PandoraPartyProject

シナリオ詳細

血の華を求めし翼

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●血の華を求めし翼
 鉄帝国北部、ノルダイン地方。
 季節が変わりつつある時、厳しい冬をどうにか乗り越えた北国の人々は、来たるべき春に心を躍らせながら、準備を始める。
 だが、そんな春の変わり目になれば……気分は上々のアゲアゲになる者達も又出て来てしまう様で……。
『はははっ!! いやぁー、いい風が吹いてるぜぇー!!』
『そうだなぁ!! いい風だぜぇ!! こーんな風を感じてると、もっともっと飛んでみたくなるよなぁ!!』
『おもしれーじゃねぇか!! よっしゃぁ、それじゃー……んー、どうだ、あの村でもかるーく襲ってみっか!?』
『ははは、ひでーやっちゃぁ! まぁ、人を殺すとよぉ、いい悲鳴で鳴くんだよなぁ……あの声を聞くと、血湧き肉躍るっていうかよぉ……って訳で、それじゃー行くとするかねぇ!!』
『おっけー!! んじゃーいくぜー!!』
 蒼天の空を飛び回るのは、翼を生やした有翼の『ジェリーゴ』族。
 彼等は雪の降る冬の間は慎ましく生活していた様だが……雪解けと共に翼をはためかせ、そして……今迄抑圧されていた鬱憤を晴らすが如く、ハイエスタ地方を闊歩する。
 そんな彼等の鬱憤の矛先は……この地で極々平穏に過ごしていた、戦う力を持たない人々。
『……ん? ……え!?』
 突如、空から降り注いで来たのは炎球。
 突然の事に思考は混乱、逃げ惑う街の人々……そこに、降り立つ、双翼の人。
『ひ、ひぃ……な、なあ、助けてくれぇ……!』
 救いを求めて足元にすがりつく村人……だが、それに突き立てられたのは、長剣。
『……ひ、ひひひひ……!! ほらよぉ、逃げろ、惑え! オレに殺されたく無いならなぁ!!』
 惨忍な笑みを浮かべつつ、血濡れの剣を振る彼ら。
 血飛沫が炎球に燃え盛る街にキラリ輝き……残酷な『ジェリーゴ』一族は、人々の斬殺を容赦無く始めるのであった。


「あ、イレギュラーズの皆さん、ちょっと至急を貸して欲しいのです!!」
 ギルド・ローレットに偶然居合わせたキミ達を見つけると、『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)。はぶんぶんと手を振り、集める。
 そして……彼女に連れて行かれると、そこには一通の手紙が置かれている。
 宛先はここ、ギルド・ローレット……でも、宛名は無い。
 でも、その手紙に書かれていたのは、悲痛な現状を、切実に訴えかけていた。
「突然手紙が来たので何だろうと思ったのですが……どうもまた、ノーザンキングスに繋がる一派が酷い事を繰り返してしまっている様なのですよ!」
 と言いながら手紙を開く、それはノルダインのハイエスタ地方のとある村の村長からの手紙。
 その手紙に記されていたのは、周囲の村が次々と、『ジェリーゴ』という一族に襲われており、焼き討ちに遭って仕舞っている……という事。
 明日は我が身、ではないものの……いつ自分達の村が同様の現象に陥るのはまぁ間違い無いだろう。
 だからこそ、イレギュラーズ達の居るギルド・ローレットに一抹の救いを求めて手紙を出した、のかもしれない。
「戦う力を持たない村人さん達からすると、縋るのがイレギュラーズの皆さんしか居ない様なのです。こんなにも困っている彼等を救うためにも、どうにか皆さんの力を貸して下さい、なのですよ!!」
 と、元気よく拳を振り上げるユリーカなのであった。

GMコメント

 皆様、こんにちわ。緋月 燕(あけつき・つばめ)と申します。
 鉄帝北部ノルダイン、今回のノーザンキングスの輩達は若い一族の様で……どうも頭も若過ぎた様です。

 ●成功条件
  ノーザンキングスの『ジェリーゴ』一族の討伐です。

 ●情報精度
  このシナリオの情報精度はBです。
  依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

