、津々と降り注ぐ雪。
「……いつもなら、美しい花に囲まれて……お花の香りに囲まれながら、友人達と花の香りを楽しみながらお茶会をしたり、うたたねをするのが楽しかった……なのに……こんな光景になっているなんて……」
 『深森の声』ルリア=ルミナス(p3n000174)は、一変した日常の光景に悲しげに呟く。
 春の薫りは見る影もなく、今ここは冬の様相。
 極寒の寒風に手先は痺れ、寒々とした『アンテローゼ大聖堂』の光景は、そんな過去の郷愁を掻き消してしまう程に悲壮たるもの。
 更に、アンテローゼ大聖堂の近くには先日からこの深緑を侵略せし多くの『茨』が張り巡らされており、そんな茨が張り巡らされている空間には、氷を纏う精霊や、獰猛たる氷の身体の魔物達がうろついている。
 ……彼等は何人たりとも『アンテローゼ大聖堂』より先へと通さないと言う指示を受けている模様。
「……何故、彼等は……この地を守っているのでしょう。何故……春の薫りを奪うのでしょう……」
 悲しみに目を伏せるルリア……だが、既に動き始めている現況は、何も為なければ悪化の一途を辿るがのみ。
「皆様……本当に頼ってばかりで、申し訳ありません。ですが……深緑の仲間達を助ける為に、もう少しだけ……力を貸して下さい。御願いします……」
 助けに来てくれた仲間達へ、深く頭を下げるルリア。
 故郷の惨状にどうしようもない不安を抱きながらも、自分の手で何かを変えられるなら……と、その武器を取るのであった。


「イレギュラーズの皆さん! 深緑を覆い隠す『茨』の事件なのですが、凄い情報が舞い込んで来たのです!!」
 と、カフェ・ローレットで声を上げる『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)。
 その言葉にキミ達と共に立ち上がるルリア。
「……本当、ですか? どういう情報、でしょうか……!?」
 故郷の惨状の前に、藁をも縋りたい思いのルリア……ユリーカは頷いて。
「そうなのです! 皆さんも妖精郷『アルヴィオン』は知ってますよね? どうも妖精さん達は、『怠惰の魔種ブルーベル』の存在と取引の結果、茨の被害を受けていなかった様なのです!」
「これは妖精のフロックスさんが、魔種からラサとの国境沿いに行き来が出来て、ダンジョンを貰った事を教えてくれたのに起因するのですよ」
「深緑を見捨てて他の国と交易を営むだけなら、それで十分かもしれないのです。ですが、深緑には妖精さんたちの仲間が遊びに行っていて、その子達が帰ってきて無かったりするのです」
「魔種は、深緑に入らない代わりにラサへの道を教えてくれた様なのです。ですが約束を破ってしまうと、妖精さん達にも被害が及んでしまう可能性があるのです……それで、妖精女王さんを、イレギュラーズの皆さんで説得したのです! お陰で、周り道になってしまうのですが、『大迷宮ヘイムダリオン』を経由し、深緑の奥に続く道を開いてくれたのです!」
「なので、ローレットはその道を利用して、深緑の中心地『ファルカウ』に向けて、『アンテローゼ大聖堂』を拠点にすべく、その周りの脅威を掃討する事となったのです!!」
「……アンテローゼ大聖堂、ですか……」
 目を閉じ、その脳裏に過去のその姿を思い出すルリア。
 美しい花々が咲き誇り、春先ともなれば……羽を休める為に良く訪れていた、そんな想い出の場所。
 勿論、茨が覆い尽くした深緑での現況は、どういう状況かは分からない。
 だが……外から無闇に向かうよりも、アンテローゼ大聖堂を拠点としてファルカウ奪還の駒を進めた方が、遥かに効率的なのは間違い無い。
「……分かりました。いえ、絶対に……取り戻して見せます。私の力は微力だと思いますが……それでも、少しでも……深緑を取り戻す為に、力になれるなら……お手伝い、させて下さい」
 とユリーカの瞳をじっと見据えるのであった。

GMコメント

 皆様、こんにちわ。緋月 燕(あけつき・つばめ)と申します。
 深緑に茨が張り巡らされる事件……皆様のおかげもあり、一歩ずつではあるが前進している様です。
 今回の作戦によっては、深緑に再び拠点を築く事が出来るかもしれません。
 
