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シナリオ詳細

<至高の美味を求めて>ラサの慈悲

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●ラサの慈悲の伝説
 その国土が広い砂漠で構成されるラサにおける水の重要性は、もはや語るまでもない。
 点在するオアシスには人が集まり、ネフェルストが最大のオアシスに存在することも既知のことだ。
 しかし……砂漠越えとは、予想以上に辛いものでもある。
 うだるような暑さに喉は渇き、夜になれば急激な気温差で体調を崩す。
 そんな連続の中で、如何に水の重要性が高いかは誰もが身をもって理解する。
 故に、ラサのオアシスは常に奪い合いの対象になっている。
 そこには当然利権の類も発生するわけだが……。
 ラサには、1つの伝説じみた歌がある。

 砂海を彷徨い三日三晩。
 水も希望も枯れ果てて、行く道はただ渇きたり。
 嗚呼、なんたる喜劇。
 山のような金も、ラサの太陽と砂には通じず。
 彷徨い渇き果て、倒れた先には蜃気楼。
 幻に一縷の希望を見て進みゆけば、溢れるは湖の如き水。
 斯様な何も無き砂漠に、水などあるはずもなし。
 しかし、此処には水がある。
 ああラサよ。この身に慈悲を与えたるか。
 悪徳なる男、慈悲に打たれその身を悪徳を濯ぎ落す。
 ああラサよ。わが身に慈悲を与えたもう。

 つまるところ、水のない悪徳商人が突然水を得て、ラサの砂漠に感謝し改心した……といった歌である。
 ご都合主義極まりないそんな歌。
 しかし……その「改心した商人」が実在して「あの時の感動を差し引いても、あの水の美味さに敵う水はない」と語ったとすれば……どうだろうか?
 それを求める「商人の子孫」がいたとしたら……その存在を疑う者は、いるだろうか?

●ラサの慈悲を探して
「というわけで、ラサの慈悲を探すです」
 チーサ・ナコックはそう言うと、集まった面々の顔を見回した。
 ラサの恵み。
 その正体は地下水源から噴き出す水であると思われるが、何らかの事情でその水源、あるいは噴出ポイントが移動し続けているものと思われる。
 だが、そんなことはさておいて大事なのは「ラサの恵み」がかなり上質な水であるということだ。
 恐らくは他の国に存在するよりもずっと上質であろう、そんな水がラサに存在する理由は分からないが……もしかすると、本当に「ラサの慈悲」であるのかもしれない。
「探す方法は確立されていないです。ですが、かなり強い「水の香り」がすることだけは確認されているです。それを頼りに探すことは……あるいは可能かもです」
 勿論、それだけではない。ネフェルストには「ラサの慈悲」に関する様々な情報がある。
 かつてラサの慈悲に救われた商人の子孫……今回の依頼人も、だ。
 そうした方面から聞き込みをすることで、思わぬ情報を得られるかもしれない。
 地図などを手に入れることが出来れば、その情報は更に角度を増すだろう。
 ラサの恵みは、そのまま飲んでも美味しいし料理に使えば何倍にも味を引き上げるとも言われている。
 料理の基本は水というほどだが、それほどの水……食の道を目指す者ならば、安定供給は叶わずとも、1度味わってみたいと思うのは自然なことではないだろうか?
「過去にラサの慈悲が出現したポイントですが……おおよそ、幻想からネフェルストに至るまでのルートに出現していることが分かっているです」
 つまり、その情報を纏めれば次の「ラサの慈悲」の出現ポイントを予測できる可能性もあるということだ。
 そして、ラサの恵みについての歌もポイントではあるだろう。
 蜃気楼の出現を疑うほどの気温……その辺りを考慮に入れれば、出現時間も絞れるかもしれない。
「情報通りであれば、全員で水を楽しんでも問題ない程にあるです……勿論、例の商人の子孫に持って帰る分も、です」

