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シナリオ詳細

<果ての迷宮>永劫回帰の告死館

完了

参加者 : 10 人

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オープニング

●果ての迷宮
 幻想王都メフ・メフィートの中心には、果ての迷宮と呼ばれる広大な地下迷宮が存在する。
 果ての迷宮を踏破することは、幻想を建国した勇者王の悲願であり、伝統的に幻想王侯貴族の義務である。
 性質上、厳重に警戒されており一般の冒険者が立ち入ることは不可能である。
 しかしローレットのイレギュラーズが幻想を救い、名声を高めたことでついにその踏破依頼が舞い込んできたのである。
 イレギュラーズは幻想貴族の名代として、この巨大な迷宮を踏破するのだ。
 前回挑んだは28層。
 R.O.Oのアバターを思わせる何者かが立ち塞がる、2つの世界が入り混じるかのような階層だった。
 次に待ち受けるは、一体何か……。

●不可思議な洋館
「ついに29階層、だわさ!」
『総隊長』ペリカ・ロズィーアン(p3n000113)は嬉しそうにピョンと跳ねる。
 此処をクリアすればついには30階層。テンションも上がるというものだ。
 ならばこの29階層、早めに突破してしまいたいものだが……。
「何だわさ、これ」
 目の前にあるのは、一般的なお屋敷のものと何ら変わらない扉だ。
 それだけではない。その周囲の壁も幻想貴族の屋敷を思わせるものだ。
 まるでこの階層に屋敷を丸ごと持ってきましたとでも言うかのような、そんな不可思議さを感じる。
 そして、その扉に貼ってあるプレートの文字をペリカは読み上げる。
「悪意の海に溺れるがいい。この先にあるは人が作りし叡知の1つの極みである……何の事だわさ」
 そのまま扉の周囲を調べていたペリカは、何かを見つけてピタッと手を止める。
「告死館……? これがこの先の名前なら、随分物騒だねぃ」
 なるほど、消えかかっているがそんな文字が刻印されているのが見える。
 死を告げる館。字面だけでも随分と物騒だが……その文字を撫でながら、ペリカは考える。
「うーん……強力なモンスターか、はたまたトラップか……これだけじゃ確定は出来ないのだわ」
 あるいはその両方かもしれない。
 わざわざ屋敷の扉がくっついているのも、何の意味もないとは思えない。
「とにかく、まずは入ってみるのだわさ」
 そんなペリカの言葉と共に全員が中に入ると……その瞬間、扉が背後で閉まりガチャリと鍵のかかる音が聞こえる。
「げっ!」
 慌ててペリカが扉をガチャガチャと引いたり叩いたりするが、扉はビクともしない。
 どうやら、開ける事は無理なようだ。
「……告死館へ、ようこそ客人たち」
 響いてくるのは、そんな言葉。
 暗い大広間の奥。ぼんやりと浮かぶ鉄仮面がいる。
「な、何者だわさ!」
「更なる深淵へ進まんと望むなら……本物の私を殺し鍵を奪うがいい。出来るとは思えんがね」
 そう言って消えていく鉄仮面。
 あれがこの告死館の主……ということなのだろうか?
 周囲を見回せば、此処はどうやら大広間。幾つかの扉もうすぼんやりと見えるが……窓からは何処かも分からぬ暗い森が見え、時折雷鳴と共に強烈な光が差し込んでくる。
 当然だが、ペリカが叩いてみてもビクともしない。壊すのは無理なようだ。
「うーん。どうやらあの男を探さないといけないみたいだわさ。此処は皆にいっ!?」
 突如、ペリカの足元がパカッと開いてそのまま何処かに落ちかける。
 幸いにもペリカは穴の端をがっしと掴み、仲間たちに引き上げられる。
「し、死ぬかと思っただわさ……!」
 穴は何事もなかったかのように消えたが……その向こう側にあった鋭い刃の群れが強烈に印象に残っている。
「……どういう場所かは確定したのだわさ。皆、お願いするのだわ!」
 告死館。
 29階層にしてトラップハウスであると思われるこの場所の探索が、始まったのである。

GMコメント

皆様こんにちは。
今回果ての迷宮29階層を担当いたしますGM、天野ハザマです。

●概要
 館の主を撃破し鍵を手に入れ、フロアを突破してくださいませ。
 また、誰の名代として参加するかの提示も願います。

※セーブについて
 幻想王家(現在はフォルデルマン)は『探索者の鍵』という果ての迷宮の攻略情報を『セーブ』し、現在階層までの転移を可能にするアイテムを持っています。これは初代の勇者王が『スターテクノクラート』と呼ばれる天才アーティファクトクリエイターに依頼して作成して貰った王家の秘宝であり、その技術は遺失級です。(但し前述の魔術師は今も存命なのですが)
 セーブという要素は、果ての迷宮に挑戦出来る人間は王侯貴族が認めたきちんとした人間でなければならない一つの理由にもなっています。

