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オープニング
●大きな破壊、小さな破壊、困難な創造
巨大な体制を破壊するとき、どんな絵をイメージするだろうか。
玉座についた王の額に銃をつきつけるさまだろうか。
都市に大爆発がおこるさまだろうか。
それとも何百人という市民が跪くさまだろうか。
いずれも正しく、そして足りない。
「ここを、俺たちが立て直すのか……」
目の前には焼け野原。あるいは瓦礫。
加賀・栄龍(p3p007422)は黒く焦げた『都市だったもの』を前に、かりかりとあたまをかいた。
ヴィーザル東部に鳳圏・鬼楽・伎庸という自称国家があったことが、皆の記憶には新しいだろう。
現代日本でいえば村と呼ぶのが限界といった程度の小さな規模の集落群で王を名乗る者たちが現れ、近隣部族との戦争が巻き起こった一連の事件……あるいは歴史である。
それらは今や過去のものとなり、どの集落も鉄帝によって併呑された。
「とはいえ、鉄帝軍はこのやんちゃくれサーカス団を自陣に注ぎ込むつもりはないようなのです」
エッダ・フロールリジ(p3p006270)がどっちのだれだか分からないような立場から、そんな風に語った。
まあ誰だって、つい最近まで国を自負していた兵隊たちを新兵として雇い入れたいとは思わない。諍いが起こるのは自明だからだ。
そのため、ここら一帯はローレットに割譲するというかたちで対応がとられることになった。
「今すぐ全ての土地の管理者が決まるわけではないでしょうし……」
振り返ると、そこには建設作業をする住民の姿があった。
彼らにとってここが国でなくなったとしても、『祖国』であることは変わらない。全員で故郷から出てどこかへ移住できるわけでもないのだ。
この破壊し尽くされた土地で、生きて行かなければならないのだ。
だからこれは、『復興』なのだろう。
「領主殿!」
「兵隊さん!」
「少佐ー!」
日車・迅(p3p007500)を呼ぶ声は多い。
特に『少佐』というのはつい最近ついた呼び名だ。
迅は帽子を脱いだ頭をがしがしとやって、着慣れた軍服の襟元を指さした。
「よしてください。僕はそんなたいそうな階級じゃない…………といいますか、もう鳳圏陸軍はないのです。階級なんて……」
「じゃあなんて呼べばいいのさ」
「領主さんじゃわかりづらいだろ」
そしてこの『領主』も、つい最近ついた呼び名である。
鳳圏跡地に領地を割譲され、集落と呼ぶにも少ないくらいの住民を集めて廃村の再開拓に当たっている最中だ。
「日車少佐~、やってますか~?」
そこへジープのエンジン音と共に聞き慣れた声がした。茅野・華綾(p3p007676)のものである。
いつかのジープが一台とトラックが二台。
ザッと砂をタイヤがかむ音がしてとまると、運転席から華綾が手を振っている。
後ろのトラックからは、なぜ止まったのかという様子で兵らが顔をだしていた。
どうやら以前の戦いで率いていた者や助け出した住民たちがそのまま華綾についてくる形で新領地の民になろうとしているらしい。今はさしずめ引っ越し作業中といった所だろうか。
「少佐はやめてください華綾少佐」
「そっちもやめてくださいよお」
くすぐったすぎまする、と身をよじって言う華綾。
そして、瓦礫をかたづけている人々を見やる。
「再開拓は、進んでいますか?」
「……まあ、どうでしょう。こんなことは初めてなので」
苦笑する迅に、お互いさまですよと華綾は笑う。
つい最近までただの兵隊だった彼女たちは、領主となって鳳圏の未来を託されていた。
民が平和に生きられるかは、豊かに暮らせるかは、飢餓や病気やモンスター被害にあわないかや隣人とのトラブルや識字率や冬期の防寒や野党対策……と考えることは無限に増える。
王という立場は一体どれだけ面倒くさいものだったのだろうかと思うばかりだ。
「けれど、やっていかねばなりません」
「はい。ここが『祖国』ですから」
これから始まる、これは再出発の物語。
あなたが作る、物語。
- 鳳自治区へようこそ完了
- GM名黒筆墨汁
- 種別ラリー
- 難易度EASY
- 冒険終了日時2022年02月15日 01時45分
- 章数1章
- 総採用数12人
- 参加費50RC
第1章
第1章 第1節
「GO、わんこベロス!」
ぶおんと音を立て、荒れ地を走る一台のバイク。MST101-C『ケルベロス』。
ザッと音を立てて止まったのは、伎庸の再開発エリアだった。
「及川サマ!」
「おお……」
安全ヘルメットを被りなにかの図面を眺めていた男が振り返る。伎庸の長である及川である。とはいっても、鉄帝の管理下に入った今となってはあまり意味の無い立場だが。
「差し入れに五平餅持って来マシタ、あの時のやつと同じデース!」
手を振る『倫敦の敵』わんこ(p3p008288)に、及川は顔を笑みで崩す。
「……わんこも長くこの国に関わりマシタ。
わんこはね、やっぱり目の前で誰かが死んでいくのは嫌なんデス。
それが縁のある人や罪の無い人であれば尚更だ。
上手くいくことばかりじゃなかったけど、必死に頑張ったつもりデス」
休憩に入ったのだろう。わんこは及川と並んで、建設作業中の風景を眺める。
「ねぇ、及川サマ。
わんこはこの国の為に、ちゃんと働けてマシタカ?
