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シナリオ詳細

<オンネリネン>偽りの神に裁きを

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 天義……聖教国ネメシスの首都フォン・ルーベルグより離れた海沿いにある独立国家『アドラステイア』。
 高い円形の塀で覆われたその都市は外部との交流を断ち、冠位魔種ベアトリーチェ・ラ・レーテによる『大いなる災い』を経て、信ずる神を違えた者達の拠り所となっている。
 内部で暮らす者の多くは戦争孤児や難民となった子供達。
 彼らは一部大人と共に、新たな神『ファルマコン』を掲げ、『キシェフ』を得て暮らしている。

 都市内で子供達を導いているのは、マザー、ファザーと呼ばれる大人達である。
 彼らは『子供の世話人』として活動し、兵器のように扱うという。
 例えば、聖銃士と呼ばれる騎士達。
 多くのキシェフ……コイン状をした『神様の為に奉仕した証』を得た子供達は大人達の意のままに、都市へ侵入した大人、反抗的な自国民の『粛正』に動く。
 聖銃士でなくとも、都市内の子供達は生きる為、魔女裁判によって他者を蹴落としてでもキシェフを得ているのだ。
 それだけに、彼らは非常に猜疑心が研ぎ澄まされている。
 だからこそ、子供達はそいつの違和感に勘づくのも早かった。


「チッ……」
 翼持つ魔種、フェルマークは静かな小神殿内で露骨に顔を歪めて舌打ちをする。
 そこには大小の黒い肌をした人影が多数控えている。フェルマークが呼び出した僕たちである。
 彼は以前、別所にて新興宗教の髪として担ぎ上げられた存在だった。
 怪しげな勧誘によって信者を増やしていたが、活動実態を疑問視したローレットイレギュラーズによってその教団が壊滅。
 教団幹部が捕まる中、フェルマークは行方を晦ました後、アドラステイアへと流れつく。
 マザー・マリアンヌに拾われ、しばらくはファルマコンの信託を告げる役目を担うこととなったのだが……。
 その信託……子供達のフェルマークが認識するファルマコンには僅かなズレがあった。
(大人しく、我の言うことに従えばいいものの……)
 彼はファルマコンではない。どこか以前の教団で神として崇められていた時のことを思い出してしまうのだろう。
 他人の挙動に過敏な子供達がそれに気づかぬはずもない。
 外からやってくる白い鎧を纏った子供達。彼らは聖銃士と呼ばれるアドラステイアの中でのエリートだ。
「フェルマーク殿、マザーから伝言です」
 その小隊長となる赤毛のミロイテが長剣に手をかけ、告げる。
「貴方を拾ったのは誤りでした。故に、排除することにしました」
「……なるほど」
 なるべくしてそうなったかと、フェルマークも諦観していたようだ。
 しかしながら、彼も簡単に再び得た居場所を捨てるはずもない。
 徐々に力を纏うフェルマークは、ミロイテら聖銃士を威圧して。
「貴公らが我を倒せるとでも……?」
「無論、倒せるとは思ってはいません……が」
 抜いた長剣を突きつけ、ミロイテが続ける。
「仮にアタシたちが倒れたなら、マザーが直接出向いてくるだけです」
 あくまで、これは警告。
 そうした体でミロイテらもやってきたのだが、彼女達もこの後の展開を想定していた。魔種であるフェルマークが抵抗するであろうと。
 周囲で控えていた僕たちが牙を剥く。そして、フェルマーク自身も。
「ならば、このアドラステイアで我がファルマコンを乗っ取るまでのこと」
 全身から気を放つフェルマーク。
 対する聖銃士……子供達が体を震わせる中、ミロイテだけは毅然とした態度を崩してなかったが、その額からは汗が流れ落ちていた。


