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シナリオ詳細

狂気! 怪生物の忘れ形見を有効利用しようとするイレギュラーズ!

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●誰も止めなかったのか、誰か止めるべきだったのか
「あの粉って料理に使えたりするのでして……?」
 全てのきっかけは、ルシア・アイリス・アップルトン(p3p009869)が秋口に豊穣で討伐した怪動物、通称「角ペロイタチ」から奪い取った『粉』について疑問を呈したことであった。「何言ってんだこいつ」みたいな目でルシアを見る周囲の目は決して温かみのあるものではない。
「流石にアレは危険だと思ったので処分しましたよ。成分解析にかける必要もなくまたたびの人版、まあ言っちゃうと非合法でヤバい薬に類する可能性もあったので」
 『ナーバス・フィルムズ』日高 三弦(p3n000097)の判断は的確だったかもしれない。思い出すだけで涎を垂らしながら魔砲をぶっ放せる対象がないからチラッチラッし始めたルシアを見るとどうにも正常な判断力を欠いているように見えたからだ。
「話は全部聞いたゆ」
「普通にドアから入ってきてくださいよ」
 『ポテサラハーモニア』パパス・デ・エンサルーダ(p3n000172)は窓を全開にしてから助走をつけて飛び込んできた。よじ登れよ回りくどいな。
「ちょっと豊穣に美味しいスパイスがあるって聞いたんゆ。なんでも清流が流れる高山地帯で栽培されてるらしくてやや粘りのある緑色の根っこをありがたがる系のヤツらしいゆ。葉も食べられるらしいゆ。でもそこは今『マガツ妖怪』とかいうなんか名前からして生意気そうな連中がふうさしてるらしいんゆ。ちょっとぶっちめてスパイス独り占めゆ」
「……そのスパイスは、どんな名前なのでして?」
「ゑさび」
「ゑさび……」
 絶対ルシアの希望と違う上にすっごく惨劇の予感しかしないのだが、三弦は突っ込まなかった。マガツ妖怪、と聞いて早急に対応する必要を覚えたからである。

●とりあえず細かいことも思い出そう
 マガツ妖怪。
 『羅刹十鬼衆』と呼ばれる魔種勢力のうち、『大叫喚地獄』豪徳寺 英雄によって凶暴化した妖怪たちの総称である。
 基本的に敵意の薄いものやさして強力ではない妖怪がことさらに脅威度を増した場合、このタイプに変じたと見て間違い無かろう。
 豊穣・地方集落『佐俾野(さびの)』。ゑさびの産地としての名声がそのまま地名になったような場所には、雷獣の伝承が残る。
 天から降る雷と共に現れ、清水を好み、住民に天候の変化、こと雪などの兆候を告げて去っていく。或いはなんらかの吉兆や凶兆を告げる者とも言われていた。自然現象に程近いそれは、なんでも佐俾野の住人が与える黄色い粉を好んで食したとされている。

「……ってワケで今回はどうやら雷獣、あと雷獣の放った電撃と反応して生まれた帯電した水の塊を全部ぶっちめて正気に戻すのが仕事ゆ。殺す気で倒しても死なないらしいから大丈夫。村人はビビって出てこないので全部終わらせた後に正気に戻った雷獣連れて粉もらいに行くゆ」
「……つまりその粉が『あの粉』と同じ……?」
「さあ。わかんねえゆ。そん時は試行錯誤してなんか新しい調味料作んゆ」

GMコメント

 なんでこんなシナリオにアフターアクションが生まれてしかもそれを私が処理できるんだろうなあ。自分でもわからんのだ……。

●成功条件
・『雷獣』『雷水』の討伐(無力化)
・『雷獣の好物』『ゑさび』を獲得した上でなんかサラダとかつくってかけてみる

●雷獣
 本来は佐俾野の守り神に近い立ち位置にいた、自然現象と結びつくくらいの妖怪。マガツ妖怪化して凶暴化、ゑさび園周辺を根城にして動く気配がない。
 本体はともかく、外観は電撃で作られた虎のような姿をしている。
 爪による中距離攻撃、正面への咆哮(神超貫)、範囲攻撃の『落雷』、ほか多彩な電撃スキルを所持。毎ターン判定によりランダムで【神無】をが自動付与される。
 【電撃無効】、EXAと反応が高い。

