PandoraPartyProject

シナリオ詳細

酒を呑んだら平和が守られるので酔っ払いが正義な話

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●呪われし祝福の酒場の話
 意味が分からない、と誰もが言う。
 当然だ。酒を呑んでないのに末期の酔っぱらいみたいなことを言われれば、誰でもそんな反応をする。
 いいんだよ、呑み過ぎなんだよお前。まずは落ちついて水を飲もう。な?
 そうしてそいつの正気を確かめた後で、もう1回同じことを言うなら軽く肩を叩いてやるのだ。
 そうか、分かったよ。お前疲れてるんだ。飲もうぜ、な?
 そして良い具合にアルコールが回って、それでもまだ同じことをそいつが言うならば。
 もしかしたらそいつは、本当にそこに辿り着いたのかもしれない。
 アルコール臭のする酔っ払いたちのへヴン。
 呑めば呑むほど偉い、酒のみたちの聖地。
 バー・アイアンへヴン。
 アルコールに魂を売ったような酒クズを心のままにフラフラさせると辿り着くという、その不可思議なバー。
 看板のないその店は、しかし酒クズには「バー・アイアンへヴン。時間無制限呑み放題」という看板が見えるのだという。
 待った、熱を測ろうとするんじゃない。正気で話をしてるんだ。
 官憲も呼ぶんじゃない、怪しい詐欺の話じゃないから。
 医者も呼ぶな、酒量の話でこの前フライングニールキックを喰らったばかりだから。
 とにかくお前が選ばれし酒クズなら、アイアンヘヴンに辿り着くはずだ。
 行けるなら、是非教えてくれ。1度行ってみたいんだ。

●バー・アイアンヘヴンを探せ
「というわけで依頼なわけですが……まず、その手のジョッキを置くです」
「しかし確かに酒の話と……」
「今呑めとは言ってねーです」
 新田 寛治(p3p005073)にヘッドロックをきめて「ぐあー」と言わせると、チーサ・ナコック(p3n000201)は乾杯しているヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)とアーリア・スピリッツ(p3p004400)を睨みつける。
「そっちもまずジョッキを置くです」
「えー」
「えーじゃないです」
 すでに口元にエールの泡でヒゲが出来ている2人だが、なんとかジョッキを置……かずにグビリと一口。
 1度ジョッキを掲げた以上呑まねばならない法律がありそうなほどの頑なさである。
「まあ、大丈夫だ。俺の知り合いの医者も言ってたからな。多少アルコールを入れた時の方がメスに迷いがないんだってな!」
 ジョークが絶好調な耀 英司(p3p009524)だが、不思議とこっちはまだ呑んでいない。
 さておいて。
「とにかく、『呪われし祝福の酒場』と言われるバー・アイアンヘヴンを探してくるです」
 その言葉に、4人の肩がピクリと動く。
 バー・アイアンヘヴン。それは酒呑みの間で語られる噂のスポットだ。
 何処にあるかも分からず、ただ酒クズレベルに達した酒呑みを心のままにフラフラさせると辿り着くという。
 そこに無い酒はなく、伝説の美酒「バッカスの酒」もあるという。
 だが、そのバッカスの酒だけは呑んではならないのだという。
 呑めばとんでもない額の請求書を渡されて真っ青になるというが……問題はそこだ。
 酒があれば呑まずにいられない酒クズにバッカスの酒なんてものを見せたら呑むに決まっている。
 なのに請求するとはあまりにひどい。
「……という言い草が酷いですが、まあそんなわけでバー・アイアンヘヴンの謎を解いてほしいという依頼がきてるです」
 つまりイレギュラーズの中から選ばれし酒クズを選抜し、古今東西の酒が集まるバー・アイアンヘヴンの酒という酒を呑みつくし、バッカスの酒に辿り着く必要があるのだ。
「ん? つまり……」
 気付いた英司にチーサは全く視線を合わせなかったが……つまり酒を呑んで平和を守るお仕事である。

