シナリオ詳細
興味の矛先
オープニング
●畑の土竜(ワーム)退治トライアル
R.O.Oでの冒険を経て、現実世界でも亜竜種たちが暮らす領域へと足を踏み入れることが可能となったイレギュラーズたちは、『フリアノン』の里長である珱・琉珂の提案により『覇竜領域トライアル』を始めることになった。
覇竜領域トライアル。それは簡単に言ってしまえば覇竜領域での雑用仕事である。雑用仕事を通じて現地の亜竜種たちと友誼を図ったり、危険なこの地でイレギュラーズたちが生き残れるかを試すものであった。
既にいくつかのトライアルが行われている。
そして、今回のトライアルの依頼人は――。
「ああ、アンタたち。そう、そこのアンタたちだ」
亜竜集落ペイトへとやって来たイレギュラーズたちへと声を掛ける者が居た。イレギュラーズたちが顔を向けると『彼女』は無造作に座っていた岩から飛び降り、イレギュラーズたちの元へと駆けてくる。
「ふぅん」
駆けてきた女は煙草を咥え、イレギュラーズたちを品定めするように眺めた。
赤い瞳には好奇心が宿り、興味津々といった目を向けてくる。
「ねえアンタたち。アンタたちが強いって聞いたのだけれど、本当か?
それが本当ならトライアルをアタシも頼もうと思うのだが、どうだ?」
顎のラインに切りそろえられた髪を揺らして問うた女は、翠・明霞(スイ・ミンシャ)と名乗った。元より『外』に興味を抱いていた彼女だが、最近彼女の幼馴染のひとりもトライアルを頼んだと聞き、俄然興味を覚えたのだと言う。
イレギュラーズたちはフリアノンからペイトまで来れるだけの技量もある。
そして『外』の者ならではの戦い方もあるかもしれない。
「アンタたちの戦いっぷりをあたしに見せて欲しい。けれどトライアルって聞いているから――そうだな。『畑』にでも行ってもらおうか」
フリアノンとペイトを繋ぐ地下通路。脇道へと入れば蟻の巣上にその地下空洞は広がっている。その中に畑があるのだと口にして、明霞は紫煙を吐き出した。
「その畑ではペイトゴボーって野菜を育てているんだが、土竜……ロリポリワームたちがそのゴボーが好きでね、荒らしにくるんだ。そいつを倒して欲しい」
亜竜の一種であるが、見た目はダンゴムシに近い。が、一体一体が2m~3mの大きさがある。皮は固く、特に背の皮は刃物が刃こぼれする程に固い。丸まって転がり突撃等をされれば、ペイトに住まう成人男性でも吹き飛ばされる程に強力だ。
因みに肉質は鶏肉に近く、動物性タンパク質が豊富で、ペイトゴボーと煮込んだ料理は筋肉が良く育つとペイトの民たちには人気だ。あえて集落から離れたところに畑を作ってペイトゴボーを育てるのは、ついでに誘き寄せられたロリポリワームも狩ることを目的としているらしい。
「アンタたちが危なくなったらあたしも手を貸すけど、今回はトライアルだ。畑を如何に守って狭い空間で戦うかを見せて貰うつもりだ。――どうだい、やれるか?」
アンタたちの戦いっぷり、あたしに見せておくれよ。
美味そうに紫煙を吸い込み、明霞は楽しげに瞳を細めた。
- 興味の矛先完了
- GM名壱花
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2022年02月13日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
●地下の畑に向けて
畑へと続く地下通路は、フリアノンからのメイン通路よりも狭い。
「畑に被害を及ぼすものも亜竜なんだねえ……」
先頭を歩く翠・明霞の背中へと声を掛けた『希望の蒼穹』アレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)は、横穴へと反響していく自身の声に、興味深げに通り過ぎた横穴へと視線を向けた。明かりの強い『シャイニーランプ』で照らしても、穴の先は真っ暗だ。蟻の巣状に入り組んだここでは、きっと迷子になったら自力で帰って来られないだろう事が解り、『plastic』アッシュ・ウィンター・チャイルド(p3p007834)は前を歩く人たちとの距離を半歩詰めた。見るものひとつひとつが興味深いという久々な感覚を存分に味わいたい気もするが、その気持ちは安全なところ――集落やロリポリワーム退治を終えた畑で満たせばいい。
