PandoraPartyProject

シナリオ詳細

今日の献立は『亜竜集落の唐揚げ』

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●ウェスタの『母』
 亜竜集落ウェスタ。
 ピュニシオンの森近傍の地底湖を中心として作られた集落で、フリアノンやペイトとも交流を持つ集落である。
 亜竜集落同士の交流は決して珍しいものではないが、ウェスタにはとりわけ、他の集落から来る者が――特に子供達が――多かったりする。その最たる理由。
「あら、飛呂くんじゃないかい? 来てくれたんだねぇ。食べたいものはあるかい?」
「顔を見せただけなのに急すぎだろ!? 気にしてくれなくたって……」
 囲 飛呂(p3p010030)はウェスタに依頼のために訪れた折、とある民家(というには些か大きな建物)へと挨拶がてら訪れた。仲間達も一緒だ。中から足音を響かせ現れた女性は、褐色の肌に捻れた角、桃色の尾を持った壮年らしき女性であった。開口一番食事に誘うその女性こそ、子供達がこの集落を訪れる理由なのだ。
「何いってんだい、ママ・フランマの顔は誤魔化せないよ! ……って言っても、すぐに出せるものは余りないんだけどねぇ」
 ママ・フランマ。自他共にそう呼ぶ彼女は、ウェスタにおける目立った特徴を持つ亜竜種のひとりである。
 火の扱いには厳しい彼女であるが、料理にかける情熱は人一倍。好き嫌いすらも直すと豪語する彼女のもとで、その言葉通りとなった子等は数しれない。
 噂によれば、かのフリアノンの桜・琉珂すら世話になっているのだとか。そんな彼女なので、『あまり無い』には説得力が微塵もない。
 斯くして、一同は彼女の手により腹八分目程度まで丹念におもてなしを受け、その料理の出来に驚いた……かもしれない。未知の国で新しい味に出会うのは、いつだって驚きに溢れている。

●母の頼みは断れない
「そうそう、飛呂くん! ちょっと頼みがあるんだけど、構わないかい?」
 ……ややあって、一同が食後の茶を頂いていると、フランマはちょっとだけ申し訳無さそうに、飛呂に手を合わせつつ問いかける。絵に描いたような豪快さを持つ彼女だが、その実礼節と相手への経緯は欠かすことがないのである。
「そりゃあ、ここまでご馳走になって終わりとは言わねえ……んじゃねえの? 出来ることなら手伝うけど」
 飛呂が仲間を窺うように見ると、一同も同じ感想だったらしく手伝う気満々だ。腹ごなしにも丁度よかったのだろう。
「そう言ってくれると嬉しいねぇ。……実はね、ここだけの話だけど飛呂くんの言ってた『唐揚げ』、実現できそうなんだよ」
「マジで!?」
 フランマの言葉に、飛呂が思わず飛びつく。仲間達は知る由もなかったが、彼はフランマと会った時、外の世界の料理をあれこれ伝えたなかに『唐揚げ』が混じっていたのだ。
 なお、唐揚げというのは調理法の問題なのでここでは鶏にとどまらないものであることを明言しておく。
「ただね、唐揚げに合う素材はだいたい当てがついたんだけど狩りに行く暇がなくて。飛呂くん達に頼んでもいいかい?」
 亜竜集落で唐揚げが食べられる。
 そんな言葉に心がざわめかないと言えば嘘になろう。
 果たして、彼らは『適度に脂身があり締まった肉を持っていそう』な手合いの多く住む、地上の洞窟へと足を運ぶことになった。……常に強い風が洞窟のそこかしこに空いた穴から吹き込み、地面はガチガチに凍った氷の中での狩りに。

GMコメント

 突撃(される)! ウェスタの晩ごはん(の方から)!

●成功条件
 ウェスタ地上部、風氷洞穴での狩りを無事に終わらせる

●風氷洞穴
 OPにちらっとある通り、『非常に強い風』(抵抗判定のあるランダム方向への【飛】)と滑りやすい足元(足止系列BSほか、行動が不利になる要素あり)が待ち構える洞穴です。
 環境に適応した結果、羽毛や毛皮が深く皮下脂肪がそこそこ分厚いモンスターが生息します。
 プレイング等でもそれぞれの不利には『ある程度は』対処可能です。