GMコメント

幻の名水「ラサの慈悲」を探しましょう。
スタート地点はネフェルスト。
そこからテクテクと進み「ラサの慈悲」を探すことになります。
直接的なヒントは「濃厚な水の香り」であるようです。
また、「ラサの慈悲」に関する歌や過去の「ラサの慈悲」の出現情報からポイントを絞ることができるかもしれません。
依頼人の「商人の子孫」はネフェルストにいるため、この辺りから出発前に情報収集が出来る可能性もあります。

見事ラサの慈悲を見つけたら、水を使った様々な料理を試してみるのも良いでしょう。
持ち込んだ干し肉も柔らかく煮込める、そういう凄い水です。
この辺りにプレイングを多めに割くのも良いかもしれません。
なお、「料理なんか分かんないぜヒャッハー」という場合はチーサが野菜スープを作るので手伝うという手もあります。

●ラサの慈悲
種別としては軟水にあたります。癖がなく飲みやすい、そんな「味のない」水です。
お肉や野菜などを柔らかく煮込むのに適しているので、まさにラサ向きの水と言えるでしょう。
水温は10度前後。使う分、持ち帰る分を回収したら泳ぐのも有りでしょう。

なお、妨害要素としてはサソリモンスターが出てきます。
1M程の大きいやつですが、然程強くはありません。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はCです。
 情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。

  • <至高の美味を求めて>ラサの慈悲完了
  • GM名天野ハザマ
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年11月16日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ラダ・ジグリ(p3p000271)
灼けつく太陽
マルベート・トゥールーズ(p3p000736)
饗宴の悪魔
ゴリョウ・クートン(p3p002081)
ディバイン・シールド
フラン・ヴィラネル(p3p006816)
ノームの愛娘
エルス・ティーネ(p3p007325)
祝福(グリュック)
イズマ・トーティス(p3p009471)
青き鋼の音色
サルヴェナーズ・ザラスシュティ(p3p009720)
砂漠の蛇
ウルファ=ハウラ(p3p009914)
砂礫の風狼

