PandoraPartyProject

シナリオ詳細

老小鬼と長耳乙女

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 ――キドー・ルンペルシュティルツは作家にして元傭兵だ。
 彼の執筆する物語は彼自身の経験や、或いは周囲から得た見聞などを題材とされる事もある。ただし別段ノンフィクションと言う訳ではなく、ある程度の『盛り』はいれるものだが。

「大概な、リアルだけを追求した話なんてのは――つまらねぇ事が多いんだよ。話に山も谷もねぇ事なんざザラだ。まぁそれが悪りぃとは言わねぇ……現実に生きている連中の人生が毎日御伽噺みてぇじゃねぇ事に文句なんざ誰が言うよ」

 故に。彼は信義……と言う程のものでもないが、彼は物語を紡ぐ際は面白さを重視する。
 大筋や結末を完全に変える訳ではないがエンタメ重視という訳だ――例え真実でも誰にも読まれない物語では意味が無いし、生きてく為には金も欲しい。ついでに『面白い』という便りも届けば言う事無しだしな、と。
「……ってな訳でよ、今回も一つ頼みてぇ。
 今回は『レナヴィスカ』の頭領に取材を持ちかけに行くんだ――護衛を頼むぜ」
「おいおいおい前はハウザーの所にも行ったよな?」
「一回で終わりっつたか?」
 口端を上げるキドーへと言葉を放ったのはクシィ(p3x000244)だ――
 次の本を書くためのネタ探しの為に、砂嵐各地の傭兵団に取材を行うのがキドーの目的らしい。まぁ聞いた上で弄りようがないと思えばお蔵入りになるかもしれぬが……とにかくネタは多くて損はない、と。だからこそ次に狙い定めたのは傭兵団『レナヴィスカ』
 長は現実同様にイルナス・フィンス。
 幻想種が多い、かの団体にか――
「まぁハウザーの所よりは血の気もすくねぇだろうよ。多分な」
「確証は無く、厄災訪れる事もありけり、か」
「どっちでもいいじゃねぇか! その時はその時って奴だよなぁ!」
 同時。ウーティス(p3x009093)やトモコ・ザ・バーバリアン(p3x008321)のキドーの後に続くものだ。イレギュラーズ達がキドーから受けた依頼は――いざという時の護衛の為。
 砂嵐に属する者達は傭兵と言うよりも盗賊に近い性質を抱いているが故に。まぁ『レナヴィスカ』はその中でも比較的穏健派だとは思われるが……しかし、万一がないとは限らぬものであるが故に。
「で? 今どこに向かってんだ? なんかオアシスからは離れてねぇか?」
「おおよく気付いたな――実はな、レナヴィスカは今少し離れた所で仕事をしてるんだそうだ。様子を見ながらその終わり際に飛び込んでみようと思ってな」
「……むっ? 話は通しているのでは?」
「いや実はなぁ。話は持ち込んだんだが……忙しくて時間が取れねぇそうだ」
 だから急遽レナヴィスカの懐に飛び込んでみようと閃いたのだと――ウーティスへと言をキドーは紡ぐものだ。いや待て、それは遠回しに断られた形なのでは? 大丈夫なのかそんな場所へと赴いて? というか仕事の終わり際とか警戒でピリピリしてるのでは?
 一抹の不安を抱えつつも歩を進めたのは、砂漠の中に存在する廃砦。
 なんでもここに大量の魔物が巣食っていたらしく、イルナス率いるレナヴィスカが討伐に来ているのだとか……おお。確かに見てみれば砦の入り口に、幻想種らしき耳の長い連中がい――て?

「ぐあ――ッ! くそ、こいつら堅いぞ! 散開しろ!! 遠巻きに倒すんだ!!」
「もうすぐイルナスさんが来る……それまで耐え忍ぶんだ!!」

 と、思っていれば何やら様子がおかしい。
 廃砦の入り口付近でどうやら――戦闘が行われている様だ。
 ……微かに聞こえた言から察するに、長であるイルナスが辿り着く前に魔物が気付いたかミスがあったのか戦闘が始まってしまったのだろう。レナヴィスカの傭兵達は奮戦しているようだが、数の違いからか押されている様である……
 見据えれば相手は巨大なサソリ。
 堅き外皮に阻まれ弓矢が通りにくく、幻想種が中心のレナヴィスカとは相性が悪いか――?
「おいおい――こりゃレナヴィスカに借りを作るチャンスになりそうだなぁ」
 が。その光景を見て再びキドーは口端を釣り上げる。
 ……イルナスは流れ者の幻想種を束ねる存在であり、自身の部下達を守る義務があると常々心に刻んでいる人物なのだそうだ。そんな彼女に部下を助けたという『借り』を作れば――取材の時間をぶち込めそうだと。
 魔物の数が多くても、やがてイルナス本人も来るのであれば勝機も十分あると見える。ならば。
「おもしれぇ……荒事だったら任せろってんだ! いくかッ!!」
 トモコは意気揚々とするものだ。
 さぁこのクエスト――見事果たしてみせようかと。

GMコメント

 リクエスト有難う御座います! それでは詳細です!

