シナリオ詳細
終末を討て!運命のラストターン
完了
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オープニング
●可能性の切り札
トレーディングカードゲーム――通称TCG。
手に入れたカードを組み合わせて自分だけのデッキを作り、互いの情熱をぶつけ合う魂のゲーム。
今、そのブームの波が『境界図書館』にも巻き起こっていた。
運命蒐集型カードゲーム『混沌札(パンドラカード)TCG』――それが何処からもたらされたものかは誰も知らない。ただ、この二人が熱を上げているのは確かだった。
「僕のターン。ドロー! フィールドカード《深海シティ》を発動。
そしてこの瞬間、手札を2枚捨てる事によって、デッキからモンスターカード《空泳ぐ白鯨》を特殊召喚するよ!」
『境界案内人』神郷 蒼矢(しんごう あおや)が高らかにカードの使用を宣言する。現れた白鯨を守る様に、《小魚トークン》と呼ばれる味方が大量に集まり、蒼矢の守りをガッチリと固めた。
「ほう。発売したばかりの新しいテーマデッキか。蒼矢にしてはよく組めてるじゃないか」
「ふふん。今までは古くて使えないカードばっかりだから勝てなかったんだ。最新のカードで固めた僕のデッキが負ける事なんてあり得ない!」
「……蒼矢。それは少し違うな」
大量の魚に敵意を向けられた『境界案内人』神郷 赤斗(しんごう あかと)は冷静に言葉を切り返す。訝しむ蒼矢へ不敵な笑みを崩さぬまま。
「使えないカードなんざ存在しねェ。カードを信じる事ができれば、カードもまた応えてくれる――こんな風に!!」
赤斗が伏せていた神秘カードを発動させようと手にした、その時――
「緊急事態だ!!」
館内に響いたカストルの声に、二人は顔を見合わせる。
「勝負はいったんお預けだな」
「そうだね。いったい何があったんだろう?」
●量産! 制服! 大暴走ッ!!
「特異運命座標、君達トレーディングカードゲームってやった事ある?」
とにかく大人数を呼び寄せて、藁をも縋る思いで蒼矢は挙手を促した。
……というのも、カストルに指摘されて気づいた一冊のライブノベル。その世界のテーマがまさにそれだったからだ。
「この異世界はちょっと変わってて、敵に普通の神秘攻撃や物理攻撃が効かないんだ。
代わりに攻撃手段になるのが……これ! カードゲームっていう訳さ」
バーチャル・リアリティの技術が発達し、カードゲームで出したモンスターやフィールドカードをホログラムで再現されるハイテク世界。
そのバーチャルシステムを開発していた会社の社長が、全世界に向けてカードバトルによる征服を宣言したのだ。
各国に放たれたカードバトル戦型アンドロイドは、今もなお罪なき人々をバトルで倒し、蹂躙している。
「奴らを止めるには、バーチャル・リアリティシステムを壊すしかない。僕と赤斗ならそのためのウィルスを用意出来るかもしれないんだけど……」
どうやらウィルスを送り込むには、ライブノベルの世界に潜り込み、ハッキングして情報収集をする必要があるそうだ。
ハッキングしてプログラムを組み立てる間、どうしても守備はがら空きになる。襲い来るアンドロイドを返り討ちに出来なければ、そこで終わりだ。
「どうか一緒に戦って。カードゲームを知らない特異運命座標もうまく出来るように、アシストのAIを付けてあげるから。
世界は制服されるかどうかの瀬戸際だけど……TCGって、とっても楽しいものなんだ。だから皆、いいバトルをしてくれると嬉しいな!」
- 終末を討て!運命のラストターン完了
- NM名芳董
- 種別ラリー(LN)
- 難易度-
- 冒険終了日時2022年02月12日 22時35分
- 章数1章
- 総採用数18人
- 参加費50RC
第1章
第1章 第1節
「ふむふむ、ここにカードをセットしたら本物みたいになって戦ったりするにゃ?」
『のみ込みが早いな。後はキミが集めた情報の通りだ。出来るかい?』
カードの精霊《猫の魔術師》は、黒いフードの下でゆるりと笑みを浮かべて問いかけた。目の前に迫るDCⅢ。その殺意を前にしても、ちぐさは腕のディスクへ神秘の力を込めて、戦いのフィールドを展開する。
「まかせて欲しいにゃ! ショ……《猫の魔術師》が一緒にゃら僕は負けないにゃ!」
ちぐさが扱うデッキは文字通りの「猫まみれ」!
新しいカードを召喚するたびフィールドに猫が増えていく。キジトラ、黒猫、三毛猫、にゃごにゃごにゃあにゃあ!
