PandoraPartyProject

シナリオ詳細

消失都市に音楽は響く

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●消失都市の手掛かり
 その日、鉄帝で比較的規模の大きな地震が発生した。
 幸いにも人的被害はなく、建造物などにも被害は無かった。
 だが……とある山のふもとに亀裂が発生し、洞窟のようなものが出来たのだ。
 ただそれだけであれば「危険なので立ち入り禁止」で済む話だが……その中から微かに音楽が聞こえてくるという噂が立った。
 調査員を送るも、洞窟から音楽らしきものは一切聞こえず、ただの噂と結論付けられた。
 それでも音楽が聞こえてくるという噂は途切れず、かつてこの地にあり、地殻変動で消えた都市と関連付ける者も現れた。
 そうして、危険を冒して「冒険」に出る者も何人かいた。
 この2人も、そうした命知らずだった。
「消失都市、ですか。本当にあるんですかねえ」
「さあな。今のところ音楽とやらは聞こえてこねえが……」
 やはりガセなのか、と男は思う。
 しかし付近の街で調べたところ、この辺りに「消失都市」と呼ばれる街があったのは事実であるらしい。
 当時それによって恋人と引き離された男の証言なるものが古本屋で資料として埃を被っていたのは幸いだった。
 どうやら何処かの馬鹿が消失都市を探す為の資金源として、そういうものを掘り出してきて本にしたようだが……まあ、売れなかったのだろう。古本屋でも随分な安値で出ていた。
 まあ、探せばまだまだある気はするが……男のような目的を持っていなければ見つからないだろう。
「本によれば、ミルスクの街は地響きと共に地下深く沈み、そこに山が出現した……だそうだ。これがマジなら、この洞窟が地下に沈んだ都市に繋がってたとしても不思議じゃねえ」
「いや、不思議ですよ。なんですかその超現象」
「古代文明の時代だ。何があっても不思議じゃねえさ」
 問題は、その音楽とやらだ。
 それが今も響いているというのであれば、消失都市の機械もまだ動いている……かもしれない。
 だとすると、それは……侵入者である男たちを、生きたまま帰してくれるかは分からないのだ。

●消失都市を探せ
「消失都市に関する依頼があるです」
 チーサ・ナコックはそう言うと、今回の依頼について説明し始める。
 消失都市。あるいはミルスクの街。
 恐らくは何らかの機械の暴走により地下深く消えたと言われる古代文明の街。
 その手掛かりと思われる「洞窟」が、最近の地震で現れたのだ。
 だが……そこに宝探しに向かった者たちは1人も帰ってこない。
 以前の調査では問題なしとされていたが、こうなると「何かがある」と考えなければならない。
「洞窟の中から音楽が聞こえてくる……という証言もあるですが、聞こえないこともあるみたいですね」
 もしかすると何か一定間隔で演奏されているような類なのかもしれないが、それを手がかりとするだけでは難しいだろう。
「消失都市の近くにある街では、かつて『消失都市』ブームが発生したこともあって様々な情報が溢れている可能性があるです。事前にそこで色々探せば、何か良い情報を掴めるかもしれないです」
 一番確度の高い情報としては「消失都市現象により引き離された恋人」の話があるだろう。
 勿論、古代文明の時代の話だ。
 しかし「悲恋の2人」像は、かつてのブームの折に街に建てられている。
 いつかその恋人の女性縁の品を此処に納める……という目的で出来たものだ。
 当人は遥か昔に死んでいるが……もし、その恋人の女性が「彼」に探してきてほしいという想いで音楽を流していたとしたら……それは、叶えてあげたいと考えるのも、当然のことではないだろうか?

