PandoraPartyProject

シナリオ詳細

未来を預かるという仕事

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●遠足引率トライアル
 亜竜種の住む町、フリアノン。
 R.O.Oでの冒険を経て、その詳細を知ったローレット・イレギュラーズ達は、その情報を現実に活かし、リアルのフリアノンへと向かう事となった。
 果たしてフリアノンに到着したイレギュラーズ達は、そこで現実の亜竜種たちと出会う事になる。
 彼らと再び、現実で縁を結ぶため、イレギュラーズ達の奮闘が――覇竜領域トライアルが始まろうとしている――。

「というわけでぇ、トライアルのお時間です~」
 と、のんびりした様子でそういうのは、人間年齢で換算するなら、30を超えたあたりの、のんびりとした女性だった。ふわりとした赤い髪から覗く、太い角は、亜竜種類の証だ。よく見てみれば、スカートの裾から覗く尻尾や、首元を包む竜鱗も見えただろう。
「私は、真華(マナカ)、といいますぅ。主に子供達の面倒を見ていますねぇ。
 お外で言う所の、託児所とか、幼稚園とか? そういうのの、保母さん、っていうのかしらぁ」
 だからエプロンなぞをつけているのか。何処かのんびりしたそれは、子供に接するような態度だといえる。いや、子供に接するような態度でローレットのイレギュラーズに触れられても困るのだが、意識してそうしているのでなければ、彼女の素の性格というものなのだろう。
「トライアル、ご存じですよねぇ? 琉珂ちゃんが、皆と仲良くするために、皆にお仕事をお願いしてほしい、って。
 雑用みたいに思えるかもしれないけど、皆も私達と仲良くなるために、頑張ってほしいわぁ。私も頑張りますからね」
 子供に言い聞かせるように言う真華。此方をあやすように言う彼女の言葉は、なんともくすぐったいような、気恥ずかしいような感じがするが、彼女と交友を持つためにはこの気恥ずかしさには耐えなければならないのかもしれない。
「それじゃあ、今日のお仕事は、遠足でぇす」
 にこにこと、真華はそう言った。
「え、えんそく?」
 と、あなたと同行していたイレギュラーズがそう言う。
「はい。私はね、人が一番、その本性を見せるのは、守るべきものと向き合っている時だと思います」
 にっこりと緩めていた瞳を、少しだけ開いて、彼女はそういう。
「守るべきものっていうのは、この場合子供たちね。私達の、未来を司るのが子供達。
 無邪気、と言えば聞こえはいいけれど、時に無分別で、乱暴で、残酷でもあるわ。
 そう言った、まっさらなものと出会い、正しい気持ちを残せるか。
 子供たちを、正しき導けるか。そういうものが大切なの。
 だから、皆さんが、私たちにとって正しい存在であるか見極めるために、子供達の遠足に付き合ってもらいます」
 と、そこまで行ってから、彼女はにへら、と締まりのない笑顔を浮かべた。
「本音を言うとぉ、引率の同僚が風邪でダウンしちゃって、手が足りないからなんだけどぉ……」
「まぁ、いいです。
 それで、遠足っていうのは、どこへ?」
「ええ。近くの山に、いつも山菜をとっている広場があるのよぉ。
 そこは、比較的、周辺でも安全だから、子供たちが外に出る時の候補の一つでもあるわぁ。
 ただ、あくまでも比較的、ね。戦える大人も数名、護衛についてきてくれるかから、そこまで深く心配しないでもいいけれど、油断はしちゃだめよ?」
 さすが前人未到の地、遠足といえど油断はならないらしい。
「じゃあ、私達はその護衛団と一緒に護衛を?」
 イレギュラーズの一人が言うのへ、真華は頭を振った。
「そこもお願いしたいけれどぉ、子供達の引率もお願いしたいわぁ。
 遊んであげたり、一緒に山菜をとってあげたり。
 あ、出来るなら、外の遊びや、お歌なんかを教えてくれると嬉しいわねぇ」
 にこり、と真華は頷いて、ふとまた、真面目な顔をした。
「自覚はしてね。私たちは、あなた達に未来を預けているの。
 相応のふるまいを要求されるからね?」
 少しだけ、彼女の芯の強さの様なものを理解できた。子供を預かるという事は、綺麗事だけではいかないのだろう。苦労も心労も多いに違いない。
「……って、脅かしちゃったみたいね。
 気楽に遊んであげればいいわよぉ~」
 と、ニコニコと再び笑ってみせる。
「とにかく、やってもらう事をまとめるわねぇ。
 子供たちと遊んであげる事。
 万が一が起きたら、守ってあげる事。
 この二つよぉ。簡単でしょぉ?」
 ふふふ、と真華は笑った。
 簡単だ、とは言うものの、実際には一筋縄ではいかないだろう。
 子供と遊ぶ、とはいえ、真華はこちらの行動に目を光らせているだろうし、万が一、というのも問題だ。何せ、敵は覇竜領域の怪物。子供達を護りながら、魔物や、最悪亜竜の様なものと戦わなければならない……。
「ほらほら、難しい顔しないでねぇ? お母さんといっしょに、スマイルスマイル♪」
 真華がにこにこという。果たしてこれも、此方を見極める演技なのだろうか? だんだん疑惑が増してきたが……とはいえ、依頼を受けた以上は、逃げ出すわけにはいかない。
 はてさて、フリアノンでの遠足引率。果たしてどうなることやら?

