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シナリオ詳細

<Closed Emerald>追うもの、追われるもの

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●翡翠国にて
 翡翠国の異変――それは、『余所者』達による攻撃であった。
 余所者、つまり翡翠の外より来るものは、各地の『大樹』を襲撃。危機にさらされた大樹たちの嘆きが、怒りが、防衛機構となったし乱したものが『大珠の嘆き』であるというのだ。
 現出した大樹の嘆きに襲われる、翡翠国の大地。その対応について翡翠国の住民たちも、過激派と穏健派にわかれ、翡翠国を完全に閉ざすべきだ、いや、外と協調して危機を脱すべきだ、と議論と言葉をぶつけ合う。
 分裂する、翡翠国――このままでは、翡翠国は内乱に発展し、静かな緑の大地は破滅へと向かってしまうかもしれなかった……。

「つまり……余所者たちとは、『バグ』とやら……世界の敵であるというのか」
 ルドラ・ヘスは特異運命座標たちへとそう告げる。森林迷宮をかけ抜ける、2台の馬車。その内の一台に同乗していた特異運命座標たちは、静かに頷いた。
 昨今の翡翠国の異変により、過激派に属する者たちと穏健派に属する者たちは一触即発の様相を呈し始めていた。このままでは、実際に武力衝突が発生しかねない。
 そのため、ルドラ達森林警備隊たちは、その調停に乗り出していた。もちろん、森林警備隊たちの内部にも、過激派、穏健派、そのどちらかに所属する者たちがいる。そう言ったもの達は積極的な協力を避けていたが、とにかく今は、動けるもの達だけで行動を起こすしかない。
 今回解く運命座標たちは、ルドラの依頼を受け、ウェザン集落の穏健派たちの移送と護衛のクエストを受けていた。穏健派たちは、近々過激派たちの説得へと移るらしい。その前に、何らかの事故……あまり想像したくはないが、過激派による攻撃など……を避けるために、こうして事前の移動を行っているわけだ。
 ……クエスト、と、先ほどは言った。そう、これはシステムから発令されたクエストだ。<Closed Emerald>なるイベントに属する。そして、このクエストにおいては、『不測の事態発生の可能性あり』との文言が踊っていた。何が起こるか、わからない。特異運命座標たちは気を引き締めて、このクエストに臨むこととなる。
「貴殿らは、そのバグと戦う者たちなのだな」
 ルドラの言葉に、特異運命座標たちは頷いた。ふむ、とルドラは唸る。
「世界の敵か……スケールの大きな話になってきたようだが、しかし今は翡翠国のために力を貸してほしい」
 そう言うルドラへ、特異運命座標たちは頷く。どのみち、敵の目的を挫くことがR.O.O世界のためであるならば、翡翠国を守ることはすなわち敵へのカウンターとなるはずだ。
 ……と。その刹那、周囲の空気が変わったことに気づく。ルドラも不審そうに、辺りを見回している。
「なんだ、この気配は……?」
 ――途端! 大地が盛り上がり、馬車を大きく弾き飛ばした! 荷台の馬車はもみ合うように空中を舞うと、大地に叩きつけられる!
 視界が回転する中、特異運命座標たちは転げ落ちた馬車から飛び出した。もう一台の馬車へと視線を送れば、森林警備隊たちが中から穏健派の人々を助け出している。どうやら、無事であることに間違いはないようだ。一瞬、胸をなでおろしてから、辺りを警戒する。
「……! 何事があった!?」
 ルドラが弓を構えて、辺りを見回す――同時、再び足元が揺れた。ぐらり、と大地が盛り上げるや、中から飛び出してきたのは、岩でできた巨大なモグラのような怪物であった!
「これは……大樹の嘆きか……!?」
 鉱石モグラは轟、と声をあげる。途端、地面が盛り上がるや、二体の鉱石モグラがさらに姿を現したのだ!
「くっ……まだどこかの大樹がやられたのか!? しかし、こんな所までくるとは……まるで、我々を狙っているかのように……!」
 計三体の鉱石モグラが、轟、と吠え声をあげながら大地より飛び出した。此方を囲むように散開する鉱石モグラ。統率はとれている様だ。
「……もしこいつ等が我々をおってきたのなら、目的はまさか、穏健派の人々か……!?」
 ルドラがもう一体の馬車へと視線を移す。警護の森林警備隊たちが穏健派の人々を守るように布陣するが、彼らだけでは心もとないだろう。
「特異運命座標殿、貴殿らは鉱石モグラの相手を頼む!
 私は穏健派の方々の護衛にうつるが……もし指示があるなら伝えてほしい! 貴殿らの指揮下に入ろう!」
 ルドラの言葉に、特異運命座標たちは頷く。鉱石モグラたちはこちらを逃がすまいとするように、その両手を大きく広げ、酢ルド爪を振るった。周囲の木々が切り裂かれ、その凶悪な一撃を喰らえば、一般人ならひとたまりもないことを予感させる!
 特異運命座標たちは意を決すると、この強力な敵を迎え撃つべく武器を構えた!
 さぁ、この状況を突破し、生き残るのだ!