●洞穴のモンスター達
 色々います。
 たとえば足が鋭利な角のように尖っている偶蹄類っぽいもの(物遠単・移の突進攻撃が強力だったり角をつかったり)や、羊のような外見で全身に帯電させて攻撃を防ぐ(【棘】扱い)な手合いなど。他、『それっぽいのがいる』っていうと出てくるかもしれませんし『それっぽい』性能を持つでしょう。総じて環境適応力が高く、体型上防技が高めになっています。
 今回は亜竜はいません。それ以外が相応に強いので。
 ぶっちゃけどれを持ち帰っても美味しく作ってくれそうですが、そこは皆さんの好みになります。
 全滅させなきゃいけないわけでもないので、無理のない範囲で狩って無事に帰りましょう。

●調理パート
 今回はありません。調理してもらうパートみたいな感じです。
 希望を出せば味付けをある程度アレンジしてくれるかもしれません。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • 今日の献立は『亜竜集落の唐揚げ』完了
  • GM名ふみの
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2022年02月12日 22時15分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

マルベート・トゥールーズ(p3p000736)
饗宴の悪魔
ルウ・ジャガーノート(p3p000937)
暴風
リカ・サキュバス(p3p001254)
瘴気の王
新道 風牙(p3p005012)
よをつむぐもの
ルカ・ガンビーノ(p3p007268)
運命砕き
ニル(p3p009185)
願い紡ぎ
囲 飛呂(p3p010030)
君の為に
エア(p3p010085)
白虹の少女

リプレイ


 ウェスタ、ママ・フランマの自宅前。
 イレギュラーズが風氷洞穴に出向くとあって、依頼人として、そして『母』として、フランマは一同を見送るべく戸口に立っていた。足元に縋り付く子供達は、好き嫌いの矯正に訪れた者や孤児など様々な立場にあるが、等しく彼女を慕っていることがわかる。
「フランマさんのご飯、とっても美味しかったなぁ……!」
「おいしいごはんで、ニルはとってもとってもしあわせなのですけど、フランマ様、今度はからあげを作ってくださるのですね?」
「ああ、そうさ! 飛呂くんから聞いてとっても作りたかったんだよ!」
 『特異運命座標』エア(p3p010085)と『おかえりを言う為に』ニル(p3p009185)は八分目まで満たされた腹部をさすりつつ、フランマに期待の籠った目線を送る。友人である『点睛穿貫』囲 飛呂(p3p010030)の提案という話に、我がことのように誇らしい気持ちがあったのは間違いではないだろう。
「唐揚げってあの唐揚げです? 穀物と亜竜の卵……あとは代用肉……といったところでしょうか……」
「話が早い子がいるのは助かるねぇ、肉以外はアタシの方で用立てておいたよ!」
「唐揚げ。シンプルだけど美味しい料理だよね。それもまだ見ぬ獣の肉となれば……ふふっ、胃も心も期待に弾んでしまうね」