●雷水×10
 雷獣の雷によってゑさび園周囲の清水が電撃を纏って不定形の存在となったもの。常時【物無】。
 攻撃力は然程ではないが【呪殺】【電撃系列】BS、【スプラッシュ2】攻撃などで数以上の攻撃回数となるため、攻撃が総じて非常に避けにくくなる。
 なおまれにゑさびのエキスを纏った水が混じるゆえに【恍惚】などの精神系BSが発生する。

●戦場
 ゑさび園。足元には別にゑさびが植わっているわけではないので戦闘に支障はないが、地面が砂利っぽくなってる水田で戦うような感じなので冷たい。解除不能の【凍結】を被る。
 なお雷獣などはこれを被らない。足場が決して良いとはいえないので注意。

●ゑさび
 わさび。というか若干ホースラディッシュとの間の子みたいなものなので「わさび」ではなく「ゑさび」である。
 なので単純にツンとするとかって言うよりは若干ねっとりした味。

●雷獣の好物
 これはPL情報なんですがとうもろこしの粉末です。コーンスターチ? うるせえとうもろこしの粉末を蒸してなんかしたやつだよ。
 そんなかんじで甘みがあります。なお角にかけても美味し、やかましいわ。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • 狂気! 怪生物の忘れ形見を有効利用しようとするイレギュラーズ!完了
  • GM名ふみの
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2022年01月12日 22時55分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

リリー・シャルラハ(p3p000955)
自在の名手
ゴリョウ・クートン(p3p002081)
ディバイン・シールド
鹿ノ子(p3p007279)
琥珀のとなり
希紗良(p3p008628)
鬼菱ノ姫
八重 慧(p3p008813)
歪角ノ夜叉
ニル(p3p009185)
願い紡ぎ
物部 支佐手(p3p009422)
黒蛇
ルシア・アイリス・アップルトン(p3p009869)
開幕を告げる星