『気を付けな、ちぐさ。あのカードは……!』
DCⅢのターンに移り変わると、《猫の魔術師》が尻尾の毛を逆立てる。相手の場に召喚されたのは――びちびち跳ねる、新鮮な《暴魚ドトウマグロ》!
「あっ、あれは『おさかな』カードにゃ!」
にゃーっ! とちぐさが召喚していた猫達がマグロに飛びつき、コントロール下から離れてしまう。猫はいつだって気まぐれなのだ。そんなところも可愛いけれど!
「これはピンチだにゃ……でも、諦めないにゃ! ドロー!」
運命のラストターン。手にした新たな一枚は《猫の魔術師》!
場に召喚した瞬間、フィールドの猫達が強化されて、マグロを食べきりちぐさの元へと舞い戻る!
『トドメといこうか、ちぐさ』
「すごいにゃ! カッコイイにゃ!」
成否
成功
第1章 第2節
「これは蛇だからOK、これは竜だからアウト、これは……スネークドラゴン? どっちだ?え、どっちも?ならセーフだ」
買ったばかりのパックから出たカードを選別していくアーマデル。その手に光る一枚を見つけ、弾正は目を見開いた。
「そ、それは……時価10万Gはするという《白翼竜フェザークレス》のスペシャルレアカード!」
「フェザーなんとかいうカードは全部抜く、尻弱そうだし」
ぽいっ。
「アーマデルうぅぅー!?」
めちゃくちゃ雑に放られたカードの上にDCⅢの足が乗る。アーマデルと弾正はすかさず戦闘準備をしようと腕につけたディスクへ神秘の力を注いだ。
「敵の侵攻が早いな。だが俺達とて負けはしない」
「嗚呼、そうだな弾正。世界が制服されるとみんな着衣が破れやすくなってしまう、それはいけない」
「その通りだ。世界が制服……制服?」
アーマデルの突飛な発言に弾正が思わず聞き返す。
「世界が制服されるとみんな着衣が破れやすくなってしまう、それはいけない。
それに制服が誰にも似合うというのは幻想だ、人気のあるデザインほどヒトを選ぶ……つまり選ばれし者だけが得をする社会…それもよくない」
「待て、アーマデル。敵が目指しているのは"征服"であってだな」
「似たようなものなのでは……」
いや、ぜんぜんちがうと思う。そう言いかけた弾正の服が、ライフダメージを喰らった瞬間いきなりバツーン! と弾けとんだ。
「うおおぉお!?」
「ふむ、まずいぞ弾正。これはどうやら闇のバトルというやつらしい」
「なんでだよ! 闇のバトルって普通、負けたら命を取られるデスゲーム的なアレだろう?」
「いいや。負ければ服が死ぬ――つまり、一生ZENRAで過ごす事になるだろう」
いきなり人生の窮地に立たされた弾正。焦りを悟られたか、タッグマッチにも関わらずDCⅢが執拗にこちらばかりを攻めてくる。
「くっ。こうなれば仕方ない。見せてやろう、我が手下・九武衆!」
甲冑を纏ったモンスターが次々と場に特殊召喚される。ここまで来れば勝ちパターンだ。いつも以上にデッキが回って調子がいい!
「そして今ここに9人の戦士が揃った事により、特殊効果が――」
「あ、そこにこのカードで割り込みだ」
テンション高く叫ぶ弾正に声を被せてアーマデルが場に伏せていたカードをオープンする。《英霊残響:逡巡》が発動された瞬間、弾正の九武衆が光に包まれて――
スバシュ!! と光って消えた。
「うぉお、俺の戦士がみんな生贄にー!?」
「あ、そういう効果だったのか。発動できますよマークがディスクに出たから、とりあえず押してみたんだが」
しなしなと崩れ落ちる弾正の横で、アーマデルが開いたカードの効果を改めて読もうと確かめる。そうこうしているうちに捨て札になった戦士の亡霊がDCⅢへまとわりついて、ライフを全てこそぎ取った。煙を立てて倒れ込むアンドロイド達。
「……なんかよく分からんが、勝ったぞ弾正」
成否
成功
第1章 第3節
(アイツ、自分のデッキアウトまで引くつもりか?)
