シナリオ詳細
空洞に繁殖する巨大アリ
オープニング
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『亜竜集落ペイト』は『覇竜領域デザストル』において、地竜とも呼ばれる亜竜種達が住まう洞穴の里だ。
地中奥深くに築かれたこの集落には、武闘派の住人も多い。
「セイ! セェイ!」
「ハッ、ハアアアッ!」
彼らは日の届かぬこの場所で自らを追い込みつつ鍛錬を続ける。
地竜達の武術は様々だが、亜竜種達に伝わる武術の一つ、覇竜轟雷拳の門下生達も、あちらこちらで鍛錬する姿が見られる。
中には、近場で倒した魔物を堂々と運んでくる者も。
「どうだ。今日は豪快に焼き肉パーティだ」
「こりゃ腕の振るい甲斐がある獲物だねえ」
丸々と太った肉食獣に、鍛錬に汗水垂らしていた亜竜種達も思わず涎を垂らす。
ただ、その涎すらも引っ込んでしまうような事件が舞い込んでくる。
「大変だ、水場に魔物が現れたぞ!」
「食糧庫の方にも向かっている。空いている者は向かってくれ!」
亜竜らは望むところと飛び出していく。力ある者達も多く、魔物との力試しといった態度で武術家である亜竜種達は飛び出していく。
ただ、今回ばかりは沸いた敵の数が多すぎたようだ。
「修練場にも屯す魔物がいるようだ」
亜竜の力ある者ばかりではない。子供達や加齢やケガなどで一線を退いた者達は、新たな魔物出現の報告に不安な表情を浮かべる。
そこへ、はるばる幻想の地から訪れたローレットイレギュラーズが現れる。
彼らはどうやら、他国での紛争や魔物討伐など活躍を見せていると言うが……。
「なるほど、では、その力、見せてもらおうではないか」
覇竜轟雷拳の師範、徐・宇航は早速、そのイレギュラーズ達を呼ぶよう、手隙の門下生達へと指示を出すのだった。
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『覇竜領域デザストル』へと至ったローレットイレギュラーズは、あちらこちらの集落を渡り歩いている。
「荒々しい亜竜達の国といった印象を受けるね」
『海賊淑女』オリヴィア・ミラン(p3n000011)も折を見てこの国の情報を直に仕入れようと訪れており、この時はイレギュラーズに同行していたようだ。
『亜竜集落ペイト』へと至った一行は、その一部が慌ただしい状況となっている場へと立ち会う。
メンバー達は何が起こったのかと尋ねると、若い武術家の亜竜種達は良かったと顔を見合わせて。
「良かった。貴方達がイレギュラーズですね」
「早速力を貸してもらえないでしょうか?」
彼らは状況説明の為、自分達の道場へとメンバー達を案内していく。
程なく、覇竜轟雷拳という看板の書かれた部屋へと通されるイレギュラーズ達。
そこには、長い髭を蓄えた中年の亜竜種男性が待ち構えていた。
「遠路はるばる来たところすまぬな。本来は茶くらい出したいところだが……」
覇竜轟雷拳師範、徐・宇航とその男性は名乗る。
イレギュラーズも銘々に自己紹介をと考えたが、それは後にし、魔物討伐に力を貸してほしいと宇航は話す。
「聞けば、各地で力を振るっているというではないか」
「依頼か、嬉しいね」
オリヴィアが笑顔でその交渉に乗るが、報酬については後程とすでに依頼を行う気満々で彼は話を始める。
「我らが修練を行う場や、生活用水として使う水場などにアリどもが沸きおってな」
全長2.5mほどもある巨大アリがあちらこちらに沸いており、縄張りを増やそうとしている動きが見られるとのこと。
ただの巨大アリと思うなかれ。覇竜の地で繁殖する生物である。
亜竜種ですらも恐れることなく向かってくるアリ達は自分達以外の生物を食料とし、頭からかじりついてくる凶暴な連中である。
「時に現れる魔物だが、我らにとっては丁度良い実戦相手だ。だが、今回は数が多くてな」
どこかに女王アリがいると見られるが、今は自分達の生活圏を侵すアリを倒すのが先決。一気に倒すべく手数が欲しいとのこと。
「貴公らには我らの修練場に屯すアリどもを倒してほしい」