戦いを止めて、命を守ることが出来てマシタカ?」
そうといかけるわんこに、及川は深い笑みと頷きを返した。そして……。
「きっと、それもまだ『途中』なのでしょう。これから、始まるのです」
成否
成功
第1章 第2節
「あーーー、不味った。ちと踏み入りすぎたぜ」
そうぼやくのは、軍手をしたひとりの男。『鬼火憑き』ブライアン・ブレイズ(p3p009563)。
汗と泥と煤で汚れた顔を、同じように汚れたタオルで乱暴にぬぐう。
汚れたタオルと顔だが、そんなものは、今の彼からすれば汚れのうちはいらない。
胸に募る後悔の念に比べれば。
何人かの作業員が、『ブライアンさーん!』と叫んで手を振っている。建設作業に彼の腕力を借りたいのだろう。
「深入りしないスタンスを貫いたつもりが、気がつけば国崩し……か」
鳳圏という閉じた世界に加わり、いつのまにか人々を導く立場にすらなってしまったブライアン。
だが、ここまでくれば『乗りかかった船』だ。
「ああ、今行く」
きっと、くたくたに疲れ果てて見上げる空はキレイなもんだろう。
もう少しマトモな形に組み上がった街並があわされば、もっと……。
成否
成功
第1章 第3節
ぼうっとしながら、紲・桜夜(p3p010454)は材木を担いであるいていた。
「ホラ桜夜、ぼーっとしてないで。そっちに詰んで」
「ん、煌氷兄ぃ」
紲 煌氷(p3p010443)に言われて材木を所定の位置に集めると、こちらを見ていた伎庸住民が苦笑と会釈を同時にしてきた。
こくりと、頷くようなしぐさで答える桜夜。
この辺りの土地ではドラゴニアが珍しいのだろう。いや、世界中で珍しいのだと、思う。
桜夜からすれば覇竜領域以外の全てが新鮮で珍しいのだから。
「ホラ今度はこっち」
煌氷が呼びかけてくるので、うんと言ってまた別の材木を担ぎ上げる。
家屋を建築する作業を手伝っているのだが、こうして持ち運びを手伝うだけでもかなり助かっているらしい。逆に言えば、それほどこの土地からはなにもかもが無くなってしまったということである。
煌氷はそんな風景をまじまじと観察しながら、心の中で想ったことを飲み込んだ。
休憩時間。シートの上でのんびりと座る桜夜のもとへ、煌氷が二つのお握りと水筒をもって歩く。
黙って差し出す煌氷に、桜夜は『ありがと煌氷兄ぃ』ととろけたような笑みを浮かべた。
「兄……ね」
なにか言いたげな煌氷に、桜夜は首をかしげるばかり。
「煌氷兄ぃは、煌氷兄ぃだよ?」
言葉の意味がよくわからないままに言った言葉に、煌氷は少しだけ動きを止めて。そして隣に座っておにぎりを囓る。
成否
成功
第1章 第4節
「フハハハ! 例え鬼楽という国名が無くなろうともこの地は我が祖国、鬼楽なり!
という訳で、皆、我が祖国の地の復興の為にも力を合わせて頑張ろうぞ!