※名代について
 フォルデルマン、レイガルテ、リーゼロッテ、ガブリエル、他果ての迷宮探索が可能な有力貴族等、そういったスポンサーの誰に助力するかをプレイング内一行目に【名前】という形式で記載して下さい。
 誰の名代として参加したイレギュラーズが多かったかを果ての迷宮特設ページでカウントし続け、迷宮攻略に対しての各勢力の貢献度という形で反映予定です。展開等が変わる可能性があります。

●告死館
罠でいっぱいの洋館。2階建てのようで、階段が2か所にあります。
罠は緻密に隠されていますが、発動ポイントにて発動条件を満たすと偽装を解除し発動するようになっています。
なお、1階の奥に鍵のかかった部屋があるようですが、館の主を倒す事で鍵が手に入ります。
その先にあるものは、勿論……。

●特殊ルール
ダメージ系の罠はかーなーりエグい威力を持っています。
此処で戦闘不能になってしまった場合、頑丈な「脱落者の棺桶」に閉じ込められてしまいます。
その場に置いておくと館の主に「魂のエネルギー」を奪われシナリオ中、完全に動けなくなってしまいます。
この状態を解除するには館の何処かにある、棺桶の並ぶ気味の悪い「安置室」に運んで時間経過を待たなければなりません。

●罠一覧(何かしらの魔法的な力によるモノのようです)
・クレーン
犠牲者の頭を掴み吊り上げるクレーン。大回転するので、ダメージに加え平衡感覚をしばらく失ってしまうでしょう。
また、捕まっている間に何かが起こっても対処が難しくなります。

・ピットフォール
落とし穴。ペリカが引っかかりました。何処にあるか見た目では全く分かりませんが、発動条件は比較的簡単であると思われます。ただの落とし穴ではなく、刃の群れや毒水などが仕込まれていることもあるようです。

・ランス
壁から飛び出す刃。まともに引っかかれば串刺しでしょう。丁度成人男性の胸辺りを突き刺す高さのようです。

・スタンジェイル
真上から落ちてくる檻の罠です。中にいる犠牲者に電撃でダメージを与えます。

・回転床
床が突如高速回転します。上に居るとフラフラになって平衡感覚を失ってしまうでしょう。

・無慈悲なバケツ
上からバケツが降ってきて犠牲者の頭に被せられます。バケツには打撃システムが組み込まれており、犠牲者はしばらく平衡感覚に加え視界や耳も使い物にならなくなるでしょう。

・ストライクエンド
横から超高速で壁の一部がせり出し、哀れな被害者を叩き潰します。

●モンスター一覧

・館の主
鉄仮面をつけた幻想貴族っぽい格好の男。剣を持っています。
然程強くありませんが、壁はすり抜けるし館の主(分霊)を全て倒すまでは無敵です。
任意で罠を発動させる能力も持っています。

・館の主(分霊)×10
館の主の分身体みたいなもの。剣を持っています。
そんなに強くないですが、物質透過で壁抜けとかをやらかすので地味に厄介です。
任意の罠を発動させる能力を持っています。

・ハウンドドッグ×たくさん
館の中をウロウロしている狼モンスター。噛みつき攻撃を仕掛けてきます。
館の主(分霊含む)の号令で集まってきたりします。

●NPC……ペリカ・ロジィーアン
 果ての迷宮踏破の総隊長で、年齢不詳の幻想種女性。
 今回は完全にバックアップ要員です。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

  • <果ての迷宮>永劫回帰の告死館完了
  • GM名天野ハザマ
  • 種別EX
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2022年02月27日 22時05分
  • 参加人数10/10人
  • 相談7日
  • 参加費150RC

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(10人)

サイズ(p3p000319)
カースド妖精鎌
レッド・ミハリル・アストルフォーン(p3p000395)
赤々靴
アクセル・ソート・エクシル(p3p000649)
灰雪に舞う翼
エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)
金色凛然
イーリン・ジョーンズ(p3p000854)
天才になれなかった女
黎明院・ゼフィラ(p3p002101)
夜明け前の風
オウェード=ランドマスター(p3p009184)
真竜鱗
メリッサ エンフィールド(p3p010291)
純真無垢
リフィヌディオル(p3p010339)
玖・瑞希(p3p010409)
深き森の冒険者