●依頼達成条件
 イルナスから武勇伝を聞く事……の為に、苦戦しているレナヴィスカを援護し、借りを作りましょう!

●フィールド
 砂嵐の首都ネフェルストから少し離れた砂漠地帯に存在する、廃砦です。
 あちこちの壁に亀裂や穴が開いており砦としての機能は失われています。ただ、一部残っている壁などを障害物として機能させる事は一応可能でしょう。なお、内部から大量の魔物が湧きだしているようですので注意してください。

●敵戦力
・魔物『アビシアス』×50体
 巨大な、サソリ型の魔物です。
 強靭な外皮により防御力が高く、その尾には強烈な『毒』があります。鋭い鋏角も存在し、近接戦闘には気を付ける必要があるでしょう――反面、範囲攻撃などの類は無く、あまり素早い存在でもない様です。
 砦の奥から大量に湧き出てきています。

●味方戦力
・レナヴィスカの傭兵達×20
 討伐依頼を受けていたようで、この廃砦へと赴いていたレナヴィスカの傭兵達です。幻想種を中心に構成されており、弓や炎の魔術を操るタイプが多い模様です。本来は長であるイルナスの到着を待ってから攻撃を開始するつもりだったようですが、何かの手違いか戦闘が勃発してしまいました。
 数に押されて苦戦中の様です。

●イルナス・フィンス
 レナヴィスカの団長です。廃砦に向かっている途中であり、シナリオ開始以降で途中から参戦してきます。(+彼女が引き連れてレナヴィスカの傭兵も10人ほど増えます)
 残酷な性格ではありませんが、冷静かつ仕事に忠実な人物です。他の傭兵団よりは比較的穏健派な人物だと目されています。

 ちなみに彼女の持つ武勇伝の一つには、かつて他傭兵との争いの際に捕らえられた同胞を救うために、単身で敵の本拠地へと潜入。大立ち回りを演じて見事同胞を救出したという話があるそうです。恐らくキドーさんはソレを求めているのだと思われます。

●キドー・ルンペルシュティルツ(味方NPC)
 今回の依頼人です。
 元傭兵で現作家の人物……ですが、過去の傷もあり戦闘には参加しません。
「これも『護衛』の一環って事でな――頼んだぜ」

※重要な備考『デスカウント』
 R.O.Oシナリオにおいては『死亡』判定が容易に行われます。
『死亡』した場合もキャラクターはロストせず、アバターのステータスシートに『デスカウント』が追加される形となります。

※サクラメント
 フィールドから少し離れた場所にサクラメントがあります。
 なので、万一死亡しても比較的すぐに復帰出来る事でしょう。

  • 老小鬼と長耳乙女完了
  • GM名茶零四
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2022年02月28日 22時06分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費150RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

クシィ(p3x000244)
大鴉を追うもの
※参加確定済み※
ハルツフィーネ(p3x001701)
闘神
トモコ・ザ・バーバリアン(p3x008321)
蛮族女帝
※参加確定済み※
エイラ(p3x008595)
水底に揺蕩う月の花
黒子(p3x008597)
書類作業缶詰用
イズル(p3x008599)
夜告鳥の幻影
ウーティス(p3x009093)
無名騎士
※参加確定済み※
ルージュ(p3x009532)
絶対妹黙示録