 ●周りの状況
  今回『ジェリーゴ』一族は結構な高所を飛んでいる有翼人の一族になります。
  戦闘時においてはその翼をはためかせて空を飛んだり、体勢をスパッと変えたりと、素早さと敏捷性を兼ね備えた一族となっています。
  そんな彼等は、戦闘開始前に遥か上空から火球を先んじて降り注がせ、街の周りを炎に包んで逃げ道を塞いだ上で降下し、逃げ惑う人々を殺戮の宴に乗せる……という行動を行います。
  つまり、皆様が今回戦う際も村人達が逃げ道を失った状態で戦う羽目になりますので、村人達の安全を確保した上でジェリーゴ一族を倒す……という事が必要になります。

 ●討伐目標
  ヒャッハーな気分の『ジェリーゴ』一族
    ノーザンキングスに属しているのですが、その性格は我が儘な事この上ない状態です。
    人々が血飛沫を上げながら死んで行くのを実施したり、見たりするのがこの上なく快楽に感じているという……困った奴らになります。
    彼等の武器は、100cm程度のセミロングソードで、飛び回りながらその剣を縦横無尽に薙いできます。
    また、魔法も使用可能で火球をその手元から放つ事が可能で……つまりは魔法剣士的な感じの敵陣となります。
    ただ……そんなに頭は良くないので、売り言葉に買い言葉での挑発やら、彼等を馬鹿にする様な言葉を投げかけたりすると、結構有用に効くようです。
    とは言え人数はままいる大所帯なので、油断すれば数の暴力に押されていつのまにか敗北……という可能性もありますので、ご注意下さい。
 
 それでは、イレギュラーズの皆様、宜しくお願い致します。

  • 血の華を求めし翼完了
  • GM名緋月燕
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2022年03月20日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

咲花・百合子(p3p001385)
白百合清楚殺戮拳
イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)
黒撃
オリーブ・ローレル(p3p004352)
鋼鉄の冒険者
エッダ・フロールリジ(p3p006270)
フロイライン・ファウスト
マリア・レイシス(p3p006685)
雷光殲姫
エーレン・キリエ(p3p009844)
特異運命座標
百合草 瑠々(p3p010340)
偲雪の守人
ジゼル・ベグラーベン(p3p010507)
特異運命座標