 幻想、ローレット。
 天義内にある独立都市アドラステイアで起こっている新たな動きに、イレギュラーズの関心が集まっていた
「ファルマコンの信託を子供達へと与えていた男が排除の対象になったって話さ」
 前置きなしで、『海賊淑女』オリヴィア・ミラン(p3n000011)が集まったイレギュラーズへと告げる。
「ようやく、進展するきっかけを掴むことができたよ」
 その動向を察知した、スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)は中層の情報が得られたことに少なからず喜んではいたものの……。
「ただ、どう聞いても、アドラステイアの子供達に危険が迫っている状況としか思えないんだよね」
「相手は魔種。いくら戦闘経験があっても、子供達ではあまりに分が悪すぎる相手さ」
 それに、オリヴィアも同意する。
 できるなら、助けに入りたいところ。ただ、アドラステイア中層はまだ分からないことも多い未知の場所。あまり大っぴらに行動すれば、都市内の幹部クラスも動きかねない。
「……いや、すでにアタシ達をつり出す罠としている可能性すらある」
 今回の1件は、ミロイテという少女が率いる聖銃士の小隊が動いているという。
 しばらく前、マザー・マリアンヌはファルマコンの信託を受ける巫女としてフェルマークなる男を都市内へと招き入れた。
 彼はその役目を淡々と担っていたと思われたが、都市内は毎日のように魔女裁判が行われる状況。猜疑心の強い子供達はフェルマークに疑心を抱くのにそう時間はかからなかった。
「曲解した解釈、自身の希望。言葉や挙動から自身が神として崇められていた時の行いが漏れ出していたッスね」
 先輩であるマザー・マリアンヌが暗躍としているならばと、駆けつけたミリヤム・ドリーミング(p3p007247)がそこで推測を語る。
 それが間違いでなかったことを、オリヴィアは認めて。
「ああ。後はそいつの権威が瞬く間に堕ちていったって話さ」
 状況的にミロイテはマザー・マリアンヌの命によって、最後通告を伝えに向かったと思われる。
 だが、フェルマークは魔種だ。以前いた教団でもその力を遺憾なく発揮して神の座についていた。
 聖銃士が少なからず戦闘経験を積んでいたとしても、明らかに分の悪い相手。なればこそ、ローレットをつり出している可能性は否めない。
「自分に都合の悪い相手同士をぶつけるだけか、それとも、別の策を練っているのか……」
 ともあれ、子供達を助ける為にも向かいたいところだが、フェルマークという男はそう簡単に倒せる相手ではない。
 サモナーとしての一面もあり、悪魔を自在に召喚するすべを持つ。戦闘中であっても、上級クラスであれば片手間で呼び出せるというから油断できない。
「すでに、ヤツはかなりの数の悪魔を従え、中層某所にある小神殿に立てこもっている」
 小神殿は聖銃士など、都市内で認められた者が立ち入ることのできる建物。小規模だが、数十名が交戦できる程度の広さはある。
 子供達を説得しつつ、フェルマークとその配下を相手にせねばならない状況。かなりやることは多い為、やるべきことをピンポイントに絞るなどすることも判断として必要になるかもしれない。
「なにせ、パイセン……マザー・マリアンヌが何してくるか分からないっスからね……」
 ミリヤムが言うことももっともだ。
 ともあれ、依頼に臨むに当たってはあらゆる状況を想定の上、考えられる手を打ちたい。
「よろしく頼んだよ」
 最後に、オリヴィアは素っ気なくも力強く現地に向かうメンバーを激励するのだった。

GMコメント

 イレギュラーズの皆様こんにちは。GMのなちゅいです。
 こちらはスティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)さんのアフターアクションによるシナリオです。天義アドラステイア関連シナリオ、<オンネリネン>のシナリオをお届けいたします。

●目的
 偽神フェルマークの討伐
 聖銃士らの救出
 
●敵……魔種、モンスター
○フェルマーク
 元飛行種の魔種。以前、別の新興宗教の神として祀られていた存在です。
 ファルマコンの意志の伝達役となっていましたが、子供達から疑念を抱かれ、しまいにはマザーからも見放されてしまったようです。
 都市内での居場所がなくなってきた彼は中層某所にて、召喚した悪魔に警護の元、立てこもっているようです。
 戦いでは、サモナーとして上級、下級悪魔を召喚する他、気を纏わせた体術、気を爆発させるなどといった戦法が確認されています。

○大悪魔(アーク)×2体
 3m強の体躯と大きな翼を持つ強大な力を持つ悪魔。
 さすがのフェルマークも簡単には呼び出すことができないようです。
 手にする三又の槍は強者の証。その槍に加えて自在に闇の力を操り、激しく渦巻く闇の嵐、ピンポイント爆発、へルフレアと多彩な技を使いこなします。

○上級悪魔(デーモン)×10体~(10体は初期数)
 成人の人型をし、翼を生やす漆黒の悪魔。
 漆黒の炎だけでなく、氷、雷、風を使う他、鋭い爪や強烈な蹴撃など、後述の下級悪魔よりも明らかに格上の存在です。。

○下級悪魔(レッサー)×30体~(30体は初期数)
 全身黒い肌の10歳前後くらいの身長の悪魔で、背に翼を生やしております。武器は持たずに肉弾戦で攻撃する他、黒い炎を使って遠近問わず攻めてきます。

●不明
◎アドラステイアの騎士
 別名『聖銃士』。白銀の鎧を纏う8~13,4歳くらいの子供達です。
 いずれも長剣、長槍など重くない近接武器を所持しています。

・小隊長ミロイテ
 15歳。小隊を率いる赤毛の少女(人間種)です。
 聖銃士の中でもかなりの成果を上げており、キシェフやイコルを多く与えられているようです。
 長剣を使い、かなりの技量を持っており、マザーにも一目置かれる存在です。

・一般聖銃士×15名
 マザーに認められてアドラステイアの騎士となった少年、少女です。
 多少、戦闘経験を積みはしていますが、それでも歴戦のイレギュラーズや魔種には遥かに劣る力量と思われます。

〇マザー・マリアンヌ
 20代女性。血に濡れた修道服を纏う魔種となった元人間種女性です。ミリヤム・ドリーミング(p3p007247)さんにとっては、聖女時代の偉大な先輩だったとのこと。
 子供達に慕われる人気のシスターですが、都市内で暗躍する姿が多く確認されており、都市内でもかなりの力があるのは間違いないようです。
 今回、その姿は確認できませんが、ミロイテ小隊は彼女の指揮下にある為、何らかの糸を引いているのは確実とみられます。