GMコメント

 お世話になっております。洗井落雲です。
 フリアノンでの、トライアル。今回は遠足への引率です。

●成功条件
 遠足を無事に完了させる。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

●状況
 亜竜種たちからの信頼を得るための、覇竜トライアル。
 その一環として、皆さんは真華(マナカ)、と名乗る女性から、『子供達の遠足の引率』を依頼されます。
 もとより、雑用も任されることのあるトライアルですが、些かほのぼのとした依頼。
 しかし、真華の言によれば、『これは亜竜種の子供達=未来を預けるに足るかを見極める試練だ』ともいうのです。
 確かに、一理はありそうです。まぁ、彼女の真意が何処にあろうとも、このトライアルは成功させる必要があるでしょう。まさに、亜竜種たちとの未来のために。
 というわけで、皆さんは遠足に行ってもらいます。
 遠足の場所となるのは、フリアノンより少し行った所にある、山菜取りの広場です。ここは比較的安全な場所ですが、はぐれワイバーンのような、縄張りから迷い出てきた亜竜などが登場しないとも限りません。
 (これはPL情報ですが、一匹の亜竜が、後半に登場する予定です。なので、警戒は怠らないようにしてください。)
 警戒しつつ、しかし子供達と思いっきり遊んであげて、自分たちが亜竜種たちと未来を共にできる存在だと、しっかりアピールしましょう!
 遠足の時間は、午前中から、夕暮れにかけて。
 天候は晴れで、指示されたルートを外れなければ、前述したはぐれワイバーン以外の危険性は無いです。(逆を言えば、余計な場所に行ってしまった場合の命の保証はありません。本当に。)

●子供達
 子供たちは、15名ほどいます。元気な子、少し大人しい子、お歌が好きな子、一生懸命山菜をとる子……様々です。
 皆亜竜種ですが、人間の子と変わらない子供たちです。
 皆さんは、この子達が山菜をとる手伝いをしてあげたり、鬼ごっこなどに付き合ってあげたり、外の遊びやお歌などを教えてあげたりして、しっかりと引率してあげてください。
 主にリプレイの前半は、この子達との交流がメインとなります。

●エネミーデータ
 はぐれワイバーン・フレイムウイング ×1
  炎のように赤い体色をしたワイバーンです。本来は縄張りとルートからは出てきませんが、今回たまたまはぐれてしまい、此方の広場へとやってきてしまったようです。
  強靭な体力と高い攻撃力を持つほか、鋭い爪で斬りつけてきた利、炎を吐き出したりといった攻撃を行います。
  リプレイの後半部分で、遭遇することになります。追い払えれば充分ですが、力を見せるためにも倒してしまうのも一つの手かもしれません。

