PandoraPartyProject

シナリオ詳細

キャンプファイヤーしようぜ! 薪はお前の屋敷な!

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 幻想貴族フェッティン卿は……一言で言うと悪人であった。
「ゲハハハハ。今日の貢ぎ物はどうなっておるか?」
「ハハッ、旦那様……ラサの商人よりまた商売を融通してくれと此方が……」
 言を紡ぐ執事が主へと差し出したのは――所謂『山吹色の菓子』だった。
 賄賂。そう、フェッティン卿はこういった類を平然と受け取る人物なのだ――
 自らの懐が潤うならば優遇しよう。
 逆に自らを軽んじるのであれば徹底的に商売でもなんでも妨害してくれる……
 子悪党と言うに相応しい人物だが、それでも貴族社会たる幻想王国では貴族であるが故にある程度の行いは許されている……というよりも黙認されているのも確かであった。或いは彼は金をばらまいて憲兵辺りを黙認させているのかもしれないが……
 いずれにせよ彼は好き放題に生きている人物と言える。
 民など顧みぬ。
 重税を課し、文句を言って来たのならば兵を繰り出してやる様な者でもあって。
「よーし、金庫に入れておけ。
 ククク……これでまたワシの秘密財産も潤うと言うものよ……!!」
 そして彼は蓄えた財産で豪邸をも築き上げた。
 広い敷地。贅沢の極みとも言える輝かしき装飾に包まれている建物。
 金で出来ている場所もあるのか、文字通りに黄金の輝きも秘められている。
 これほどの豪邸……一体どれほどの資金が投入されたのか。
 分からぬが、しかしそれら全て『汚い金』が礎になったのは違いあるまい――
「ゲハハハハ! 今度はもっと改築してやろうかの――ゲーハハハハハ!!」
 相も変わらず汚らしい笑い声も響かせるフェッティン卿。
 彼は正しく人生の絶頂期にあったといえるだろう――

 この日までは。

「……んっ? なんぞや騒がしいの。どうした! ワシの屋敷で何を騒いでおるか!」
 しかし、気づいた。何やらいつもと様子が違うと。
 もうこの後は部屋に戻って休もうと思っていたのに……何事なのか。
 苛立ち、部屋の扉を荒々しく開けば――そこに至った衛兵の一人がいて。
「た、たたたた大変です旦那様!!」
「煩いぞ! 一体何事か!! ワシがもう眠るというこんな深夜に……」
「その、実は、その――火事です!! 屋敷内で火事が発生しております――!!」


 『ソレ』は依頼であった。
 数日前――ローレットへとある人物がやってきて。
「フェッティン卿の豪邸を全て燃やし尽くしてほしい。
 方法は問わない……が、フェッティン卿は死なないようにしてくれ」
「――どうしてそのような?」
「腐っていても貴族の死というのは、存外面倒な事態を引き起こしたりもするのだよ」
 彼は名を名乗る事はなかった。
 もしかしたら対立している貴族かもしれない。或いは抑えられている憲兵の中で、不満に思った者が依頼として持ち込んできたか……それとも賄賂を断り嫌がらせされた商人か、重税を課されている民の誰かか……あまりにも候補が多すぎる。
 が、依頼人の素性はこの際誰でもいい。
 とにかくフェッティン卿の屋敷を燃やせばよい、と。
「当然、屋敷にはフェッティン卿の私兵がいる。侵入まではどうにでもなるかもしれないが――火を放った後は私兵共が消火なり、放火だと気づけば侵入者がいないか探し出したりすることだろう」
「火をつけてすぐ撤退、ではだめなのか?」
「……あの屋敷はあまりにも『広すぎる』んだ。
 一か所に火をつけた程度では消火が先と言えるレベルでな」
 つまり、消火の妨害が必要だったり、別箇所にも火をつける必要がある訳か。依頼主の目的は『屋敷の全焼』……それを成すにはある程度現場に留まる必要があるかもしれない。
「フェッティン卿はクズだ。クズの屋敷を燃やしても恨みに思う奴はいないだろう……が、もしも曲がりなりにも貴族の屋敷に火を点け『それを目撃』されれば、フェッティン卿の嫌がらせで悪名が轟く事もあるかもな」
「――余計な事を言われたくなければ顔を隠せと」
「まぁ気にしないなら存分に暴れてもらっても結構だが」
 ただ燃やしただけならば悪党をぶちのめした英雄として。
 しかし悪党に目撃されれば悪名の噂が流される――か。
「やれやれ。バカデカイお屋敷をキャンプファイヤーとは……腕が鳴りそうだ」

GMコメント

 キャンプファイヤーしようぜ! 薪はお前の屋敷な!
 そんな依頼です、よろしくお願いします!!