 『雨宿りの』雨宮 利香(p3p001254)は唐揚げの材料を一通り思い浮かべ、ひとつずつ『覇竜で手に入るもの』に置き換えていく。味付けなどは敢えて語らぬが、フランマが「大丈夫」と言うなら彼女なりの考えあってのことだろう。『饗宴の悪魔』マルベート・トゥールーズ(p3p000736)の言うように、鶏とは異なる肉となれば味わいはまるで違う。フランマの腕を思い知った身なれば、期待するのも当然か。
「唐揚げ!」
「よもや覇竜にこの食文化が伝わろうとは……飛呂さん偉い! よく教えた!」
 フランマの料理は仲間達以上に理解がある飛呂としては、伝えた料理の名前が出てくるだけで涎が出るのは無理もない。そして『嵐の牙』新道 風牙(p3p005012)は、突如として脳内を駆け巡る唐揚げのレシピに、思わず腹を抑えた。心配そうに「出来が悪かったかい?」と聞いてきたフランマに「ちっとも!」と即答する姿はその誠実さを露わにしているといえた。
「しかし肉に合う酒も用意しなきゃいかんが、どの酒が合うんだろうな?」
「あー……そうだな、ビールあるか? 麦酒っつったほうが良いか? あと、鳥とか羊とかワニっぽい奴は洞窟にいねえか?」
 『暴風』ルウ・ジャガーノート(p3p000937)は期待が膨らむのを隠しもせずあれやこれやと並べていたが、『竜撃』ルカ・ガンビーノ(p3p007268)は酒、と聞いてフランマに問いかける。揚げ物というのは兎角ビールが良く合うのである。
 のみならず、今回の狩りの対象に幾つか動物として親しい部類のものがいないのかも確認する。やはり鶏の唐揚げのイメージから人は脱却できないのである。
「ああ、エールのことだね! それならウェスタでも腕っこきの職人が居るから期待してくれていいよ! 鳥……亜竜じゃないけどふわっとした羽がある奴とか、ヒツジ……も、いるかねえ」
 フランマはビールに関しては胸をたたいて応じたので、確保は任せてもよさそうだ。鳥や羊はどうやらかなり近い類型がいるようだが、ワニと聞いて少しむずかしい顔をする。
「ワニ……沼亜竜のことだね? アレは洞穴にはいないし、ついで感覚で手を出すのはおすすめできないねえ。ま、洞穴には住んでないけど」
「へえ、居るには居るのか」
「なるほど」
「鳥っぽいのがいるんですね! それだけで元気出てきました! ルカさん風牙さん、ワニは忘れましょう! 今度まで!!」
 フランマの解答に思うところのあったルカと風牙は全身からそれっぽい雰囲気を醸し出し詳しく聞こうとしたが、流石にそれは利香が止めた。今日は食事のための危険度ゼロの狩りに終始するのだ。亜竜ともののついでに闘うなんてとんでもない!
「片っ端から捕まえて豪勢なディナーとしゃれこんでやるぜ!」
「程々にね、程々に。フランマさんだって色々大変だから」
「飛呂の言う通りだと、ニルは思いました。おいしく食べられる量にしましょう」
 ルウが興奮気味に仲間達に告げると、飛呂は慌て気味に応じた。ニルもそれには同意のようだ。マザーも料理上手で施し好きとはいえ、腕は二本しかないのだ。本人は気にしないだろうが、程度問題ゆえ仕方ない。
「フカ太郎も唐揚げ好きだもんね、無事に依頼が終わったら半分こしよう♪」
 エアは唐揚げ好きな陸鮫のフカ太郎を撫でると、その背にまたがって移動を始める。
「よし! いくぞみんな! 唐揚げ捕まえにいくぞ!!」
「順番が逆、逆。材料をとりに行くんですよ風牙さん」
 気がはやる余りに幾つか単語がズレた風牙の言葉はさておき、イレギュラーズはフランマに手を振って風氷洞穴へと向かうのだった。