GMコメント

我こそ酒クズという人を放流してバー・アイアンヘヴンを見つけましょう。
そうしたら、お酒を呑んで「バッカスの酒」を見つけ出しましょう。
バッカスの酒に手を付けるとバー・アイアンヘヴンの主である「バッカスの精霊」が出てくるのでやっつけましょう。
こいつはひでえや。でも大丈夫、正義です。
この際、呑めば呑むほど各種能力が上昇しますので事前に酒量が多い人ほど強くなります。
なお、バッカスの精霊を倒した後はバー・アイアンヘヴンは消えてしまいます。
最終的に路上に酔っ払いが転がる事になると思われますが、平和を守ったのでオッケーです。

●つまりどういうこと?
呑めってことですよ。酒を。

●バッカスの精霊
バー・アイアンヘヴンの主。バッカスの酒を守るために存在しています。
ただしバッカスの酒は真の酒呑みに与えられるべきという使命も有しており、酒量の多い相手に弱くなります。
なお、攻撃技はプロレス技です。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はA(アルコール)です。
 想定外の事態は絶対に起こりませんなんて言えるはずもありません。ヒック。

  • 酒を呑んだら平和が守られるので酔っ払いが正義な話完了
  • GM名天野ハザマ
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2022年02月04日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ラズワルド(p3p000622)
あたたかな音
ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)
願いの星
アーリア・スピリッツ(p3p004400)
キールで乾杯
新田 寛治(p3p005073)
ファンドマネージャ
ジョーイ・ガ・ジョイ(p3p008783)
無銘クズ
耀 英司(p3p009524)
諢帙@縺ヲ繧九h縲∵セ?°
天閖 紫紡(p3p009821)
要黙美舞姫(黙ってれば美人)
ブランシュ=エルフレーム=リアルト(p3p010222)
タナトス・ディーラー

リプレイ

●前日から呑むの?
「チーサ。アンタも策士だが……先に言うけど、ごめんな?? 策士酒に溺れるって言うだろ。後任せたから!」
 前々日。ローレットに来てそんな事を『怪人暗黒騎士』耀 英司(p3p009524)が言い残していったが……どういうことなのか。
「なるほどね、もう完全に理解したわ。私達が『選ばれし者』っていうことをね」
 やけに『キールで乾杯』アーリア・スピリッツ(p3p004400)がキリッとした……逆に不安になる顔をしていたが何なのか。
 知るはずもない。分かるはずもない。
 酒を嗜む者、酔い潰れる者、酒乱。
 色々あれど、酒クズはモノが違う。
 見てみるといい、血液の代わりにアルコールが流れてそうな面々だ、面構えが違う。
「段取り八分。戦争であれビジネスであれ、より準備した方が勝つのですよ」
 集合前日の朝。『ファンドマネージャ』新田 寛治(p3p005073)の手にあるのはビールのジョッキだ。
 言ってる事は正しい。だがこれから死ぬほど飲もうというのに、何故今呑んでいるのか。
「というわけで我々は、前日の朝から酒を飲んでおくことで、最強の自分となってこの依頼に臨みます。飲み過ぎたらデス&リバース、仮眠して起きたら二日酔いを迎え酒して、泥酔状態を維持してアイアンヘヴンを訪れる。よろしいですね、皆さん」
「酒量が物を言うなら前日からってさぁ……あっは、天才じゃん? これもお仕事だから仕方ないよねぇ、経費ばんざぁい♪」
『流転の綿雲』ラズワルド(p3p000622)もそんなことを言っているが、1つもよろしくないし、仕方なくない。
 常識人であればそう思う。だが酒クズは違う。アーリアはすでに理論武装を完了している。
「前日の朝から酒を飲む。ローレットハイ・ルール1! 冒険者はその時受諾した依頼の成功に対して尽力しなければならない――ってこうぃっくぷはぁ次のお酒ちょうらぁい。今日の私はしじみ汁ジョッキ(三積み)どれだけ二日酔いになったって回復できるってわけ。色々スッキリしたし、練達で疲弊した身体にアルコール消毒が沁み渡るわぁ」
「ほっほっほー! 伝説の酒を飲めるチャンスと聞けばやる気がむんむんわいて……げぇ!? ヴァレーリヤ殿?!」
『どんまいレガシー』ジョーイ・ガ・ジョイ(p3p008783)が声をあげると同時に『祈りの先』ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)がジャーンジャーン、と銅鑼を鳴らす。
「何か言いまして!?」
「ぐわー!」
 ジョーイがいきなりダメになりそうであるが、まあ大丈夫だろう。デスリバースだし。知らんけど。
「なんだか楽しくお仕事に向かえそうですね!」
『要黙美舞姫(黙ってれば美人)』天閖 紫紡(p3p009821)がちょっと常識人っぽいことを言っているが、今は前日の朝である。
 仕事を始める前日から「朝まで」をやっている恐るべき酒クズどもは本気で当日の朝まで呑み続けて。
「ブランシュ、未成年なのでお酒は飲めないですよ。お酒の飲みすぎは注意するようにと言われてるですよ。皆さんも節度を守った楽しい飲酒を……今なんて? 前日から? マジで言ってます?」
「でぇじょぉぶだ……見ろ、エンジン全開だ」
「すでに廃車寸前なのですよ!?」
『航空猟兵』ブランシュ=エルフレーム=リアルト(p3p010222)がバタンと倒れたラズワルドを見て……チーサに事前に渡されていたロープを見る。
 頼れる仲間は全員ぐてんぐてん。何処かに向けてフラフラと歩いていくその姿は、まさにダメ人間の群れ。
 どうしよう、酒クズのチャンピオンリーグが始まっている。
「え、これブランシュが引っ張っていくですよ?」
 引っ張っていくです。