リプレイ

●告死館の探索
 窓から雷の音が響く。そこから見える光景は此処が森の中の洋館であるように錯覚し、まるで今が「夜」であるように感じられる。だが、そんなわけがない。
 あまり近づくとどんな罠が仕掛けられているか分からないし、どうやら開ける事も出来なさそうなので近づく者は居ない。
 まあ、「外」なんていう場所がこの場所にあるはずもないので、それ自体も罠に思える。
 あるいはこの場所に本当に「外」に類するものが存在している可能性もあるが……正直、出る意味があるかもいえば否である。
 そう、このロビーにいると忘れがちになるが此処は果ての迷宮29階層であり「告死館」と呼ばれる場所なのだ。
 今までの階層に負けない程の難易度なのは疑いようもない。
 だが……だからこそ、だろうか。
 この場に集まった面々で、告死館に脅えている者は1人たりとていない。
「こんなに大きな場所、ボク初めて見たよ! ワクワクしちゃうよね。この先に、何があるんだろう!」
『深き森の冒険者』玖・瑞希(p3p010409)がそう叫ぶが、確かにこの果ての迷宮ほど巨大なものはそうはないだろう。
 踏破することは、幻想を建国した勇者王の悲願。だからこそ瑞希たちは今、此処に居るのだから。
「貴族様の名代としてのお仕事……いつも以上に緊張しちゃいます……し、深呼吸深呼吸……よし! がんばっていきましょう!」
『純真無垢』メリッサ エンフィールド(p3p010291)が気合を入れ直しているが、此処は果ての迷宮29階層。
 今メリッサが言ったとおりに各自がそれぞれの有力者やスポンサーの名代として参加しており、メリッサ自身ガブリエルの名代としての参加であった。
 だがそれはそれ、これはこれ。全員で協力するのには何の支障もない。
「トラップハウスとは、一周回ってダンジョン攻略と言った趣だね。ふふん、この手の冒険は私の専門分野さ。今回はイーリンを始め頼れる仲間も多いことだし、久しぶりに正統派ダンジョンの探索を楽しませてもらうとしようかな……無論、油断はしないけれども」
「うむ。黎明院殿……また宜しくじゃよ……」
『夜明け前の風』黎明院・ゼフィラ(p3p002101)と『黒鉄守護』オウェード=ランドマスター(p3p009184)のそんな声が、告死館に響く。
『総隊長』ペリカ・ロズィーアン(p3n000113)はそんなゼフィラとオウェードの背後でさっき罠に引っかかったせいか、かなり警戒しているようだが……今は何も仕掛けてくる気配はない。どの道、油断していないというのは素晴らしい事だ。
 どっちかというと性癖がちょっとロ……難題を抱えているロリコ……オウェードが、ペリカが近くをチョロチョロしているのに微妙に赤面しているが、本命はちゃんといるらしい。誰が本命化というのはオウェードが誰の名代であるかという話に繋がるのだが、さておいて。
 そして『カースド妖精鎌』サイズ(p3p000319)はギフト「かつて妖精だった残滓」の力で三分の一の身長になっていた。
「小さな体で持ち上げられるかって? 性能は据え置きだから問題ないさ」
 そんなことを仲間たちに言うサイズだが、小さくなったからこそ感じる事もあった。
 告死館。名前からして不吉なその館は、こうして小さくなってみると不気味さが非常に際立つ。
 飛行で多少浮くことで床に起因したトラップを回避したり仲間を助けたりという狙いがサイズにはあるが、中々に巧みであると言えるだろう。
「トラップハウスか……暮らしにくそうだな……まあ、こんな館とっとと踏破して30階へいくぞ!」
 見た目こそ豪奢な館ではあるが、その実トラップハウス。人間が暮らすには徹底的に向いていない。
「今回は罠と館かあ。迷宮って言葉にふさわしいトラップだらけの階層だね……」
「そうっすね。にしても……久々の果ての迷宮探索っす。此処は鉄仮面さんの叡智の極みっすかふーん……なかなかに物騒っすけどこういう世界を歩むのも良いっす。客人と言われたからにはおもてなし堪能して踏破していこーっす!」
『灰雪に舞う翼』アクセル・ソート・エクシル(p3p000649)と『赤々靴』レッド・ミハリル・アストルフォーン(p3p000395)もそんなことを言うが、『金色の首領』エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)は「叡智の極み」という単語を思い出していた。
「叡智の極み、か。確かに、己の安全を確保した上で最大限他者を殺傷し得る。罠とは極めて合理的な発明、だ。それだけの為の屋敷など、まさに悪意そのものだ、な?」
「これは大変そうですね……手分けして当たりましょう」
「確かに罠だらけの中あの男を探すには手分けして探した方が早そうっす」
 リフィヌディオル(p3p010339)やサイズの言う通り、この館は分散して探索した方が効率が良いだろう。
 そんな中、『天才になれなかった女』イーリン・ジョーンズ(p3p000854)はすうと息を吸い込む。
「んー……迷宮の空気。製作者の胃袋に居るこの感覚」
 感じるのは、極めて明確な敵意。
 鉄のように冷えて、針のように鋭い……刺すような空気。
 一歩先は地獄を極めて明確に体現する、そのヒリつくような感覚をイーリンは覚えていた。
「私は挑戦者、踏破の暁には鉄仮面、貴方の名前を聞かせて貰うわ」
 無論、素直に教えるとは限らないだろう。
 あの鉄仮面が何者であって、この告死館の真実が何であれ……挑む者と迎え撃つ者。
 その関係は変わりはしない。
 だけれども。いや、だからこそ。
 イーリンは「その言葉」を唱えるのだ。
「神がそれを望まれる」

