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シナリオ詳細

妖怪『君が見せる普段とは違う姿にドキッとするから、性格を変える温泉に浸からせて性格を変えさせるおじさん』と性格がおかしくなったイレギュラーズ

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●今回のあらすじ
「温泉に行かないか」
 と、ベルフラウ・ヴァン・ローゼンイスタフ (p3p007867)が言うので、なるほど、それもいいか、と仲間達は一秒で了承した。ベルフラウが言うのは、豊穣をぶらぶらしていた所、良い感じの温泉地のパンフレットをもらったというのである。
 さて、今回の被害者は――。
 ベルフラウ・ヴァン・ローゼンイスタフ
 仙狸厄狩 汰磨羈 (p3p002831)
 クラリーチェ・カヴァッツァ (p3p000236)
 伊達 千尋 (p3p007569)
 小金井・正純 (p3p008000)
 アーリア・スピリッツ (p3p004400)
 コルネリア=フライフォーゲル (p3p009315)
 ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ (p3p001837)
 以上八名でお送りします……いや、これリクシナだから、被害者って言うか自損事故みたいなものだよね! 洗井落雲に責任はなし、ヨシ!

 さて、温泉である。豊穣は山奥に存在する、人里離れたところに存在する名湯。ベルフラウ一行は、そんな温泉地へと向かっていた。到着した。速い。ここまでは何の障害もなく到着した。話が速い。助かる。
 さて、到着したのは温泉宿である。些か古びてはいたが、雰囲気は抜群の温泉である。豊穣という事もあって、こういうワビサビ的な雰囲気は非常に良い。さておき、イレギュラーズ達を迎えたのは、シワシワのおじさんであった。
「いらっしゃいませ、当宿の主人に御座います」
 しわしわおじさんに案内されて、旅館の部屋に案内される一行。確かに年季を感じるが、なかなか、掃除の行き届いた、居心地のいいお宿であった。
「早速だが、温泉を堪能したいものだ」
 と、ベルフラウが言うので、一行は一秒で了承した。ちなみに、今回は男性女性混合なので、描写面でのあれこれを考慮し、混浴で水着着用とします。
 温泉は露天風呂になっていて、よく手入れの行き届いた、山奥のボロ宿とは思えぬほどに豪華な露天風呂である。外は小高い丘になっているのだろう、見下ろす外の景色は、雪の白に覆われていて美しい。一行は日ごろの疲れをいやすために、その暖かな湯の中に身を沈めた。まさに滋養。体の芯からぽかぽかと温まるそれは、温泉の効能だろうか……心地よい……まさに天国……。
 一行が、その身体をすっかり温めたころ……一同は、妙な事に気づいた。
「うふふ、皆さん、とても良いお湯ですね。コルネリア、とっても幸せですぅ」
 コルネリア=フライフォーゲルが、なんか変なのである!!!!!!!!!!!!

