PandoraPartyProject

シナリオ詳細

気高くも力強い舞踏会

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 幻想と鉄帝は緊張状態が続いている。
 というのは、国土のほとんどが厳しい環境に置かれる鉄帝は、力こそ全てという価値観を抱いており、近隣国家へと武力で侵攻した過去があるからだ。
 一方、肥沃な国土を持つ幻想は長い歴史を持ち、何代も続く貴族というのも珍しくない。選民思想すら持つ者も珍しくなく、自分達こそ至高と疑わぬ貴族の態度は力を持つ鉄帝民すらも侮蔑することすらある。
 そうした両国が対立することは歴史、価値観的にも仕方のないことなのだろう。

 しかしながら、その大きな垣根を取り去ろうとすべく活動する者達もいる。
 鉄帝民の中には力を持たぬゆえにそれ以外の手段で生活の術を持とうとする者だっているし、幻想民も全てが貴族ではなく他国民の思想に寛容である者だっている。
 そうした両者が結び付き、企画された1つが舞踏会である。
 ダンスは筋力、持久力、柔軟性が必須。鉄帝の民でも嗜む者もいる。幻想にしても、貴族の嗜みとして身に着ける者もいる。考え方がまるで違う両者が近しくなる為に最適なイベントと判断されたのだ。

 舞踏会会場には多数の幻想の貴族や鉄帝の武芸に長けた者達が集まり、話に花を咲かせている。
 ほとんど話のネタも合わない両者だが、踊りという一点であれば自慢の踊りについて語ろうが、どんなに張り合おうが問題ない。
「まさか、君がこうした会で踊ることになろうとはな」
 そんな場所に控えているのは、白豹の獣種、『灰雪の騎士』スノウ・ダイン・スロウス。
 鉄帝に近い場所に屋敷を構える彼は、幻想の騎士として活躍している。
 今回、双方の懇談を兼ねた舞踏会とあり、幻想、鉄帝として警護する者を配備できない。
 それもあって、警備を行うべくやってきたのはこのスノウと……。
「あら、現れるかわからない襲撃者ばかり考えていても面白くないじゃない?」
 鉄帝の貴族である『白雷の貴人』アッシュ・クラウ・ラースは白銀のドレスを纏って優雅に笑う。
 令嬢ではあるが、機械となったアッシュの両腕から繰り出される一撃は並のものなら一撃でKOするほどの威力。鉄帝側としての警備員として白羽の矢が立ったのも頷ける。

 さて、主催者の挨拶も終わり、会が始まる前のこと。
 ゲスト枠として、アッシュが華麗にダンスする。
 力強くも美しい彼女の舞いは、この場にいる全ての者を魅了する。
 丁寧に頭を下げるアッシュに、盛大な拍手が巻き起こる。
 そこで、客から一人、スーツの男が前に出て。
「素晴らしい。……ですが、こんな舞踏会、必要ないのですよ」
 すかした物言いの男が指を鳴らすと、入口のドアを破壊して悪漢の群れがなだれ込んでくる。
「「きゃあああっ!」」
「なんだ、貴様らは!」
 幻想貴族が叫ぶ中、鉄帝民が毅然とした態度をとるが、悪漢のリーダーは豪快に笑う。
「武闘悪鬼ベルガ、俺の名だ」
 そいつは全身から闘気を放ち、この場の者達を萎縮させる。
「こんなお遊びなどつまらねえ。全て俺の力で吹っ飛んでしまうんだからよ」
 白い歯をみせ、舞踏会参加者へと襲い掛かるベルガ。
「そこまでだ、悪鬼ども」
「私たちの社交場に土足で上がり込むなんて、許せないね」
 だが、スノウとアッシュが身構え、悪漢どもを牽制する。
 さらに、襲撃してきた悪漢らの後ろから、ローレット所属のイレギュラーズが駆け付けてくる。
「そうでなくては面白くねえな」
 思い思いの言葉を叫ぶ彼らに、ベルガやスーツの男が笑みを浮かべて。
「この会をぶっ潰すだけじゃつまらねえ。てめえら纏めて吹っ飛ばしてやるよ」
 ベルガは一層闘気を高め、会場全体を揺らがしてみせるのだった。