リプレイ

●北の翼
 鉄帝国北部に広がるノルダイン地方。
 厳しい冬から、穏やかな春へと変わりつつある季節……厳しい冬を乗り越えた北国の人々は、待望の春の春風に心を躍らせている。
 ……だが、そんな春に絆されたのだろうか、元々頭のネジが緩いのかは分からないけれど、気分上々、アゲアゲな調子でノルダインの地に点在する村や町を気のみ気のまま暴れ回る奴らが出て来てしまう。
「全く……どこの国にもこの手の連中というのは居るものなんだな……」
「ああ……外道共めが! 戦う力を持たぬ者を殺す必要がどこにあるんだ!! 恥を知れ! 所詮弱い者しか狙えない弱者どもが!!」
 『特異運命座標』エーレン・キリエ(p3p009844)は顔をしかめつつ、深い溜息を吐く一方で、『雷光殲姫』マリア・レイシス(p3p006685)は拳をぐっと握りしめて、強く強く憤る。
 二人共に、様々な国を転々としている。だから……こういう風にヒャッハーな事を楽しんで居る様な輩達は、国にかかわらず何処にでも出没するものというのは十二分に理解は為ている所。
 そしてイレギュラーズとして、そのような輩達の討伐依頼は今迄も幾度となく受けて居るので、またか……という心境はどうしても抱かざるを得なかった。
 そんなヒャッハーな彼等の行動パターンを耳にした『白百合清楚殺戮拳』咲花・百合子(p3p001385)は。
「ふむ……吾も火遊びはよくやった! 懐かしいものであるな! だが、まぁ、小さな村で満足するとは如何にも小物よな」
 闊達に笑う百合子に、『血反吐塗れのプライド』百合草 瑠々(p3p010340)も。
「本当本当。やりたい放題してくれんじゃねぇのさ……ま、それで鬱憤を晴らしてるのかもしれないがよ」
「そうであるな! 鬱憤の発散の仕方も小物中の小物であるぞ! この様な輩をのさばらせておく訳には行かぬ!」
 と、百合子と瑠々の言葉に、『フロイライン・ファウスト』エッダ・フロールリジ(p3p006270)と『鋼鉄の冒険者』オリーブ・ローレル(p3p004352)、『業壊掌』イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)の三人からも。
「まぁ、こういうのは使い古された悪役みたいなものでありますね。もう少し面白味があって欲しいものでありますけど。まぁ……そんなものでありましょうか」
「憤るのも分かります。前にも似たような奴らを相手しましたしね。そいつらはどうなったのでしたっけ……何であれ、始末する事は変わりませんけど」
「そうだネ! やり方がキタナイ連中だからさ、こっちもエンリョは要らないよね! 弱い者イジメをしてるヤツは、いずれは強者に狩られるって鉄帝のお約束をおしえてやらないとね!」
「ええ。一人として生きては帰しません。ここで終わらせましょう」
 三人が一際強い口調で声を上げると、『特異運命座標』ジゼル・ベグラーベン(p3p010507)も。
「ま……こいつらが血飛沫が好きなのは分かるわ。でも……やり口が汚いわね、気に入らない。愛も、恋も、どちらもあの人達の殺しにあるようには見えないもの。邪魔させて貰うわね? 私と、私の恋人……それから、愛し合っている人達がきっと居るだろう、この辺りの村のためにも、ね」
 と拳を握りしめて頷く。
 それにくすりと笑いながら瑠々と、百合子も。
「そうだな、それも今日で終わりになる訳だ、どう足掻いても、な。手練れのイレギュラーズが八人揃えば、賊の一つや二つ名にの問題も無い。まぁ、最近知った事だけどな? まぁ、先ずはウチのやる事を果たすだけだ!」
「そうである。闘争というヤツを、一つ教授してくれよう!」
 二人共に強い口調で気合いを叫び、そしてイレギュラーズ達は……気分アゲアゲなノーザンキングスの一族『ジェリーゴ』を討伐する為に、手紙を出してくれた街へと急ぐのであった。