DCⅢはオラボナの動きを不審がる。モンスターを破壊し続ける手際は見事の一言。
……が、それだけだ。手札をごっそり持ちながら、場に伏せてあるカードはたったの二枚。
「デッキ事故なら、楽にしてやるよ」
DCⅢは手札から五体もモンスターを場に出した。速攻で盤面を支配するワイバーンデッキ。その毒牙がオラボナを貫くーーかと思われたが。
「決闘(たわむ)れと謂うべきか」
「なに?」
聞き返す頃には手遅れだ。発動した《ヌガーどもの砲撃》が、そのターン召喚されたモンスターを黒の拳で墓場へと引き摺り込む。
「なっ!?」
さらにこの瞬間、墓場に消えたモンスターの数だけDCⅢの手札が搾り取られた。そうーー残り手札の五枚全て。
(しまった、手札からの大量召喚が仇にッーー)
「数多の幻想、無量の怪奇が同化(か)する時、邪なファム・ファタルが筆を執る」
――出でよ、星喰らいのワーム
どろり。
コールタールの様な闇がカードから溢れ、這い出したワームが大口を開く。
「そんな虫ごときに何が、え、ぁ、あ、あぁぁ!!」
DCⅢの余裕げな声が、ワームの巨大化に引き攣っていく。奴はライフを削らない。代わりに敵の山札を貪るのだーーオラボナが溜め込んだ手札の枚数!
「狙うのはデッキアウト。さあ、貴様が如何に抗うのか魅せ給えよ」
「ひ、来るなぁああぁ!!」
ぞるるるる!
「Nyahahahaha!!!」
成否
成功
第1章 第4節
「さぁ、決闘開始の宣言をしてくれ、赤斗!」
「決闘開始ィイ!!」
宣言する境界案内人の額に冷や汗が浮かぶ。己がデッキを信じ、斬り込んでいく英司と葵。しかし――
「こんなものか、人間」
「我ら兄弟機の連携は完璧だ。貴様ら如き敵ではない」
DCⅢの中でも息のあった二機の『スクラップ・ドレイク』デッキは凶悪だった。互いのモンスターを犠牲に敵のモンスターを砕き、新たなモンスターを作り出す。
ライフが削れていく度に、英司と葵の身体が黒きモノに侵食されていく。闇のバトルでの敗北はこの世界での死を意味するのだ。にも拘わらず、英司が零した言葉は楽し気なものだった。
「戦いは俺の人生――例えカードゲームでも。不器用だと嗤うかい?」
「ハッ、不器用な生き様の何が悪いんスか。んな事言ったらオレなんて、泥臭くて目も当てらんねぇっつの」
葵もまたニヤリと笑んで、浸食の痛みに耐えながら身構え直す。場はドレイクが蔓延り、絶体絶命のピンチに変わりない。
だからこそ燃えるのだ。その身に燻る熱き闘志が!!
「「俺達のターン、ドロー!!」」
先に仕掛けたのは葵だった。
「ターン開始時に、場に出ている《GR(グランドランナー)・メディオ》の効果が発動!
手札に戻り、新たな仲間に未来を託す。出番っスよ《GR・ウイング》!」
さらにGR・メディオのドロー効果が発動し、葵の目に鋭い光が灯る。
「……っし、いけるか! 場の《GR・ウイング》に手札から《GR・ゴーパー》を重ね――共鳴召喚!
駆けろ疾風、命運分かつ一射をその脚に宿せ!《GR・ライカ》!」
荒々しい風が吹き抜け、現れる葵のエースモンスター! その召喚を契機に英司が手札のカードを翻す。
「共鳴召喚のタッグ効果発動! 相棒がこの召喚方法に成功した時、俺も共鳴召喚をする事ができる。
《暗愚の怪人》に《聖魔の女帝》、《荒ぶる森の賢王》を重ね――来い、《光陰の騎士》!!」
GR・ライカの隣に光陰の騎士が並び立つ。流れる様な召喚コンボに一瞬ひるむDCⅢ。
「大型モンスター二体を召喚する手際は見事」
「だがそれだけだ。俺達のターンがまわってくれば、そいつはドレイクの効果でスクラップにしてやろう!」
「アンドロイドの癖に、いい自滅フラグを立てるじゃねぇか」
「何!?」
英司は《光陰の騎士》を呼び水に、場へ"希望"を呼び寄せる。
「焼きつけろ、集いし英雄の輝きを! 5ヒーローズ・トライX!」
爆発音と共に現れた5人のヒーローが、ドレイクを次々に抑えはじめる。敵プレイヤーへの攻撃を仕掛けるためだ。
「残念だが、俺達兄弟の盾となれるモンスターはまだ二体――」
「神秘カード《攻勢陣形》発動っス!」
葵が吠え、手札のGR・メディオとGR・センバを再召喚。残りの二体を抑えつけた。
「なっ――」
兄弟機への動線は確保した。GR・ライカと光陰の騎士が各々の武器を振り上げる!