リプレイ


「此度の討伐対象は、自然現象が妖怪化したものと聞いたであります。何故そのように変じてしまったのかは分からないでありますが、周囲に害が出てはなりませぬ」
「成程……事情はよく飲み込めていませんが、やる事は分かりました。要は、わしの得意な荒事っちゅうことですね!」
 『鬼菱ノ姫』希紗良(p3p008628)と『黒蛇』物部 支佐手(p3p009422)、豊穣の住人たる両者にとって豊穣に混乱が起きることは快いものではない。それが人為的なものなら、尚更。だが、分からぬものは解決できぬもの、というわけもなし。解決手段がはっきりしているなら、支佐手ぐらい単純な考えでもいいのだ。
「ぶはははッ、新しい豊穣の食材と聞いて飛んできたぜ!」
「ゑさび、黄色い粉……豊穣には知らないごはんがいっぱいです。ニルはゴリョウ様のごはん、とってもとってもたのしみです」
「ゑさび、美味しかったらリューにも仕入れてもらおっと」
 『黒豚系オーク』ゴリョウ・クートン(p3p002081)の意気揚々とした声に、『おかえりを言う為に』ニル(p3p009185)の声に強い期待の色が浮かぶ。食に強いイレギュラーズが一人でもいるという事実は、それだけで戦闘後の楽しみが増すものだ。同時に、村との交流を密にすれば、きっとゑさびを持ち出せるはず……『自在の名手』リトル・リリー(p3p000955)は今回だけではなく、今後に関しても強い期待を寄せていた。
「詳しいことは分からないッスけど、角ペロっていうのは獄人ではないにしても角持ちとしてはあまり良い気分ではないッスねぇ……」
 例の依頼の顛末を知ってしまった『琥珀の約束』鹿ノ子(p3p007279)にとって、その事実はなかなかどうしてクソ面倒くさい話であった。終わった話である、角をなんやかんやするのも仕方なし、だが理性で分かっていても本能的な嫌悪感ばかりは拭えない。それを否定する要素はない……ごめんな本当にクソみたいな話と顛末で。
「例の粉の件は脇に置いておくのでして! まずは問題を片付けてゑさびにありつく事が先なのです! 依頼が片付いた後でゑさび園で収穫を、ひゃっ?!」
 『にじいろ一番星』ルシア・アイリス・アップルトン(p3p009869)にとって『例の粉』案件は非常に気になるところ。なのだが、そも新しい調味料が得られる新鮮さの方がより興味は増すわけで。意気揚々とゑさび園に足を踏み入れた彼女は、然しその水の冷たさに悲鳴を上げる。これは背の低いリリーにとってもかなりキツい状況で、正直長期戦になったら寒さ冷たさに耐性がない者は頗る不利なのであった。尤も、ルシアは翼があるし、リリーはレブンに乗っていれば全身が浸かる心配も、ひとまず回避できるだろう。
「畑であれこれされんのはやばい、下手すりゃ数年単位で今後の生活に響くなんてこともありえるっすよ。それに無理やりこんな状態になったってんなら、早く正気戻ってもらいてぇですからね」
「雷獣様だって、暴れたいんじゃなくて粉? を食べたいんですよね。雷獣様とおいしいごはんを食べられるよう、ニルもがんばります」
 『歪角ノ夜叉』八重 慧(p3p008813)の言葉……こと後半のそれに、ニルも、そして仲間達も力強く頷いた。ゑさび園の奥で唸りを上げる雷獣は、もとはといえば神獣と呼ぶに遜色ない存在だ。そんな手合いが存在を歪められ人の営みを破壊した時、正気に戻ってからどれだけ苦しむのか。
 そんなことは起きてほしくない――1人では『おいしくない』のだから。
「そういえば、キサ、山葵は不得手でありますがこちらならば美味しく食べられるでありますかね」
「そりゃあ十分期待できるんじゃねえかな! 別物ならあの辛さとは違う辛さなのかもしれねえ! どっちにしろ俺が美味しくするけどな!」
 希紗良は山葵本来の味をちょっとだけ思い出し、改めて不安そうな表情を見せた。ゴリョウはそんな彼女に安心するよう伝えると。自信ありげに胸を張る。
「ゑさび園は、ニルが結界を張ったので、わざと壊さなければ大丈夫、です」
「あれが雷獣ですか。話に聞いたより大きく感じますね」
「人の害になりさえしなければ、確かに神々しい感じもするッスね……」
 ニルが保護結界によってゑさび園を守る中、一同から距離を置く形で雷獣が姿を現す。抜き足差し足、軽快でありつつ慎重さを見せる足取りは、ゑさび園に害を及ぼす気が薄いことを窺わせた。或いは、独占することを前提として傷つけまいという底意地の悪さか。
「足運びは大したもんだ。けど、俺だってこの足場には慣れたもんだぜ!」
 ゴリョウはゑさび園の中を悠然と歩み、徐々に雷獣との距離を詰めていく。雷獣の左右に静かに波打った水は、そのまま水の塊として現れ、イレギュラーズと距離をとる。
「ちょっと寒いくらい、この国の平和のためならなんでもないッス」
「ゴリョウ殿、鹿ノ子殿、よろしくお願いするであります」
 ゴリョウと並び歩みを進めた希紗良は、次の動きのため身構えた鹿ノ子にも視線を送る。3人でこの雷獣の足止めを果たすのだと。人々のために己の使命を全うするのだと。
「それなりに寒い地に住んでるもんでね、冷たさにゃまぁ慣れてます」
「水の方はわし等で引き付けましょう!」
 慧と支佐手、そして各々イレギュラーズも高まる緊張に呑まれることなく、得物を手にとり対峙する。
 低い唸りを上げる雷獣の視線に導かれるように、雷水達は後衛を狙いに走り、雷獣の初撃はゴリョウが正面から受け止めて見せた。