●おじさんあらわる
「こ、コルネリアっサン!? 一体どうしたんすか!?」
 千尋が目をまん丸にして叫んだ。あらぁ、とコルネリアはほんわかとした笑顔を撃変えべながら、
「もう、急に大声出しちゃだめよ、ち・ひ・ろ・くん? おねえさん、困っちゃう」
 コルネリアがうふふ、と笑う。
「キャラが安定してねぇんすよ!」
 千尋が頭を抱える。が、これは変だ。本当に全く、おかしい。
「ど、どうしたの? 悪酔いでもしたのぉ?」
 アーリアがたまらず尋ねる。が、いくら悪酔いしてもこんなキッツいキャラにはなるまい。明らかに、おかしい。
「……なんだか、おかしいわ。むずむずする……というか、頭の中がくらくらするというか……」
 めまいを感じ、アーリアが頭に手をやる。おかしい。その感覚は、仲間達全員に伝播していた。
「ふふふ……効いてきたようですね……」
「誰ですか!?」
 突然の声に、正純が叫ぶ。同時、おきゃあ、みたいな声をあげて、温泉の入り口から飛び込んでくる影!
「貴方は……宿のおじさん!?」
 そう! 正純の言う通り! そこにいたのは、先ほど皆を案内した、宿のおじさんだった! だが、おじさんは先ほどまでの優しい見た目とは裏腹に、悪そうな笑みを浮かべる邪悪なおじさんになっていた!
「わしは……妖怪『君が見せる普段とは違う姿にドキッとするから、性格を変える温泉に浸からせて性格を変えさせるおじさん』……!」
「……ッ!!」
 クラリーチェが息をのんだ。
「すみません、もう一回お願いします……!」
 覚えきれなかったのだ!
「良かろう……妖怪『君が見せる普段とは違う姿にドキッとするから、性格を変える温泉に浸からせて性格を変えさせるおじさん』……!」
「……ありがとうございます!」
 クラリーチェ頭を下げた。おじさんがふぇふぇふぇ、と笑う!
「そちらのかっこいい感じのおなごよ……お主が街で手に入れたパンフレット……それはわしが化けてお主に手渡したものじゃ……」
「なんと……気づかなかった……!」
 ベルフラウが、くっ、ってした。本当に気づかなかったのだろうか。
「ここは、入ると性格が変わってしまう温泉……見たであろう、そこの32歳独身女が、中々きついキャラになったのを……!」
「もう、きついって言わないでください! コルネリア、泣いちゃいます!」
 コルネリアが叫んだ!
「キャラが安定しないのはどういうことだ!」
 汰磨羈が言うのへ、おじさんは頷いた。
「うむ……決め打ちしようと思ったが、でも皆がやりたい性格になった方が面白いかな、と思って、今遊びを持たせているところ……! プレイングは、なりたい自分の性格をかくが良い……!」
「なるほど……助かる……」
 汰磨羈がぐぬぬってした。
「とにかく、あの痛い32歳独身女を元に戻して下しさいまし!」
 ヴァレーリヤが殴り掛かる! そう、どんな変な妖怪であろうと、酒瓶で殴れば死ぬのだ! だが――!
「……消えた!?」
 酒瓶がジャストミートしようとした直前、おじさんの姿は掻き消えた!
「ふぇふぇふぇ……無駄じゃよ……わしはお前さん方が存分に性格の違う姿を見せなければ倒せん……そしてお前さん方も、すぐにそこの32歳独身女のように、性格が変わっていくじゃろうて……!」
「そんな……!」
 クラリーチェが32歳独身女に視線を向ける!
「どうしたの、クラリーちゃん、コルコルの顔に変なのついてるぅ?」
「キッツ!」
 クラリーチェが顔を覆った! 自分もああなるのか!? いや、なりたい性格はプレイング次第だ! 恨むならPLを恨め!
「ふぇふぇふぇ……お主等が、変わった性格になってキャッキャウフフする姿を楽しみにしておるぞ……」
 そう言いながら、おじさんが掻き消える! おお、なんと恐ろしい事か!
「ど、どうしたらいいのぉ!? わたし、無理よぉ! 現実でギャルとかやるの、無理よぉ!」
 アーリアがさめざめと泣いた。正純が青ざめた顔で頷く。
「確かに……どのような性格にされるかは、PLの掌の上……私達には、もはやどうすることも……」
 視線の先では、コルネリアがハートのついた手編みのマフラーを編んでいる!
「みらいのだーりんに、プレゼントするんだぁ♡」
「……こうなっては仕方がない」
 ベルフラウが言った。
「私も……正直、自我を保てる自身は全くない。ここは一つ、性格が変わることは受け止めなければならない……!」
「そ、そんな……」
 汰磨羈が戦慄した様子でわなないた。
「絶対……私はたぬきとかアライグマにされるぞ!?」
「諦めてくれ……ッ!」
 ベルフラウが苦しげに言った。
「だが……皆、性格が変わっても、これだけは忘れないでほしい。
 妖怪『君が見せる普段とは違う姿にドキッとするから、性格を変える温泉に浸からせて性格を変えさせるおじさん』を見つけてていやーってする……!
 いや、性格が変わった私達があれこれ騒動を起こせば、向こうから現れるはずだ。幸い、この旅館には、あると言えば大体の物はある……! それを利用し、敵を倒し、この依頼(デジタルタトゥー)の事を記憶の彼方に封印するんだ……!」
「試練、ですわね……!」
 ヴァレーリヤが、ごくり、とつばを飲みこんだ。
「……やるしかありませんわ! さようなら、皆さん。一秒後の私は、きっと今とは違う私。
 けど……きっと、約束します。性格が変わっても、皆さんの友達であると……!
 そして今日の酒代とかを、皆さんが払ってくれると……!」
「ヴァレーリヤさん……!」
 クラリーチェが「えぇ……」って顔をした。それはさておき、皆の意識が薄れ始めた。ああ、もうすぐ、違う自分になってしまうのだ。このまま、自分たちはどうなってしまうのか……。
 ど う な っ て し ま う の か ! ?