GMコメント

 お世話になっております。洗井落雲です。
 ルドラ・ヘスと協力し、大樹の嘆きを突破してください。

●成功条件
 穏健派の幻想種が一名以上生存している状態で、すべての鉱石モグラを撃破する。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はCです。
 情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。

※重要な備考『デスカウント』
 R.O.Oシナリオにおいては『死亡』判定が容易に行われます。
『死亡』した場合もキャラクターはロストせず、アバターのステータスシートに『デスカウント』が追加される形となります。
 現時点においてアバターではないキャラクターに影響はありません。

●重要な備考
 <Closed Emerald>には敵側から『トロフィー』の救出チャンスが与えられています。
 <Closed Emerald>ではその達成度に応じて一定数のキャラクターが『デスカウントの少ない順』から解放されます。
 但し、<Closed Emerald>ではデスカウント値(及びその他事由)等により、更なるログアウト不能が生じる可能性がありますのでご注意下さい。

●『パラディーゾ』イベント
 <Closed Emerald>でパラディーゾが介入してきている事により、全体で特殊イベントが発生しています。
 <Closed Emerald>で『トロフィー』の救出チャンスとしてMVPを獲得したキャラクターに特殊な判定が生じます。
 MVPを獲得したキャラクターはR.O.O3.0においてログアウト不可能になったキャラクター一名を指定して開放する事が可能です。
 指定は個別にメールを送付しますが、決定は相談の上でも独断でも構いません。(尚、自分でも構いません)
 但し、当シナリオではデスカウント値(及びその他事由)等により、更なるログアウト不能が生じる可能性がありますのでご注意下さい。

●状況
 森林警備隊隊長ルドラの依頼を受けて、穏健派の幻想種たちの移動を護衛していたあなた達特異運命座標。
 その道中、大樹の嘆きと呼ばれる怪物に襲われ、馬車を破壊されてしまいます。
 まるで何者かに操られるかのように、大樹の嘆きたちはこちらを逃がすまいと包囲し、攻撃を仕掛けてきました。
 このままでは、全滅……特に穏健派の幻想種の命が失われれば、過激派との話し合いに支障が出るかもしれません。
 皆さんは、この状況を打破し、穏健派の幻想種たちの命を守り、大樹の嘆きを撃破する必要があります。
 作戦決行時刻は昼。あたりは充分広いですが、鉱石モグラの影響で、地面が少々隆起しており、動きづらいかもしれません。

●エネミーデータ
 鉱石モグラ ×3
  鉱石の身体を持った、モグラのような巨大な怪物です。鋭い爪による物理攻撃や、身体の鉱石をぶつける中~遠距離攻撃などを得意とします。
  見た目通りに防御技術とHPは高いです。半面、特殊抵抗はやや低め。BSが通りやすくなっています。
  ブレイクを持つ強力な一撃や、BSとして『出血系列』を持ちます。

●味方NPC
 森林警備隊護衛兵 ×3
  森林警備隊所属の警備兵です。今は、穏健派の人々の護衛を行っています。
  弓による攻撃と、簡単な回復スキルを持っています。積極的に戦闘には参加しませんが、身を守ることくらいはできるでしょう。

