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シナリオ詳細

市中の巨人

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


「怪しいことやってる魔法使いがいるからなんとかして欲しいってさ」

『黒猫の』ショウ(p3n000005)からの説明は簡単で簡素だった。そこに含まれる不定形でいまいち飲み込みがたい疑問の数々を横に置けば、だが。
「ともかく現地に向かってほしいな。依頼人のヒステリーっぷりったらなくってさ、今も騒いでるんだけど」
 先ほどからギルドの奥で聞こえる一般幻想婦人のがなり声が耳を刺している。
 彼の顔から伺える疲れの色は明らかだ。
「不定期に大きな音を立ててで騒いでいるそうだ、まるで暴れまわっているみたいだって。まあ『なんとか』してちょーだい。死人でも無ければその魔法使いの処遇については任せるよ」
 正直、依頼者の声の方がうるさいのではないか。そう思い始めた頃に場所の詳細を聞かせたショウが口を開く。
「もしかすると戦闘になるかもしれない。十分気を付けて」




 到着。
 ショウから聞かされていた場所には二階建ての家が建っている。
 両隣はさらにまた別の、現場の家に比べれば立派な屋敷が建っており押しつぶされているような印象すらある。

 しかし恐らく、もしやするとだが。
 この小さな二階建ての家の玄関と思しき場所。
 というより、通りに面した表側が、家の内側から吹き飛ばされたようになって一階から二階まで丸見えになっているのはそういう事情からかもしれない。
 挟まれた家は外からの圧力に耐えきれず風船さながら壁を吹き飛ばして破裂してしまったのでは?
 だがそんな元より成り立たない推測も、家の中心に立って家の大部分を占めている、この大きな石くれの巨人がいたからこそ生まれたのかもしれない。
 通りに集まった周囲の人々には驚愕に目を剥く者もあれば唖然として口を開けたまま突っ立っているのもいる。みな巨人には近づこうとはしていない。
 その人ごみをかき分けて幸薄そうな男が近づいてくる。
「もしかしてローレットの人だったり? よかった!」
 依頼者の婦人では当然ない。
 話を聞くとどうやら彼はそこな大黒柱然として佇む巨人の家の持ち主。つまり件の怪しい魔法使いであることがわかった。
「簡単にゴーレムを作れないかといろいろ試していてね。最初は自分と同じくらいの大きさのゴーレムを試してたんだけど、どうやっても家の中で暴れまわっちゃってね。研究はもうやめにするところだったんだ」
 ショウの言っていた騒音の原因が分かった。
 だが見ての通り新たな問題が出来上がってしまっている。

「どうやら捨てようと積み上げていた素材の石同士にかけられていた魔法が共鳴したみたいでね、こんなに大きく育っちゃったんだねえ」
 まるで他人事のようにつぶやく魔法使いの男。
 どうやら家の破砕は到着の数分前に起きた事態らしく、今までの失敗例たちからすると間もなくまた動き出すという。
「1度目より2度目の挙動の方が長くて激しいんだ。だから、そう! そうだ! この周囲は凄く危ない!」
 依頼は「怪しい魔法使いを何とかしてくれ」だ。
 ショウは言わなかったが、言葉の意味を解釈すれば「魔法使いが私の家に迷惑をかけているので助けて欲しい」である。このままでもゴーレムはそのうち魔法の効力が切れて自壊するらしいが、その前に周囲の家々と人々を襲うだろう。

「僕からも頼むよ『なんとか』してくれ!このままじゃ住む場所どころか捕まった上に命もどうなるかわからない!」
 また『なんとか』してくれだ。
 ゴーレムもゆっくりと動き出している。

 胡乱な話ではあるが、どうやらこの場でそれが出来るのは自分たちしかいない。
『なんとか』するしかないだろう。

GMコメント

●目標
 ゴーレムの撃破。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

●ロケーション
 昼の幻想市街の大通り。
 戦闘前に退避を促せば住人や通行人は戦闘に巻き込まれません。

●敵
・石の巨人*1
 4m程度の石のゴーレム。
 動きは遅いがとにかく硬く、攻撃範囲が広い。
 またHPが一定の割合に達する毎に隣接する場所へ【石の小人】を1体発生させる。

