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シナリオ詳細

再現性東京202X:一期一会に苺を囓り

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


「再現性東京から少し旅行に行こうと思うのだがどうだろうか」
 恋屍・愛無 (p3p007296)の提案は再現された栃木のいちご農園でいちご狩りを楽しもうというものであった。
 誘いを受けた澄原 水夜子 (p3n000214)は「楽しそうですね」と頷くだけだ。
 愛無にはもう一つ、考えていることがあった。

 ――みゃーこ君は何が好きなのだろうか。
 ――好きな食べ物は甘い物――はご存じですよね。
   私、お恥ずかしながらクレープやタピオカなんか大好きなんですよ。あ、女子っぽいですか? かわいいでしょ?
   アイスクリームで好きなフレーバーはストロベリー。チョコレートも捨てがたいです。どれも美味しいですよね。

 以上、回想。つまりは3月8日で18歳になる水夜子の誕生日祝いにストロベリーアイスを手に入れるべくいちご狩りへと出掛ける算段なのだ。
 勿論、その誘いにラダ・ジグリ (p3p000271)は「ああ、世話になっているし」と頷いた。彼女もジャバーウォックの一件では水夜子を心配していた。
 怪異(夜妖)に強くともモンスターには弱い。あの日、練達の住民が感じた恐怖を少しでも拭い去れたらとの考えもある。
「エルは、行きたい農園を調べました。
 エルは驚きました。夜妖さんが、がおーっと農園を荒らしてます」
 農園のリストを手にしていたエル・エ・ルーエ (p3p008216)は困ったように眉を八の字にした。
 そう、再現性栃木のいちご農園を荒らし回る不届きな夜妖が現れたのである。

「ははあ。これは憤懣やるかたないですね。いちごが犠牲になってしまいます。
 合われた夜妖は子犬に似ているようですが……これは『雷獣』の一種でしょうか」
 情報を収集した水夜子はまずは夜妖退治ですねとやる気に満ち溢れていた。
「ばちこーんと倒しちゃえますね。どうやら個体としてはそれ程強くはなさそうです。
 痛めつければさっさと逃げていきそうな気もします。倒しきらなくてはならない相手でもなさそうですしね」
「では、そいつを倒してからいちご狩りを楽しもうか。みゃーこ君は構わないだろうか」
「ええ。美味しいいちごをみんなで摘みましょうね」
 その場で摘まんで食べる事も出来るらしい。農園を守る為に活躍し、思う存分にいちごを楽しもうではないか。
 水夜子は摘んだいちごを加工して従姉兄達にもお裾分けするのだと張り切っている。
 再現性東京も『あれだけの騒ぎ』にあったのだ。久方振りの休息を思う存分に楽しみたいと言うことだろう。
「いちごがお好きな方が居れば、皆で行きたいですね。
 私のお誕生日をお祝いして下さるんでしょう? 愛無さん。なら、皆さんも楽しんでくれるととっても嬉しいのですよ」
 早速頑張りましょうと微笑んだ水夜子は鞄に宇宙ビーバーのマスコット飾り、やる気を漲らせていた。

GMコメント

水夜子ちゃんのお誕生日をお祝い頂き有り難うございます。
何方様も、ご一緒にいちごを食べに行きましょう! ついでに夜妖も倒すぞ。

●目的
 夜妖の撃破
 いちごを美味しく頂く

●再現性栃木(?)
 再現性東京から小旅行で向かういちご農園です。とてもいちごが美味しいと評判です。
 いちご取り放題です。好きに摘んで、お好みの形に加工しましょう。水夜子はジャムなどにするつもりのようです。
 この地には『雷獣』のような夜妖がいちごを目当てに荒らし回っています。ちょちょいとこらしめてあげましょう。
(おでかけ&遊ぶのが優先ですので、皆様1行ずつくらい夜妖を撃破した!とご記載下さい。
 リクエストシナリオであるためにノーマル相応の扱いですが、シナリオはイージーのようなものです)

 いちご狩りでは、お好きにいちごを楽しんで頂くほか、加工したりお料理も出来ます。
 お昼ご飯も現地で頂きましょう。売店で購入できるほか、持ち込み可能です。
 思い思いにイベントシナリオのように楽しんで頂ければ幸いです。
 また、「何しようかな~!」という場合は水夜子と一緒にジャムを作ったり、ランチ(サンドウィッチを持ってきました)を楽しんでみるのは如何でしょうか?