「入口すぐのところが広いですが、穴も多いので風が複雑、です。少し進むと狭いですが壁沿いにくぼんでいる場所が多いので、追い込んで戦えますが、挟み撃ちにされるかも、です」
 ニルは使い魔を先行させ、洞穴の途中までの内部情報を見て回る。とはいえ、鳥であろうと蜥蜴であろうと、強烈な風と凍った地面のダブルパンチではとても奥までの探索は叶わないが。それでも前情報が無いより随分マシだ。
「ありがとうエル。とすると、奥から引っ張り出して広場と狭い道の境目あたりで利香に足止めしてもらうのが安全……か?」
「そういうことならおまかせを。風で飛ばされることはありませんので。問題は足場ですね。シェーヴル、その背中、乗らせてもらいますよ」
 風牙はその報告を聞き、下手に奥まった場所で戦うよりは開けた場所がよいと判断する。となると釣り上げる役が要るが、やはりそこは利香にお鉢が回るわけだ。
 有り余る耐久力、シューヴルによる三次元移動が可能な利点、そして彼女自身の機転を考えれば妥当な判断である。
「蛙とかは鶏肉っぽいって聞くけど、あれもアリなのかな」
「私はゴメンですね……鳥がいるなら鳥を探しましょう、ね?」
 飛呂は蛙を狩るのもある意味アリだなと感じ始めていたが、利香の強い反論に思わず首を縦に振った。好奇心が先に立つのは兎も角、それらしい個体がいるならそっちのがいいに決まっ「ゲコ」「え、なんて?」
「ゲコッ、グコッ……」
「蛙だ! ……いや本当に毛玉みたいだけどどうなってんのそれ!?」
「旨そうなやつの肉も大事だが、色んな種類を試すのは大事だよな!」
 噂をすればなんとやらである。
 飛呂達常識人枠は狼狽えるのみだったが、ルウは二本の剣を構えて一気呵成に突撃する。変温動物という常識を彼方においてきた蛙は、数十秒後に物言わぬ屍として持ち帰られるに至るのである。
「お出ましとくれば、次から次に来てくれんだろ。壁ぶち抜いてくる奴も注意しつつ、連携してかかるぞ!」
 ルカの力強い号令に、一同は静かに頷く。彼のカリスマ性が魔力を持ち、味方全体を強く支えているのは間違いない事実であろう。
「飛呂さんルウさん、後ろに回ってください!わたしが守りますので、その間に攻撃を!」
 エアは蛙肉を滑らせて入り口に放るルウの傷をみて、無理はならないと改めて認識した。ただでさえ足場が悪く移動がままならないのだ、フカ太郎に頼れる自分が仲間を守り、動きを支えねばならない。風竜結界はそのための力。
「ああ、隠れてるのもよく見えるな。蛙もだけど、羊の皮膚が見えないのは厄介――っ」
 『P-Breaker』のスコープ越しに、飛呂は羊の魔獣をねらう。だが、体表を走る電撃は弾丸の軌道を変え、分厚い毛皮は打撃を通し難い。数打てば通じるが、それまで相手が待ってくれるか? という疑問がよぎった。
「私がきっちり惹きつけるよ。広いところで一気に倒そう」
「もし厳しいようでしたら私が代わりますからね! 苦にならないならお互いで引き付ければ捗るかもしれませんし」
 よぎったのだが、マルべ―トと利香という心強い守りが二人も居る事態は、飛呂の指先の震えを止めるに十分すぎた。
「鳥だ! 鳥が来たぞルカ!」
 風牙は利香の方へ向かってきた魔獣が鳥型の……かのハイペリオンをも超えかねぬもふ具合であることを確認すると、『烙地彗天』を構え一足で相手の間合いに踏み込んだ。いきおい、叩き込んだ一撃は確かに鳥型魔獣の動きを鈍らせ、バランスを崩した。
「よっしゃ逃がすなよ!」
 ルカは全霊を以て追撃を叩き込み、肉体の欠損を抑えつつも鳥型魔獣を仕留めてしまった。如何に実力派二人の連携といえどここまでにはならない。食に関する意気込みゆえか。
「よし、こいつもその辺の氷砕いて袋に詰めよう」
「もともと寒いは得意な生き物が多いでしょうけど、それを超える勢いで凍らせちゃったらいいのですよね?」
「いい考えだぜニル! その調子で凍らせてくれれば氷を集める手間も省けるな」
 ニルは倒れた魔獣を確保しようとするルカ達を守る格好で、近付いてくる獣達へと氷の術式を叩き込む。相手が寒さに強いならそれ以上を叩きつけよとは中々の力技だが。食品保存にも適しているのだから笑い話というより感心するのが先か。
「皆さん、怪我はしていませんね! この調子だとすぐに運べなくなりそうですが……」
「フカ太郎さんが頑張ってくれるので大丈夫です!」
「……まだいけますね!」