リプレイ

●調査せよ、ラサの慈悲
「ぶはははッ、良い水があるって話なら見逃せねぇな! 美味い米を炊くのに良い水は必須だ!」
「歌を聞いた事はあったけど本当の話だったとは……意外と伝承歌も馬鹿にできないもんだな」
「ラサの慈悲、ですか。水そのものにはあまり惹かれませんが、近くに生っているかもしれない果物には興味があります。だって、それほど美味しい水で育った果物であれば、美味しいに違いありませんから。ええ、ぜひ協力させて下さい」
 ネフェルストの街中で、『黒豚系オーク』ゴリョウ・クートン(p3p002081)と『剣砕きの』ラダ・ジグリ(p3p000271)、『砂漠の蛇』サルヴェナーズ・ザラスシュティ(p3p009720)はそう交し合う。
 目的は事前の物資調達と情報収集。カレーの付け合わせも買うつもりだった。
 そして、具体的にはコネを使いネフェルスト~幻想間で活動する商人達に会って回っていた。
「どうも、最近の商売はどうだい?」
「ま、いつも通りだね」
 そんないつもの挨拶から始まる情報収集だが、ラサの慈悲の探索だとラダが言えば誰もが面白そうな顔をする。
 ラサの慈悲。ラサを中心に旅をする者であれば、その話を知らない者はあまり居ない。
 オアシス近辺でもないのに「濃厚な水のかおり」があった所、あるいは過去遭遇したなら出現ポイントその他を聞き込んでいく。
「水があれば動物が集まるし、その姿でもいいかも。大雑把でも地図に結果を書き込んでいけば幾らか場所も絞れるか?」
 この後は依頼人にも接触するつもりだった。親族に伝わる話の他、当時のルートが分かれば万々歳といったところだろう。人生の転機の水だ。もう一度求めたりはしなかったのかとか……聞くべきことは山のようにあった。
 また資料関連があれば、サルヴェナーズの出番だ。
 彼らが持っている資料や近傍の書庫に、ラサの慈悲に関する資料がないかを探していく。
 それだけ豊富な水源であれば、件の商人以外も見ているかもしれない。
 地図やより詳しい伝承が手に入れば、役に立つのは間違いない。
 それが終われば、ラサの料理人に渡りをつけて、ゴリョウと共に情報収集や探索時の食料調達交渉が待っている。
「商人方面はラダ、資料方面はサルヴェナーズ、俺は料理人方面での聞き込み・交渉重視ってわけだ」
「ああ、しっかり情報を手に入れないとな」
 ラサの料理人としても良い水の供給先が増えるとなりゃあメリットが大きいはずだとゴリョウは思う。
 それが常に移動する伝説じみたものであったとしても……いや、だからこそ価値は大きいだろう。
 客らの噂も含めて多くの情報が期待できる。それに、モンスターの修正について調べる必要もある。
 やるべきことは本当に多いが、ラダとゴリョウだけが聞き込みをしているわけではない。
「水というのは料理の基礎にして根源だね。歌にも残る程の名水とあれば美食家の私としては興味の沸く所だよ」
『饗宴の悪魔』マルベート・トゥールーズ(p3p000736)もまた、情報収集の最中だった。
「ラサの慈悲」の手掛かりが残されている歌が他にもないか市街地の道行く人に尋ねて回るのを基本に、歌の他にも何らかの美術品として情報が残っていないか土産物屋やギャラリーのような場所を探るという方法をとっていた。
 何しろ歌になって残っているほどなのだ。そういったものが残されていても何の不思議もない。
(特に絵画のような「目に見える手掛かり」が残っていれば最高だ。想像から作られたのでなければ、信頼性もそう低くはないだろう)
 ラサの慈悲は実在する。ならば資格情報として存在する絵は、その手掛かりにもなるだろう。
 そう考え、マルベートは絵画商の店へと入っていく。
 そうすると……やはりこういう土地柄では人気なのだろうか。