●同行NPC
 真華
  今回の依頼主です。子供達の引率も行いますので、何かあったら手助けを乞うのもいいでしょう。頼り切るのは問題ですが、力を借りるのは悪い事ではありません。
  戦闘では、要請が無ければ子供たちを守ることを最優先として行動します。それなりに強いです。母は強いのです。

 護衛戦士団
  3名ほどの護衛の戦士たちが随伴してくれています。
  が、彼らは基本的に、『イレギュラーズ達が失敗した際に、子供たちを最優先で守りフリアノンに連れ帰る』ことを優先します。
  つまり、彼らに戦闘を任せて~とはいかないという事です。万が一の万が一、最後の保険くらいに考えてください。

 以上となります。
 それでは、皆様のご参加とプレイングを、お待ちしております。

  • 未来を預かるという仕事完了
  • GM名洗井落雲
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2022年01月31日 22時06分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ココロ=Bliss=Solitude(p3p000323)
Lumière Stellaire
マカライト・ヴェンデッタ・カロメロス(p3p002007)
黒鎖の傭兵
フラン・ヴィラネル(p3p006816)
ノームの愛娘
恋屍・愛無(p3p007296)
終焉の獣
蓮杖 綾姫(p3p008658)
悲嘆の呪いを知りし者
笹木 花丸(p3p008689)
堅牢彩華
ルビー・アールオース(p3p009378)
正義の味方
ヘルミーネ・フォン・ニヴルヘイム(p3p010212)
凶狼