 また、シナリオは、ルリアも参加させて頂きますので、何か作戦・指示等あれば、プレイングに記載頂ければと思います。

 ●成功条件
  アンテローゼ大聖堂の周囲に蔓延る敵を掃討する事です。

 ●情報精度
  このシナリオの情報精度はBです。
  依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

 ●周りの状況
  舞台は大迷宮ヘイムダリオンを抜けた先に存在するファルカウの麓の『アンテローゼ大聖堂』の周囲になります。
  深緑を覆い尽くす茨は当然、このアンテローゼ大聖堂の周りにも蔓延って居るので、茨の対処は必須です。
  茨自身に触れると傷を負う事はありますが、茨が自律的に動いて攻撃をしてくるという事はありません。
  とは言え皆様が攻撃を受けたりして吹き飛ばされたりした先に茨があれば、当然それにより傷つく事になりますので、そういった意味で言うと茨の効果は無視出来ないと思われます。
  更に、この茨が張り巡らされた周辺には『茨咎の呪い』が漂っています。(詳細は後述)
  尚、何故かはわかりませんが、茨が張り巡らされている中において今回相手になる敵陣容は行動制限を受けません。

 ●討伐目標
  ・氷を纏う精霊達『氷雪の主』
    冬の王の配下であり、かつてアルヴィオンに封じられて居た大精霊です。
    彼等は細かい所は不明確ではありますが、『アンテローゼ大聖堂』に近づいてくる者達を『殺す』事を目的として動いています。
    大聖霊は1体のみではありますが、強力な氷属性の魔法を使用します。
    オープニングにある通り、大聖堂周域には雪が降り積もっている状態なので、その雪を強風で吹き荒れさせる事で視界を雪で覆い隠したり、極寒の寒さで凍傷(氷漬)の効果を引き起こしたりします。
    これら攻撃は全て遠隔攻撃となります。
    更に精霊故に足がなく、常に飛行状態で行動し、戦場を縦横無尽に飛び回る様です。
  
  ・氷身の魔物『氷獅子』達
    冬の王の配下、との関係性は不明ですが、獅子(ライオン)の姿形をした魔物達です。
    この魔物の身体は白い毛に覆われており、寒冷地でも特に問題無く動けます。
    上記の『氷雪の主』が雪を撒き散らし視界不良の中において、その白毛の身体を見定めるのはかなり難しいでしょう。
    また、彼等の攻撃手段は基本的に近接して、爪で繰り出す斬撃と鋭い牙で噛みつく穿撃の二種類になります。
    加えて氷獅子達の数はかなり多く、個々単体の戦闘能力はさほど高くはないものの物量で押しきろうとしてきます。数の暴力に負けない様にする必要があります。

 ●『茨咎の呪い』
  大樹ファルカウを中心に広がっている何らかの呪いです。
  イレギュラーズ軍勢はこの呪いの影響によりターン経過により解除不可の【麻痺系列】BS相応のバッドステータスが付与されます。
 (【麻痺系列】BS『相応』のバッドステータスです。麻痺系列『そのもの』ではないですので、麻痺耐性などでは防げません。)
  25ターンが経過した時点で急速に呪いが進行し【100%の確率でそのターンの能動行動が行えなくなる。(受動防御は可能)】となります。

 それでは、イレギュラーズの皆様、宜しくお願い致します。

  • <spinning wheel>春の足は遠のいて完了
  • GM名緋月燕
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2022年04月05日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

クロバ・フユツキ(p3p000145)
背負う者
グレイル・テンペスタ(p3p001964)
青混じる氷狼
アリア・テリア(p3p007129)
いにしえと今の紡ぎ手
長月・イナリ(p3p008096)
狐です
アルトゥライネル(p3p008166)
バロメット・砂漠の妖精
ニル(p3p009185)
願い紡ぎ
ヴェルミリオ=スケルトン=ファロ(p3p010147)
陽気な骸骨兵
百合草 瑠々(p3p010340)
偲雪の守人