GMコメント

 イレギュラーズの皆様こんにちは。GMのなちゅいです。
 こちらは、アクセル・ソート・エクシル(p3p000649)さんのアフターアクションによる関係者依頼ですが、どなた様でも参加可能です。
 幻想と鉄帝の勇姿の人々によって開催された舞踏会。
 しかしながら、それを狙った悪漢集団がいるようですので、討伐を願います。

●目的
 舞踏会に乱入してくる悪漢集団の討伐

●敵……悪漢集団
〇武闘悪鬼ベルガ
 30代、鉄騎種。
 幻想など奪いつくせばいいと力が全てだと疑わないまさに鉄帝の考え方が全てという乱暴者です。
 ナックルを装着して叩きつけてくる他、衝撃波を相手に浴びせかけたり、闘気を溜めて解き放ったり、拳や足へとピンポイントに闘気を集めて叩き込んできたりと非常に戦い慣れした男です。

〇舞踏悪鬼グライア×1体
 客に紛れていたベルガの手下。他の悪漢らに比べれば細身で、スーツを着用することで本当に舞踏会の参加者を思わせます。
 ベルガほどではないですが、中々の強敵です。鮮やかに踊りながら相手に切りかかろうとします。

〇ごろつき×12体
 ベルガ配下の若い鉄騎種達です。
 幻想の貴族と仲良くする鉄帝の民に我慢がならなかったようです。
 ナイフを使った喧嘩殺法の他、麻痺針、毒霧、目くらましの砂など、相手の手鼻をくじくような姑息な手段も使う連中です。

●NPC
○『灰雪の騎士』スノウ・ダイン・スロウス
 獣種男性。幻想所属の騎士。アクセルさんの関係者です。
 戦いにおいては、剣術

○『白雷の貴人』アッシュ・クラウ・ラース
 金髪に赤と青のオッドアイを持つ鉄帝の貴族。
 華奢な見た目に対し、機械化した腕部から高威力の攻撃を叩き込みます。

○状況
 幻想、鉄帝との国境付近に会場を設け、舞踏会が開かれます。
 互いの親交を深める機会と民間で立ち上げられた企画のようですが、それを良くは思わぬ者がいたようです。
 参加者に被害がないよう誘導しつつ、悪漢の集団を討伐していただきますよう願います。
 舞踏会会場は大きな部屋となっていて、その中心で舞踏を楽しむ会場です。
 壁際に参加者や閲覧者などが詰めている為、彼らが被害に合わぬよう会場の外へと誘導させる必要があるでしょう。
 事後、舞踏会をスムーズに再開できれば、主催からより高く好感を得られ、幻想、鉄帝の交友も深まるものと思われます。

 事後は個人ダンスでも、社交ダンスでも、踊りたい演目にご参加くださいませ。経験者でしたら、鮮やかなダンスで客席を魅了することでしょう。
 ダンスがわからない人でも、舞踏会を救ってくれた立役者ということで一から教えてくれます。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

 それでは、よろしくお願いいたします。

  • 気高くも力強い舞踏会完了
  • GM名なちゅい
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年11月23日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談4日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

アクセル・ソート・エクシル(p3p000649)
灰雪に舞う翼
ヒィロ=エヒト(p3p002503)
瑠璃の刃
美咲・マクスウェル(p3p005192)
玻璃の瞳
アリア・テリア(p3p007129)
いにしえと今の紡ぎ手
レイリー=シュタイン(p3p007270)
騎兵隊一番槍
長月・イナリ(p3p008096)
狐です
橋場・ステラ(p3p008617)
夜を裂く星
イルマ・クリムヒルト・リヒテンベルガー(p3p010125)
生来必殺