 オアシスを題材にしたものがたくさん並んでいるのが見える。
(さて、この中にラサの慈悲に関するものがあればいいが……)
 その辺りはマルベートの交渉次第だろう。何しろ海千山千のラサの商人が相手なのだから。
「ラサの慈悲……少しだけ聞いた事はあったけれど、まさかそれを探す仕事に巡り会えるとは、ね。ふふ、これもラサの為になる事ならば……奮っていきましょっ」
『竜首狩り』エルス・ティーネ(p3p007325)もまた、これがラサの為になるとあってかなりやる気を見せている。
 事実、今回の調査でラサの慈悲に関する情報を掴めば、それは素晴らしい成果となるだろう。
 何しろ伝説じみた「移動するオアシス」の法則を掴むのだ。これに勝るものは中々ない。
 そして此処ではかなりの名声があるエルスがラサの大商人アルパレスト家の紹介状を駆使しれば、街の商人にエルスを適当に扱う者など出てくるはずもない。
 そうして情報を得ていく中で、エルスはふと呟く。
「こういうものにも歌がある辺りラサの人々は音楽が好きなのだと改めて実感する……」
 それもまた当然であるだろう。
 ラサという場所と音楽は密接に結びついている部分がある。そうした文化なのだ。
「ラサで名水か。まさに幻の水って感じがするな。俺は水の美味しさはよく知らないが……だからこそ、興味がわいてくる。なんとしても見つけなきゃな!」
「そうじゃのう。それにしても……ラサの慈悲か」
『青き鋼の音色』イズマ・トーティス(p3p009471)に、『砂礫の風狼』ウルファ=ハウラ(p3p009914)は何かを思い出すように遠い目をする。
「ラサの砂漠は過酷じゃからのぅ。他国で成功した商人やラサの特産品を他所で見た商人などが砂漠を甘く見て帰らないことはよくあったものじゃ……此度のは運良く帰れた者の、奇跡を知る話か」
 ラサの砂漠は過酷だ。だからこそ、この奇跡の歌が長く歌われてきたのかもしれないとウルファは思う。
「さて、皆も調べてるだろうが……俺たちは俺たちで、歌について調べてみよう」
 歌というより詩のようだが、こういう伝説は意外と事実だったりするものだとイズマは思う。
 故に、依頼人と縁のある人を中心に聞き込みすることでそれを補強できるのではと考えていた。
 水の香り……そこに水がある、と強く感じたことはあるか?
 蜃気楼と共に現れる水源、とか聞いたことある?
 そんなことを聞いて回れば、誰もが「ラサの慈悲」に関することだと気付くらしい。
 勿論、即座に場所に繋がるような情報はないし、あれば逆に疑わなければならないが……。
 そうしてラサの慈悲が過去に出現した場所とその時の状況を地図にまとめれば、次が推測できる。
 そうして集めた全員の情報を統合していけば、ラサの慈悲に繋がるルートが見えてくる。
「ラサの慈悲、かぁ……深緑のお隣さんなラサにとって水が大事なのは、ラダ先輩達ともキャラバンのお仕事したしよーく知ってるよ! 水はあたしたちヒトにも、動物達にも、植物にもーー全部に欠かせない、生命の源。よーし、頑張って探すぞ!」
 そんな『緑の治癒士』フラン・ヴィラネル(p3p006816)の声が響くが、その為のルートも解明されようとしている。
 この聞き込みの間にフランは砂漠対策を行っていた。
 探索中の全員の分の水と、大判の布の購入。そのついでにの露店の人々に「ラサの慈悲について知ってる?」という質問も投げかけている。
 ……ちなみに布についてだが、頭にぐるぐると巻くためのものだ。
 直射日光避けにもなるし、口元は砂埃から守れ。これもラサの知恵というものだ。
 そして水と出会えるように、ウルファとフランで一緒に祈雨術を祈れば……出発だ。
 目指すは、移動する水源「ラサの慈悲」。その目標地点はもう、見えている。