リプレイ


 どさくさ紛れに押しかけて。貸しを売りつけ高く買い取る――
 そんなアポ無し取材ねじ込もうとしてやがるぞこのジジイ!?
「えっ!? 俺こうなの!!? マジで!!? なんかバグってない!? ……と。違う違うこっちでの俺は恋する乙女傭兵のクシィちゃん……かわいい高身長褐色筋肉質三白眼そばかすギザ歯乙女邪妖精……コールボ♡」
「やーれやれ、またキドー爺さんの依頼か。
 なんつーかこっちではすっかり馴染みの相手になったな」
「おう。今回もよろしく頼むぜ――俺は一歩退いて眺めてるからよ」
 本当にコレ俺のコピーなのか……!? ハウザーの時も『そう』だったが、このじいさん度胸があるというか、憎たらしい程ふてぶてしいというか……『大鴉を追うもの』クシィ(p3x000244)の心中には様々な思いが湧き出てくるものだ――
 ま、それはさておいてもクエストだと『蛮族女帝』トモコ・ザ・バーバリアン(p3x008321)は意気込むものである。アタシはこれでもゲームはしっかり遊ぶ方でね――
「手は抜かねぇぜ」
 口端吊り上げ闘志高々に。さてひとまずは状況を見据えてみれば――おうおうでけぇサソリがひぃふぅみぃの……50体。対して襲われてる団員は20名、と。中々面白い状況ではないか。
 助けるだけならば今すぐにでも真正面から乱入すればよい――が。
「オーダー受諾ぅ。重要なのは恩を売りつつ、武勇伝の再来、だよねぇ」
「つまりは――ええ。『そういう流れ』に持っていく事こそが肝要でしょう」
 それよりもキドーのオーダーを果たすならば『水底に揺蕩う月の花』エイラ(p3x008595)や『書類作業缶詰用』黒子(p3x008597)が思案している通り――イルナスの武勇を見せつけてやれる様な場を整えればいいのではないかと。
「今回はイルナスのねーちゃんから武勇伝を聞く事が目的なんだよな?
 だったら、おれ達が割り込んでよ、無双して終わらすのも違うと思うんだ」
「ふむ……成程。取材を前提とした戦い方か。
 ならばそれ相応の戦いがあるのも事実だね――」
 更にはその動きに同意するのは『絶対妹黙示録』ルージュ(p3x009532)もだ。無論、手を抜くという訳ではない――全力で援護をして犠牲無しの大団円。それが大前提ではあるが、と。
 さすれば『夜告鳥の幻影』イズル(p3x008599)も立ち回りの配慮にだけ気を付ける様に思案しながら動き始めるものだ。つまり傭兵達を守りながら上手くイルナスのお膳立てをするという事――
「そういうのはぁエイラぁ得意だよぉ?」
 だって。

「エイラぁとっても硬い――クラゲさんだからねぇ?」

 故、なら、ば。
 往こう。くらげ型の火の玉をエイラは飛ばして、介入。
 それは傭兵達に襲い掛かっているサソリ達を減らす為だ――次いで黒子も友軍たる傭兵らの行動を高速で計測するものだ。敵の攻勢が苛烈なのはどこか――死傷者が発生する様な場所がないか――
 更にはルージュやイズルもだ。
 超速に到達せしめるルージュは一手で幾度もの攻撃へと至り。
 イズルの揺り篭が如き意志の発露が身に宿れば――続けて敵陣の中枢を薙ぎ払う様に。
「苦境に立ち向かうレヴィナスカの者よ、助太刀に参った。
 さあ、悪辣なる蠍の群れよ! 我々が相手になろうっ!」
 さすれば続けざま『無名騎士』ウーティス(p3x009093)が名乗り上げる様に周囲を鼓舞。
 窮地に駆けつけ彼らを奮い立たせようではないか――その鼓舞に偽りはない。NPCであれど、こちらの世界で暮らしている者を無為に死なせる道理があろうかと、彼は思考して。
「やれやれ、断られても飛び込み取材とはまた……
 この位アグレッシブでないとやっていけないのでしょうか」
 そして戦場に最後の一人――『闘神』ハルツフィーネ(p3x001701)も到来する。
 クマさんを操作し、彼女が位置するはキドーの近くへと、だ。
 いざとなれば壁となって護る事も出来る位置を維持しながら、サソリへの攻撃も忘れない。神速の熊爪がサソリらの群れの中を襲いて、その身を砕かんとする――
「ところでキドーさん、クマさんの取材は如何ですか?
 今なら私がたっぷり愛らしさと造形の素晴らしさを語りますが」
「ん、クマさんかい? いいねぇ――その内取材させてもらうとしようかい」
 さすればキドーは、子供向けに良さそうだと笑みを向けるもの。
 尤も。クマさん大好きハルツフィーネに語らせれば、どれ程の時間で済むかは知れぬが……
 まぁとにかく今は武勇伝の為の戦いを――続けるとしようか。