「そりゃあそうだ。此処では強くないと生き残れない」
横穴へと進めばそんな危ない生き物がウヨウヨしている。亜竜種でも倒せない地中生物たちがわらわらと存在しているから興味があっても道を逸れないように、と明霞は肩越しにイレギュラーズたちへと視線を向けた。
「ペイトでも言ったけど、ロリポリワームたちの背の皮は硬いから、上手いこと戦って」
殆ど背しか見えていないロリポリワームを倒すには工夫が必要だが、皮が硬いおかげで攻撃による肉の旨味が損なわれることへの心配をする必要がないのがロリポリワームの良いところらしい。
「ぺいとごぼーとろりぽりわぁむのお肉は煮込み料理にするのですよね? 鴨葱ならぬ亜竜ごぼーだなんて、今日は良い日ですね! うふふ!」
「『ゴボーと煮込んで食べると筋肉が良く育つ』と先ほどチラと仰られていましたが……筋肉が、育つ……? あの、後からレシピを教えてもらっても良いでしょうか?」
まだ見ぬペイトゴボーとロリポリワームの料理に興味を惹かれているのは『花嫁キャノン』澄恋(p3p009412)と『忠義の剣』ルーキス・ファウン(p3p008870)だ。ゴボーという響きから牛蒡の姿を想像してしまうが、未知の地ならではの野菜かもしれない。どんな味がするのだろうと想像すれば、仕事後が楽しみにもなる。
「お花やお野菜に良いところって、ダンゴムシさんもいっぱいいるのよね」
ダンゴムシの良い所は土地を豊かにすること、悪い所は花や野菜を食べてしまうところ。昆虫図鑑――ダンゴムシは昆虫ではないけれど――で見たことがあるかも、と『リチェと一緒』キルシェ=キルシュ(p3p009805)は明るい瞳を瞬かせ、けれどすぐにふるりと頭(かぶり)を振る。
「でも、ゴボー食べちゃうのはいけないわ!」
「ん……大事な食材、野菜。荒らされる……しちゃうの、大変」
ぐっと両拳を握りしめたキルシェに、『燈囀の鳥』チック・シュテル(p3p000932)もこくりと頷く。荒らしにくる亜竜も腹を空かせているのかもしれないが、ペイトゴボーはペイトに住まう人々が、自分たちが食べるために育てているものだ。引くべき線をしっかりと認識し、チックは外の世界に憧れている明霞の前でどのような戦いを見せるか――と思考を巡らせながら、穴の先の畑へと気持ちを向けるのだった。
「それじゃあ、あたしは此処で見てるから」
畑に着くなり明霞はそう言い置いて、隅に転がっている大きな岩のひとつに腰を掛けた。懐から煙草を出しかけ――吸わずにしまったのは、ロリポリワームに人が居ると勘付かせない配慮だろう。
「明霞様、案内ありがとうございます」
「美味しいゴボー……保つ為に、葉っぱ……傷つかない様に」
緑の葉が地面に生える一角――畑を囲むように立ったイレギュラーズたちは天井や四方の土壁の穴を警戒する。いつでも気付けるようにと神経を尖らせるのは仲間たちへと任せ、チックと澄恋は顔を見合わせると同時にこの開けた空間内に《保護結界》を展開した。これならば直接ロリポリワームがペイトゴボーを齧りにきたり、畑に直接穴を掘ろうとしない限りペイトゴボーが傷つくことはなくなるはずである。空間内に満ちる清らかな気配に、岩の上で足を組んだ明霞が「へぇ」と面白そうに笑った。
その後も緊張の糸を緩める事無く警戒すること、暫く。その時は唐突に訪れる。
「あ、来るかも?」
「拙者にも聞こえたでござる」
「俺にも聞こえました。複数……です、よね?」
「上と……横っすね」
研ぎ澄ませた感覚で音を拾っていたアレクシアと咲耶とルーキスと無黒が、ほぼ同時に反応した。
ドドドドドドと響く、複数の何かの進撃音。それはまだキルシェの耳には届いてはいないけれど、皆がそういうのだからもう少ししたら来るのだろうとキルシェは身構える。
「上から真っ直ぐに畑に落ちてきたら困りますね」
「きゃっちならわたしにお任せ下さい!」
嫁に必要なのは包容力。どんな旦那様も攻撃も抱きとめてみせましょう!