●雷獣くん
 子犬のような外見をした夜妖です。お腹が空いて荒らし回っています。
 ぽかりと殴れば泣きながら撤退して行きます。捕まえることも出来そうです。

●澄原水夜子
 お誕生日様。18歳になります。ご存じの方もそうで無い方も是非遊んで上げて下さい。
 澄原家の人が多いため名前呼びorあだ名呼びを好みます。宜しければ「みゃーこ」「みゃーちゃん」などと呼んで上げて下さい。
 一見するとクールでミステリアスですが、色々と抜けたところもあるポンコツガールです。
 従姉兄(澄原晴陽・龍成)をとても大切にしており彼らの事は詳しく知っているそうです。(龍成は「怖い従妹」だと認識していそうですが……)

●その他
 夏あかねの担当NPCのうち、再現性東京に訪れることが可能なNPC(自由に動けるNPC)はお呼び出し頂ければいちご狩りにも赴きます。
 具体的には亮、リヴィエール、フランツェル、ひよの、なじみあたりです。(晴陽姉さんやマッドハッターさんは忙しそうです……)

 基本的にはとっても自由に過して頂けます。
 のんびりとした休日を過して下さいね! 宜しくお願いします。

  • 再現性東京202X:一期一会に苺を囓り完了
  • GM名夏あかね
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2022年03月24日 22時15分
  • 参加人数8/8人
  • 相談8日
  • 参加費150RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ラダ・ジグリ(p3p000271)
灼けつく太陽
※参加確定済み※
藤野 蛍(p3p003861)
比翼連理・護
桜咲 珠緒(p3p004426)
比翼連理・攻
アレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)
蒼穹の魔女
華蓮・ナーサリー・瑞稀(p3p004864)
ココロの大好きな人
恋屍・愛無(p3p007296)
愛を知らぬ者
※参加確定済み※
エル・エ・ルーエ(p3p008216)
小さな願い
※参加確定済み※
浅蔵 竜真(p3p008541)