●依頼達成条件
 フェッティン卿の屋敷を全焼させる事!

●フィールド
 フェッティン卿という貴族の大豪邸です。
 めっちゃくちゃ広いです。この豪邸、あらゆる汚い金を注ぎ込んで作られたのだとか……素晴らしい装飾に、実際に金を使っている場所もあるのか、黄金の輝きに包まれている場所もあります。

 ――しかしあまりにも広いので、一か所に火をつけた程度では燃え広がる前に消火される事でしょう。何か所かに分かれて火を付けたり、消火の妨害などを行わなければ『全焼』のオーダーには添えないかもしれません。

 時刻は夜。シナリオは侵入段階から始まります。が、敵は誰かが侵入してくることを想定してないのか警備もダダ甘ですので、とりあえず侵入までは容易でしょう。ちなみに屋敷は大雑把に以下の特徴があります。

・北側:フェッティン卿の私室とかがあります。財産金庫もこの辺りに……?
・東側:図書室とか厨房とかいろんな部屋があります。
・西側:使用人の部屋とかあるみたいですが、広すぎて空き室も多々みたいです。
・南側:正面入り口方面。中庭とかのスペースが多いです。動きやすいかも。

●敵戦力
・フェッティン卿
 幻想貴族にして滅茶苦茶評判の悪い貴族です。
 民には重税。賄賂は日常茶飯事。自らの懐を潤す事には余念のない人物です。
 ただし彼が殺害されると残った領地がどうなるとか揉めに揉める事が予想されるので、依頼主から『屋敷を燃やしても死なないように(殺さないように)してくれ』との事です。
 なお戦闘能力はないのでぶん殴ったらすぐ倒れます。

・衛兵×??
 フェッティン卿の私兵たちです。戦闘能力はまちまち。
 数もそれなりに多いのですが……屋敷の方が広すぎです。全域を徹底的にカバー出来る程はいないみたいなので、混乱が発生すれば分散したりすることでしょう。ただし、確実にイレギュラーズ達よりは数が多いので取り囲まれると少々厄介かもしれません。

●備考
 本シナリオでは基本的には通常の名声が付与されますが、シナリオの展開によっては『悪名』が付与される可能性が御座います。具体的に言うとフェッティン卿に『顔』を目撃されると悪名になります。
 フェッティン卿以外にも多くの衛兵などに顔が目撃されると『悪名』が増える可能性がございますので、ご注意ください。

  • キャンプファイヤーしようぜ! 薪はお前の屋敷な!完了
  • GM名茶零四
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年10月31日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

キドー・ルンペルシュティルツ(p3p000244)
社長!
サンディ・カルタ(p3p000438)
金庫破り
シューヴェルト・シェヴァリエ(p3p008387)
天下無双の貴族騎士
リュコス・L08・ウェルロフ(p3p008529)
神殺し
ライ・リューゲ・マンソンジュ(p3p008702)
あいの為に
チュチュ・あなたのねこ(p3p009231)
優しくて不確かなすべて
ブライアン・ブレイズ(p3p009563)
鬼火憑き
嘉六(p3p010174)
のんべんだらり