リプレイ


 鉄帝に程近い場所にある幻想、舞踏会会場。
 そこは、多数の幻想貴族と鉄帝の鉄騎種らが参加し、談笑しながら開会を待つ。すでに幾人かが余興とばかりにダンスを披露しており、あちらこちらから拍手が飛び交っていた。
 この場に、一足早く駆け付けていたイレギュラーズは2人。
「なるほど、警備が置けない舞踏会、ですか……」
「鉄帝と幻想の友好ね」
 『花盾』橋場・ステラ(p3p008617)の傍に、警備員となっていた白と水色のドレス着用の『白騎士』レイリー=シュタイン(p3p007270)がそっと近づく。
「お互い足りない所があるし、お互いで補える所でもあると思うの」
 壁の花となっていたレイリーは、一曲くらいは踊ってみたいと思いつつも、会場内を眺める。
 踊りも談笑もせず、不自然な動き、視線を向けている者……。
(あれでしょうか)
 しきりに入り口を見ている細身のスーツ男性に、レイリーは注意を向ける。あいつがグライアで間違いないだろう。
「でも舞踏会って本当にあるんですね、映像作品等でしか触れる機会がありませんでしたし」
 旅人であるステラは元の世界でそうした光景を画面越しに見ていたが、この場で催される会も引けを取らない。
「こういう場だと、今の装備なら武器が目立たなくて良いですね」
 一見、ただの指輪だが、その力は後程発揮することだろう。