 ルドラ・ヘス ×1
  森林警備隊の隊長です。強力なユニットで、弓矢による攻撃で皆さんの援護をしてくれるでしょう。
  特に指示が無ければ、穏健派の幻想種たちの護衛を優先します。

 穏健派の幻想種 ×5
  移動中だった穏健派の幻想種たちです。壊れた馬車の近くでまとまっています。
  全員戦闘能力はありませんので、しっかりと守ってあげる必要があるでしょう。

 以上となります。
 それでは、皆様のご参加とプレイングをお待ちしております。

  • <Closed Emerald>追うもの、追われるもの完了
  • GM名洗井落雲
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年11月09日 22時25分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

すあま(p3x000271)
きうりキラー
イルー(p3x004460)
瑞心
シュネー(p3x007199)
雪の花
真読・流雨(p3x007296)
飢餓する
アメベニ(p3x008287)
戦火よ舞え
かぐや(p3x008344)
なよ竹の
スイッチ(p3x008566)
機翼疾駆
アルヴェール(p3x009235)
夜桜

リプレイ

●遭遇
 轟、と雄たけびを上げて、威嚇するように、鉱石モグラ……『大樹の嘆き』より生まれた怪物が、特異運命座標たちを、そしてルドラやその部下、穏健派の幻想種たちを睥睨する。モグラの皮膚は、まさに鉱石のような材質をしている。石と鉱物のような皮膚が光を反射して、鈍く光っていた。
「くっ……!」
 ルドラが矢を番え、放つ。続くように、部下の幻想種たちも矢を放つが、モグラのの鉱石のような皮膚に阻まれ、決定打とはならない。
「なんという硬さだ! これでは、一撃を当たるのも容易ではない……!」
 ルドラが悔しげにうめく。再度矢を番えようとするルドラを制するように、『夜桜』アルヴェール(p3x009235)がその前へと立った。
「ルドラ隊長、君は警備隊の仲間と共に、穏健派の幻想種たちを守ることに専念しておくれ」
 アルヴェールは優しく微笑むと、鞘から刀を抜き放つ。
「ああいうのは俺たちが相手をするよ。さて、敵は三体。スイッチ君、君と俺で一体ずつ抑えるのはどうだい?」
「OK、その提案、乗ったよ」
 『可能性の分岐点』スイッチ(p3x008566)が、背面のスラスターを起動させる。ヴォン、と空気が震え、僅かにスイッチの身体が浮いた。
「この大樹の嘆きは、政治的に重要な人たちを狙ってきているのか……すごく裏を調べたくなるね。
 とはいえ全てはここを切り抜けてからかな。必ず守り抜いてみせるよ」
「では行こう、スイッチ君」
 アルヴェールが飛び出すと同時に、スイッチもまた、低空で大地を滑走した。モグラが地下を這いまわったせいであちこちが隆起していたが、スイッチはそんなものはものともせず、モグラのうち一体に接敵する。
「さて、お手並み拝見と行こうか」
 スイッチの手にした刃に、雷のエフェクトがまとわりつく! ばぢばぢと音を立てて放たれる雷が、振り下ろした刃の斬撃と共に、モグラの鉱石の皮膚を切り裂いた! 斬撃は鉱石を切り裂いたことによるダメージももちろんだが、雷が体内を駆け巡った事によるそれも大きい。いずれにせよ、モグラの体内で暴れる雷がその身体を痺れさせ、同時にスイッチのヘイトを上昇――つまり、敵の意識をスイッチへ釘付けとする。
 轟! 怒れるモグラの攻撃が、スイッチを襲った。鋭い爪による、シンプルな斬撃は、しかしその巨大さと鋭さから、巨大な数枚のブレードに切りつけられるに等しい。スイッチは背中のスラスターを吹かすと、一気に後退する。わずかに身体に触れた爪が、その風圧で以ってスイッチの身体に傷を作った。
「やるね! アルヴェール殿、そちらも充分に気を付けて!」
「ああ、有難う。こちらの奴は引き受ける、皆は他のモグラを頼んだよ」