門下生らの報告によれば、数は4体。
修練場は道場以外の場所で鍛錬を行う門下生でも少し格上の者達が使う場所とのこと。集落外の場所に備えていることもあり、時折魔物が現れることもあるそうだ。
「奴らは仲間を呼ぶこともある。手早く倒さねば、面倒なことになるやもしれぬぞ」
とはいえ、門下生らがあちらこちらでアリを討伐している。増援が来るにしてもそう多い数ではないだろうと宇航は話す。
「修練場の場所は集落を出て2,30分程度行った場所だ。そこまでは門下生に案内させよう」
ただ、まだ力をつけていない門下生達であり、戦力としては期待できない。討伐自体はイレギュラーズ達のみで行いたい。
「無事討伐出来たら、改めて貴公らを歓迎しようぞ」
「やれやれ、来て早々、依頼とはね」
宇航の言葉に肩を竦めるオリヴィアは、集落に留まって情報を集めたいとのこと。
イレギュラーズは手早く準備を整え、門下生の案内を受けて修練場へと向かうのである。
- 空洞に繁殖する巨大アリ完了
- GM名なちゅい
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2022年01月31日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談5日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
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イレギュラーズが至った『亜竜集落ペイト』。
日の当たらぬ地中にある集落……と、ドレスを着用した小柄なお嬢様、『春を取り戻し者』プラハ・ユズハ・ハッセルバッハ(p3p010206)は認識していたのだが。
「とっても賑わってますね」
「いやマジで我々と文化文明近しいじゃん。親近感ワックワクじゃ~ん」
大柄で軟派な青年、『八百屋の息子』コラバポス 夏子(p3p000808)ももっと滅茶苦茶な亜人種を想像していたそうで、人間臭を感じさせた住民たちの姿に意外性すら感じていたようだ。
ただ、現状は穏やかならぬ状況のようで。
「修練場にも屯す魔物がいるようだ」
魔物討伐に手を貸してほしいと告げる覇竜轟雷拳の師範、徐・宇航はそう告げる。すでに門下生もその討伐へと散っていたようだ。
「亜竜種の拳法……フリアノンの武術の一つですか」
師範自らも魔物討伐へと向かう亜竜種達。
幻想の貴族令嬢である『紅炎の勇者』リースリット・エウリア・ファーレル(p3p001984)はこのような土地で他の生物と鎬を削る為の技術を持つ彼らが大したものだと感嘆する。
「ご挨拶もそこそこにお仕事だなんて!」
ゆるふわへべれけお姉さん、『キールで乾杯』アーリア・スピリッツ(p3p004400)は来て早々の依頼に、この里の方々には格式ばった挨拶よりも腕っぷしに満足してもらう方が早そうだと考える。
「歓迎会にはお酒を用意してくださいなぁ、なんてね!」
酒はともかく、力を見せろと言った亜竜種達の態度は最高だと夏子も感想を口にして。
「リュカちゃんメタ可愛かったし、もっと沢山女性を見たい」
雄はまーどーでもという彼の本音はともかくとして。
彼らとの交流、そして、直前に採れたという肉食獣の肉というご馳走もあり、一行は覇竜轟雷拳の門下生達に案内してもらい、魔物の出現地点へ向かうのだった。
ペイト周辺は洞穴となっており、アリの巣を思わせる構造をしている。
通路と枝分かれした道をメンバー達は歩き、目的地を目指す。
カタカタ、カタカタ……。
亜竜種達の修練場に巣食っていたのは、4体の巨大な働きアリ。
それらはやってきた獲物に対して顎を鳴らす。
「流石覇竜領域って言うべきなのかな? 蟻ですらこんな感じなのか……」
魔導機巧人形である『咎人狩り』ラムダ・アイリス(p3p008609)が目を見張ったのは全長2.5mもある大きさだ。
「アリなのに私より大きい……」
「このサイズでこいつらの巣だと、どんな感じになるのやら……」