 一方で、舞踏会会場へと急行するメンバー達。
「舞踏会だっ! 音楽、ご飯! え、踊り? 無理だよ踊れないもん!」
 テンション高く叫ぶ『いにしえと今の紡ぎ手』アリア・テリア(p3p007129)は仲間の質問にも反応しつつ、それどころじゃないとセルフツッコミする。
「お仕事メインで来てはいるけど、ここの思想や姿勢は素敵ね」
 『あの虹を見よ』美咲・マクスウェル(p3p005192)がすでに荒らされた入口で告知されていた内容を目にする。
 根深い対立の世情を、ダンスで変えていこうという試みは感嘆すべきものだ。
 ただ、一行が乗り込むと、すでに悪漢どもが会場へと殴り込みをかけている状態で。
「うんうん、ボク達ローレットを迎えるのに相応しい舞踏会場になってるね。……殺伐としてて!」
 『激情の踊り子』ヒィロ=エヒト(p3p002503)は突然乱入した悪漢らとそれに怯える参加者、警備の男女らと視線を巡らせて。
「本番前の余興としてはまぁまぁかな」
「……そうね。前座。余興と思えば、腹も立ちにくいか」
 美咲もそう言い聞かせ、主催の想いを踏みにじる悪漢どもを魔眼で見据える。
「幻想と鉄帝が民間レベルとはいえ仲良しになろうとしてるのに、それを悪い手段で妨害するのはよくないよ!」
 『灰雪に舞う翼』アクセル・ソート・エクシル(p3p000649)は知人である警備の『灰雪の騎士』スノウと『白雷の貴人』アッシュとの再会に刹那笑みを浮かべたが、すぐに悪漢どもへと苛立ちをみせた。
「しかも、スノウとアッシュがいるところでなんて! もう!」
「なんだ、お前らは」
 先ほど、幻想貴族から呼びかけられた言葉を、悪漢のリーダーである武闘悪鬼ベルガが吐く。
「白騎士ヴァイスドラッヘ! 只今参上!」
 すると、壁際にいたはずのレイリーがギフトを使い、武装を装着して会場中央へと躍り出る。
「幻想と鉄帝の友好を邪魔する者はヒーロー『ヴァイスドラッヘ』が許さない!」
 叫びかけて悪漢どもの気を惹くレイリーは保護結界を会場に張り、被害の軽減に当たる。
「それで、血沸き肉躍る死合い(ダンス)のパートナーは……アレかな?」
 さらに、ヒィロがベルガに目をつけて呼びかける。
 綺麗さも優雅さも華麗さも美しさも品位も何もかも欠けており、ダンスパートナーとしては下下下の下もいいところ。
「だけど――殺し合いの相手としてはギリギリ及第点、かな! それじゃぁ、お手をどうぞ?」
 挑発的に一礼するヒィロは闘志を放ち、手を差し伸べる。
 敢えて、ダンスの形式に合わせて挑発する彼女に、ベルガは激しく怒り狂う。
「貴様、只ではすまんぞ……!」
「殺意だけは本物のようだな。ならばこちらも全力で抗戦するのみ。慈悲はない」
 『紅い怨念』イルマ・クリムヒルト・リヒテンベルガー(p3p010125)にとって、力に溺れ、我が物顔で人々を支配せんとする輩はもっとも憎むべき邪悪。
 故に、イルマは問答無用でベルガを始めとする悪漢どもの殲滅にと身構える。直後、彼女は瞳を赤く染め、2本の角を頭に生やしていた。
 同じく、『狐です』長月・イナリ(p3p008096)も会場参加者を守るように敵との間へと割り込んで迎撃の構えをとっていた。
 その間に、メンバー達は戦いの場を整える。
「スロウスさん、ラースさん、避難誘導に協力を願います」
 会場の人々を外へと誘導し始めるステラがスノウやアッシュへと呼びかけ、協力を要請する。
 立て続けの出来事に戸惑う2人は、悪漢へと応戦しようとしていたのだが。
「まずは被害を出さないこと。この程度では揺るがないと示すことよ」
「其々騎士と貴族であるお二人の号令なら、参加者も素直に動いてくれそうですしね?」
 重ねて、保護結界を展開する美咲も避難誘導を彼らへと願うと、さらにステラが一言。イレギュラーズの発言力もかなりのものだが、この場への参加を認められるスノウ、アッシュの2人だからこそできることもあるのだ。
「承知した」
「ここは警備の役目を果たさないとね」
 2人も避難誘導へと転じ、人々を外へと案内し始める。
「済んだら援護には来て欲しいけどね?」
 美咲は逃げ遅れた参加者に避難を呼びかけ、ベルガと相対するヒィロのフォローへと向かう。
 入れ替わり、広域俯瞰で人々の動きを見ていたアクセルがスノウ、アッシュに合流して避難へと動く。
 ただ、悪漢どもも黙っていない。
「野郎ども、逃がすな!」
「「おう!!」」
 手下であるごろつきどもがベルガの一声で動き出す。
 とりわけ、会場に潜入していたグライアは軽やかに会場内を舞って細い刃を煌めかす。
 だが、アクセルが魔砲で牽制する間にレイリーが攻め入り、しっかりと抑えに入る。
「本気で相手を仕留めたくば、死ぬ覚悟で来るがいい」
 敵を警戒していたイルマはビームを発して、残りのごろつきを牽制する。
「皆さん、落ち着いて入口から外へと避難してください!」
 ステラは持ち前のストラテジーによって、人々を効率よく外へと誘導する。
 仲間がうまくごろつきを牽制しているが、相手も荒事には手馴れており、高く跳躍してナイフを振りかざしてくる。
「スロウスさん、ラースさん、来ます!」
 すると、スノウは素早く抜いた剣で相手を切り伏せ、アッシュは機械の腕を突き出して敵を吹っ飛ばしてみせる。
「流石ですね!」
 ステラは鮮やかな2人の戦いぶりに声援を送り、人々の避難を急ぐ。
 また、アリアは陣地構築により、会場のテーブルや用具などを使って簡易バリケードを作っており、さらなる追撃の手を鈍らせる。
「稼いだ時間があれば仲間達の行動の幅も広がるよね!」
「ちっ……!」
 舌打ちするベルガ。グライアも動けず、目の前の相手に注力し始める。
 剣戟に包まれる舞踏会会場は狂騒曲といった様相。
 戦場と化した広間で、イレギュラーズと悪漢集団は鎬を削り合うのである。