リプレイ


「おうち燃やしてキャンプファイヤーしていいってふとっぱらだよね。でも、家の人に気づかれたらだめって……サプライズなのかな? じゃあとびっきりビックリさせてあげないとダメだよね!」
 無邪気な様子で語るのは『うそつき』リュコス・L08・ウェルロフ(p3p008529)だ――その目は純粋な輝きを秘めていた。そうなんと彼女……気づいていないのだ。キャンプファイヤーというのは比喩であり、これは只の放火であると……!
 てっきり彼女はサプライズパーティか何かなのかな? としか思っていない。
 規模の大きい、中々出来ない貴重なキャンプファイヤーだと。わーい!
「楽しみねぇ。リュコスはお芋を焼くの?」
「うん! 火がね、つよくなってきたら、やっぱりやきいもパーティーかなって!」
「そう――ふふ。そうよね、楽しみよね。あっ、そうだ焼き林檎あるけれど、食べる?」
「たべる――!!」
 同時。リュコスと同様に屋敷の南側から侵入しようとしているのは『優しくて不確かなすべて』チュチュ・あなたのねこ(p3p009231)だ。貴族の屋敷を盛大に燃やせだなんて……中々ない経験である。年甲斐もなくワクワクしてしまいそう――
 秋の落ち葉を箒で掃いて、屋敷の近くへと寄せようか。
 ふふ。キャンプファイヤーをする為には準備が必要なのだから……
 リュコスは開いている窓から内部に侵入。気配を殺し、警備の兵に見つからぬようにしながら――こっそりと奥へと入っていく。すぐれた三感が彼女の行く手を切り開けば、警戒の薄い屋敷を進むなどお茶の子さいさい。
 そしてチュチュは時計を見る。ポケットに入れていた懐中時計を。
 この針が目標の時刻を刺した時――一斉に行動する。
 進む針。一つ、また一つとゆっくり時を刻んで――

「それじゃあ……乾杯」

 瞬間。彼女は集めた落ち葉に火を点けた。
 ――燃える。この時期の落ち葉は、濡れてさえいなければ薪替わりに優秀だ。
 上がる黒煙。さてさてこれが成った以上、警備の兵もやがて気付くだろうが……
「炎ってのはイイよなァ……バチバチと木の爆ぜる音をBGMに、揺らめいて立ち昇る赤色を見りゃ心も落ち着くってモンよ。自然の発する音ってのは不思議なもんだよなぁ――その上、火元がイケ好かねぇ貴族の屋敷だってンならサイコーの道楽だろ!?」
 別に火を点けているのはチュチュの場所だけではない――西の方では『鬼火憑き』ブライアン・ブレイズ(p3p009563)が大量の『火種』を持ち込み、準備を進めていた。
 それは油、木材、藁……後は酒……いや、酒は少し勿体ないだろうか?
「ハッ! まあいいさ、大盤振る舞いだ! ケチケチしてても仕方ねーってな!!」
 だが今更頓着しても――どうせ最後には全部燃えるのだ!
 西の空き部屋で撒き散らして着火。持ち込んだそれらが一気に燃え盛る。
 しかし警備の野郎どももやる気のない事だ。それなりの量を運び込んだというのに、ほとんど気付く気配が見られなかった――なんだったら名目をゴマンと並べて煙に巻く用意もったのだが。
 横領した資材、表沙汰に出来ない預かりブツ、本来存在しないモノ……
 薄暗い事情ある貴族であればにおわせるだけで勝手に察してくれる者もいよう。
 まぁ、屋敷の方が広すぎて迂回自由に隠れるも自由なれば余裕か。
「無駄話も多いこったしな。ま、悪徳貴族に仕えてる連中なんざ忠誠心もたかが知れてるか」
 同様に西側から侵入を果たしていた『横紙破り』サンディ・カルタ(p3p000438)も火付けまでは左程の苦労もなかったものだ。あまりにも薄い警備の隙間を突くことが出来た上に、壁を透過する術をもあれば――部屋間の移動も容易い。
 いや、警備が薄いのはまだしも……あちこちでサボっている様な奴がいたのも情報収集に最適であった。聞き耳を立ててみれば主への不平不満ばかりが中心で、有益な情報ばかりとはいかなかったが……しかし一部には掃除をもう何日もしていない部屋があるなどの話もあった。
 ――つまり火を点けても発覚が遅れそうな地点があるという事だ。
 一分だろうが一秒だろうが消火が遅れれば……火事は甚大となる。
「後は……どうすっかな。使用人とかが気付いても困るし、このゴキブリ大作戦でもするか……? 貴族の屋敷にこんなのが出たら威信にかけてでも潰すだろ……おっ、潰すと言えば水場潰しにも行っておくか。ちっとでも遅れさせることが出来れば良し、ってな」
 故に彼もまた策を巡らせる。ここに至る前までに捕まえていた虫――というかゴキブリ――を放てば混乱が巻き起こせるのではと。ゴキブリ騒ぎで使用人が集まっている間に放火すれば時間稼ぎにはなろう。
 次いで向かうのは水をため込んでいる場所など、だ。
 主に東側――厨房などを使っている地域にそういうのは集中している様だが、西にもゼロという訳ではあるまい。そこを潰さんと思考を巡らせていれば。