流石デザストル。なんでもありだよねと天義の貴族令嬢である『純白の聖乙女』スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)が目を見張る。ラムダも巣を想像し、正直洒落にならないと苦笑してしまう。
「混沌のトンデモ生物がなんでもアリなのは、重々承知の上なのですが」
アリだけに、アリだけに……語気を弱める猫耳少女、『めいど・あ・ふぁいあ』クーア・ミューゼル(p3p003529)だが、空気を察してすぐに気を引き締め直して。
「それが覇竜ともなるとサイズと強度の暴力がもれなくセットで付いてくるものなのですね」
厄介千万だと、クーアはこの地に生息する生物の強さに舌を巻く。
「でも、この面々なら、アリが大量に現れても、何とかなってしまいそうだよね」
そんな相手と対しても、線の細い印象の青年マルク・シリング(p3p001309)は柔和な笑みを浮かべ、頼もしいチームメンバーに安心と信頼を寄せる。もちろん、慢心はどの戦場でも御法度だ。
「さて、こいつらもやる気のようだね」
こちらを獲物と見定めた相手の殺気を感じたラムダ。アーリアは門下生達が修練場の備品を気にかけていたこともあり、エキスパートスキルで強化した保護結界をこの空間へと張り巡らす。
「きっちり依頼を片付けられるように頑張らないとね!」
「わたしも負けないよう元気に張り切っていきたいな」
スティアやプラハが気合を入れる。
何せ、入口付近で待機する門下生達が固唾をのんでこの戦いを注視している。見られている以上、期待に応えるべきなのだ。
「速攻で片を付けて、いざ宴会なのです!!」
頼むぞと声援をくれる門下生達の視線を受け、クーアは仲間と共に巨大アリの駆除に乗り出すのである。
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カタカタ、カタカタ……。
顎を鳴らす4体の巨大アリは、6本の脚を器用に動かし、イレギュラーズ達へと近づく。
「アリね……。イケるか……? イケるな……! イクぞぉーッ!」
名乗りを上げる夏子が敵2体を引きつける。
「油断しても無くてもヤラれる時ぁヤラれる、ってね!」
本心としては、自分1人で敵全てを担当して女性に良いところを見てもらいながら素敵火力を振るってほしいと願う。
「竜種相手でもアリ相手でも、することは変わらんのよね」
早速、巨大アリ達は夏子の体へと食らいつこうとするが、そう簡単に食べられてはくれないと敵は土塊や岩をぶつけて夏子を弱らせようとしていたようだ。
その夏子が引きつける敵へと、ラムダが奇襲する。
「接敵できる前に纏めて捉えられれば良かったけれど……」
ラムダは夏子が抑える敵2体のみを捉え、攻撃術式「死月」を発動する。
魔力纏いし刃閃は、相手を惑わす。
ラムダの剣戟を浴び、1体が早くも目を回して仲間へとかぶりつき、襲われた1体もぎこちない動きで避けられずにいたようだった。
(狙うべきは……)
相手が動きを止めている間に、ラムダは敵の生態を注視し、思考を巡らす。
構造的に触覚、関節の繋ぎ目などはねらい目だろうか。後、咬合力が強そうな大顎は注意すべきか。
(この覇竜領域の蟻はどうかは分らないけど、たしか蟻の蟻酸は刺針から吹くんだっけか?)
ラムダは戦いながらじっくりと観察することにしていたようだ。
回復役となるマルクは抑え役である夏子とスティアの双方から30m圏内に収まるよう位置取る。
現状、メンバーにほとんど傷はない為、マルクも攻撃集中してから魔術を発動させる。
魔光閃熱波……圧倒的な破壊力を誇るその術で、マルクはスティアの抑える敵から優先的に攻撃を仕掛け、巨大アリの体を焼いていた。
「アリさんなんかに負ける訳にはいかないのだー!」
もう一人の抑え役スティアは魔力を戦慄へと変え、神の福音を修練場内で鳴らす。
スティア側にいた2体の巨大アリはいきり立ち、酸を撒き散らした上で大顎を大きく開く。
敵が下手に暴れ、修練場隅にある備品を壊されてはたまらない。
(破壊の心配無いところまでおびき寄せないと!)