リプレイ

●遠足の日
「……本当に遠足だな」
 『黒鎖の傭兵』マカライト・ヴェンデッタ・カロメロス(p3p002007)が、少しだけあっけにとられたように言った。遠足だ、とは聞いていた。とはいえ、実際に、本当に目の前で遠足の光景が広がっていると、少し面食らってしまう。
「まさか前人未到の領域で子守とは……確かに危険性や善性を確かめるのには最適かもしれんが、見張りを付けるとはいえまだ素性が浸透してない連中に子供預けるとは肝が据わってるもんだ……」
 感心半分、呆れ半分でマカライトが言うのへ、
「あらぁ、私だって、ちゃんとそのあたりは考えていますよぉ?」
 と、背後から声がかかった。
「うおっ!?」
 と驚いてみれば、いつの間に移動してきたのか、真華がそこでにこにこと笑っている。
「皆さんの事、信用できる、って思ってるのよぉ?」
「ふむ。信用してくれるのは有り難い」
 『獏馬の夜妖憑き』恋屍・愛無(p3p007296)が小首をかしげつつ、言う。
「それで、僕たちが行うのは、本当に、遠足の引率なのか?」
「はい。そうですよぉ」
 にこにこと真華が言う。
「といっても、やっぱり外は少し危ないからぁ、充分警戒はしてもらいますけれどね」
「では、私は、その、警戒の方をメインに動きます」
 『断ち斬りの』蓮杖 綾姫(p3p008658)が、目をそらすようにそう言った。些かか顔色が悪いようにも感じられる。それも仕方あるまい。些か衝撃的な依頼を、つい先日受けたばかりであったのだ。
「……無理しちゃだめよぉ?」
 真華がそういうのへ、
「は、はい……すみません……」
 綾姫は少し目を伏せた。
「んー……」
 その様子に、真華は何かを考えたそぶりを見せたが、しかし言葉を紡がずにいた。代わりに、うん、と頷くと、
「じゃあ、見回りをお願いねぇ?
 ここは景色もいいから、少しリラックスしてくると良いわぁ」
 そう言った。
「残りのメンバーは、引率しつつ警戒、という事でいいかな?」
 『可能性を連れたなら』笹木 花丸(p3p008689)の言葉に、仲間達は頷く。
「そうだね! でも、うーん……」
 『青と翠の謡い手』フラン・ヴィラネル(p3p006816)が少しだけ困ったような表情を見せるので、花丸は、
「ん? どうしたの、フランさん?」
 と尋ねた。フランは、あはは、と苦笑したのちに、
「本人を目の前にして言うのもなんだけど、真華さん、なんかうちのおかーさんに似てるかも!」
 優しくて……怒らせると怖いタイプだ、とは心の中にしまっておいた。あら、と真華は微笑むと、
「じゃあ、まなかおかーさん、って呼んで頂戴? 私もフランちゃん、呼ぶから♪」
「いや、それは、流石に……! でも、フランちゃん、って呼ぶのは、ええ、良いですよ!」
 ぐいぐい来る人だな、とフランは思う。とはいえ、悪い気はしない。
「それじゃあ、子供達に皆を紹介するわねぇ?
 ついてきて頂戴?」
 果たして真華に連れられて、子供たちの前に出てみれば、15人ほどの亜竜種の子供たちが、此方を興味深げにしげしげとみている。
「はい、今日はみんなに、新しいお友達を紹介しますねぇ」
 真華が言う。
「お友達なんだ……」
 花丸が苦笑した。
「ローレットの皆よ。今日は、一緒に遊んでくれるのよぉ」
『おー!』
 と、きらきらとした目を、子供たちは向けてくる。
(そして、それを以て、わたしたちの人となりを知る、かぁ……)
 『医術士』ココロ=Bliss=Solitude(p3p000323)が胸中で呟く。大役を任されてしまったかもしれない。
「えーと、ココロって呼んでね。
 今日はみんなと仲良く遊べたらな、って思うわ」
 にこにこと、笑顔を浮かべるココロ。イレギュラーズになる前は、独りぼっちだった自分。何も知らずにまっさらだった自分。
 それと、まだ何色にもなっていない、子供たちを重ねてしまう。
 今は、仲間達と冒険ができて、毎日が楽しい。
「皆にも、色々な事、教えてあげたいわ」
「はい、こころせんせー!」
 男のが元気よく声をあげた。
「せんせー、か。なんか面白いね」
 『正義の味方』ルビー・アールオース(p3p009378)が、くすぐったそうに笑った。
「私はルビーだよ! はじめまして!
 仲良くしてね!」
「はい、るびーおねーちゃん!」
 女の子が言う。
「おっと、私はおねーちゃん? んー、でも、いいよ!」
 にっこりと笑う。
「ふふ、保母さんみてーな仕事は初めてだと思ってたけど」
 『呑まれない才能』ヘルミーネ・フォン・ニヴルヘイム(p3p010212)が笑った。
「故郷の子供たちの子守を思い出すのだ!
 ヘルちゃん、こう見えて結構子守は得意なのだ!
 任せるのだ! 今日はいっぱい遊ぶのだ!」
「おー、ヘルちゃん、よろしくな!」
 生意気そうな少年が言うのへ、ヘルミーネは、むむ、と唸った。
「おねーさんとかセンセーとかじゃないのだ? まぁ、許してやるのだ。ヘルちゃんは心が広いのだ」
 ふふん、とヘルミーネは得意げに笑った。
「それじゃあ、お願いね、皆♪」
 真華が、ニコニコとそう言った。
「分からないことがあったら、なんでも答えるわ。それじゃあ、遠足の始まりはじまり~♪」
 歌うように言う真華の言葉に、子供たちは元気よく返事をする。
 かくして、イレギュラーズ達引率による遠足が幕を開けたのである――。

●楽しい遠足!
「よーし、じゃあ皆、ちゃんと仲良くするのだ!」
 ヘルミーネが、子供たちの前でそういう。隣には、魔狼ガルムがちょこんと座っている。
「でかい」
「でっかいワンちゃんだ」
「違うのだ! ガルムは狼なのだ!」
 子供たちの声に、ヘルミーネが抗議の声をあげる。
「ヘルちゃん、ガルム触ってもいい?」
 女の子がそういうのへ、ヘルミーネは、うむ、と頷いた。
「よいのだ! でも、優しくなのだよ?」
「はーい」
 女の子が、ガルムにもふ、と顔を埋める。毛並みが心地よい。ガルムが、くあ、とあくびをする。
「よーし、じゃあお歌や踊りを教えるのだ! ヘルちゃんたちの国の歌や踊りなのだ、覚えていってほしいのだ!」
「ガルムも一緒でいい?」
 女の子がもふ、と顔を埋めながら言うのへ、ヘルミーネは頷いた。
「もちろんなのだ! 仲良くするのだ!」

