シナリオ詳細
再現性沖縄20XX:クリスマスは遊びじゃない
オープニング
●再現性沖縄とは
そこはまるで……《沖縄》であった。
練達の一区画に存在する再現性沖縄。さらにその一区画には翔波と呼ばれる地域が存在する。
それは異世界『地球』よりこの世界に召喚された人々の言う《沖縄》を何か凄い勘違いして、「大体こんな感じだろう」というイメージで出来上がった魔境である。
沖縄にはあらゆる夢がある。沖縄は食べ物が美味しい。
そんなイメージを植え付けられた料理人たちは「沖縄こそは料理人に約束されし聖地である」と思い込み、事実翔波ではあらゆる食材が手に入る。
そして全ての物事は料理でのみ解決され、あらゆる暴力は此処では排除される。
料理こそ全て。料理が世界を救う。
火と油、水と調味料に囲まれた世界こそ我が人生……それに気付かないなど料理人として愚かだし何なら皿洗いからやり直せばいい出直してこいやド素人が……その境地に至らなければ料理人としては未熟に過ぎ、究極の一皿になど永遠に届きはしない。だからこそ、街は今日も料理バトルの音が鳴り響いているのであった。
……無論、練達の異常も続いている。
それは沖縄とて例外ではない。
以前沖縄に起きた障害も未だに続き、日常に戻るのはきっとまだ先なのだろう。
だが、それでも沖縄は「いつも通り」を続けている。
それこそが沖縄の……そして沖縄に集いし料理馬鹿たちを支える精神であるからだ。
●クリスマスは遊びじゃない
ジングルベルが鳴り響く。
祝福の鐘? 冗談じゃない、戦いのゴングだ。
シャイネンナハト?
此処を何処だと思ってるんだ。再現性沖縄<アデプト・オキナワ>翔波だぞ。
此処では元となった世界であったという「クリスマス」がこの時期には開催される。
そう、クリスマスだ。
雪の降り積もる年末の夜、ナマハギクロースが現れる。
良い子はナマハギクロースからのプレゼントを得て、悪い子は石炭とジャガイモを贈られジャーマンポテトにされるという。
「悪い子はここかー!」と煙突からダイブしてくるというが……その際に枕元に靴下を下げる事で裁定を真摯な心で受けますという証になるとか。
どうして誰も再現性東京<アデプト・トーキョー>の担当者と事前の打ち合わせをしなかったのか。今更である。
ともかく沖縄ではこの時期、クリスマスに向けた準備が行われる。
色とりどりのお菓子に様々なケーキ、チキンにポテトにその他諸々。
年末と新年の準備も同時進行だから、翔波全体が物凄く忙しい。
「何処もバタバタしてるなー……」
サイズはそう言うと、クリスマス用の飾りをされた飛波を歩く。
メリークリスマス、とか悪い子は悔い改めよ、とか何か色々とキラキラしている。
あと、なんだか微妙に怪しいのが混ざっていた気がする。
「おお、もしかして外から来た奴か?」
そこに、飾りつけをしていた店主からサイズに声がかかる。
「そうだけど、分かるの?」
「そりゃ分かるさ!」
サイズの疑問に店主はそう言って笑う。
「沖縄に染まった奴は今の時期『何作ろうか』しか考えてねえ目してるからな!」
ハッハッハと店主は笑うが成程、確かに料理の目をしている。
「あー、ともかくだ。この時期、どうしてもクッキングモンスターには手が回らなくてな」
どうにもこの時期、ナマハギクロースの格好を模したと思われるクリスマスオークが現れるらしい。
真っ赤な服に真っ赤な三角帽子。白い袋を背負った姿は物凄く分かりやすいらしい。
「メリークリスマースとか叫んでお菓子を配って回るんだが……」
何処が迷惑なのだろう。
そう首を傾げるサイズに、店主は簡単な話だろうと言う。
「そんなに無秩序に菓子をばら撒かれたら……お腹いっぱいになるだろうが」
料理人として捨て置くとかいう選択肢はないらしい。
ともかくそうして、クリスマスオークの退治を頼まれてしまったのである。
- 再現性沖縄20XX:クリスマスは遊びじゃない完了
- GM名天野ハザマ
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2021年12月05日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談6日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
●沖縄のクリスマス