●ラサの慈悲よ、今ここに
「さて、練達の学者どもではないが、砂漠=雨がないは偏見での……確かに少ないが土壌に水が留まらない、が正確なところじゃ」
 そんなウルファの言葉通り、ラサには水源が存在するし「ラサの慈悲」もそうしたものの1つだ。
 集めた多くの情報を統合した結果、「ラサの慈悲」とはラサの地下に存在する水脈が一定のリズムで地上に水を放出し泉を作り出す現象であると判明している。
 それであるが故に数日以内に消え去り、また別の場所に出来上がる。
 調べた「ラサの慈悲」の出現地点から、その地下水脈の大体のルートも測定済。
 そして更にフランの森羅伝心で砂や岩、少しの植物などとも意思疎通してその情報精度を高めていた。
(自然は言葉数多くおしゃべりではないけど、生命の源の水の気配がどっちか……くらいはきっと教えてくれる)
 そう信じて、意思疎通し……仲間の情報を補完していく。
「ふふーん、あたし探しものは得意なんだよ!」
「ああ、助かる。歌にある逃げ水が出るなら昼に探す事になる。皆、倒れないようにな!」
 そう叫ぶラダに、全員が頷く。
 ラサの砂漠の過酷さは幾つもの歌になる程だ。
 暑さと渇き、砂塵によってもたらされる心の弱さ。
 そして、そこに襲い来るサソリモンスターたちは、心弱き者を仕留めるには充分すぎる。
 だが、此処に集まった者達はそうではない。
 ラダはハイセンスで怪しい影や水を探し、マルベートとサルヴェナーズは定期的に飛行して高所からの情報を提供する。
「さ、食事前にお腹を空かせておきましょうかっ!」
 エルスとゴリョウはサソリの接近を許さず、イズマは出来た地図と方位磁針を使って地下水脈のルートから外れないように腐心する。
 そしてウルファも、定期的に地面に耳を付けたりエコーロケーションを使ったりして地中を調査する。
「湧き出る所は不定でも水脈に関しては確認可能なはず……あとは地下の砂の流れじゃ。地下の生物が灼熱を嫌って移動して……はないと思いたいな。恐らく局地的な流砂の後に水が湧き出ると思うが……」
「地図に纏めた情報だと、次はこっちの方角のはずだが……」
「ふむ……」
 そうして手に入れた情報を更に照らし合わせ、ラダたちは一昼夜を進む。
 それは簡単なものではないが、探すべきものの影はもう踏めている。
 ならば、歌のように絶望的な状況とは程遠い。
 そして……ついにラダは、それを嗅ぎ取る。
 濃厚な水の香り。全員で走り寄れば……そこにはオアシスというわけでもないのに、水が湧いている。
 そして水さえあれば1日で花を咲かし実を付けるというラサらしい小さな砂漠イチゴも、その実をつけていた。
「ふむ、この気温でもこの冷たさ、迷い込んだ商人にはまさに命の水であったであろうな」
 ウルファは早速手を浸してみるが……冷えたその水は、分かっていても天の助けであるように思えてしまう。
「オアシスになるには土壌の条件がちと足りぬか? こればかりは厳しいのぅ」
 砂漠イチゴは実が生っても、それ以上は難しいだろう。
 まあ、もしオアシスになるようならラサの慈悲は伝説にはならなかっただろうが……ままならないものではある。
「これで依頼人の分の水も確保だ」
 ラダが受け取っていた水筒に水を満たせば、同じように水筒に水を満たしていたゴリョウがパアンと手を打ち鳴らす。
「協力してくれたラサの料理人らへの土産分も確保したし、ラサらしくカレー及びライスを『料理』するぜ!」
「カレーなら青き祝福の出番だ。香りもいいし、食べられるか不安な食材はこれと水に漬けてから調理するといい」
 イズマは以前の冒険で手に入れた「青き祝福」を示して、ゴリョウも頷き確かめてから受け取りニヤリと笑う。
 初めて見る食材でも使えると分かれば遠慮なく使う。それが料理人というものだ。
「ふむ、折角だし私自身も一品くらいは作ってみよう」
「なら一緒に作るですよ」
 現地調達……ラサ産の野菜を示してみせるチーサに、マルベートは頷きサソリと野菜のスープを作ることに決める。
 ゴリョウもそれを見ながらサルヴェナーズやフランをサポーターにして調理開始である。
 材料は料理人らに用意してもらってたし、マルベートたちのスープとも相性が良い。
 献立としては完璧とは言わずとも上々である。
 あとはラサの慈悲を味見しつつ、食材への対応を修正していくだけだ。
 そしてマルベートとチーサも、即席ながら中々に良いコンビネーションだ。
「先程捕った大蠍の肉を殻ごとラサの慈悲で煮込んで、ネフェルストで調達した野菜と、ハーブ類と塩で煮込んでシンプルなスープを作ってみよう。辛さは抑え目でね。ラサの産物だけで作った純粋な一品という訳だ」