GMコメント

 お世話になっております。洗井落雲です。
 これはリクエストシナリオなので、僕は悪くないです。

●成功条件
 妖怪『君が見せる普段とは違う姿にドキッとするから、性格を変える温泉に浸からせて性格を変えさせるおじさん』を見つけだしてていやーってする。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

●状況
 豊穣の街で貰ったパンフレット。そこに記された、知る人ぞ知る名湯――。
 イレギュラーズ達は、球の休暇を利用して、温泉旅行に出かけます。
 罠にはまったな! だが、そこは妖怪『君が見せる普段とは違う姿にドキッとするから、性格を変える温泉に浸からせて性格を変えさせるおじさん』の経営する温泉だったのです! その温泉に浸かってしまった皆さんは、なんと恐ろしい事に、性格がいつもと変わってしまいます! このままではまずい。絶対に不味い! ですが、時すでに遅し。皆さんの意識は変貌し、いつもと違う性格へと変わってしまったのです……。
 ですが、このままにしては置けません。皆さんは、性格の変わった状態で温泉宿でキャッキャウフフとかいろいろして、おじさんをおびき寄せるのです! 性格の変わった皆さんが、普段とは違う姿を見せれば、おじさんはドキッとして現れるはずです! そこをていやー、だ!
 首尾よくおじさんをていやーできたら、みなさんも元の性格に戻ります。そうしたらこの依頼(デジタルタトゥー)のことは忘れて生きていきましょう。頑張れ。ファイト。

●エネミーデータ
 妖怪『君が見せる普段とは違う姿にドキッとするから、性格を変える温泉に浸からせて性格を変えさせるおじさん』
  でてきたらていやーってすれば倒せます。

 以上となります。
 では、相談は変わった後の性格で行ってください。どうなっても僕は責任をとりません。

  • 妖怪『君が見せる普段とは違う姿にドキッとするから、性格を変える温泉に浸からせて性格を変えさせるおじさん』と性格がおかしくなったイレギュラーズ完了
  • GM名洗井落雲
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2022年02月28日 22時07分
  • 参加人数8/8人
  • 相談8日
  • 参加費---RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

クラリーチェ・カヴァッツァ(p3p000236)
安寧を願う者
ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)
願いの星
仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)
陰陽式
アーリア・スピリッツ(p3p004400)
キールで乾杯
伊達 千尋(p3p007569)
Go To HeLL!
ベルフラウ・ヴァン・ローゼンイスタフ(p3p007867)
雷神
小金井・正純(p3p008000)
ただの女
コルネリア=フライフォーゲル(p3p009315)
慈悪の天秤

リプレイ

●今回のあらすじ
「温泉ですから眼鏡は置いて、と。あ、この水着に着替えるんですね」
(大丈夫。これは某同好会のお仕事じゃない。大惨事にははらな……)
 『永訣を奏で』クラリーチェ・カヴァッツァ(p3p000236)はそう呟く! だが、僅かな後に、それは思い違いであったことを思い知らされるのだ!
 そう、クラリーチェを始めとするメンバー、もう並べておくが、『祈りの先』ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)、『伝説の勇者妖精アライグマ』仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)、『キールで乾杯』アーリア・スピリッツ(p3p004400)、『Go To HeLL!』伊達 千尋(p3p007569)、『戦旗の乙女』ベルフラウ・ヴァン・ローゼンイスタフ(p3p007867)、『燻る微熱』小金井・正純(p3p008000)、『慈悪の天秤』コルネリア=フライフォーゲル(p3p009315)達は、豊穣の山奥の温泉へとレジャーに出かける! だが、そこは妖怪『君が以下略おじさん』の狩場であった。おじさんの策略により、性格が変わってしまう温泉に浸かってしまったイレギュラーズ達! いったいこれから、どうなっちゃうの~~~!?