 アルヴェールは涼しく笑うと、跳躍から体重と落下速度を乗せた斬撃を見舞う。鋭く振りぬかれた刃が鉱石モグラの鉱石を斬り飛ばし、痛みに震えるモグラが、その爪を振るって反撃。とっさに掲げた鞘=盾で受け止めたアルヴェールが、衝撃に僅かにフッ飛ばされる。
「確かに、一人だけじゃ長くはもたないかもね。後は任せたよ!」
 仲間達に、そう声をかけるアルヴェール。残る一体のモグラを、しかし仲間達はすでに交戦状態に入っていた。敵は三体。二体をアルヴェールとスイッチで抑え、残る一体を仲間達による集中攻撃で早期に撃墜。続いて残る二体を、と言う塩梅だ。
「よおし、ブチ転がしますわ!」
 『なよ竹の』かぐや(p3x008344)は、ぐっ、と力を込めて、竹やりを握りしめた。そのまま構える。文字通りに槍投げの体勢。
「見せて差し上げましょう、この攻撃の前には、防御能力などは無力である、と」
 ぶおん、とすさまじい勢いで放たれた竹槍! それはモグラの後ろ脚に見事に突き刺さった! 鉱石の皮膚を粉砕し、肉へと突き刺さった竹槍がモグラの脚へと強いダメージを当たる。脚へのダメージは、システム上『泥沼』のバッドステータスと表現されたらしい。でゅうん、と何かが下がるイメージの音と共に、『泥沼!』という表示がなされる。事実、足を引きずるようなモグラの動きは鈍い。
「やってやりましたわ! さぁ、皆様! 一気呵成と参りましょう!」
 かぐやの言葉に応じるように、仲間達が反撃にうつる。一方で、穏健派の幻想種たちを守ることを優先していたのは『戦火よ舞え』アメベニ(p3x008287)である。アメベニは、ゆうらり、と舞を踊り、ふわり、ふわり、とその手を振るうたびに、小さな炎がふわり、ふわり、と舞い踊る。
「この炎は、闇路を照らし、敵を近づけない。皆様を守るために燃えるものです。守ってみせます」
 アメベニが柔和に笑うのへ、穏健派の幻想種たちは、心強いものを確かに見たように、すがるように頷いて見せた。
「お願いいたします、暖かな炎の方……」
 そう言う幻想種に頷くと、アメベニは一歩を踏み出した。敵は三体。その全てがひきつけられているようであり、穏健派の幻想種たちの安全はある程度確保されたとみるべきだろう。ならば、後はアメベニも積極的の攻勢にうつり、戦いを長引かせずに終わらせることが必要だ。
「さて、舞いましょう。伝いましょう。ついてきて、鬼火たち。ともに皆を守りましょう」
 緩やかに、舞う。流れるようにその身を振るい、時に跳ねるように足を運ぶ。同時、現れた鬼火たちが、仲間達の下へふわふわと飛んで行って、その暖かな炎は傷を癒し、活力を取り戻させる。『遊火踏』。そのなのとおり、遊ぶように舞う鬼火たちが、仲間達の背中を押した。
 ほの燃える鬼火たちを背にしながら、特異運命座標たちとモグラが激突する! 『CATLUTONNY』すあま(p3x000271)はその手にギラリと輝く猫の爪を、モグラの皮膚へと叩きつけた。
「モグラの皮膚と、猫の爪。鉱石と猫の爪だけれど、どっちが強いか知っているかな?」
 答え――。
「当然、猫の爪だよ。モグラなんて、猫の獲物。鉱石なんて、爪とぎに過ぎない――うん? 爪とぎだったら猫の爪が負けてるかな? それとも相打ち?」
 後ろの全身鎧(ラダ)が肩をすくめた。さておき、この場合の猫の爪は、しかし鉱石などは斬り飛ばす勢いだろう。敵の分厚い装甲(こうせき)を切り裂いて、内部の皮膚を強かに切り裂く。その激痛に、モグラは手ひどい隙を晒した。
「今がチャンスだよ!」
 すあまの叫びに、『雪の花』シュネー(p3x007199)が頷いた。
「分かりました、わたくしが突き崩します!」
 ぐっ、と力強く矢を番え、引く。その矢に疾風の様なエフェクトが重なり、解き放った瞬間、それは豪風を纏って、直線状のすべてを貫くほどの勢いで宙を飛ぶ! 目標はモグラ、その肉体! 大きな隙を晒したモグラの横っ腹に突き刺さる!
 ごおお、とモグラが呻いた。ぐらり、とその身体を揺らすが、しかし未だ命を取るには足りない。モグラは痛みに激怒しつつ、その身体を震わせた。途端、皮膚が隆起し、鉱石のそれが剥がれ落ちると同時に勢いよく放たれる! 鉱石の巨大な砲弾が、特異運命座標たちを、シュネーを狙った!