●炎包の街
 そしてイレギュラーズ達が辿り着くは、ハイエスタ地方のとある街。
 何ら特色のない、ちょっと貧しい生活を送っている様な……ハイエスタ地方には良くある様な村。
 そして、そんな村に到着するとすぐに、イレギュラーズ達は手紙を手に。
「そこのキミ……この手紙の送り主は何処に居るかな? 恐らく村長だと思うんだけど、さ」
『え、あ……は、はい? ……あ、えーっと……うちの村の村長……ですね。こ、こちらです……』
 マリアに突然呼び止められ、ちょっと驚き気味な村人達。
 だが手紙を送ったと聞いていたのか……スムーズに村長の下へと村人達はつれて行き、村長は。
『本当、ありがとうございます……手紙を出させて頂いたのは私です。最近、この辺りの村や町が次々と襲われており、この村もいつ襲われる事か、と……夜をも眠れない日々が続いておるのです……』
「そうなのでありますね。不安な日々を続けている村人の方々……もう安心して下さいませ。自分達イレギュラーズ達が来たからには、かの者達をかならずや討ち取るであります」
『ええ……本当に、ありがとうございます。お金とかも殆ど出せないのですが、それでも大丈夫なのでしょうか……?』
「うん、大丈夫だヨ! だってオレ達イレギュラーズは、困っている人を助けるのが仕事だからサ! 大船にのった気持ちでイイヨ!」
 エッダとイグナートの言葉に、本当に申し訳無さそうに頭を下げる村長。
 そう仲間達が村長と会話している間には、百合子とエーレンは空にじっと目を凝らして警戒し続ける。
 ……そして、仲間達の会話が一段落付きそうなくらいの頃合いに。
「……ん?」
 じっと目を凝らしていたエーレンが、空の陽射しを遮る小さな影を発見。
 左から右へ飛んでおり、ぱっと見えた影では……渡り鳥なのでは、とも思えてしまう。
 だが、その影は一つや二つではなく、かなりの数。
 更にみるみる内に高度を下げてきており……鳥と思しき姿には手や脚が生えているのが見て取れる。
 そして……ある程度の距離まで降りてきた彼等は、村を包囲するように横に広がると。
『ヒヒヒ……それじゃあ今日はあの村を襲うとするかねぇ!』
『いいねぇ!! それじゃあ始めようかねぇ!!』
 下品な笑い声を上げながら、空高くよりその手に火球を作り出し……それを一斉に放火する。
 村に落ちる火球は次々と村の建物に着火し、村は炎に包まれてしまう。
『う、うわああ!! なんだ何だー!!』
『上から、上から降ってきたぞ!! みんな、こっちだこっち!!』
 と村人達は突然の襲撃に悲鳴を上げ、混乱の境地へと陥る。
 そんな村人達の声に気付いたイレギュラーズは、すぐに家の外へと飛び出すと共に。
「皆! 恐ろしいのは分かる! だが、焦らず落ちついて避難してくれ! 必ず私達が守る!!」
 少し上方に飛行し、大声で呼びかけるマリアが避難する方向を指示。
 とはいえ……突然の襲撃に混乱している村人達は、その指示を聞いても足が竦んで逃げられないのも多数。
 そんな村人達の下には瑠々やエッダ、ジゼルらが急行し。
「待たせたでありますな。不安で頭が一杯だと思うのでありますが、もう大丈夫でありますよ。さぁ、こちらへ……自分の家が、でありますか? ……命あっての物種であります。本当に申し訳ないのでありますが……命だけはせめて、自分らに守らせて欲しいのであります!」
「確かに多くの火がついているが……もう延焼はしない。後はイレギュラーズの指示に従って動け。そうすりゃ生き残れる事は約束してやるよ!」
「脚を挫いちゃった? なら、私が背負って上げる。凄く不安かもしれないけれど……私達を信じて欲しい」
 と、村人達を励ましながら、避難誘導を開始。
 そして……そんな村人達の避難先は、村の中で丈夫そうな延焼しなさそうな建物をピックアップし、イグナートとオリーブ、マリアらがその方向を仲間達と共有して指示を飛ばす。
 そうイレギュラーズ達が村人達を順次避難させているのは、上空から攻撃した『ジェリーゴ』一族の目にも留まるわけで。
『何だぁ……あいつら。村人達を避難させてるだぁ?』
『みてぇだな……チッ、巫山戯た真似しやがって! 妨害してやる! おい皆、ついてこい!!』
 苛立ちを露わにしながら、高度を落として行く彼ら。
 その降下先には百合子とエーレンが急行し、彼等に声が届く範囲まで降りてきた所で。
「鳴神抜刀流、霧江詠蓮。今日の夕飯の材料はお前たちらしいな?」
「ああ! 高い所から火の玉を放つ事しかできないのか? その翼で空を飛んで、出来る事はそれだけとは、中々頭の回転は遅い様でありな!!」
 ニヤリと不敵な笑みを浮かべたエーレンと、自信満々に罵倒する百合子。
 そんな二人の言葉を聞いたジェリーゴ一族は。
『な、なぁんだとぉ……!! オレ達を罵倒しやがって……許せねえ、絶対に許せねえ!!』
『てめえらの命、全て奪い取ってやらぁ!! おい、殺るぞ!!』
『『『オオウ!!』』』