 舞踏会会場の避難が進む間、イレギュラーズは全力で悪漢集団を抑える。
「俺が全部吹っ飛ばしてやるよ!」
 力こそ全てと疑わぬ武闘悪鬼ベルガはまさに鉄帝の思想の塊といった人物。
 折角の舞踏会をぶち壊されぬよう、ヒィロが闘志を発してそいつの重い拳や蹴りを引きつける。
 避難する人々を負うのを諦めたごろつきもそこに加わってくるが、ヒィロは高い回避力で多くの攻撃をいなしてみせていた。
 イレギュラーズ側で盾役となるのは2人。美咲はその1人、ヒィロをバックアップする。
(ヒィロに当てる相手なんてそうはいないけど、囲まれると限度もあるかな)
 歴戦の彼女達は常に万全に期して油断はない。美咲は確実に支えるべくヒィロに祝福をもたらした上で小物の片づけにも当たり始めていた。
 もう一人の盾役、レイリーは会場に紛れていたもう一人の強敵と対する。
「舞踏悪鬼グライア。以後、お見知りおきを」
 恭しく一礼するその態度は慇懃無礼。相手を思いやる気持ちなど微塵も感じさせない。
「私を倒せる? おじさん、無視するなんて憶病で弱い雑魚なのね」
 白銀の鎧纏うレイリーはグライアを挑発し、相手の細剣を引きつける。
 その身のこなしから、舞踏に関しては参加者が唸る程の実力者ではあっただろう。
 だが、グライアは高い技量を持つ故に、この舞踏会が陳腐なものと感じたのかもしれない。
「好きなようにかかってきなさい、何人でも相手するわ」
 レイリーは今チーム随一の防御力を活かし、周囲のごろつきを纏めて引き寄せて避難の時間を稼ぐ。
「レイリーさんが抑えている間に……」
 アリアは盾役となる仲間の負担を減らす為にも、手に生み出した火焔の大扇を大きく薙ぎ払い、ごろつきどもへと浴びせかけていく。
「ぐあっ」
「おうあぁ」
 麻痺針や毒霧を吐きかけようとしていたごろつきがそれらをまともに受けて昏倒する。
 入り口を背にするイナリは逃げ遅れた最後の参加者を守り、ごろつき数体を相手取る。
 イナリは敵に攻め入りながら稲荷神の構築した戦闘用の式をその身に降ろして身体能力を高め、無銘蛭子で連撃を見舞う。
 一撃当たりの攻撃はさほど強くなく、敵に切り傷を与える程度。だが、それが重なれば傷口は深まる。
 そして、避難が完了すれば、誘導に当たっていたメンバーも戦闘に加われば、イレギュラーズが一気に流れを変えることに。
「ここまでです」
 突撃するステラはしぶとく応戦するごろつきどもへ、赤と青に光らせた両手の指輪によって強靭な拳とした両手で敵陣へと乱舞を叩き込む。
 さらに、イルマがそれらの動きを止めようと銃撃で相手の足を止める。正確なその狙いに、ごろつきどもも思う様に動けず歯ぎしりなどしてしまっていた。
「スノウ、アッシュ、行くよ」
「任せてもらおう」
「たっぷりお礼しないとね」
 一騎当千の獣騎士と疾風迅雷の鉄騎姫がタッグとなれば、ごろつきなど敵ではない。
 彼らの前ではごろつきも長くはもたずバタバタと倒れていく。
 アクセルは彼らの切り開いた空間を飛び、強敵と対する仲間に加勢し、激しい光を浴びせかけてベルガやグライアの動きを止めようとしていた。