「まぁ、シンプルですが、それ故に厄介な攻撃ですね……!」
 シュネーは呻きつつ、跳躍した。破片が身体にいくつか辺り痛みを伴うが、直撃は避けられたようだった。巨大な功績が地に叩きつけられるのを見る。他の仲間を、直撃とはいかないまでも、相応のダメージを受けたらしい。
「アメベニ様!」
 シュネーの叫びに、アメベニが頷く。
「任せてください」
 ぴょん、ぴょんと飛ぶように舞うたびに、鬼火たちがぴょん、ぴょんと呼び出された。その鬼火の暖かな炎が自身の傷をいやすのを、シュネーは見届ける。
「……大樹の嘆き、恐ろしい敵です。
 しかし、大樹の嘆きは、無差別に周囲を攻撃する、と聞いています。ですが、この子達は、まるでわたくしたちを……いいえ、穏健派の皆さんや、ルドラ様を狙っているようです。これも、バグと言う事なのでしょうか……?」
「おそらく、ゲームマスターや高位のパラディーゾのせいだろう」
 と、答えたのは『恋屍・愛無のアバター』真読・流雨(p3x007296)である。
「報告書をよんだ限りであるが、敵が操っている可能性もあるようだ。穏健派の皆が狙われるのであれば、つまりそう言う事、と考えていいだろう」
「やはり、敵は……『ピエロ』は、翡翠国の混乱を狙っているのですね……」
 嘆くように言うシュネーに、流雨は頷いた。
「直接、間接を問わず、この国に波風を立てたいらしいようだ。まぁ、最終的には、この世界にという事なのだろうが。
 ……ならば、そのたくらみを見過ごしてやる義理はない。僕たちで止めてしまおう。
 シュネー君、引き続き攻撃を頼む」
 流雨がぱんだくろーをギラリと輝かせ、跳躍する。シュネーは再び矢を番えつつ、
「イルー様、援護をいたしましょう!」
 と、『初心者』イルー(p3x004460)へと声をかける。
「は、はい、わかっています!」
 イルーは上空を活き活きと飛ぶ『果実のパイ』からの視界を確認しながら、頷く。なぜ果実のパイが飛んでいるのかと言えば、イルーのスキル、『甘い導き手』によるものだ。スイーツに霊力を与えて使い魔(ファミリアー)とするこのスキルにより、イルーは先ほどから戦場を俯瞰し、状況を逐一仲間達に伝えていた。
「一体めのモグラさまも、だいぶ消耗しているようです……わたしが隙を作ります! 一斉に攻撃を!」
 イルーが手にした杖を掲げると、大きなチョコレートを、閉じた傘のように固めたスイーツがぽん、ぽん、ぽん、と召喚される。スイーツと侮るなかれ、その先端は思いのほか鋭い。
「わ、わるいことをしては、だめです! それが、いじめられた仕返しだったとしても……!」
 イルーが杖を振るうと、放たれたチョコレートたちが、次々とモグラに突き刺さった。勢いと痛みに、モグラがぐらり、と揺れる。刹那、飛びこんだぱんだ……流雨が、追撃のぱんだくろーをみまう! 鋭い爪、抜けば玉散る氷の刃、魔に鋭く、隙を見せたモグラの肉を刈り取った!
「むぅ、モグラって食べられるのだろうか?」
 流雨が言うのへ、すあまが同じく首をかしげた。
「わかんない……でも、モグラ料理って聞いたことないから、おいしくなさそう」
「では、今日の所は諦めるか」
「何の話ですの」
 二人の会話に、呆れたように、ふぅ、とかぐやがつっこむ。さておき、流雨の一撃は強烈なものだ。それに、イルーによって隙をさらけ出していたモグラは、まさに命に届くような一撃を喰らったのだ! モグラはぎゅおん、と悲鳴をあげると、地下に逃げる間もなくその躯を大地に横たえる。すぐにきらきらとした粒子に消えて、その死体も残らない。
「……どっちにしても食べられなかったねぇ」
 すあまが言うのへ、かぐやが肩をくすめた。
「お腹を壊しますよ」
「すごい、あの怪物を倒したのか……!? だが、残り二体が、まだ!」
 ルドラが叫ぶのへ、アメベニが頷いた。
「はい。引き続き討伐にうつります。皆さんは、ここで待っていてください、ね」
「いきましょう! スイッチさまとアルヴェールさまも、そう長くはもちません……!」
 イルーの言葉に、仲間達は頷いた。
「ええ、すぐに助けに向かいましょう!」
 シュネーの言葉を合図に、仲間達は駆けだした。