「「ぶ・ち・ぬ・けえぇぇえーー!!」」
成否
成功
第1章 第5節
「何なんだコイツは! 本当に戦う気あんのか?」
DCⅢは憤慨した様子でモンスターを召喚している。それもそのはず、対戦相手の『うまうま』巫馬・峰風(p3p010411)と言えば、辺りに酒瓶を転がしたまま、床に大の字になってほわほわ多幸感いっぱいそうな顔で空を見上げていたのだった。
「ほうほう、かーどげーむとな! やり方は知らんがるーるぶっくを読めばわかるであろう……任せておけ」
そう言って「キミにキメた!」と手に取ったのは呑めば呑むほど強くなる『酔拳デッキ』。最初は調子よく酒系カードを場に出して、酔拳士たちへ与える事でパワーアップを目指していたが――なんとこの酒カード、使う度にプレイヤーまで酔いがまわる代物だったのだ!
「カードゲームでタダ酒とは気分がいいのぅ。次の酒はこれじゃ。神秘カード《不正義酒・神ごろし》」
「チッ……それ以上飲んだらあぶねーぞ!」
対抗してDCⅢが発動した《神の盃》は、峰風が現した甕の中の酒を神の奇跡で水へと変えた。
「あっーーーーーなにをするのであるか、そんなご無体な!」
「うるせぇ、あっちの酒もこっちの酒もぜんぶ水に変えてやらぁ!」
「そんな事されたら商売あがったりであるぞ!やーめーてーーーーー」
……と見せかけて。
ブシャーーッ!!
「ぐおおぉーー!?」
神秘カード《激酒葬》が発動し、洪水の如く押し寄せる酒がDCⅢを押し流す!
「ふはは! 酔拳士でなければ耐えられまい!」
成否
成功
第1章 第6節
(カードゲームの異世界とはいえ、やはりここも戦場)
弾正は身構えながら辺りを見回す。敵は手番やルールを守るが、こちらの準備を待ってはくれない。
再びデッキ編成中に攻められてしまえば、タッグバトルでの連携を相談する前に乱戦へもつれ込む事になるだろう。焦る彼のすぐ隣では、アーマデルが再び新しいパックを剥いてカードをデッキに詰め込んでいた。
「『このカードは相手プレイヤーに直接攻撃できる』……このカードを使えばDCⅢを直接ぶん殴れる…?」
もしかしたら、いつも通りに戦えるかもしれない。そう思った瞬間――ヴォン! と電子音がして二人の目の前にカードのバトルフィールドが広がった。DCⅢに見つかったのだ!
「ちィ! またしても後手にまわったか。だがアーマデルのデッキは先程のバトルで見たばかりだ。ここは俺が息を合わせて――」
「神秘カード《マッスル・ベンチプレス》発動だ」
「はい?」
弾正が聞き返す間にも、カードが発動しフィールドへ筋トレ機材のベンチプレスが現れる。
「このカードの効果はマッスルだぞ弾正、まっする」
「いや、全然意味分からん」
どうやらこのカードは、現れた機材でプレイヤーが筋トレをし、タッグ仲間が鍛えられた肉体を褒める事でライフを回復するという代物らしい。
「いくぞ弾正。……フッ、……ハッ!」
さっそく重たそうなダンベルを持ち上げて鍛えはじめるアーマデル。最初は急展開にビビった弾正も、なんとなく与太みのある空気に馴染みはじめて納得しだす。
(そうか。複雑なルールより、アーマデルには身体を動かす直感的なカードの方が合っているのかもしれない!)
「褒めるというのはボディビルのアレだろう。"キレてるね!"とか"筋肉板チョコ!"とかだな? 任せておけアーマデル!」
鍛える事しばし。やがて筋トレが終了し、アーマデルがベンチプレスから立ち上がる。
「どうだ弾正」
「ぜ……」
衝撃を受けて弾正は目を見開いた。
「全っ然スタイルが変わってない!!」
「系譜の特質故に、鍛えても見える形で筋肉がつかなかったようだ」
ちゅどーーん!!
「ぐわーっ!?」
そうこうしている内にも、DCⅢが展開してきたモンスターの集中砲火が降ってくる。いつの間にやらアーマデルも弾正も残りライフは雀の涙だ。
「はっ、マッスルに気を取られてアタックされていたことに気付かなかったぞ、マッスルすごい」
「言ってる場合か! ……くっ。今度こそ俺の九武衆デッキを超展開して攻撃を防ぐしか!」
目の色を変えてカードを掲げる弾正。その横で――
「オラッ」
ぺちん。
……ゴァッ!!!