リプレイ


「ま、まぁ再現性東京があるなら、再現された栃木があったって不思議じゃないわよね……?」
 やって来ました再現性栃木。再現性東京から電車で少しの小旅行。
 苺の美味しい土地として評判であるこの場所で苺狩りを楽しむのが目的だ。故郷を思い出せばこの時期にテレビで苺狩りの様子も紹介されていた記憶が朧気に存在する『比翼連理・護』藤野 蛍(p3p003861)は思わずこう言わずには居られなかった。
「地球人日本人の故郷ラブどんだけー! っていってもボク自身、故郷に帰るの諦めたわけじゃないから、同じ穴の貉なんだけど」
「トチギ……いちごが有名な場所なんだってね?」
『栃木』を知る蛍の反応を見遣ってから『希望の蒼穹』アレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)は首を捻った。
 ガイドブックを眺める澄原 水夜子 (p3n000214)は「そうなんですよね。いちごが美味しいそうでして……」と旅行ガイドブックに乗っているカフェのパフェ情報を眺めては再現できない物かと頭を悩ませている様子である。
「この時期はやっぱりいちごが美味しいから、食べるのが楽しみだ! いちごは普通に食べるのも美味しいけれど――」
 水夜子の手許を覗き込んでからアレクシアは「フルーツケーキにしてもいいし、パイにしてもいいし、ジュースやサンドイッチも美味しい!」と頷いた。
「そう聞くと実感するのだわ。苺の季節だわね、やっぱり毎年とっても楽しみなのだわ!
 レオンさんにもお土産に買って帰れないかしら……? こういう季節のものをしっかり楽しむの、毎日にメリハリを付ける為に大切って思うのだわよ」
 お土産としても持ち帰りも籠を買えばOKだと聞いて『嫉妬の後遺症』華蓮・ナーサリー・瑞稀(p3p004864)のやる気も漲った。
 ワクワクとガイドブックを眺める水夜子の背中に『獏馬の夜妖憑き』恋屍・愛無(p3p007296)は一度咳払いをしてから「みゃーこ君」と呼びかける。
「みゃーこ君のお誕生日。今日はめでたい日。この日を再現性都市の祝日としよう。そうしよう。
 ……という冗談はおいといてみゃーこ君。お誕生日おめでとう。今日はわざわざ付き合ってくれてありがとう。
 就職祝いも兼ねて楽しんでくれると嬉しいな。今日は何でも好きにしてくれ。僕がみゃーこ君の分は奢るから」
「あら。そんなことを言っても良いんですか? 破産しませんか?」
 悪戯っ子のように笑う水夜子に「お手柔らかに」と愛無は頷いた。そんな様子を見ていれば『天穿つ』ラダ・ジグリ(p3p000271)は水夜子は実年齢より1つか2つ下に認識していたことを思い出す。流石に主賓に「もう少し幼いと思っていた」とは言わないが、屹度彼女は見抜いていることだろう。
「ラダさん?」
「ああ、いや。ともあれ年末からこっち散々だったろうし、今日は何も気にせずに過ごして欲しい」
 ジャバーウォック襲来の折には彼女の救出を頼んだことも思い出す。斯うして無事に過してくれていることがラダにとっては先ずは一安心なのだ。
「水夜子さん、初めまして。エルです。よろしくお願いします。ぺこり。一緒にいちご、もぐもぐ、しましょう」
 丁寧に頭を下げた『ふゆのこころ』エル・エ・ルーエ(p3p008216)はサンドウィッチ用のパンとホイップ用の生クリームの準備は任せて欲しいと告げた。
「エルさんは龍くん……龍成のご友人でしたよね。従兄がお世話になってます。水夜子です。気軽に『みゃーこ』とか『みゃーちゃん』とか呼んで下さいね?」
 にんまりと笑った水夜子にアレクシアは「あっ!」と口を覆った。何となく距離感で近しい友人のようにも感じていたアレクシアではあるが……。
「……あれ、そういえば水夜子君って初対面だったかも? ふふ、改めてどうぞよろしくね!」
「ええ、こちらこそ。気軽にみゃーことか、みゃーちゃんって呼んで欲しいです。そっちの方が私のことを好きになるでしょう?」
 何時もの如く、そう告げる水夜子に慣れない様子で「みゃーこ」と呼びかけたのは『刺し穿つ霊剣』浅蔵 竜真(p3p008541)。どうにも距離感を『グイグイ』詰めてくる系の『澄原』は自身の渾名呼びを竜真にも強要したのであった。
 そんな一行は先ずは農園を騒がせる夜妖退治の準備からである。早速段取りの確認をしようと蛍は『比翼連理・攻』桜咲 珠緒(p3p004426)を一瞥する。
「それはともかく、今回は一応夜妖の害に対処するのがお仕事。
 で、澄原水夜子さん……みゃーこさん? のお誕生日祝いも兼ねて苺狩りするってことでいいのかしら。お誕生日おめでとう!」
 有り難うございますと微笑んだ水夜子は『みゃーこ』と呼ばれたことに満足げだ。珠緒はそんな様子を眺めながら農園へと視線を移す。
「お誕生日祝いにいちご狩り、なかなかよさそうですね蛍さん、珠緒達もお祝いの際にやってみましょうか!」
「そうね。珠緒さんが望むなら」
 ころころと笑った珠緒が喜んでくれるならば、何だって喜ばしいのである。


