PandoraPartyProject

シナリオ詳細

ひがみって怖くない?

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 波の穏やかな海面から、覗かせる顔がある。
 その顔は、浜辺で遊ぶ人間達をじぃー、と見た後、ちゃぷんと小さく水音を立てて底へ潜っていく。
「ありえないわ」
「どしたんですかお嬢」
 それは、魚人の少女。出迎えてくれた厳つい魚顔の魚人をキッと睨み付けると、腕を振り上げ怒り出した。
「どうもこうもないわ、なによあの人間達……見た? 我が物顔で海や浜辺を闊歩するあの姿……!」
「いや、それは別にいつもの事じゃないですか」
「今年は多いわよ! 特にあの、あれよ、なんか妙に色気付いた様な、距離近いような、なんかそういうの多いのよ、多くない?」
 あ、これただの嫉妬だわ。
 そう察した厳つい魚顔ーー略してイカーーは露骨に嫌な顔をして少女を見つめた。
 面倒を言い出さないといいけれど、と願い、そしてその希望は瞬間で砕かれる。
「嫌がらせしましょう」
「うわ出たよ」
 声も出たよ。
「あれでしょアイツら、リア充っていう存在なんでしょ私知っています、並ばせて端からビンタしてやりましょう」
「知ってますかお嬢、人の恋路を邪魔したら馬に蹴られて三枚下ろしです」
「蹄鉄に包丁でもついてるのそれ?」
 そんなことはおいておいて。
 いい? と前置きをしたお嬢は、良くないです、という反論を無視して続ける。
「要はねセバスチアン、住み分けをキチンとしましょうということよ。魚は海で、人は猿のように山で好きに繁殖してればいいと思うの」
「セバスチアンではないです」
「さぁ行くのよセバスチアン! やつらの顔にイカスミよ!」
「イカでもないですお嬢」


「楽しい夏祭りの最中に済まない、ちょっと仕事をしてきてくれ」
 と、ローレットの一画で、『黒猫の』ショウ(p3n000005)はそんな言葉を発した。
「ごめん、なんで?」
 浮き輪に体を通したイレギュラーズの一人が、半笑いと半怒りの顔でそう聞き返す。いやいや嘘でしょ? と。
「こちらとしても心苦しいんだけどね、海で事件が起きてるから、まあ……」
 ついでに解決を。とは、青筋の浮かんだイレギュラーズにはとても言えない。
 ので、
「楽しく遊ぶために、よろしく頼むよ」
 当たり障り無く言葉を続けて、彼は説明を始めた。
「海には様々な生物がいるのは、もう知ってるよね。今回は魚人、半魚人が悪さをしていてね。海に遊びに来た人間……特にカップル連れを集中して襲っているらしい」
「あーわかるわ」
 わかるなよ。
「襲うといっても、正直イタズラの域を出ない。タコを投げてきて墨だらけにしたりとか浅瀬をクラゲでいっぱいにして泳げなくするとか、そんな感じだ。だからまあ、浜辺で適当に遊んだりカップルの様に振る舞えば向こうからやってくるだろうから、そこを叩いてほしい」
 そこまで言い切ったショウは息を一つ吐き、そして浅く吸って、
「まあ、その……なんだ、せっかくの夏の海だ。できるだけ穏便に倒して納めてくれ」
 と、困ったように笑って言った。

GMコメント

 恋人欲しいです。はっは!!!

●依頼達成条件
 とりあえず死なない程度に魚人の群れをどつき回す。

●現場
 砂浜です、水平線が眩しいぜ。

●敵情報
 魚人10体程。
 数は増減します。皆さんのどつき方がえげつない程増援が逃げます。
 攻撃手段はめっちゃ接近してめっちゃ殴って蹴ってくる感じですたまにタコ投げてきます超遠距離ですやばいです。

●ポイント
 とりあえずみなさんで死ぬほど遊んでください。
 そうしたら死ぬほどタコが飛んでくるのでそれを鮮やかに避けると海からムラムラと魚人が出てきますので殺さないように注意しながら調理してください。
 

  • ひがみって怖くない?完了
  • GM名ユズキ
  • 種別通常
  • 難易度EASY
  • 冒険終了日時2018年07月31日 21時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