・石の小人*?
【石の巨人】のHPが一定の割合に達する毎に1体発生する。
 石の破片が繋ぎ合わされたような姿のゴーレム。
 小さく、硬度に劣るが攻撃力は高い。発生した次のラウンドから行動を始める。


●挨拶
 豚骨はじめましてのシナリオです。どうぞよろしくお願いいたします。
 周囲の家は最悪壊れても問題ありません。ショウも言っていますが死人が出なければ魔法使いの処遇は皆さんに任されます。何もなければ衛兵に引き渡されます。

「なんとか」しろってとても理不尽だと思います。そんな事態に付き合わされる皆さんへ敬意を表して。

  • 市中の巨人完了
  • GM名豚骨
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2022年03月19日 22時21分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ヒィロ=エヒト(p3p002503)
瑠璃の刃
美咲・マクスウェル(p3p005192)
玻璃の瞳
エルシア・クレンオータ(p3p008209)
自然を想う心
金枝 繁茂(p3p008917)
善悪の彼岸
Я・E・D(p3p009532)
赤い頭巾の魔砲狼
ノア=サス=ネクリム(p3p009625)
春色の砲撃
カフカ(p3p010280)
蟲憑き
ヴァラァ=A=グラトニア(p3p010406)
まとめて吹っ飛べ!

リプレイ


 野次馬たちの声がピタリと止んだ。
 緩徐として動き出す岩の巨人、ゴーレム。身じろぐようにして動いた先で魔法使いの家の壁材が音を立てて崩れた。
「ヒッ……!」
 短く、悲鳴が挙がる。
 それに釣られるようにして住人の悲鳴が挙がり、伝播した恐怖は大通りを包む。
 混乱した野次馬と住人たちが走り出し、非力な者や逃げ遅れる者を突き飛ばして無用の被害が生まれる。
 ようやく衛兵が駆け付けた大通りに無事な家屋は既に一つもない。
 しかし、そのような惨状が実現することはなかった。
「ここは私たちに任せて皆さんは避難を!」
「焦る必要はない。周りをよく見て歩けば危険はないから」
 混乱を先んじて制するように『自然を想う心』エルシア・クレンオータ(p3p008209)と『赤い頭巾の断罪狼』Я・E・D(p3p009532)が周囲の一般人へ避難を呼びかける。すぐさまその場から離れることが出来た者は少ないが、『避難』という言葉に気づいたように踵を返す者たちが現れる。
 保護結界を発動させ、周囲の被害を抑えながら『運命の盾』金枝 繁茂(p3p008917)もまた避難誘導に加わる。

 それでもやはり、一般家屋と同じかそれ以上の大きさの巨大な石像が目の前で動き始めるという事態に動けなくなる者も中にはいた。足が竦んだか呆然としたまま避難の声にも気づかないか。『ケイオスイーツ』カフカ(p3p010280)はそういった人へ率先して声をかけ、時には自分から移動の手伝いをしていた。
「とりあえず物陰まで運ぶんで、動けるようまでそこにおってください」
 感謝の言葉を背中に受けながらカフカは一般人を運んでいく。それについていくようにゴーレムから離れる数人を『STARGAZER』ノア=サス=ネクリム(p3p009625)が呼び止めた。振り向けばそこには艶とした色香を纏うネクリム。
「ねえ、衛兵さんを呼んできてくれません?」
「「「任せてください!!」」」
 ただの一般人に抵抗力だとあるはずもなく、頬を染めながら全員が即答した。カフカが運んだ一般人たちも、衛兵に後の事を任せればこれから始まる戦闘の影響は受けないだろう。
「ありがとう。流石に付きっきりにはなれんからねえ」
「そ、それじゃあ僕も……!」
 ゴーレムから近い距離の一般人の非難が終わったのを見て、戦闘は専門外なのかこの事件を起こした張本人とも言える魔法使いもここを離れようとする。
「いやいや。あなたにはあのゴーレムについての情報を聞きたいからね、戦闘が終わるまで居て欲しいかな」
 役立つことがあるなら聞いておこうとЯ・E・Dが魔法使いをその場に止める。逃走の牽制も含めての事だったが魔法使い本人にはそういった意図は感じなかった。