●魔種
 純種が反転、変化した存在です。
 終焉(ラスト・ラスト)という勢力を構成するのは混沌における徒花でもあります。
 大いなる狂気を抱いており、関わる相手にその狂気を伝播させる事が出来ます。強力な魔種程、その能力が強く、魔種から及ぼされるその影響は『原罪の呼び声(クリミナル・オファー)』と定義されており、堕落への誘惑として忌避されています。
 通常の純種を大きく凌駕する能力を持っており、通常の純種が『呼び声』なる切っ掛けを肯定した時、変化するものとされています。
 またイレギュラーズと似た能力を持ち、自身の行動によって『滅びのアーク』に可能性を蓄積してしまうのです。(『滅びのアーク』は『空繰パンドラ』と逆の効果を発生させる神器です)

●情報精度
 このシナリオの情報精度はCです。
 情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。

 それでは、よろしくお願いいたします。

  • <オンネリネン>偽りの神に裁きを完了
  • GM名なちゅい
  • 種別EX
  • 難易度HARD
  • 冒険終了日時2021年12月31日 22時45分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費150RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ココロ=Bliss=Solitude(p3p000323)
医術士
エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)
……私も待っている
イーリン・ジョーンズ(p3p000854)
天才になれなかった女
スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)
純白の聖乙女
ミリヤム・ドリーミング(p3p007247)
不幸属性アイドル
レイリー=シュタイン(p3p007270)
白騎士
アーマデル・アル・アマル(p3p008599)
霊魂使い
橋場・ステラ(p3p008617)
斬城剣

リプレイ


 独立都市アドラステイア。
 そこは、地理上では天義ではあるが、未だ戦乱の余波が続くこの国においては影響力を一切及ぼさない。
 アドラステイア内において力を持つのは、ファルマコンと呼ばれる虚構の神。そして、それらを飾りとして都市に流れ着いた身寄りのない子供達を導くマザー、ファザーと呼ばれる大人達である。
 ただ、大人達は子供らにキシェフと呼ばれる褒美を与え、それが元となって子供達は諍いを起こす。
 さらに新世界と呼ばれる集団、聖獣と呼ばれる存在、怪しげな錠剤イコル……。
「相も変わらず、アドラステイアはロクでもない事ばかりですね……」
 まだまだ不明な点も多い状況の中、新たな問題が起きていることに、膝まで届く程長い金髪も持つ小柄な旅人少女、『斬城剣』橋場・ステラ(p3p008617)が呆れる。
「アドラステイア、め。飼いならせぬ狂犬など拾うから、こうなる」
 赤銅褐色の肌、金髪の小柄な少女、『……私も待っている』エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)が淡々と無表情のまま、今回の事件について皮肉を口にする。
 飼いならせぬ狂犬とは、今回の討伐対象。
 ファルマコンの巫女としてアドラステイアに招き入れられた魔種フェルマークのことだ。
 そいつは現状、アドラステイア内の教義とは異なる信託を行っているとし、子供達に目を付けられ、都市内での立場がなくなってきている。
 その為、都市内中層の一角にある小神殿で、自らの召喚した悪魔達を守りにつかせた上で立てこもっている。
「最近、オンネリネンの事件に魔種が関わってくることが増えてきたわ」
 鉄帝を中心として活動するヒーロー、『白騎士』レイリー=シュタイン(p3p007270)も事件を引き起こす、あるいは影響を及ぼす存在に共通する脅威を感じとる。
 何せ、マザー、ファザークラスにまで魔種は存在しているとみられる。そして、それらはアドラステイアを探るローレットイレギュラーズを敵視していると見られる。
 敢えて、自分の手駒である子供……聖銃士を使ってまで、マザー・マリアンヌは魔種フェルマークを排しようとしている。他ならぬ自身が招き入れたという責任を感じての行為だろう。
 ただ、聖銃士……腕の足らぬ狩人の数を揃えたところで、結果は見えている。
「マリア達を釣り出す生き餌、と考えるべき、か……」
 内部を探るイレギュラーズを誘き寄せる為の餌として、子供達に命の危険を冒させるマザー・マリアンヌ。
 都市内では子供達の面倒を見る良きシスターとしての面が強い印象だが、裏ではこうした行いも躊躇いなく行っていることが潜入調査によって確認されている。
「…………」
 かつての先輩がこうした凶行を行っている事実に、『不幸属性アイドル』ミリヤム・ドリーミング(p3p007247)は何を思うのだろうか。
「まあ、いい。子供等を犬死させるわけにも、いかないもの、な」
「かなりきな臭いからこそ、何も知らない少年少女達は保護しなくちゃ」
 ともあれ、子供達が間もなく、フェルマークのいる小神殿に突入するはず。エクスマリアも、レイリーもできるだけ早く介入すべきだと主張する。
 その子供達……聖銃士を率いるミロイテとは、寂しがりやながらもポジティブな海種少女、『死地の凛花』ココロ=Bliss=Solitude(p3p000323)は一度戦場を共にしたことがある。
 その時抱いた印象は、かなりかたくなな気持ちの子だということ。なぜなら、おそらくマザーの信を得ているからだとココロは考えていた。
「そういう子ほど救われるべき。何度でも、手を差し伸べるわ」
 例え相手が魔種であっても。例え、誰かの思惑につられたとしても、子供達を助け出したい。それがココロの本音だ。
「まあ拙に出来る事は、敵と定めた相手をぶっ飛ばすだけですが!」
 そう言うステラではあるが、彼女は聖銃士の説得に当たる仲間達は最大限バックアップをする構えだ。
「敵地、情報、戦力不足。ひどい状況だわ」
 偽名である司書で呼び名が通っている宝石のごとき紫色の髪を揺らす『天才になれなかった女』イーリン・ジョーンズ(p3p000854)は小さく首を振る。
 なお、彼女はアドラステイアの潜入に当たり、用意したシスター服を着用している。
 その上で、幾度かアドラステイア、オンネリネン関連の依頼に参加しているイーリンであっても、わからないことが多い敵地での戦いだ。
「だからこその『信』もある」
 推測による情報も混ざってはいるが、信じるに足りうる確固たる事実もある。それらを一つずつ確かめ、この都市の実態解明に臨みたいところだとイーリンは語る。
「状況は複雑だけどやるしかない」
 しばらく、都市内へと潜入して情報を得ていた幻想種少女『リインカーネーション』スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)が目的としていること。それは――。
「まずはフェルマークを討ち取ること念頭に置いて行動しないとね。その為にも聖銃士との諍いは最小限に抑えなきゃ」
 敵の敵は味方という言葉もある。是非とも、聖銃士達を説き伏せたいとスティアは気合十分だ。
 仲間達の意見に、イーリンは同意して。
「始めましょう。『神がそれを望まれる』」
 その神がファルマコンでないこと、ましてはその信託すらも正しく伝えぬ異教の神だった男でないことは明らかだ。