 風氷洞穴から一同つつがなく帰還した一同は、温かく迎え入れ、そして腕まくりをして気合十分といった調子のフランマの姿に否応なしに期待を寄せていた。こと、風牙と飛呂の期待度は飛び抜けているように見える。
「うおおお待ち遠しいぞ唐揚げー!!」
「美味そうな肉はたんまり集められたんだ、こりゃ最高の出来になるな!」
 机を叩くような行儀の悪い真似こそしないが、風牙の期待は最高潮に達していた。ウェスタ謹製のエールを前に飲むのを堪えているルウもまた、漂ってくる熱と油の匂い、そして肉の漂わせる仄かな香りに唾を飲む音が響く。
「フランマ様のお手伝いができないぶん、ニルは食べるのを楽しみにします」
「ここまで期待されてんだ、無理に手伝うより頼った方が喜ぶだろうぜ」
 ニルとルカは、フランマの手伝いが出来ないことに多少の歯がゆさを覚えつつもその手腕を――ニルは飛呂の評価への信頼があるので余計に――信じているため、無理に申し出ない辛抱強さを持っている。主賓扱いでなければ、即座に給仕の手伝いをしていることだろう。
「鳥っぽいやつも仕留められましたから期待十分ですね。他の肉も悪くない筈ですし……というか、もう揚げ始めてますね。音もいい感じですし」
「わぁ! とってもいい匂いです……!」
 一番の目標であった鳥型魔獣を仕留められたことで、利香のテンションも静かに高まりつつあった。全体的に上質な肉を集められたことも期待に拍車をかけている。羊型の処理は大変なはずだが、もう揚げているらしいその手の速さは驚異の一言。漂ってくる油の香りも、覇竜独特の植物油なのだろうが香り高く、必然として食卓に漂うのは芳醇な肉と油の奏でるハーモニーだ。エアとフカ太郎は互いに顔を見合わせ、その期待が間違っていないことを確かめあった。
「唐揚げのアレンジなら、タレかけるとかあるけど……醤油とかネギとかああいうのは探さないと無いよなあ」
「おや、また外の料理や食材を教えてくれるのかい? 私は大歓迎だよ! 出来るだけ探しておきたいねえ!」
「え、ああ調味料の話だから! 唐揚げは美味しくいただくよ!」
 唐揚げが楽しみなのは当然だが、こうして完成を目の当たりにすると次の欲が出てくるのも人というもので。飛呂は唐揚げの味を変える調味料の類を思い返す。辛味とか、故郷の味は忘れ難く。丁度『唐揚げ』を持ってきたフランマはその呟きを聞き逃さず、次の料理のヒントとばかりに目を光らせた。
「それじゃあ成人済みの皆には是非ワインを楽しんでもらいたいね。揚げたての唐揚げとのマリアージュを楽しもうじゃないか。フランマ、せっかくだから一緒に飲もう」
「私もかい? ……じゃあ、御言葉に甘えていただこうかね」
 マルべ―トは成人済みの面々にワインを注いでまわると、ワイングラスをフランマに向けて傾ける。一瞬躊躇したフランマだが、相手の好意を無下にする女性ではなく。受け取ったフランマは、手にしたワインの赤い輝きに満足気に目を細めた。
「それじゃあ唐揚げも飲み物も揃ったんだ! 今日の出会いと唐揚げの伝来を祝して――乾杯!」
「「「かんぱーい!」」」
 風牙の掛け声に合わせ、一同は手元の杯を思い思いに掲げ、声を張る。
「ん~っ! 美味しいっ!」
「凄いですね、本当に『唐揚げ』って感じですよ! これとか羊肉なのに!」
「フランマさん、これだよこれ! 確り『唐揚げ』って感じの味!」
 エア(とフカ太郎)、利香、飛呂の三人は唐揚げを頬張ると、その再現度に目を丸くした。鳥型魔獣の肉は腿がやはり美味だが、さりとて胸肉の歯応えも捨てがたい。羊肉はまだ若い個体だったからだろう、臭みも無くさっぱりした食べごたえだ。
 丸っこい生き物の肉は脂身が多めだがくどくなく、するりと喉を抜ける食感が不思議と嫌らしくなかった。揚げ油の強い香りも、唐揚げの強さを受け止める力を感じる。総じてエールなどによく合う味わいだが、ワインも割とイケるか。
「こりゃ想像以上にイケるな! おかわりくれよフランマ!」
「フランマさん、おかわりならニルが」
「いいんだよ。たくさん食べてくれるのは嬉しいねぇ!」
 ルカの興奮気味の声に、ニルは思わず給仕の申し出にと立ち上がろうとした。が、フランマはとても満足げな顔でニルを制すと、足取り軽くキッチンへと戻っていく。飲んでいる筈だが、動きが鈍くなった様子がない。
「良い肉、良い酒、仲間達の時間。しみじみと幸せを感じられるね?」
「こんなに美味い揚げ肉を食えるんならいくらでも手伝いたいぜ!」
「はい。皆さんと一緒にご飯を食べられること、ニルはとっても嬉しいです」
 マルべ―トとルウの言葉に、ニルは二つ返事で応じた。肉と酒が美味しいのはいいことだ。だが、それ以上に仲間達と囲める食卓の大切さが、ニルにとって心地よかった。友人の飛呂、依頼で顔を合わせるエアを筆頭に、舌鼓を打ち、心から食事を楽しむ仲間達の姿はニルの『おいしい』を満たしてくれる。
「ママ……っじゃなくてふ、フランマさん! とーっても料理がお上手ですよね!」
「ママって呼んでくれてもいいんだよ! 私は皆の『ママ・フランマ』だからね!」
 ひとしきり食べて満足したエアは、フランマに話しかけたところで言い間違いに口を抑えた。だが、フランマはむしろ嬉しそうに胸を張る。彼女にとって、皆の『ママ』であることがひとつの誇りだともいえるだろう。
 エアは赤みの引かない顔のまま、フランマに料理のコツを聞こうとするのだが……その成果が拝めるのはまた別の機会だろうか。

成否

成功

MVP

ルカ・ガンビーノ(p3p007268)
運命砕き

状態異常

なし

あとがき

 唐揚げが食べたくなってきました。

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