●告死館の探索
 イーリンにより、チームは速やかに3つに分けられていた。
 A班。イーリン、レッド、サイズ。
 B班。メリッサ、ゼフィラ、オウェード。
 C班。瑞希、エクスマリア、アクセル、リフィヌディオル。
 此処に更に、A班のレッドのファミリアーをB班へ、B班のメリッサのファミリアーをC班へ、C班のエクスマリアのファミリアーをAへ班へ、とループ所持で、五感共有を活用した音声伝達を可能にするという仕組みをも提示した。
 定時連絡併用で途絶えたら異常の早期発見につながるという仕組みであり、万が一全滅しても他の班がそれにより気付くという相互扶助体制である。
 それを心配し過ぎと笑う者は居ない。果ての迷宮の1階層を担うトラップが軽いものでないくらい、誰もが理解できている。
 壊滅に近い状態もあり得る。それを前提にイーリン、レッド、サイズ、エクスマリア、リフィヌディオルのD班とメリッサ、ゼフィラ、オウェード、アクセル、瑞希のE班の2つに再編成する次善の案も用意している。
「さて、ここの罠は全て「何かを追いかけるとき」に最大効果を発揮するように作られている」
 イーリンはそう分析しながら探索者の黒手袋の着け具合を確かめる。
「即ち分霊と本体、今回の目標。故に私は「分断」される罠を最大の脅威と設定する」
 今回の敵である館の主は分霊を館の中に放っている。
 その全てを倒さなければ、館の主は永遠に倒せない。
 だからこそ、イーリンは分かっている罠の中で優先度を決めていく。
「クレーン、ピットフォール、スタンジェイル。これを優先して解除よ。黒手袋の指先なら、罠の命脈そのものは掴めるはず」
 そして、地図もないこんな初見の場所では非常に迷いやすい。
 だからこそレッドのギフト「赤靴軌跡」も輝く。
 レッドの体力の続く限り任意で赤色に纏わる香りがする赤い足跡が残せるというソレはレッドの体力が尽きると足跡は古い跡から順に消えていくという弱点もあるが、逆に言えば足跡は探索の足跡でもある。
「これで迷うことないっす!」
「出来る限りの準備はしている。あとは……」
「ええ。進むのみ、よ」
 レッドとサイズに頷きながら、イーリンは慎重に壁をノックする。
 壁に何かが仕掛けられているのなら、音の反響、あるいはノックに反応してランスが発動するかもしれない。
 ヒールを鳴らし、足音に反応したり、あるいはそこにピットフォールがないかを確かめる。
 フックを先に投げて様子見するのは、天井や床に仕掛けられた罠への対処だ。
 どれが通じるかは分からない。
 だが、どれかが1つでも通じれば大きな有利に繋がる。
「時間はたっぷり使う、情報を得られる間は私達の不利ではない。発動条件等さえわかれば、暴発させて分霊を驚かせてやるわ」
 イーリンの視線の先。フックを吞み込んだピットフォールに、イーリンは薄く笑う。
 まずは1つ。解除と、検証を始めよう。
 そうして他のチームに先んじて2階へ向かい、探すべきものを探すのだ。
 その頃、Bチームの面々はAチームとは少し違う方法で罠に対処していた。
「……ふ、む」
 ゼフィラは私は【看破】で罠の発見に協力しつつ、【透視】を使いながら前後左右上下へ視線を向け、壁の向こうから館の主の分霊が奇襲してこないか警戒していた。
 分霊を全て撃破しないと始まらない。逃してしまった場合も方向を覚えておき、仲間と情報を共有するべくゼフィラは決して気を抜かない。
 そしてメリッサはうっかり罠を踏まないように飛行で低空飛行状態で移動しながら「罠対処」で進路上の罠を探していた。
 勿論、発見時は解除を試みていたが……。
「ぷはあ! き、きついです。仕組みが複雑すぎます!」
 まだ毒霧の噴き出る宝箱のほうがマシであるようにメリッサには感じられた。
 たとえば今目の前にある回転床など、どういう仕組みで回転するのかさっぱり分からない。
「ふむ……場合によっては回避か、発動させてしまったほうがいいのかもしれんのう……」
 メリッサやゼフィラ、ペリカを庇いながら、オウェードは戦略眼でそんな考察をする。
 そう、実はペリカもB班にくっついてきている。
 イーリンからは「一番手薄と思った班と、戦闘不能者の保護を中心に。いつも通り、貴方に一任するわ」と言われていたのだが、「この班分けなら何処に行っても大体同じだわさ」ということで、直感でB班についてきていたのだ。
「その辺については任せるのだわ。何かあっても棺桶くらいなら引けるだわさ」
「う、うむ……」
 オウェードがちょっと挙動不審になるが、視線を逸らしてもそこにはメリッサがいる。
 安全地帯はゼフィラくらいのものである。まあ、ゼフィラとしては不本意だろうがロリではなくレディな証拠なので文句は非常に言いにくい。あとなんだかんだオウェードは紳士だからというのもある。さておいて。
 事実、オウェードのいわゆる「解除にこだわる必要はない」という意見にゼフィラもメリッサも、勿論ペリカも異論はない。
 つまりは引っかからなければいいのであって、作動させる分には問題ない。
 毒ガスなどの類があればまた話は違ったかもしれないが、幸いにも告死館にそういったガス系の罠は存在しない。
 だが、ガス系の罠がないから安全かと言えば勿論違う。
 言ってみれば「設計思想が違う」のだろうと、オウェードはそう推測していた。
 この告死館の罠は危険な罠も多いが、同じくらいに足止め系の罠も多い。
 たとえばこの回転床のすぐ先にはピットフォールが仕掛けられていることがすでに判明している。
 館の主がいれば追いかけた者は罠にアッサリ嵌ってしまうだろうし、館の主が居なくても勝手に引っかかる可能性がある。
 言ってみれば、効率を非常に重視しているのだ。