アーリアが保護結界を展開してはいたが、スティアは相手を中央付近にまで誘導する。
後は敵の注意を引きながら、未知であるこの巨大アリが何をしてくるかスティアは見極めようとしていた。
「お望みとあらば焼き払って魅せましょう」
心行くまで観察できればいいが、巨大アリは此方を喰らう気でいる。クーアはスティアの引きつけた敵を纏めて放った火の海で包み込む。
こげねこメイドである彼女は燃える巨大アリの姿に笑いすら浮かべるが、さすが覇竜の生息生物。炎に苦しみはしても、しっかり耐えていたようだ。
「しかし、随分と巨大なアリですね」
リースリットも覇竜のアリを脅威と感じる。
交戦しているのは働きアリであり、他の門下生らが別所のアリと交戦している状況とリースリットは把握していた。
また、どこかの通路が巣穴と繋がっているはず。当然、増援は現れてしかるべき。リースリットもそう警戒を強める。
マルクが焼いた1体を含め、リースリットは2体を纏めて霧状の氷を浴びせかけ、身体を凍り付かせようとしていた。
「以前、アリは常に予備戦力を控えさせているとお父様より聞いたことがあります」
続くプラハも、今回の襲撃は第一波に過ぎないとの主観と語る。
プラハも抑え役2人の中間の位置から回復に当たるが、初手は神気によってスティアの抑えるアリ2体の体を強く焼き、動きを抑えられるようにと敵の能力を弱める。
もがく巨大アリ達へと、しばし戦況を見守っていたアーリアが動き出して。
「だぁめ、動かないで」
橙色の糸を紡ぐアーリアは巨大アリの身体を激しく、強く縛り付けていく。
愛を込めて縛り付けるスキルだが、今は門下生である亜竜種達に強さを示さねばならないし、何よりお酒の方が大好きなアーリアだ。
この場はサポートに回り、彼女は徹底的に敵の行動阻害に努めていた。
見た目もあり、生態的にも間違いなく強さを備える巨大アリ。
しかしながら、戦闘経験豊富なイレギュラーズは雑兵とも言える敵と難なく対していて。
(空高くまで吹っ飛ばせば、周囲の被害はたぶん心配ないはず)
仲間達の抑えの中、クーアは弱った巨大アリ1体へと仕掛ける。
「一筋咲いて、天まで届け」
電流と炎熱による術式によって、クーアは敵を遠慮なく高くかっ飛ばすと、自らも跳躍して。
「果てまで堕ちよ、逆さ雷桜!」
追撃に敵の体へクーアは連打を見舞い、地面に激突すると同時にその意識をも落としてみせた。
程なく、もう1体も足を震わせ、苦しそうに蹲り始めていた。
そこで放つは仲間を呼び寄せるフェロモンである。
熟練の冒険者である仲間に劣らず役に立ちたいと考えていたプラハは、超嗅覚によってそれを感知して。
「仲間は呼ばせませんよ」
全力でスキルを発動させたプラハは、地面から巨大な土塊の拳を生やして殴りつける。
プラハの一撃は見事に敵の体を潰してしまう。
ただ、少量のフェロモンですら、アリどもはしっかりと感知するようだ。
「新手が来るよ」
直感を働かせるラムダの一言がわずかに早かったが、すぐに奥の入り口から2体のアリがやってきてしまう。
「女性に手ぇ出すのは僕だけでイイよ」
増援に気付いた夏子はすぐにその2体にも煽るように告げる。
「デカくてキモいアリの相手したい訳じゃねんだよぉ~。見目麗しい女性がこんな! こんなにいるのに!」
女性多めのイレギュラーズとあって、夏子は張り切っていたのだが、巨大アリはそんなの知るかとばかりに激しく怒り、夏子へと頭から食らいかかるのである。
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敵は増援もあって、依然4体のまま。
「スティアさんと夏子さんが前衛を張ってるんだ。アリじゃ何匹束になっても、あの2人は抜けないよ」
マルクは冷静に、抑えに当たる2人……特に現状4体全てを請け負う夏子の回復をと福音をもたらして傷を塞ぐ。
「お待たせ夏子くん」
スティア側が片付いたこともあり、アーリアは彼を労いつつ増援の動きを見て備品を背にすると、最初から残る敵を再び伸ばす糸で絡めとっていた。