リプレイ

●雪降る春
 春の気配が訪れ始める、深緑。
 丁度この時期ともなれば深い緑に色とりどりの花が咲き誇る。
 その美しい見た目が目を楽しませ、甘い花の香りが鼻腔を刺激する……そして、そんな花々の歓迎に心を躍らせるなんて事を繰り返してきていた。
 ……然し、今はその様な面影は全く見る事もなくなってしまう。
 深緑の国を覆い隠すように張り巡らされた【茨】は、深緑の外の世界からの侵入を拒絶。
 更に、深緑に棲まう者達には深い深い眠りが齎され、その被害に遭った者達は……決して目を覚まさないという。
 そして今イレギュラーズ達が辿るは大迷宮ヘイムダリオンを経る道。
 この道は妖精さん達の力によってイレギュラーズ達が利用出来て……深緑の奥地へと向かう現状唯一無二の道程。
「妖精……妖精ね。ついこの間まで、そんなファンタジーな物居る訳ないと思ってたんだけど、本当に居るんだな」
 と『血反吐塗れのプライド』百合草 瑠々(p3p010340)が肩を竦める。
 一方で……不安に押し潰されそうな『深森の声』ルリア=ルミナス(p3n000174)が。
「……あの、綺麗で、楽しい場所が……こんな事になるなんて……」
 焦燥しきった、彼女の言葉。
 自分の故郷がこの様な事態になるだなんて、誰が予想したことだろうか。
 ほんの少し前は、普通に行き来できていた日常は、瞬く間に豹変してしまう。
 自分がその時いれば、親類友人達と分かれる事なんて無かったのではないか……とも思い、自戒の念に駆られていた。
 でも、もう時は巻き戻せない……。
 そんなルリアに、『舞祈る』アルトゥライネル(p3p008166)は。
「……よぅ、また遭ったな?」
 肩をぽんと叩き、気楽に声を掛ける彼に、ルリアは。
「あ……アルトゥライネルさんも……来て頂けたのですね……本当、ありがとうございます……」
 と、逸る心を抑えながら頭を下げるルリア。
「……ようやく元凶が見えてきたんだ。足踏みをしている間も惜しいだろう……俺達がここで上手く拠点を展開出来れば、大きく事態は変わるかもしれんからな……俺達もしっかりしないとな?」
「ええ……そう、ですね……」
 アルトゥライネルに、頭を下げるルリア……そして、『陽気な骸骨兵』ヴェルミリオ=スケルトン=ファロ(p3p010147)も。
「そうですぞ! ルリア殿、お気を強くお持ち下され。明けぬ夜はなく、春も必ず訪れます。否、我等の手で春を取り戻しましょうぞ!」
 強い口調でその背中を押すヴェルミリオ。
 ……そうしながら大迷宮ヘイムダリオンを過ぎ……その出口の先に広がる深緑の奥地『アンテローゼ大聖堂』の近くへと辿り着く。
 しかし……春先の筈の深緑なのに、空から降り注ぐのは朗らかな陽射しではなく、寒々とした雪。
「これはこれは……季節感ってものがまったくわからなくなるような光景ばかりだな」
 と『黒鋼二刀』クロバ・フユツキ(p3p000145)が肩を竦めるると、それにアルトゥライネル、『いにしえと今の紡ぎ手』アリア・テリア(p3p007129)、『狐です』長月・イナリ(p3p008096)の三人も。
「ああ……妖精郷の次は新録が凍るか……茨の内には冬があったとはな」
「そうだね。こっちは冬……さっきは炎って、しっちゃかめっちゃかだよ! なんでなのかな!」
「春先に雪、雪と桜の組み合わせは美しいけど、こんな状況で悠長に鑑賞する暇もないわね……」
 と、そんな三人の言葉にルリアは。
「ええ……この『アンテローゼ大聖堂』は、春先に多くの花が咲き誇る、美しい場所の筈です……なのに……この様な状態に……」
「そうなんだ……本当は……ここも花に囲まれた綺麗な場所……だったんだね……? こういう雪景色も……僕は嫌いじゃないけど……この世界は花に囲まれていて欲しいよね……」
「ええ、そうなのです。深緑をつめたくで、さみしい……そんな場所にさせたくないのです……」
「うん……ここまで環境を変えるほどの力……興味が無いと言ったら嘘になるけど……あまり時間は無さそうだ。早急に決着をつけないとね……」
 『青混じる氷狼』グレイル・テンペスタ(p3p001964)に『おかえりを言う為に』ニル(p3p009185)がこくり、と頷く。
 そんな仲間達の言葉にヴェルミリオが。
「まさにここが正念場というやつですかな? 深緑奪還の次なる一手のためにも、かならずや敵を討ち倒しましょう!」
 えいえいおー、と威声を上げると、アルトゥライネル、クロバ、イナリが次々と。
「そうだな。遠回りではあるが、辿り着けただけ今は良しとしよう。大聖堂、かならずや取り戻してみせる」
「春を遠ざけるようであれば容赦をする訳にはいかない。それに深緑の地が閉ざされてるのにも関わってるのだろう? だったらその障害を排除するまでだ、行くぞ!」
「そうね。季節外れの雪にはさっさと溶けて貰うわよ!」
 と、決意を口にするのであった。