 イレギュラーズ一行は潜入の為の入り口を使い、アドラステイア内へと突入する。
 内部は子供達が多く、その子供達もマザー、ファザーに忠実な者達が多いこともあり、接触せぬように物陰を伝ってメンバー達は移動する。
 程なく、一行は中層を目指す。
 中層は一般の子供達は立ち入ることすらできない。聖銃士など認められた者だけは入ることを許される区画。
 だが、イレギュラーズは度重なる潜入によって、その突入口を確保している。そこを通り、メンバーは現場となる小神殿を目指す。
 幸い、聖銃士達が突入した直後とあり、内部の警戒を行っていた上級下級の悪魔の注意はそちらへと向いている。
 一行もまた正面から堂々と小神殿へと踏み込んで。
「白騎士ヴァイスドラッヘ、魔種の気配感じて、只今参上!」
 ヒーローの役目とばかりに、白い竜をモチーフとした装甲を纏うレイリーが先陣を切って名乗りを上げる。
 内部奥では、全身をどす黒い気で覆った元飛行種のフェルマークと取り巻きの悪魔達。そして、対する白銀の鎧を纏った子供……聖銃士達の姿があった。
「もう逃げられないよ!」
 背に翼を生やす黒い肌の悪魔達が威嚇してくるが、スティアも天使の羽根の残滓を散らして悪魔達を牽制する。
(現状、マザーは介入していない、が)
 エクスマリアは思った以上に閉鎖されたアドラステイアが広いのを実際に踏み込んで視認したが、その深さは計り知れない。
 オラクルでは、何者かがこの小神殿に突入してくるのがエクスマリアには見えた。
(いずれにせよ警戒しておくには、越したことはない、な)
 この一件に新世界に所属する男がファザーとして手出ししてくるかまではわからない。だが、視えた未来は必ず自分達の利となるはずだとエクスマリアは確信する。
(なるほど、監視がいる可能性もあるのか)
 警戒心を高めるエクスマリアの様子に、褐色肌を持つ小柄で細身の旅人少年、『霊魂使い』アーマデル・アル・アマル(p3p008599)が小さく頷く。
 普通の動物などは戦場に近寄らず逃げるだろうが、それでもこの場に留まるのであれば、それはマザー、ファザーの使い魔である可能性が極めて高い。
「酒蔵の聖女、様子を伺ってるヤツや使い魔的なのが居たら教えてくれ」
 アーマデルは仲間達へと小声で呼びかける。射程内なら『誤爆』することもできると考えていたのだ。
「イレギュラーズ……またも邪魔をするか」
 聖銃士のリーダー、ミロイテは毅然とした態度でこちらにも長剣を突きつけようとする。
 それに追随して、子供達もまた手にする剣、槍を構えるが、圧倒的な力を放つフェルマークの影響もあってか、小さな体は小刻みに震えていた。
(聖銃士は殺さない、死なせない)
 アーマデルは事前の仲間と話した方針もあり、可能な限り共闘を模索しようと考える。もっとも、交戦となればやむなく不殺前提での戦いに臨むしかないと割り切ってもいたが。
 説得を仲間に任せる代わりに、アーマデルは群がる悪魔の殲滅をと考える。自身が敵の足止めに向いていると彼は自認していたのだ。
「またあなたね。相手は魔種、凡百の魔物とは違う」
 その聖銃士の説得はココロが主となって行う。
 理由として、この前戦った魔種フェルマークの強さに加え、多数の悪魔を従えていることが大きい。
 まず間違いなく、聖銃士でも勝ち目が薄いこともあり、ココロはなんとかして、聖銃士を味方につけたいと強く望む。
「説得やフォローはお任せさせて頂きましょう」
 そのココロの説得を、ステラがテスタメントによってバックアップ。
「お互いの生存の為、共に戦いましょう」
 その後、ココロは聖銃士達へと近づき、ミロイテらを説き伏せようとする。子供達は来るなと言わんばかりに武器を突きつけ、警戒するばかり。
(冷たいようだけど、魔種の怖さが身に沁みないと反発しそう)
 怯えてはいるが、この場における本当の脅威を知ってもらう必要がある。ココロはそう考える。
 イーリンは黙ってその様子を天眼で見届けていたが、フェルマークの動きを察知して身構える。
「ふはは、これはいい。まだ余にも抗うチャンスがあると見える」
 高らかに笑うフェルマークは一度、気を収めていたが、好機と見た彼は再びどす黒い気を放って。
「行け、余の僕達よ。全ての敵を滅するのだ」
「「オオオオオオ!!」」
 右手を突き出す魔種の命によって、全身黒い肌の集団が一斉に動き出すのである。