GMコメント

消失都市へと赴き、「生き別れた恋人の女性」縁の品を探しましょう。
なお、洞窟を抜けると「消失都市」に辿り着きますが、亀裂の先は高い崖のようになっているので、長いロープを用意するなどして降りる為の準備が必要でしょう。
街の中を探せば「愛しい貴方へ」と名付けられた古代文明式の箱型オルゴールが見つかります。
蓋を閉じる事で、音楽を止めることが出来ます。
一定時間鳴ると自動充電して、また鳴りだす仕組みのようです。

消失都市の中には生きている人間は1人も居ませんが、防衛用の古代ゴーレムがウロウロしています。
彼等からしてみればガチの侵入者なので、見つかると戦闘になるでしょう。

なお、消失都市に関する情報は街で探すことによって見つかります。
判明するのは以下の情報です。

・青年ビンデン
引き離された恋人の男性の方。
消失都市を探す為人生を費やしたが、叶わなかった。
恋人から贈られた写真入りのロケットが存在する。
このロケットは街の闇市で安く売られている。
また、青年の手記(後世の人間が勝手に出版)は古本屋に存在する。
消失都市誕生の経緯が書かれている。

・少女ミーシャ
引き離された恋人の女性の方。
ビンデンのことを想いながら消失都市で没した。
ビンデンの手記からその存在を知ることが可能。
オルゴールは「ビンデンにいつか届けばいい」という遺言で鳴るままにされている。
これは消失都市の何処かの家の手記で確認可能。

・消失都市
地震を制し地盤を安定させるための機械が暴走し、都市を地下に沈め上に山を作った。
原因となった古代機械は今は完全に壊れ、修理すら不可能。
この情報は消失都市の何処かで確認可能。
街の人間はそれぞれ思うことはありながらも、全員静かにその生涯を閉じている。

・古代ゴーレム
消失都市を守り続けるゴーレム。
総数は不明。
指から発射するレーザー砲と、収束レーザーブレードを使用。
大きさは人間の大人程だが、結構な強さがあり、すぐに仲間を呼ぶ習性がある。
状況によっては苦戦必至。家の中に隠れるなどの手段も必要になるでしょう。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • 消失都市に音楽は響く完了
  • GM名天野ハザマ
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年11月19日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

善と悪を敷く 天鍵の 女王(p3p000668)
ツクヨミ
ジェイク・夜乃(p3p001103)
『幻狼』灰色狼
ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)
願いの星
オリーブ・ローレル(p3p004352)
鋼鉄の冒険者
マリア・レイシス(p3p006685)
雷光殲姫
アリア・テリア(p3p007129)
いにしえと今の紡ぎ手
エステル(p3p007981)
イズマ・トーティス(p3p009471)
青き鋼の音色