きりりと嫁パワーを滾らせた表情をしてみせた澄恋に頼もしいっすと笑った黒無は、天井のどの穴かの確定を急ぐべく頭上のみの音へと意識を向けた。
横側も横側で方向は解るものの、如何せん穴が多い。黒無以外の三人は少し壁に寄り、接近しつつある音へと耳を澄ませる。
響く音は小さな音から、直に鋭い聴力を持たなくとも聞こえる大きさの音へ。
狭い通路を走る振動のせいだろう。天井からハラハラと小石や土片が降ってくる。
「中央、右寄り! 来るでござる!」
「任せて! 受け止めるよ!」
各自が持ってきた灯りに満たされた薄明るい空間に、勢いよく何かが飛び込んでくる。それはまっすぐに畑へと駆け――しかしそれは畑の前で勢いを緩めてアレクシアへとぶつかり、翻すように後ろへ転がった。
(……今、ワームから緩めた……?)
気のせいだろうか、とチックが瞳を瞬かせる。
けれど思考を巡らせる前に、鋭い声がいくつも仲間たちの間で飛び交った。
「こっちも来るっすよ! そこっす!」
「はーい、お任せくださーい!」
ゴロンと転がり落ちてくる『巨大なボール』は、僅かに畑からずれている。少しだけ淑女らしさを横へ置き、どっせい! と受け止めれば、相応に重たい。勢いを流すように、澄恋は畑とは反対へロリポリワームを投げ捨てた。
「あなたのお相手はわたしですよ!」
名乗りあげ、対峙する。
綿帽子越しにちらりと覗い見た仲間たちは、もう片方のロリポリワームの相手をしている。あちらは五名、こちらは三名。敵を分断することで畑への被害を出さず、人数の多い片側が先に仕留める手はずだ。
(――さて)
此処まではいい。問題はこの先である。
どんな戦いを見せてくれるのかなと楽しげな傍観者の顔で、明霞は足を組み直した。
●土に塗(まみ)れて
秋の花がふわりと優しく咲くようだった。
けれどそれは、毒花。優しい花などでは一切なく、花啓くと同時に放たれた魔力がロリポリワームを襲う。
「こっちだよ、おいで!」
アレクシアが畑を直線で結ばないように注意を引く。彼女は強い光を放つランプを携行しているためそれだけで目立つのだが――ロリポリワームは、『敢えて』アレクシアへと背を向けた。
(……やっぱり)
つい先程覚えた違和感。頭側に急いで回り込んだチックがプリズムの軌跡をぶつければ、ロリポリワームはそれを嫌がった。
暗い地中で暮らす以上、彼等が目にする光はメイン通路に定間隔で置かれた明かり――これもロリポリワームたちが来ないように着けているのだろう――以外は訪れる探索者の持つ明かりくらいが精々だろう。暗闇で活動する彼等にとって、アレクシアが持つ明かりが強すぎるのだ。その明かりが目立つからこそ、ロリポリワームは彼女を避けることとなる。
「明るいの、好きじゃない……みたい」
「それじゃあ、これは畑に置いたほうが……?」
転がった先が畑だった場合は別として、進んで畑には向かわなくなるかもしれない。こくりと頷いたチックの姿に、アレクシアはランプを畑に設置しに行った。とても目立つその明かりは今回は逆効果なのだから、壊さない限り畑を守ってくれることだろう。
「お主達も生きる為に必要でござろうが畑のゴボーには指一本触れさせぬ」
「本当に大きな団子虫のよう、です、ね!」