 さて、動物(?)と言えば、マカライトのティンダロスも人気のようだ。此方も、例えるなら狼のような生き物で、子供たちは案の定、
「おっきいワンちゃんだ」
 と言っている。マカライトは苦笑しつつ、訂正はしなかった。説明するようなものでもないだろう。
「触って大丈夫なの?」
 と、お決まりの質問に、マカライトは頷いた。
「優しくしてやれるなら、大丈夫だ」
「ありがと!」
 屈託のない笑顔で、子供たちが礼を言った。そのまま、ぺたぺたと、ティンダロスの毛並みを触ってみる。漆黒の獣は、不思議気に子供たちを見やりながら、しかしていやがるそぶりは見せない。
「すまんな、ティンダロス」
 マカライトの言葉に、ティンダロスはあくびで返した。
「暴れないなら、背中に乗っても大丈夫だぞ」
「ほんとに!?」
 マカライトの言葉に、子供たちの目が輝く。ティンダロスの背中に子供たちを乗せてやれば、なにが楽しいのか、子供たちはわーわーと歓声をあげる。まぁ、こういうのも悪くないかもしれない。マカライトはそんな風に思う。
「ほらほら、こうやって、ロープに皆に入ってね、一緒に走るの!」

 フランは蔦を大きく広げて、その中に子供たちを入れてやった。そして、手で持ち上げると、一列になってとっとっと、と駆けだす。
「あはは、これなーに?」
 ケタケタと笑いながら、フランの背中をついて回る子供達。フランは、ふふー、と得意げに笑うと、
「電車ごっこ、って言うんだよ。電車っていうのはね……別の世界の、馬車みたいな乗り物でね。この世界だと、練達って言う所にあるんだ」
「れんたつー? それっとお外?」
「そう! 戦闘は、しゃしょうさん。ね、今度は君が車掌さん! 後ろの子達を気にしながら、一緒に歩いてみよ?」
 先頭を、後ろにいたこに譲って、フランは後ろに回り込む。子供たちが転んだりしないように診ながら、
「それじゃ、こう言って? しゅっぱつしんこー!」
「しゅっぱつしんこー!」
 とことこと歩き出す子供に引っ張られて、フランもとことこと歩き出す。山の野原をかける電車は、笑い声を乗せて走り出している。

 さて、走っていると言えば、ルビーと子供達も同じだ。とはいえ、此方はフランの電車ごっこに比べたら、さらに元気が良い。
「これはね、私達は鬼ごっこ、って呼んでたよ」
 ルビーが鬼になって、子供たちを捕まえる。いわゆる単純な鬼ごっこだが、子供たちにとっては、走り回るだけでも楽しいものだ。
「皆の街には、そういう遊びもあるのかな?」
「あるよー、氷竜さんがにーらんだ、って言うの」
 両手をバタバタと振って、子供たちが説明してくれる。
「えーとね、こうやって、皆でわーって逃げてね。氷竜さんに捕まえられると、凍って動けなくなっちゃうの。他の子が触って氷を溶かしてあげると、また動けるようになるんだよ!」
「なるほど、氷鬼だ」
 ルビーが頷く。どうやら、似たような遊びはよくあるらしい。
「じゃあ、今度はそれをやってみようか! 私が氷竜さん! いくよー!」
『きゃー!!』

 楽し気に子供たちが走り回るのを、ココロは眺めていた。近くには、少し大人締めの子達がいて、その子達はのんびりココロの傍でくつろいでいる。
 子供体が抱えているのは、ココロが作ってきたお弁当。亜竜種たちもパンは食べるらしいが、外の者とは若干形状が違ったりしていて、子供たちは「これもパンなの?」と目を輝かせていた。
「お外にはね、あなた達みたいに、翼を持った人たちもいるの」
 ココロが微笑んだ。
「飛行種、って言ってね。鳥さんの羽を持っている人たち」
「へー、その人たちって飛べるの?」
「ええ。いつか、あなた達も、外に来てほしいな。その時は、『海洋』っていう国に来てほしい。
 わたしが住んでる所だから、色々案内してあげるね?」
「大人になったら、行ってみたい! 海洋ってどんなところなの?」
 目を輝かせて尋ねる子供達に、ココロは微笑みながら語った。
「そうね、海があってね――」