「その厄介な攻撃、俺になら遠慮なくどうぞ……いや待ってなんか味しませんか何混ぜてんすか!?」
「……水が敵って不思議な感じですけど、早くなんとかしないと慧さんが大変そうです」
「ホントに言われたた通り水が動いてるのですよ、ちょっと不思議でして……ってそれどころじゃないからずどーんするのでして!」
 慧は封じ込めていた呪いを撒き散らし、雷水を自らに集めようとする。が、それより早く飛んできた水礫に混じった電撃が反応をわずかに遅らせる。次々襲いかかるそれを不思議そうに眺めたニルは、そのまま追撃の水礫ごと、雷水達を凍らせようと試みた。
 ニルと同じ感想を抱いたルシアだったが、その攻撃はニルより直線的で、且つ破滅的だ。性格の違いが学んだ術式に出ているのは興味深いが、何れにせよ保護結界がなければ大惨事だったことは間違いない。
「そういえば、この水も厄介な相手だったね……いざ勝負、だねっ!」
 リリーは雷水と対峙する仲間の反応から、それらが自分に親しい『不調を呼び込み有利に運ぶ』類の敵だと理解した。そのうえで、自身も次々と魔弾を打ち込むことでその動きを鈍らせるべく立ち回る。飛び回るレブンは目立つが、それに乗ったリリーの姿は大分見えにくく、悟られにくい。
「水が相手なら、こいつは堪らんでしょう」
 支佐手は雷水達の直下に毒沼を生み出すと、そこから発した毒ガスに巻き込んでいく。……繰り返すが、魔術的効果とはいえ保護結界がなかったらどうなっていたことか、想像するにやや危ういところもある。
「ぶはははッ! やっぱり強ぇな! これは俺も負けちゃいられねえ!」
 ゴリョウは雷獣と正面切ってがっちり組み合う形を取りつつ、相手を逃さぬよう腰を落として受け止める。自らの視線を受けた相手の意識を引きつけることで、その隙を作り出す。相手が強大すぎれば危険だったが、彼の実力があればそうそう打ち崩されはすまい。
「……遮那さんのおわすこの豊穣に、乱あるを許さず」
「キサも一気に攻めるであります」
 鹿ノ子と希紗良はゴリョウが惹きつけたタイミングを逃さず、背後から斬りつけにいく。一足のもとに間合いを詰めた両者の斬撃は雷獣を深く傷つけたが、さりとて相手も信仰に届く妖怪だ。一瞬だけ取り戻した正気を振り絞り、高らかに吠え雷を呼び起こす。
 範囲こそ狭いが、威力は大なり。一撃で戦局をひっくり返しはしないが、危険性を知らしめるには十分すぎた。
「……にしても、ここいらは戦いづらいでありますな。時間をかける程不利になるであります」
「短期決戦がベストッスけど……これだけの術を使うんだから、魔力は潤沢な筈ッス。つまり。こっちが大技を出し続けても、奪う先があるってことッスよ」
「そりゃあそうだ! 上手いこと言うぜ!」
 希紗良は足元の水、その冷たさに思わずたじろぐ。動きが鈍った状態でこの強敵と戦うのは得策ではなく、しかし治療ができるゴリョウがいればこそ前に出る覚悟もある。
 鹿ノ子の発想は希紗良のそれよりなお剣呑だ。彼女の魔力とて決して貧弱ではなかろうに、『その先』すらも見据えている。
 何度も何度も、くり返し斬りつける剣舞の前には頼りない――そう言いたげだ。
 三者三様に覚悟をきめたその時、雷獣が復元した魔力の盾が、側面からブチ破られる轟音が響いた。
「その綺麗な盾を吹っ飛ばしてやるのですよー!」
「あれ、もうふっとばしてるよねっ?!」
 ルシアの言葉に思わずリリーが突っ込む。
「えーい!」
「大丈夫っすか? 治療は俺に任せてくださいっす」
 さらに、ニルがタイミングを見計らって術式を打ち込み、雷獣と相対した3人に慧の治癒術が施される。
 雷水、無惨。本来の能力は低くはなかったが、相手が些か悪過ぎたか。
「……どうでもいいけど、雷獣さん、虎っぽいよね。なんだか……寅年って感じだよねっ」
 あけましておめでとうございます。豊穣なら年次の神獣ポジですね。