咲耶が絡繰手甲と鎖鎌を構えるのに合わせ、言葉の区切りの度に地を蹴ったルーキスが『瑠璃雛菊』を振るう。カンと甲高い音と手首から腕に駆け上がっていくビリビリとした痺れ。背を守る皮……と言うよりは殻と呼んでよいそれは固く、咲耶の神速の連撃を持ってしても浅く傷がつくのみだった。
背中以外を狙いたいところだが――『背中以外を狙えない』。ロリポリワームの腹は地面へと向いており、足に護られている上に地面とほぼ接しているに近いそこに入り込むのには工夫が必要だ。だからペイトの民は壁にぶつけて倒すという例を事前に明霞は告げ、外ならではの戦いが見られるかと持ちかけたのだが――この戦いは少し時間がかかりそうだ。
「このような姿でも亜竜なのですね」
破壊的な魔術がアッシュの髪を揺らし、バチリと空気を焼いて放たれる熱波。
魔術が生み出した軌跡を描くその向こうのもう一体のロリポリワームと相対する澄恋たちはペイトの民たちの戦いを真似ることにしたようだ。上手く気を引いた澄恋が土壁を背にして立ち、白無垢を土で汚しながらも避ければ、凄まじい音を立てて壁にロリポリワームがぶつかった。
「穴にも気をつけた方が良いっすね」
ちょうど空いていた穴に入り込んだロリポリワームの音を無黒は即座に意識を向けて追い、その間にキルシェは歌を澄恋へ贈りながら祈る。
――どうか、あなたが前を向けますように。その身を蝕む苦しみが癒えますように。
(絶対に澄恋お姉さん倒れさせないのよ!)
澄恋を想う慈愛の雨は傷を癒やし、幾度だって立ち向かう勇気を与えてくれる。
「来るっすよ!」
今度はぶつける場所に気をつけて。
花嫁は重い白無垢を華麗に捌き、ロリポリワーム――地竜と相対した。
――――
――
明霞が予想したとおり、戦闘は長引いていた。保護結界のおかげで畑に被害は出ていないものの、イレギュラーズたちには傷と疲労が溜まっている。
「手を貸そうか?」
「いや、大丈夫。明霞君はそこで見ていて」
必ず、倒すから。
それでもイレギュラーズたちは諦めない。必ず倒しきってみせるという強い意思を抱いて此処に来た。ここで膝をつくなんてことは、外からやって来た冒険者としての矜持が許さない。
ロリポリワームたちも流石は亜竜と言ったところだろう。装甲のような硬い皮で身を守る彼等へのダメージは、物理攻撃はあまり届いておらず、アッシュたちの神秘を司る魔術のみがダメージを累積させていた。
それでも良い点はあった。ロリポリワームは双方とも、目の前に美味しい野菜があるのに食べられないことで腹を立てており、邪魔者たちを排除することで頭がいっぱいになっている。顎を鳴らして怒りを顕にし、体当たりをしてはイレギュラーズたちを吹き飛ばして地面に潜ることをしないため、地中のペイトゴボーたちはしっかりとイレギュラーズたちによって護られている。
けれど背を攻撃してばかりでは決定打に欠ける。
「おれたちも……壁、ぶつけよう」
これでは埒が明かないと、チックの提案で無黒たち側と同じようにアレクシアたち側も壁にぶつける手段を選ぶことにした。