●酒クズの楽園
「……うおっぷ……危うく本編が始まる前から我々のコリブリでいやらしいな表示になるところだったであります…。これは伝説のバッカスの酒で迎え酒をせざるを得ないですな! さあ、酒場やいずこに?! おお、ここがアイアンヘヴン! 本命のバッカスの酒を頼む前にありったけの酒を飲んで飲んで飲みましょうぞ!」
 その後、酒クズたちを放流しているとバー・アイアンヘヴンに辿り着いてしまう。
 なんか全員が足取りこそ違えど同じ方向に向かって歩いてアイアンヘヴンに辿り着く姿は、歴戦のブランシュをゾッとさせる光景であった。
 当然始まるのは仕事を盾にした酒クズたちのパーティーだ。
「よみがえる新人歓迎会というのは名ばかりの地獄のおもひで! だが、吾輩もいつまでもニュービーなわけではありませぬぞー! メットにゲーミング吐瀉鳥を表示していた弱き吾輩からの脱却! そう、完全生命ジョーイとして新生した吾輩には怖い物などあんまりない! 0次会も7次会もバッチコーイであります! うおおお! 駆けつけ三杯! ブーツ酒でもなんでももってこいであります!」
「ほい、ブーツ酒!」
「ヒイ、ブーツボトル! え、何でありますかこれ……テキーラ!?」
「いやー、2日間ぶっ通しの飲みとか流石にワクワクするねぇ。着替え必要だろ? 任せな、ちゃんと全員分あるからよ」
 ジョーイと英司が早速男同士の友情を深めているが、もはやリバース前提である。
「ところでどっちが英司さんでどっちがジョーイさんだったかしら!」
「どっちでもいいですわー! よし、貴方がジョーイでしてよ!」
「どうも、ファンドマネージャの新田・ジョーイ・寛治です」
 おお、なんたることか。アーリアとヴァレーリヤが組んで酷いことになっているしブランシュはすでに「どう被害を防ぐか」という顔になっている。
「ひゅーーー、二日酔いには迎え酒でございますわー! 嗚呼、お酒を喉に流し込む度、路地裏で食道に負った傷が癒えて行く……」
 しかもヴァレーリヤはすでに路地裏で虹を作ってきたらしい。
「店員さん店員さん、お代わり持ってきて下さいまし! 樽で! 請求はローレットでお願い致しますわー! えっ、何ですの? ドクターストップ? そんなの関係ございませんわ! 今日のお酒は、今日でなければ飲めないんですのよ!? ジョーイもさっさとお酌なさい! またいっぱい飲ませますわよ!!」
「はいよ、ジョーイだぜ。おーいおいおい美女のお酌とか至れり尽くせりじゃないの」
「吾輩が増えていくであります……!」
 戦慄するジョーイだが、耀・ジョーイ・英司はヴァレーリヤに酒瓶を渡されてヒュッと息を呑む。
「では私からも一本お酌を」
「えっちょっと待っそれ瓶、に、新田ァア――!?」
 酒顔ダブル瓶、とか呟いている英司はまだだいぶ余裕がありそうだ。
 そういう無駄な語彙が消えてからが本番だ。
「先ずはもう何度目か数えるのを辞めた乾杯! 杯を乾すという文字を裏切ってはいけない!」
「んぁ……何の話してたっけー? まぁいいや、乾杯かんぱぁい♪」
「はいかんぱぁーい! 回数? 覚えてないわ!」
 寛治とラズワルド、アーリアが何度目かの乾杯をしているが、別に乾杯と言う度に体内のアルコールがリセットされる仕組みとかは人体に実装されていないので、良い子(ブランシュ)は是非覚えて帰ってほしい。