十夜 縁(p3p000099)
幻蒼海龍
江野 樹里(p3p000692)
ジュリエット
高千穂 天満(p3p001909)
アマツカミ
ゴリョウ・クートン(p3p002081)
ディバイン・シールド
寒櫻院・史之(p3p002233)
冬結
ヒィロ=エヒト(p3p002503)
瑠璃の刃
レスト・リゾート(p3p003959)
にゃんこツアーコンダクター
ユゥリアリア=アミザラッド=メリルナート(p3p006108)
氷雪の歌姫

リプレイ

●暫く海からご覧ください
「ねーぇセバスチアン」
「そんな名前じゃないって毎回いいますけどなんですかお嬢」
「あれはなにかしら?」
 あれ、と、お嬢が海面からニョキッと覗かせる顔が見るのは、浜辺で楽しげに遊ぶ一団の事だ。
「スイカ割りである」
 胸を張り、小さな体で下目使いをする『アマツカミ』高千穂 天満(p3p001909) が宣言していた。
 尊大、不遜、しかして神々しい。そんな少女の宣言に、
「おー」
 と声を合わせて腕を振り上げるのは、眼鏡の少年『特異運命座標』秋宮・史之(p3p002233)と、眠たげなおっとり雰囲気の『特異運命座標』ユゥリアリア=アミザラッド=メリルナート(p3p006108)の二人だ。
 どうやら割る役は史之がこなすらしく、目隠しのはちまきを手に持っている。
「おっ、いいねぇ史之、様になってる、すごいスイカ割りって感じのスタイルだ」
 目を真っ白なはちまきで隠し、その上になぜか眼鏡を装着して準備を完了させたその姿を、『本心は水の底』十夜 縁(p3p000099)はそんな言葉で表現する。
「あー似合ってる、似合ってるよ」
 表現しておいてしかし、彼は木陰に腰掛け木を背もたれに足を投げ出し、視線は青い空を見上げている。
 全く無気力だ。
「史之様ー、右ー、右ですわー」
「おい何を言うておるか。違う、違うぞ。もっと左、こら行きすぎであるぞ」
「いやいや、右だよ……あ、いやおっさんから見て左だ」
「……いや分かんないだけど!」
 ちなみにユゥリアリアだけが嘘を付いている。
 それはさておき。
「どこだ……?」
 探す史之は、砂浜を摺り足で移動する。
 右、いや左、いやいやまっすぐだってそこだって、という声が飛び交い、一体誰を信じればいいのかという疑心暗鬼を心に植え付けられた様に彼の動きは迷いに迷う。
「そこだ!」
 だからだろう。
 そんな一際大きい声に導かれる様に、史之は棒を一閃。
「やあっ!」
 と、言う掛け声と同時、クシャッ、という砕ける心地のいい音が鳴った。
 見事にスイカを割ったのだ。
「ふ、余の言う通りにすれば割れぬ筈も無しである。さあ、食べるぞ」