壁にぶつけたとしても、ロリポリワームたちもただ攻撃を受ける訳ではない。本来の性質的には周囲の脅威がなくなるまで丸まって鉄壁の防御力で身を守るのだが、今はロリポリワームたちはイレギュラーズたちに怒っている。すぐに身を立て直そうとのたうって、近寄るイレギュラーズたちを弾き飛ばし、そうしてまた相対する。
背よりはマシだが、それでも『外』の敵よりも固い腹。
狙える一瞬を逃さずに攻撃を重ね、幾度も諦めずに繰り返す。
――一度口を挟んだのみで見守るに徹している明霞の唇は、知らず微かに上がっていた。彼等が諦めずに前だけを見つめて敵に挑めるのは背中を預けられる仲間たちがいるからだと解っているからだ。
そうして――。
「お待たせしたでござる!」
膝をつきそうな澄恋の眼前に、彗星の如き素早さで忍びが現れた。
神速の連撃を叩き込んだ咲耶は澄恋を抱え、のたうつように暴れてぐるんと回って起き上がる際の攻撃を避ける。
「皆で畳み掛けるっすよ!」
こちらのロリポリワームも既に澄恋と無黒によって程よく削られている。戦闘が長引く中、何とか澄恋が持ちこたえられていたのはキルシェが回復に専念してくれたおかげだろう。三人は持てる力を全て出し切り、励ましあい耐えていた。
いつでも動けるようにと少し腰を浮かせていた明霞は岩へと座り直す。
支え合う仲間たちの姿が其処にあり、全員が揃ったならば、後はもう――。
自身に癒やしの魔術を施したアレクシアが、薄紅色の魔力の花弁が解けるように溶けて消えていくのを見送って。亜麻色の髪を肩に払い、ふうと吐息を零してから息を吸った。
「明霞君、どうだった?」
柔らかな声が洞穴内に響く。深手を負っている者たちを回復して回るキルシェと自身の傷を癒やすルーキス、アレクシアへと順に視線を向けた明霞は、うーんっと唸り声めいた声を漏らしながらペイトゴボーを引っこ抜く。
「まあ、及第点ってところだな。あたしは『戦いっぷり』が見たいって言ったろ?」
外の人ならではの戦い方を見せて欲しくして、敵の特徴も普段の戦い方も先に伝えてある。結果的に倒せはしたものの、イレギュラーズたちはどうやって腹を攻撃するかの対策をしておらず、倒すのに時間が掛かっていた。そのため、負傷も多くなった。
「ああでも、最初に守るための結界を張るのは良かったな。あたし等はさっさと倒すためにそこまでは気にしないから」
明霞が引き抜いたペイトゴボーはスラリと長く、とても形が良い。その姿は牛蒡と大根の間のような姿をしていたため、イレギュラーズたちは『想像していたより太いな』と思ったかもしれない。アレがなかったらこんなに綺麗に収穫できなかっただろうと明霞は笑みを見せた。
「そのうちまた何かお願いする事があったらさ、今度は『外の戦い方』、見せておくれよ」
「はい、必ず……!」
真剣な顔で頷いたルーキスに、姉御肌の女はもっと肩の力を抜いていいとカラリと笑って返して。
「とりあえずはもうひと仕事。収穫を手伝ってもらえるか?」
「うん。おれも……手伝う、よ」
「勿論です。此方は……美味しいのです、よね?」
キルシェからの回復を受けながら葉も外の牛蒡や大根と違うのをしゃがみこんでじっくりと観察していたアッシュが、顔を上げて問う。
「美味いよ。戻ったらご馳走してやるから楽しみにしていな」
「わたし、お料理は得意ですよ、明霞様!」
花嫁ですので!