我等が誇り! 皆の「愛」と「勇気」、そして「正義」の鬼楽人魂を俺に魅せてくれ!」
得意の演説を披露する『新時代の鬼』小刀祢・剣斗(p3p007699)に、鬼楽の男達は威勢のいい返事で応えた。
鬼楽は内乱が起きたとはいえ、建物の多くは無事だ。必要な作業は人員の再編と後片付けといったところなのだが……最も苦しくなりそうなのは事務方の不足であった。
「なあ剣斗、お前ここに残らんか」
「……尊殿。それに、親父殿」
後ろから声をかけられ、剣斗はその不敵な表情をやや崩した。
そこに立っていたのは『勾玉』の尊と『剣』の小刀祢だ。
その向こうでは女王の蒼華が忙しそうにあれこれと指示を出している。こちらに気付いたようで、ゆっくりと歩いてきた。
少しばかり考えてから、頭を下げる剣斗。
「巫女王様、並びに「剣」と「勾玉」のご当主殿、若輩ながら今私がこの地を暫定的に治めさせていただいております。
ですが、何れ時が来た時にはこの地を巫女王様にお返しする事を約束します。
何卒その時までお待ちくださいませ」
その返答は、まだ彼がイレギュラーズとして世界で戦うことを暗に示していた。
蒼華たちは頷き、そして代表して蒼華が声をかける。
「わかった。この地の一欠片を預けよう。『うずめちゃん』の作ったものは、なにも……」
そこまで言いかけて、首を振る。
剣斗はそれ以上は追求せずに頭を下げたままとした。
成否
成功
第1章 第5節
「ボクが鬼楽の同胞を、生死を共にした真の友を見捨てるわけがない。
練達の前領土から幾許かの資材をもってきたから当面は凌げる……いや、以前よりも良くして見せる」
『性別:美少年』セレマ オード クロウリー(p3p007790)の優しく、それでいて舞台役者のように洗練した語りは彼と共に戦っていた鬼楽兵たちの心をふるわせた。
「食料、医療、本、必要な物はなんでも用意しよう。
あらゆる価値は変わる。
艱難辛苦を経た今こそ、鬼楽が健やかな未来へ進むときだ」
さすがはセレマさんだと感心する人々を前に、セレマは深い笑みを浮かべた。
名声を高め、この土地で自らを大きく価値あるものへと変えるために……。
成否
成功
第1章 第6節
「ようやく来れた……」
ひとつの事件が終わった今、『子鬼殺し』鬼城・桜華(p3p007211)は鬼楽の地へと訪れていた。
村(今は国の規模にないためにそう仮称される)の様子はせわしなく、あちこちで誰もが新しい仕事に混乱したり困ったりという様子を見せていた。
桜華にとって、ここの空気は奇妙なほど馴染みがよい。
それもそのはずだ。出身世界の巫女王が作った『国』だったのだから。
なんとなく、確信はあった。女王の噂を聞いたときから、『蒼華ちゃん』だという期待と、わずかな確信が。
遠くで、見覚えのある後ろ姿があった。
行くべきだろうか。声をかけるべきだろうか。
今歩き出せば、それは叶うだろう。
「……うん」
桜華は選択し、そして顔をあげた。
成否
成功
第1章 第7節
「大きな戦いが終わって、さあ次だって切り替えるときや、忙しさの中でちょっとだけ落ち着くことが出来たとき。今まで物凄く大変だったなって実感が湧いてくると思うんだ。
そんな時に寒くてお腹が空いていると、悲しい気持ちになってしまうから」
『絆爆発』リュカシス・ドーグドーグ・サリーシュガー(p3p000371)はそんな風に言って、寸胴鍋をゆっくりとかき混ぜた。
「おーいリュカシス、芋煮ってこんなんでいいのか? っていうか芋より肉のが多くねえ?」
お椀にひとすくいしたジェイビーが振り返ると、その横へホランドがトレーを持ってやってきた。
「名前だけだよ、名前だけ。温かくておなかに溜まればそれでいいの」
おっとりとした口調に『そんなもんかー』と言ってトレーに並べていくジェイビー。
仮設テントの下。それらを運んでいく姿を見ながら、リュカシスは目を細めた。
「心安らかで住みやすい『祖国』となりますように……」
これからもお手伝いをしにこよう。そう心に決めて。
成否
成功
第1章 第8節
「あの王が死んだ事で、この土地はどんどん痩せていくってのに、まだてめえらはこの場所にしがみつくつもりかい。へっ……腐っても故郷てか」
シニカルに笑い、『山賊』グドルフ・ボイデル(p3p000694)はよっこらせと言って瓦礫のひとつを持ち上げる。
「まあいい。乗りかかった船だ、最後まで付き合ってやるさ」
ふと見れば、仮設テントの下で『天を駆ける狗』河鳲 響子(p3p006543)が大鍋から何かをよそっている。
あがる湯気の様子からするに、スープかなにかだろう。
どんなものかは分からないが、たとえば豚汁を啜った感覚を想像してグドルフはゲハハと笑った。そして、現実とのギャップに身を震わせる。