「今度は何だーー!?」
アーマデルが発動した『ライフバーストストリーム・蛇ーゴッドブレス』(どうでもいいけどカード名長いなこいつ)で鍛えたばかりのマッスルがATKへと変換され、DCⅢのライフを一気にはじき飛ばした。
「何か知らんが、また勝ったぞ弾正」
「まともに勝たせろおぉぉ!」
成否
成功
第1章 第7節
「なんだ闇のゲームって。遊戯で命掛けるなよ……」
依頼の内容を聞いた後、聖霊は巫山戯た異世界だなと少し呆れ気味だった――しかし。
「くひひっ! どうした、俺様のウィルスデッキに恐れをなしたか?」
DCⅢに挑発めいた声をかけられ、聖霊は鋭く睨み返す。辺りに展開されたDCⅢのモンスター達はみな、ウィルスの神秘カードを付けられ無理矢理狂暴化されたのだ。
「アンタには聞こえないのかよ、自分のモンスター達の悲鳴が!」
「はぁ? 聞こえねぇなぁ。俺が召喚した俺のしもべをどうしようと勝手だろ」
イタイ。クルシイ。タスケテ……。
聖霊はカードゲームを始めたばかりだ。しかしモンスターの心の声も、病に苦しむ声であれば気付く事ができた。
「待ってろ、いま治療してやる。……俺は手札より《高等医療術式》を発動!
これによりデッキから規定のモンスターを呼び起こす。診察の時間だ、現れろ俺のしもべ――《メディカレイド・クラル》!」
ばさり――白衣を翻し、口元をベールで隠した魔術師がフィールドへ現れる。蛇の絡んだ杖をクラルが天へ掲げれば、場へ清浄な空気が漂い――ウィルスに侵されたモンスター達の攻撃力が下がりはじめる!
「何だ、俺のウィルス達がぁッ!?」
「クラルの医療魔術はあらゆる病を癒やすんだ。さぁ……アンタのウィルスにまみれた思考を治療して、この場のモンスター全てを救う!」
――真・医療魔術(メディカレイド・アタック)!!
成否
成功
第1章 第8節
「おぉ、カードゲームですか! トランプ程では無いですが好きですよ」
依頼の説明を受けた九郎は柔らかに笑う。対戦相手が敵意を剥き出して来ようと、彼はいつでもゲームに対して真摯だ。
「世界征服がどうとかはよく分かりませんが、良い試合にしましょうね」
「ハッ! 随分と余裕そうだが、その落ち着いた顔もいつまでもつかねェ!」
DCⅢは凶悪なモンスターを展開し、場に壁として伏せられていた九郎のモンスターを次々と蹴散らしていく。
「おらおらァ!『TG(トランプガーディアン)』だか何だか知らねぇが、紙切れみてぇに吹き飛ばしてやるぜ!」
「お見事です。それじゃあ僕は墓場に送られた《TG・ハートのジャック》の効果で、手札から任意の枚数を墓場に捨て、同じ枚数ドローしますね」
またか、とDCⅢは眉を寄せた。戦闘が始まってから、こちらの攻撃を防ぎつつ九郎は手札交換ばかりだ。ディーラーの様に鮮やかに、目まぐるしく移り変わる手札。
「リアニメイト、というデッキタイプをご存じですか?」
「あァ?」
DCⅢが大型のモンスターを出すとほぼ同時、九朗の盤面に"役"が揃った。神秘カード《ロイヤルストレートフラッシュ》の効果を発動し、墓場に眠る『TG』モンスターを一斉に甦らせる!
「大型モンスター?! しかもこんなに!?」
「《TG・スペードのエース》は、場の『TG』と名のつくモンスターの攻撃力を上げるんです。さぁ、反撃といきましょう!」
成否
成功
第1章 第9節
諦めの悪い境界案内人からノアへ、大きな期待は託された。たゆんと揺れる胸の前でフィールド発生装置を構え、DCⅢと相対す。
「私のターン! 神秘カード《賄賂》を発動!この効果であなたは私がコストを支払わずモンスターカードを出した時、山札からカードを一枚強制的にドローする」
「施してくれんのか姉ちゃん。俺に負けるつもりかねェ?」
「あら。貴方こそ勝てる気でいるの?」
なんだと、と目を見開くDCⅢ。ノアは涼しい顔をしたまま、もうひとつの神秘カードを場に出した。
「《タダ出し厳禁!》を発動! 互いのプレイヤーがコストを支払わずにモンスターカードを出した時、そのカードを手札に戻す永続神秘カードよ!