「まさか団長以外の味方が来てくれるとはな……だが助かった、感謝する!」
「ああ。こちらの方は任せよ――今は耐え、好機を待つのだ」
 ウーティスは合流した傭兵の者と直接言を交わしながらサソリへと相対。
 ――団長殿の雄姿を小鬼老に見せねばならぬとは、中々難しい。
 団員を守りつつ、持久戦を行う形……成程、騎士の戦いとしては宜しくないが。
「――しかし。腕試しには、丁度良い」
 これもまた騎士としての試練の一つかと。
 サソリの強靭なる爪が振るわれれば、漆黒の盾を割りこませ軌道を逸らすものだ。さすれば。
「ったく! こんな状況で目を輝かせるたぁ、とんだ依頼主様だぜ……!」
 トモコも往く。あー、全く。爺さんが露骨に期待した目で見てやがるな。
 噂の武勇伝が見たくて堪らねぇって顔してやがる。そんなに好きかね、そういう展開!
「しゃあねぇ、やるだけやってみるか。オーダーってのは果たすもんだからなぁ!」
「然らば私は右から回り込みましょう――敵を引きはがし、戦線の意地に努めます」
 トモコや黒子も耐久戦の為に動き続けるものである。
 トモコが狙い定めるは眼前のサソリ一体――元よりそれなり以上に数が多ければ、己らだけで確実に殲滅出来るか分からぬが。どうせ『そう』であるのならば楽をさせてもらおうではないかと。
 サソリの振るう一閃を逸らし凌ぐ、防御の戦いをトモコは見せるものだ。
 そして黒子もまた回復の支援と敵戦線の攪乱を主に。
 引き寄せ引きはがし敵の体制を乱すのだ。
「さぁ〜て、ヒーロー……いやヒロインが遅れてやってくるまで時間稼ぎついでに幻創種連中を守ってやるか。はーったく、これもあのジジィ(俺)の所為だぞ、ったくっ!!」
 更に続けてクシィも参戦。乙女のメンタル身に纏い、心も体も乗り越えれば万全だ。
 どうにもこうにもあのエルフ達は遠距離主体のようだし――と。
「オラァ! 先に倒れんなよこのハイエルフ! 俺が前に出てやるんだからなァ!!」
 故に彼らの本領を発揮させてやるために前へと往くのだ。
 サソリ共の攻撃が降り注いでくる――故に捌きてナイフを一閃。
 右から更にサソリの尾が至れば跳躍して躱す。
 そして投じるナイフが目を抉りて、更に二閃。
 縦横無尽に動きまわりて立ち回ろう――目開いてクシィちゃん見てろよオラこのサソリ野郎!
「ふぅ。さてさて……なるべく不義理にならない様に立ち回らないと、ね」
「幸いって言うか、相手はこっち纏めて攻撃してくる系は無いっぽいしなー。おれ達が最前衛を受け持てば集中攻撃を受けて倒れる事も無いだろうし。傭兵のにーちゃん達は一匹ずつ集中攻撃して敵の数を減らしてくれよな!! 頼んだぜ!!」
「お、おぉ! 任せておけ!!」
 更にイズルとルージュも動くものだ。イズルもルージュも味方へと治癒の術を齎すもの――特にルージュは傭兵達へ『愛の力』とも言うべきルージュ・アタックをばらまき続けるものである。
 その治癒能力は正に驚嘆に値する程の力。
 体力も活力も満たせば常に全員が全力で戦えるにも等しいのだ――
 サソリは堅い。だからどうした?
 奴らよりも治癒し続ければ誰も倒れる事はないのだとばかりに。
『――――!!』
「わぁ。サソリさん達、ちょーと焦ってるのかなぁ?
 こうなってくると砦っていう地形が邪魔だしねぇ」
 さすればサソリ達が攻めあぐねて焦り始めているのをエイラが感じていた。
 如何に廃墟の砦と言えど、幾らか残っている壁などがあり、此処は攻めるには多少面倒な地形と言えただろう……が。事イレギュラーズ達が逆に時間稼ぎを目的とし、奴らを足止めするのであれば、サソリは大群の構成を活かせぬ形となる。
 狙い通りの展開と言えた――そしてダメ押しとばかりに放つのは痺れるクラゲだ。
 ちくっとびりっと。触るな危険。
 傭兵達を庇う様に彼らの周囲に展開されれば――サソリが触れる度に電流走りて。
「どうかな、可愛いよね~もっとたくさんいるから、可愛がってあげてね?」
「ふぅーむ……しかし、クマさんを主役にするお話では、やはりサソリでは力不足でしょうか……? 彼らの外皮といえどクマさんの爪には敵わないのです。どう思います? キドーさん」
「そうさなぁ――とりあえず、クマとサソリじゃ厳つい図になりそうだぜ」
 そして続くのはハルツフィーネ。混乱していないサソリを狙いて爪の撃を一閃するものだ。
 さすればその一撃、正しく強力無比。
 サソリの身すら粉砕せんばかりの勢いだ――困った。これでは相手役としての力不足感が否めない。これではキドーさんの本に登場させることができないではないか……
 まぁ、だが、しかし。
 かくしてイレギュラーズ達の参戦もあり場の状況は整いつつあった。
 未だサソリの数は多いが故に。油断は出来ない――
 という、絶好のタイミングで。