 小さな雷獣はどちらかと言えば子犬を思わせる存在であるらしい。
 蛍と珠緒は雷獣が荒らしたであろう農園の様子を見てから「これは……」「マナー違反ですね」「そうね、しっかり叱っておかないと」と二人で頷き在った。
「苺が酷い目に遭っているのだわ……けれど、今回の子は危険度はそれほど大きくないみたい……。
 普段は力及ばず倒すしか手段が無いから……こういう時は出来るだけ、戦わずに終わらせたいのだわ」
 駄目かしら、と振り仰いだ華蓮に水夜子は「良いと思いますよ」と頷いた。大きさも小さく、中型犬の子犬の様な夜妖だ。鋭い牙と爪先だけしっかりと管理してやれば、人への危害も其れなりに防げそうだろうか。
「わわっ、雷獣さん、です。エルは、悪い子の、お鼻でこぴん、めっ!、です」
 むうと唇を尖らせたエルは苺農園に踏み入れて直ぐに見つかったことからお腹を空かせた雷獣に注意をしっかりすると頬を膨らました。
 竜真はとりあえずは緩めに叱って置こうかとそろそろと雷獣に距離を詰めた。
 牙を剥きだして喉をぐうと慣らした雷獣は警戒しているのだろう。視線を合わせてから華蓮は柔らかに微笑む。
「大丈夫……良い子にしてくれれば、私達はお友達になれるかもしれないのだわ」
 差し伸べた手に、雷獣は驚いたように一歩足を引いた。
「叱るだけで問題はなさそうだ。ただこのまま放っては他所でまた悪さしそうだし。
 規格外の苺とか菓子の試作品とかやるから、今日一日付き合わないか? 言葉通じるかね」
「ぐぬ」
 苺を獲ったらそれを雷獣に食べさせてやろうと考えていた竜真は鳴いた事に驚いたのか水夜子を振り返った。
「……ところでみゃーこ。ここに出る雷獣は連れて帰ってもいいか?」
「飼うんですか? 名前教えて下さいね」
 毛並みも良いし、電気を伴っている以外は案外可愛い気がしますと笑った水夜子に竜真は飼うことも赦されるのかとまじまじと見遣った。
「まぁ、人と人ならざるモノは適切な距離を取るべきなのだろうが。規格外の苺を少しくらい分けるならば大目に見て貰えるだろう。
 どうせ、もう味は覚えてるだろうし。駄目な苺だけ喰っても良いと言い含めて置けば、今後は畑を荒らさなくなるかもしれんし。
 連れ帰って世話をするのであれば、問題も大きくは出なさそうだ。此処に居ては何れは華蓮君の言うように討伐しなくてはならないかもしれない」
「そうだね。ちょっとだけ痛い目をみてもらうにとどめて、反省したようならその後一緒にいちごを楽しみましょう!
 仲良くできる相手なら、どんな相手だって邪険にするのはよくないものね!
 これからも、暴れたりしなければここの人たちにも受け入れてもらえると思うよ。それは勿論、私達にも。だから、いい子にしててね? いい?」
 今日はお試しなのだと言いたげな愛無とアレクシアの言葉に雷獣は「ぐぬ」ともう一度鳴いた。苺を貰えると何となく理解したのだろうか、ちょこんと座って短い尾を振り回している。