●決着
「地面の中から俺の位置が分かるかな? お手並み拝見といこうか」
 呟き、スイッチが跳躍する。間髪入れず、地面に潜ったモグラが、突き上げるかのような攻撃。それが空を切ったのを見て、スイッチはモグラの鼻づらに着地してやった。
「残念。やっぱり目は良くない様だね」
 スイッチはそう言うと、鼻づらを蹴り上げて再びの跳躍。一方、そんなスイッチにアルヴェールが声をかける。
「スイッチ君、どうやら一体は討伐できたみたいだ」
 アルヴェールがそう言う。システム上では、クエストの討伐対象が一つ減っている。
「すぐに増援が来る……君はまだ、持つかい?」
 お互いの盾役としての実力は充分だ。が、敵の攻撃、或いは時の運などにもよって、どうしても受けたダメージには差が出てしまう。今回に関していえば、スイッチの方がわずかに損害が大きい。
「……ダメージだけを見れば、俺の方が少し、大きい。アメベニ殿に援護を受けているから、すぐには倒れないとは思うけれど……」
「でも、先に抜けるなら君の方だ。皆! スイッチ君の敵を攻撃してほしい! こっちはまだ引き付けられる!」
「了解だ。すぐにこっちも片付けよう」
 流雨が頷き、スイッチの請け負っていたモグラに、攻撃を集中させる。それを見届けたアルヴェールは、
「目移りなんてしないでおくれよ、俺だけを見てて欲しいな!」
 叫び、モグラを最後まで引き付けるべく決死の戦いに身を投じた。
 さて、スイッチはいったん、敵から離れると、今度は積極的な攻勢にうつるべく頭を切り替えた。手にした刃に、再度雷を纏わせる。目の前にうつる、ホログラムのターゲットスコープ。それを覗きながら、雷の斬撃を再度モグラにたたきつける!
「これでも行動阻害は得意なんだ」
「うん、いいぞ! スイッチ。わたしも続こう!」
 すあまが再度、爪を煌かせて突撃! しゃーっ、と声をあげて振るわれる無双の斬撃が、モグラの皮膚、鉱石を微塵に切り裂いた! ぎゃあ、と悲鳴をあげるモグラが、苦し紛れの斬撃を繰り出すが、すあまはそれを受け止めて、後方へ跳躍。くるくると回転して、全身鎧(ラダ)の腕の中にすっ、と着地。
「もはやあなたは、まな板の鯉。猫の前のまたたびと家の柱」
 家の柱で爪とぎはやめろ、と言いたげな全身鎧(ラダ)を無視しつつ、すあまがぴっ、と胸を張った。
「その狼藉もここまでだよ!」
「よおし、ではその傷跡に、竹槍をねじ込んであげましょう!
 いかな地中を掘り進む土竜とて、無限の竹林に阻めぬものは無し!」
 かぐやが再び、力強く竹槍を投げつける! 吹っ飛ぶ竹槍が、モグラの横っ腹に突き刺さった。ぎゅおお、と悲鳴をあげたモグラが転倒。じたばたともがき、すぐに光の粒子へと消えていく。
「皆さん、今のところは無事ですか……?!」
 かぐやが尋ねる。皆相応のダメージを負っていたが、何とかギリギリのところで持ちこたえている。此方もダメージは大きいが、モグラたちの方がよりダメージと言う点では深刻だろう。
 一方、モグラを一人引き受け続けていた流石のアルヴェールにも、限界が近づいていた。疲労からか思わず体勢を崩した刹那、飛来する鉱石の砲弾が、まともに直撃してしまう。
「く……うっ!」