●雪影を纏う
 そしてイレギュラーズ達は、アンテローゼ大聖堂に向けて歩を進める。
 足元には降り積もる雪が重なり続け、足場はかなり悪い。
 更に雪吹きすさぶ中においても茨は張り巡らされており、視界不良と茨の棘が身を傷付けてくるという状況。
「しかし……この纏わり付くような嫌な感じ……なんだか海洋のあの海で似たような物を感じたような……まぁ、天啓でそう感じるだけなんだけれど……あまり長くは居たくないね。さっさと片付けちゃおう!」
 とアリアは茨を斬り裂くが……斬ってもほどなくして再生し、茨は再度視界を覆い隠す。
「茨はあついのもさむいのも、へっちゃらなのですね。この茨は……本当に、一体何なのでしょう……? とにかく、出来るだけ触らないように気をつけて行きましょう」
 ニルの言葉に、グレイルが。
「そうだね……それにしても……流石にここまで吹雪が酷いと……少し寒いね……僕は毛皮が在るから……他の人よりは多少マシなんだろうけど……みんな、上着くらいは貸せるから……ムリしないでね……?」
 とグレイルが言うと、アリアは。
「ありがとうございます……大丈夫、です……さぁ……あそこが、アンテローゼ大聖堂……です」
 頷きながら、アンテローゼ大聖堂の入口を指さす。
 そして、そこに向けて茨を斬り裂きながら歩いて行く中……クロバは敵の気配に強くアンテナを張り巡らせる。
「……凄い気配を感じるな。間違い無い……奴らは俺達に気付いた様だ」
 とクロバが言った瞬間……今迄より一際強い雪が吹きすさぶ。
 そして、その強い雪に紛れるように……氷の大聖霊と白き毛に覆われた獰猛なる獣が出現。
『グルゥゥ……!!』
 と怒りに狂いし氷獅子達がイレギュラーズ達に続けて襲い掛かってくる。
 ……そんな敵の先手の一撃に対し、先んじて瑠々が。
「おい、アンタらの相手はウチがしてやるよ!」
 と氷獅子達に向けて開口一番怒りを買う叫びをまき散らし、その攻撃ターゲットを自分の方へと向けさせる。
 敵の先手の一刃は瑠々に集中砲火する中、残るイレギュラーズ達は吹雪の中に白く紛れた氷獅子と氷雪の主の場所を見極めようとする。
 ……そして見極めた氷獅子に愛して、クロバは魔鉤爪で横一文字に薙ぎ払い攻撃……其の攻撃で敵の血潮が白の中に紅く色付くのを狙う。
 その一閃に、数匹の氷獅子達が傷つき血を流す。
 更にイナリが蒼き偽装を通繰り出しながら、凍結を奏でる朧の奥義を叩きつける事で、更に氷獅子へダメージを積み重ねていく。
 そう二人が攻撃している間に、アリアはルリアへ。
「ルリアちゃんも、今回は攻撃に回って!」
 と指示を与える。
「え……で、でも……私で大丈夫でしょうか……?」
「大丈夫だ。微力でもないよりかはマシさ」
 ルリアに口は悪いが、発破を掛ける瑠々。
「……判りました……頑張ります」
 一念発起すると共に、ルリアはアリアとタイミングを合わせて攻撃。
 アリアの霧氷で氷獅子達を次々と氷漬けにしていき、そこへルリアの戦慄で、魅了に落とす。
 更にヴェルミリオとアルトゥライネルが。
「余り時間を掛けると、呪いが回ると言う事ですからな! 出来る限り急いで数を減らして行くとしますぞ!」
「ああ……さぁアンタ達。炎の舞を御覧あれ。一足早く水に還りたいのは誰だ?」
 とアルトゥライネルが至近距離に爆発を起こして炎を主意に展開する一方で、、ヴェルミリオは己に聖域を纏わせつつの闇の月の一閃を叩き込む。
 そして、グレイルは己に似た神狼を作り出し、その力を借り手氷雪の嵐をその場に巻き起こす。
 そんなイレギュラーズ達の猛攻に、ある程度のダメージを総じて喰らう。
 だが……そんな氷獅子達が傷つこうとも、荒れ狂う氷雪の主は助ける事などしない。
 一際強力な氷属性の魔法をその場に展開し……イレギュラーズ達を纏めて凍傷に陥らせつつ、その体力をじわじわと削る。
 更に残りし氷獅子達は、まるで氷雪の主を護ろうとしている様に数匹は氷雪の主の前に立ちふさがり、残る者達でイレギュラーズ達に近接し、鋭い爪で身を斬り、口元に雄々しく生えた白き牙でガブリ、と噛みつく。