リプレイ

●消失都市を探して
「消失都市……本当にあったのですね」
 エステル(p3p007981)は、街を歩きながらそう呟いていた。
『ツクヨミ』善と悪を敷く 天鍵の 女王(p3p000668)と共に歩き、周囲の店に目を向ける。
 目的とする店は分かっているが、万が一ということはある。
「閉じ込められ、死の運命を理解した人々……その最期はどのようなものだったのでしょうか? 暴れた、諦めた、それとも、いつかの再会を待ち、何かを残しましたか……? 私は、それが知りたい」
 消失都市。
 機械の暴走により遥か地下へと消えてしまった古代都市。
 その手掛かりとなる「ビンデンの手記」を探す為、エステルは古本屋を巡っていた。
『『幻狼』灰色狼』ジェイク・夜乃(p3p001103)の情報網である程度の目星はつけているが、あとは人海戦術になる。
 ジェイク曰く「調査の基本は広い範囲から調べて、徐々に範囲を狭めていくことだ」とのことであるらしいが……今はまさにその「範囲を狭めている」最中だと言えるだろう。
(出来れば原本。写本ではわからない事が書いてあるかもしれません)
 見つかるかは分からない。けれど、探すことは無意味ではない。
 探そうとしなければ、見つかる確率はゼロなのだから。
 巡るのは古本屋、そして花屋。
 伝説として一般的だが、再会を望んだビンデンの遺言は正しく紐解かれなければならないと……エステルはそう考えていた。
 故に、手記と、花を。彼岸花には再会の花言葉があるという。だからこそ、供えるには相応しい花であるだろう。
「Mr.ジェイクの情報網にてどこにあるか当たりを付けてもらいましたが……中々難しいものですね」
「ええ。それでも何も無いよりは大分、楽です。それに……私たちだけでは、ありませんから」
 古本屋に辿り着けば、ツクヨミの商業知識や資料検索、鑑定眼等の能力が役立つだろう。
 それに……エステルの言った通り、探しているのはエステルたちだけではない。
「悲恋の物語は心打つね……よし、是が非でも見つけに行くぞ! おー!」
『いにしえと今の紡ぎ手』アリア・テリア(p3p007129)はそう叫び、気合を入れ直す。
「えっと、手掛かりになりそうなのはロケットと手記……なら私は手記を探しに行く! 古本屋なんてそうそうあるとも思えないけど、天啓で目当てのものがありそうな所に当たりをつけて突撃―!」
 幸いにもジェイクの調べてくれた情報もある。範囲を絞った中であたりをつけるアリアの戦法は、かなり上等なものといえるだろう。
「すいません、消失都市の関係で手記があるって聞いたんですけど、ここで取り扱ってます?」
「あー、ちょっと前はたくさん出てたよなそういうの。どうかな……勝手に探してくれ」
 言われて、アリアは遠慮なく探し始める。
(暴走したとはいえ地下に都市を移動させるなんて生半可な技術じゃ無理だよね。あと、都市構造や防衛機構なんかの情報も仕入れておきたいけど……)
 流石にそこまでは無理だろうか?
 しかし見つかれば……その真偽はさておきラッキーだ。そう考えながらアリアは本を探していく。
 そして、そんなアリアとは違う場所。
『鋼鉄の冒険者』オリーブ・ローレル(p3p004352)は、消失都市に関する本が手記だけではないとあたりをつけて、買い集めて情報を集めようとしていた。
 ジェイクの調べた情報を元に古本屋などを巡り、これはという本を選ぶ作業は中々手間のかかるものではあったが、それも必要なことと思えば苦ではない。
「本の代金は必要経費なので、後でナコックさんに請求しましょう」
 何やらそんな事を呟いていたが……それはさておき。
『祈りの先』ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)と『雷光殲姫』マリア・レイシス(p3p006685)は、手記だけではなくロケットをも探すつもりで探索をしていた。
「きっと最期まで、すごく会いたかったでしょうね。会わせてあげましょう。もう二人で過ごすことはできなくとも、慰めにはなるでしょうから」
「うん。今回の話も、情報が本当なら不思議な現象だね……。もしミーシャ君の想いがオルゴールに宿っているのだとしたら……ビンデン君の元へ連れ帰ってあげたいな……」
 マリアとヴァレーリヤは互いの気持ちを確認しあうと手分けして、範囲を更に狭める、必要に応じては広げる戦法をとっていた。
 幸いにもマリアのギフトがあれば、綿密な情報交換も可能であった。
「消失都市誕生の経緯が描かれた青年の手記……そういうのがありますのね。無事に見つかるといいけれど」
「ちょっと前はあっちこっちにあったんだがな。まあ、再ブームの気配ありってことでまだ出版されるかもな!」
 古本屋の本を探しながら、ヴァレーリヤは他にも消失都市に関する資料や書籍があるかも知れないからと、片っ端から資料を探していく。地図の類があれば万々歳といったところだろうか?
 それぞれ誤っている箇所等あるだろうが、各資料に共通している記述が正しいものと推定して内容を精査し、最も確からしい消失都市の状況や構造を整理していけるはずだ。
「うーん、まだこんなにありますのね。これは骨が折れそうでございますわ……マリィ、そちらの進捗は如何ですこと?」
「む? ヴァリューシャ! こっちはなんとか! そっちはどうだい?」
 ヴァレーリヤからの通話にそう答えながら、マリアは『青き鋼の音色』イズマ・トーティス(p3p009471)やジェイクと合流しロケットを探していた。
 やはり闇市のこの辺りが一番ありそうだ……という可能性を辿り、行きついていたのだ。
「消失都市のことを調べてる。関連する品物があれば見たい」
 空気を読んでイズマがそう聞くと、闇市の露店の主人は胡乱な表情になる。
「消失都市ねえ……まあ、勝手に探してくれ。あるかもしれんし、ないかもしれん」
 そんな言葉にジェイクは含み笑いを漏らすが、とにかく露店のアイテムを探していく。
 雑多に積まれたものはどれがどれだか分からないものも多いが、ロケットという品目さえ分かっていれば大分絞られる。
「ふむ……闇市といっても結構あるしなかなか苦労しそうだね。虱潰しといこう!」
「ああ、そうだな。なら俺はあちらを」
「俺は向こうに行ってみよう」
 そうやって探していくと……やがて、マリアは1つのロケットを見つける。
 これがそうだ、と確信できるそれは相当な安値……というよりも捨て値だった。
「あったけど……こんなに安く売ってるんだ……ちょっとショックだよ……」
 優しげに微笑む女性の写真の入ったロケットを手に、マリアはそう呟いていた。