「んー、これって食べられる山菜?」
 と、花丸が子供達に尋ねる。子供たちは、「ちがうよー」とダメ出しをして見せた。
「ほら、これ見て。葉っぱの形が違うでしょ?」
「えー、一緒じゃない?」
 ぶー、と花丸が口をとがらせるのへ、
「ちがうよー。よく見て! こっちは三角なの。それは丸」
「あれ、ほんとだ……凄いなぁ、皆」
 冒険知識はあるとはいえ、流石に覇竜領域のことは子供達に一日の長があるようだ。
「ねね、普段はどんな事して遊んでるの? 花丸ちゃんに教えて?」
「いいよー。山菜をとったり、おいかけっこしたり。ちっちゃいワイバーンのお世話したりしてるよ」
「ワイバーンのお世話?」
「うん。かちく? にするのをためしてる? んだって」
「へー、花丸ちゃんもお世話できるかな?」
「わかんない。花丸ちゃん、山菜わかんないしー」
 むむ、と唸る子供に、花丸は笑ってみせた。
「む、厳しいなぁ。花丸ちゃんも、山菜見分けられるように頑張るよ!」
 そういう花丸に、子供達もがんばれー、と笑いかけてくれた。

「おにーちゃんは何してるの?」
 と、愛無は少女に呼びかけられた。
「うむ……ご飯を食べている」
 外の警戒をしている、とは子供には伝わるまい。愛無はそういうと、懐のバスケットからドーナツをとりだした。
「たべるかね? どうなつ」
「わっかだ」
「そう、わっかだ。甘くておいしい」
「たべるー」
 その子はドーナツをうけとると、恐る恐る齧ってみせた。
「おいしー! あまい!」
「だろう」
 愛無は頷く。
「腹が減っては戦はできぬ。子供は良く喰って良く遊びよく寝るのが良い。それを守るのが大人の役目というモノだろうしな」
 その言葉に、少女は小首をかしげた。
「わかんないー」
「わかんないか」
 愛無は頷いた。

 子供たちを眺めながら、綾姫は複雑な思いを浮かべていた。屈託のない笑顔を浮かべる子供達。だが次の瞬間、彼らが血みどろになって、自分の罪を攻め立てるような……そんな幻覚に囚われてしまうのだ。
「何か辛いことがあったみたいねぇ」
 綾姫へ、声をかけてきたのは、真華だった。
「……! すみません。依頼中に……」
「良いのよぉ。このお仕事の話を聞いた時から、少し辛そうだったわね。気づかなくてごめんね?」
「いえ、そんなことは……」
 綾姫が、視線を落とす。真華は、少しだけ沈黙した。綾姫は何か言葉を紡ごうと思ったが、出てはこない。
「……子供がね、怖い夢を見るの」
 真華が、言葉を選ぶように、そう言った。
「怖くて怖くて……どうしようもなくて。助けてあげたいけど、その子の怖いって気持ちは、その子の中にしかないの。
 だから、その子は自分の力で、怖いものに立ち向かわないといけない。
 そんな怖いものを取り除ける力は、私にはないわ。そんな魔法があればいいなって、いつも思ってる」
 真華は少しだけ、悲し気に微笑んだ。
「だからね、私は一生懸命その子の事を信じて、一生懸命褒めてあげることにしてるの。
 大丈夫だよ、って。
 ねぇ、綾姫ちゃん。私に、あなたを信じさせて? そして、またいつか、私に会いに来てほしいの。
 そうしたら、一杯褒めてあげるから。ね?」
 それは、精一杯の慰めの言葉だったのだろう。今はそれを万全に受け止められなくても、思ってくれることに嬉しさは、綾姫にもある。
「ありが――」
 そう呟いた刹那。
 綾姫は飛びあがった。何か強烈に嫌な予感が、綾姫の中に突如として走った。そしてそれは、的中する。
 があ、と、甲高い鳴き声が響いた。空を見れば、赤い焔のワイバーンが、此方に迫って来るではないか!
「フレイムウイング……!? はぐれて流されてきたの……!?」
 真華が驚いたように声をあげる。綾姫は叫んだ。
「子供たちを!」
 おっとり刀で駆けだした。
 今度は、助ける。
 罪滅ぼしにはならない。それでも。今は。