●辺獄
「よーっし。温泉じっくり浸かる前に、ちゃーんと身体綺麗にしなきゃね」
 ぽん、と水着の身体を惜しげもなくさらすクラリーチェ。そこにいたのはいつものクラリーチェではない。
「そこのもふもふ尻尾、丁度いいからスポンジに借りていい? たぬ……じゃないやたまきちさん」
「たまきちじゃないぽん! アライグマだぽぉ~ん☆」
 たまきちが、洗面桶にめっちゃせっけんぶち込んでがっしがっし泡立てながら言う。ちなみに使っているお湯は温泉のお湯だ! そう、性格がおかしくなりきったたまきちは、もはや汰磨羈でもたまきちでもない! アライグマなのだ! というわけで以下アライグマと呼称していくので、検索するときは汰磨羈でもたまきちでもたぬきでもなくアライグマで検索してください。
「アライグマのしっぽをスポンジ代わりぽぉ~ん!? いいセンスだぽん! ウォッシュウォッシュ! するぽん!」
「うわーん、ママ! ヤバいのがいるよ! ヤバいアライグマはSDに一人いるだけで充分だよぉ~!」
 アライグマの奇行に、千尋くん(■4さいの男の子)がギャン泣きした。千尋……ちひろくんは元気な男の子。今日はパパとママと一緒に温泉に来たんだ! ママはいつも夜のお仕事に行ってて昼間はお酒飲んだり寝ていたりするし、パパはいつもぱちんこ? に行って、ひいきの球団が負けると灰皿投げつけてくるくらいに機嫌が悪くなるけど、今日はパパが万馬券を当てたから、家族みんなで旅行に来たの!
「ちひろ、ダメよ、ああいうのに近寄っちゃ……」
 アーリアママが、ちひろくんをぎゅっとした。アーリアママ、いいな、字面が……。
 彼女はアーリア・スピ……おっと、これは旧姓だった。彼女は小金井・アーリア。正純の妻である。
 正純は、アーリアの勤め先のスナックのお客さんで、ひょんなことからアーリアのアパートに転がり込んで来て同棲からあれよあれよと籍を入れたのだ。
「なんやあのキッツイバケモンは! 何がアライグマやこの害獣が! 尻尾ぶっちぎって役場に売ったろうか!?」
 正純パパが威嚇の声をあげる。
「だめよ、あなた! 今日はお酒飲まないって言ったじゃない!」
 ママがすがる様にいうのへ、パパは、おお、と頷く。
「はは、冗談や。そうやなぁ、今日は優しいオトンの日やったなぁ」
 パパがわはは、と笑う。
「パパ、今日はハマの球団勝ったんだもんね」
 ちひろくんの言葉に、パパは頷いた。
 そう、今日は楽しい小金井一家の日。パパは酒瓶で殴ってこないし、ママは睡眠薬をお酒で飲まない。ご飯だって、スーパーの弁当じゃなくて、今日は旅館のフルコースなんだ!
「よかったなぁ、きょうはたのしいなぁ」
 ちひろくんもニコニコです。
 が! ここで小金井一家にひびを入れる女が現れる!!!
「あらぁ、ちひろくん、久しぶりねぇ。お姉ちゃんよぉ? わかるぅ?」
 湯船につかってマフラーを編みながら、なんかキッツいキャラで言い出す女! そう! コルネリアだっ!
「えっ、おねえちゃん……?」
 ちひろくんが困惑した表情を見せる。お姉ちゃん、聞いたことがない。見たこともない。だって僕は、一人っ子の長男だから――。
「久しぶりぃ、パパ。今日は温泉旅行なのねぇ?」
 にこにこと、コルネリアがそういう! ママの顔が真っ青になった!
「……は?
 あんたがコルネリア? は? 娘? 冗談きついわ」
 すっ、とコルネリアの顔が真顔になる。たとえるならそう、オタサーの姫が敵対的な女と遭遇して、素が出てきた時のああいう感じである!
「あらぁ、パパぁ、ごめんねぇ? 今の奥さんも一緒だったのねぇ、ふふ、コルネリア、しっぱーい」
「パパ―ッ!? 今の奥さんってなぁにーっ!?」
 ちひろくんの悲鳴!
「まて、違うんや! ワイに前の奥さんとかおらん、おらん……おらんよな……なんかその辺記憶が曖昧っちゅうか、そもそもこの設定どこから生えてきたんや? まるで思い出せん……」
「ふざけないで! アナタ、もう私達だけって言ったじゃない! どうして、どうして他の女の影がいつもちらつくの!?」
「まて、待つんやアーリア! ホンマや、今はお前とちひろ、愛してるのは2人だけや!」
「今は、って言った!? 今は、って言ったわね!? ねえ正純答えてお願い私に悪い所があったら言って何でもするわお金ならパートも増やすし店にも復帰するしもう千尋にたぬきなんて拾わせないから!」
 ママは、パパの肩を掴んでがっくんがっくんします。パパは神妙な顔で、「いつんときの子やろ……大学んときの女のは認知しとらんしな……」とか言っています。
「うふふ、コルネリア、また失敗。いつも、こうして、サークルを壊しちゃうのよねー☆」
「そうなの? お姉ちゃん?」
 ちひろが尋ねるのへ、コルネリアが頷いた。
「そうなの。かつては中小企業で小悪魔経理としてイケメンにキュートアグレッション♡してたんだけど、小悪魔的に男を弄んでたら、女という女から嫉妬の目を向けられちゃったのよね♡
 それでぇ、まぁ、男の人もよらなくなってぇ、気づけば32……今更キャラ変も出来ず、ずるずる続けて、今では痛いお局様なんて言われてるわ……ふふ、笑っていいのよ♡」
「そんなことないよ! おねえちゃん、きれいだよ!」
 ちひろくんは純真なので、コルネリアを励ますのです。
「あら、ありがとう! コルネリアぁ、もう少しこのキャラで頑張ってみるわぁ♡」
「居るわよねぇ、職場に一人、ああいうキャラ」
 クラリーチェが、ちっ、と舌打ちしながらワンカップをあおった。
「アライグマ! 洗いが足りないわよ!」
「ウォッシュウォッシュ! まかせるぽーん! お前らみんな泡まみれだぽーん!」
 アライグマがクラリーチェの髪をごしごしする。
「お姉ちゃん、お酒はほどほどにね」
 ちひろくんがそういうのへ、クラリーチェはちっ、と舌打ち。
「これが飲まなきゃやってられないわよ! 何でただ温泉に来ただけなのに、こんな目にあうの……こんな目? こんな目って何……? うっ、頭が……」
 何かを思い出しそうなクラリーチェ。だが、アライグマがごしごし洗って、
「酒の飲み過ぎだぽーん! 頭洗ってさっぱりするぽーん!」
「あら、アライグマ気が利くじゃない。頼むわね」
 ごしごしするたびに、頭痛が消えていく。ので、何かを思い出しそうになったのも忘れることにした。
「大人は大変だなぁ」
 ちひろ君はうんうんと頷きます。
 そんなみんなの事を、脱衣所からおずおずと覗いてる一つ影。赤毛の女性が、びくびくした様子で、顔をのぞかせている。
「……うう、勇気を出して来てみましたが、他の方と一緒に入るのってやっぱりちょっと恥ずかしいです」
 そう顔を赤らめるのは、ヴァレーリヤ……え? 誰? ヴァレーリヤさん? 本当に?
「本当です! いくら水着とは言え、ひ、人前で肌を晒すなんて、はしたない!」
 きゃあ、とヴァレーリヤさんは両手を頬に当てて、頭を振った。マジで?
「ヴァレーリヤさんは何でそんな恥ずかしがってんの? だいじょーぶ取って食いやしないから!
 あー。あそこの痴情の縺れが怖い? ああいう大人になっちゃだめだよ?」
「うう、痴情の縺れ……なんと不正義な……いや、これは天義ですね。鉄帝だと……なんていうんだろ……背徳的? じゃあそれで……」
「何言ってるの? いいから早く来なさいって」
 クラリーチェがヴァレーリヤの手を引っ張る。わわわ、と慌てるヴァレーリヤをそのまま引っ張っていくと、半ば強引に湯船に引き込んだ。
「ほら、いいお湯よ」
「あ……そうですね……なんだか……大切な事を忘れているような……」
 ほう、と体の芯から温まっていく。何か忘れている……忘れてはいけないものを……だが、温泉の魔力にはあらがえない。
 イレギュラーズ一同は、少々のトラブルを抱えながらも、温泉を満喫していたのだ……。