 アルヴェールが地に叩きつけられる。その身体が、光の粒子に包まれつつあった。ログアウトだ。
「アルヴェール様!」
 アメベニが、その傷の深さに悔し気に叫ぶのへ、アルヴェールは頭を振った。
「いいえ、ここまで持ちこたえたのなら、俺の役割は果たせたという事……ごめん、皆、後を……!」
 消えて(ログアウトして)いくアルヴェールを見送りながら、特異運命座標たちの戦いは、最後の戦いへと突入する。
「大樹よ、その嘆きには同情するが――」
 流雨がさけび、ぱんだのつめをお見舞いする! 鋭い斬撃は鉱石の皮膚を斬り飛ばし、モグラを圧倒する力を見せつけた。
「だが、その地に住む者に害をなすのであれば……すまないが、ここでその嘆きの声、潰させてもらう」
「そ、そうです! 穏健派の皆さんは、翡翠の国の未来を、良くしてくれるはずなのですから……!
 その未来を摘んでしまうのであれば、大樹さまの声だとしても、放っておくことはできません!」
 イルーが放つ、再びの鋭い傘のチョコレート。傘と言うよりもはや槍のようではあるが、さておき鋭く突き刺さるその連撃を、モグラは受け止めることはできない! チョコレートの一撃を受けたモグラが転倒。激しく隙を晒す!
「シュネーさま、お願いします!」
「鬼火たちよ、シュネー様に力を!」
 アメベニが最後の舞踏を舞う。踊る鬼火たちが、シュネーの傷を癒し、その背中を押した。鬼火たちを背に、シュネーは矢を引き絞る。
「大樹よ、その嘆き……此処で昇華させていきなさい!」
 シュネーの放つ矢に、再び轟風の如きエフェクトが発生する。矢を解き放てば、すさまじい風と共に宙を走る矢が、モグラのさらけ出した腹を突き破った!
 ごう、ごう、とモグラが呻く。が、すぐに身体から力が抜けて、すぐに光の粒子に包まれると、消滅していく。
「……倒したのか……! あの、嘆きたちを……!」
 ルドラが驚いたように、そして特異運命座標たちの戦いを讃えるように、そう言った。
「ありがとうございます、特異運命座標の皆様。何とお礼を申し上げたらいいか……!」
 穏健派の幻想種の代表の男がそう言うのへ、かぐやは頷いた。
「なに、礼などは。それよりも、これからの話し合いに力を尽くしてくださいませ」
 そう言うのへ、
「確かに……かならず、この翡翠に平穏を取り戻して見せます!」
 と、男は頷く。
「お願いします。嘆きを生み出してしまった大樹もきっと、こんな事は望んでいないはずですから……」
 イルーの言葉に、
「うん。そして終わったら、皆でおいしいご飯を食べよう。
 きっとおいしいご飯を食べれば、みんな仲良くできるはずだから」
 そう言って笑うすあまに、その場にいた皆は頷いたのだった――。

成否

成功

MVP

アルヴェール(p3x009235)
夜桜

状態異常

アルヴェール(p3x009235)[死亡]
夜桜

あとがき

 ご参加ありがとうございました。
 皆様の活躍により、大樹の嘆きは鎮められ、
 ルドラ以下、警備隊の面々と、穏健派の幻想種たちは無事に移動を再開しています。

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