「ウオオオ寒ィ〜!! ボヤボヤしてっと雪でも降ってくるぞ、チャチャッとやっちまおうぜ!」
後ろの鳳圏兵たちに言うと、グドルフは瓦礫を抱えて歩き出す。
一方響子のもとには、お椀を持った兵士達が整列していた。
「皆さん、お疲れ様でした」
ニッコリと笑みを浮かべて一人ずつに豚汁をわけていく響子。
「戦争で街も人も大きな傷を負ってしまいましたが、少しずつ癒され また皆さんに笑顔が戻ってくる日まで私も出来る限り手伝いますね」
優しげな響子に、兵士たちが一様に頬を赤らめた。
(結構しよう)
(結構しよう)
(結構しよう)
「結婚してくれ」
呟いた一人へ一斉に顔が向き、そして一発ずつパンチが入った。
その様子に苦笑しながら、『元気なのはいいことですよね』と響子は呟いた。
食べて、笑えるなら。人は生きていけるはずだと。
ひと作業を終えた所で、『疾風迅狼』日車・迅(p3p007500)は立ち上がり背筋を伸ばす。
腰の後ろに手をあて、のけぞるようにしながらトントンと叩いた。
(陛下が倒れ、国は消えても、ここは我らの地。
今度こそ穏やかな暮らしを目指して皆さんと再出発……なのですが……)
ちらりと視線を手元。というか机へと下ろす。
そこに積み上がっているのは領主である迅への報告書や各種申請書であった。
「もう書類は見たくありません! 僕は外へ出るぞー!!」
『あっ迅さん!』と呼び止める声を無視して走り出すと、窓からバッと外へ飛び出した。
「迅さん。微力ながら拙もまたお手伝いさせて頂きましょう」
窓の外で待ち構えていたのだろうか、それとも偶然か。『竜眼潰し』橋場・ステラ(p3p008617)が笑顔で立っていた。
「書類仕事を――!?」
「がんばってくださいおうえんしてます!」
笑みをより一層深くしてそーっと下がろうとしたステラの肩を、迅はがしりと掴んだ。
仕方ないですねと首をかしげ、ステラは……。
「まずは開墾から! これは確かに中々の大きさの岩ですが、えぇ、勿論余裕です!」
巨大な岩を真っ二つに打ち砕いてから、その片方をどうぞと言って迅へパスした。
「かなり大きい岩ですね。僕もこの大きさと数はちょっ――ステラ殿!?」
突然のしかかる重みにぐらつく迅。
なんとかこらえながらプルプルと震えた。
「ステラ殿ー! たすけてステラ殿ー!!」
そんな様子にステラは小さく笑い、そして振り返る。
荒れ地だ。荒れ地を、今から村にするという。
常人ならば諦めてしまうようなことを、彼はこの荒れ地が出来たその日に決めたのだろう。
ならば……。
「黙って見ては、いられませんよね」
鳳自治区となったこの場所は、人々の手が入ることで少しずつ形を変え、そして発展を続けていくだろう。
『祖国』が人々の心に残り続ける限り。ずっとずっと、もしかしたら、永遠に。
成否
成功
GMコメント
このシナリオはラリーシナリオです。仕様についてはマニュアルをご覧ください。
https://rev1.reversion.jp/page/scenariorule#menu13
構成は一章限りで、25人前後の描写を予定しています。
■グループタグ
誰かと一緒に参加したい場合はプレイングの一行目に【】で囲んだグループ名と人数を記載してください。所属タグと同列でOKです。(人数を記載するのは、人数が揃わないうちに描写が完了してしまうのを防ぐためです)
このタグによってサーチするので、逆にキャラIDや名前を書いてもはぐれてしまうおそれがあります。ご注意ください。
例:【もふもふチーム】3名
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これは長編シリーズシナリオ<鳳圏戦忌憚>のアフターにあたるシナリオです。
https://rev1.reversion.jp/scenario/replaylist?title=%EF%BC%9C%E9%B3%B3%E5%9C%8F%E6%88%A6%E5%BF%8C%E6%86%9A%EF%BC%9E
物語の結果として国を無くした人々は、燃やされ破壊された都市や集落を再建し始めています。
この復興計画に加わり、鳳圏・鬼楽・伎庸の復興を助けましょう。
復興アイデアを出したり、単に力仕事をしたり、心が傷付いた人々のケアをしたりとできることは幅広くあります。
今後ここを領地化するにあたって人や物を集め始めたり、既に領地化している人は領地に手を入れ始めたりしてみましょう。
また、アフターシナリオでもありますので当時関わりのあったNPCキャラクターと再開してみるのもいいかもしれません。
●情報精度
このシナリオの情報精度はAです。
想定外の事態は絶対に起こりません。
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