 翼をはためかせた『ジェリーゴ一族』は急降下し、その加速を活かしてセミロングソードを振り薙ぐ一閃を次々と叩き込んでくる。
 流石に全てを躱す事は出来ず数撃喰らうが、毅然と立ちはだかり続ける二人。
『っ……中々しぶてえ様だな。だがよ、2人だけでオレ達に立ち向かおうってなぁ……自信過剰過ぎじゃねぇかい?』
『まぁだからといってよ、こちとらも容赦はしねぇけどなぁ!! ほら、更に行くぜぇ!!』
 残虐な笑みを浮かべながら、更にセミロングソードを次々と振るうジェリーゴ一族。
 本来であれば、彼等が持つ魔法の能力を活かして戦うのが定石だが……自分達が圧倒的に数の優位を保てているからと自惚れていたのだろう。
 勿論百合子とエーレン二人で対峙するにはかなり荷が重い戦況なのは間違い無いが……その自惚れを誘い込む様に。
「ふむ……中々手強い。このままでは、押しきられてしまうかもしれないな?」
 と、苦戦している風に装いながらも、致命傷を受けないように急所を外すように回避する。
 ……そうしている間にも、村人達の避難誘導は順次進み、大多数を避難させ終わる。
「……良し。もう逃げ遅れている村人達もいなさそうだ。ウチ達も加勢に向かおうじゃねえの!」
「ええ……叩き潰しに行きましょう。跡形もなく」
 瑠々に頷くイグナート。
 そして避難誘導していたイレギュラーズ達も、二人の居る所へ少し遅れて駆けつける。
『何っ……こいつら以外にも刃向かうヤツが居る、だと?』
『慌てんじゃねぇ! 頭数が増えたとしても、オレ達に勝る訳がねぇんだ!!』
 と声を荒げる彼等に対し、辛辣な表情と言葉でエッダとイグナートが。
「まったく、ボーボーボーボー燃やしやがって。あとは自分から丸焼きにでもなってくれると助かるのでありますがね。ああ、臭くて犬をも食わんでありましょうが」
「ああ。雑魚が無抵抗のアイテにイキがってるって聞いて出向いてきてやったんだよ! ちょっとでも根性があるならゼシュテル式に性根をたたき直してやる、掛かって来い!」
 と言い捨てる。
『なぁんだと!! 巫山戯てんじゃねぇぞ!! オレ達『ジェリーゴ』一族を舐めんじゃねえ!!』
『てめぇらのような奴ら、この剣と……魔法でブッ殺してやらぁ!!』
 キレ散らかしながら、魔法が使えるのを思い出したのか……数名が後方に下がり、魔法を詠唱。
 前衛に立つ者達がイレギュラーズ達に接近して攻撃する一方、その手に生み出した火球を後方から絨毯爆撃するかの如く放つ。
 しかしながら、そんな彼等にオリーブは威風堂々と。
「近寄るのが怖いんですか、羽虫共! 羽虫よりも怯懦なら仕方もありませんけどね? おっと、”怯懦”なんて難しい言葉を使ってしまいましたよ。奴等に頭の程度を合わせるのは難しいですね!」
「ふふっ……理解出来ない、そういう所もかわいい所かもしれないわね?」
 彼等を更に罵倒するオリーブに、思わずくすりと笑うジゼル。
 だが、その笑いが嘲笑と捕らえられた様で。
『くっそおおお!! ふざけんな!! 殺す、絶対殺す!!』
 完全に頭に血が上りきったジェリーゴ一族は、冷静な判断力を完全に失い、それぞれが相手を殺すべく行動を取る。
 バラバラに殺すべく行動する彼等……そんな彼等全員を範囲に収めてマリアが。
「雷撃の裁きを受けるがいい!  天槌裁華!!」
 大落雷が彼等の居場所に満遍なく降り注ぎ、もれなく敵は痺れに動きが縛られていく。
『な……動けんッ……!』
『こ、こいつらも魔法が使える、だと!?』
 目を見開く彼等は、イレギュラーズ達が魔法を使えるだなんて思って居なかったのだろう。
 それも当然……今迄は、戦う力を持たない、極々普通の村や街を襲い続けていたのだから。
「本当、弱い者しか相手に出来てなかったんだろう? どうだ? 違うって言うんならウチを殺してみろよ! その獲物でウチの首を切れよ!」
 と瑠々は自分を殺せ、と声高く叫びながら、ジェリーゴ達に接近。
『く、くそったれがぁ!!』
 一瞬の恐怖を覚えつつも、どうにかイレギュラーズ達を殺そうと、再び剣を振り回すジェリーゴ。
 だが、その攻撃は大振りやら、狙いも上手く定まっていない様なものばかりで。
「本当……脳足りんでは所詮こんなところだな。ならば疾く往ね。この世からな」
 とエッダが吐き捨てながら、雷神の槌の如き攻撃を叩き込むと……一匹が崩れ墜ちる。
『っ……!!』
 明らかに恐怖が過るジェリーゴ一族。
「さぁ……今から貴様らがやってきた事を一つ一つ返していこうか。悲鳴を上げて逃げ惑う事を赦す。吾を楽しませたら一番最後にしてやろう!」
 強力な力を纏い、その気配を最大限に発揮する百合子。
『ひ……ひぃぃ……!!』
 そのオーラを感じ、言葉にならない悲鳴を上げるジェリーゴ一族達だが……降りてきた背後には、いつのまにか自分達の放った火が回り込んでいて。
「自分の思い通りの未来しか見えないから狩られる側に転落するんだよ、馬鹿……覚悟しろ」
 エーレンの言葉と共に、イレギュラーズ達の狼煙が上がりジェリーゴ一族は……大した抵抗も出来ずに崩壊していくのであった。