「たおす依頼できたはずだよね…?なんでおりょうり対決になってるの……? あれ……しかも隠してたはずの耳と尻尾がいつのまに!?」
『うそつき』リュコス・L08・ウェルロフ(p3p008529)はそんなことを言って少し慌てるが、それに『ミルキィマジック』ミルキィ・クレム・シフォン(p3p006098)が「沖縄だからだよ」と教えてくれる。
沖縄では本格バトルは本格料理バトルになるし、都合の悪い事など何1つとしてない。
それが本能的に理解できてしまったからだろうか、リュコスは自然と落ち着いていく。
「どうやらぼくは…クリスマス気分で再現性沖縄のことをよく知らずにきちゃったみたいだ……でも対決で作ったお料理って食べていいよね? いいはずだよね?」
沖縄を知っている面々が頷くと、リュコスのテンションも自然と上がる。
「ならぼくがんばっちゃうぞー! おいしい料理ができたら依頼も達成してぼくもうれしい。これが『ウィンウィン』かな? ……でもぼく料理とか全然作ったことないや。お手伝いとして、がんばるぞー……!」
ちなみにではあるが、『雪原に舞う』クロエ・ブランシェット(p3p008486)も初の沖縄だ。
家庭料理ならいつも作ってますからきっと大丈夫です、と。そんなことを考えていたのだが……。
「すごいすごい! 本当に色んな物が生えてます!」
なんでも生えている沖縄にすでにテンションが上がったり、鶏肉の木にビクッと驚いたりと初沖縄の人間特有の反応を示している。
この辺りは本当に人によるというもので、『ナチュラルボーン食いしん坊!』ニャンタル・ポルタ(p3p010190)などは初めてとは思えない沖縄適性の高さを見せつけている。
「うむうむ、此処がオキナワか! 何やら料理を振舞ってくれる者が居るらしい。無事退治すれば現地の人々も何か振舞ってくれるのかの?」
「も~、い~くつ、寝~ると~、クリスマス~♪ サンタさんの格好でメイが来たのですよ!!」
沖縄のルールを本能的に理解するニャンタルと、再現性東京で慣れているのか『シティガール』メイ=ルゥ(p3p007582)も沖縄に戸惑ってはいない。
しかし同じだと言ったら再現性東京の技術者がフライングクロスチョップを仕掛けにきそうではある。それはともかく。
「お菓子いっぱいは良いことですが、腹八分目が大事なのですよ! その方が美味しく食べられるのですよ! 配りすぎ注意なのですよ!」
「いいじゃんクリスマスオーク。俺が散らばった菓子を集めるから退治せずそのままにしておきませんかね。というかクリスマスに限らず年中ばら撒いてくれてもいいくらいだ。まあ冗談はこのくらいにしておくか。クリスマスケーキも俺の楽しみの一つだから、店が潰れないよう精々頑張るとしよう」
「……だな。とりあえず倒すとしようか」
「料理勝負か。珍しい対決方法ね……料理人の血、とまではいかないけど腕が鳴るわね!」
『貧乏籤』回言 世界(p3p007315)に『カースド妖精鎌』サイズ(p3p000319)と『狐です』長月・イナリ(p3p008096)も頷く。
ちなみに沖縄ではあらゆるトラブルは料理で解決するので慣れるべきだが、沖縄に毒され過ぎると「ならば料理で勝負だ!」とか東京で言いだすようになる可能性があるので注意が必要である。
「今年もクリスマスシーズンが来たみたいだね! クリスマス…それはパティシエオブパティシエの座をかけてパティシエが渾身のクリスマスケーキを作って競い合う一大イベント(シュガーランド基準)! 今までのパティシエ修行の成果をここ沖縄でばっちり発揮してみせるよ☆」
そしてすでに沖縄の住人と言っても良い貫禄を出しつつあるミルキィがそう叫べば、今までそこで待機していたクリスマスオークがフッと笑う。
「ならば準備はいいな!」
「オークさんとゴブリンさんも配ってばかりじゃなくて一緒にお菓子食べるですよ。いっぱいの人で、ワイワイ食べるのは楽しいのですよ!」
「笑止! 沖縄では言葉ではなく料理こそが響くと知れ!」
メイにクリスマスオークがそう叫び、泡だて器を構える。
「本当に美味しい料理とは味以外にも人々を楽しませるもの。それが見た目、香、調理方法、美味しい料理とはその全てを内包した物だと私は思うわ! さぁ、勝負よ!」
「うむ! 我の料理!とくとお主らの目と舌に焼き付けるがよい!」
イナリとニャンタルも叫び、クッキングバトルの開始が宣言された。