 そんな氷雪の主と氷獅子の連携が取れた猛攻が、イレギュラーズ達の体力をどんどんと削っていく。
 ……しかし、そんな敵の攻撃を分散させない様、瑠々は敵の怒りを常に引き出すよう叫びつつ、自分自身に物・神を無効にする力を付与し、重ねて英霊の鎧を纏うことで、防御だけに傾注する。
 そんな瑠々の作戦もあり、周りの仲間達は回復に多くの力を割かずに済ませる事になる。
 ……そして、暴雪風の猛襲をくぐり抜けた後、威風堂々とイナリが。
「短期決戦仕様なのに、こう数が多いと厄介極まりないわね! どきなさい!!」
 と敵の群れを強く吐き捨てるような言葉でこきおろしながらの朧なる月の一閃で単体に攻撃。
 更にクロバも氷獅子達を睨み据えながら。
「お前が幾ら立ちはだかったとしても……俺はその先に用があるんだ! 邪魔しないでくれ!」
 と一際強い口調で叫び、氷獅子一体に極大なる一撃を叩きつける事で……確実に一匹を仕留める。
 とは言え一匹ずつ叩き潰していては、イレギュラーズ達を蝕む茨咎の呪いが回りきってしまう……だから。
「兎に角、数が多い分……きちんと戦況を分析して、過剰に倒さない様にしていかないといけないわね……この霧氷だけだとダメそうだから、もう一段階……最適化してから仕掛けるわね」
 とアリアは己の能力を最適化する支援を加えててからの霧氷を展開。
 ダメージが底上げされた霧氷……でも、まだ氷獅子が倒れる程ではない。
「中々、体力があるみたい、です。ですが…ダイヤモンドダストで、もうちょっと様子を見てみるのです」
 とニルからも霧氷の魔術で以て、敵陣を総じて攻撃。
 ルリアも歌声を刃に変えて奏で続け、氷獅子達を纏めて攻撃。
 そんなアリア、ニル、ルリア三人は範囲攻撃を継続して決める事で、氷獅子達の体力を総じて減らす。
 ある程度、敵の体力を削った所に、更にグレイルの氷雪の嵐を決めて、敵の消耗具合を判断。
「……結構しぶとい……でも、効いては居るみたい……」
「ああ……みんなが氷で集中攻撃しているなら、俺は反対の炎で一気に灼き尽くしてやろう」
 と、今迄何重にも折り重なった氷を砕くように、炎の舞を最後に加えていく。
 氷から炎に切り替わり、苦悶の叫びを上げる氷獅子……そして、そこにヴェルミリオの闇の月。
 ほぼ全員から繰り出された範囲攻撃を確実に積み重ねていき……十五刻程。
『ウ……ウガァァッァ……!』
 獰猛な唸り声は、次第に危機迫る逼迫した鳴き声に変わり始めていて。
「ん……声が、険しくなりました……身体も傷だらけです……もうそろそろかも?」
 とニルの言葉。
「ああ……そうだな。皆、手を抜かずに繰り返せ!」
 とクロバの声に頷くイレギュラーズ。
 その刻、全員の範囲攻撃が次々と決まると……多数いた氷獅子達は、次々と地へと臥していく。
「これで……良しっと。後は氷雪の主だけよ!」
 とイナリの言葉に瑠々は頷き、少し高所から攻撃している氷雪の主の怒りを引く。
 ……勿論氷雪の主は遠隔攻撃が軸であり、ある程度の高さを維持したまま攻撃してくるが……そんな敵に向けてクロバがジャンプし、主の頭上から刹那の刻に繰り出される連撃の二刀。
 避ける事叶わず、そのまま氷雪の主が地表まで降下したところに、イナリが動きを止める臘なる一撃を一閃。
 地面に縛り付けられた主は、どうにか拘束を逃れようと藻掻くが、そうしている間にグレイルは獰猛な白狼を作り出し、主に深い爪痕を刻んでいく。
 更にヴェルミリオの虚無の剣による呪殺で蝕む。
 そしてアリアが。
「本来なら大聖堂、つまり同族を殺める事になるんだけど、まぁそうも言ってられないよね! というわけで、容赦しないこの一撃、喰らって貰うね1」
 神秘的破壊力を集約した、渾身かつ強大な一撃を氷雪の主に叩き込む。
『……!』
 言葉にはならずとも、命の危険に目を見開く大聖霊。
 ……そして。
「お前がづして、ここに居たのかは知らんが……俺達も自分の故郷を奪われたままって訳には行かないんでな……大人しく、倒れな」
 とアルトゥライネルの剣魔両方を重ねた一撃を、その身体正中に放ち……大聖霊は、まるで砕けるかの様に身を散らすのであった。