 こちらはあまり濃い味付けもしない。
 ラサの慈悲とラサの食材を存分に使った、そういう代物だ。
 そうしている間にもゴリョウのカレーも出来上がっていく。
「こりゃすげぇ! 浸漬がこんだけ早く終わる水ってのは見たことねぇぜ!」
 肉は鶏、牛、豚、そして倒したサソリもだ。
「サソリ食材にするのか? 本当に?」
 テントを張っていたラダが思わずそう聞いてしまうが、スープにもしっかりと入っているので覚悟してほしい。
「食材の馴染みが良いから、作りたてでありながら一晩置いたかのような深みが感じられそうだな!」
「ラサのお水なんだもん、絶対その土地のご飯と合わせるのが最適なはず!」
 フランもゴリョウの手伝いをテキパキと進めていく。
「料理は食べる方が得意だけどちゃーんと手伝うよ!」
 エルスも動いているが……こちらはお茶の用意だ。
「ラダさんやフランさんには以前出した事もあったわよね。カレーにはチャイ、それもスパイスチャイがお勧めかしら。幻の名水で入れるチャイ……仕上がりが楽しみね。あ、勿論他の茶葉も用意してあるわよ」
 水をそのまま飲むのもいい。けれど、名水で淹れたお茶が美味しいのは言うまでもない。
 そして……調理が進んでいる間、イズマは水の中に潜っていた。
 地下水源から水が沸いているのはもう充分に理解できた。
 しかし、実際に見なければ分からない事もある。
「水がどこから湧いてるか、水中に何があるか、直接確かめたいから……失礼するよ」
 移動してたら何もないか、それとも何か沈んでたり生物がいるか。
 依頼人へのお土産話にするのと……美味であり大切な水であるラサの慈悲を守るために、知りたいのだ。
 そうして潜ってみると……イズマは、キラキラと輝く何かを見つける。
「あれは……?」
 それは七色に輝く、小さな魚のような何か。しかし尋常の生物ではない。
 もしかすると神獣の類だろうか……?
「おーい、出来たぞー!」
 上から響いてくる仲間の呼ぶ声に、イズマはハッとして。その一瞬で、魚は消えてしまっている。
 ……なるほど。この水の美味しさには、本当に伝説的な何かがあるのかもしれない。
 その神秘を垣間見て、イズマは水上へと戻る。
 そうしたら、早速料理の実食である。
「さて違いを私の舌が分かるか心配だが――いただきます」
 そんなことを言っていたラダも、カレーを一口食べればすぐにパッとその表情が明るくなる。
「うわ、肉柔らかい。スパイスの風味もしっかりして美味しい。ゴリョウの腕が良いのもあるけど違うものだな」
 マルベートのスープを飲めば、その味にも驚くばかりだ。
「エルスの茶もいいね。茶会で飲んだのだって美味しかったのに。あ、私ライスとパン両方で食べたい。パンもここで作れたら良かったな。水持って帰ったら店に頼めるかな」
「ぶはははッ、喜んでもらえて料理人冥利に尽きるな!」
「ゴリョウさんの料理は格別! 以前は蟹料理を頂いたけれども、また頂けて嬉しいわっ」
 ゴリョウが笑い、エルスも笑う。
「ああ……やっぱり水で全然変わる。これはこれでいい感じだわ……ふふ、これだから呈茶はやめられないのよね」
 エルスはそう言うが、他の全員も同じ感想のようだった。
 同じ茶葉であろうと水で味は変わる。茶とは、斯様に奥深い。
「うん、美味しい。いくらでも食べられそうだ! 純粋で、余計な味もなく、料理の美味しさが際立つ……そんな感じ?」
「その通りだね。気にいって貰えて嬉しいよ」
 イズマにマルベートもそう答え、カレーを口に運ぶ。
「楽しくなってきたらダンスタイムみたいだし、あたしは歌うぞー! ……え、なんで耳塞ぐのー!?」
「はいはい、踊るですよ」
 全員の反応に何かを察したチーサがフランを引っ張って。
「ほらラダ、どうぞセンターで踊って下さい。無事に見つかったのは、貴女が先頭に立って情報を集めてくれたお陰なのですから」
「私か?」
 困惑しながらも、サルヴェナーズに腕を引かれたラダが音楽に合わせて踊りだす。
「……うむ、いいものじゃな」
 それを見ていたウルファも踊りの輪に加わって。
 自然と全員が踊りだし歌いだす。
 ラサの慈悲は確かに今日この日、その存在を強く世に示して。
 カレーは美味しく、ダンスも歌も大いに盛り上がったのだった。

成否

成功

MVP

ラダ・ジグリ(p3p000271)
灼けつく太陽

状態異常

なし

あとがき

コングラチュレーション!
カレー美味しいですよね!
天野はビーフカレーとか大好きです

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