●テーマはクリスマス
「先ずは食材の調達からじゃの」
ニャンタルはそう言うと周囲に視線を巡らせ、必要な食材を厳選していく。
「肉! 魚! トマト! 人参! ピーマン! ニンニク! 卵! 牛乳! ついでにジャガイモとバター、あとは地元の食材も入れんとの! という訳でゴーヤも追加じゃ」
ちなみに全部その辺に生えているし、牛乳は牛乳の実を割ると出てくる。ふっしぎー。
「次は調理じゃな! 我の腕を存分に発揮出来るのは創作料理しかあるまいよ」
一、ジャガイモを茹でる。
二、肉を炒める。
三、トマト、人参、ピーマン、ニンニク、ゴーヤを刻む。
四、バターを用意する。
五、鍋に牛乳と、二、三、を加えて煮る。
六、最後に魚と卵を加えてひと煮立ち。
しっかりとした工程は、しっかりとした味を保証する。
ニャンタルの調理はテキパキとしており、およそミスもない素晴らしいものだ。
「これで栄養満点な1品が完成じゃ! 我は余裕があるからの。もう1品作っておくぞ! と言っても此方は先の工程で既にほぼ完成しとる。北の大地に住まう者から教わったんじゃが……味の割に作りがいがなくてのぅ。我の腕がいまいちならんのじゃ……」
言いながらじゃがバタを作り始めるニャンタルだが、サイズもしっかりと調理を進めていた。
とはいえ、こちらは体調に少しばかりの不具合を感じているようであった。
(あー安直に依頼を引き受けたが…沖縄特有の武器デバフがいつもよりしんどいな……クリスマスも聖なる行事だからシャイネンの時みたいに相性悪い感じか……)
自身の特性ゆえか、サイズはそんな絶妙な具合の悪さを感じるが、だからといって調理をしくじる気もない。
「動けるうちに日持ちする物作っておくか……あとメイさんいるから三時のおやつ用としてクッキー焼くとして……さくっと料理しちまうか」
言いながらサイズが作るのはシュトレンとクッキーだ。
どちらもクリスマスには欠かせないものであるだけに、このクッキングバトルにおける強力な武器となるだろう。
「同じ準強力粉で作るが二つに分けて練らないとな……クッキーに使う方は練りすぎないようにしないと……」
シュトレンにはミカンとパインのドライフルーツとナッツを混ぜ混んで成形、発酵させたら焼いて完成だ。
「発酵が素早く終わるのはあれだ、この沖縄特有の現象だ、気にしたらまけだ、混沌の世界に来たときと同じように柔軟にいかねば生きていけぬ……」
サイズも沖縄のことを理解してきているが、実に良い事である。沖縄への適応は料理力の高さでもある。
「クッキーの方はまあ、シンプルにバタークッキーにするか。とりあえず敵は少量の料理で倒したいものだな」
俺の料理は親しいやつ以外にはあんまり食わせる気は起きないんだよな……などとサイズは独りごちる。
武器デバフで元気が出なくてそんな思考をしているのかもしれないが、と付け加えていたが、真実は分からない。
「余ったシュトレンとクッキーはメイさんにあげるが……あ、シュトレンは少しずつ食べるものだからな、真ん中を切って、断面図をくっつけて日分けして食べるものだからな、クッキーは三時に全部食べてもいいけどね、食べきれないなら世界さんにあげてもいいからね。勿論食べた後は歯を磨こうな」
すでにクッキングバトル後の事も考えるくらいにがサイズの調理は順調で。
ミルキィの調理はすでに慣れたもので、凄まじい手際で進んでいた。
担当するのはケーキ。つまりクリスマスオークとの真っ向勝負である。
「ほうほう、相手クリスマスオークのメニューはレアチーズケーキか……ならばボクはブッシュドノエルで対抗だ! さっぱり酸味系ケーキには濃厚甘味系ケーキで勝負だよ!」
そう宣言したミルキィは、まずは材料の選定から始めていた。
「ブッシュドノエルでこだわりたい材料とくれば、ココアとチョコレートと苺だね! 特にチョコレートはこだわって厳選するよ!」
そう、チョコレートであるだけならいくらでも手に入る。
しかしチョコレートは沖縄においては種類が唸る程存在する。
その中から適切なものを見つけるのはかなりの作業ではあるが……ミルキィの動きに迷いはない。
「よーし、それじゃあレッツクッキング♪」
そうして材料を集めれば、調理開始である。
「ブッシュドノエルの幹部分とくればロールケーキが定番だけど……今回はバウムクーヘンでよりリアルに切り株の年輪っぽさを出してみるよ!