仲間が抑える敵を倒したことで、スティアも夏子の負担を減らそうと構えるのだが、一度夏子に集まるアリどもは目を輝かせて大顎を開く。
「知性とか感じないと 目的がシンプルな分 容赦がなくておっかねえ~」
巨大アリは一斉に高く跳躍し、夏子へと飛びかかる。
酸を浴びせ、岩を叩きつけて彼の動きが止まったところで、その体へと食らいついていた。
元々重傷を負っていた彼はなんとかパンドラの力で耐えると、スティアが合間を縫うように2体に福音を利用して気を引いていた。
プラハが夏子へと回復魔法による治療を施す間、さらにクーアが1体を請け負う。
「1体くらいなら止められるのです」
その間に、討伐を加速させるべく、ラムダが死を誘う舞踏で敵を抑える。ラムダは流れるような所作で零距離から魔力斬撃を浴びせかけ、その命をも刈り取っていた。
カタカタ……。
残るアリどもがなおもフェロモンを振りまこうとするが、今度は増援が来ない。近場のアリはもういなくなっていたのだろう。
「後はこの場のアリさんを倒すだけです!」
スティアの呼びかけを受け、皆の手数を増やすべく自身を福音によって回復するスティア。
すると、プラハが神気を輝かせたことで怯んだアリ目掛け、リースリットが攻め入る。
一度、ダイヤモンドダストを浴びせかけたリースリット。
敵が凍ったのを確認し、リースリットは風の精霊の祝福と加護を束ねた一撃で胸部を貫いて仕留めて見せた。
続き、メンバー達はクーアの抑える増援1体へと仲間に攻撃を集中させる。
マルクは夏子の体力を気にかけながらも、魔光閃熱波をそいつに叩き込む。
メンバー達の攻撃の後でその圧倒的な火力には耐えられず、巨大アリはなすすべなく卒倒してしまっていた。
そして、残る1体。
なんとか持ち直した夏子がしっかりと抑えつける間、徹底的に動きを止めようとしていたアーリアが呼び寄せた妖精が舞い踊る。
畳みかけるメンバーの攻撃で追い込まれていた巨大アリは楽し気にじゃれてくる妖精達に絡まれ、恍惚としたまま意識を手放してしまった。
「相手が悪かったよねー。今日は我々、竜種でも戦えるメンバーでよ~」
「よく頑張りましたぁ」
この場をしのぎ切った夏子をアーリアが褒めると、彼は上機嫌になっていたようだった。
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巨大アリを倒した面々。
後続が出てこないところを見ると、周囲に現れた個体も手練の亜竜種達が倒したのだろう。
「念の為、巣穴を突き止めたいね」
現状持ち合わせの資料を元に、既知の領域に生息する巨大アリの生態と今回遭遇した個体の差異をマルクは手早く調べる。
「あまりに明確な脅威ですし、何れ討伐の流れになるのでしょうね」
リースリットも兵力とも呼称できるとんでもない規模の巣穴があると睨んでいた。
将来的に女王アリの駆除が発生する必要もあるだろうと、マルクは今回討伐に当たった門下生からも情報を集める構えだ。
「そういえば、アリってハッカ油を嫌がるみたいだけど」
今回、屯していた修練場など、侵入されると困りそうな場所に使うといいかもと、スティアが主張する。
「なら、それを使った罠を設置してみようかねぇ」
お待ちかねの歓迎会の前にと、アーリアはもう一仕事と今後の対策を行う。
足跡などから相手の侵入経路を調べ、彼女は逆サイドの入り口に
ハッカ油を使った罠を地面や壁に塗り、虫よけとして使っていた。それでも踏み込むなら、そのハッカ油を浴びるというトラップ。いくら巨大アリとはいえ、いくらかの効果はあるだろう。
ペイト、覇竜轟雷拳の道場へと戻る一行。
すでにそこでは、事件発覚直前に獲れたという肉食獣の肉が有志の住民らによって焼かれていた。
「皆、ご苦労であった」
自らもアリ駆除に当たっていた宇航師範が門下生達やイレギュラーズを労う。
「……肉食獣って美味いのかな。あんまそういうイメージねーな~」
「獣とは言ってるけど……もしかして、巨大アリだったりして」