「まー人様のこと、とやかく言える人生ってワケでもねーけど。
 依頼なんで燃やすわ。悪徳貴族殿には悪いが、運が悪かったってことで。
 ――いやこれも巡り巡っての因果ってヤツかねぇ」

 その東側には『特異運命座標』嘉六(p3p010174)が侵入していた。
 厨房エリアへと潜入。出火予定時刻の前に少し漁らせてもらうとしよう――
 これも火を燃やされる様な依頼を出される貴族が悪いという事で……おお、これは高そうな肉ではないか! 牛に豚に鳥に……中々の品である。流石に全部ごっそりとはいかないが、手に持てる分だけでもと彼は拝借して。
「後は……さてどうるかね。厨房に火でもつけてたら燃えうつらねーだろうか」
 ガスか何かでも使っていれば、と思ったが。ここの中世的な設備では難しいか……? まば爆発はしなくとも、燃え盛る種にでもなればと――
 ――同時。こちらへと近づいてくる足音を感知する。
 衛兵の類か――ならばと動き出すのは『竜食い』シューヴェルト・シェヴァリエ(p3p008387)であり。
「――暫くの間、眠ってもらおうか」
 瞬間。彼が行うは壁越しの一撃――
 瞬間的に呪いの力を武器に集中させ、呪詛の力を形としたのだ。
 刹那の抜刀。壁に直撃し、衛兵を襲撃。大声を上げる前に制圧せん――
「ひひっ。悪いね、まぁ寝てる間に全部終わってるさ――
 俺はちと図書室にでも行ってこようかね。初版本やら凝った装丁の値打ちモンやら……
 まぁとにかくなにかあんだろ!」
 そして。金の亡者ならば『そっち』にも投資しているのではと推察するのは『最期に映した男』キドー(p3p000244)だ。このゴタゴタの間にちょっとばかし漁らせてもらっても悪くはあるまい――屋敷が全焼すればどのみち盗られたか燃えたかすら分からないのだから。
 そして皆が時計を見据え、行動を開始する。
 チュチュが懐中時計を見た頃と同じタイミングで、火を放つのだ。
 さすれば全てはこの悪徳の屋敷を呑み込み――何もかもをなくしてしまうのだろう。
 それが依頼主のオーダーであれば……