 舞踏会の参加者の避難誘導を終え、警備2人を加えたイレギュラーズの攻勢は増すばかり。
「く……!」
 ヒィロへと乱打を叩き込もうとするベルガだが、彼女は涼しい顔をして軽やかに、アクロバティックに避ける余裕すら見せる。
 力に絶対的な自信を持つ敵は血管が切れそうな程に怒り狂うが、それでもどこか冷静さも持ち合わせているのが強者の所以だろう。
「舐めるなあああっ!!」
 全身から沸き立つ闘志それにヒィロや美咲が煽られる状況の中、ベルガはアクセルへと素早く殴り掛かる。
 思いもよらずダメージを受けたアクセルは自らへと大天使の祝福をもたらして持ち直そうとするが、敵の猛攻は止まらない。
「うおおおおおっ!」
 飛び蹴りがアクセルを襲い、あまりに重い一撃に彼はパンドラにすがって意識を保つ。
 それを見たヒィロはアバターカレイドアクセラレーションによって力を高め、ベルガの注意を再度引きに当たる。
 アクセルも回復して持ち直したことで、美咲は一時的にごろつきの殲滅にと攻撃を仕掛ける。
「光と闇、好きな方で倒れるといいよ」
 美咲はギフトによって、魔眼による視線のみで発動できる。
 神気と終焉の帳を任意に使いこなす彼女は、この場は後者で敵に攻撃し、相手に文字通り終わりを告げる。
 白目を剥いた敵は泡を吹き、床へと倒れていく。
 ごろつきの数も残りわずか。グライアを抑えていたレイリーは自らの存在をアピールし、近寄って来ていたごろつきと合わせ、ランスや大盾を叩きつける。
 それだけに、彼女は相手の攻撃も多く喰らっており、傷は徐々に深まってきていた。
「お待たせ! 大丈夫? ちょっと治療するね!」
 アリアはそんなレイリーが危機に瀕していることを察し、癒しをもたらす。
「あー、もう! 私みたいにか弱い(単発火力が低い)と雑魚敵を沈めるのも面倒だわ!」
 相手は鉄騎種。思った以上にタフなごろつきも多く、イナリが思いっきり叫んでしまう。
「さっさと沈みなさい!」
 手数を活かして相手の手足へと切りかかることで傷を増やすイナリ。
 ごろつきらもフラフラになりつつ応戦を繰り返すが、後ろへと下がっていたところでイルマへとぶつかる。
「小賢しい。カモ撃ちにされたいか? 雑兵共が」
 眉を引きつらせたイルマは肉弾戦でそのごろつきを殴り伏してしまう。
 雑魚がほとんど倒れたところで、スノウ、アッシュコンビもベルガ目掛けて襲いかかる。
 かなりの強敵であるベルガ。武闘悪鬼なる二つ名も伊達ではなく、猛然と振りかざされる打撃は並のものであれば一撃で昏倒してしまうほどの威力。
 皆間合いを図り、直撃を食わらぬようにしている中、ステラが飛び込み、全力で呼び出した黒い顎をけしかける。
「頭を叩いてしまえば、例え取り巻きが起き上がっても動きは鈍るはずです!」
「ぐぬ、うううっ……!」
 それに食われたベルガへ、ヒィロは再度闘志を発して相手を刹那恍惚とさせる。
 そのヒィロに合わせ、美咲は舞踏さながらの動きで雑魚と同様に紫の帳を下ろす。
「ぐおおおおおおおぉぉぉぉ……」
 白目をむき、ベルガは重たい音を立てて倒れていく。
 これで残るはグライアのみ。
「これは……」
 敵はベルガが倒れてなお、抵抗を続ける。
 さらに、イナリがその四肢を攻め立て、動きを鈍らせていくことで勝敗は揺るがぬものとなっていく。
「どんな強者も自惚れが身を危うくする。愚王は討たれるが世の運命。弱肉強食とはそういうことだ」
 イルマも射撃で敵を攻め、追い込んでいくのだが、グライアも底力を見せつける。
 動かぬ足でなお舞い踊り、切りかかる敵はイルマ目掛けて鋭い一突きを繰り出す。
 思わぬ一撃に崩れ落ちるイルマ。
 すかさずレイリーが再度そいつの機を引く間に、ステラが接敵してグライアへと殴り掛かり、さらにアリアが零距離から短剣による極撃を打ち込むと、さすがのグライアも動きを止めて。
「まさか、我々がこうも簡単に……」
 大きく目を見開いたそいつは力なく床へと伏していったのだった。