 だからこそオウェードもゼフィラも警戒を緩めないし、ゼフィラはオラクルの力にもある程度の期待を寄せていた。
 あらゆる備えで「勝利」を引き寄せる。つまりはそういうのが今回のゼフィラのスタンスであり、そこまでやらなければ危険だと思うほどにこの告死館は「嫌らしい」のだ。
 そして……この告死館の嫌らしいところは、もう1つ。
「……むっ」
 オウェードがノルダイン風アックス改を構える。
 その視線の先には、ハウンドドッグの姿。
 そう、この告死館には無数のハウンドドッグが放たれている。
 それらはいつでも此方を狙っていて、襲ってくるのだ。
 だが、オウェードはこういう時の為にメリッサとゼフィラを庇っていたのだ。
「メリッサ殿……戦闘は任せるがいい……」
「守りは任せたよ、オウェード殿。どうやら……こちらを歓迎してくれるつもりらしい」
 ゼフィラは壁を睨みつけると、ゼフィロスフロースを軽く鳴らす。
「見えているぞ、館の主!」
「くくく……」
 ゼフィラの視線の先。透視した壁の向こうから館の主が現れる。
 それが本物かどうかは分からない。
 本物であればこの場では倒せないし、分霊ならこの場で倒せば1つ楽になる。
 だが、どうであるにせよ。
「楽しんでいただけているようで幸いだ。主として華を添えに参った」
「恐悦至極……って言えばいいかい?」
「どうとでも。踊ろうレディ。そこの髭男には似合いのダンスパートナーを贈る故に」
 増えるハウンドドッグたちがオウェードへと襲い掛かって。
「さあ来い、犬と飼い主! お前さんの相手はワシじゃ!」
 此処は通さんとばかりに、オウェードが立ち塞がった。
 そして、C班。
 こちらでは丁度瑞希がハーナルガングの力を借りてランスの解除に挑んでいた。
「秘匿した悪意」を暴く事を好む小さな妖精であるというハーナルガングは、まさに今日この日にピッタリで。
 更に瑞希は発動させた方が早いもの、解除が難しいものは、わざと発動させて対応しようとスッパリ割り切ってもいた。
 その為に瑞希が用意したものは……冒険者のお供として有名な3メートルの棒だ。
 離れたところから3メートルの棒で強く床を突いてピットフォールを発動させる姿は、まさに「冒険者らしい」姿であると言えるだろう。
 遺跡を探索する古き良き冒険者は皆「3メートルの棒」を出発前に持っているか確かめたという逸話すらあるくらいである。
「早めに安置室を見つけておきたい、が。まだどの班も見つけられていない、か」
 定時連絡の内容を都度確認していたエクスマリアが、そう溜息をつく。
 この告死館における生命線ともいえる「安置室」は早めに見つけておきたいが、罠の対処をしながらでは中々探索が進まないのも確かだった。
 だが、罠に引っかかりながら行くわけにもいかない。
 C班ではアクセルが広域俯瞰で周囲を探って、怪しかったりとか、罠があったら嫌なポイントを適宜共有し、リフィヌディオルが常に周囲を透視しながら壁、床、天井に何か透けて見えたら報告するという手順で進めていた。
 ……だが、透視できる罠と透視できない罠があるのは如何にもトラップハウスらしい嫌らしさであり、この事実はすでに全ての班に共有されていた。
 罠を透視できると油断したら透視できない罠に引っかかりやすくなる。
 実に罠にかかる者の心理を熟知していて、更にそこにハウンドドッグが襲撃をかけてきて冷静な思考をさせなくする。
 館の主が壁から「ばあ」と顔でも出せば、アイツを倒せばと焦って罠にかかる者すら出るかもしれない。
 事実、C班にも先程館の主……分霊か本体かは逃げられてしまったので分からないが、ちょっかいをかけにきていた。
 しかし、冷静なエクスマリアの対応で事なきを得ていた。
 そう、相手は明らかにこちらのミスを誘っている。
 告死館に仕掛けられている罠も、まさに「ミスにより自滅する」系統の罠が多い。
 だからこそ、それを防ぐための3班での協力体制であった。
「あそこに何か隠されてます」
「確かに如何にもって感じだね」
 そうリフィヌディオルが告げて、アクセルもそれを補強する。
 見えない罠がある。けれど、見える罠もある。ならば別に見える罠を放置する理由は1つとしてない。
「罠が見えなくても、棒で辺りを探って、慎重に……」
 自分に言い聞かせながら、瑞希が3メートルの棒を動かしていく。
 万が一を考えて、ピットフォールの対応用に陸鮫も近くに待機している。
「発動条件は何か考えていかないと……集落の狩りで使う罠は、ロープに触れて発動してたよね」
 万全……かどうかは分からないが、出来る限りの態勢を整えながら瑞希は罠への対応に挑んでいく。
(魔法の罠も、何かが触った。罠の感知範囲を通過した。とか。かな? 魔法陣なら、陣を崩せれば解除できるかな? でも、そんなのはない……なら、もっと単純な……)
 そうして慎重に進んでいった、その先。エクスマリアの開けた扉の先にあったもの。
 薄暗い部屋の中に置いてある無数の棺桶。
 安置室発見の報が共有されて。館の探索が、また1つ大きく進む。
「それにしても……」
「気味の悪さが他の部屋の比じゃないですね」
 エクスマリアの言葉を引継ぎ、リフィヌディオルがそう溜息をつく。
 分霊退治と同じくらいに優先して済ませたいこと、それが安置室の発見だった。
 この部屋を見つける前に総崩れしたら大変なことになってしまうからこそ、他の2班……A班やB班とファミリアを使った連絡網を構築し探索を進めていたのだが……あまりにも陰鬱な雰囲気過ぎる。
 この部屋にはどういう理由か罠は設置されていないようだが、それ以上に鬱になりそうな、そんな部屋だった。