 フェルマークの命令によって、動き出す悪魔達。
 どうやら、その体躯で格が決まっているらしく、大きいものほど強い力を持っているようである。
 三又の槍をもつ大悪魔は脅威となりうるので始末したい相手だが、まずは数と力量を兼ね備える上級悪魔からと、エクスマリアは対処を始めて。
「数で上回り、質も高い敵群を、正面から正直に相手してやるなど、流石に骨が折れる仕事、だ」
 ならばと、エクスマリアはかつてあった絶望の海を歌い聞かせることで冷たい呪いに包み込む。
「強力な爪や蹴撃が自慢なら、それを以て同胞を狩って貰うと、しよう」
「ウウウウ……」
「グアアアアアアッ」
 歌声を耳にした上級悪魔達の中には理性を失い、漆黒の雷や風を味方へと浴びせかけ、さらには鋭い爪や強靭な脚から蹴りを繰り出し、同士討ちを始めてしまう。
 決して抵抗力がないわけではないが、この場はエクスマリアに分があったということだろう。
「其方の対処をお任せする分、悪魔撃破は全力ですともっ」
 手始めにと、ステラは混乱する上級悪魔らに向けて象った黒い顎を噛みつかせる。
 高い攻撃力を持つステラの一撃は、それだけで上級であれ悪魔に致命傷を負わせていたようだ。
 仲間の攻撃が上級に向いていたこともあり、アーマデルはひとまず下級の相手に当たる。
「相手が群がる集団なら、抑え込むまでだ」
 アーマデルが小神殿内に響かせるのは、半ばにして斃れた英霊が残した、未練の結晶が奏でる音色だ。
 時には狂気にも似た不協和音を。時には刻を刻むような規則正しい音色を。怨嗟の逡巡の入り混じる残響は抵抗できぬ下級悪魔を狂わせ、その動きを止めてしまう。
 ただ、それらはフェルマークにとって、いくらでも呼び出せる存在にすぎない。
「白騎見参!」
 だからこそ、レイリーが時間稼ぎすべく、機動力を活かして一気に大悪魔、そして、フェルマークへと向かう。
 ただ、敵も翼を羽ばたかせ、強風を起こしてその接近を阻まんとする。
「我を神と知ってのことか」
 もはや、自身がこの地での役割など知ったことではなく、フェルマークはかつて自らが崇められていた教団の神であった時と同じように振舞う。
 だが、それは神としてはあまりに滑稽な姿にしか見えない。
「もう終わりよ下種。お前は惨めに死になさい」
「主を愚弄するか」
「死ぬのは貴様だ、人間……!」
 フェルマークを貶めるように煽るレイリーへ、一際大きな大悪魔らが三又の槍を突き出す。
「潰れ役上等。私は大好きよ」
 彼女はまさに粉骨砕身の覚悟で、強大な敵を纏めて相手どるのである。