●春の旅人
 そして……頭に花が咲いた『ジェリーゴ』一族を倒したイレギュラーズ。
 彼等が放った火球により、村の至る所は燃え尽きており……無惨な状況に成り果ててしまっていた。
 勿論、イレギュラーズ達が来なければ、これよりも更に酷い目に遭っていただろうし……村人達の被害も更に更に酷い事になっていたであろう。
「さて、と……それじゃ、村人達の方の対処は頼んでもいいカナ?」
 とイグナートが低く笑うと、それにエッダが。
「ええ……分かりましたであります。奴らにしっかりと引導を渡しておいて下さいませ」
「ん、了解。それじゃ、宜しくネ!」
 ひらひらと手を振り、倒れた『ジェリーゴ』一族の下にはイグナート……と、オリーブが向かう。
 その一方で、避難した村人達の下にはマリアらが赴き、傷を負った人達の様子を見ながら。
「大丈夫? 怖かったよね? でも、あいつらはもうやっつけたから、もう安心して。村の復旧についても、私達が手伝うから、さ」
 と怪我の応急手当をしつつ、落ち込んでいる村人さん達を励ましたり、壊れた村の瓦礫を撤去したり、修復したりする。
 勿論マリアだけでなく、他の仲間達も手分けして修復を行っていく。
 そして……暫し経つと、倒れた『ジェリーゴ』一族のところに行っていたイグナートとオリーブが、武器やら非常食やらを両手一杯に運んでくる。
『……これは、何ですか……こんなに一杯……?』
 と、村人の誰かが言うと、イグナートとオリーブは。
「気にしない気にしない。これで少しは村の復興の足しになると思ってネ! エンリョしなくていいからネ!」
「ええ……全く気負う必要はありません。目には目を、歯には歯を。資材には資材を……という事です」
 勿論それは、『ジェリーゴ』達の持って居た物。
 色んな村や町から奪い取ってきたそれら資材があれば、少しは資金の足しになるであろう。
『……わかりました』
 と申し訳無さそうに頷く村人達。
 ともあれ……そんなイレギュラーズ達の協力の甲斐もあり、かなり破壊された村も、ある程度復興の目途が立つ。
『本当に、ありがとうございます……感謝しかありません……』
 深く頭を下げる村人達に、気にしないで……と笑みを浮かべるイレギュラーズ。
 そして……その帰路につくときに、ジゼルは空を見上げながら。
「それにしても……もうすぐ春だというのにね。恋をするには良い季節なのに、酷い光景だわ。少しでも、元の生活を取り戻すお手伝いは出来たのかしら……」
 ジゼルの呟きに、エッダが。
「……大丈夫でありましょう。鉄帝に済む人々は強い……必ず、再び立ち上がってくれる、そう自分は信じているのであります」
「そう……なら信じましょう」
 頷くジゼル。
 そしてイレギュラーズ達は、春の風が吹き始めたノルダインを後にするのであった。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

お花畑のノーザンキングス討伐依頼に参加頂き、ありがとうございました……!
自惚れこそが、一番の大敵……と、彼等は使徒共に思い知った事でしょう……ね。

PAGETOPPAGEBOTTOM