●消失都市へ
「これが……消失都市……」
 地震で出来たのであろう裂け目から見える消失都市の姿は壮大だった。
 ジェイクの用意した金具付きロープを崖に引っ掛けて慎重に降りていっても、チリ1つなく空気も淀んではいない。
 恐らくはまだ何かの古代機械が作動して快適な空間を整えているのだろう。
 空間全体を照らす明かりも、恐らくはそうしたものなのだろうが……。
 ジェイクとツクヨミのファミリアーが周囲の把握の為に飛び回るが、此処も安全な場所というわけではない。
 古代ゴーレムからすれば、ジェイクたちはただの侵入者に過ぎないのだ。
「ま、ゴーレムとの戦闘は避けていくとしようぜ」
 そんなジェイクの言葉に反対する者は居ない。
 暴走しているわけでもないゴーレムと争う理由は何処にもないのだ。
「そもそもゴーレムは何を以て侵入者と住民を識別しているのでしょうか。もしかすると、適当な家を探れば識別に用いられる何かがあるかもしれませんね」
 恋人の女性の方に関わる物のついでに探ってみましょう、とオリーブは頷くが……マリアはちらりと手の中のロケットに目を向ける。
 これも同じ時代のモノのはずだが……もしかしたら、と。そんなことを思ったのだ。
「さぁ……ようやく消失都市の探索だね! 気を抜かずに行こう!」
 しかし、それはただの想像に過ぎない。
 だからこそ、その考えを吹き飛ばすかのように叫び、そうして消失都市の探索は始まっていく。
「手記から都市構造をある程度は把握できてるけど……全容の把握にはエコーロケーションしかないかな?」
 上からも見てはいるが、一方向からの情報には限度がある。
 とはいえ大きな音を出すとゴーレムを呼んでしまいそうだと、石を遠くに投げた時の反響音で判別しようとアリアは考える。
「あとは……困った時や迷った時は常に一度手記の記載に立ち返ることを忘れないようにしないとね」
「ええ、そうですね。木とか、もう朽ちていても目印があるはず。きっと……」
 エステルも頷き、手記の内容を思い返す。
 手記によれば、エステルは1人暮らしであったらしい。
 赤い花の咲く庭のある家であったらしいが……花の類は、上から見た範囲では見えなかった。
 しかし庭があるというだけでもかなりの情報ではあるだろう。
 そんな中、イズマは広域俯瞰を使い再度俯瞰からの情報を確認していた。
 今回、一番大きい情報は「オルゴールの音」だ。
 1度聞こえてさえくれば、かなり絞れるはずなのだが……。
「……音楽に想いを込めるのはいつの時代も変わらないな。でもきっと旋律は今と違う。それがかつて彼らが生きた証拠だ。俺はそれを聴いてみたい。そしてその音が聞こえるうちにオルゴールを持ち帰ろう」
「だな。話によれば、ビンデンもミーシャも死して尚お互いを求めているって所か。俺だって、妻と引き離されたらと思うと気が気じゃねえ……ガラじゃねえが、しっかりやっていくとしようか」
 イズマに答えながら、ジェイクは「おっと」と声をあげる。
「こっちにゴーレムが近づいてるな……そこの家に入るか」
 全員で近くの家に避難すると、窓の外をゴーレムが歩く足音が聞こえてくるのが分かる。
 それを窓からチラリと見ながら、ツクヨミは溜息をつく。
「あれを魔眼で催眠するのは……無理そうですね」
 単純極まりない思考ではあるが、これ以上ないくらいに強固な精神を持っているのが見て分かる。
 しかも3体で小隊を組み動くその姿は、外の遺跡で見つかる古代ゴーレムとは違う「整備」されたものだ。
 あまり盛大に敵に回したくはない。
 まあ、家の中にいれば襲ってはこないようなので、各自がそれぞれ家の中の探索を始めているが……ヴァレーリヤは家の中にいた霊魂と意思疎通を試みていた。
 ロケットに写った女性を知らないか。或いは、見たことがないか。それはどこか。
 ずっとオルゴールが鳴っている場所を知らないか。
 質問としてはそんなところだが……。