 蛍にとっては栃木も含めて『故郷』によく似た様子である。
「今は遠き故国の雰囲気に浸りながらのんびりと過ごせるだなんて、贅沢な一日になりそうねー。
 ボク達自身のお祝いの日も、こういう過ごし方ができたらいいなって思えちゃうわ。自然体で楽しめて、心が満たされるような……そして口も美味しさで溢れるような! ね。それじゃKIAI入れていきましょ、珠緒さん!」
「はい。本題のいちご狩りマナーも蛍さんの故郷と似ているのでしょうし、次のお祝いは再現性東京でしましょう」
 珠緒と蛍は微笑み合う。背後でお利口に座っている雷獣を見遣りながらも、蛍はまずは一つ摘み取った。其の儘口へと運んでみれば――「んー」と頬が思わず緩む。
「取れたていちごをそのまま思う存分いただくのって、それだけでもう完全勝利! 天国みたいなものよね!! あー幸せだわ……」
「はい。蛍さんは、いちごを使ったものだとどんなものがお好みですか?
 今日は水夜子さんのお誕生日ということで、お好みと伺ったものを作るつもりですが。……蛍さんのお気に入りも、いずれは珠緒お手製でご馳走いたしますね」
 水夜子が色々とガイドブックで見ていたことを思い出しながら珠緒は蛍の口へと苺を運ぶ。あーんと口を開いてから幸福そうに微笑みを浮かべた蛍は「いちごを使ったもので好きなのは、そうねぇ」と唇に指先当てて悩む。
「大抵のものは好きだけど、特に好きなのは苺ジャムかしら。苺の美味しさをギュッと濃縮して瓶詰めしました感が最高よね!」
 早速と摘み立てを一つ味見すれば美味しいとラダは此の儘持って帰るのも良いと苺を摘み取って行く。
 華蓮はどんな苺が美味しいのかと事前に確りとチェック済みであった。
「調べによると…しっかりムラ無く赤くなっている、つぶつぶの周りの果肉が盛り上がっている、ヘタが反り返っている…この辺りが、完熟した苺の見分け方みたいだわね」
「これですか?」
「ええ、それなのだわ」
 お土産にはこっち、と華蓮が知識を活かして指差せば水夜子は「本当に美味しいですね」と嬉しそうに微笑む。
 華蓮チェックで規格外の苺は雷獣の為に竜真の籠へとひとつ、ふたつと避けることとなった。
「わわわっ。いちご畑は、いちごの香り、ほんわりふんわり、です。エルは、これだけで、お腹が空いちゃいました」
 きゅうとお腹を鳴らしたエルにアレクシアは「本当だね」と微笑む。苺を摘むだけで心が躍るのだ。
「いちごも、それぞれ種類があるって、エルはお聞きしましたので、種類別に、一つずつ、もぐもぐ、です。
 わわわわ、わわわっ。あまあま、みずみずしくて、美味しいのですが、少しずつ、味が違って、とっても面白いって、エルは思いました」
「それはこういう種類で……」
 華蓮の説明を受けながらそれぞれの苺を別々の籠に摘み取って行く一行を眺めながら、ラダはふと思い出した。
「水夜子はジャムにするんだっけ。サンドイッチも持ってきてるし、あれもしかして水夜子料理できる人か。私はその辺さっぱりなんだよなぁ。他の皆みたいには中々――」
『一応』は流石は練達の叡智、素人でも菓子作りを出来てしまう『ホットケーキミックス』なる代物を用意済みであるラダに水夜子は「手伝いますよ」と胸を張ったのだった。