グッと両拳を握った澄恋は、ペイトゴボーの収穫をイレギュラーズに任せてロリポリワームの元に向かう明霞の後についていく。大きなロリポリワームをそのままの状態で洞穴を抜けて持ち帰るのは大変なため、解体してから持ち帰るのだ。
「大物でござるからな。拙者もそちらを手伝おう」
「では俺も。お役に立てて嬉しいっすね♪」
「ねぇ明霞お姉さん。亜竜は色んな使い道があるのよね?」
ふたりの後を咲耶と無黒、そしてある程度の回復を終えたキルシェも追いかける。
「ダンゴムシさんはどんな風に利用するのかしら?」
「ああ。身は肉、皮は様々なものに加工する。防具にもなるだろ? それから家にも使ったりできるし、鍛錬にも使えるんだ」
イレギュラーズたちが居てくれたから、その素材も余すこと無く持ち帰ることが出来る。「解体作業が苦手でなければワームもよろしく」と声を掛け、明霞は慣れた調子でロリポリワームの皮を剥いでいった。
そうして持ち帰ったペイトゴボーとロリポリワームの肉を使用した鍋は、イレギュラーズたちへと振る舞われる。さて、そのお味は――。
成否
成功
MVP
状態異常
あとがき
シナリオへのご参加、ありがとうございました。
ちなみに、ペイトの人たちが取っていない方法で他の腹を狙う場合、(地中のペイトゴボーが傷付きますが)地中から飛び出てきた時に見える腹を狙う。撃破組は複数人で怒りを付与していましたがこれを一人で行い、誰かひとりに意識を向けさせて回り込んだ仲間が片側の横から攻撃して転がす、等々の行動が出来たかと思います。
今回はこのような結果となりましたが、また明霞さんに格好良い姿を見せてくださいね。
おつかれさまでした、イレギュラーズ。
GMコメント
覇竜領域トライアル二本目! 壱花です、ごきげんよう。
今回はワーム退治となります。
●目的
明霞の手を借りずに畑のワームを退治する
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
●シナリオについて
明霞と一緒に地下通路を進み、畑へと向かいます。案内してくれるので迷いません。ペイトは暗い洞穴の里なので、光源があると良いかも知れませんね。
畑に到着し、暫く待機しているとワームがやって来ます。畑のある空間には天井も含め、大小複数の穴があり、イレギュラーズたちはその内のひとつから畑にたどり着きます。イレギュラーズたちが通って来た穴とは違う穴からワームは現れますが、ドドドドドと地響があるため接近に気付くことでしょう。どの穴から出てくるかに気付くかはイレギュラーズ次第となります。
●畑
20m四方程の空間があり、中央10m四方辺りの地中に洞穴内でも育てられるペイトゴボーという種の野菜が埋まっています。緑の葉が生えているため、埋まっている場所の視認は可能。
ゴボー自体に被害が出てしまってもゴボーは食べれるので、折れてしまった分は持ち帰ります。被害が出なかった場合もいくつか収穫して帰るようです。長ければ長いほど栄養価が高く美味しいのだとか。
外の葉に被害が出ても地中のゴボーが無事なら大丈夫ですが、外の葉に被害が出た分はそれ以上成長しなくなるため収穫することになります。長いゴボーを作るためにも、被害は少なければ少ないほど良いです。
●ロリポリワーム×2体
体長2m~3mのダンゴムシに似たワーム。覇竜領域に生息しているため、それなりに強いです。
丸まってアタックをする他、固い顎で穴を掘り、地中に潜ってから飛び出て奇襲!等も行います。ペイトでは転がってきたところを避けて壁にぶつけさせ、ひっくり返った所を倒す、という戦い方が主流のようです。
●翠・明霞
亜竜集落ペイト出身の亜竜種。
外の環境、特に戦う術について強い興味を持っています。
同行し、畑まで案内してくれます。ワーム出現時には隅の方で傍観を決め込みます。
危なかったり作物が全滅しそうであれば明霞が手を貸してくれますが、彼女の抱く外の世界への憧れが減ってしまうかも知れません。
それでは、イレギュラーズの皆様、グッドラック。
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