「はいはぁい新田さんしょうがないわねぇ、お酌してあげえーと分身したぁ? それとも五つ子だった? なんかわからないけどもうグラスよりこっちの方が早いでしょ」
「お酒が飲み放題な上にお酌まで付いてるだなんて最高ですね……あっあっ瓶から直接口に流し込むのはダメでがボボボボボ」
「大変だ新田、君の顔に何かついてるぞ」
「あらほんと! とってあげるわ!」
「あー! お客様眼鏡割りはいけませんアーッ!」
「はい、眼鏡割りでしゅ!」
「あーっ、ウイスキーの眼鏡割り! いけませんアーッ!」
「新田殿ォー! 新田殿がウイスキーの中に!」
「新田の仇!」
「何故吾輩がガボボボボボ!」
 紫紡がウイスキーの眼鏡割りを作ったのを起点に凄いことになっているが、眼鏡は寛治の本体ではない。
「ひっでえことになってるのです……」
 唯一マトモなブランシュがジュースを飲みながら呟くが、ジョーイの受難はむしろここからだ。
「ささ、アーリア殿にヴァレーリヤ殿、お酌いたしますぞー。あ、返杯どうもであります、いざぐいっと! ぐいっと一気いきまーす!」
「はいジョーイ、新しい樽よ!」
「樽ゥ!」
 ヴァレーリヤの持ってきた樽をジョーイが一気を始めるが、良い子は真似をしてはいけない。
 たとえヴァレーリヤが樽で呑んでいるとしてもだ。
「まだまだたーくさんしゅるいがあるなんて、ゆめのようですぅ〜へへへへ〜♪ え~っとぉ~? えいじさんおすすめのおしゃけは~……」
「あ、紫紡、これとこれとこれとこれとこれとこれおススメだぜ!」
「これとこれとこれとこれとこれとこれおすすめなんですねぇ~! さぁ~まずはこれからいーきまーすよ~~~!!!」
「今ナチュラルに6本くらい指定したのですよ!?」
 ラッパ呑みしている紫紡を英司が応援して、アーリアがダーツを取り出し始める。
「ジョーイくんと英司くんでどっちが英司でショーとかやってダーツでも投げましょ。顔面に」
「うん?なんだよアーリア、それ尖っててかっけぇじゃん? パージェロッパージェおおっ……と!」
 何故かセクシーな脱げ方で服がピン止めされていく英司だが、本人がわざとやっているかどうかは分からない。
「あぶねぇ、避けろジョーイ!」
 ジョーイではなくウイスキーの瓶を庇って服が下着とマスク以外全部脱げた英司は、ガクリと膝をつく。
 ちなみにアーリアはすでにヴァレーリヤと火が付くタイプの酒を互いに呑ませ合っている。
「ぐああ! 俺は、もう……アンタと過ごした日々、悪くなかったぜ……。最後の頼みだ……あそこの酒、取って来てくれ」
「英司殿ォォ! お望みのパージェロッパージェオオでありますよ!」
「なんだこの酒! え、度数96?」
「一気!」
「一気!」
「一気!」
「で、できらあ!」
 英司が見事沈んでまた蘇った辺りで、ヴァレーリヤが「ふう」と熱い吐息(アルコール臭)を吐く。
「沢山飲んだら暑くなってしまいましたわ。窓を開けて頂けないかしら。えっ、もう開いていますの? ……ふうん。確か、風上はこっちでしたわね。どっせえーーーい!!!! 窓が足りないなら作るまででございますわー!」
「まってヴァレーリヤちゃん流石に壁に穴開けたらお酒が破壊されるじゃないええい保護結界よ!!」
「なんで酒飲んで壁に穴が空くですよ!? わーっ!! 床が!! 床が虹色の汚染区域と化してる!!」
「ええい、邪魔をするのは止めなさい! この酒瓶で頭を叩き割りますわよ!」