そして私が最後に出すのは――現れなさい、モンスターカード《スノーコト》!」
姿を現したのは、一見すると愛らしいモンスターだ。
――しかし。
「このカードは『回数制限なく』コストを支払わずに場に出せるカード。貴方に1枚山札からドローさせてあげる!」
「そいつはありがとよ。遠慮なくドローさせて貰……、なに?」
「あら、ようやく気付いたようね」
DCⅢは効果によって一枚カードをドローする。その後《タダ出し厳禁!》の効果が発動し、再び手札に戻る《スノーコト》。
「《スノーコト》は『回数制限なく』場に出せる、つまり……」
「そう。私は《スノーコト》を出し続け、貴方はその分デッキから引き続ける。貴方がデッキアウトとなるまでね!」
成否
成功
第1章 第10節
ちゃんと説明できただろうか。妖精AIのツバキは自信なさげに俯いた。
『ヴェルーリア様、あの』
「教えてくれてありがとう! 初めて遊ぶゲームだけど、ツバキさんのおかげで戦えるよ」
愛嬌たっぷりの笑顔で主人に返され、ツバキの頬が自然と緩む。
『勿体ないお言葉ですっ』
「あはは。それじゃあ早速やってみよう、世界を救うバトルっていうの!」
戦いの中、ヴェルーリアはいつでも前向きだった。カードで遊ぶ事を楽しみ、臆病なツバキを「大丈夫」「いけるいける!」と励ましてくれる。
(ふしぎ。ライフがピンチなのに、ご主人様が勝つ気がする!)
「次のターンがお前の最期だ!」
DCⅢに勝利宣告されても、ヴェルーリアは前向きだ。
「私は諦めない。ドロー!」
今しがた引いたカードを彼女は場に出し――DCⅢのモンスター全てを生贄に、敵の盤面へ《魔王》のカードを呼び出した!
「《魔王》が敵の場に出た時、私はフィールドへこのカードを召喚できる! 一緒に戦おう《勇者パーティー》!」
発動した神秘カード《魔王との決戦》が、《魔王》と《勇者パーティー》の戦闘を強制的に誘発する。高まるジュールの輝きと共に、ヴェルーリアは攻撃を宣言する!
「《魔王》と戦う《勇者パーティー》は、攻撃力が倍になり、2回攻撃が可能になるよ! 必殺・ホープスラッシュ!!」
「ぐわああぁぁ!!」
DCⅢのライフが削れ、0になる。こうしてまた、勇者の伝説は打ち立てられた!
成否
成功
第1章 第11節
「さあ、闇のバトルの始まりだ! 僕の最高に高まったジュールで討ち倒してやるぜ、DCⅢ!」
スーハー。マタタビ袋でテンション上げて、冰星は高らかに宣言する。
「決闘開始ィイ!!」
コイントスが始まれば、そこから先は命懸けのデスゲーム! 表を示したコインを見て冰星は叫ぶ。
「先攻は頂いた! 僕のターン、ドロー!
僕はフィールドカード《レインボーランド》を発動! この効果で手札からレベルの低いモンスターを召喚できる!いけ、《ファッティー・スクワール》!」
召喚時の効果により、デッキから更に1体のモンスターが現れる。《ファッティー・スクワール2号》――場に揃ったこの2体が、勝利への道筋だ!
「2体のモンスターを生贄にして、《ゲロゲロゲロッピ》を召喚!」
「な、何なのだその見るからにヤバそうなモンスターは!?」
何故だかとても嫌な予感がする。DCⅢのAIチップが警鐘を鳴らす。とにかくアレを止めるために場へモンスターを展開せねば!
「こんな時に手札事故かよ! 神秘カード《再誕》で手札を墓地に捨て、その数だけドローする!」
冰星は見逃さない。DCⅢが捨てた手札は呼び出しにくい上級モンスターばかり。
「《ゲロゲロゲロッピ》の効果発動! 相手の墓場にいる上級モンスターの数だけ、相手を直接攻撃だ!」
「なにぃッ!?」
「さあ、ここからが本番!僕の本気のジュールを受けてみな!
レインボーストリーーーム×7ッッッ!!!」
成否
成功
第1章 第12節
「お前、そのまま連戦してるとアル中で倒れるんじゃないか?」
峰風に負けたDCⅢは、敗北後も彼の泥酔っぷりが心配で、なんと行動を共にしていた。
「敵に寝返ったかDCⅢ」
「その声は……DCⅣ!?」
「なんじゃお前、型落ちだったのであるな」
そんな事はどうでもいいから逃げろ、と峰風に助言するDCⅢ。最新型は知能が格段に上がり勝負も難度が上がるという。
「よいではないか。あっぷでーとした『酔拳士』デッキの実力、見せてやろうぞ!」
初動から上級モンスター《暗黒騎士ザルバ》をくり出すDCⅣ。言わんこっちゃねぇと焦るDCⅢ。それでも峰風は涼しい顔だ。
「酒カードを飲み干し(墓場送りにし)、ゆけぇい《泥酔天女》!」
現れたのは酒器帯び頬を染めた美しい女性モンスター。しかしひとたび相手の場へと近づけば――嫌がるザルバの口に酒瓶をつっこみ、無理矢理飲ませはじめる!