「ああ、ミーシャか……知っている。可哀想な子だ。私より先に死んでしまった」
 返ってきたのは、そんな具体的な答えだった。
「場所を知ってますの!?」
「そのロケットはビンデンのものか。相当時間がたったのだろう……私ももう月日を数えるのをやめた。ただ、あの子のオルゴールの件だけが心残りで……いや、もう大丈夫なのだろう。頼む……」
 そう言い残して霊は消失してしまうが……なるほど、古代文明ほどの古い霊がまだ残っていたのは奇跡的なものなのだろう。
 その間にゴーレムの第二陣が別の窓から見えるが……その姿を見ながら、エステルは思う。
「あなたたちの存在意義は……恐怖からくる暴動の鎮圧? それとも、外を夢見て掘り続ける者?」
 そうではないとエステルは知っている。
 未だに彼等は此処を守っているのだ。
「誰に知らせるの? 起きる人がもういない、この都市で……」
 知らせる人などいない。
 ただ、それでも彼等は墓場と化した此処を守っている。
 それが分かるからこそ……エステルはその在り方を悲しいと思う。
 そんなエステルの心情に応えたわけではないだろうが……何処かから、音楽が聞こえ始める。
「この曲は……」
 オリーブが呟き、全員が耳を澄ます。
 間違いなくオルゴールの音。
「オルゴールは彼女の居場所を示す……! 終の棲家は自身の家よりは恋人の帰りを待つためにビンデンの家だと思いますが……」
「とにかく音を辿るぞ。しばらくは鳴ってるはずだ」
 エステルとジェイクの言葉に従い、進み……時に隠れて、そうして1つの家に辿り着く。
 それが恋人たち2人のどちらの家なのかは分からないが……机の上に置かれた小さなオルゴールに、アリアは軽く触れる。
「これが……オルゴール? 澄んだ音……伝承は本当だったんだね」
 町に戻ったら手元にある楽器でこの音色を再現してみたいと、吟遊詩人っぽく語りを入れてみたいと。アリアはそんな事を思う。
「これから語るは古代の神秘、大いなる大地が引き裂いた悲劇の物語——うんうん、面白い物語ができそう!」
 エステルはオルゴールの蓋を閉じ、音楽を止めるとそっと回収し用意した花を置く。
「あとは遺言通り。像にロケットと手記、オルゴールを収めるだけですが……出来れば宝石箱などに入れましょうか。【約束の遂行をここに】とでも銘打って。誰も野暮なことは誰もしないでしょう」
「そうですね。それが良いでしょう」
 エステルにツクヨミも頷き、そうして再び亀裂へと登っていくと……ヴァレーリヤが「あっ」と声をあげる。
 その方向。亀裂から見える、遥か下の消失都市で。
 無数の古代ゴーレムたちが、ヴァレーリヤたちを見上げていたのだ。
「ちょっとあの数はやばくないかい!?」
 そんな事を言ってしまうマリアだが……すぐに気付く。
 襲ってくる気配はない。いや、むしろアレは……敬礼をしているようにも、見える?
 分からない。彼等はすぐにまた巡回に戻っていってしまったからだ。
 けれど、もしそうだとしたら。
 ゴーレムたちもまた、望んでいたのだろうか?
 彼女の想いが、恋人の下へ帰ることを。
「ゴーレムが墓守の意味もあったとしたら……」
 そんなエステルの呟きは正しいのか否か。誰にも分かりはしない。
「消失都市はいつか完全に崩壊するかもしれない。俺はこの曲を覚えておくよ。ミルスクの街を……消滅都市を知る者として」
 そんなイズマの呟きが、静かに響く。
 ビンデンとミーシャ。再会を願ったオルゴールは「悲恋の2人」像にロケットと共に収められた。
 もう2度と、悲しげな音楽が響くことはない。これはただそれだけの……小さな再会の物語であった。

成否

成功

MVP

マリア・レイシス(p3p006685)
雷光殲姫

状態異常

なし

あとがき

コングラチュレーション!
ミーシャの願いを叶えてあげる事が出来ました!

PAGETOPPAGEBOTTOM