「さて。事が済んだら僕もみゃーこ君とジャムを作るか。
 少し聞きたい事もあるし。いや。大したことではないのだが。そうだ。矢張りお土産は晴陽君に渡すのかな? きっと気に入ってくれると思うよ」
「ええ。姉さんと龍君にも。私と作った物を廻さんたちにお裾分けして頂いても大丈夫ですよ」
「そうか。……いや。聞きたい事は、そうではないのだが。聞き難いと言えば聞き難い事でね」
 愛無は手際よくジャムを作る水夜子をまじまじと見詰めていた。聞き辛いのならば後でもと笑った彼女の手許だけをじい、と見詰めてタイミングを見計らう。
 苺のへたを取って、サンドウィッチを作るエルは「泡立てたホイップを、パンにぬりぬりして、いちごを乗せます」と順序を説明し――涎を垂らす雷獣に気付く。
「更に、イチゴの上から、ホイップぬりぬり、パンで挟めば、出来上がり、です」
「……こいつ、食いしん坊なんだな」
 竜真は中々どうしたものだと雷獣を眺め見遣って肩を竦めた。苺のコンポートを作り、水夜子にも良いだろうと瓶に詰めた彼は雷獣を引き連れて売店で軽い昼食を買ってきたのだが、雷獣の余りの『空腹』のアピールに困惑していたのだそうだ。
「さて、調理しましょう」
「珠緒さんは何を作るの?」
 手許を覗き込む蛍に珠緒は『特別感』が欲しいですよね、と少し凝ったものを調理し始める。
 いちごは大きめの物を半数ほど半分刳り抜いた。粗めに砕いたタルト生地を詰めて『まるごといちごタルト』を作成する。
 刳り抜いた果肉はミルクジェラートに潰しながら練り込み、ジェラートの形を整えてからいちごとタルトをのせてベリーソースをかける。
「わあ、凄い」
「複数食感を楽しめるデザートの完成です水夜子さんには申し訳ないですが二番目にできの良いものを。……一番はやはり、珠緒の一番の方へ贈りたいものですから」
 勿論そうして下さいと笑った水夜子に珠緒はこくりと頷いた。一番は矢張り蛍のために用意しておきたいのだ。
 水夜子の誕生日のために、と練達は『お手軽調理用具』がある事に慣れないながらもアレクシアも操作にチャレンジ。
 オーブンで焼くのは簡単なパイだ。パイシートを土台にお手製カスタードを作成していちごを乗せていく。
 手際の良いアレクシアをまじまじと見詰めたラダは「大丈夫、作り方もインターネットでちゃんと調べたから。ここのページ見れば大丈夫だから。たぶん……ここで合ってるよな?」と困惑しながらも調理を始めていた。
「手伝おうか?」
「手伝うのだわ。料理はまあまあ出来るのだわ!」
 任せて頂戴と微笑んだ華蓮とアレクシアにラダは頷く。調理用具の揃った場所を借りることが出来た事で苺のタルト――ラダに言わせれば「難易度が違うもの」だそうだ――を作る華蓮は鼻歌を混じらせて採れたて苺をたっぷりと使用しての調理中だ。
「The Queen of Hearts She made some tarts――♪」
 手際の良い華蓮の傍では「スコーン、上手く焼けるといいな」と一段落したラダが息を吐いている。
「水夜子のジャムと併せてもいいし、苺アイスとも合うだろうか?
 焼きたてを皆のものと一緒に食べよう。私も練達の菓子は馴染みが無いから楽しみにしてたんだ。アイスはラサでも普通に売れるようになるといいんだけどな、ほんと……」
「ラサは暑いしね」
 苺も深緑では多く採れるがラサでは中々難しいとアレクシアが嘆息すればラダはその通りだと頷いた。
「みゃーこ、コンポートを作ってみたんだ。口に合えばいいんだが、貰ってくれるか?」
「ふふ、有り難うございます。大切に頂きますね」
 早速瓶を差し出した竜真に水夜子は「ラダさんが焼いたスコーンと合わせても良いですね」とくるりと振り返る。
 楽しげな彼女は珠緒手製のデザートも早く食べたいのだとそそくさと着席していた。その隣にはサンドイッチを雷獣から護るエルと所在なさげな愛無の姿もある。
「たくさん焼いたし、今日来られなかった晴陽達への土産に。そして一番よくできたのは水夜子に。誕生日おめでとう」
「味はそんなに悪くないと思うよ! お誕生日おめでとう! いい一年になるといいね!」
 アレクシアがタルトを運び、ラダがスコーンを雷獣に一つ差し出せば、雷獣は「ぐぬ!」と嬉しそうに鳴き声を響かせた。
 頂きますと全員で席に着いてから蛍は「美味しい」と頬を緩める。
「あそうそう。この世界に来てボクますます苺が好きになったんだけど。それはね……一番好きな珠緒さんの瞳の色とそっくりだから、よ」
 ぱちりと瞬いたのは珠緒だ。「……そっくり、ですか?」と問えば、蛍は大きく頷いた。苺の色をした甘酸っぱい彼女の瞳が、蛍は大好きだ。
「では、美味しく味わってくださいね」
「勿論!」
 にこりと微笑み合った二人を眺めてから「あまあまじゅわ」と頬を緩めたのはエル。美味しいと微笑んだアレクシアに「採れたては最高なのだわ」と華蓮も頷く。
「……みゃーこ君」
「はい、聞いて下さい。どんとこい!」
 どうなさいましたかと微笑んだ水夜子に愛無はおずおずと問いかけた。
「みゃーこ君は、僕が恐ろしいとは思わないのかね?
 僕は、何方かといえば『モンスター』だろう。他の座標と比べても素行が良いわけでも無いゆえに。少々不安でね。君に嫌われるのは堪える」
 ぱちり、と瞬く水夜子に愛無は小さく首を振った。
「すまない。つまらぬ事を聞いた。そうだ。クレープを奢ろう。苺のアイスが乗っているやつ。
 ずっと約束が反故になっていたからね。他にトッピングは何かいるかな? 普段はできない様なのでも、何でも頼んでほしい。めでたい日だからね」
「私の目の前に居るのはモンスターではなくて可愛らしい心配性な友人だけですけれど、クレープは頂戴しましょう」
 トッピングは愛無さんが選んで下さいと付け足した水夜子は「今日は有り難うございます」と嬉しそうに微笑んだ。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 お疲れ様でした。
 水夜子ちゃんの誕生日を祝って頂き有り難うございます。本人もちょっぴり分かり辛いガールですがとても喜んでおりました。

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