バウムクーヘン。木のケーキの名を持つブッシュドノエルには変化球でありながらも最適であると言えるだろう。
焼いていく手際にも、全くの迷いがない。
「焼きあがったバウムクーヘンにチョコクリームとココアパウダーで化粧をほどこして、苺を飾れば……これがボクの勝負ケーキ!バウムクーヘンのブッシュドノエルさ♪」
さて、今回ケーキを作る役をミルキィが担当する以上、そうではない者も当然いる。
「さて、俺もクリスマスらしくケーキなどで戦おうと思ったんだがこういう時は変に挑戦することは避けた方が無難だ」
そんなことを言っている世界は、まさにその1人である。
「という訳で俺が作るのはひょうろうボーロ。家の雑貨屋に売ってる自家製の菓子だ」
つまり、手慣れていながらもクリスマスらしい料理ということだ。
冒険ではなく、しかしテーマに沿った手堅いメニューであると言えるだろう。
「主な材料は砂糖やきな粉、キビ粉、卵に蜂蜜とシンプル。あとは様々な栄養分を含んだ食材なんだがこれは企業秘密。作り方も簡単で一般的なたまごボーロと然程同じだ。まあ大きさは子供の拳くらい大きいけどな」
材料を調理していく姿は、世界が調理に慣れていることを感じさせる。
「柔らかく、口に含むだけで溶けていく食感は高級チョコに勝るとも劣らない。味は若干甘めではあるが、クドくなり過ぎず適度にお腹と心に満腹感を与える。そしてなにより老若男女問わず食べられるし腹持ちが良く、携行食品としても向く。……と言った感じでありふれた材料と製作法ながらも隙が少ない一品だ」
言いながら、世界はふと思い出したように付け加える。
「バリバリ料理できるメンバーやクリスマスオークとやらはもっと美味い料理を作れるのかもな。だが俺の料理はその食べやすさからより多くの人を喜ばせられる。味はともかく料理としての総和なら俺に軍配が上がるはずだ!」
負けた時の言い訳らしいが、ちょっと気が早いし負けるのも恥ではない。
沖縄には絶対強者などいないのだから。
「お菓子は無秩序に配るのではダメなことに気づいてもらうのですよ! 皆で楽しいクリスマスを作るのですよ!」
そして料理とはチームワークだ。
メイは普通に料理を作るのではなく、それをサポートすることを重視していた。
「お菓子を食べると喉が渇くので、メイはお飲み物を用意するですよ」
そう、飲み物。誰もが忘れがちで、しかし料理に必須なものでもある。正しく勝利の鍵になり得るものだろう。
まずは、紅茶でしょうか? 紅茶ならば、さらにミルクティーやレモンティーと、バリュエーションも用意できるのですよ! あ、ホットミルクにチョコレートも溶かして見るですよ! これ、ココアみたいでメイ好きなのですよ」
用意されていくのは様々なバリエーションの飲み物。楽しげに用意していくその姿も、隙は無い。
「あと、貰えるお菓子はしっかりいただくのですよ! メイお菓子大好きなのですよ! あ、味見係が必要な時はメイにおまかせなのですよ! おっ菓子♪ おっ菓子♪」
そしてイナリだが……こちらは何とも忙しそうに調理をしている。
「調理内容はクリスマス料理、内容は『フライドポテト、ミネストローネ、ローストビーフ、ローストチキン、サラダ等等』、クリスマスの定番料理一式だわ!」
そう、一式である。一品ではなく一式をもって挑もうというのである。
効率的に進めてはいるが、イナリの作業量は今日一番だろう。わ
それだけではない。葉物料理は自然知識を用いて、食材の味を活かした物としつつ、調味料などはケミストリーの技能でどの様な香りが発生するか、どんな味になるのか化学的に考慮して味付けしていくという念の入れようだ。