 アーリアとブランシュが二人がかりでブッシャー、とロボみたいな音を出すヴァレーリヤを止めにかかる。
 ちなみにその近くではカウンターに倒れた眼鏡と割れた酒瓶、そして寛治が落ちている。
 何があったのだろう。凶器は酒瓶だろうか。
「グラスも割らないでくださいお客様!!! 困ります!! 困ります!! お客様!! 困ります!! あーっ!! 困ります!! お客様!! あーっ!! お客様!! お客様!! お客様困り!! あーっお客様!! 困りますあーっ!! 困ーっ!! お客困ーっ!! 困ります!! 困り様!! あーっ!! お客様!! 困ります!! 困ります!! お客ます!! あーっ!! お客様!!」
「あっはっは! かんぱぁい!」
「ラズワルドさんも手伝ってほしいのですよ!?」
「こうなったらとっておきの――そう、のんだくれホイホイを設置! 中にヴォードリエワインをイン! あっばれーりやちゃんあんなところに高級酒がー」
「……はっ、どこからか高いお酒の匂いが! こっち? こっちですのね!? ふふふ、見つけましたわよ。こういうのは早い者勝ち! 悪いけれど全部私のものでぐわーーー!」
「バッカスの酒のライバルも減って一石二鳥ねぇ。ふふ、ごめんあそばせ!」
「どっせえーーい!!!」
「な、なんですってえ!?」
 ヴァレーリヤとアーリアのアルコールキャットファイトが始まってアーリアが「ぐわー」と言わされた辺りで、寛治の視界に「それ」が入る。
 それは寛治のファンドマネージャとしての眼力故か、酒クズのアルコール臭い感覚故か。
 寛治のその視線の先。掃除をしているブランシュを除く酒クズたちが、棚で輝くオーラを放つバッカスの酒をついに見つけ出す。
「おお、これがバッカスの酒……」
「見てるだけで凄い……! 呑みましょ!」
 そうして手を伸ばそうとした、その先。
 なんかマッチョな精霊がその前に出現する。
「この酒、真の酒呑みにしか触れること許さず……!」
 バッカスの精霊。ついに伝説の美酒バッカスの酒の守護者が現れた、その瞬間。
「郷に入らば郷に従え。魚心あれば酒心!」
「その声は!」
「メガネクタイパンツマン!」
「ここは謎のDDW(泥酔デロデロプロレスリング)所属の覆面レスラー「マスク・ザ・ファンド」に任せて頂きましょう。誰です今メガネクタイパンツマンって言った人」
 ブランシュである。
 だがレスラーだからとパンツ一丁、覆面の上から眼鏡を掛けて頭にネクタイを巻いているメガネクタイパンツマンだから仕方ないね。
「お風呂に入ってないのにプロレスたぁ言語道断! はい着替えて! シャワーだおらぁあ!」
 ローションのどのあたりがシャワーか分からないが、もしかすると今ローションをシャワーと言い張って専用の散水機で散布した英治は普段からローションシャワーを嗜む紳士なのかもしれない。
「さぁ始まりました、酒飲みによる酒飲みのための酒飲み! バー・アイアンヘヴンを舞台に、バッカスの酒という栄光の盃を勝ち取るのは誰なのか? 実況は僕、ラズワルドでお送りしまぁす。えー、まずは各チームの紹介からー?」
 ラズワルドが酒瓶をマイク代わりに実況を始めているが、バッカスの酒と聞いてはヴァレーリヤも黙ってはいない。
「なんだかよく分からないけれど、格闘技で戦う流れですのね? 私は逃げも隠れも致しませんわーーー! どこからでも掛かってきなさオボロロロロ」