 キャンプファイヤー。それは、ああ実にいい文化だ。
 一つの炎を囲んで語り合ったり踊ったりの楽しい時間を過ごす……
「ましてや今回、これほど巨大なキャンプファイヤーをする機会に恵まれようとは――
 神も喜んでおられます。いえそればかりか、神の眼にもきっと留まる事でしょう」
 屋敷の北側で微笑むのは『あいの為に』ライ・リューゲ・マンソンジュ(p3p008702)だ――彼女は北側から内部へと侵入し、口八丁手八丁でこの火事とは『無関係』な人物である様に装っていた。
 敬虔で優しいシスターであると――フェッティン卿の息がかかった者と――
 彼女の演技は真に迫っており、その嘘を見破るは容易ではない。
 元より警備のやる気も薄い者達では言いくるめられるものだ――
 そして彼女は悠々と歩く。火事が広がりつつある屋敷を、ゆっくりと眺めながら。
「か、火事だ――!! 急げ、消すんだ! ……むっ? そこにいるのは誰だ!?」
「あっ……た、助けてください……実は、フェッティン卿に招待されていたのですが、この火事で……どうやって避難したらよいのか分からなくて……先導をお願い出来る人も居なくて……」
「なんと――ではこちらへ! 裏門がそこにありますので、そこが一番近……ぐぁ!?」
 さすれば、衛兵の一人と出会ってしまうものだが――ここでも彼女の嘘は通ずる。
 あまりにも堂々とした演技に騙されてしまったのだろうか、簡単に隙を見せてしまって……故に銃撃。ああだが命までは奪うまい――だって。
「殺さずにおいた方が、衛兵の方々の手が取られますものね?」
 微笑む。そして、動けぬ様に両足を撃ち抜いて――彼女は再度歩みを進める。
 真っ赤に燃える楽しいキャンプファイヤーだ――
 屋敷の中の皆さんも大騒ぎして楽しんでらっしゃるようだし、ふふ。もう少し盛り上げてみましょうかと。
「ハッハー! イージーゲームでも手加減はしねえぜ!
 恨むんならお前さんらの主人が世渡り下手なのを恨むんだな!!」
 更にブライアンも衛兵を相手に立ち回るものだ――
 炎がデカくなるまでのごく短い間だけでも敵の妨害をすればそれでよし。まぁこの勢いであればここまで積極的にせずとも波打つように広がっていくかもしれないが……しかしわざわざ加減をしてやるというのも性ではない。
「ええい、貴様何者だ! 出会え出会え曲者だ――!!」
「ああ……なんだか集まってきやがったな。そういや顔を隠せとかなんとかも言ってた様な……てかメンドクセぇな! 全員ねじ伏せちまえば問題ねーだろ!!」
 拳一閃。全てをマトモに相手取るつもりはないが――今更必死に逃げて顔も隠す気はない。火付けをしたのに良い人扱いされるのもおかしい話なのだから――悪名上等である!
「うんしょ、うんしょ……わぁ。みんな、喜んでくれてるなぁ!
 ふふ。じゃあ始まったって、もっともっと教えてこなきゃね!」
「待って――あの人たちは疲れてるのよ。だから、見せない方がいいわ」
 え、そうなの? と。内部に忍び込んであちこちで『キャンプファイヤー』を開始したリュコスは、チュチュの言に疑問符を浮かべる。だけれども、すぐに『そっかー』と納得してしまった様子で。
「じゃああんまり大きな声がきこえないように、もっと遠くに連れてった方がいいね……
 おうちの人はおやすみ! ゆっくりしていってね!」
 だから背後から強襲する。頭を一撃、あくまで命を奪わぬ程度の威力をもって……
 そして出口の方へと連れて行く。或いは広いお庭の方にでも、よいしょ。よいしょ。
「た、助けて下さい!
 私達の猫が、お屋敷の中に入っていっちゃって、それで、それで……!
 ああ! あの部屋の窓に、窓に!!」
 次いで、チュチュはその様子が見られないようにと――近くで活動していた衛兵の一人に泣き真似一つ。飼い猫が迷い込んでしまったと迫真の涙声を絡めれば……
「き、危険だ! もうあそこは大量の火が……残念だが、もう」
「火を止めるまで待ってたら、猫が死んじゃうわ! 助けに行ってくれないなら、あたしが行く!」
「ま、待つんだ君! おーい!!」
 彼らを攪乱する為に、わざと飛び込む様な振りをしてみせる。
 勿論彼らの指揮を引っ掻き回す為だけのモノ――無論、幾度もは通じぬだろうが、一度でも誤魔化せれば上々だ。本格的な戦闘はどうしようもなくなった時でも良く。