●守る未来
 すでに、他のイレギュラーズ達も態勢を整えている。
「あたし達みーんな、すっごく強いんだ。だから安心してね」
 子供たちを背に庇いながら、フランは言った。空を睨みつける。飛翔するワイバーン。それが地に降り立たんとしていた。
「こっちだ!」
 ティンダロスに乗ったマカライトが、敵を引き付けるように戦場をかけた。ワイバーンが突撃する! マカライトは、機械剣を振り上げて、ワイバーンの爪を受け止める。
「花丸ちゃん、行くのだ! 子供たちは任せるのだ!」
 ヘルミーネが叫び、その動きに引っ張られた花丸がかける!
「お前の相手は、花丸ちゃんだっ!」
 名乗りを上げ、拳を叩きつける! ぎゃ、と悲鳴をあげたワイバーンは、空に滞空する花丸に向けて焔を吐いた! ごう、と炎が身体を焼く。花丸は耐えながら、力強くワイバーン蹴りつけた! ワイバーンが滑空する。愛無は己が手を触手へと変化させて、地上からワイバーンを狙い撃つ!
「撃破は狙わなくていい。追い返すだけで充分だ」
「了解っ!」
 ルビーが跳ぶ! 瞬間的な加速! 手にした大鎌を、加速を乗せて叩きつけた! がりり、と亜竜の鱗が飛び散る! ぎゃあ、とワイバーンは悲鳴をあげた。だが、その生命力は尋常ではない! ワイバーンは子供達の方に狙いを定め、飛び出した!
「子供たちは、狙わせないっ!」
 ココロが声をあげ、懸命に立ちはだかる。放たれるは必死の一撃。きゃしゃな体からは想像も出来ぬ必殺ぱんちが、ワイバーンを大きく吹き飛ばした。
(剣よ。私はこの手で何を斬る。あの親子か)
 綾姫はわずかに逡巡する。答えは出ない。だが、今は――。
 たとえ偽善であろうとも、たとえ汚れた手はぬぐえずとも、今は――。
 綾姫が剣霊を生み出す。一本の剣。黒い剣。何かを斬る剣。何かを護る剣。
 綾姫の、剣。
 それが宙をかけて、一筋の黒の閃光と化した。一直線にワイバーンへと向かう。斬――静かにそれは、ワイバーンの皮膚を切り裂いた。
 ぎぃ、とワイバーンが悲鳴をあげる。痛みに、ワイバーンは戦意を喪失した。此方とは反対の方へ、飛んで去っていく。
 綾姫はくずおれた。気が抜けてしまった。なぜかは分からない。
「おねーちゃん!」
 子供たちが、駆け寄ってくる。目が、綾姫を見た。
 怨みではなかった。心配の目。優しい目。
「ありがとう」
 と、真華は笑った。
 ありがとうで。
 いいのか。
 綾姫はうつむいた。
「皆も、大丈夫? 怪我はなぁい?」
「花丸ちゃんは大丈夫!」
 花丸は笑った。
「軽く追い払っただけだからね。どっちも損ない傷はないよ」
「よかったぁ」
 子供たちが、安堵の声をあげた。
「心配してくれたのだ? ありがとうなのだ!」
 ヘルミーネが笑った。
「今日は、このまま帰りましょう。
 帰り道も、一緒についてきてね?」
 真華がそういうのへ、マカライトが頷く。
「もちろんだ」

 かくして、少しだけ急ぎ足で、皆は集落へと戻っていった。その帰り道は少しだけ緊張の続くものだったが、行きの時よりも、子供たちはイレギュラーズ達に打ち解けていた。
 未来は確実に、イレギュラーズ達に微笑みかけてくれていたのである。

成否

成功

MVP

マカライト・ヴェンデッタ・カロメロス(p3p002007)
黒鎖の傭兵

状態異常

なし

あとがき

 ご参加ありがとうございました。
 皆様の活躍により、子供たちは遠足を無事に満喫しました。
 皆さんは、未来を護ったのです。

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