 ヴァレーリヤは胃の底からせり上がってきた虹色の乙女の秘密に負けてうずくまって。
「はぁはぁ、まさか私のお腹にお酒で攻撃を仕掛けてくるとは、やりますわね……」
 落ちていた寛治のスーツでしっかりと口元を拭う。
「プロレスねぇ、私そう言うのには疎いんだけど……えっなにあのマスクの人こわい。衛兵さんこっちで……あっ新田さんだったのね。私は折角なので賑やかしにバニー着てラウンドガールでもしましょうかぁ、ふふ」
「なら行きますわよアーリア!」
 ちなみに今アーリアが呼んだのは衛兵ではなくブランシュである。
 アーリアはブランシュと共に化粧室へと消えて。マスク・ザ・ファンドが連続チョップでバッカスの精霊に猛攻をかけていく。
「くっ、やるな!」
「何、この程度! ここからが本番ですよ!」
「ファンドーッ! いけーっ! 薄い本だーっ!! アンタに全額賭けたぜ!」
 なんか英司は薄い本に全額賭けたっぽいことを言っているが、何冊刷ったのだろうか。違うかもしれない。
「かっとばせー! ふぁーんどっ!」
 あと酒瓶を振って応援している紫紡は色々間違っている。何処がって? 全部かな。
 マスク・ザ・ファンドはロックアップからのストロングスタイルをきめると、カウンターの上からトペ・スイシーダで店内ダイブを敢行する。
「マスク狩りラリアットだオラァ!」
 当然のように英司とジョーイへ向けてマスク・ザ・ファンドは飛んで。
「アルコールパワープラス!」
「アルコールパワーマイナス!」
「「クロス・ボンバー!」」
「ぐわー!」
 即興のコンビネーションでマスク・ザ・ファンドの眼鏡が飛んで、ラズワルドのグラスが眼鏡割りになる。
 思わぬトッピングにラズワルドがフライングニードロップで乱入する。
「ぷろれすぅ? なんかこうさぁ、ジャンプしてドーンみたいな技とかあるやつ? 違ったらごめんねぇ、あははっ」
「マスクドレスラーがマスクに攻撃など!」
「新田殿がタッグマッチをしかけるならば、マスクコンビもタッグ技を仕掛けざるを得ないですな! 英司殿! 吾輩をこうジャイアントスイングでぶん投げるとかやるであります! 人間砲弾ですぞ!」
「おう、行くぜ相棒! ジャイアントジョーイスイン……あっすっぽ抜けた!!ジョ、ジョーイとファンドマンが偶然にも一部の女性陣待望の重なり方を!?」
 これぞジョーイ人間砲弾である。知らんけど。
「かわいいおんにゃのこやびじんなおねえさまがたがヌルヌルしてるすがたがみたい! あわよくばだきつきたい〜〜〜!!! だって、おんなどうしだもんっ! うへへ〜」
 紫紡のそんなダメな叫びに応える為だろうか。なんかやってきたラウンドガール2人に紫紡は連れていかれ……やがて3人のラウンドガールが戻ってくる。
「いっぱい喋ったり運動したら喉渇いちゃったぁ。オーバー・ザ・ピリオド、向こう側を目指せ!」
 ラズワルドがジョーイとヌルヌルしながら酒を呑んでいる、なんかもう地獄絵図なその風景の中で、ラウンドガールたちは癒しだろうか。いいや、卑しの酒クズたちである。此処に居るメンバーではブランシュ以外全員同じだ。
「私だってえーとなんかイイ感じに参戦! ピンヒールキック!」
「ぐあーであります!」
「ジョ、ジョーーーーーイ!」