異文化との触れ合いに些かの不安を覚える夏子。続くマルクの言葉に、メンバーは戦慄したが、亜竜種達が笑う。
「確かに覇竜では生物全てが生きる糧となるがな」
地中に棲む亜竜達は先程倒したアリですらも食用とするようだ。
ただ、虫食を敬遠する者もいるだろうと亜竜種達は理解を示し、今回はトカゲや野菜などを中心に焼き肉など豪勢な料理を振舞ってくれる。
「お肉はおいしいです」
その味に、リースリットは笑顔を見せる。
トカゲはいくつか種類がいるそうだが、硬い岩を纏ったアルマジイワトカゲなどは肉が柔らかく、脂がのっているのだとか。
「ふうん」
「そのトカゲも強いのかな」
スティアやマルクは大味ながらもボリュームあるその肉の旨さに驚く。
「焼き立ての肉を切った所から染み出る肉汁は癒しそのものです。はい」
プラハもその肉の味を絶賛しつつも、野菜が足りないからとキノコを皆に勧めていた。
「肉、肴、酒、酒!」
ご迷惑をかけない程度に遠慮なくと、クーアはその肉を肴として持ち出した自前のこげねこ秘蔵酒を口にする。
門下生には成人済みの者も少なくないが、試しにと宇航が口にすると、文字通り燃える酒に思わず炎を吐く。
「グオオオッ、これは」
亜竜種達は意外と癖になるとその酒を回し飲みしていたようだ。
なお、ペイトでは地上の山岳部に群生する植物、芋などを使った酒を飲むことが多いようである。
高性能な秘宝種であるラムダも問題なく肉をいただいていたが、やはり酒が気になっていたようで。
「うんお酒? それは樽で用意したほうがいいんじゃないかな?」
どうやら、ラムダは底なしなようで、亜竜種達も興味を持って勝負を挑んでいた様子。どちらが勝ったのか気になるところだ。
「未知なる絶品のお肉と、そこにお酒もあれば嬉しいわぁ、なぁんて!」
酒がいける武闘派の亜竜種達が催す宴を心から楽しむアーリアは、宇航へとウィンクして問う。
「私達はお眼鏡に叶ったかしら?」
「無論だ」
その返答が分かっていたとばかりに、アーリアは満足そうに頷き、酒を煽っていたのだった。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
リプレイ、公開です。
MVPはメイン抑えとして最後まで踏ん張った貴方へ。
また、GMコメントは修練場が鍛錬場となっておりました。お詫びして訂正します。
今回はご参加、ありがとうございました!
GMコメント
イレギュラーズの皆様こんにちは。GMのなちゅいです。
『覇竜領域デザストル』にある『亜竜集落ペイト』付近に発生した魔物討伐依頼の解決を願います。
●成功条件
指定箇所に巣食う魔物の殲滅
●概要
ペイトから程なくしてある亜竜達の鍛錬場を徘徊する魔物達の殲滅を願います。
鍛錬場は十数名が一度に鍛錬できる程度の広さ。
端の一角には鍛錬用の備品や休憩所などもありますが、できるならそれらを破壊せぬよう立ち回るとよいでしょう。
事後は肉食獣の焼き肉を振舞ってもらえます。
トカゲを思わせる未知の獣ですが、その味は格別と評判のようです。
●敵……魔物
○巨大アリ×4体
全長2.5mほどもあるアリ。働きアリと思われます。
たかがありと思うなかれ、覇竜の地に生息し、繁殖するアリが弱いはずありません。
土塊や岩を叩きつけてくる他、直接食らいついたり、酸を撒き散らしたりしてきます。
状況によっては、仲間を呼ぶことがあるようです。
●NPC……徐・宇航(じょ・ゆーはん)
今回の依頼者ある亜竜。長く伸びた髭が特徴的な45歳男性。
その翼や尻尾までも技に生かす武術、覇竜轟雷拳の師範です。
彼自身は別所での同様の事態解決に動きつつ、ローレットのお手並み拝見といった態度をとっています。
●情報精度
このシナリオの情報精度はAです。
想定外の事態は絶対に起こりません。
それでは、よろしくお願いいたします。
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