 仲間達がうまく敵を引きつけてくれる間、スティアが聖銃士達へと声をかける。
「私達の目的はフェルマークだから共闘しない?」
「なっ……!」
 ミロイテはまたかといった表情でイレギュラーズを睨みつける。
 彼らはアドラステイアで、ローレットが親の仇であると教えられているという。
「ここで争いあってもお互い消耗するだけだしね。フェルマークに漁夫の利を得させるって嫌だと想わない?」
 スティアもまた、何度もオンネリネンと交戦しているからか、相手がすんなりと受け入れられないであろうと承知の上。
 戦いによる剣戟の音に消されてしまわぬよう、スティアはギフトを使って声が届きやすいようにする。
「それに貴方達のことだって、望むなら助けてあげたいと思ってる」
 さらにアーマデルもまた共闘を申し出る。
「今は争うより、まずあの悪魔共を始末してからにしよう」
 すぐにローレットを信じるのは難しいかもしれない。だが、今は先に始末すべき存在がいるはずだとアーマデルは主張する。
「そちらもあいつらと俺達と、両面張るのはキツいだろう」
 生きてさえいれば、選ぶことができる。生き方を始め、他の何もかも。
 だが、そんなスティアやアーマデルの持ち掛けた共闘の誘いを熟慮するような時間はない。
 その間にも、下級悪魔に聖銃士が襲われ始めていた。
 悪魔達は数もあって、やや聖銃士側が劣勢に傾いている状況。
 ミロイテがそこに入ってなんとか戦線を持ち返すが、他から流れてくる上級悪魔の介入もあって、聖銃士側が押され始めて1人が倒れていたようだ。
「うう……」
 傷つく聖銃士達を見て、ココロはハガルのルーンを刻むことで、敵陣へと不可避の雹を降らせて聖銃士達を援護する。
「神を偽る詐欺師を共に倒しましょう! 言いたい事があるならその後にしてください」
「聞こえてるいるぞ、人間……!」
 激しい憎悪の視線を向けてくるフェルマーク。相手が割とカッとなりやすい性格をしているのを、ココロは以前の戦いで分析済みだ。
 おかげで、レイリーもフェルマークの注意を聖銃士に向けずにすんでいたようだ。
「…………」
 一方のミロイテはどうすべきかと思い悩実ながらも、聖銃士のリーダーとして部下を助ける為に悪魔へと長剣を振るい、何とか活路を見出そうとしていた。
 イーリンもココロのルーンの発動を見て、下級悪魔へと突貫を開始する。
 敵陣を闇夜の月で照らしだすイーリンは、携行する食料品も合わせて悪魔達の注意を引く。
 相手が集まればこちらのもの。
「カリブルヌス……行くわよ」
 発動させるその術は、イーリン自身にもかなりの負担を強いる。
 ただ、その反動に耐えた彼女は魔力塊を剣とし、前方へと強く突き出す。
「グオオオオォォォッ!」
「ギャアアアアアアアッ!!」
 紫の燐光放つ剣に貫かれ、悪魔達が叫び声をあげる。
 現状、聖銃士の信任を得るに至っていないこともあり、イーリンはこのまま下級悪魔を中心に抑え込む構えだ。
「治癒は受け入れる意思が無いと効かないから、手間をかけさせないでね。私の事はシスターでいいわ」
「シスター……マザーなの?」
「いや、貴方の様なマザーは効いたことがない」
 聖銃士達は修道服を纏うイーリンに少し戸惑いも見せたが、少なからず安心できる衣装ではあるらしく、幾分士気を高めて悪魔と対し始めていた。
「…………」
 それがまた、ミロイテを逡巡させる。
 マザーの命を自分達だけで完遂すべきか、
 外部の……しかもローレットの力を借りてでも完遂すべきか。
 あるいは、共闘の誘いを振り払って逃げ帰るか。いっそ、ここで散ってしまうか……。
 いや、自分だけならともかく、未来ある部下達の命をこんなところで散らすわけにはいかない。
「どうすればいいんだ……」
 逡巡は剣を鈍らせる。
 ミロイテの隙をついた悪魔が炎を吹き出してきたこともあり、彼女は気合を入れてその炎に耐えていた。


 説得、抑え、殲滅。
 小神殿内では3つの勢力が様々な思惑で交錯する。
 そのうち、魔種フェルマークはこの小神殿を守り、邪魔なマザーの手勢とローレットを全て排しようとする。
「ある程度、アドラステイアについて知識は得た。マザー、ファザーを排除し、余がファルマコンとなり替わればいい」
 その為に、フェルマークは悪魔を召喚し、さらなる力をここで蓄えるつもりなのだろう。
 さすがに大悪魔を召喚するにはそれなりの力と時間を必要とするが、フェルマークは戦いの間でも下級上級程度であれば片手間で悪魔を召喚できる。
 ただ、フェルマークを抑えるレイリーがそれを許さない。
「そんな小悪魔ごときで倒せるとでも? それとも、こいつらよりお前の方がか弱いの?」
 戦いながら、レイリーはフェルマークを嘲笑し、見下すように言い放てば、相手もいきり立って。
「貴様、余を愚弄するか……!」
 纏わせた闇の気を爆発させ、フェルマークはレイリーへと闇の気を纏わせた拳や蹴りを叩き込んでくる。
 その一撃一撃はあまりに重い。加えて、2体の大悪魔も闇の嵐を放ち、闇の力を爆発させてくる。
 レイリーも盾や腕の鎧で可能な限りそれらを受け流し、ダメージの軽減に当たる。
 とにかく、相手に悪魔召喚をさせてしまえば、それだけで仲間も聖銃士も苦しくなる。レイリーはそれを防ぐことを最優先とし、自身を顧みることなくフェルマークを抑え続ける。
 そのレイリーが少しでも立ち続けていられるよう、スティアが支える。
 福音は強い神秘の力によって、レイリーの傷を瞬く間に癒す。
 ただ、スティア自身も複数の上級悪魔の抑えを続けており、そちらばかりに注意を剥けてもいられない。
「盾役が簡単に倒れる訳にはいかないからね」
 スティアは自身を中心に状かをもたらし、周囲の仲間達も合わせて活力を与える。
「皆が敵を倒すまでは耐えきって見せるよ!」
 意気揚々と戦うスティア。そんなイレギュラーズの姿に、聖銃士達も思うことがあったようだ。
「この人たち、やっぱり強い……」
「力を借りたら……でも、マザーの信用を裏切りはできないよ……」
 いくら都市内でマザーに認められたとはいえ、まだ10代前半の子供達である。傷が深まり、苦境の最中にあっては思わず本音も出てしまうのも無理はない。
「無駄口を叩くな! 目の前の敵に集中するんだ!」
 ミロイテがそこで叫び、弱気になる部下を叱咤し、戦いに集中させる。さすがは一隊を任せられるだけの器量を持つ少女である。
 そのミロイテは未だにイレギュラーズの誘いに乗る様子はない。
 まだ、自分達でどうにかできるかもしれない。相手が潰し合えば、状況によっては……そんな淡い期待もあったのかもしれない。