●告死館を突破せよ
「くそっ、バケツの利用は無理だったか……」
 ようやく無慈悲なバケツにより失われた平衡感覚が戻ってきたサイズが、そう悪態をつく。
 無慈悲なバケツ。
 上からバケツが降ってきて犠牲者の頭に被せられるという罠だが……バケツには打撃システムが組み込まれており、犠牲者はしばらく平衡感覚に加え視界や耳も使い物にならなくなる罠であり、サイズはそれを見事に受ける羽目になった。
 バッドステータスでも何でもない、不可思議な力まで使った嫌がらせだが、これが実に効く。
 いや、バッドステータスではないからこそ……だろうか。
 上下左右も分からず耳がキーンとして何も聞こえず、視界がグルグルと回る。
 そんな状況ではサイズは飛ぶことすら出来ず、その場に座っている……のも辛くて倒れているしかできなかった。
 あのバケツなんか使えそうだな……改造、修理、鍛冶、工業技術スキルを使って、打撃システムの発動条件変えられないかな? 魔法の操作で発動じゃなくて、頭に被せたら自動発動とかに出来ればこっちが使えたり出来そうだが……出来るなら、改造してボスに被せてやる、と。
 そう考えていたサイズだったが、サイズを徹底的にダメな感じにしたバケツはそのまま役目を終えたら消え去ったのだ。
 しかしおかげで発動条件を知ることは出来ていた。
「やー……やっぱりダメっすね。次は遠慮せず庇うっすよ」
「頼む……」
 苦笑するレッドにサイズはそう答える。
 ある意味で余裕が出来たからこそ実行可能なことではあるが、無慈悲なバケツが殺傷力ゼロの罠だからというのもあった。
 流石にランスやスタンジェイルに引っかかってみる事は出来ないが、バケツに関しては発動条件がかなりシビアなので「1度試しに引っかかってみる」というのは今後の為に役に立つことだった。
 そう、レッドは罠の解除に動く仲間を守りにいつでも庇えるように身構えており、それは何度かイーリンやサイズを救っていた。
「不意に罠が発動したら突き飛ばしてでも守るっす。ボク? 粘り強いっすから早々くたばりはしないっすよ!」
 そんなことを言っていたレッドの有言実行だが……いざとなれば鉄帝式解決方法……もといアイゼン・シュテルンで無茶を通す気でもいた。
「それにしても、これは……」
 イーリンは、壁にかかっている肖像画に視線を向ける。
 中部屋くらいの規模の部屋にかかっているのは無数の肖像画。
「代々の館の主……というわけかしらね?」
 男もいれば女もいる。
 年齢も様々で、あの館の主のように仮面を被っている者……全身鎧の肖像画すらある。
 勿論、あの「館の主」の肖像画も……やはり鉄仮面を被っているが、存在している。
 だが、名前のプレート部分が擦れていて読めない。
 恐らくは順番に並んでいるだろう肖像画だが……1階に比べると2階は捕獲系の罠が多いように感じられた。
 この絵のような装飾品も多いから、その影響だろうか?
 おはぎを食べながら、イーリンはそんなことを考える。
 ……ちなみにこんな気味の悪い部屋でなくとも食堂も2階にはあったのだが、骸骨が幾つも着席している場所で並んで何かを食べる程イーリンたちは悪趣味ではなかった。
「けど、やっぱり時間かかるっすね……大分マッピングは出来てきたっすけど」
「ええ、そうね。分霊の撃破報告も出揃ってきた……そろそろ集合する段階よ」
 メリッサたちと同行しているペリカも無事であるようだし、分霊も相当数を撃破した。
 そろそろ一気に決める頃だろう。