●煉獄
「もー、やだぁ、髪が重くて洗えなーい! ベルフラウ、困惑♡ 誰か、洗ってよー☆」
 とか呟くベルフラウ。だが、その胸中では、
(……おかしい)
 困惑の中、呟いていた。さて、先ほどの章に、ベルフラウが登場していなかったのに気づいただろうか? そう、登場していない。何故ならベルフラウは【素面】であったからだ。
(……いや、温泉の効果で、性格がおかしくなるはずでは……?)
 ベルフラウが困惑する。どうしてこうなったのかも覚えている。仲間達のように、性格がおかしくなったせいで現在の状況を思い出せない……という事もない。
(……なぜだ……何故?
 相談の時からそうだ、何となく皆の調子に合わせてみたものの全く、これっぽっちも、変わる気配がない!!
 ひょっとしてあれか? 以前Hadesことクリストとの遊戯呪卍の際に自らドーピングで羞恥心をブーストして克服した結果、何らかの抗体ができてしまったと言う事か! くっ、なんたる誤算だ……これではただ温泉に浸かってコルネリアの振りをしているだけではないか!!)
 そういう事らしい。本人がそうやって言ってるのでそう言うことにしておこう。
「もー、アライグマぁ~ちゃんと洗ってよぉ~☆」
「まかせるぽーん! ウォッシュウォッシュ!」
 アライグマのウォッシュも、ベルフラウの記憶を飛ばすようなことはない。素面だ。どこまで行っても素面だ。
(どうすればいい? 私はどうすれば……!?)
 ベルフラウが困惑する。同時に、僅かな恐怖が、心の底から染み出してきた。壊れた世界の中で、ただ一人、正気。それが、どれほど恐ろしい事だろうか? 壊れているのは、自分であるのか、世界であるのか。それすらもわからなくなっていく。それすらも曖昧になっていく。
 正気とは何なのか。狂気とは何なのか。正常とは。異常とは。ぐるぐる、ぐるぐる、世界が回る。ベルフラウの心に、頭に、闇がしみ出す。
 どうすればいい? この場で、ベルフラウは、どうすればいい――?
(……こうなったら仕方ない……この状況を フ ル 活 用 す る し か あ る ま い ! )
 ベルフラウは開き直った! こほん、と咳払い一つ、キャラ変(?)する!
「ふふ、汰磨羈ちゃんの尻尾可愛い……(尻尾の付け根さわさわ」
 と、アライグマのしっぽをさわさわするベルフラウ!
「自慢のしっぽだぽーん! ふかふかだぽーん! ちゃんとアライグマだから縞模様に……なってない……? ちがう、私は……ねこ……いや……」
「アライグマ、いいんだよ、君はそのままで……」
「ぽーん!」
 茶番劇を始める! ベルフラウは状況に乗っかることにしたのだ!
「ねえ正純さん……? キスは浮気に入るのカナ?」
「え、何言うとるん自分……いや、いいとこの人っぽいし、金持ってそうやな……?」
「止めてよ正純! もう他の女に言い寄らないって約束したじゃない!」
「はは、アーリア……いや、アーリィって呼んでもいいかい?」
「いやよ!? というか、さっきまでコルネリアみたいなキャラしてなかった!?」
 地獄に落ちたなら、自分も地獄の住民となればよい。
 ベルフラウはこうして、狂乱の渦の中に、素面のまま突入していったのである!