 最初から配備されていた上級悪魔は、イレギュラーズが丁寧に対処すれば問題なく対処できる相手だ。
 アーマデルは上級数体を含め、下級を多く捉えてから奏でる音色で抑え続ける。
 その合間にアーマデルは動きを鈍らせた相手目掛けて蛇腹剣で打ち上げ、頭上で粉砕していた。
 まだ、戦いは続く。気力切れにならぬよう、アーマデルは自身の重点状況と消費を計算しつつ戦いを進める。
 数で有利とみられていた悪魔達だが、フェルマークはレイリーが抑えままであり、追加が召喚される様子はない。
 最初から戦い続ける悪魔達にも疲れが見られ、玉砕覚悟で攻め来る悪魔の姿もあった。
「手負いであるなら、速やかに撃破してしまいましょう」
 ステラはその敵を見定めて超絶加速する。
 両腕にはめたシンプルな指輪から放たれる赤と青の光。ステラはそれらを意のままに操って強化した拳を上級悪魔へと打ち込む。
「グギャアアアアアアアッ!!」
 耐えがたい破壊力をその身に受けた悪魔は奇怪な叫びを上げ、その場で爆ぜ飛んでしまったのだった。


 フェルマークに従う悪魔は、イレギュラーズの力もあってその数を着実に減らしていく。
 対するイレギュラーズや聖銃士としても有利になるかと思いきや、聖銃士の消耗は激しく、武器を振るう力も亡くなった子供達も出始めていた。
 それでもミロイテは諦めず、鋭い爪を薙ぎ払う悪魔へと長剣をぶつける。彼女は徐々に目の前が視えなくなってきていたように見えた。
 ココロはそんな実状を、ミロイテに改めて注視させるべく爪経つ言い放つ。
「共に戦えないと、あなたも部下の子もみんな死ぬわ」
 もはや、ローレットと戦うなどという状況でないのは明らか。
 まだフェルマークも大悪魔も十分余力を残している。それらが自分達を攻撃対象とすれば、瞬く間にミロイテ隊は全滅してしまうだろう。
 ココロは説得の合間にも、フェルマークらを抑えるレイリーに幻想福音を使うことで癒しをもたらす。
 だが、それを冷静になった大悪魔が確認し、すぐさまココロ目掛けて三又の槍を突き出す。
 それに貫かれたココロは次の瞬間、大悪魔の起こしたヘルフレアへと巻き込まれてしまう。
 一瞬の出来事に対処する間もなかったココロだが、パンドラにすがることで倒れるのを拒絶する。
「危ないです!」
 その闇の力が今度はステラに向く。大悪魔は翼を羽ばたかせて目にも止まらぬ動きでステラを翻弄する。
 孤立していたわけではなかったステラだが、聖銃士が危険だと割って入っただけで闇の力を浴び、闇の嵐に巻き込まれてその身を引き裂かれそうになってしまう。
 ステラもまたパンドラの力を代償とし、倒れかけたその身を起こしていたようだ。
「う、そ……」
 あれだけ善戦していたローレットですら一気に劣勢になりかねぬ相手。自分達の叶う相手ではないとミロイテは認めて。
「……わかった。何をすればいい?」
「考え直してくれたんですね。嬉しいです」
 ボロボロではあったが、ココロは自身と合わせ、傷だらけになったミロイテや聖銃士達にも癒しの手を差し伸べていた。
 