「――放て」

 後方より、矢の雨が降り注いだ。
 それはイレギュラーズと共に戦っていた者達から、ではなく。
「おお。来やがったな――遂によ」
 レナヴィスカ団長。
 イルナスが引き連れてきた――本隊からの援護射撃であった。


 イルナス・フィンス。
 幻想種が中心に構成されているレナヴィスカを率いる者――
「おっ、イルナスのねーちゃーん!! おーいこっちだぜこっちー!!
 傭兵団の皆は大丈夫だぜ!! まだ敵は多いから後は蹴散らしてくれよな!!」
「……成程。事態はおおよそ把握できました――
 どうやら救援して頂けていたようですね。感謝申し上げます」
 その姿を確認したルージュは、引き続き場の意地をしながらイルナスへと言を。
 思いっきり手を振って己らの存在も誇示すれば、イルナスの事だ。イレギュラーズ達が味方であり、先行していた傭兵団の危機を救ってくれていた者達だと分かるだろう――尤も、その思惑の中にキドーの『ネタの為』が含まれているとは流石に思っていないだろうが。
「ではここからは真打ちに暴れてもらいましょう……もっと近くで見られますか?」
「おおそうだな! 折角だ、もう少しばかり近くで見させてもらうとしようかね」
「では。行きましょうか」
 さすれば、ハルツィーネが念のためにとキドーへ確認を取り。
 イルナスの進撃に伴って――些か距離を詰めるものである。

 武勇伝は間近で見てこそ意味があるのだから。

「では。参ります」
 往く。イルナスが先陣を切り、その弓矢を放つものだ。
 ――その一撃は正に絶技。
 弦を鳴らし。指先より解き放ったソレは空を裂くように彼方へと飛来する――
 着弾。さすれば、サソリの外皮をそのまま打ち破りて心の臓すら抉り取り。
 ――次なる瞬間にはもう既に次弾の矢が装填されていて。
「ほほーはええな! これが部下想いの団長サンの勇姿ってやつかよ!!」
 次いでその姿を見据えればトモコの気迫もまた挙がるものだ。
 これは負けてはいられないと――防御を貫く一撃にて己もサソリを仕留めよう。
 どれだけ堅かろうと確実に敵を殴れる一閃にて……!
「わぁ~イルナスさんだ。救援のためとはいえぇお仕事に割り込んじゃってごめんねぇ」
「いえ。むしろこちらが感謝すべき所でしょう――
 場合によっては、私は部下を失っていたかもしれないのですから」
 さすれば、イルナスへと言の葉を投げたのはエイラだ。
 挨拶は大事だと。事後承諾だけれども大丈夫だったかなと――
 しかしイルナスはむしろイレギュラーズに感謝する程であった。
 流石はトモコが言った様に部下想いの人、と言う事だろうか。
 砂嵐の中でも比較的マトモだと思われるだけの事はある――
「庇護こそ我が努め、討滅こそ我が誓い。今こそ終幕の時へと相まみえん」
「ふむ……かの御人が到着した以上は、後は勝利を手繰り寄せるだけしょうね」
 そしてレナヴィスカ本隊到着に伴う指揮の上昇を感じたウーティスは全霊を投じるものだ。
 騎士の宣誓。誓いにより、己が身に聖なる力を齎せば。
 冷たく厳しい風を纏うが如き一閃にて――戦場を穿とう。
 多くを巻き込み駆け抜けて。開いた穴へと矢が投じられればサソリには混乱が生じるものだ。故にその間隙を黒子も見逃さぬ。突入路の確保と意地を努めんと、渦中へ己が撃を投じ、優位性を確立せんとするのだ――
 趨勢をこのまま自軍へと。敵に二度と立て直す暇など与えぬが肝要。
「はーこりゃ決着付いたな……連中がどんどんすり減ってくぞ。
 まぁ数も大体拮抗してくればこうなるのかもしれねぇけどよ……」
 そして。場の流れが完全にイレギュラーズと傭兵団が掌握していた事をクシィは感じていた。
 件のイルナスは最前線にて激闘を続けている。
 至近ですら腕の衰えを見せぬ弓の使い手は、可憐にして美しい――ああ。なんだかキドーの爺さんの眼も輝いている様に見えるぞ……ネタが思いついたな……?
「ま、恩を売るときってのは負い目を感じさせ過ぎない程度がいいんだよな」
 おんぶに抱っこより、いい具合に向こうも活躍させて。
 でも俺らが居なければこうはならなかっただろう……って思わせるぐらいがいいのよ。
 特によ。同胞意識が強いイルナスにはこういうの、効くんじゃねの――じいさんよ。