「ひとまず避難誘導はこのくらいで良いでしょう」
 避難補助を終えたカフカが繁茂たちの元へ戻った。予測される被害範囲には一般人の姿は無くなったのを確認してから頷き、上空を見上げる。
「あとは上から確認してもらえば大丈夫、でしょうか……」
「それじゃあ私たちも向こうに加わりましょうか」




 白雲の泳ぐ晴天の中、風は穏やかに流れていた。
 一羽の鳥が羽ばたく眼下には人々に呼びかけるイレギュラーズの姿がある。
「逃げ遅れた人はー……うん、いないっぽい!」
 小鳥の傍らには人ならざる異形の姿を取る亜竜種、『まとめて吹っ飛べ!』ヴァラァ=A=グラトニア(p3p010406)の姿があった。ヴァラァは小鳥が離れると張り裂けんばかりの気勢と共に、動き出したゴーレムの元へと降下した。

 避難が完了するまでの間、徐々に動き始めるゴーレムを抑える役目を担う二人の姿がある。
「ヒィロいっきまーす!」
 愛嬌ある掛け声とともにゴーレムへと闘志をぶつける『激情の踊り子』ヒィロ=エヒト(p3p002503)。体の正面らしい方向をヒィロへゆっくりと向けてゴーレムが一歩踏み出す。重い振動が地面を揺らし、身体の芯に響く。どうやらゴーレムの体を構成する石の密度は相当の物の様だ。
「……人間サイズでも危ない代物なんじゃない、これ」
 彼女の攻撃に合わせて『あの虹を見よ』美咲・マクスウェル(p3p005192)も術を手繰るがゴーレムの体を断ち切れなかったことを確認する。そんな物が『どうやっても暴れまわる』状態の研究を街中で行うとは一体どういう倫理観なのか、ため息を隠せないながらもいつものように片付けるしかないと割り切って構える。
 一撃。
 巨体を傾けて振り下ろされるゴーレムの攻撃は緩慢ではあったが、とにかく範囲が広かった。ヒィロがゴーレムの気を逸らしてはいるものの、油断すれば標的となっていない美咲までもが巻き込まれかねない。
 未だゴーレムの動きは緩やかだが、初撃を繰り出した後の流れの速さが上がっていることに二人は気付く。
「体を動かしたから向こうも本調子になってきたって感じなのかな」
「そうみたいね……ん?」
「いっくぞー……!」
 二人の眼前の地面に何かの影が映ったと同時にゴーレムの無防備な横っ面に巨大な土塊が激突、続いて影の主であるヴァラァが降り立つと「してやったり」と破顔する。
「どうだー!」
 ぐらりと上半身が揺らめき――そのまま体を回す動きでゴーレムの腕が飛来した。
 ヴァラァの一撃を受けてなお、石の巨人は体を崩さない。美咲が先の一撃で確認済みだったがやはり一筋縄にはいかないと歯噛みする。
 岩雪崩の如く降り注ぐ剛腕が舗装された道を抉り砕く刹那、三人の後方から伸びた五条の線がゴーレムの腕と交差し、石の巨体に押し寄せた。
 とりどりの衝撃を受け、さしものゴーレムがたたらを踏んで後ろへ下がる。
 石の塊であり、魔法によって動いているだけの人形であるゴーレムには顔色も視線もない。
 だが、避難誘導を終え、一撃を加えたイレギュラーズたちは自身が標的と認識されたことを肌で感じた。

 人数を避難誘導に割き、衛兵を呼んで補助に回したことで想定より早くイレギュラーズ全員が戦闘へ揃い踏みする。
 そして、戦場は本格的に動き出した。
 巨体が体を揺らすたび広範囲に被害が及ぶ上、ゴーレム自身の体の破片も衝撃と共に飛んでくるせいでその攻撃規模は見た目以上だ。
「いやあ、おっかな」
 矢面に立ってゴーレムの攻撃を受ける二人の体に回復の術を施しながら思わず呟くカフカだが、眠たげな瞼は変わらない。
 ギフトを使いながら弾け飛んで散らばっていた家の瓦礫を軽く躱して戦場を滑走。彼の滑り去った影から放たれたЯ・E・Dの破式魔砲がゴーレムの巨体へ突き刺さる。そして呼吸を入れる合間に術式は組み上がる。
「動きの滑らかな関節部なら或いは、とも思ったけど」
 ぶわりと魔砲の風圧がЯ・E・Dの頭巾を揺らす。大気を穿って直撃した二度目の魔砲もゴーレムの足や肩を抉って見せるが、割砕させるには至らない。
「自分で制御できないのが弱点かな」とЯ・E・Dの質問に対して戯言を抜かした魔法使いは後ろの物陰で怯えている。
「石同士の接合自体も魔法で補強されているらしいね」
「うーん結構削れたと思ったんだけどなー。……ん?」
 味方の射線を確認したヒィロの目が何かを捉える。
 先程の攻撃で吹き飛んだゴーレムの身体の一部の集積。なにやらゴソゴソと動いたように見えたそれが空に吸い寄せられるように立ち上がり始める。
 やがて自立したそれは、石の小人とも言える風体をしていた。