「おおお……ワシの、ワシの屋敷が~~!! どういう事じゃこれは!!」

 直後。なんだか随分と特徴的な声が響いたと思えば――それは屋敷の主、フェッティン卿であった。ご自慢の屋敷が……まぁまだ全部ではないが燃え盛っている事に『信じられない』という表情を自らの部屋の前で浮かべていて。
「さて……『死なせない』というのは配慮する必要があり面倒であるが、止むを得んだろうな」
 そこを襲撃したのがシューヴェルトである。
 聞き耳を立てていた彼はフェッティン卿の存在にいち早く勘付いた。故、顔を見られぬ様に仮面をつけて――一閃。無論、これも命奪わぬ一撃であり……目的はその意識を刈り取る事。
「き、貴様何者だ! フェッティン卿が危険だ――!!」
「おっと。流石に周囲に警護の者ぐらいはいるか……しかし想定していた事ではある。
 この刃が見えないのか! 屋敷の主人の命が惜しかったら道を開けろ!」
 であれば。すぐさま警備に気付かれる、が。フェッティン卿の首筋に刃を突き立てる様な仕草を見せれば――牽制出来るものだ。悪徳貴族とは言え、曲がりなりにも貴族の地位にある者が危険であれば早々危険な踏み込みはしてこないだろうと。
 そうして時間を稼いでいる間に――火は更に広がる。
 ブライアンの撒いた油などで特に西側の火災が著しい……そして消火が遅れれば遅れる程に火は勢いを増すものだ。初期段階で鎮圧できなければ後は加速度的に崩壊が早まっていき。
「おっとっと……マージで数が多いな。けど、悪ィけど捕まるわけにはいかねーな」
 そしてそろそろ頃合いかと嘉六は撤退も視野に入れ始める所だ。
 追って来た衛兵を愛用のリボルバーの引き金を絞り上げ――一発。
 長居したらこっちが丸焼きになってしまう所である。良い所で外に出なければ、と?
「こんな所で何してるんだ? な、良い子だからンなことやめて外に出な?」
 直後。必死に消化活動に努めんとする使用人あらば――彼のキセルより出でる煙が、彼らの判断能力を奪わんとするものだ。平時であれば効かぬかもしれぬが……非常事態の最中の、しかも只人など焦燥の感情で一杯である。
 通じれば外へと誘導し、駄目でも――まぁ気絶させる程度にシバいて外に放り出すか。
「げげげ、図書室で奥にあった秘蔵所探ってたら警備兵とカチ合わせちまった!!
 あー! クソ、やめろ俺の戦利品が、あっ、アッ――!!」
 一方で。図書室の方で火事場泥棒していたキドーが、運悪く大量の警備兵に追い立てられていた。弓矢を放たれ、大量の本を包み込んでいた布が破け、アッ――!! この野郎チクショ――!!
 だがまずい。この数は本当に相手が出来ない。
 屋敷が広いだけで警備兵の数がイレギュラーズと比べて少ないわけではないのだ――
 が。その警備兵の横っ面へと衝撃が加わる。それは。
「おーい、そろそろ逃げるぞ! ここまで燃え広がればもう十分だろ!」
 サンディだ。強盗サンディスタイルが、警備兵どもを纏めてガンガンぶん殴る――
 さて火事が順調なのは良いが、しかし重要なのは逃げる事まで、だ。
 残れば火事に巻き込まれ、或いは捕らえられてしまう危険性もあるのだから……陸鮫を駆って脱出しないかを確認していき。
「え、もうかえるのー? やきいもパーティの途中だよー?
 ホラ! 中はホクホクしっかりとできてるんだよ~みんなでたべない?」
「いいわね――でも、ホラ。そういう楽しみは住んでる人達が一番楽しまないと、ね?」
 であればもう焼き芋パーティモードに入っていたリュコスは、あちちと言いながら焼き芋を堪能している真っ最中であった――しかしチュチュに宥められながら、帰り支度の準備を始める。
 そしてシューヴェルトもフェッティン卿を外の安全な所で捨ててくれば逃走一択。ブライアンやキドーも折を見て撤退を始めており、嘉六も合流すればさぁ外へ――か?

「ふふふ……しかし、この時を待っていましたよ。
 火事が最大限広がる前なら……もうこんな所にも構っていられないでしょうから」

 しかし。その中で――ライはまだ屋敷に残っていた。
 いる場所はフェッティン卿の私室だ。火の回りが本格的になってきたが故に、皆が退避している……ものの、だからこそこの資質や財産金庫から中身を一部保護せんと努めているのだ。
「世界は金ではなく人々の愛で営まれるものです。
 ですが……無為にこの世から財が失われる事もまた、神は喜びません。
 これらは活かされるべき場所に行くべきなのです――」
 火が回ってくる。熱波と煙が彼女の身を蝕むが、そんなことは些細だと。
 そして遂に金庫が開く。その中には幾つかの資金が……
 持てる限り盗って……違う。正当な保護の為に確保していこう。
 これも彼女の優れし演技と腹芸の数々があり北側に長く留まれていたが為。
「ふふ――キャンプファイヤーとは、本当に楽しいですね。これならばまた行ってみたいものです」
 崩れる。屋敷の各所が。
 最早この段階まで火が広がってしまっては……消しようがない。
「ワ、ワシの屋敷……そんな、馬鹿な……あれだけの私財が……私財がぁあああ~!」
 外の方で響く絶叫は――フェッティン卿のモノか。
 彼の権力の象徴は失われた。後に残されたのは巨大なキャンプファイヤーの跡のみ……
 悪は潰え。楽しい楽しいキャンプファイヤーは――これにて幕を迎えたのだった。

成否

成功

MVP

ライ・リューゲ・マンソンジュ(p3p008702)
あいの為に

状態異常

キドー・ルンペルシュティルツ(p3p000244)[重傷]
社長!
ライ・リューゲ・マンソンジュ(p3p008702)[重傷]
あいの為に

あとがき

 依頼、お疲れさまでしたイレギュラーズ!
 いやー……壮大なキャンプファイヤーでしたね! うんうん! キャンプファイヤーはイイモノですよ!

 ありがとうございました!

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