●地獄
 地獄。まさに地獄。性格のおかしくなったイレギュラーズ達は、その与えられた役割をひたすらに演じ続ける。
 偽りの家庭を築く者。
 偽りの己を演じる者。
 素面なのに偽りを演じておいしい思いをする者。
 すべては偽り。
 だが……もしも、この偽りこそが正しいのだとしたら。
 普段の貴方たち自身が、偽りなのだとしたら。
 これこそが、正常な世界なのかもしれない。
 この異常こそが、正常であり――あなたは、異常であったのかもしれない――。
「怖い話風にまとめようとしないでよぉ」
 ちひろくんが虚空に向って言うのへ、クラリーチェがワインを飲みながら言う。
「どこに向かって話してんのよ? エアフレンド?」
「エルフのお姉ちゃん、お酒飲み過ぎじゃない?
 良くないよ、ママもパパも、お酒を飲むと危ないんだ……」
「凄惨な家庭に育っているのですね……」
 ヴァレーリヤが哀しそうな顔をする。
「はー、ま、酒はほどほどが一番よね。
 そこの痛いの、アンタもそう思うでしょ?」
「はい、コルコルぅ、カルーアミルクしか飲めないのぉ」
「あれは結構、飲みやすい分危ないお酒ってきましたが……」
 ヴァレーリヤが困った顔で苦笑した。
「しかし、飲んだら暑くなってきたわ。水着邪魔じゃね? そーい」
 と、言うや否や、クラリーチェが水着をあっさりと脱ぎだす! その身体を、突如謎の光が包み込んだ!
「わぁ、まぶしい! まぶしすぎて何も見えないよ!」
「まるでわずかに残った理性が最後の抵抗してるみたい、コルネリア、感激!」
「ク、ク、クラリーチェさん! お、男の子の前ですよ! はしたない……! いきましょう、ちひろくん!」
 ヴァレーリヤが、ちひろの手を取って、湯船から飛び出した。そのまま脱衣所へ向かう――が! 脱衣所にいたのは、おじさんだ!
「えっ? な、なにこのおじさん!?
 わ、わかった、のぞきおじさんだな!?」
 ちひろくんの心に、正義心が燃え上がった! 少年は大人に! 勇気を振り絞って、お姉ちゃんたちを守るのだ!
「くくく、わしは妖k」
「こ、怖くなんかないぞ!
 こっちだ、かかってこい!」
 おじさんが名乗り口上をあげる間もなく、ちひろくんは躍りかかった!
「これは浮気を暴露された正純パパの分!(Top Down)
 これはアル中のアーリアママの分!(Do or Die)
 そしてこれはクリムゾンファング!(ペチン)」
「ぐわーーーっ! 馬鹿な! 馬鹿なぁぁぁぁぁ!!」
 おじさんが消滅する! 途端! 世界が湯気に包まれるような感覚を、一名除いて皆は覚えた!
「どうだ! まいったか!
 僕やったよ! 見ててくれた!?」
 薄れゆく意識の中、ちひろくんが声をあげる。ヴァレーリヤは、感激するように、声をあげた。
「ええ、ええ、見ていました。勇敢な……優しい男の子……!」
 少年は姫を護り、勇者に。そして、夢のような時間はふわふわの気持ちに消えて、後には、後には――。