 ゴーレムの体が大きく弾ける度、石の小人が現れる。
 初めは一体だけだった小人は二体、三体と数を増やし、今では五体目が生まれる兆しを見せている。
「まだ出てくるのね!」
 発生は既に五度目。おおよタイミングの目安と感覚をイレギュラーズたちが捉えるには十分だった。
 ノアはゴーレムに向けていた砲塔を回して小人に狙いを定め、動き出す前に先制の一撃が放つ。
 体の至る所に鋭角を備えた小人は巨人であるゴーレムに対して小さく、細い。
 放たれた弾丸がその矮躯を捉えれてしまえば容易く体の一部が吹き飛ばすことが出来た。
「急造にはお似合いのお粗末さね。精巧な造りというものを見せてあげましょう」
 笑みを浮かべながらノアは宙を駆ける。彼女が操るのは練達が作り上げた機械亜竜。その構造には一部の狂いもなく、その動きは小人たちの射程を翻弄し、一方的な射撃姿勢を可能にする。
 未だ残っている小人は既にいずれも体を損壊させていた。
 その動きは油の切れた機械人形めいており、奇怪な角度でとがった体を突き出してくる様子が拍車をかける。
 ゴーレムの攻撃とは違い、一撃一撃が銃弾に似た鋭さを持つ小人たち。
「――鋭いっ! ですが私を下がらせることは出来ませんよ!」
 しかし彼の守りは城塞。銃弾が繁茂の壁をいくら抉ろうとも、その修繕が行われれば被害は微々たるものに収まるのは道理。
「それに比べてあちらは本当に硬いですね」
 不動の構えでゴーレムの攻撃を真っ向から受け止める姿勢を取る繁茂。鬼血を凝固させた血晶の足場の軋む音が耳まで響く。
 ゴーレムの攻撃はヒィロの攪乱と誘導によって狙いが分散している。とはいえ時折、無秩序に振るわれる巨体の一撃からエルシアのような純粋なまでの攻撃手を守る必要があった。
 城壁の如き守りの戦いこそが彼の本領だ。
 そして此度の城からエルシアの手繰る火砲が放たれる。
「自然を愛する者として、元の姿へ還す……私の務めを果たさせて頂きます」
 空気が灼ける声が小人を巻き込んでゴーレムへ到来し炎を散らす。石の塊は熱を帯びて焦げた臭いで辺りを満たす。
 続くヴァラァも他の小人を巻き込みながらノアの放つ魔弾と共に黒煙燻らせたままのゴーレムへ直撃させる。
「みんなーー!!魔法撃つからちょっと下がってーー!!」
 休ませるつもりはないと、ヴァラァは立て続けに魔法を撃ち込んでいく。衝撃と破裂の怒号をかき消さんが如くゴーレムは轟音とともに周囲を払う。
 だが、その渦中にあっても、ヒィロと美咲の顔色は些かも変わらない。
 ヒィロが跳ぶ。振り上げられた巨腕が影を追って霞みを掴む。
「ボクがただ跳び回ってるだけだと思ったら大間違い!」
 半瞬遅れてゴーレムの後ろから美咲の魔術が襲う。ゴーレムの体が僅かに傾き、振り返る巨人の意識を金色の影が引っ張って行く。
「大きいだけの石人形程度、私たちの連携の敵じゃない!」
 ヒィロが引き付け、美咲が穿つ。
 二人の連携を援護する攻撃の最中にもゴーレムから別れた石片が小人の形を作る。ゴーレムの近くに発生するという性質上、その近くで戦うヒィロや美咲、味方をかばい続ける繁茂が攻撃の的となる。
 偶発的にではあったが、合間を押しつぶすようにゴーレムの剛腕がまとめて三人を薙ぎ払った。
 反撃の隙を見計らって放たれるシャドウグレイヴでゴーレムの動きを止めにかかるカフカはも回復の術を休むことなく行使して戦場を駆ける。
 小人が彼に襲い掛かる場面もいくつかあったがЯ・E・D、エルシア、ノア、ヴァラァの四人の何れかの射線がそれを阻んだ。
「うわっほんでまだ出てくるんかい」
 小人を貫いた光がゴーレム諸共砕いたその横で新たに一体生まれるのをカフカは見る。
「だけど、もう打ち止めじゃないかな」
 パラパラめくられる頁の端を体に押さえせながらЯ・E・Dはゴーレムをじっと見て言った。
 ゴーレムは突如、腕を振り下ろし、振り上げ、突き出して薙ぎ払う。
 まるで狙いの定まらない動きはさながら外れたネジを求め踊り狂う機械人形。
 ゴーレムの構造に無理が生じ始めているのは明白だった。
「おーなんだなんだ!?」
「魔法が切れかけているのでしょうか」
 しかしそれでも止まらず、エルシアとヴァラァをまとめて吹き飛ばさんとした腕を繁茂が受け止める。
 既にゴーレムの体積は戦闘前の六割程度まで削られている。
 いかに魔法で補強されていようと、補強が必要な個所がこうも多くなってしまってはゴーレム自身、長く体を維持することは出来ないだろう。
「どうやら、ここが踏ん張りどころのようですね」
 イレギュラーズたちは疲労の色が浮かぶ体に活を入れて、自らが握る武器と術を回す。
 轟音と共に土埃が舞い、闇が爆ぜ、光の線が飛び交う。