「――これで、幕です」

 そして気付けばサソリも最後の一体。
 一際大きな個体であり、激しき抵抗を見せていたが――
 しかし。大きな口を開けたと同時に投じられたイルナスの矢が一直線に貫いた。
 その矢は正に全霊の一撃であったのか貫いて尚勢いを保っており。
 ――遥か後方。砦の壁すら――穿ちて砕くほどであった。
「お見事。これにて魔物は終わりかな?
 ……ところで、レナヴィスカのお仕事はこの廃砦の調査なのかな?」
「――ふむ。同胞を助けて頂いた貴方達であれば、お答えしましょう。
 調査の依頼自体は受けてはいません。討伐の依頼のみ、です。
 ……ただ。我々の想像以上の数が潜んでいたのは確かな様ですが」
「だろうね。こんなにぎゅうぎゅう詰めになるほど魔物がいるなんて、ちょっと気になってしまってね――もしもまだ残存がいないか調べるつもりなら、同行させてもらってもいいかな?」
 ええ勿論――と。イルナスは言を紡いできたイズルへと返答するものだ。
 こういうものを呼び寄せる何かがあれば大変だし、今の内に調査をしておくべきだと……イルナスも不審には思っていた様で、これから依頼ではないが調べるつもりのようだ。
「――失礼。イルナス殿、一つお尋ねさせて頂きたい」
 と、その時。
 語り掛けるのはウーティスだ。名高きイルナス・フィンスの戦いをこの目で見るとは、心躍るものであった……そして。事が片付いた暁にはどうしても問いたい事があり。
「貴殿にとって、団員とは、何か」
「――守るべき同胞です」
 部下や、仲間と言った枠組みを超えた存在。
 レナヴィスカは『はぐれ』をも内包しているのだから――と。
 イルナスは、ハッキリと。ウーティスを見据えて応えるものだ……
「うおー! イルナスのねーちゃん、凄かったなー!
 なぁなぁ今回も凄かったけど、仲間を助けに行ったエピソードがあるんだよな?
 なぁ、ねーちゃん。そん時の話を聞かせてくれよ。どんなだったんだー?」
「……ええと。あまり自分の事を話すのは、その、気恥ずかしい所ですが」
「減るもんじゃねーしいいだろー? なぁなぁなぁ!」
 と。ルージュが過去の武勇伝の話も聞きたくてせがめば――イルナスは気恥ずかしい様で、些か動揺を見せるものであった。『ここではなんですので、ネフェルストに戻ったら話しますね――』と答えれば、今度はキドーの眼も輝くものである……じいさん自重しろい!
「……そーいや幻創種ならじいさんの現役時代を知ってそうだよな。
 ねーねーあのじいさんの昔って知ってるか? どんなだった?」
「んっ? ああ――キドーさんの事ですか?」
 そして最後にクシィは聞いてみるものだ。
 ハウザーは話に聞いただけみたいだけれども。
 幻想種として長き時を生きるイルナスならば――昔を知っているのではないかと。
「そうですね……確か、昔はこう呼ばれてもいましたよ。」
 今でこそ老小鬼と呼ばれているが。
 昔は一時期――修羅鬼などと呼ばれる程に苛烈な時代もあったのだと。

成否

成功

MVP

ウーティス(p3x009093)
無名騎士

状態異常

なし

あとがき

 クエスト、お疲れさまでしたイレギュラーズ!
 これでキドーさんにはまだ新しい作品のネタが収容された事でしょう。

 ありがとうございました!

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