そう。《泥酔天女》は相手の男性モンスターを陥落する効果を持っている!
「うわぁ……えげつないのである、酔っ払いコワイのであるねー」
「他人事かよ! お前が出したんだろ!?」
ちょっと泣きそうになりながら対抗しようと手札を探すDCⅣ。
「こいつでどうだ、神秘カード《SAKE☆祭り》!」
「はっ、それは酒カウンターを鮭カウンターにしてしまう鮭とばカード! ぐわーなんてことを!」
――そんな肴を供されては、もっと呑みたくなるのである!
峰風と強敵の激戦はまだ続く!
成否
成功
第1章 第13節
「今度は俺はサポートに回ろう。AIのアドバイスを得て、そのためのデッキを組んでみた。
弾正のデッキを存分にふるい、本当のTCGというやつを俺に見せてくれ」
「アーマデル……」
アーマデルの言葉に、弾正はじぃんと心が温まるのを感じていた。
大好きな人から託されたからには、男として絶対に負ける訳にはいかない。そう、これはただのカードゲームではない。愛する者のための戦いだ!!
新たなDCⅢと相対し、弾正は殺意を高めながらカードを引いた。
「俺はモンスター《九武衆・オニザ》を召喚! 搦手で行こう。頼んだ、アーマデル」
「任せてくれ」
頷いたアーマデルは、手札からフィールドカードを場に配置する。辺りの景色が白くなり、新しいものに作り替わる――
「フィールドカード《真夏の海》を発動。場の環境を『夏』『光』『水』に塗り替える」
そうして現れたのは、燦燦と輝く太陽が煌々と照り付ける砂浜のビーチ! 甲冑姿のオニザが暑そうに呻いた。
「むっ。オニザが弱体化しているぞ、アーマデル」
「安心してくれ。このままでは『冬』属性のオニザは不利だが、
モンスター《オタクに優しい褐色ギャル》を召喚する事で、『冬』『闇』『地』を『夏』『光』『水』に書き換える」
ギャルのサービスが発動し、オニザの攻撃力がぐんと上がる。補正は確かに効いている!
「おぉ、これがサポート効果か! 上手くかみ合っているぞアーマデル!」
「それなら更に、この装備カード《黄金のマイクロビキニ部》……なんて?」
AIのアドバイス通りに場に出しかけて、アーマデルははたと動きを止めた。カードイラストで見る限り、限りなく薄い布面積。
更に進められたのはイソギンチャクが描かれた、《あの夏の想い出》というカードだった。二枚をプレイヤーに使えば、弾正のモンスターが更に強くなるだろう。しかし――
「イソギンチャク、あの夏の思い出……うっ、頭が!」
「弾正、しっかりしろ! まだバトルは終わっていないぞ!」
隣でふらつく弾正をアーマデルは元気付ける。しかし弾正の目はどことなく映ろだ。
「何か大事な事を忘れてしまっていた気がする。あの夏の日は……そう。そのまま飲みこんで。僕のレーヴァテイン……」
「弾正ーー!! くっダメだ、弾正にやらせる訳にはいかない俺が着る……!」
「駄目だ、危険すぎる! いつも露出をほど良く抑えているアーマデルが、そんなほぼZENRAに近い装備を纏うなんてっ……どちらかが着なければいけないというのなら、俺にも着せてくれ!」
「それなら、一緒に着よう弾正。なにせマイクロビキニ"部"だからな。部活は独りでは成り立たない」
「フッ、確かにな。それでは着よう。俺の心はいつも、アーマデルと共に――」
「弾正……」
対戦相手のDCⅢ達は二人のやり取りをじーっと大人しく待っていたが、どちらから言うでもなく顔を向け、目で通じ合う。
((早く終わってくんねぇかな~~~~))
成否
成功
第1章 第14節
「カードゲームか。賭けが入るとさらにヒートして良し」
今回は世界が賭けの対象だけどさ、なんて眠たげに笑うウーナ。彼女が防衛線の最期の砦だった。圧倒的な数でごり押すDCⅢ達。すぐ後ろでは境界案内人が諦めきれずにプログラムを組み立てている。
「ま、やるかー。今回嫌われてもいい相手だし」
気の抜けた声から一発、初手で取りい出したるは永続神秘カード《万色硝子の宮殿》。
その効果は和平。互いのモンスターは、攻撃宣言を行えない!