●現世
「……ハッ!?」
 正純が起き上がった。気づけば、温泉に浸かりながら、眠ってしまったらしい。あたりでは、皆その辺にぶっ倒れている……。
「はっ!? 私は何を!? 頭が痛い……」
「うう、まるで悪酔いしたみたい……変な夢を見ていたような……そう、@arai_raccoonが24時間目が疼く中二病になるとか……」
 アーリアが呻くように言うのへ、
「お、オマエ! 無事やったんか!?」
 正純が叫ぶ。
「え?」
 アーリアがきょとんとした。正純もきょとんとした。
「え?」
「……なんだか長い夢を見ていたような気がする……。
 そう……お姉さんと少年のラブコメみてえな夢を……」
 千尋がぼんやりした様子でそういう。
「な、何か……尊厳を、奪われたような記憶がある……ぽん」
 汰磨羈が頭を抑えながら、言った。
 誰も、覚えていなかった。
 誰も、異変のことを覚えていたなかった。
 それは、幸せな事だったろう。
 知らないとは、きっと幸せな事なのだ。
「うむ! とりあえず、解決したな!」
 ベルフラウが声をあげた。この人、全部覚えてる。
「まぁ、終わったことは良いではないか! せっかくの休日だ、ゆっくり休もうじゃないか!」
 うやむやにしてごまかそうとするベルフラウ。
「そうですわね! 朝まで飲みますわよ!」
 さっきまでのヴァレーリヤ返して。
「……すごく、嫌な予感がするのですが……」
 頭を抱えるクラリーチェ。
「……なにこれ?」
 コルネリアが首をかしげた。手に持っていたのは、まったく記憶にない、編みかけのマフラー。
 コルネリアは、それを奇妙な表情で見つめた後、放り投げた。
 編みかけのマフラーが、風に乗って飛んでいった。それはどこまでも遠くへ、嫌な記憶を持って、どこかへ去っていくようにも思えた。
 まぁ、これ報告書になって全公開されるんですけどね。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ご参加ありがとうございました。
 皆様の活躍により、妖怪・君略おじさんは消滅し、皆さんはすべてを忘れて温泉旅行を満喫し、帰ってきた後報告書を見て腰を抜かしています。

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