「なにあれ」
「知らないんすか、スイカ割りっす」
「そーじゃないわよ、知ってるわよ、なんで毎回いやがらせしてるのにあんなワクワクやっほいレジャーこなしてんのあいつら!」
「夏、だから、ですかね……?」
 お嬢は無言でセバスチアン(仮)の顔をぶん殴った。
「まあ、まあいいわ、いい。あれは後でタコ吸盤の刑よ。それよりあれよ、あっちはなによ」
「知らないですかお嬢、リア充です」
 と、リア充と評されたグループを、お嬢は青筋浮かべながら見る。
 その先にいるのは、
「ぶはははっ、今日は楽しもうぜ!」
 でかい強面の黒焦げた肌の
「いやあれ豚! オークってやつよ、オークってやつよね!?」
 そう、『黒豚系オーク』ゴリョウ・クートン(p3p002081)だ。
 2mに届かない程の高さと横に大きな恰幅の彼の隣には、似つかわしくない可憐な少女の姿がある。
 水着で肌を曝したナイスバディの少女は、『ジュリエット』江野 樹里(p3p000692)という。
 普段は敬虔なシスターとして振る舞う彼女も、今はゴリョウを愛する一人の女性としてそこにいる。
「ゴリョウさん、ゴリョウさん?」
「おう、どうした江野?」
「ふふ、少ししゃがんでくださいな?」
 見上げ、花が咲く様に笑う樹里の視線が、ゴリョウに刺さる。
 味方を刺してどうするというツッコミはここでは無しにして、
「お、おぅ! 分かったぜ?」
 心をドキドキさせながら膝と腰を曲げたゴリョウの顔の前に、箸に絡めとられた焼きそばが差し出される。
「はい、あーん」
「あ、あー……ん」
「ふふ。はい、よく出来ましたー」
 と、樹里はそのまま、ゴツゴツとしたゴリョウの頭を柔らかな手で撫でてあげた。
「……はぁ~~~~~~?」
「お嬢落ち着きましょう」
「いや無理でしょ、いやというかあれ、え、あれいいの?」
「いいんすよ、人外と少女、萌えます」
 どういうこと!?
 と動転するお嬢にセバスチアンは親指を立てて頷く。
「いやだからどういうことなの!?」
 しかしぎゃあぎゃあと騒いでる間にも、カップルはいちゃこらを続けている。
 よろめき、倒れそうな樹里がゴリョウのもちもちした胸へ飛び込むアクシデントだ。
「タコ投げるわ」
「あ、それよりお嬢見てください、あそこにも仲睦まじい感じの二人がいますよ」
「はっはぁん大丈夫よ、あれの後に何が来てもへっちゃらなんだからね!」
 そしてお嬢は見る。
 見た感じ少女の様な二人が、水着を着て寄り添いあっている所を、だ。
「今度は同性カップルだよ!!」
 思いきりへっちゃらではなかった。
「なるほど見てくださいお嬢。あの獣種の少女、元気なアクティブさでありながら編みあげた髪で輪を拵えるという可愛さを押し出してます。それからあの浅黒い肌の落ち着いた女性とのテンション差もいいですね、フリルにフリルを重ねた意匠の水着も見てくださいお嬢、あれはーーお嬢?」
「いやなげーよ」

 そんな特殊な魚人が見る、獣種の『夢見る狐子』ヒィロ=エヒト(p3p002503)と幻想種の『夢色観光旅行』レスト・リゾート(p3p003959)によるカップルの絡みは、生クリームケーキに砂糖をまぶした様に甘いものだった。
 先程史之が割ったスイカを分けてもらった二人は、身を寄せ合いつつ砂浜に座って楽しい時間を過ごす。
「ヒィロちゃんの水着姿に、レスト目が回っちゃうわ~」
 んふふ、と笑って褒める言葉にヒィロは「えへへ」と嬉しそうに笑って甘える。
 そうして、愛を恥ずかしげもなく伝えるのだ。
「髪の先から心の底まで、ボクの全てはお姉様のモノだから……お姉様のためなら何でもしたいし、何されたっていいよ!」
 そんな気持ちに、あらあらとレストは微笑む。
 少しの間そうして笑いあって、意味も無く甘い時間を過ごして、
「そうだわ、せっかくだもの~。食べさせあいっことか、どうかしら~?」
「うん! お姉様が食べさせてくれるスイカなら、ボクいくらでも入っちゃう!」
 甘く瑞々しい果実を食べさせ合う、そんな至福の時間は続いていく。

●等ということはなく
「見せつけてんじゃねーわよ!」
 と、タコが空を飛んだ。
 海からビューンと行くタコは、脚を前にして浜辺で遊ぶ一団に向かう。それも一匹や二匹ではない。
「……あら。見てくださいゴリョウさん、これはもしや……」
「ああ、つまりこれは」
「あの方達からの祝儀ですね」
「違うぞ!?」
 言いつつ、ゴリョウは樹里を覆う様に庇い、背中にタコを張り付かせる。
「おいおい、砂浜でたこ焼きになっちまうぞ」
 気だるげに立ち上がり、尻についた砂を払いながら縁も太陽の下へ出る。
「暑いねえ」
 と、ぼやきながら、飛んできたタコを平手で触る。
 そうして触ったモノから次々に、吹き飛ばしの術式を発動させて海へと弾き飛ばしていくのだ。
「絶好の海日和だってのに……はぁ、こんな日は木陰で冷酒をやりながらのんびりしたい所だ」
 それはきっと、すごく贅沢な休日なのだろう。
「残念だけど、今は仕事だよ」
 身軽にバク転を決めてタコの襲来をやり過ごす史之が、眼鏡の位置を直しつつ一応のツッコミをいれる。
「まあでも、わかるよ。……リア充には言いようもない感情浮かぶよね!」
「そっちか」
「けどやりすぎはよくない、うん。だから、まあ」
 おしおきの時間だ。
 波打ち際からノシノシとやってくる魚人を見て、史之は小さく笑った。