 ……ともあれ。
 保護結界の大活躍も相まって、イレギュラーズはなんとかゑさび園への被害を最小限に抑えることに成功したのだった。


「雷獣様!」
「雷獣様じゃ!」
 佐俾野の人々はイレギュラーズが雷獣を連れて帰って来たのを見て、口々に喜びの声をあげた。小さいリリーを背に乗せて歩く姿は先程まで荒れ狂っていたとは思えない大人しさだ。
 村人の1人がすかさず駆け寄り麻袋を開くと、雷獣はリリーを乗せたまま麻袋に頭を突っ込んだ。
「これが雷獣の好物……なの?」
「そうよぉ、収穫してすぐ天日干しにしたとうもろこしを臼で挽いた粉で、雷獣は昔はもうちょっと野性的なものが好きだったらしいんだけど……なにかの弾みでこれを食べて以来、好物になったって話ね」
 不思議そうに問いかけるリリーに、婦人は笑いながら応じる。すべて伝聞なところをみるに、相当昔の話なのだとわかる。
「雷獣様は粉をどうやって食べるのですか? 他に好きな食べ物はないのですか?」
 ニルが興味津々に村人に問いかけ、彼らが応じるか否かというところで雷獣が顔を上げる。見れば、鼻先は黄色みがかった粉にまみれている。
「でもあの粉じゃなかったのですよ……」
「美味しいと思うっすけど」
 例の粉、もといとうもろこし粉末を見たルシアはひと目でそれが期待していたものではないと看破し、がっくりと肩を落とした。あれがダメな粉であることは十二分に理解しているのだが、興味を引くかといえば当たり前だと返さざるを得ないレベル。
 何故か慧が分けてもらった粉をひとなめして満足げ(そして安心している様子)に頷く。心の何処かに『アレじゃなくてよかった』みたいな安心感が……少しはあるのだろう。
「さて、そんじゃある意味本番だ! 雷獣の好物とゑさび、この二つを組み合わせた『料理』を作らせてもらいますかね! その名も豊穣風タコスだ!」
「やや、それは……神使の方々に斯様な労を強いるなど無礼の極み、それならば我々が」
 ゴリョウは村を代表する2種の食材、ゑさびと粉、あといろいろな食材を集めてきて意気揚々と宣言する。当然だが、村長は客人が料理を作るという発言に理解が追いついていない。
「いーんでスよ。ゴリョウさんも好きでやるんですし、邪魔したほうが可哀想ッス」
「粉やゑさびを使った料理、ニルもとってもきになります!」
 鹿ノ子とニルは村長を宥めすかし、即座に準備のためゴリョウについていく。この時を待っていたとばかりに動き出すその身軽さは、戦闘を経ているとはとても思えない。
「野営慣れしちょりますけえ、それなりに料理はできるのです。お手伝いさせてもらいましょう」
「……うーん、ゑさびの料理は……、わさびから考えて……もうちょっと修行が要りそうでして。ぱっと思い浮かぶのがお寿司ぐらいだったのですよ……」
「わしもわかりません、ゴリョウ殿達の手伝いに回りましょう」
 支佐手はアイデアが浮かばず凹んだルシアの肩を軽く叩くと、手伝いに誘う。実はゑさび(に近いもの)が再現性東京辺りで即席麺に入っているケースがとみに増えているのだが、流石に知らぬ者の方が多そうだ。
「ゑさびの擦りおろしにリンゴ酢とマヨネーズを混ぜることでクリーミーかつピリッとした辛味のソースが出来る! リンゴ酢の代わりに醤油を混ぜて酸味を抑えたソースってのもありだ」
「ソース、一口もらっていい?」
 ゴリョウは粉からトルティーヤを作りつつ、ゑさびのソースづくりを仲間に託す。意気揚々と材料を混ぜるニルからソースを一口もらったリリーは、暫し口に含んで考え込む。
「ねっとり……辛さがじわじわ来る感じのことかな? わかんない……」
「なるほど、これが大陸の料理の味付けなんですなぁ。面白いもんです」
 味の表現は人それぞれだが、『ねっとりとした』とか言われても彼女にはいまいちピンとこなかったらしい。無理もない。辛さというのはそれだけで多彩なのだから。むしろ支佐手が一口で順応出来ている方が凄いというか。
「出来上がりが気になるっすね。そういえば、川魚とか焼いたらたこす? に合わないっすかね」
「いいな、鮭とかあるなら焼いたのを入れたいとこだぜ!」
 ゴリョウは慧の提案に手を打って応じる。火加減とかは支佐手がしてくれたし食器の容易やらなんやらは希紗良含む女性陣が積極的に動いている。
「雷獣も村人も折角だし食ってけ! レシピもやるよ!」
 斯くして、ゴリョウの作った豊穣風タコス(鮭入り/ローストビーフ入り)は佐俾野の人々(と、雷獣)にいたく好評であり、彼の知識の伝播によって当面はこの地の名産になる可能性があったりなかったりするわけで。
「……むむむ」
 だいぶ辛みは抑えたものの、希紗良にとってゑさびは暫し大人の味であったらしいことは間違いなさそうだ。

成否

成功

MVP

ゴリョウ・クートン(p3p002081)
ディバイン・シールド

状態異常

希紗良(p3p008628)[重傷]
鬼菱ノ姫

あとがき

 豊穣に再現性メキシコが到着してしまった……。

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