 だからこそB班もC班も、この場所に向かっていた。
「やっぱりC班が安置室を見つけてくれたのは大きかったですね……!」
「う、うむ……」
「この階層の突破も近いだわさ!」
「そう、じゃのう……うむ……」
 メリッサとペリカに安定の挙動不審のオウェードだが、気を抜いてはいない。
 それが分かるからこそゼフィラも苦笑するに留めていて。
 そんなB班の面子とは別の方向からC班の面々もA班との集合場所に向かっていた。
「やっとだ、な。随分と長くかかった気もする、な」
「ええ。途中で休憩を挟んだのは正解でしたね。おかげで気を張っていられました」
 エクスマリアにリフィヌディオルもそう頷く。
 罠の対処にハウンドドッグや館の主、その分霊の襲撃……どれも精神をゴリゴリと削られるものばかりだった。
 A班同様にC班も2階の探索を中心にやっていたが、1階はほぼ完全に「侵入者を罠に仕掛ける」階層なのだと理解できてもいた。
 やはり1階から探索し2階に上がるという「基本」を逆手にとっているのかもしれない。
 2階の装飾品の多さもその考察を補強していたが……。
「それを加味しても此処は趣味が悪いってオイラは思うなあ……」
「それは否定できない、な」
 アクセルの呟きにエクスマリアも同意する。
 食堂の椅子に座っていた骸骨も含め……あまり、かなり、相当……館の主は趣味が悪い。
 まあ、トラップハウスの主人にそういったセンスを期待するのは無茶だろうし。
「あとクレーンはほんと怖かった……」
 飛翔しているアクセルでも、天井からの罠や壁からの罠は引っかかってしまえば逃げるのは難しい。
 天井に突如現れ襲い掛かってくる2本の爪を伸ばすクレーンは、下手するとトラウマレベルだ。
 そうして合流しようとしたアクセルたちだが、戦いの音に驚き走る。
 ファミリアーで確認するまでもない。集合地点付近でハウンドドッグの群れが現れ、B班相手に、そして迎撃に出てきたA班相手に戦っていたのだ。
 その原因は、1つしかない。
「……なるほど、確かに時間はそちらの味方だ。私の分霊たちもすでに倒れ、この身は不死ではなくなった」
「ええ、そうね。それで鉄仮面。そろそろ名前の1つでも聞かせてもらえるのかしら?」
 壁を通り抜け現れた鉄仮面……館の主は、そんなイーリンの問いに含み笑いを漏らす。
「賢き者よ。だがそれ故に前提を見落としている」
 集まってくるハウンドドッグ達に号令をかけるかのように、館の主は手をあげる。
「……私はこの永劫回帰の告死館の主。それ以外のモノが何か必要かね?」
 館の主という「それ」自体が自分を示す記号なのだと、館の主はそう語る。
 そしてそれは1つの真実なのだろう。
 その顔を覆い隠す鉄仮面は、それ以外の全てを捨てた証のようにすら見えた。
「ならばもはや是非はなしっす!」
「どんな罠にも限界はある……見事な罠を仕掛けても最後に頼るのは自分自身じゃ……」
「然り」
 レッドとオウェードに、館の主はそう答える。
「故に、今から物量をもってして最後の持て成しをしよう。どちらが死すとも、この宴は終わる。さあ、始めよう……!」
 なるほど、館の主自体は戦闘力を然程持たずともハウンドドッグ達の数で圧し潰すことは可能なのだろう。
 だが、負けるつもりは微塵もない。
「寄って集るなら一網打尽としよう」
 エクスマリアが娃染暁神狩銀の氷雪の如く美しくも冷たい刀身を煌かせて。
 そうして、第29階層での……最後の戦いが始まった。