普段は食べれない食材にも【食材適正】を与えていくという細かい配慮もそこには見られる。
骨まで、皿まで美味しく食べれる料理って感じというらしいが……。
「ちなみに私の持つ調理道具は楽器よ? 誰か何と言おうとこれは楽器なの! 料理と音楽の融合よ!」
まあ、料理人はリズムが大事だと言うからそれを否定する者は居ないだろう。
事実、包丁とまな板があれば音楽を奏でる事も可能だ。
だからこそ、だろうか。イナリは調理道具で調理しつつ、演奏を始めていた。
派手で人目を引くような演技を行い、人心掌握】と扇動の技能を用いて料理場を盛り上げていくつもりだった。
もちろん事前にどんな演技をするかプロデュース炭である。
「そして私一人じゃない! 私と同じ志(音楽+料理)を持つ地元のダチコーも多数お招きして、盛大に調理音楽を奏でるわよ!」
ここまでいくと歌劇か何かのようであるが、沖縄ならそれも許される。
料理でビームが出ようと服が破けようと、沖縄ならすべて許されるのである。
「ちなみにオークさん、全部食べてね? 一品だけ、なんて制約ないからね♪」
さて、クロエはどうか。
こちらはクリスマスだから冬が旬な物でキッシュを作ろうと、その辺から野菜とか牡蠣を採って来て下ごしらえをしていた。
ちなみに牡蠣に関してはいつでも新鮮な牡蠣の葉が生えているので安心である。
乳製品も問題はない。全部その辺に生えている。
「パイ生地の木とかあったりします? こう、皮を剥ぐ要領で……あった……」
パイの木、と書かれた看板のついた木から。クロエは必要な分のパイ生地を剥がしていく。
「では、卵に牛乳と生クリームを入れて混ぜ、滑らかになるように一度こします。そこにナツメグと削ったチーズを加えて混ぜ卵液を作ります。フライパンにバターをしいて、ほうれん草、しめじ、牡蠣をソテー。塩胡椒を少々」
テキパキと進めていく作業は、家庭料理がどうのというのが謙遜であったことを感じさせる。
「料理バトルですからさすがに色々と確認して使います。。確認を怠るとですね、大変なことが起きるんです」
どうにも何か経験しているらしいが、さておこう。
「器のパイ生地に卵液と具材を入れてオーブンで30分くらい焼きます。竹串で中が焼けてるかチェックして、大丈夫なら完成!」
ちなみにだが、料理の心得がないリュコスは周囲を駆けまわり全員の手助けをしていた。
食べるのは大好き料理の経験は全然。ぼく一人でできる料理の限界はお肉を生で食べるか焼いて食べるかだよ、というレベルのリュコスだが、手伝いもまた料理の大事な工程だと理解できている。
「……うん!食材集めに行く! 欲しいものがあったらなんでも言ってね。ぱーって探して取ってくるから、その分の時間でおいしい料理を作ってね!」
そう言って、必要なものを集めては全員に渡していた。
「……でも、お野菜とかならともかく砂糖や小麦粉って木の実を割ったら出てきたり、道端の草や花みたいに生えてるものだっけ……?」
そんなのは沖縄だけなので、他で同じようなことをしてはいけない。念のため。
「お肉もきれいにきってある状態で生えてる……使いやすいのはいいけど……じゅるり。いけない、メインはクリスマスのケーキとかデザート系でいくんだよね。必要ないもの……ぼくが食べたいだけのもので手が埋まらないようにしないと……Uuuuu」
風にそよぐ黒豚ベーコンの花は美味しそうではあるが、リュコスは何とか我慢しながら駆け回る。
そう、決してベーコンをもぐもぐなんかしてない。していても別にいいのだけれども。
「さあ、勝負です!」