「かしこみかしこみ申し上げます」
 祝儀には報いなければなりません、ええ。
「おい、あー、江野?」
 祝詞を紡ぐ樹里の様子を目の前で見ながら、ゴリョウは冷や汗を一筋垂らしながら聞く。
 なにする気? と。
 それに、ええ、と微笑みの頷きを一ついれた彼女は両手を前に突きだし、
「祝砲、です」
 海を割く様な一撃が空間を横断した。
 それが計四発。
 間断無く、遠慮もなく、ぶちこまれ続けた。

「ちょっとセバスチアンなにあいつヤバイマジやばい頭イッテる絶対頭おかしいって!」
「お嬢も大概です、安心してください」
「おうブッ飛ばすぞてめぇ」

 さておき魚人の行軍は続く。
 正直、樹里のとんでも射撃で軒並み「うわこいつやべぇ怖い」という気持ちで一杯になっているのだが、それはそれ。
 攻め入ってリア充達の輝かしい夏の思い出をなんかいい感じに台無しにしてやるのだ!
 と、迫る魚人の頭に光が落ちた。
「おい、主ら」
 立ちはだかり、仁王立ちする天満は矛を地面に突き立てる。
 すると、もう一度。魚人の頭上から光が落ちてくる。
「あまりはしゃぐでない。でなければ……懲らしめるぞ」
「くっ……人間がなにするものぞ、怯むな行けぇー、ぇばっ」
 勇ましく叫ぶ魚人の顔を、史之の盾がフルスイングで打ち抜いた。
 くるりと回転する動きで行く彼は、
「貴様まだしゃべったぁい! いたい!」
 もう一周回るついでに姿勢を下げ、魚人の向こうずねを盾の角で強打した。
「え、ごめんなに聞こえない」
「だからばっ、しゃべってるとちゅうぐへっ、まっ、たわばっ」
 それからの史之は、ただただ魚人を殴り続けるだけだ。
「鬼畜……」
「鬼畜眼鏡だ……」
「眼鏡キャラはやばいぞ」
 それを、他の魚人がドン引きして見ていた。

 すでに戦闘は始まってしまった。
 少し出遅れた感はあったが、ユゥリアリアも陸に上がった魚人への対処に動き出す。
「羨んだりー、ほんわかしたりー。妬みも嫉みもー、別に構わないと、思いますけれどー」
 手出しはマナー違反、ですわよねー。
 と、そう思いながら行く。
 彼女は、自分の力量を正しく理解している。だから動くならば、仲間が攻撃した後、追撃する動きが望ましい。
 だから、
「ぶはははっ、江野は俺が守るぜ!」
 片腕で樹里を抱えあげながら戦うゴリョウの後ろに着くことにした。
「ふふ、かっこいいですよゴリョウさん」
 平手を打ち出してツッパリ攻撃をするゴリョウを、全く当てる気のないレーザーガンを乱射して褒め称える樹里の組み合わせ。
「……絵面がやばいですねー」
 控えめに言ってリア充だとか関係なく、煽り力は高いと思う。
 だって平手される魚人の顔がすごく嫌そうだもの。
「せめて止めはー、こちらでということでー」
 きっとカップルに気絶させられるよりは心穏やかになれるだろう。
 なれるといいなー。
 思いながらユゥリアリアは、ゴリョウが削った魚人を端から殴り倒していった。