 悪漢集団はスノウの伝手で呼び寄せた幻想の騎士達によって搬送され、舞踏会は改めて催されることに。
「……何かご飯は出ますか?」
 手早くその復旧を手伝うステラの要望もあり、主催は立食パーティー用の飲食物を用意してくれる。貴族達の晩餐に使われる品々が並び、ステラはあちらこちらに目移りしてしまっていた。
 開始時間が数時間後倒しとはなってしまったが、参加者は特に疲れた様子もなく楽しんで踊り始める。
「それじゃ、軽く汗をかいたところで本番を楽しもー!」
 先程の戦いは本気で余興だったと言わんばかりに、ヒィロは美咲へとダンスをおねだり。
 ヒィロに楽しんでもらいたいと願う美咲は相互ご褒美と緩やかにステップを踏む。
 見つめ合う2人は息を合わせ、心を一つに。舞踏スキルのあるヒィロがリードしつつも、美咲の導きで2人は会場を舞い踊る。
 2人だけの世界に入る彼女達に、参加者からも拍手が飛び交っていた。
「……ダンスね、ちゃんと学んでおけばよかったわ」
 この場ではクラシックによる社交ダンスを嗜む幻想貴族が多く、レイリーも鉄帝民としては一緒に踊って見せる。
 途中、相手の足を踏んでしまうことがあるのはダンス初心者あるあるだ。貴族も大丈夫と笑って見せてみせる。
 拙い踊りで悲劇を一つでも減らせるなら。レイリーは一生懸命踊って貴族らと友好を深める。
「……あちゃ~、私踊り……」
 まるっきり踊れないアリアは試しに参加者にダンスを手ほどきしてもらうが、なぜかうまくステップが踏めない。
 そこで、アリアは音を愛する精霊らしく、音楽で盛り上げようと思い立つ。
「ノッてるかい!!
 鉄帝民と共に、アリアは雰囲気真逆のビートで盛り上がりを演出する。
「踊りも音楽も、国境を越えて楽しむものだよ!」
 幻想民に戸惑いもあったようだが、これに合わせてステップを踏むのもまた、ダンスの醍醐味と新たな楽しみを見出していたようだ。
 イナリも演奏家達から楽器を借り、コンサートマスターとして会場の人々の心をつかむような演奏を披露してみせた。
「さあ、ご一緒に!」
 演奏家達を先導し、イナリはアリアにも協力を仰いで盛大に場を盛り上げる。
 この場に幻想も鉄帝もない。ただ曲に酔いしれながら、人々は出会う人と共に顔を見合わせ、手を繋いで全身でリズムを刻む。
 アクセルも嬉しそうにスノウやアッシュと語らい、また他の参加者とダンスを踊る。
 イレギュラーズという立場だからできること。アクセルはそれを実感して人々の懸け橋にならんと立ち回る。
 大きな混乱はあったものの、なおも盛り上がる舞踏会を参加者達は心行くまで楽しむのだった。

成否

成功

MVP

ヒィロ=エヒト(p3p002503)
瑠璃の刃

状態異常

なし

あとがき

 リプレイ、公開です。
 MVPは強敵を抑え、相方と共に討伐した貴方へ。
 今回はご参加、ありがとうございました!

PAGETOPPAGEBOTTOM