クロエの声が響き、クッキングバトルの実食がスタートする。
「どれどれ……ほほぅ! レアチーズケーキとクッキーか! 我の好きな甘味じゃな。うむうむ、ほっぺたが落ちるくらいに美味しいぞ! なかなかやりよるわい。然し其の上をいくのが我の料理じゃ! 栄養満点じゃからの! 気絶する程美味いに違いないぞ! ムフフ」
何やらゴールデンケツバットを素振りするニャンタルだが……料理を食べていたクリスマスオークやゴブリンたちがフッと笑い……そのまま海老ぞりのポーズで大空高く吹っ飛んでいく。
どういう理屈かは相変わらず不明だが、相手の料理の方が旨いと思えば必ずこうなる。
「メ、メリイイイイクリスマアアアアアス!」
悲鳴までクリスマスモードだが、そのままクリスマスオークたちは花火になって夜空に散っていく。
まさにクッキングモンスターらしい、派手な最期である。
まあ、どうせ来年には復活しているのだろう。下手するとクリスマスにはまた復活して露店でも出しているかもしれない。
だからこそ、ミルキィは夜空に向かって叫ぶ。
「クリスマスオーク! 来年はお互いもっと美味しいケーキを作って勝負しようね!」
「メリークリスマス! ケーキもあるしパーティーみたいですよねこれ」
クロエも、残った料理を前に笑う。
そう、まだ少し早いけど……メリークリスマス。
クリスマスオークたちも空の上で微笑んでいる気がした。
いや、なんかほんとにそんな感じの雲が浮かんでいる。なんだあれ。
とにかく、メリークリスマス。文句のつけようもない、そんな大勝利であった。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
コングラチュレーション!
クリスマス商戦はもう始まっていますね。
もう予定はありますか?(料理的な意味で)
GMコメント
料理人の皆様、再現性沖縄<アデプト・オキナワ>へようこそ。
え? イレギュラーズ? そんな肩書此処じゃ牛脂1つ分の価値もありゃしないぜ!
そんな感じです。
今回はサイズさんのアフターアクションに伴うシナリオです。ありがとうございます。
今回の敵はクリスマスオークです。
沖縄もクリスマスの時期ですからね、仕方ないですね。
クリスマスオークはクリスマスゴブリンを仲間に連れており、しっかりと団体戦に対応できます。
なお、クリスマスオークはマジパンのサンタが乗ったレアチームケーキ(ホール)、クリスマスゴブリンはクリスマスっぽい形のクッキーを焼いてきます。
●翔波
再現性沖縄20XXに存在する料理バトルの街。
何かあれば料理で解決する料理馬鹿の聖域。
ローレットのイレギュラーズの皆さんは料理人として参入することができます。
此処では全てのステータスは無意味です。武器は振ってもハリセン程にも通じず、ギフトもスキルも無効化されてしまいます。
ただし、相手より美味い料理を作れば大ダメージを与えて海老ぞりで大空に吹っ飛ばすことができます。
相手の料理の方が美味ければ自分がそうなるってことですよ。
なお、必要な食材や調味料は「基本的」にはその辺に生えています。
豚肉の木とか砂糖の実とかあります。超怖ぇ。
幻の食材と言われる類のものは特殊な場所、あるいは状況でしか存在しなかったりします。
(逆転が必要なシーンで偶然見つかったりするかもしれません)
●情報精度
このシナリオの情報精度はRです。
料理には常に想定外が付きまといます。
プライドなんてミキサーにかけて飲んでしまいましょう。
ハヴァナイスデイ。
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