 やがて戦闘音が止まる。

 がらり。
 音は、前触れなく訪れた。
 武器を構えたままのイレギュラーズたちの目の前で止まった腕が崩れる。
 土煙晴れていく中、ゴーレムはただの石くれの山へ還っていった。




 終わってみれば今回の件で受けた物的被害は弾けていた魔法使いの家以外は軽微に留まった。
 ゴーレムが本格的に動き出す前に避難がほぼ完了。攻撃の誘導と保護結界が張られていたことで近隣家屋はイレギュラーズの到着前に余波で受けていた損壊を除けば無傷と言っていい状態だ。
 それでも道は至る所で砕け、散らばった瓦礫の為に大通りを利用する者たちにとっての被害は甚大だ。
「うう、僕の研究のせいで……」
「今回の失敗からしっかり学んでください」
 失敗そのものは悪ではない。繁茂の言葉に頷いた魔法使いは焼き付けるように瓦礫の散らばった大通りを見渡す。
「さて次は貴方が『なんとか』する番ね?」
「ええー!?」
 石くれに戻った破片を弄びながら微笑むノアに魔法使いは頭を抱えながら嘆く。
 
「あっそーだ! ゴーレムを作って瓦礫を撤去すれば楽ちんだ!」
「要りませんからね?」
「これは擁護出来んなあ」
 エルシアに止められていなければ本当にまた魔法を行使しかねない様子にカフカの眉尻が下がる。
「まあそれはそれとして、罪は償わないとね」
 Я・E・Dは通りの入り口を指す。
 戦闘が終わったのを確認してか、衛兵たちがやって来て魔法使いを引っ立てていった。
「今度俺と遊んでなー!」
 ヴァラァの声に屈託のない笑顔で手を振り返す魔法使いを見送りながら、イレギュラーズたちはローレットへ報告に戻る。
 後日、子供たちの遊び相手をする幸薄そうな男と、傍らで修繕の単純作業をせっせと手伝う人型ゴーレムの話題をギルドの席で耳にした。


成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 無事『なんとか』してしまいましたね、お見事でした。
 働く許可をもらったようで今度のゴーレムは暴れたりせず稼働中です。とりあえず、今は、まだ、多分。

 私にとっては緊張の1作目でしたが、お楽しみいただけましたでしょうか。またお会い出来れば幸いです。
 改めて敬意を表しまして、お疲れさまでした。

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