 上級下級悪魔が減ってきたことで、イーリンはフェルマークへと視線を向けて。
「――ねぇ、一言いいかしら。手ぬるい」
「なんだと……?」
 あざ笑うイーリンに激高するフェルマーク。
「視えたわ。活路が……ね」
 イーリンはあくまで冷静に、ギフト「インスピレーション」によってこの場所にある脱出経路を閃く。
「私達が逃げるため――と思った? あんたの逃げ場を潰すためよ」
「逃げる必要など、ない……!」
 そっけなく言い放つイーリンに対し、フェルマークは奮起して一層強く全身に気を漲らせていた。
「ココロ、後は詰めていくわよ」
「ええ、イーリンさん!」
 だが、次の瞬間、フェルマークの雄叫びが小神殿を揺れ動かす。
 敵は残像をのこしながらレイリーへと飛びかかり、双方からレイリーへと肉弾戦を仕掛ける。
 これまでとは異なる動きにレイリーも対処できず、攻撃を防ぐことができずに体力を削り取られ、パンドラの力を使って猛攻を堪えていた。
「やはり、見ているようだ、な」
 少しずつ、イレギュラーズにとっても苦しい展開になり始めた時、エクスマリアがこの戦いを注視するネズミ、コウモリといった存在に気付く。
 子供達を助けるために現れたローレットが魔種フェルマークと潰し合えば僥倖、といったところだろうか。
 ただ、役者はローレットの方に分があったようである。
 エクスマリアは上級悪魔の数が減ったことを受け、大悪魔の対処に乗り出す。
 ここでも、絶望の海を歌うことで、敵に呪いを振りまくエクスマリア。
 すると、大悪魔1体が正気を失って。
「うおおおおおおおお!!」
 仲間であるはずの大悪魔目掛けて三又の槍を振るい、さらにピンポイント爆発を召喚主であるフェルマークへと打ち込んで見せたのだ。
「格上の悪魔を惑わすとは……」
 フェルマークが驚く間にも、大悪魔は錯乱したまま、仲間の体にピンポイント爆発を見舞い、屠ってみせた。
 エクスマリアは思った以上の成果に頷きながらも、アタッカー兼ヒーラーとして仲間の気力回復に立ち回り、戦線の維持にも努める。
 驚くフェルマークには、レイリーは倒れるわけにはいかぬと、決死の盾を使ってより傷ついた仲間を庇う様に立ちはだかる。
 レイリーが時間を稼ぐ間、仲間達は悪魔達を倒してくれている。
 見れば、アーマデルが残るもう1体の大悪魔目掛けて蛇腹剣を叩き込む。
 多少大柄な相手ではあったが、先ほどの悪魔同様に高く打ち上げた敵の体を、アーマデルは見事に粉砕する。
 強い相手と当たるより、集団と対する方が向いていると考えていたアーマデルだったが、結果として大悪魔1体を屠った形だ。
 残る敵はフェルマークのみ。ミロイテら聖銃士もまだ戦える者はその刃を敵へと向けていたが、彼らをレイリーが決死の盾で守る。
「大丈夫、潰れ役としてしっかりと潰れてみせるわ」
 とはいえ、レイリーを潰させはしないと、ココロが全力で支える。
「救える命がある。だから、手を伸ばす。私がそれを望むから、ね」
 イーリンもまた戦う聖銃士をこれ以上倒れさせぬ為、波を再現した魔術で十字を描いて傷を塞ぐ。
「うおおおおおおお!!」
 フェルマークもここで果てるわけにはいかぬと激しく叫ぶ。
 それは原罪の呼び声であり、狂気を伝達させる恐ろしき挙動である。
 相手の行動を事前に察してたアーマデルは聖銃士達を庇い、狂気から守る。
「今は俺達を利用してくれて構わない、諦めるなよ」
 死力を尽くすのはイレギュラーズも同じ。悪魔が倒れた後も、皆フェルマークに召喚をさせぬよう煽り、憤らせる。
 その上で、全員総出で強大な力を持つ魔種へと持てる力をぶつけていく。
 魔力の残滓によって象る花びらで小神殿の一角を埋め尽くすスティア。
 ここまで、盾役として持たせてきた彼女は仲間の疲弊をカバーするように癒し、自らもまたフェルマークの気を強く引く。
「貴様も、余を見下すか!!」
 その振る舞いは、あまりに神とかけ離れていることを、子供達は一様に感じていた。
 もちろん、様々な事件を経験しているイレギュラーズは言うまでもない。
 仲間へと怒りを向けていた敵の虚をステラがついて。
「余所見をしているなら、一呑みですとも!」
 相手へと肉薄したステラは指輪から発する青と赤の光から鋭利な剣を作り出す。
 その刃を一閃させ、彼女はフェルマークの体を薙ぎ払う。
「余は神、神なの……だ……!!」
 断末魔の叫びをあげた魔種フェルマークは切り裂かれると同時に黒い霧のようになって爆ぜ飛んだのだった。


 魔種は倒れ、それが呼び出した悪魔もことごとくその姿を消した。
 ココロは一息つくと共に、クール・ダンジュを開き、深手を負った子供達を手当てしていく。
「大丈夫よ。すぐに良くなるわ」
 利用したのではないと覚えてほしい。ココロはそんな願いを込めて癒しを行っていたのだが……。
 静まり返る小神殿内部は戦いの跡が残っており、破壊された壁からはこちらを覗き見ていた動物が姿を消す。
 それを察したイーリンが仲間達へとこの場から退くように促す。
 次々に小神殿を後にするメンバー達。
「次こそは、必ず一緒に……!」
 ココロはまだミロイテに言いたいことがあったようだが、やむなくこの場を去っていく。
 イーリンは子供達の視線を感じて。
「シスターとは呼んでくれない?」
 笑ってみせたものの、戦いが終わったこともあってか、戸惑う子供達は顔を見合わせる。下手な態度をとれば、魔女裁判にかけられるのは自分だ。冷静な判断が働けば、子供達はすぐにアドラステイアの模範的な子供へと逆戻りしてしまう。
 イーリンはそれを察しながらも、小神殿に近づく気配を感じて仲間の後を追う様に去っていく。
 入れ替わるように、入口にはマザー・マリアンヌが姿を現していて。
「……よくやりました。聖銃士達」
 共闘したミロイテ隊はすぐにマザーの元へと向かってかしずく。
 彼らの手にはすぐ、キシェフが配られ、子供達の顔に笑みが浮かぶ。
 しかしながら、マザーの顔はあまりに冷ややかで。
「マ……、マザー・マリアンヌ……?」
 それに気づいたミロイテは思わず冷や汗を流してしまうのだった。

成否

成功

MVP

ココロ=Bliss=Solitude(p3p000323)
医術士

状態異常

ミリヤム・ドリーミング(p3p007247)[重傷]
不幸属性アイドル
レイリー=シュタイン(p3p007270)[重傷]
白騎士
橋場・ステラ(p3p008617)[重傷]
斬城剣

あとがき

 リプレイ公開です。
 MVPは身を張って聖銃士達の説得を行った貴方へ。
 今回はご参加、ありがとうございました。

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