「さーて、お城を主軸にー」
「待て、初手から攻撃封じだと? 貴様、勝つ気はないのか!」
声を荒げるDCⅢへ、面倒くさそうに肩を竦めてみせるウーナ。
「開幕から人のデッキに難癖付けるのもどうかと思うよ? はい、そういうわけで永続神秘カード2枚目ね。
《盗賊神の眼》で、モンスターが場に出る度に、出したプレイヤーはデッキの山が5枚削れるよ」
「なっ! それでも貴様ら正義側か!行動狭めるのは主人公のやることじゃないだろ!?」
「確かにねぇ。この手の話じゃ負けフラグだし?」
でもね、とウーナは指先でカードを弄ぶ。いつも扱う投擲用のカードを手にするが如く。
「勝ち負けはいいんだ。アタシを相手している間に、銀の弾丸が込められるって寸法。
時間稼ぎってわけだよ。デッキのテーマと同じで――ねぇ、そろそろ完成した?」
「ありがとう、ばっちりだよ!」
返事を返した蒼矢は、エンターキーをタンッ! と押した。
成否
成功
NMコメント
今日も貴方の旅路に乾杯ッ! ノベルマスターの芳董(ほうとう)だ!
キミ達にアツいバトルの依頼をお届けしに来たぞ! 最後まで見て行ってくれッッ!!
●目的
運命蒐集型カードゲーム『混沌札(パンドラカード)TCG』でのバトルを楽しむ
●世界
練達に似た雰囲気の世界です。バーチャル・リアリティの技術が発達し、カードゲームで出したモンスターやフィールドカードをホログラムで再現されるハイテク世界。
以前、何人かの特異運命座標がこの地に降り立ってカードバトルをしましたが、その時は《邪竜バルファザード》という恐ろしいカードの力によって、命をかけた闇のバトルが繰り広げられました。
(※……と言っても、ライブノベルの世界での死=PCの死ではありません。死んでも異世界から弾き出される程度ですので、雰囲気をお楽しみください)
このTCGの生みの親であり、バーチャル・リアリティ技術を提供している『ダイナカンパニー』の社長・大道寺 七基(だいどうじ ななき)が世界にTCGによる世界征服を宣言し、世界は大混乱に陥っています。
●この世界のTCGについて
TCGとはトレーディングカードゲームの略です。
この世界のTCGは『混沌札(パンドラカード)TCG』と呼ばれるゲームで、40枚の自分のデッキを使い、"モンスターカード"を場に召喚したり、場に色々な効果を与えるさまざまな"神秘カード"や"フィールドカード"を使って戦います。
最終的に、プレイヤーのライフまたはデッキを削り切った方の勝利です。
【知っておくと便利なTCG用語 ※今作固有の物もあります】
ドロー:山札からカードを引く行動です
ターン:手番という意味です
サレンダー:山札の上に手を置いて降参する行為です
タップ:場に出ているカードを横にする行為です。カードが行動し終わった時の目安になったり防御にまわったりする時によく使われます
闇のバトル:TCGの作品でしばしば出てくるゲーム形式です。大抵の場合、負けた側が死にます。
ジュール(輝き):『混沌札(パンドラカード)TCG』固有の単語です。"気"や"フォース"のような超常的な力の事を差します。「俺のジュールが昂るぜ!」とか「俺の最強のジュール!受けて見ろッ!!」なんて言っておくと、この異世界でのTCG上級者っぽく見えます。ノリで使いましょう。
●エネミー
カードバトル戦用アンドロイド『DCⅢ』
皆さんに勝負をしかけてくるアンドロイドです。バーンデッキを使う個体から特殊召喚で大量のモンスターを展開する個体など、色々なアンドロイドがいます。
一部のアンドロイドは闇のバトルを仕掛けてくるという噂もありますが……。
●プレイングの書き方
今回のシナリオはTCGを詳しく知らない方も楽しんでいただけます。
・こういう見た目のモンスターを相棒にしたい!
・切り札のモンスターを出す時のキメ台詞は「集いしパンドラが奇跡を起こす。顕現せよ、〇〇ドラゴン!」
・普段使ってるのが炎の技だから炎のカードを使いたい!
・回復担当のキャラだから回復できるカードを使いたい!……etc.
とにかくかっこよく、かわいく、PCさんの魅力いっぱいで敵を倒せそうな事を書いてみてください。
「TCGよく分からないけど、僕ならどんなカードを使えるかなぁ?」という感じの書き方も問題ありません。芳董のオススメデッキでPCさんの描写を膨らませます。
アンドロイドではなく、他の特異運命座標と戦いたい場合はプレイングの一行目に【対戦/タグ名】を記載してください。PC同士のバトルを描画します。
●その他
このシナリオはライブノベル『勝利へのディスティニードロー』(https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/2368)の続編ですが、読まなくても問題なく参加できます。
それでは、混沌札TCG――…バトル開始ィイ!!
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