 アーリアのピンヒール飛び蹴りがジョーイの割と洒落にならない場所に刺さり、そのままローションで滑ったアーリアの全く無意識の延髄切りが英司をノックアウトしてラズワルドとヌルヌルな状態にする。
「復讐でございますわ! やられたままでは済ませませんわ! ええい、私の渾身の絞め技を喰らいなさい!!」
「あっいきなりの裏切り! ヴァレーリヤちゃ絞まって、腕、死――うふふ向こうで誰か呼んでる」
「あ、あーりあひゃん!? こ、こおなれば! まわう~まわりゅ~gるぐrしほう! いきまぁ~~~~す!」
 逝った。酔った状態で回転するから、紫紡が。
「ゲェッ! あれはヴァレーリヤさんの鉄帝式ベアナックルだーッ!」
「待って、ぬるぬるとベアナックルはそんなに好きじゃな、ぁ……んごふっ」
 そうしている間にも、ヴァレーリヤがラズワルドを仕留めていた。
「おほほほ! さあ、次のお相手は誰ですの! そこの怪しい覆面集団ですのね!? 全員倒せば、例のお酒は独り占め! 貴方達には何の恨みもないけれど、リングの露と消えなさい!」
「くっ、仕方ありません! バッカスの精霊よ、此処は一時共闘です!」
「お主等、マジで何しに来たの?」
 そんなこんなで、死屍累々となったバッカスの酒場にはもう、ブランシュ以外に動く者は居ない。
 全てが終わって、見返した後。
 残ったのは口から虹吐いたイレギュラーズの残骸。
 朝の心地いい風が吹いてくる。さて、どうしたものかとブランシュは窓の外の光を見る。希望の光だ。
「とりあえずこの人達は置いておいて、散歩にでも出るとするですよ」
 そう、それが一番だろう。此処には悲しみしかない。
「酒飲みや 宴に暴れて 後の祭り……ブランシュは一つ、大事なことを学んだですよ。それは、こういう大人になると、人生楽しいんだろうなって」
 悟りを開いたような顔で、ブランシュは店の外へと踏み出して。
 その足が、何者かにがっしと掴まれる。
「へ!?」
「おほほほほほ」
「あ、あああーっ!」
 店から出ようとするブランシュの足を掴んで引きずり戻すヴァレーリヤの笑い声が響いて。
 バー・アイアンヘヴンの扉がバタンと閉まる。

 どうやら……まだまだ、宴は終わらないようである。

成否

大成功

MVP

ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)
願いの星

状態異常

ラズワルド(p3p000622)[重傷]
あたたかな音
ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)[重傷]
願いの星
アーリア・スピリッツ(p3p004400)[重傷]
キールで乾杯
新田 寛治(p3p005073)[重傷]
ファンドマネージャ
ジョーイ・ガ・ジョイ(p3p008783)[重傷]
無銘クズ
耀 英司(p3p009524)[重傷]
諢帙@縺ヲ繧九h縲∵セ?°
天閖 紫紡(p3p009821)[重傷]
要黙美舞姫(黙ってれば美人)
ブランシュ=エルフレーム=リアルト(p3p010222)[重傷]
タナトス・ディーラー

あとがき

これはひどい(これはひどい)

皆様のアツ過ぎる想いに全力で応えさせていただきました!

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