●聖なる冬の花
「……ふぅ……どうにか終わった様だな」
 息を吐く瑠々。
 とはいえ、氷雪の主と氷獅子達は倒せども……周りに蔓延る茨の影は、未だに衰える事はない。
 ……そんな茨をまじまじと見ながら瑠々が。
「しかしこの茨……どうにかして退かせねぇのかな……焼くと燃え移るからダメだろうし、普通に斬り裂いても後から後へと伸びてくるって……厄介なもんだわな」
 と肩を竦めると、それにアリアが。
「そうだね……ただある程度伸びてくると、それを斬り裂かない限り更に伸びてくる事はないみたいだし……ある程度その範囲に上限とかがあったりするのかな?」
 と小首をかしげると、ニルとルリアが。
「ん、そうですね……? とは言っても、それはそれで困った状況なのは変わりないのです。根本的に茨を処分する方法がないと、いたちごっこになってしまうのです」
「ええ……そうですね……ともあれ……アンテローゼ大聖堂……どうにか、確保出来ましたから……後は、ここから……」
 瞑目するルリアに、クロバが。
「そうだな……ファルカウまでは、まだどれだけあるかは判らないが……ここを脚崖にすれば、少しずつでも近づいていけるはずだ」
 と言うと、アリアが。
「そうだね……違和感はやっぱり拭えないし、ここの敵が元凶じゃないみたい。廃滅病にも似た感じ……まさか……?」
 とアリアの言葉にイナリとグレイルが。
「……そうね、勿論断言は出来ないけれど……何かがあるのは間違い無いわ。取りあえず……何か手がかりになる物が無いかを探して、持ち帰りましょう」
「……うん……そうだね……」
 と提案し、確保したアンテローゼ大聖堂の周りを捜索するのであった。

成否

成功

MVP

ヴェルミリオ=スケルトン=ファロ(p3p010147)
陽気な骸骨兵

状態異常

なし

あとがき

深緑の危機を解決する為に、皆様のご尽力に感謝します……!
どうにか拠点に足がかりを刻んだことで、一方ずつ事態は進んで行くでしょう……いつか、深緑を取り戻すまで、皆様のお力をお貸し頂ければと思います。

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