●そして、30階層へ
 唯一開かなかった1階の最奥の部屋に、鍵を持ったエクスマリアが立っている。
 この部屋にも罠は仕掛けてあったが、すでに解除……あるいは発動済だ。
(叡智の極みにして悪意の海。全て溺れさせる最後の罠があるならば館丸々の崩壊、水攻めも有り得ると思ったが……)
 ひとまず、それは無さそうだ。
(あの仮面は、更なる深淵とは言ったが、次の階層とは言わなかった、な。その程度は想定して然るべき、か?)
 罠で散々苦労させられたせいかエクスマリアが疑心暗鬼になっていたが、それはエクスマリアだけではない。
「頑張って本物の館の主を倒して1階の奥に鍵のかかった部屋。普通なら、そこにあるのも間違いなく「罠」でしょうね。私が館の主ならば絶対に仕掛けますよ」
 リフィヌディオルもそう疑ってしまうが、流石にそれはないと分かっている。
 此処が「告死館」であるが故に忘れがちだが、此処もまた果ての迷宮の一部なのだ。
 だからこそ「他」には無かったソレがあるのは、間違いなくこの扉の先で。
 そう分かっていてもなお疑いたくなるのが、この告死館という場所であった。
「早く開けるだわさ!」
 ペリカにそう急かされて、エクスマリアは鍵を差し込みドアを開ける。
 そこには当然罠は無くて。
「次は30階層か。今回も厄介じゃったが……流石に怪竜騒動程じゃないのう……」
 そんな事を言うオウェードに全員が笑って。
 今通ってきた扉の向こう側に現れた気配に、全員が振り向く。
「では、今宵の宴はこれまで……どうぞまたのお越しを」
 閉められた扉を慌てて開けても、そこには何もいなくて。
 ただ、外からの雷鳴の音だけが響いていた。

成否

成功

MVP

イーリン・ジョーンズ(p3p000854)
天才になれなかった女

状態異常

なし

あとがき

ご参加ありがとうございました。
素晴らしい罠対策でした。流石です……!

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