「ボクはヒィロ、愛しのお姉様には、指一本触れさせない!」
「あらあら、ヒィロちゃん頼もしくて素敵だわ~」
 ドンッ!
 とレストを守るように立つヒィロは、怒りのオーラに包まれていた。
 魚人を呼ぶ為の演技とはいえ、いちゃこら甘々を邪魔されたのだ。役得幸せ空間をぶち壊された怒りは重い。
 レストの方はと言えば変わらずのほほんとしているが。
 とにもかくにも、ヒィロの宣言は周りの魚人を彼女に引き付けた。
「うおおマジもんの百合っぷるだあぁぁぁ!」
 たぶん宣言の効果のはずだ。
 たぶん。
「お姉様に近づくな!」
 そうして寄ってきた魚人を、ヒィロは回り蹴りを首へぶちこみながら処理していく。
 嫌な感じの音を鳴らしながら倒れる魚人に、更に踏むような一撃を加え、
「いや怒ってないよ、ボク全然、ほんとに、怒ってないよ?」
 踏む。
 踏む。
 さらに踏む。
「これはほら、魚人さん達への哀れみと慈悲のこもった……ほら、あれ」
 と、気絶した魚人を海へ蹴って還しながら、
「善なる一撃だね!」
「そんな善ねーよ!」
「あいたっ」
 ツッコミと同時に周りの魚人がヒィロを殴っていく。
 ぺしんバシンッ、と痛そうな音が鳴れば、レストが黙っていない。
「あぁ大変。痛いのないない、しましょうねぇ~」
 優しく言って、ヒィロを回復の光が穏やかに包み、痛みを緩和させる。
「お姉様……!」
「うふふ、がんばって~」
「よーし、お姉様はボクが守る! いくぞ、一日一善キックだ!」
 なんやかんやのカップルパワーを見せつけながら、ヒィロの蹴りが魚人を追い詰めていく。
 どことなく魚人の顔が満足そうなのは、きっと、おそらく、気のせいだ。

●締めに参りましょう
「もうそろそろ、いいんじゃないか。なぁ、お前さんよ」
 一匹の魚人を熱砂の浜辺に組み敷いて座る縁が呼び掛けるのは、セバスチアン(仮)だった。
 その呼び掛けに、波打ち際まで来た彼は「そうですねぇ」と頷きながら辺りを見渡す。
「いやー、これひっどいな」
 そこでは現在進行形の悲劇か起きている。
 ボロボロにやられた魚人が倒れ、鼻水と涙を溢して逃げ帰る奴等が大半だ。
 だってこいつら嬉々として鬼気迫りながら殴ってくるんだもん。
「ま、お互いいい運動になっただろ。スイカ、食うかい」
「いやいいサンドバックの間違いでしょう、いただきます」
 と、縁の差し出すスイカを手に取りながら、彼はツッコミを入れておく。
 空は青く海は広い。細かいことは忘れよう。そういう境地だ。
「なに、もう終わりか、情けない。余はまだやれるというに」
 その終わりに、天満は些か不服そうだ。その彼女の後ろでは「いやもう光りが落ちてくるのは……」と若干トラウマを抱えた魚人がひきつって笑っている。
 かみさまこわい。
「ちょっとちょっと、ちょっとセバスチアンちょっと」
 なに丸め込まれてるのよ!
 そう地団駄を踏むのはもちろんお嬢だ。
 うさを晴らすどころか返り討ち。やられた仲間は逃げ帰り、一部はというと、
「ぶはははっ、準備運動は済ませたな? こっからは遊びの時間だ、テメェらも一緒にな!」
「もうこんなことしちゃ、めっ、だよ。でもほら、反省出来たなら一緒に遊ぼう、波打ち際でビーチバレーだ!」
 すっかりまったりムードだ。
 潮風に乗ったボールがふわりと浮き上がりながら、ゴリョウがスパイクをぶちこみ魚人の顔にクリーンヒットさせている。
「もう、やめましょう。これ以上の、争いは、無意味です」
 ぽりぽりと、いつも持ち歩いているお菓子を味わいながら樹里は言う。
「そうそう。幸せなんてきっと、気づけてないだけで周りにたくさんあるんだよ」
 賛同するヒィロの顔は明るい。
 ごっこ遊びでも、レストとの一時が心地よいものだったからだろう。
 そしてそれは、レストも一緒だ。
「んふふ~、いい思い出が出来ちゃったわ。ヒィロちゃんと、貴女達のおかげね~」
 だから、彼女は変わらない笑みで感謝を述べる。
 ありがとうね~、と。
「ぐ、ぐ……わかった、わかったわよ!」
 毒気を抜かれた。まさしくそんな感じに折れたお嬢は、
「じゃあ改めて、遊ぶわ!」
 そう意気込んで駆け出す。
 前に、
「お説教、まだですよー」
 ユゥリアリアのお話が待っていた。
「いいですかー? デバガメ厳禁、手出し無用でー、スポーツ観戦みたいな心持ちでやるのがー、精神衛生上は望ましい、ですわよー」
「はい……はい、すみませんでした……」
 かくして反省した魚人達と遊び倒した一行は、日が暮れる頃には疲れはてていた。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

お疲れ様でした。
楽しめたでしょうか。私は楽しかったです。
それでは、またどこかで。

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